説明

拡張されたリード線セットからの解剖学的に方向付けられたECGデータを用いる、原因冠状動脈の識別

ECG監視システムは、リード線信号におけるST上昇の証拠に関して、体の異なる生体構造位置に関連付けられるリード線のECG信号を解析する。リード線のST上昇及び下降測定は、リード線信号のソースである生体構造ポイントに対して組織化されるグラフィック表示においてプロットされる。ポーラーグラフィック表示フォーマットにおいて、各リード線信号は、複数のリード線信号間のコンフリクトを防止するため、自身の解剖学的に方向付けられた軸上にプロットされる。線形又は直線グラフィック表示フォーマットにおいて、各リード線信号は、表示の自身の行又は列上にプロットされる。欠落リード線信号の値は、他のリード線からの平均化された又は補間された値で充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年1月20日に出願され、2008年12月8日出願のIB2008/055149号の係属中の米国特許出願の一部継続出願である。この出願は、2007年12月18日に出願された米国仮出願第61/014613号の利益を請求する。
【0002】
本発明は、心電図(ECG)監視システムに関し、より詳細には、解剖学的に方向付けられた表示を用いて、急性心筋梗塞を引き起こす原因の冠状動脈を自動的に特定するリアルタイムST監視システムに関する。
【背景技術】
【0003】
心電図検査(ECG)は、人間の体の表面で心臓により生み出される電圧から得られる記録を生み出すために広く使われている。そのように生成される記録は、性質上グラフィックであり、結果として生じる情報を患者の心臓状態に関連付けるには、専門の解釈及び解析を必要とする。歴史的に、斯かる記録は、被験者から記録デバイスへと延在する有線接続からの可視グラフィック記録として直接生成されてきた。コンピュータ技術の進化と共に、後の複製及び解析のため、斯かる記録をデジタル的に格納された情報の形で生成することが可能になった。
【0004】
ECG記録が重要である救急臨床用途は、一般に心臓まひと呼ばれる急性冠状動脈疾患の徴候の診断である。胸部の痛み又は不快及び息切れといった急性冠状動脈症候群(ACS)を持つ患者はしばしば、心電図で診断される。ここで、ECG波形のSTセグメントの上昇又は下降が精確に解析される。しばしば発生する1つのシナリオは、病院の救急部門又は胸部痛みセンターへの入場時の患者のECGのST上昇が、最終的なST上昇心筋梗塞症(STEMI)診断に関する診断基準を満たさないというものである。斯かる場合、特に急性冠状動脈症候群(ACS)の履歴を持つ患者の場合、患者はしばしば、ST変動の進行又は後退を観測するため、STセグメント監視に関するECGモニタに接続される。患者の状態が悪化する場合、患者に関して責任ある臨床介護者は、介入が行われる前に、危険にさらされた冠状動脈及び心筋の領域を知る必要がある。
【0005】
別のシナリオは、ACS患者がSTEMIのECG表示を用いて最終的に診断され、介入的な再灌流治療を受けるというものである。心筋再灌流を復元する証明された治療法は、梗塞部関連の動脈を開くために、血栓溶解剤又は経皮的冠動脈介入を含む。冠状動脈バイパス移植(CABG)は、より重篤な閉塞を持つACS患者にしばしば適用される別の潅流療法である。介入的な手順の後及び血栓溶解治療の間、患者は通常、患者状態の進行又は後退の観測のため、回復室、集中治療室(ICU)又は心臓ケアユニット(CCU)において、ST監視及び観測のためのECGモニタに接続される。以前にクリアされた冠状動脈が再び凝結する場合、閉塞が異なる動脈において発生する場合、又は患者の冠状動脈潅流が回復されるときST偏差が正常に戻ることになる場合、冠状動脈閉塞の新しい症状が発生する場合がある。心筋の救出に関しては最初の60分が特に重要であるので、心筋に対する更なる損傷を防止するため臨床従事者が早期に再発症状を捉えることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらのシナリオにおいて一般に実行されるST監視には制約がある。ST上昇又はST下降を持つ症状は、限定された数の電極を用いることで、しばしば見逃される。病院は、ST監視において使用されるリード線可用性及びリード線システムに関して大きく変化するプロトコルを持つ。いくつかの病院は、1チャネル(3ワイヤ)ECGモニタを使用し、いくつかの病院は、3チャネル(5ワイヤ)システムを用いる。一方、他の病院は、5チャネル(6ワイヤ)システムを用いるか、又は5若しくは6チャネルシステムから得られるか、若しくは8チャネルの直接的な記録から計算される12リード線を用いる。STモニタの設計はしばしば、ECGリード線と関連付けられる心筋領域又は冠状動脈との間の関係を理解するために適切なトレーニングを受けていない一般的な臨床介護者にとっては直観的でない。ベッドサイドモニタに表示されるSTセグメントの数値変化又は波形は、各リード線と危険にさらされた心筋領域との間の対応する関係を示すものではない。従って、改良されたECGモニタ及びプロトコルが、これらの状態におけるケアの標準を改善する。
【0007】
