拡大シールド装置
【目的】鉄筋コンクリート製の既設管の解体及び拡大敷設替えに際し、該既設管の躯体内部の鉄筋を確実に破砕する。
【構成】カッタヘッド10の掘削面10gを外周から中央部に向かって窪むように形成し、該カッタヘッド10の中心に突出させる形で、その外周に破砕突起25を設けた内筒23を、破砕コアとして設ける。カッタヘッド10と内筒23との間に解体物移送空隙26を筒状に設け、該解体物移送空隙26に対向した案内部10dに鋸刃101を設けておく。老朽管3の真中に仮設した鉄管6の内部に流路FLを確保した状態で、該鉄管6を包囲するようにシールド装置7を配置させ、シールド掘進動作によって老朽管3の躯体31を圧壊し、躯体片や鉄筋等を掘削面10gに沿って解体物移送空隙26に移送し、ここで確実に破砕処理する。
【構成】カッタヘッド10の掘削面10gを外周から中央部に向かって窪むように形成し、該カッタヘッド10の中心に突出させる形で、その外周に破砕突起25を設けた内筒23を、破砕コアとして設ける。カッタヘッド10と内筒23との間に解体物移送空隙26を筒状に設け、該解体物移送空隙26に対向した案内部10dに鋸刃101を設けておく。老朽管3の真中に仮設した鉄管6の内部に流路FLを確保した状態で、該鉄管6を包囲するようにシールド装置7を配置させ、シールド掘進動作によって老朽管3の躯体31を圧壊し、躯体片や鉄筋等を掘削面10gに沿って解体物移送空隙26に移送し、ここで確実に破砕処理する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄筋コンクリート製の老朽化した既設管を新設管に拡大敷設替えする際に用いるに好適な、拡大シールド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、下水道等において、老朽化したり、或いは機能不足に陥った既設管を改修、即ちこれを新設管に更新する際には、地上から土留め用杭(シートパイル)を用いて撤去、新設作業を行う開削工法が知られている。しかし、開削工法は公知のように道路事情、周辺環境を悪化させる。そこで、地上環境に極力影響を与えないですむ方法として、既設管より一回り大きな断面のシールド機を該既設管の周囲を取り囲む形で推進させて、既設管の解体撤去を行いながら、新設管に拡大敷設替えするシールド工法が提案されている。例えば、特公平4−19358号公報では、シールド掘削機の掘削刃によって、既設トンネルのセグメントを切削すると同時に、前記既設トンネルより大径のトンネルを掘削すること及び、シールド掘削機のカッタ本体に、既設トンネルのセグメントを切削する切削刃と前記既設トンネルより大径のトンネルを掘削する掘削刃を並設してなる拡大シールド工法を開発している。また、特開平1−290894号公報では、既設暗渠の敷設替え工法において、鉄筋切断用カッタを有する支持装置と、掘進機のカッタフェイスにカッタビット、ディスクカッタ及びゲージカッタを設けて、上記カッタビットに土砂の掘削を行わせ、ディスクカッタ及びゲージカッタに鉄筋及びコンクリートの破砕を行わせるようにした例が示されている。こうしたシールド工法では、シールド機の前面に取り付けたカッタディスクの回転動作によって、既設管の躯体を圧壊する形でその解体を行う手法が用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、こうしたカッタディスクを用いた手法では、コンクリートや石、陶管、レンガ等のような固いものしか圧壊出来ない、という不都合がある。即ち、既設管の躯体が鉄筋コンクリートであった場合には、ここにディスクカッタを回転させながら当てると、該躯体内部の鉄筋が、その靭性を介して曲がって、内側(シールド軸心側)或いは外側(地山側)に逸れる形で、なかなか切断されない。すると、鉄筋が内側に逸れた場合には、シールド機の隙間から回転機構等に噛み込まれて、該シールド機の推進動作を阻害する危険性があり、一方、外側に逸れた鉄筋はシールド機の外殻と地山の間で絡み合ってしまう。そして、このように一旦、内側或いは外側に逸れた鉄筋の切断は非常に煩雑である。従って、こうした既設管の拡大敷設替えのためのシールド機において、鉄筋の切断を如何にして行うべきかは、解決すべき大命題であった。そこで本発明は、上記事情に鑑み、鉄筋を確実に破砕しながら既設管の解体撤去を行うことが出来る、拡大シールド装置を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、地盤(2)中を推進自在な殻体(9)を有し、前記殻体(9)の推進方向前面側にカッタヘッド(10)を、シールド軸心(CL1)を中心として回転駆動自在な形で設け、前記カッタヘッド(10)の掘削面(10g)を、該掘削面(10g)の外周側から中心部に向かって窪むように形成し、前記掘削面(10g)にビット(11)を複数装着し、前記殻体(9)に破砕コア(23)を、前記カッタヘッド(10)の中心に突出させる形で設け、前記カッタヘッド(10)と前記破砕コア(23)の間に解体物移送空隙(26)を筒状に設け、前記破砕コア(23)の外周に鉄筋破砕ビット(25)を、前記解体物移送空隙(26)に向けた形で設けて、構成される。なお、( )内の番号等は、図面における対応する要素を示す、便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。以下の作用の欄についても同様である。
【0005】
【作用】上記した構成により、本発明は、カッタヘッド(10)の回転駆動によって複数のビット(11)に既設管(3)を圧壊させる形で解体するが、この際、解体途上の既設管(3)の躯体片(31’)や鉄筋(32)等は、カッタヘッド(10)の掘削面(10g)に沿って該掘削面(10g)の外周側から中心部に向かって移送されて、解体物移送空隙(26)に進入し、該解体物移送空隙(26)において破砕コア(23)の鉄筋破砕ビット(25)により破砕処理されるように作用する。
【0006】
【実施例】図1は本発明による拡大シールド装置の一実施例を用いた既設管の拡大敷設替え作業を示す断側面図、図2は図1に示す拡大シールド装置の拡大図、図3は図2に示す拡大シールド装置を前面側から見た図であり、図1のIII、III矢視図、図4は図2に示す拡大シールド装置を背面側から見た一部破断図であり、図1のIV、IV矢視図、図5は本発明による拡大シールド装置を用いた既設管の解体状況を示す一部拡大側面図、図6は本発明による拡大シールド装置の別の実施例を示すモデル図である。
【0007】拡大敷設替え作業を行っている下水道1には、図1左部に示すように、解体中の既設管である老朽管3と、図1右部に示すように、敷設中の新設管5が、地面2aからそれぞれ所定土被りをなす位置の地盤2中に埋設された形で配設されており、また老朽管3と新設管5の内部には、その内部に図1矢印A方向側からB方向側に向かう下水の流路FLが形成された鉄管6が、図1R>1左側のマンホール2sと右側のマンホール2sを接続する形で、該老朽管3から新設管5への拡大敷設替え作業中の仮設管としてここに設けられている。老朽管3と新設管5の間には、該老朽管3を解体撤去して新設管5を構築するための拡大シールド装置として、シールド装置7が設けられており、シールド装置7は、図1矢印B方向側から矢印A方向側に向けて老朽管3を解体しながら、該シールド装置7に後続させるように新設管5を構築する形で、図1矢印A方向側に向けて地盤2中を推進している。
【0008】老朽管3は、図3二点鎖線で示すように、その断面が門型に形成されたコンクリート製の躯体31を有しており、躯体31の内部には鉄筋32が、該老朽管3の管軸方向及び周方向に沿って複数埋設配筋されている。また、解体作業中の老朽管3の内部には、図1に示すように、モルタル等からなる充填材33が、先に述べたように該老朽管3の内部に仮設された鉄管6の外周との間の間隙を全て充填された形で、環状に設けられており、さらに、老朽管3の図1左側のマンホール2sとの接続箇所には、バルクヘッド35が、充填材33の端部を閉塞した形で側蓋状に設けられている。そして、老朽管3は、シールド装置7によって矢印B方向側から矢印A方向側に向けて解体されつつある形で、その後端3bが、シールド装置7の前面と対向する形になっている。
