説明

拡張システム及びその使用方法

【解決手段】 方向性順次拡張システム及びブラント刺激拡張システム(10)並びに関連する方法は、患者の腰部筋肉(4)を通して患者の脊椎(2)にアクセスするもので、順次方向性拡張装置(30,40)又はブラント刺激拡張装置(100,100’)であって少なくとも1つの通路を内部に形成されたものを具備している。腰部筋肉における神経要素又は神経(9)は、好ましくは、刺激プローブ(20)を用いてマッピングされ、それにより、患者の脊椎へ通る安全領域を形成する。刺激プローブは、腰部筋肉を通して、患者の脊椎へ向けて挿入される。方向性順次拡張装置は、刺激プローブの任意の側部における組織を拡張させるべく挿入され、刺激プローブの反対側の側部にある組織に大きな影響を与えず、神経要素の近くに配置される。拡張装置は、ボア(35,45)を有することで、方向性にされており、これにより、それらは互いに及びプローブにかぶせて挿入でき、長手軸線(31,41)からオフセットしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は拡張システム及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
概して言えば、順次拡張システムは、外科医が、初期の切開を作り、及びますます大きな拡張装置を順次挿入することで、徐々に切開のサイズを拡大することを可能にする。順次拡張は、好ましくは、組織の損傷及び関連する外傷を減少でき、患者の快復時間を速める。加えて、拡張装置は、外科部位への外科経路を準備するために利用され、刺激装置は、拡張装置と共に、神経要素又は神経など特定の患者の解剖学的な領域を避ける経路に沿って、拡張装置を導くために利用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の好ましい実施形態は、一般的に、最小限の侵襲性の外科手順及び装置に関し、より詳しくは、患者の脊椎へのアクセス開口を創るために使用される、切開の方向性拡張のための拡張システム及び関連方法に関する。より詳しくは、本発明は、拡張システム及び関連方法に関し、患者の腰部筋肉を通して、患者の脊椎における腰部領域に、横方向にアクセスすることができるものである。本発明の1つの観点によれば、腰部筋肉の神経要素又は神経は、好ましくは、刺激プローブを用いてマッピングされ、それにより、通路の安全領域を形成する。刺激プローブは、腰部筋肉を通して、椎間板の空間に向けて又は中に挿入される。方向性拡張装置は、腰部筋肉を拡張させて、刺激プローブの片側だけに組織を実質的に分離するために使用される。すなわち、方向性の順次拡張装置は、腰部筋肉を拡張するために挿入され、例えば、刺激プローブの前方側に挿入され、一方、刺激プローブの後方側においては腰部筋肉を実質的に無傷に残す。特に、方向性の順次拡張装置は、患者の身体における神経要素又は神経から方向性に組織を離して拡張させるために利用され、すなわち、刺激プローブによって確認され、続く拡張において生じる拡張手順又はその他の外科手順によって、神経要素又は神経が乱され又は損傷されることがない。
【0004】
変形例としては、拡張システム及び方法は、外面に形成された少なくとも1つの通路を具備してなるブラント刺激拡張装置を具備している。通路は、刺激プローブを受け入れて、刺激プローブは、腰部筋肉の神経要素又は神経をマッピングするために使用されて、患者の脊椎への通路の安全領域を形成する。刺激拡張装置は、腰部筋肉を通して、椎間板の空間へ向けて又は中へ挿入される。次に、刺激プローブは、刺激拡張装置の外面に形成された通路内に挿入され、神経要素又は神経を確認する。
【0005】
上述した要旨及び以下の本願の好ましい実施形態についての詳細な説明は、添付図面に関連させて読むことでより良く理解されるだろう。本願の拡張システム及び方法を例示する目的のために、図面には好ましい実施形態を示している。しかしながら、本願は図示した正確な構成及び手段に制限されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の第1の好ましい実施形態による拡張システムを示した側立面図であって、これは、本願においては一般に、方向性順次拡張システムと称される。