これらの状態における改良されたケアを提供するECG監視システムは、2007年8月7日に出願された「AUTOMATED IDENTIFICATION OF CULPRIT CORONARY ARTERY」(Zhouその他)というタイトルの米国仮出願番号60/954、367において説明される。この特許出願において説明されるECGモニタは、体の異なる領域に関連付けられるリード線により生成されるECG波形のSTセグメントを解析する。異なるグループのリード線により示されるST上昇及び下降に基づき、システムは、閉塞、即ち「原因となる」冠状動脈のありそうな位置である冠状動脈を臨床医に対して特定する。システムは、標準的なECGリード線配置及び複数のECG波形表示を用いてこれを行う。斯かる表示が、原因の動脈の指示を含む最終的な診断のために関連する診断情報の全てを提供するが、ECG波形の解釈における重要な技術が、システムにより示される原因の動脈にECGデータを関連付けるためまだ必要である。診断指示にECGデータを関連付ける明白でグラフィカルな態様を持つことが望ましい。その結果、臨床医は、自分自身のより詳細な波形解析を実行する前に診断の決定の有効性を直ちに認めることができる。最終的な診断に対する時間が短いほど、その心筋潅流は、よりすぐに回復されることができる。その結果、心臓に対する損傷は少なく、心臓まひ又は死に関するリスクが低くなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の原理によれば、複数のリード線からECG波形を取得し、存在するSTセグメントの上昇及び下降を解析するECG監視システムが、説明される。このSTセグメント情報は、患者の生体構造に対して情報を表示するグラフィック表示において示される。図示された実施形態において、グラフィック表示は、情報を生成したリード線位置に対して、垂直(正面)及び水平(横)方向におけるSTセグメント情報を示す。解剖学的に方向付けられた表示は、原因の冠状動脈の指示及び梗塞部又は損傷を持つ心筋領域のサイズを一目で示す。拡張されたリード線と共に用いられるとき、グラフィック表示において他のリード線との衝突又は曖昧性を防止するよう、拡張されたリード線情報が視覚的に配置される。解剖学的に方向付けられた表示は、ベースライン状態との比較において、監視の間リアルタイムに生成される、又は状態の進行を示す時間経過された表示において生成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】心臓周りを包む冠状動脈を示す心臓の生体構造を説明する図である。
【図2】立っている(垂直な)個人に対するECG肢リード線の位置を説明する図である。
【図3a】ECG検査に関する標準的な胸部電極配置を示す図である。
【図3b】ECG検査に関する標準的な胸部電極配置を示す図である。
【図4】本発明と共に用いるのに適したECG監視システムの主要なサブシステムのブロック図である。
【図5】ECGシステムのフロントエンドのブロック図である。
【図6】典型的なECGモニタの処理モジュールのブロック図である。
【図7】鼓動及びそのリズムに関する情報を提供するためのECGトレースデータの処理を示す図である。
【図8】ECGトレースの異なるパラメータの測定を示す図である。
【図9a】正常なECG信号のセグメントを示す図である。
【図9b】本発明の原理による原因の冠状動脈の識別に関する解剖学的に方向付けられたグラフィック表示を生成するために用いられることができる、上昇及び下降したSTセグメントを持つECGトレースを示す図である。
【図9c】本発明の原理による原因の冠状動脈の識別に関する解剖学的に方向付けられたグラフィック表示を生成するために用いられることができる、上昇及び下降したSTセグメントを持つECGトレースを示す図である。
【図9d】本発明の原理による原因の冠状動脈の識別に関する解剖学的に方向付けられたグラフィック表示を生成するために用いられることができる、上昇及び下降したSTセグメントを持つECGトレースを示す図である。
【図9e】本発明の原理による原因の冠状動脈の識別に関する解剖学的に方向付けられたグラフィック表示を生成するために用いられることができる、上昇及び下降したSTセグメントを持つECGトレースを示す図である。
【図10】本発明の原理による原因の冠状動脈の識別に関する解剖学的に方向付けられたグラフィック表示を示す図である。
【図11】第2の解剖学的に方向付けられたグラフィック表示と、上記表示を生成するために使用されるSTセグメント値とを示す図である。
【図12】本発明の原理による解剖学的に方向付けられたグラフィック表示を用いて、原因の冠状動脈の識別を示す図である。
【図13】左前下行枝(LAD)冠状動脈の閉塞を示す本発明の解剖学的に方向付けられたグラフィック表示の例である。
【図14】左回旋枝(LCx)冠状動脈の閉塞を示す本発明の解剖学的に方向付けられたグラフィック表示の例である。
【図15】右冠状動脈(RCA)の閉塞を示す本発明の解剖学的に方向付けられたグラフィック表示の例である。
【図16】左回旋枝及び左前下行枝冠状動脈の閉塞を示す本発明の解剖学的に方向付けられたグラフィック表示の例である。
【図17】現在のST上昇及び下降特性がベースライン特性と比較される本発明の解剖学的に方向付けられたグラフィック表示を示す図である。
【図18】ST上昇及び下降特性の時間にわたる傾向が示される本発明の解剖学的に方向付けられたグラフィック表示を示す図である。
【図19】拡張されたリード線のセットの相対的なリード線位置を示す胴の断面図である。
【図20a】図の他のリード線と衝突することを回避するよう、拡張されたリード線がポーラー図上に配置された本発明の解剖学的に方向付けられたポーラー表示を示す図である。
【図20b】図20aの場合に関する正面の軸ポーラー図である。
【図21a】図の他のリード線と衝突することを回避するよう、拡張されたリード線がポーラー図上に配置された本発明の解剖学的に方向付けられたポーラー表示を示す図である。
【図21b】図21aの場合に関する正面の軸ポーラー図である。
【図22a】胸部リード線の水平軸に関する線形グラフィック表示を示す図である。