【0009】一方、新設管5は、図1又は図2に示すように、シールド装置7の外殻9の内径に対応した外径の円環状に形成されており、新設管5は、例えば鉄筋コンクリート、或いはスチール等からなるセグメント51を、該セグメント51を構成している各々のセグメントピースを1リングの幅L1をなす形で円環状にジョイントして、これを地盤2中に埋設定着させた形で形成されている。即ち、新設管5は、シールド装置7が老朽管3の解体と同時に該老朽管3周囲の地盤2を円筒状に拡大掘削して形成した拡大トンネル空間4に建て込み構築されており、従って、新設管5の前端5aを形成しているセグメント51は、シールド装置7の外殻9内に、1乃至2リング分入り込み配置した形になっている。
【0010】そして、本発明による拡大シールド装置であるシールド装置7は、図1に示すように、掘削チャンバ10cに泥土40を供給しながら、未だ解体されていない老朽管3とその周囲の切羽2b及び該老朽管3内の充填材33を掘削する形で推進し、該掘削によって生じる掘削ズリ41を後方側である矢印B方向側に回収排出するものであり、シールド装置7は、図2に示すように、解体すべき老朽管3の外径より大きな所定の外径D1をなす形で略円筒形に形成された殻体である外殻9を有している。シールド装置7は、前記老朽管3のうち、既に撤去更新された部分を除く矢印B方向側の後端3b付近において、そのカッタヘッド10の外周が前記鉄管6の外方を包囲し、該鉄管6を外殻9の内部に貫通させた形で、該外殻9が地盤2中を推進するように配設されており、また、先に述べたように外殻9内に入り込み配置させた新設管5の外周面との間隙は、ワイヤブラシ式のテールシール91によってシールされた形になっている。
【0011】外殻9の矢印A方向側に示す推進方向前面側には、図2に示すように、前記鉄管6を包囲するように、即ち矢印A、B方向に貫通させた形で真中穴開き円盤状に形成されて、外殻9と同様に老朽管3より大径に形成されたカッタヘッド10が、該カッタヘッド10に接続された油圧モータ10aや該鉄管6に嵌合された大口径ベアリング10fを介して、シールド軸心CL1を回転中心にして回転駆動自在な形で設けられており、カッタヘッド10の矢印A方向側に示す前面部分には、掘削面10gが、該掘削面10gの外周側から中心部に向かって窪むように形成されている。掘削面10gは、その外側から内側にかけてすり鉢状に陥没するよう傾斜した形のカッタホイール10bによって形成されており、カッタホイール10bは、カッタヘッド10の回転動作によって鉄管6の周りを図2紙面と交差方向(即ち図3矢印C、D方向)に回転自在な形になっている。掘削面10gを形成しているカッタホイール10bには複数のビット11が装着されており、複数のビット11は、図3R>3に示すように、カッタホイール10bの外周から中心に向けて(図3矢印E、F方向に沿って)2乃至3ヶづつ並ぶものが、回転方向である矢印C、D方向に沿って何列かをなし、且つその回転によって解体すべき老朽管3の図3二点鎖線で示す端部断面形状を覆う形になるよう、配置装着されている。また、カッタホイール10bには、図2に示すように、その最内方部分が鉄管6の外周に沿って若干後方側(矢印B方向側)に向けて褶曲する形で案内部10dが形成されており、案内部10dには鋸刃101が、図2矢印A、B方向に略沿って且つ図2R>2紙面と交差方向に複数並ぶ形で、鉄筋破砕ビットとして配設されている。
【0012】またカッタヘッド10内には、掘削チャンバ10cが、前記鉄管6を中心部に挿嵌させてその周囲に配置する形で形成されており、さらに、カッタヘッド10には掘削チャンバ10cの後側に配置する形で土砂シール12が、掘削チャンバ10c内外をシールする形で設けられている。土砂シール12の後方側には、図2に示すように、掘削チャンバ10cに泥土40を送給するための送泥管13が、前記図1右側のマンホール2s位置まで延長接続された形で設けられており、送泥管13には吐出口13aが、掘削チャンバ10cの上部で開口する形で設けられている。また、シールド装置7には、そのカッタヘッド10の前記案内部10dを介して掘削チャンバ10cに取り込まれた掘削ズリ41を、該シールド装置7より後方側に排出するための排泥管15が、図1右側に示すマンホール2s位置まで延長接続された形で、配設されており、排泥管15には、取込口15aが、掘削チャンバ10cの下部で開口する形で設けられている。また、排泥管15の管路中にはクラッシャー16が、該排泥管15の取込口15aから取り込まれた掘削ズリ41中のコンクリートガラ、即ち躯体片31’や鉄筋32等を細かく粉砕して、該排泥管15中を圧送し得るように設けられており、即ち、この際の掘削ズリ41とは地盤2を掘削したことと、鉄筋32を含めた躯体31及びその内部に充填された充填材33の切断によって形成されている。
【0013】また、外殻9内のガーダー部92の後側である矢印B方向側には、図2又は図4に示すように、新設管5のセグメント51を形成するための各セグメントピースを建て込むエレクタ17が、設けられており、エレクタ17は、図4に示すように、外殻9の内周との間に所定の間隙L2をなす形で板輪状に形成されたガイドリング19の回転動作によって、矢印C、D方向に示すシールド内周方向に沿って移動自在になっている。即ち、外殻9の内周には、図4に示すように、いくつかのガイドローラ20が、上記ガイドリング19と外殻9の間隙L2に対応した長さの支持杆20aの先端において、図4矢印M、N方向に回転自在な形で装着されており、ガイドリング19は、該いくつかのガイドローラ20によって、外殻9の内方側においてシールド内周方向に沿って回転駆動され得る形に保持されている。ガイドリング19には、前記エレクタ17のア−ム17aが、該ガイドリング19を介してシールド内周方向(矢印C、D方向)に回転自在で且つ放射方向である矢印E、F方向に突出後退駆動自在な形で装着されており、ア−ム17aにはセグメント把持部17bが、前記セグメントピースを把持解放自在な形で設けられている。
【0014】また、外殻9の後部には、図2に示すように、シールド装置7全体をその推進方向である矢印A方向側に向けて地盤2中に推進させ得る推進ジャッキ21が、図4に示すように、外殻9の内周に沿って複数固定装着されており、各推進ジャッキ21には図2に示すように、ラム21aが、先に述べたように既に出来ていて外殻9の内側に入り込み配置している新設管5の前端5aに推進反力を求めて、矢印A、B方向に突出後退駆動自在な形で設けられている。なお、推進ジャッキ21の後側である各ラム21aの先端側にはスプレッダ22がそれぞれ装着されており、従って、複数の推進ジャッキ21の推進力は、外殻9の内周に沿って並ぶ複数のスプレッダ22によって、新設管5の前端5aの全域に均等に分配され得るようになっている。
【0015】さらにシールド装置7の外殻9内には、図2R>2に示すように、前記鉄管6の外径より若干大きな内径をなす円筒形に形成された破砕コアである内筒23が、該鉄管6の外側を包囲する形で(即ちその内部に鉄管6を挿通させた形で)、前記カッタヘッド10の中心に突出するように設けられており、実施例における内筒23は、該カッタヘッド10の回転動作に連動して、ゆっくりとシールド周方向(図3矢印C、D方向)に回転駆動し得るようになっている。内筒23の内周面の図2矢印A方向側に示す前端付近には、該内筒23と鉄管6との間をシールし得る形で環状に形成されたパッキン24が嵌着されており、パッキン24は、内筒23が鉄管6に対して回転自在な形でここに設けられている。
【0016】内筒23の外周には、耐摩耗性硬質材料からなる破砕突起25が、鉄筋破砕ビットとして溶着されており、破砕突起25は、図2に示すように、前記カッタヘッド10の案内部10dに設けられた鋸刃101と、有る程度の間隙をもって対向し合う形になっている。当該間隙によって、シールド装置7には、カッタヘッド10と内筒23の間に解体物移送空隙26が円筒状に形成された形になっており、上述した破砕突起25は、該解体物移送空隙26に向いた形で内筒23に設けられている。また、上述した鋸刃101は、カッタヘッド10における解体物移送空隙26と対向する部位である案内部10dに設けられた形になっており、従って、老朽管3の躯体片31’や鉄筋32、或いは充填材33、及び地盤2等による掘削ズリ41は、該解体物移送空隙26を介して、前記掘削チャンバ10c内に取り込むことが出来るようになっている。
【0017】また、内筒16の内周側には、図2に示すように、鉄管6の外周面に対して回転自在なガイドローラ27Aが、該内筒26の内周方向に沿って複数設けられている。さらに、シールド装置7の後部に位置するガーダー部92には鋼管挿通部92aが、該鋼管挿通部92aの軸心をシールド装置7の軸心CL1と一致させた形で、矢印A、B方向に貫通するよう形成されており、鋼管挿通部92aには、ガイドローラ27Aと同様のガイドローラ27Bが、鋼管6の外周面に対して回転自在な形で、周方向に複数設けられている。そして、後側のガイドローラ27Bが設けられた鋼管挿通部92aには、該鋼管挿通部92aを形成しているガーダー内面と、鉄管6の外周面との間の間隙Wnを検知し得るセンサ28が、外殻9の鉄管6に対する位置を検出する位置検出手段として、シールド内周方向に沿って複数設けられており、これ等複数のセンサ28は、姿勢制御装置29にそれぞれ接続されている。