【図2】図1の方向性順次拡張システムにおける遠位端を示した拡大斜視図である。
【図2A】図2の方向性順次拡張システムにおける遠位端を示した分解図である。
【図3】図1の線3−3に沿って、図1の方向性順次拡張システムを示した横断面図である。
【図4】図1の方向性順次拡張システムを示した正面立面図であって、方向性順次拡張システムに関連して使用される開創器を模式的に表している。
【図5A】図1の方向性順次拡張システムに関連して使用される、第1の方向性拡張装置を示した側面図である。
【図5B】図5Aの第1の方向性拡張装置を示した正面図である。
【図6A】図1の方向性順次拡張システムに関連して使用される、第2の方向性拡張装置を示した側面図である。
【図6B】図6Aの第1の方向性拡張装置を示した正面図である。
【図7】本発明の第2の好ましい実施形態による拡張システムを示した側立面図であって、一般に、本願では、ブラント刺激拡張システムと称されるものである。
【図8】図7のブラント刺激拡張システムを示した上部平面図である。
【図9】図7のブラント刺激拡張システムにおける近位端を拡大して示した斜視図である。
【図10】図7のブラント刺激拡張システムにおける遠位端を拡大して示した底部斜視図である。
【図11】本発明の第3の好ましい実施形態による拡張システムを示した上部平面図であって、ブラント刺激拡張システムを備えている。
【図12】図11のブラント刺激拡張システムにおける近位端を拡大して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の説明においては、便利さのためだけに、ある種の用語が使用され、これらは制限ではない。用語“右”、“左”、“上部”、及び“底部”は、参照されている図面上における方向を指示する。用語“内方”及び“外方”は、方向性順次拡張システム及びブラント刺激拡張システム及びその指示された部品における幾何学的中心に対して、向かう方向と離れる方向とをそれぞれ称する。用語“前方”、“後方”、“上位”、“下位”、及び関連する用語、及び/又は、フレーズは、参照される人体における好ましい位置及び向きを指示し、制限を意味しない。用語には、上に列挙した用語のほか、派生語、類義語も含まれる。
【0008】
本発明のある種の例示的な実施形態について、図面を参照して、以下に説明する。一般的に、そのような実施形態は、患者の脊柱にアクセスするための拡張システムに関し、好ましくは、患者の脊椎における腰部領域に横方向にアクセスする。
【0009】
当業者によって一般的に理解されるように、拡張システムは、外科手順を実行するために脊椎にアクセスすることに関連して説明されるけれども、拡張システムは整形外科の手術だけに用途を見い出されるものではなく、外科医が体内の空洞にアクセスを得ることを望み、そのために、皮膚を切開して体壁を通して進み、切開を広げて保持すべく、外科器具が挿入できるようにするような他の外科手順にも用いられる。例えば、拡張システムは、前方又は後方から脊椎にアクセスするために使用され、脊椎の胸部又は頚部領域にアクセスするために、又は身体におけるほとんどあらゆる他の部分にアクセスするために使用される。
【0010】
図4を参照すると、概して言えば、患者の脊椎2と腰部筋肉4とに横方向に接近する際には、これは、脊椎2のいずれかの側に配置され、好ましくは、脊椎2にアクセスするために隔てられ、特に、椎間板の空間6又は患者の脊柱に含まれる1又は複数の椎体8に配置される。そのような手順中には、腰部筋肉4の内部にある腰神経叢の神経要素又は神経9を避けることが望ましい。前方第3の腰部筋肉4は、代表的に、筋肉の分離のための安全領域であると考えられる。
【0011】