【図22b】失われたデータを充填する補間を用いて、棒グラフの形で胸部リード線に関する線形グラフィック表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、閉塞すると、心臓に対して重要な損傷を引き起こす冠状動脈の位置を示す心臓の図である。図1において、心臓10は、半透明の球として描かれる。その結果、心臓の前方及び後方表面上の冠状動脈の蛇行経路が容易に視覚化されることができる。右冠状動脈(RCA)は、大動脈から心臓10の右側に沿って下降しているのが見える。また、左主(LM)冠状動脈が、心臓の左側に沿って大動脈から下降している。これは、すぐに分岐し、心臓の前面(前方)表面上の左前下行(LAD)動脈及び心臓の背部(後方)に巻きつく左回旋(LCx)動脈を形成する。3つの主要な血管はすべて、心筋に対して新しい血液の一定の供給を提供するため、特徴的な蛇行経路において心臓10に究極的に巻きつくことが見られる。冠状動脈の1つの閉塞が原因で患者が胸部の痛みを経験しているとき、閉塞される動脈の分岐を迅速に特定することが重要である。その結果、心臓に対する損傷を防止するため、介入が迅速に実行されることができる。
【0011】
図2は、典型的なECGシステムの肢リード線と体の生体構造に対するそれらの関係を示す。ECGシステムの肢リード線信号及び他のリード線信号は、体における特定の位置に付けられる特有の電極からの出力を結合することで生成される。米国特許第6,052,615号(Feildその他)は例えば、12リード線ECGシステムに関してリード線信号がどのように開発されたかを示す。図2の説明において、AVRリード線は、体の右腕に関連し、AVLリード線は、左腕に関連し、AVFリード線は、左脚に関連する。図示されるように人が立っているとき、これらの3つのリード線は、ほぼ垂直(横断)平面内にある。本発明の目的のため、リード線信号は、図面において「+」シンボルにより示される公称ベースラインを超えるST上昇に対する極性を持つ。個別の四肢に沿って描画される軸の対向する端部において、リード線信号は、ST上昇に関する負の暗示的意味を持つ。このリード線の方向及び関係は以下、本発明の表示の様々な説明に関連して述べられることになる。
【0012】
図3aは、患者の胴に配置される6つのECG胸部電極V1〜V6の配置を示す。図3bは、患者の背部(後方)へと続く胸部電極V7〜V9を示す。肢電極の場合の様に、個別の心臓筋細胞の脱分極及び再分極により生成される電圧を検出するため、各胸部電極の信号が、1つ又は複数の他の電極の信号と結合して用いられる。12リード線ECGシステムに関して、検出された電圧が、時間変化する電圧の12のセットを生成するため、組み合わせられ、及び処理される。そのように生成されるトレースが、Feildらの文献において説明され、
【表1】

となる。本発明は、従来の12リード線ECGシステムとの使用に適しているだけでなく、13、14、15、16、17若しくは18リード線、又はこれ以上のシステムとの使用に適している。このシステムは、例えば、56及び128リード線の体表面マッピングシステムを含む。3リード線(EASI及びその他)、5及び8リード線システムが、減らされた精度で12リード線を得るために用いられることもできる。これは、従来において既知である。例えば、米国特許第5,377,687号(Evansその他)及び米国特許第6,217,525号(Medemaその他)を参照されたい。要約すると、本発明の実現は、任意の数のリード線及び電極を使用することができる。
【0013】
図3a及び3bにおいて胸部電極位置が、立っている個人に対してほぼ水平平面内にあることが分かる。後述するように、この生体構造の関係も、本発明の例示の実施形態において一役担う。
【0014】
図4は、本発明と共に用いるのに適したECG監視システムをブロック図形式で示す。患者の皮膚に付けるための複数の電極20が提供される。通常、電極は、皮膚につく導電性粘着剤ゲル表面を持つ使い捨ての導体である。各導体は、ECGシステムの電極ワイヤにスナップ又はクリップするスナップ又はクリップを持つ。電極20は、電極により受信される信号をあらかじめ調整する監視システムのECG取得モジュール22に結合される。一般に、例えば、患者が除細動を受けているとき、患者を感電の危険から保護し、ECGシステムも保護する電気絶縁構成24を用いて、電極信号は、ECG処理モジュール26に結合される。光学絶縁体は一般に、電気絶縁のために用いられる。処理されるECG情報はすると、画像ディスプレイに表示され、又は出力デバイス28によりECGレポートにおいて印刷される。
【0015】
図5は、取得モジュール22をより詳細に示す。まず、信号調整器32から始める。通常振幅において単に数ミリボルトである電極信号が、除細動パルスからの高い電圧保護を通常持つ増幅器により増幅される。増幅された信号は、フィルタリングにより調整され、アナログデジタル変換器によりデジタル的にサンプリングされた信号へと変換される。例えば12リード線システムに関して上述される組合せにおいてリード線信号を得るために様々な電極信号を差分的に結合することにより、信号がフォーマット化される。デジタルリード線信号は、CPU34の制御の下、ECG処理のために転送される。取得モジュールの専門電子機器の多くはしばしば、特定用途向け集積回路(ASIC)の形で実現される。
【0016】