【0018】姿勢制御装置29は、複数のセンサ28が検知する間隙Wnの値の各々に対応した駆動量だけ、前記複数の推進ジャッキ21の各々を駆動させる形で、常に該複数の間隙Wnが一致した値に近づくようシールド装置7の姿勢制御を行っており、即ち、姿勢制御装置29と複数の推進ジャッキ21は、複数のセンサ28によって検出された外殻9の鉄管6に対する位置に基づいて、該外殻9の姿勢を調整する形で、シールド装置7における姿勢調整手段を構成している。これによって、シールド装置7は、鋼管6の軸心がシールド軸心CL1に一致した形になるよう該鋼管6を挿通支持した状態で、矢印A方向側に向けて推進動作を行うことが出来るように制御されている。
【0019】下水道1とシールド装置7は、以上のような構成を有しているので、該シールド装置7を用いて老朽管3の改修を行うには、該老朽管3の通水を一旦停止、或いは他のルートに切替えておく等して、ヘドロ処理、管内洗浄、枝管撤去等と、該老朽管3の上方における地面2a部分の陥没対策として路面仮覆工を行う等の事前処理を施すと共に、マンホール2s、2sを接続する形で、鉄管6を仮設する。この際、鉄管6は、所定長さに形成したものをマンホール2sから投入し、これをトンネル軸方向に並べて順次溶接していく形で複数継ぎ足すことによって、老朽管3内に簡単に仮設することが出来る。なお、マンホール2sは、図1破線で示すように拡大して、作業用立坑として利用しても良い。こうして、いままで老朽管3に流れていた下水を、該老朽管3内に仮設した鉄管6内の流路FLに集めて流すと、該鉄管6の外側に位置する老朽管3内の領域は、下水が流れていないドライな状態になる。
【0020】そこで、鉄管6の外側の老朽管3内にモルタル等の低強度硬化性材料からなる充填材33を充填する。即ち、シールド装置7のカッタヘッド10の回転時に、各ビット11が地盤2、老朽管3、充填材33等の、何等かの固い部材を削る形になるように、準備しておく。この状態で、図1右部の破線に示すように、マンホール2sを利用した適宜な発進立坑からシールド装置7を発進させる。この際、シールド装置7は、図1に示すように、その外殻9を、未だ解体撤去されていない老朽管3の後端3bからその後側にかけて、該外殻9が鉄管6の外方を包囲する形で、即ち、内筒23が鉄管6を包囲する形になるよう、配置させる。そして、シールド前部においては、老朽管3の躯体31の解体撤去と該老朽管3の周囲の地盤2の掘削作業を行い(即ち既設管路の拡大)、一方シールド後部では、セグメントピースを建て込む形で、該老朽管3より1回り大きな形の新設管5のセグメント51を1リングづつ構築していく(即ち管路の更新)。
【0021】シールド装置7を推進させるには、まず、複数の推進ジャッキ21の各ラム21aを突出駆動させて、スプレッダ22を介して建て込み構築済みの新設管5の前端5aに外殻9を接続支持させる。なお、シールド装置7の掘進初期には、マンホール2sを利用した立坑に設置した架台に外殻9を支持させる形で、推進を開始させ、該外殻9の前進分だけこれより後方側に新設管5のセグメント51を、地盤2に支持させる形で建て込んでいって、有る程度セグメント51を建て込んだところで、上述したようにシールド装置7を新設管5に支持させる。こうしておいて、送泥管13を介して泥土40を、掘削チャンバ10cに供給し、該掘削チャンバ10cに供給充填した泥土40の土圧によって、地盤2の切羽2bや未だ解体撤去されていない躯体31及び充填材33等を抑えながら、カッタヘッド10を、図3矢印C又はD方向に回転駆動させる。また、この際内筒23もゆっくりと回転駆動させる。すると、カッタヘッド10のカッタホイール10bに装着されている複数のビット11は、図3矢印C又はD方向に回転駆動されながら、推進ジャッキ21を介して矢印A方向側に示す前方側に向けて押圧される。これによって、カッタホイール10bに装着されている複数のビット11は、図2に示すように、その掘削面10gが接している地盤2、老朽管3の後端3b、該老朽管3内の充填材33等に押圧されながら回転する形で、これ等を圧壊破砕する。そして、当該地盤2、老朽管3、充填材33が圧壊した分だけ、シールド装置7は、矢印A方向に推進することが出来る。また、当該シールド装置7の推進動作によって、老朽管3の周囲の地盤2は、径D1をなす該シールド装置7のカッタヘッド10に対応した径に拡大掘削される。即ち、シールド装置7のカッタヘッド10より後方側には、老朽管3による管路の径が拡大した形の拡大トンネル空間4が、径略D1をなす円柱状に形成される。
【0022】ところで、シールド装置7は、その推進動作時に、老朽管3の躯体31中に埋設されている鉄筋32を破砕しながら、該躯体31を圧壊しなければならない。この際、躯体31は、図5に示すように、老朽管3の外側に位置する地盤2と該老朽管3内に充填された充填材33によってその内壁面と外壁面の両側を拘束された形で、回転駆動中のビット11と接触する形になる。そして、カッタヘッド10の掘削面10gは、その外周側から中心部に向かって窪むように形成されているところから、ビット11に接触して破砕された地盤2、躯体31の躯体片31’、充填材33の破砕片は、該掘削面10gの傾斜形状に沿って、該掘削面10gを形成しているカッタホイール10bの中心部に集まる形で、解体物移送空隙26側に案内されてくる。そして、該破断片は掘削ズリ41として、解体物移送空隙26を介して後方側である矢印B方向側即ち掘削チャンバ10c内に送られる。また、躯体31の内部には鉄筋32が、管軸方向及び該管周方向に沿って並んで複数設けられているが、該鉄筋32は、たとえ、ビット11と接触したときにすぐに切断されなくても、カッタホイール10bの傾斜形状によって、内方側に褶曲する形で、カッタヘッド10の中心部側に寄る。即ち地山2側に逃げない。そして、該鉄筋32は、図5に示すように、解体物移送空隙26において、カッタヘッド10の案内部10dに設けられた鋸刃101と、内筒23の破砕突起25によって擦り潰される形で、破砕される。従って、鉄筋32は、切断されずにどこかに逸れてしまうことがなく、確実に破砕された状態で、掘削チャンバ10cに送られる。そこで上述したように、シールド装置7の推進動作を介して老朽管3の解体及び管路の拡大を行ったことによって形成された、掘削チャンバ10c内の掘削ズリ41は、取込口15aを介してクラッシャ16を通過させて、さらに粉砕しながら、排泥管15を介してシールド後方側に搬送し、マンホール2sを介して管外に搬出する。
【0023】こうして、上述したようにシールド装置7を、矢印A方向に向けて所定距離、即ち例えば新設されるセグメント51のリング幅L1と対応する形の推進ジャッキ21のストローク分だけ推進させる。するとこのとき、内筒23は鉄管6に対してゆっくりと回転駆動されており、また、内筒23の先端部には、パッキン24があるので、該内筒23と鉄管6との間に被掘削物が目詰まりすることなく、シールド装置7は円滑に推進する。また、当該シールド推進動作時に、シールド装置7の姿勢制御装置29は、推進動作と同時に、周方向に沿って複数並ぶセンサ28の各々に、鋼管挿通部92aのガーダー内面と鋼管6の外周面との間の間隙Wnをそれぞれ検知させ、該間隙Wnの値の各々に対応した量だけ各推進ジャッキ21を駆動させるように、該複数の推進ジャッキ21を制御駆動する。即ち、シールド装置7は、外殻9の鉄管6に対する位置をセンサ28に検知させ、該検知された結果に基づいて、姿勢制御装置29と推進ジャッキ21によって、該外殻9が鉄管6に対して所定の位置状態をなすように、その姿勢を調整していく。これによって、シールド装置7は、常に、シールド軸心CL1を鋼管6の軸心に一致させた形になるように、その推進時の姿勢が制御される。すると、シールド装置7の各構成要素が鉄管6とせり合って、該鉄管6を変形させてしまう危険性はない。また、シールド装置7は、既にマンホール2s、2sを接続するよう仮設された鉄管6に案内される形で、正確な方向に推進出来る。よって、老朽管3があった周囲の正しい位置に、拡大トンネル空間4が形成されて、ここに新設管5が更新構築され得る。