腰部筋肉4における神経要素又は神経9は、好ましくは、刺激プローブ20を用いてマッピングされる。このように、腰部筋肉4における最も後方の神経の存在しない領域が、好ましくは句は、位置決めされ確認される。刺激プローブ20は、次に、腰部筋肉4を通して挿入され、それには、最も後方の神経の存在しない組織領域を介して、又は神経要素又は神経9の存在しないほとんどあらゆる他の領域を通して、脊椎2に向けて又は椎間板の空間6の中へ、腰部筋肉4の安全な組織分離を開始するために挿入される。本発明の第1の好ましい実施形態による方向性拡張装置30,40を使用して、筋肉の分離を拡張させる。特に、方向性拡張装置30,40は、主として(頭蓋側として示される)刺激プローブ20の片側の組織を分離し、好ましくは、刺激プローブ20の前方側に(例えば、刺激プローブ20によって最初に確認されてマーキングされた安全領域に)位置する。すなわち、方向性順次拡張装置30,40を使用することで、刺激プローブ20の片側にある組織は動かされ、一方、刺激プローブ20の反対側へ組織が動くことを実質的に制限する。比較すると、同軸的な拡張装置は、筋肉を半径方向に分離させ、そして、刺激プローブの両側に組織を拡張させる。これは、次に、安全領域の外部に配置された神経要素又は神経9に衝突する。
【0012】
図1乃至図6Bを参照すると、本発明の第1の好ましい実施形態による拡張システムは、方向性順次拡張システム10から構成されている。方向性順次拡張システム10は、好ましくは、刺激プローブ20と、第1の方向性拡張装置30と、第2の方向性拡張装置40とを具備している。方向性順次拡張システム10は、例えば、1つ、3つ、4つなどのように、多かれ少なかれ拡張装置を具備している。刺激プローブ20は、現在又は将来公知になるあらゆるプローブであって、電気的パルスを伝達するものである。刺激プローブ20は、好ましくは、プローブ先端部20aと、長手プローブ軸線21とを具備している。第1の方向性拡張装置30は、好ましくは、第1の長手軸線31と、外面32と、近位端33と、遠位端34と、近位端33から遠位端34へ延びた第1のボア35とを具備している。また、第1の方向性拡張装置30は、好ましくは、第1の先端部30aを遠位端34に具備し、これを通して、第1の長手軸線31が延在している。第1のボア35は、第1のボア軸線36を有し、第1のボア35の近位端から遠位端へ延びている。第1の長手軸線36は、好ましくは、オフセットしており、又は第1の長手軸線31から第1のオフセット距離Aに配置されている。また、第1の方向性拡張装置30は、好ましくは、第1の通路38を外面32に形成されて具備している。第1の通路38は、好ましくは、第1のボア35の全長に沿って、第1のボア35に連通している。使用に際しては、第1のボア35と第1の通路38とは、組み立てた形態において、刺激プローブ20を着脱可能に受け入れて(例えば、刺激プローブ20が第1の方向性拡張装置30の第1のボア35の内部に摺動可能に受け入れられるとき)、外科医が第1の方向性拡張装置30を刺激できる。刺激プローブ20におけるプローブ軸線21は、好ましくは、組み立てた形態において、第1の方向性拡張装置30の第1のボア軸線36と同軸的になっている。
【0013】
同様に、第2の方向性拡張装置40は、好ましくは、第1の長手軸線41と、外面42と、近位端43と、遠位端44と、近位端43から遠位端44へ延びた第2のボア45とを具備している。第2のボア45は、好ましくは、第2のボア軸線46を有し、近位端43から遠位端44へ延在している。また、第2の方向性拡張装置40は、好ましくは、第2の先端部40aを遠位端44に具備し、これを通して、第2の長手軸線41が延在している。第2のボア45における第2のボア軸線46は、好ましくは、オフセットしており、又は第2の長手軸線41から第2のオフセット距離Bに配置されている。第1及び第2の方向性拡張装置30,40における外面32,42は、好ましくは、コーティングされて、使用中の漏電を防止するが、これは当業者には明らかだろう。また、第2の方向性拡張装置40は、好ましくは、第2の通路48を外面42に形成されて具備し、第2のボア45に連通している。使用に際しては、第2のボア45と第2の通路48とは、組み立てた形態において、第1の方向性拡張装置30を受け入れる(例えば、第1の方向性拡張装置30が第2の方向性拡張装置40の第2のボア45の内部に摺動可能に受け入れられるとき。)。第1の方向性拡張装置30における第1の長手軸線31は、好ましくは、組み立てた形態において、第2の方向性拡張装置40における第2のボア軸線46と同軸的になっている。