図6は、典型的な診断ECGシステムの解析部分のブロック図である。ペースパルス検出器42は、着用する患者に対してペースメーカにより生成される電気スパイク及び他の電気的異常を特定し、これらを取り除く。QRS検出器44は、電気トレースの支配的なパルスを検出する。図9aは、典型的な正常なECGトレースを示す。ここで、QRSセグメントがトレースの主要な電気パルスを詳細に描写することがわかる。これは、左心室の収縮を刺激するパルスである。QRS群の描写は、トレースのより小さい混乱を検出するための基礎を形成する。これは、波形セグメンタ46により実行される。波形セグメンタは、P波を含むトレースセグメントと、STセグメントを含むECGトレースのQからUへのセグメントとの完全なシーケンスを詳細に描写する。完全に描写される各波形を用いて、ビート分類器48は、各新しいビートを前のビートと比較し、診断を受けている個人に対し、ビートを正常(規則的)又は異常(不規則)として分類する。ビートの分類は、平均ビートアナライザ52が正常な鼓動の特性を定めることを可能にし、平均ビートの振幅及びセグメント持続時間が、符号54で測定される。ビート分類は、符号56で心臓リズムを決定するために用いられる。図7及び8は、このECGトレース処理の一部の機能的説明である。図7の左側には、リード線I、II、VI、V2、V5及びV6からのECGトレースのシリーズ60が存在する。ビート分類器48は、様々なビート特性を比較し、いくつかのビートを正常(N*,0)として分類する。例えば、リード線V5及びV6からのビートの全ては、正常として分類された。他の4つのリード線は、この例では心室性期外収縮(PVC,1)の特性を示すビートを含む。符号62において、ECGシステムは、正常なビートの特性を集約し、異常なビートの特性を排除し、ビートを時間で整列させ、及び、平均ビートを生成するためそれらを平均化する。符号64でのトレースは、この例で示される6リード線に関する平均ビートのトレースを示す。図8において、6リード線の平均ビートトレース64が、符号66で示されるように、様々な特性に関して測定される。この様々な特性は、Q波、R波及びT波の振幅及び持続時間、並びに例えばQRS、ST及びQTといった波間間隔等を含む。これらの測定は、この例の6リード線に関する測定テーブル68において記録されるものとして例示される。ECG波及びそれらの測定は、患者のECG波形に関するレポートを生成するレポート生成パッケージを持つオフラインのワークステーションに送信されることができる。しかしながら、心拍動記録器のPhilips Pagewriter(登録商標)ライン及びPhilips TraceMaster(登録商標)ECG管理システムといったほとんどの診断ECGシステムは、オンボードのECGレポーティングパッケージを持つ。
【0017】
本発明の更なる側面によれば、ECGリード線信号は、特定の冠状動脈及び分岐の狭窄に関連する上昇及び下降STセグメントの特定のパターンに関して解析される。図9aの正常なECGトレースにおいて、STセグメント80の信号レベルは、ECGトレースの公称ベースラインにあるか、又はそれに非常に近い。冠状動脈が完全に閉塞されるとき、動脈に近いリード線に関するSTセグメント82は、図9bに示されるように非常に上昇されることになる。ここで、点線は、トレースの公称ベースラインを示す。STセグメントは、上昇されて100マイクロボルト又はこれ以上とされることができる。心臓の他の側に近接するECGリード線は、対応する下降を示す。これは、検出されることができ、ST上昇の識別と相関させるため上昇されたトレースと相関されることができる。更に、ST上昇の量は、狭窄の時間及び程度の関数として変化することになる。例えば、閉塞を引き起こすイベントの時間の直後に、リード線のSTセグメントが、図9cに示されるように相対的に重要な上昇84を示すことになる。時がたつとともに、上昇は減少することになり、ST上昇86は、図9dに示されるように見えることができる。実質的な時間期間の後、心臓がその新しい生理的状態に適合し始めるにつれて、又は動脈が部分的にのみ閉塞されるとき、STセグメントは、図9eにおいて符号88で示されるようにわずかにだけ上昇又は下降されることになる。STセグメントが波形の公称ベースライン以下にあるとき、ST下降が存在する。こうして、胸部の痛みの出現の時間を患者に問い合わせることにより、イベントの時間は記録されることができ、予想される上昇の程度が評価される。上昇の程度は、例えば古い凝血が時間にわたり固まった血管といった部分的にのみ閉塞された血管を認識するために用いられることもできる。ちょうど主要な閉塞に苦しむ血管に介入的な手順が向けられる間、これらの指示は、即時的な注意を必要としていない血管を除くために用いられることができる。
【0018】
本発明の原理によれば、本発明者の1人は、ECGデータベースの統計解析を研究し、異なる冠状動脈生体構造に対するそれらの関係を研究し、及び以前に参照されたZhouその他の特許出願においてより完全に説明される急性虚血イベントの原因の動脈を特定するための自動化技術の開発に参加した。この特許出願は、本書において参照によりその内容が含まれる。この発明の技術は、原因の動脈として、2つの主な冠状動脈であるRC及びLMの1つ、又はLM、LDA若しくはLCxの2つの主な分岐の1つを特定することができる。ECGレポートにおいてそれを特定することにより、スクリーン上で若しくはECGトレースの表示において視覚的に、音声的に、又は他の出力手段により、心臓専門医は、原因の動脈の特定について知らされる。他の発明者は、本書において参照により含まれる国際公開第WO2006/033038号(Costa Ribaltaその他)に記載される監視されたECG情報に関する表示技術を開発した。この表示技術は、その空間状態においてデータの迅速な検出を可能にする態様で、監視されたデータを示す。2及び3次元グラフ図は、この特許公報に示される。図示されたグラフィック表示は、STセグメントデータの現在値に関する情報だけでなく、データの空間構成に関する情報も伝える。本発明によれば、本発明者は、閉塞の原因の冠状動脈及び急性虚血イベントの可能な原因を臨床医が迅速に特定することができるECGデータの解剖学的に方向付けられたグラフィックを与えるECGシステムを提供するため、これらの開発の全ての側面を組み込んだ。本発明の監視システムは、ちょうど今病院に到着し、初期診断を必要とする胸部の痛みを持つ患者にだけではなく、介入を受け、追加的な冠状動脈閉塞又は異常に関して監視されている患者にも使用されることができる。