【0024】即ち上述のように、老朽管3、及びその周囲の地盤2とその内部の充填材33を圧壊しながらシールド装置7の外殻9を距離L1分だけ推進させて、この状態で、推進ジャッキ21を後退駆動させると、該後退した推進ジャッキ21のラム21aに装着されたスプレッダ22と、いままであった新設管5の前端5aとの間には、新たに1リング分のセグメント51を建て込むべき空間が形成される。そこで、該空間に、エレクタ17を用いてセグメント51を建て込む形で、新設管5を構築延長する。なお、エレクタ17は、その中心部に鉄管6を挿通配置させた形のガイドリング19にア−ム17aを介してセグメント把持部17bが装着されている構成なので、鉄管6と干渉することはなく、円滑にセグメント51を建て込み出来る。従って、セグメント51は、いくつかのセグメントピースを、その中心部分に鉄管6を配置させた形でリング状になるように接続していく形で、先にシールド装置7のカッタヘッド10が掘削形成した拡大トンネル空間4の外周部に建て込んでいく。
【0025】このようにして、老朽管3の躯体31を解体撤去しながら、該老朽管3周囲の地盤2を拡大掘削して拡大トンネル空間4を形成し、ここに新設管5を構築していく一連の作業を、所定のサイクルで繰返していく。すると、老朽化した既設管である老朽管3を新設管5に拡大敷設替えするための一連の作業を、鉄管6の内部に形成した流路FLと何等干渉することなく、シールド装置7の外殻9内で行うことが、効率的且つ確実に行われる。よって、鉄管6内を仮の下水道として利用しながら、作業を行うことが出来る。また、当該管路の拡大敷設替え工事中に、老朽管3の躯体31が鉄筋コンクリート製であっても、その内部の鉄筋32が、先に述べたように確実に破砕処理されて、シールド推進動作を阻害することがないので、該老朽管3の拡大敷設替え工事は常に円滑に進行することになる。
【0026】なお、上述した実施例においては、シールド装置7の外殻9が老朽管3の径より大きな径D1に形成されている例を述べたが、本発明による拡大シールド装置は、そのカッタヘッドの径が解体すべき既設管より大きな径に形成されていれば良い。従って、図6に示すように、外殻9の径自体は、老朽管3の径より小さく形成されていても構わない。なお、図6に示すような場合においては、当然、老朽管3に替わって建て込まれる新設管の構築方法は、上述した実施例とは異なる他の手法が適用される。また、実施例においては、外殻9等の殻体が、円筒形に形成されているシールド装置7の例を述べたが、殻体は、シールド掘進動作のために地盤2中を推進することが出来れば、必ずしも円筒形である必要はなく、例えば断面が長円形の筒状に形成されていても構わない。さらに、実施例においては、老朽管3の解体後にセグメント51による新設管5を拡大トンネル空間4に建て込む例を述べたが、新設管の構成は任意である。
【0027】また、実施例においては、老朽管3の解体敷設替えのために、鉄管6を仮設しておき、該鉄管6内に形成した流路FLを供用しながら、既設管の拡大敷設替え作業を行う例を述べた。しかし、解体すべき既設管が既に使用されていないものであったり、或いは、他のバイパス管を仮設してこれを利用しながらの工事が可能な場合等には、必ずしも鉄管6は必要ない。従って、こうした場合には、内筒23等の破砕コアは、鉄管6等の仮設管を包囲し得るように筒状になっている必要はなく、柱状或いは塊状等の任意の形状の破砕コアが用いられて差し支えない。さらに、こうした内筒23等の破砕コアは、必ずしも実施例で述べたようにシールド軸心CL1を中心にして回転駆動自在になっていなくても構わない。なお、このように、回転しない破砕コアを鉄管6等の仮設管を包囲するように使用する場合でも、該破砕コアが仮設管に対して摺動出来れば、何等問題は生じない。また、内筒23が回転駆動自在である場合においても、その回転方向及び該回転駆動のための駆動源等は任意である。
【0028】さらにまた、実施例においては、外殻9の鉄管挿通部92aを利用して、該鉄管挿通部92aを形成している外殻9の内面部分と鉄管6の外周面との間隙Wnを検知し得るセンサ28を周方向に沿って複数並べて設けておき、これを位置検出手段として用いて、姿勢制御装置29と推進ジャッキ21からなる姿勢調整手段によって、外殻9の鉄管6に対する姿勢を調整しながら、シールド推進を行った例を述べたが、こうした、位置検出手段及び姿勢調整手段の構成及び、その利用方法、装着配設箇所等の選択は任意である。また、こうした、位置検出手段及び姿勢調整手段がない、拡大シールド装置であっても、鉄筋32等の破砕は可能である。また、実施例においては、老朽管3の躯体31中に埋設されている鉄筋32の破砕のための鉄筋破砕ビットとして、内筒23の外周に破砕突起25を、また、カッタヘッド10の案内部10dに鋸刃101を設けた例を述べた。しかし、カッタヘッド10は、本来、躯体31や地盤2、或いは充填材33等の破砕に適したビット11を複数装着して用いるものであるところから、こうした鉄筋破砕の専用のためのビットは、内筒23の外周のみに設けられていても構わない。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、地盤2中を推進自在な外殻9等の殻体を有し、前記殻体の推進方向前面側にカッタヘッド10を、シールド軸心CL1を中心として回転駆動自在な形で設け、前記カッタヘッド10の掘削面10gを、該掘削面10gの外周側から中心部に向かって窪むように形成し、前記掘削面10gにビット11を複数装着し、前記殻体に内筒23等の破砕コアを、前記カッタヘッド10の中心に突出させる形で設け、前記カッタヘッド10と前記破砕コアの間に解体物移送空隙26を筒状に設け、前記破砕コアの外周に破砕突起25等の鉄筋破砕ビットを、前記解体物移送空隙26に向けた形で設けて構成したので、既設管の解体に際しては、カッタヘッド10の回転駆動によって複数のビット11に既設管を圧壊させる形で解体するが、この際、解体途上の既設管の躯体片や鉄筋等は、カッタヘッド10の掘削面10gに沿って該掘削面10gの外周側から中心部に向かって移送されて、解体物移送空隙26に進入し、該解体物移送空隙26において破砕コアの鉄筋破砕ビットにより破砕処理されることが出来る。従って、本発明によるシールド装置7等の拡大シールド装置を用いれば、解体すべき既設管の躯体が鉄筋コンクリートであった場合にも、該既設管の躯体内部の鉄筋は、確実に解体物移送空隙26に移送されて破砕処理されるので、該躯体内部の鉄筋がその靭性を介して曲がって内側(シールド軸心側)或いは外側(地山側)に逸れて、シールド推進動作に障害を齊したり、殻体と地山の間で絡み合ってしまう危険性がない。即ち、本発明によれば、鉄筋を確実に破砕しながら既設管の解体撤去を行うことが出来る。よって、老朽化したり、或いは機能不足に陥った既設管を取り囲むように拡大シールド装置を配置させて、該既設管の解体撤去を行いながら、殻体内部の作業空間を利用して新設管の構築作業を行う形で、管渠の解体及び拡大敷設替えを行う作業を、地表面の構造物に影響を与えることなく、地盤2中において円滑に進行させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による拡大シールド装置の一実施例を用いた既設管の拡大敷設替え作業を示す断側面図である。
【図2】図1に示す拡大シールド装置の拡大図である。
【図3】図2に示す拡大シールド装置を前面側から見た図であり、図1のIII、III矢視図である。
【図4】図2に示す拡大シールド装置を背面側から見た一部破断図であり、図1のIV、IV矢視図である。
【図5】本発明による拡大シールド装置を用いた既設管の解体状況を示す一部拡大側面図である。
【図6】本発明による拡大シールド装置の別の実施例を示すモデル図である。
【符号の説明】
2……地盤
3……既設管(老朽管)
6……仮設管(鉄管)
7……拡大シールド装置(シールド装置)
9……殻体(外殻)
10……カッタヘッド
10g……掘削面
10d……部位(案内部)
101……鉄筋破砕ビット(鋸刃)
23……破砕コア(内筒)
25……鉄筋破砕ビット(破砕突起)
26……解体物移送空隙
21……姿勢調整手段(推進ジャッキ)
29……姿勢調整手段(姿勢制御装置)
28……位置検出手段(センサ)
CL1……シールド軸心
D1……径