【0019】
図10を参照すると、Costa Ribaltaらにおいて説明されるタイプの表示100が示される。左のグラフィック102は、肢リード線を用いる。これは、前述されたように、ほぼ垂直平面内にある。図2に示されるAVR、AVL及びAVFリード線に加えて、グラフィック102は、I、II及びIIIリード線を用いる。これらも、肢電極信号から出される。このグラフィックは、図2に示される肢位置に対して方向付けられる信号に関する軸を含む。ここで、Iリード線に関する軸は、図面における水平(0°)軸であり、II及びIIIリード線軸は、垂直(90°)AVF軸の対向側に配置される。この例において、軸の端部は、2mmのST上昇に対してスケール化される。このミリメートル表記は、ほとんどの心臓専門医に対してよく知られている。ECGシステムにより測定される電気単位からミリメートル表記への変換によれば、100マイクロボルトが2ミリメートルに等しい。
【0020】
グラフィック102における軸も、+及び−極性を持つことが見られる。ST上昇を示すリード線は、原点から軸の正側にプロットされるデータ値を持ち、ST下降測定は、軸の残りの負側にプロットされる。グラフィック102は、グラフィックの軸上にプロットされる6つのSTデータ値を持つことが見られる。IIリード線に関する軸上の点111の値は、例えば、軸の正側端部に近い。これは、この図面のスケールにおいて2mmに近づくST上昇値である。AVFリード線のST上昇値も、AVF軸の+端部の近くの点113で示されように、2mmに近づく。AVL軸上にプロットされる点115は、そのリード線軸の負側上にあることが見られる。この例では、点115は、約1mmのST下降が、AVLリード線に存在することを示す。
【0021】
リード線軸上にプロットされる点は、線により接続され、接続された形状112内部の領域は、図面に示されるようにカラー化又は陰影化される。こうして、臨床医は、プロットされたST値が、グラフィックの底で中心化される大きい形状112を詳細に描写することを一目で知ることができる。
【0022】
同様なグラフィック104が、表示100の右側に示される胸部リード線に関して提供される。この例では、胸部リード線に関する軸は、それらが胸部上で物理的に方向付けられるのと同じオーダーで、V1からV6まで配列される。この例において、V1軸は、ポーラーグラフィックのおよそ112°位置に配置され、他のリード線軸は、この位置から反時計回りに進む。この例は胸部の前面(前方)の6リード線(図3a)だけを用いるが、図3bに示されるように胴周りで胸部の背部へと続く他の胸部リード線V7〜V9に関する軸が、グラフィック104における軸のアレイを更に充填するために含まれることもできる点を理解されたい。このグラフィック104は、グラフィック102と同じ態様でST上昇及び下降値に関する+及び−極性を用いる。ST上昇及び下降値は、個別のリード線軸における点として同様にプロットされ、この点は、グラフィック102と同じ態様で形状114を形成するよう接続される。従って、胸部リード線グラフィック104が、V4リード線位置の周りで中心化される、グラフィックの右下象限に配置されるわずかに小さな形状114を示すことが一目で分かる。
【0023】
図11の表示100は、図10の表示と同様であるが、個別のリード線軸の隣にSTセグメント測定のミリメートル値を表示するよう描画される。例えば、リード線IIIは、−0.5mmのST下降を示す。これは、IIIリード線軸の負側でプロットされ、ポーラーグラフィックの原点から形状112の最も大きな拡張を規定する。0.6mmの測定されたST上昇を持つ胸部リード線V4は、胸部リード線グラフィック104の原点から形状114の最も大きな拡張を規定する。この例における軸が、±1mmの最大拡張へとスケール化されることが分かる。
【0024】
本発明の原理によれば、解剖学的に関連付けられるグラフィックスにおいてECGから得られる形状の位置が、原因の疑いのある冠状動脈を視覚的に特定するために用いられる。肢リード線グラフィック102において、サークル形のLADにより示される領域に配置されるECGから得られる形状が一般に、左前方下行(LAD)冠状動脈の閉塞を示す。グラフィックの左中心の周りに配置される形状は通常、サークル形のRCAにより示される右冠状動脈閉塞を示す。左回旋冠状動脈の閉塞は、サークル形のLCxにより示されるグラフィックの底の中心の周りに配置される形状により示される。可能なLCx、RCA及びLAD閉塞を示すECGから得られる形状の位置が、サークル形の文字により胸部リード線グラフィック104において同じように示される。グラフィック104は、グラフィックの右下象限において、STセグメント描写形状を示す。これは、左前方下行冠状動脈の閉塞を示す。臨床医が、表示100を素早く観察し、どの冠状動脈が虚血性状態の考えられる原因であるかをすぐに見ることができるということが分かる。
【0025】
下記の例は、特定の冠状動脈の閉塞を示す解剖学的に方向付けられた表示である。図13において、水平グラフィック104における胸部リード線のプロットされたST上昇値は、LAD閉塞に特徴的なグラフィックの位置における大きい形状114を詳細に描写する。肢リード線(垂直)グラフィック102は、グラフィックの原点の近くで非常に小さな形状112だけを示す。これは、ST上昇又は下降が、肢リード線により事実上測定されなかったことを示す。この表示100は、原因の冠状動脈がLADであることを臨床医に対して示唆する。
【0026】