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄筋コンクリート製の老朽化した既設管を新設管に拡大敷設替えする際に用いるに好適な、拡大シールド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、下水道等において、老朽化したり、或いは機能不足に陥った既設管を改修、即ちこれを新設管に更新する際には、地上から土留め用杭(シートパイル)を用いて撤去、新設作業を行う開削工法が知られている。しかし、開削工法は公知のように道路事情、周辺環境を悪化させる。そこで、地上環境に極力影響を与えないですむ方法として、既設管より一回り大きな断面のシールド機を該既設管の周囲を取り囲む形で推進させて、既設管の解体撤去を行いながら、新設管に拡大敷設替えするシールド工法が提案されている。例えば、特公平4−19358号公報では、シールド掘削機の掘削刃によって、既設トンネルのセグメントを切削すると同時に、前記既設トンネルより大径のトンネルを掘削すること及び、シールド掘削機のカッタ本体に、既設トンネルのセグメントを切削する切削刃と前記既設トンネルより大径のトンネルを掘削する掘削刃を並設してなる拡大シールド工法を開発している。また、特開平1−290894号公報では、既設暗渠の敷設替え工法において、鉄筋切断用カッタを有する支持装置と、掘進機のカッタフェイスにカッタビット、ディスクカッタ及びゲージカッタを設けて、上記カッタビットに土砂の掘削を行わせ、ディスクカッタ及びゲージカッタに鉄筋及びコンクリートの破砕を行わせるようにした例が示されている。こうしたシールド工法では、シールド機の前面に取り付けたカッタディスクの回転動作によって、既設管の躯体を圧壊する形でその解体を行う手法が用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、こうしたカッタディスクを用いた手法では、コンクリートや石、陶管、レンガ等のような固いものしか圧壊出来ない、という不都合がある。即ち、既設管の躯体が鉄筋コンクリートであった場合には、ここにディスクカッタを回転させながら当てると、該躯体内部の鉄筋が、その靭性を介して曲がって、内側(シールド軸心側)或いは外側(地山側)に逸れる形で、なかなか切断されない。すると、鉄筋が内側に逸れた場合には、シールド機の隙間から回転機構等に噛み込まれて、該シールド機の推進動作を阻害する危険性があり、一方、外側に逸れた鉄筋はシールド機の外殻と地山の間で絡み合ってしまう。そして、このように一旦、内側或いは外側に逸れた鉄筋の切断は非常に煩雑である。従って、こうした既設管の拡大敷設替えのためのシールド機において、鉄筋の切断を如何にして行うべきかは、解決すべき大命題であった。そこで本発明は、上記事情に鑑み、鉄筋を確実に破砕しながら既設管の解体撤去を行うことが出来る、拡大シールド装置を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、地盤(2)中を推進自在な殻体(9)を有し、前記殻体(9)の推進方向前面側にカッタヘッド(10)を、シールド軸心(CL1)を中心として回転駆動自在な形で設け、前記カッタヘッド(10)の掘削面(10g)を、該掘削面(10g)の外周側から中心部に向かって窪むように形成し、前記掘削面(10g)にビット(11)を複数装着し、前記殻体(9)に破砕コア(23)を、前記カッタヘッド(10)の中心に突出させる形で設け、前記カッタヘッド(10)と前記破砕コア(23)の間に解体物移送空隙(26)を筒状に設け、前記破砕コア(23)の外周に鉄筋破砕ビット(25)を、前記解体物移送空隙(26)に向けた形で設けて、構成される。なお、( )内の番号等は、図面における対応する要素を示す、便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。以下の作用の欄についても同様である。
【0005】
【作用】上記した構成により、本発明は、カッタヘッド(10)の回転駆動によって複数のビット(11)に既設管(3)を圧壊させる形で解体するが、この際、解体途上の既設管(3)の躯体片(31’)や鉄筋(32)等は、カッタヘッド(10)の掘削面(10g)に沿って該掘削面(10g)の外周側から中心部に向かって移送されて、解体物移送空隙(26)に進入し、該解体物移送空隙(26)において破砕コア(23)の鉄筋破砕ビット(25)により破砕処理されるように作用する。
【0006】
【実施例】図1は本発明による拡大シールド装置の一実施例を用いた既設管の拡大敷設替え作業を示す断側面図、図2は図1に示す拡大シールド装置の拡大図、図3は図2に示す拡大シールド装置を前面側から見た図であり、図1のIII、III矢視図、図4は図2に示す拡大シールド装置を背面側から見た一部破断図であり、図1のIV、IV矢視図、図5は本発明による拡大シールド装置を用いた既設管の解体状況を示す一部拡大側面図、図6は本発明による拡大シールド装置の別の実施例を示すモデル図である。
【0007】拡大敷設替え作業を行っている下水道1には、図1左部に示すように、解体中の既設管である老朽管3と、図1右部に示すように、敷設中の新設管5が、地面2aからそれぞれ所定土被りをなす位置の地盤2中に埋設された形で配設されており、また老朽管3と新設管5の内部には、その内部に図1矢印A方向側からB方向側に向かう下水の流路FLが形成された鉄管6が、図1R>1左側のマンホール2sと右側のマンホール2sを接続する形で、該老朽管3から新設管5への拡大敷設替え作業中の仮設管としてここに設けられている。老朽管3と新設管5の間には、該老朽管3を解体撤去して新設管5を構築するための拡大シールド装置として、シールド装置7が設けられており、シールド装置7は、図1矢印B方向側から矢印A方向側に向けて老朽管3を解体しながら、該シールド装置7に後続させるように新設管5を構築する形で、図1矢印A方向側に向けて地盤2中を推進している。
【0008】老朽管3は、図3二点鎖線で示すように、その断面が門型に形成されたコンクリート製の躯体31を有しており、躯体31の内部には鉄筋32が、該老朽管3の管軸方向及び周方向に沿って複数埋設配筋されている。また、解体作業中の老朽管3の内部には、図1に示すように、モルタル等からなる充填材33が、先に述べたように該老朽管3の内部に仮設された鉄管6の外周との間の間隙を全て充填された形で、環状に設けられており、さらに、老朽管3の図1左側のマンホール2sとの接続箇所には、バルクヘッド35が、充填材33の端部を閉塞した形で側蓋状に設けられている。そして、老朽管3は、シールド装置7によって矢印B方向側から矢印A方向側に向けて解体されつつある形で、その後端3bが、シールド装置7の前面と対向する形になっている。
【0009】一方、新設管5は、図1又は図2に示すように、シールド装置7の外殻9の内径に対応した外径の円環状に形成されており、新設管5は、例えば鉄筋コンクリート、或いはスチール等からなるセグメント51を、該セグメント51を構成している各々のセグメントピースを1リングの幅L1をなす形で円環状にジョイントして、これを地盤2中に埋設定着させた形で形成されている。即ち、新設管5は、シールド装置7が老朽管3の解体と同時に該老朽管3周囲の地盤2を円筒状に拡大掘削して形成した拡大トンネル空間4に建て込み構築されており、従って、新設管5の前端5aを形成しているセグメント51は、シールド装置7の外殻9内に、1乃至2リング分入り込み配置した形になっている。
【0010】そして、本発明による拡大シールド装置であるシールド装置7は、図1に示すように、掘削チャンバ10cに泥土40を供給しながら、未だ解体されていない老朽管3とその周囲の切羽2b及び該老朽管3内の充填材33を掘削する形で推進し、該掘削によって生じる掘削ズリ41を後方側である矢印B方向側に回収排出するものであり、シールド装置7は、図2に示すように、解体すべき老朽管3の外径より大きな所定の外径D1をなす形で略円筒形に形成された殻体である外殻9を有している。シールド装置7は、前記老朽管3のうち、既に撤去更新された部分を除く矢印B方向側の後端3b付近において、そのカッタヘッド10の外周が前記鉄管6の外方を包囲し、該鉄管6を外殻9の内部に貫通させた形で、該外殻9が地盤2中を推進するように配設されており、また、先に述べたように外殻9内に入り込み配置させた新設管5の外周面との間隙は、ワイヤブラシ式のテールシール91によってシールされた形になっている。
【0011】外殻9の矢印A方向側に示す推進方向前面側には、図2に示すように、前記鉄管6を包囲するように、即ち矢印A、B方向に貫通させた形で真中穴開き円盤状に形成されて、外殻9と同様に老朽管3より大径に形成されたカッタヘッド10が、該カッタヘッド10に接続された油圧モータ10aや該鉄管6に嵌合された大口径ベアリング10fを介して、シールド軸心CL1を回転中心にして回転駆動自在な形で設けられており、カッタヘッド10の矢印A方向側に示す前面部分には、掘削面10gが、該掘削面10gの外周側から中心部に向かって窪むように形成されている。掘削面10gは、その外側から内側にかけてすり鉢状に陥没するよう傾斜した形のカッタホイール10bによって形成されており、カッタホイール10bは、カッタヘッド10の回転動作によって鉄管6の周りを図2紙面と交差方向(即ち図3矢印C、D方向)に回転自在な形になっている。掘削面10gを形成しているカッタホイール10bには複数のビット11が装着されており、複数のビット11は、図3R>3に示すように、カッタホイール10bの外周から中心に向けて(図3矢印E、F方向に沿って)2乃至3ヶづつ並ぶものが、回転方向である矢印C、D方向に沿って何列かをなし、且つその回転によって解体すべき老朽管3の図3二点鎖線で示す端部断面形状を覆う形になるよう、配置装着されている。また、カッタホイール10bには、図2に示すように、その最内方部分が鉄管6の外周に沿って若干後方側(矢印B方向側)に向けて褶曲する形で案内部10dが形成されており、案内部10dには鋸刃101が、図2矢印A、B方向に略沿って且つ図2R>2紙面と交差方向に複数並ぶ形で、鉄筋破砕ビットとして配設されている。
【0012】またカッタヘッド10内には、掘削チャンバ10cが、前記鉄管6を中心部に挿嵌させてその周囲に配置する形で形成されており、さらに、カッタヘッド10には掘削チャンバ10cの後側に配置する形で土砂シール12が、掘削チャンバ10c内外をシールする形で設けられている。土砂シール12の後方側には、図2に示すように、掘削チャンバ10cに泥土40を送給するための送泥管13が、前記図1右側のマンホール2s位置まで延長接続された形で設けられており、送泥管13には吐出口13aが、掘削チャンバ10cの上部で開口する形で設けられている。また、シールド装置7には、そのカッタヘッド10の前記案内部10dを介して掘削チャンバ10cに取り込まれた掘削ズリ41を、該シールド装置7より後方側に排出するための排泥管15が、図1右側に示すマンホール2s位置まで延長接続された形で、配設されており、排泥管15には、取込口15aが、掘削チャンバ10cの下部で開口する形で設けられている。また、排泥管15の管路中にはクラッシャー16が、該排泥管15の取込口15aから取り込まれた掘削ズリ41中のコンクリートガラ、即ち躯体片31’や鉄筋32等を細かく粉砕して、該排泥管15中を圧送し得るように設けられており、即ち、この際の掘削ズリ41とは地盤2を掘削したことと、鉄筋32を含めた躯体31及びその内部に充填された充填材33の切断によって形成されている。
【0013】また、外殻9内のガーダー部92の後側である矢印B方向側には、図2又は図4に示すように、新設管5のセグメント51を形成するための各セグメントピースを建て込むエレクタ17が、設けられており、エレクタ17は、図4に示すように、外殻9の内周との間に所定の間隙L2をなす形で板輪状に形成されたガイドリング19の回転動作によって、矢印C、D方向に示すシールド内周方向に沿って移動自在になっている。即ち、外殻9の内周には、図4に示すように、いくつかのガイドローラ20が、上記ガイドリング19と外殻9の間隙L2に対応した長さの支持杆20aの先端において、図4矢印M、N方向に回転自在な形で装着されており、ガイドリング19は、該いくつかのガイドローラ20によって、外殻9の内方側においてシールド内周方向に沿って回転駆動され得る形に保持されている。ガイドリング19には、前記エレクタ17のア−ム17aが、該ガイドリング19を介してシールド内周方向(矢印C、D方向)に回転自在で且つ放射方向である矢印E、F方向に突出後退駆動自在な形で装着されており、ア−ム17aにはセグメント把持部17bが、前記セグメントピースを把持解放自在な形で設けられている。
【0014】また、外殻9の後部には、図2に示すように、シールド装置7全体をその推進方向である矢印A方向側に向けて地盤2中に推進させ得る推進ジャッキ21が、図4に示すように、外殻9の内周に沿って複数固定装着されており、各推進ジャッキ21には図2に示すように、ラム21aが、先に述べたように既に出来ていて外殻9の内側に入り込み配置している新設管5の前端5aに推進反力を求めて、矢印A、B方向に突出後退駆動自在な形で設けられている。なお、推進ジャッキ21の後側である各ラム21aの先端側にはスプレッダ22がそれぞれ装着されており、従って、複数の推進ジャッキ21の推進力は、外殻9の内周に沿って並ぶ複数のスプレッダ22によって、新設管5の前端5aの全域に均等に分配され得るようになっている。
【0015】さらにシールド装置7の外殻9内には、図2R>2に示すように、前記鉄管6の外径より若干大きな内径をなす円筒形に形成された破砕コアである内筒23が、該鉄管6の外側を包囲する形で(即ちその内部に鉄管6を挿通させた形で)、前記カッタヘッド10の中心に突出するように設けられており、実施例における内筒23は、該カッタヘッド10の回転動作に連動して、ゆっくりとシールド周方向(図3矢印C、D方向)に回転駆動し得るようになっている。内筒23の内周面の図2矢印A方向側に示す前端付近には、該内筒23と鉄管6との間をシールし得る形で環状に形成されたパッキン24が嵌着されており、パッキン24は、内筒23が鉄管6に対して回転自在な形でここに設けられている。
【0016】内筒23の外周には、耐摩耗性硬質材料からなる破砕突起25が、鉄筋破砕ビットとして溶着されており、破砕突起25は、図2に示すように、前記カッタヘッド10の案内部10dに設けられた鋸刃101と、有る程度の間隙をもって対向し合う形になっている。当該間隙によって、シールド装置7には、カッタヘッド10と内筒23の間に解体物移送空隙26が円筒状に形成された形になっており、上述した破砕突起25は、該解体物移送空隙26に向いた形で内筒23に設けられている。また、上述した鋸刃101は、カッタヘッド10における解体物移送空隙26と対向する部位である案内部10dに設けられた形になっており、従って、老朽管3の躯体片31’や鉄筋32、或いは充填材33、及び地盤2等による掘削ズリ41は、該解体物移送空隙26を介して、前記掘削チャンバ10c内に取り込むことが出来るようになっている。
【0017】また、内筒16の内周側には、図2に示すように、鉄管6の外周面に対して回転自在なガイドローラ27Aが、該内筒26の内周方向に沿って複数設けられている。さらに、シールド装置7の後部に位置するガーダー部92には鋼管挿通部92aが、該鋼管挿通部92aの軸心をシールド装置7の軸心CL1と一致させた形で、矢印A、B方向に貫通するよう形成されており、鋼管挿通部92aには、ガイドローラ27Aと同様のガイドローラ27Bが、鋼管6の外周面に対して回転自在な形で、周方向に複数設けられている。そして、後側のガイドローラ27Bが設けられた鋼管挿通部92aには、該鋼管挿通部92aを形成しているガーダー内面と、鉄管6の外周面との間の間隙Wnを検知し得るセンサ28が、外殻9の鉄管6に対する位置を検出する位置検出手段として、シールド内周方向に沿って複数設けられており、これ等複数のセンサ28は、姿勢制御装置29にそれぞれ接続されている。
【0018】姿勢制御装置29は、複数のセンサ28が検知する間隙Wnの値の各々に対応した駆動量だけ、前記複数の推進ジャッキ21の各々を駆動させる形で、常に該複数の間隙Wnが一致した値に近づくようシールド装置7の姿勢制御を行っており、即ち、姿勢制御装置29と複数の推進ジャッキ21は、複数のセンサ28によって検出された外殻9の鉄管6に対する位置に基づいて、該外殻9の姿勢を調整する形で、シールド装置7における姿勢調整手段を構成している。これによって、シールド装置7は、鋼管6の軸心がシールド軸心CL1に一致した形になるよう該鋼管6を挿通支持した状態で、矢印A方向側に向けて推進動作を行うことが出来るように制御されている。
【0019】下水道1とシールド装置7は、以上のような構成を有しているので、該シールド装置7を用いて老朽管3の改修を行うには、該老朽管3の通水を一旦停止、或いは他のルートに切替えておく等して、ヘドロ処理、管内洗浄、枝管撤去等と、該老朽管3の上方における地面2a部分の陥没対策として路面仮覆工を行う等の事前処理を施すと共に、マンホール2s、2sを接続する形で、鉄管6を仮設する。この際、鉄管6は、所定長さに形成したものをマンホール2sから投入し、これをトンネル軸方向に並べて順次溶接していく形で複数継ぎ足すことによって、老朽管3内に簡単に仮設することが出来る。なお、マンホール2sは、図1破線で示すように拡大して、作業用立坑として利用しても良い。こうして、いままで老朽管3に流れていた下水を、該老朽管3内に仮設した鉄管6内の流路FLに集めて流すと、該鉄管6の外側に位置する老朽管3内の領域は、下水が流れていないドライな状態になる。