図14は、リード線軸及びそれらの軸上にプロットされる個別のST上昇又は下降測定を示す表示100を示す。大きい形状112は、リード線II、III及びaVFに関して測定される重要なST上昇値とリード線I及びaVLに関して測定されるST下降値とにより、肢リード線グラフィック102において形成される。胸部リード線グラフィック104における小さな形状114で示されるように、ごくわずかなST下降が胸部リード線により測定される。図面が示すように、肢リード線グラフィック102の左下象限における大きな形状112は、左回旋(LCx)冠状動脈の閉塞を示唆する。
【0027】
図15は、肢リード線でなされ、かつ肢リードグラフィック102で使用されるST上昇及び下降測定により詳細に描写される大きい形状112を示す。グラフィック102の左側の形状112の位置は、患者の生体構造(図2を参照)の右側に対応する。胸部リード線グラフィック104における小さな形状114は、胸部リード線により測定されるST上昇が事実上ないことを示す。わずかなST下降があるのみである。この表示100の形状112、114は、形状112にわたりサークル形の文字により示される右冠状動脈(RCA)閉塞を示唆する。
【0028】
図16は、2つの冠状動脈が疑わしいことを示唆する表示100の例である。垂直リード線グラフィック102における肢リード線により測定されるST上昇データの形状112は、LCx冠状動脈に閉塞の可能性があることを示唆する。胸部リード線グラフィック104において使用されるST上昇データにより生成される形状114は、LAD冠状動脈に閉塞の可能性があることを示唆する。この表示は、複数の冠状動脈が閉塞の可能性に関してより精密に検査されるべきであるという迅速な指示を臨床医に視覚的に与える。
【0029】
図17は、患者の状態の進行が監視されることができる本発明の別の実現の例である。斯かる実施形態は例えば、胸部の痛みを持つ患者が病院に運ばれてくるとき、又は虚血の可能性を示すサインが増加しているかを臨床医が知りたいとき、有益である。この表示100において、グラフィックス102、104の各々は、患者がECGシステム電極に最初に接続される時間になされるST上昇測定により詳細に描写される形状の輪郭122、124を示す。これらの初期輪郭122、124は、表示100に常に表示されることができるか、又は臨床医により呼び出されることができる。また、ECGシステムによりなされる現在のECG測定により詳細に描写される形状112、114が、肢リード線及び胸部リード線グラフィックス102、104上に示される。表示において初期及び現在の形状122、124及び112、114を比較することにより、臨床医は、冠状動脈閉塞の指示が、増加している、減っている、又は、同じ水準に留まるかを一目で見ることができる。この例において、現在の測定の形状112、114は、病院に入院する時の測定の形状より顕著に大きい。これは、虚血性状態が悪化している可能性を示す。
【0030】
図18は、患者の状態の進行を時間にわたり監視する実施形態の別の例である。本実施形態において、ST上昇は、周期的間隔で測定される。この例では、5分毎に測定される。測定がなされるたび、その時間でのST上昇測定により詳細に描写される形状の輪郭A...Eが、表示上に保持され、又は所望するとき呼び出され表示されるようセーブされる。この例において、時間にわたり取得され、肢リード線グラフィック102において表示される連続した5つの輪郭A...Eは、LCx閉塞(図12を参照)の増加的に劣化する状態を示す進行を提示する。胸部リード線グラフィック104において表示される5つの連続した輪郭A...Eは、LAD冠状動脈閉塞の可能な進行を示す。連続して生成された輪郭の同時表示は、時間にわたる患者の状態の傾向を即座に示す。異なる輪郭は、解釈の容易さのため、表示上で異なる態様で描画されることができる又は色をつけられることができる。
【0031】
前述の例が2つの2次元(垂直及び水平方向の)グラフィックスを持つ表示に関するが、この情報が、冠状動脈欠損の3次元印象を提供するためオペレータにより検査され、及び移動又は回転される(例えば、動的な視差)ことができる、単一のグラフィックディスプレイへと、又は単一の3次元表示において、ベクトル的に組み合わされることができる点を理解されたい。
【0032】
上述のST上昇及び下降特性に加えて、例えばQ波、R波、T波の振幅及び持続時間並びにQRS及びQTといった波間の間隔等の他のECG測定も、原因の冠状動脈の識別において適用可能なものとして用いられることができる。13〜18リード線ECGシステム及び64及び128リード線ECG体表面マップを含むより高次のリード線セットの使用が、原因の冠状動脈識別の精度を強化するための追加的なインクリメンタル情報を提供することができる。12リード線より少ないシステムに対して、可能性として減らされた精度で本発明の技術を実現するため、追加的なリード線信号が得られることができる。適切なAHAガイドライン又は他の基準により決定される異なる年齢、性別、及びリード線に関して、ST上昇の閾値が用いられることができる点も理解されたい。ST上昇測定が、患者に関する適切な閾値を超えるとき、疑わしい冠状動脈の特定を用いて輪郭化された領域をカラー化又はラベル付けすることにより、グラフィック表示は強調されることができる。例えば、30〜40歳の間の男性患者が、リード線V2及びV3において2.5mm(250マイクロボルト)を超えるST上昇を示し、他の全てのリード線に関して及び1mm(100マイクロボルト)を上回るST上昇を示す場合、輪郭化された領域は強調されることができる。女性に関して、重要なリード線におけるST上昇が1.5mm(150マイクロボルト)を超える場合、その領域は強調されるだろう。適切な標準が開発されるとき、他の閾値基準が用いられることができる。