【0020】そこで、鉄管6の外側の老朽管3内にモルタル等の低強度硬化性材料からなる充填材33を充填する。即ち、シールド装置7のカッタヘッド10の回転時に、各ビット11が地盤2、老朽管3、充填材33等の、何等かの固い部材を削る形になるように、準備しておく。この状態で、図1右部の破線に示すように、マンホール2sを利用した適宜な発進立坑からシールド装置7を発進させる。この際、シールド装置7は、図1に示すように、その外殻9を、未だ解体撤去されていない老朽管3の後端3bからその後側にかけて、該外殻9が鉄管6の外方を包囲する形で、即ち、内筒23が鉄管6を包囲する形になるよう、配置させる。そして、シールド前部においては、老朽管3の躯体31の解体撤去と該老朽管3の周囲の地盤2の掘削作業を行い(即ち既設管路の拡大)、一方シールド後部では、セグメントピースを建て込む形で、該老朽管3より1回り大きな形の新設管5のセグメント51を1リングづつ構築していく(即ち管路の更新)。
【0021】シールド装置7を推進させるには、まず、複数の推進ジャッキ21の各ラム21aを突出駆動させて、スプレッダ22を介して建て込み構築済みの新設管5の前端5aに外殻9を接続支持させる。なお、シールド装置7の掘進初期には、マンホール2sを利用した立坑に設置した架台に外殻9を支持させる形で、推進を開始させ、該外殻9の前進分だけこれより後方側に新設管5のセグメント51を、地盤2に支持させる形で建て込んでいって、有る程度セグメント51を建て込んだところで、上述したようにシールド装置7を新設管5に支持させる。こうしておいて、送泥管13を介して泥土40を、掘削チャンバ10cに供給し、該掘削チャンバ10cに供給充填した泥土40の土圧によって、地盤2の切羽2bや未だ解体撤去されていない躯体31及び充填材33等を抑えながら、カッタヘッド10を、図3矢印C又はD方向に回転駆動させる。また、この際内筒23もゆっくりと回転駆動させる。すると、カッタヘッド10のカッタホイール10bに装着されている複数のビット11は、図3矢印C又はD方向に回転駆動されながら、推進ジャッキ21を介して矢印A方向側に示す前方側に向けて押圧される。これによって、カッタホイール10bに装着されている複数のビット11は、図2に示すように、その掘削面10gが接している地盤2、老朽管3の後端3b、該老朽管3内の充填材33等に押圧されながら回転する形で、これ等を圧壊破砕する。そして、当該地盤2、老朽管3、充填材33が圧壊した分だけ、シールド装置7は、矢印A方向に推進することが出来る。また、当該シールド装置7の推進動作によって、老朽管3の周囲の地盤2は、径D1をなす該シールド装置7のカッタヘッド10に対応した径に拡大掘削される。即ち、シールド装置7のカッタヘッド10より後方側には、老朽管3による管路の径が拡大した形の拡大トンネル空間4が、径略D1をなす円柱状に形成される。
【0022】ところで、シールド装置7は、その推進動作時に、老朽管3の躯体31中に埋設されている鉄筋32を破砕しながら、該躯体31を圧壊しなければならない。この際、躯体31は、図5に示すように、老朽管3の外側に位置する地盤2と該老朽管3内に充填された充填材33によってその内壁面と外壁面の両側を拘束された形で、回転駆動中のビット11と接触する形になる。そして、カッタヘッド10の掘削面10gは、その外周側から中心部に向かって窪むように形成されているところから、ビット11に接触して破砕された地盤2、躯体31の躯体片31’、充填材33の破砕片は、該掘削面10gの傾斜形状に沿って、該掘削面10gを形成しているカッタホイール10bの中心部に集まる形で、解体物移送空隙26側に案内されてくる。そして、該破断片は掘削ズリ41として、解体物移送空隙26を介して後方側である矢印B方向側即ち掘削チャンバ10c内に送られる。また、躯体31の内部には鉄筋32が、管軸方向及び該管周方向に沿って並んで複数設けられているが、該鉄筋32は、たとえ、ビット11と接触したときにすぐに切断されなくても、カッタホイール10bの傾斜形状によって、内方側に褶曲する形で、カッタヘッド10の中心部側に寄る。即ち地山2側に逃げない。そして、該鉄筋32は、図5に示すように、解体物移送空隙26において、カッタヘッド10の案内部10dに設けられた鋸刃101と、内筒23の破砕突起25によって擦り潰される形で、破砕される。従って、鉄筋32は、切断されずにどこかに逸れてしまうことがなく、確実に破砕された状態で、掘削チャンバ10cに送られる。そこで上述したように、シールド装置7の推進動作を介して老朽管3の解体及び管路の拡大を行ったことによって形成された、掘削チャンバ10c内の掘削ズリ41は、取込口15aを介してクラッシャ16を通過させて、さらに粉砕しながら、排泥管15を介してシールド後方側に搬送し、マンホール2sを介して管外に搬出する。
【0023】こうして、上述したようにシールド装置7を、矢印A方向に向けて所定距離、即ち例えば新設されるセグメント51のリング幅L1と対応する形の推進ジャッキ21のストローク分だけ推進させる。するとこのとき、内筒23は鉄管6に対してゆっくりと回転駆動されており、また、内筒23の先端部には、パッキン24があるので、該内筒23と鉄管6との間に被掘削物が目詰まりすることなく、シールド装置7は円滑に推進する。また、当該シールド推進動作時に、シールド装置7の姿勢制御装置29は、推進動作と同時に、周方向に沿って複数並ぶセンサ28の各々に、鋼管挿通部92aのガーダー内面と鋼管6の外周面との間の間隙Wnをそれぞれ検知させ、該間隙Wnの値の各々に対応した量だけ各推進ジャッキ21を駆動させるように、該複数の推進ジャッキ21を制御駆動する。即ち、シールド装置7は、外殻9の鉄管6に対する位置をセンサ28に検知させ、該検知された結果に基づいて、姿勢制御装置29と推進ジャッキ21によって、該外殻9が鉄管6に対して所定の位置状態をなすように、その姿勢を調整していく。これによって、シールド装置7は、常に、シールド軸心CL1を鋼管6の軸心に一致させた形になるように、その推進時の姿勢が制御される。すると、シールド装置7の各構成要素が鉄管6とせり合って、該鉄管6を変形させてしまう危険性はない。また、シールド装置7は、既にマンホール2s、2sを接続するよう仮設された鉄管6に案内される形で、正確な方向に推進出来る。よって、老朽管3があった周囲の正しい位置に、拡大トンネル空間4が形成されて、ここに新設管5が更新構築され得る。
【0024】即ち上述のように、老朽管3、及びその周囲の地盤2とその内部の充填材33を圧壊しながらシールド装置7の外殻9を距離L1分だけ推進させて、この状態で、推進ジャッキ21を後退駆動させると、該後退した推進ジャッキ21のラム21aに装着されたスプレッダ22と、いままであった新設管5の前端5aとの間には、新たに1リング分のセグメント51を建て込むべき空間が形成される。そこで、該空間に、エレクタ17を用いてセグメント51を建て込む形で、新設管5を構築延長する。なお、エレクタ17は、その中心部に鉄管6を挿通配置させた形のガイドリング19にア−ム17aを介してセグメント把持部17bが装着されている構成なので、鉄管6と干渉することはなく、円滑にセグメント51を建て込み出来る。従って、セグメント51は、いくつかのセグメントピースを、その中心部分に鉄管6を配置させた形でリング状になるように接続していく形で、先にシールド装置7のカッタヘッド10が掘削形成した拡大トンネル空間4の外周部に建て込んでいく。
【0025】このようにして、老朽管3の躯体31を解体撤去しながら、該老朽管3周囲の地盤2を拡大掘削して拡大トンネル空間4を形成し、ここに新設管5を構築していく一連の作業を、所定のサイクルで繰返していく。すると、老朽化した既設管である老朽管3を新設管5に拡大敷設替えするための一連の作業を、鉄管6の内部に形成した流路FLと何等干渉することなく、シールド装置7の外殻9内で行うことが、効率的且つ確実に行われる。よって、鉄管6内を仮の下水道として利用しながら、作業を行うことが出来る。また、当該管路の拡大敷設替え工事中に、老朽管3の躯体31が鉄筋コンクリート製であっても、その内部の鉄筋32が、先に述べたように確実に破砕処理されて、シールド推進動作を阻害することがないので、該老朽管3の拡大敷設替え工事は常に円滑に進行することになる。
【0026】なお、上述した実施例においては、シールド装置7の外殻9が老朽管3の径より大きな径D1に形成されている例を述べたが、本発明による拡大シールド装置は、そのカッタヘッドの径が解体すべき既設管より大きな径に形成されていれば良い。従って、図6に示すように、外殻9の径自体は、老朽管3の径より小さく形成されていても構わない。なお、図6に示すような場合においては、当然、老朽管3に替わって建て込まれる新設管の構築方法は、上述した実施例とは異なる他の手法が適用される。また、実施例においては、外殻9等の殻体が、円筒形に形成されているシールド装置7の例を述べたが、殻体は、シールド掘進動作のために地盤2中を推進することが出来れば、必ずしも円筒形である必要はなく、例えば断面が長円形の筒状に形成されていても構わない。さらに、実施例においては、老朽管3の解体後にセグメント51による新設管5を拡大トンネル空間4に建て込む例を述べたが、新設管の構成は任意である。
【0027】また、実施例においては、老朽管3の解体敷設替えのために、鉄管6を仮設しておき、該鉄管6内に形成した流路FLを供用しながら、既設管の拡大敷設替え作業を行う例を述べた。しかし、解体すべき既設管が既に使用されていないものであったり、或いは、他のバイパス管を仮設してこれを利用しながらの工事が可能な場合等には、必ずしも鉄管6は必要ない。従って、こうした場合には、内筒23等の破砕コアは、鉄管6等の仮設管を包囲し得るように筒状になっている必要はなく、柱状或いは塊状等の任意の形状の破砕コアが用いられて差し支えない。さらに、こうした内筒23等の破砕コアは、必ずしも実施例で述べたようにシールド軸心CL1を中心にして回転駆動自在になっていなくても構わない。なお、このように、回転しない破砕コアを鉄管6等の仮設管を包囲するように使用する場合でも、該破砕コアが仮設管に対して摺動出来れば、何等問題は生じない。また、内筒23が回転駆動自在である場合においても、その回転方向及び該回転駆動のための駆動源等は任意である。
【0028】さらにまた、実施例においては、外殻9の鉄管挿通部92aを利用して、該鉄管挿通部92aを形成している外殻9の内面部分と鉄管6の外周面との間隙Wnを検知し得るセンサ28を周方向に沿って複数並べて設けておき、これを位置検出手段として用いて、姿勢制御装置29と推進ジャッキ21からなる姿勢調整手段によって、外殻9の鉄管6に対する姿勢を調整しながら、シールド推進を行った例を述べたが、こうした、位置検出手段及び姿勢調整手段の構成及び、その利用方法、装着配設箇所等の選択は任意である。また、こうした、位置検出手段及び姿勢調整手段がない、拡大シールド装置であっても、鉄筋32等の破砕は可能である。また、実施例においては、老朽管3の躯体31中に埋設されている鉄筋32の破砕のための鉄筋破砕ビットとして、内筒23の外周に破砕突起25を、また、カッタヘッド10の案内部10dに鋸刃101を設けた例を述べた。しかし、カッタヘッド10は、本来、躯体31や地盤2、或いは充填材33等の破砕に適したビット11を複数装着して用いるものであるところから、こうした鉄筋破砕の専用のためのビットは、内筒23の外周のみに設けられていても構わない。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、地盤2中を推進自在な外殻9等の殻体を有し、前記殻体の推進方向前面側にカッタヘッド10を、シールド軸心CL1を中心として回転駆動自在な形で設け、前記カッタヘッド10の掘削面10gを、該掘削面10gの外周側から中心部に向かって窪むように形成し、前記掘削面10gにビット11を複数装着し、前記殻体に内筒23等の破砕コアを、前記カッタヘッド10の中心に突出させる形で設け、前記カッタヘッド10と前記破砕コアの間に解体物移送空隙26を筒状に設け、前記破砕コアの外周に破砕突起25等の鉄筋破砕ビットを、前記解体物移送空隙26に向けた形で設けて構成したので、既設管の解体に際しては、カッタヘッド10の回転駆動によって複数のビット11に既設管を圧壊させる形で解体するが、この際、解体途上の既設管の躯体片や鉄筋等は、カッタヘッド10の掘削面10gに沿って該掘削面10gの外周側から中心部に向かって移送されて、解体物移送空隙26に進入し、該解体物移送空隙26において破砕コアの鉄筋破砕ビットにより破砕処理されることが出来る。従って、本発明によるシールド装置7等の拡大シールド装置を用いれば、解体すべき既設管の躯体が鉄筋コンクリートであった場合にも、該既設管の躯体内部の鉄筋は、確実に解体物移送空隙26に移送されて破砕処理されるので、該躯体内部の鉄筋がその靭性を介して曲がって内側(シールド軸心側)或いは外側(地山側)に逸れて、シールド推進動作に障害を齊したり、殻体と地山の間で絡み合ってしまう危険性がない。即ち、本発明によれば、鉄筋を確実に破砕しながら既設管の解体撤去を行うことが出来る。よって、老朽化したり、或いは機能不足に陥った既設管を取り囲むように拡大シールド装置を配置させて、該既設管の解体撤去を行いながら、殻体内部の作業空間を利用して新設管の構築作業を行う形で、管渠の解体及び拡大敷設替えを行う作業を、地表面の構造物に影響を与えることなく、地盤2中において円滑に進行させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による拡大シールド装置の一実施例を用いた既設管の拡大敷設替え作業を示す断側面図である。
【図2】図1に示す拡大シールド装置の拡大図である。
【図3】図2に示す拡大シールド装置を前面側から見た図であり、図1のIII、III矢視図である。
【図4】図2に示す拡大シールド装置を背面側から見た一部破断図であり、図1のIV、IV矢視図である。
【図5】本発明による拡大シールド装置を用いた既設管の解体状況を示す一部拡大側面図である。
【図6】本発明による拡大シールド装置の別の実施例を示すモデル図である。
【符号の説明】
2……地盤
3……既設管(老朽管)
6……仮設管(鉄管)
7……拡大シールド装置(シールド装置)
9……殻体(外殻)
10……カッタヘッド
10g……掘削面
10d……部位(案内部)
101……鉄筋破砕ビット(鋸刃)
23……破砕コア(内筒)
25……鉄筋破砕ビット(破砕突起)
26……解体物移送空隙
21……姿勢調整手段(推進ジャッキ)
29……姿勢調整手段(姿勢制御装置)
28……位置検出手段(センサ)
CL1……シールド軸心
D1……径
【特許請求の範囲】
【請求項1】地盤中を推進自在な殻体を有し、前記殻体の推進方向前面側にカッタヘッドを、シールド軸心を中心として回転駆動自在な形で設け、前記カッタヘッドの掘削面を、該掘削面の外周側から中心部に向かって窪むように形成し、前記掘削面にビットを複数装着し、前記殻体に破砕コアを、前記カッタヘッドの中心に突出させる形で設け、前記カッタヘッドと前記破砕コアの間に解体物移送空隙を筒状に設け、前記破砕コアの外周に鉄筋破砕ビットを、前記解体物移送空隙に向けた形で設けて構成した、拡大シールド装置。
【請求項1】地盤中を推進自在な殻体を有し、前記殻体の推進方向前面側にカッタヘッドを、シールド軸心を中心として回転駆動自在な形で設け、前記カッタヘッドの掘削面を、該掘削面の外周側から中心部に向かって窪むように形成し、前記掘削面にビットを複数装着し、前記殻体に破砕コアを、前記カッタヘッドの中心に突出させる形で設け、前記カッタヘッドと前記破砕コアの間に解体物移送空隙を筒状に設け、前記破砕コアの外周に鉄筋破砕ビットを、前記解体物移送空隙に向けた形で設けて構成した、拡大シールド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開平7−259485
【公開日】平成7年(1995)10月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−76345
【出願日】平成6年(1994)3月24日
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(000140982)株式会社間組 (11)
【出願人】(000174943)三井建設株式会社 (346)
【公開日】平成7年(1995)10月9日
【国際特許分類】
【出願日】平成6年(1994)3月24日
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(000140982)株式会社間組 (11)
【出願人】(000174943)三井建設株式会社 (346)
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