【0033】
図10〜18の前述のグラフィックディスプレイは、標準的なECGリード線セットに関するリード線値をプロットする。ここで、10個の電極が、12の標準的なリード線信号を取得及び計算するために用いられる。しかしながら、より大きな数のリード線信号を取得及び生成する拡張されたリード線セットが時々、患者に対して用いられる。これは、図19により示される。この図は、心臓レベルで胸部を通る断面図であり、追加的な胸部電極からの追加的な後方リード線V7、V8及びV9並びに追加的な前方リード線V3R、V4R及びV5Rの使用を示す。これらの拡張されたリード線値が標準的なリード線値と共にプロットされるとき、グラフィックディスプレイにおいて曖昧性が生じる可能性がある。これらの曖昧性は、レシプロカルチェンジとして知られる現象に支配される心臓(断面の底の中心で光の陰になった領域)により生成される電気力から生じる。リード線の位置が示すように、数ペアのリード線が、体の対向側において互いに対向する。例えば、V9リード線は、V2リード線の位置の反対側にある。この方向のおかげで、対向する電極の電圧は、互いの反対極性である。V9の電圧が正であるとき、V2の電圧は負である。前述のように、V2リード線がST上昇を経験しているとき、V2電圧は、ポーラー図のV2軸のV2シンボル側上の正信号としてプロットされ、V2リード線がST下降を経験しているとき、ダイアグラムのV2軸上で原点の反対側にプロットされる負電圧が生じる。しかし、V9電圧が同じ軸上でプロットされるとき、+V9が、同じ軸の対向する(負)側にベクトル的に配置され、プロットされた電圧のレシプロカルチェンジが、互いを増幅する又は可能であればキャンセルすることになる。これは、患者の胸部周りで実質的に同じ水平平面内に配列される拡張された前胸リード線に特有の問題である。ポーラー図のベクトル軸の真の生体構造関係を維持し続けると共に、この曖昧性が起こるのを防止することが望ましい。
【0034】
この問題へのソリューションが、図20aの水平軸のポーラー図により示される。この例において、拡張されたリード線は、他の(標準的な)リード線のベクトルと直接対向しないベクトル上にプロットされる。効果的に、拡張されたリード線V7、V8及びV9は、ポーラー図において約60°、70°、及び80°位置に時計回りに回転される。そのように配置されるとき、拡張されたリード線ベクトルはもはや、他のリード線のベクトルの反対側にはない。特に、V9ベクトルがV2ベクトルともはや対向しないことが分かる。同様に、拡張されたリード線V3R、V4R及びV5Rは、ポーラー図のおよそ210°、220°及び230°軸に配置される。こうして、各リード線ベクトルが、それ自身の軸上にあり、どんな値が各電極から記録されたかが明らかである。これは、レシプロカルチェンジによるものだが、しかし、表示されるものが、記録されたものとなる。
【0035】
更に、正リード線方向の全てが、ポーラーサークル(polar circle)の1/2にあること、及び、それらの軸の負側の半分は全て、サークルの残り半分に配置されることが分かる。この例において、軸の正端部は全て、ポーラー図のおよそ55°〜235°の半分にあり、負端部は全て、図の235°〜55°の半分にある。従って、ST上昇及びST下降に関してプロットされた値の差が、見る者により直ちに知覚されることができる。
【0036】
図20aの例示的なポーラー図において、正の上昇値がV3R及び、V4Rリード線に関して図上にプロットされることが分かる。これは、リード線V1〜V5に関する値により規定されるグラフィック領域を拡張する。リード線V6、V7及びV8に関する負値は、図における第2のより小さな輪郭領域を作成する。ポーラー表示上で述べられるように、これらのグラフィックス及びそれらの高いST値は、広汎前壁心筋梗塞を示す。同じ患者に関して対応する正面の軸図が、図20bに示される。
【0037】
図21a及び21bは、下壁梗塞を持つ患者に関する例示的なポーラー図である。図21aの水平軸ポーラー図は、拡張されたリード線V3Rに関する負値を示す。これは、負のV1〜V5リード線値により規定されるグラフィック領域を拡張する。第2のより小さな領域が、V6〜V8リード線の上昇値により規定される。正面の軸グラフィックが、図21bのポーラー図に示される。
【0038】
図22a及び22bは、ポーラーではなく、リード線値の線形又は直線表示を示す。これらの図の両方が、水平平面の前胸(胸部)リード線に関して示されるが、同様な線形図が、垂直(肢リード線)平面に関して用いられることもできる。これらの2つの図面において、リード線V1〜V6は、中心(ゼロ)線の周りの大きなボックスにおいて較正される。ここで、各ボックスは、垂直方向における100マイクロボルトに対応する。拡張されたリード線V5R、V4R及びV3R及びV7〜V9は、小さなボックスにおいて較正される。各ボックスは、これらのリード線信号の相対的な大きさに沿って、垂直方向における50マイクロボルトに対応する。図22aにおいて、図10のリード線値が、各リード線列においてプロットされ、線により接続される。ここで、線の下の領域は、原因の動脈を示す。他の実施形態において、個別のリード線信号は、列ではなく、行においてプロットされることができる。
【0039】
図22bは、点又は円としてリード線値をプロットする代わりに、表示のリード線列が、棒グラフの態様でリード線信号値のレベルへと充填される点を除けば、図22aと同様である。この例において、リード線V3の値が、リード線データから欠落していると更に想定される。他のリード線列の実線のクロスハッチングは、実際に受信及び計算されたリード線信号を示す、色又は陰を表す。V3リード線列の破線のクロスハッチングは、このリード線値がデータセットから失われているが、他のリード線データに基づき推定されたことを見る人に示す異なる色又は陰を表す。この例において、V3列の陰のレベルは、隣接する(V2及びV4)リード線値の平均又は補間である。陰影のついた列の構築は、再び原因の動脈を示し、V3リード線データが欠落しているが、推定されたことを見る人に示す表示となる。
【0040】
リード線データをプロットする他のグラフィック表示フォーマットを、当業者であれば容易に思いつくであろう。例えば、失われたリード線を同様な態様で示すため、ポーラー表示が陰線又は色を用いることができる。別の変形例は、標準的なリード線値により規定される領域とは異なる色又は陰で、拡張されたリード線のポーラー範囲に含まれるポーラー表示の輪郭領域に色をつけることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性心筋梗塞に関連付けられる原因の冠状動脈を特定するECG監視システムであって、
心臓に対する異なる視点から前記心臓の電気活動を取得するよう構成される電極のセットであって、標準的なリード線に加えて拡張されたリード線を含む、電極のセットと、
強化された電極信号を生成するよう機能する、前記電極に結合されるECG取得モジュールと、
前記電極信号に応答し、異なる視点からの前記心臓の電気結合を測定する複数のリード線信号を生み出すよう、電極信号を結合するECGプロセッサであって、リード線信号におけるST上昇を検出する、ECGプロセッサと、
検出されたST上昇に基づき、生体構造リード線位置に対してST上昇データを視覚的に表示するグラフィックディスプレイであって、異なるリード線からの上昇データが、互いに干渉しない位置に配置される、グラフィックディスプレイとを有し、
前記グラフィックディスプレイが、急性虚血イベントに関連付けられる原因の疑いのある冠状動脈又は分岐を示す、ECG監視システム。
【請求項2】
前記ECGプロセッサが、複数の胸部電極信号に応答して、ST上昇データを生み出し、被験者の生体構造に対して水平に方向付けられる胸部グラフィックを生み出すため、前記データを使用し、
前記胸部グラフィックは、LCx、RCA及びLAD冠状動脈閉塞の1つ又は複数を示す、請求項1に記載のECG監視システム。
【請求項3】
前記胸部グラフィックが更に、ST上昇データ値により詳細に描写される形状を有する、請求項2に記載のECG監視システム。
【請求項4】
前記形状が、前記胸部グラフィックにおいてST上昇データ値を接続することにより形成される、請求項3に記載のECG監視システム。
【請求項5】
ST上昇データ値が、前記胸部グラフィックにおいて1つの極性を伴い配置され、ST下降データ値は、前記胸部グラフィックにおいて反対の極性を伴い配置される、請求項3に記載のECG監視システム。
【請求項6】
前記グラフィックディスプレイが更に、異なるポーラーベクトル上でプロットされる異なるリード線信号を持つポーラー図を有する、請求項1に記載のECG監視システム。
【請求項7】
正リード線信号の値が、前記ポーラー表示の1/2においてプロットされ、負リード線信号の値は、前記ポーラー表示の残り半分においてプロットされる、請求項6に記載のECG監視システム。
【請求項8】
前記正リード線信号の値が、ST上昇値を有し、負リード線信号の値は、ST下降値を有する、請求項7に記載のECG監視システム。
【請求項9】
推定値が、欠落したリード線信号に関してプロットされる、請求項6に記載のECG監視システム。
【請求項10】
前記グラフィックディスプレイが更に、異なる行又は列上にプロットされる異なるリード線信号を持つ線形又は直線図を有する、請求項1に記載のECG監視システム。
【請求項11】
リード線信号の値を持つ各行又は列が、リード線信号の大きさを示し、1つ又は複数の隣接する行又は列のリード線信号の大きさに接続される、請求項10に記載のECG監視システム。
【請求項12】
リード線信号の値を持つ各行又は列が、色又は陰を用いて、リード線信号の大きさレベルへと充填される、請求項10に記載のECG監視システム。
【請求項13】
推定値が、欠落したリード線信号に関してプロットされる、請求項10に記載のECG監視システム。
【請求項14】
前記推定値が、他の受信リード線信号値の補間又は平均である、請求項13に記載のECG監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20a】
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【図20b】
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【図21a】
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【図21b】
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【図22a】
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【図22b】
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【公表番号】特表2013−517083(P2013−517083A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549428(P2012−549428)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055891
【国際公開番号】WO2011/089488
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】