【0014】
第1及び第2のボア35,45における第1及び第2のボア軸線36,46は、それぞれ、第1及び第2の方向性拡張装置30,40における第1及び第2の長手軸線31,41からオフセットしているので、第1の方向性拡張装置30を刺激プローブ20にかぶせ、次に、第2の方向性拡張装置40を第1の方向性拡張装置30にかぶせて挿入すると、それぞれの順次拡張装置は、“方向性”をもって、患者に形成された開口部を拡張させ、好ましくは、あらゆる神経要素又は神経9を又は刺激プローブ20の反対側にある他の解剖学的構造を、それぞれ順次遠ざけるが、詳しくは後述する。
【0015】
さらに、第1及び第2の通路38,48を組み込むことで、第1及び第2の方向性拡張装置30,40は、より密接に一緒に入子になり、従って、実質的に“クッキーカッター”効果が解消され、これは、大きな内側ボアサイズをもつ複数の同軸的な拡張装置を使用したときに実現される。
【0016】
第1の方向性拡張装置30は、好ましくは、複数の第1の深さ指示37を外面32に配置させて具備している(図5A及び図5Bに最良に示される。)。複数の第1の深さ指示37は、第1の方向性拡張装置30の外面32上に、第1の長手軸線31に対して略垂直に延びている。複数の第1の深さ指示37は、第1の方向性拡張装置30の遠位端34に形成された第1の先端部30aと、それぞれの深さ指示37との間の様々な距離を外科医に指示し、使用時において、外科医は、第1の方向性拡張装置30がどのくらいの長さだけ患者に挿入されたのかを知ることができる。同様に、図6A及び図6Bに最良に示されるように、第2の方向性拡張装置40は、好ましくは、複数の第2の深さ指示47を外面42に配置させて具備している。複数の第2の深さ指示47は、第2の方向性拡張装置40の外面42上に、第2の長手軸線41に対して略垂直に延びている。複数の第2の深さ指示47は、第2の方向性拡張装置40の遠位端44に形成された第2の先端部40aと、それぞれの深さ指示47との間の様々な距離を外科医に指示し、使用時において、外科医は、第2の方向性拡張装置40がどのくらいの長さだけ患者に挿入されたのかを知ることができる。第1の好ましい実施形態においては、複数の第1及び第2の深さ指示37,47が、第1及び第2の先端部30a,40aから、80mm〜150mmまでの距離に、10mmの増分にて、間隔を隔てている。しかしながら、複数の第1及び第2の深さ指示37,47は、これらの寸法に限定されるものではなく、第1及び第2の先端部30a,40aから、外科医に好まれるほとんどあらゆる距離又は間隔に設けられて、第1及び第2の方向性拡張装置30,40が患者に挿入された深さを示すことができる。
【0017】
加えて、第1及び第2の方向性拡張装置30,40は、好ましくは、それぞれ第1及び第2の把持部39,49を具備しており、これらは近位端32,42に配置されて、使用時に外科医がより良く拡張装置30,40を把持できるようになっている。第1及び第2の把持部39,49は、手術中に、第1及び第2の方向性拡張装置30,40を、挿入、除去、捩り、又はその他の操作をするために、外科医によって利用される。
【0018】
図1に最良に示されるように、第1の方向性拡張装置30は、好ましくは、第1の長さL1を有し、一方、第2の方向性拡張装置40は、第2の長さL2を有している。第1の長さL1は、好ましくは、第2の長さL2に比べて長くなっていて、取扱い及び挿入を容易にしている。同様に、刺激プローブ20は、好ましくは、プローブ長さL3を有し、プローブ長さL3は、第1の長さL1及び第2の長さL2に比べて長くなっている。第1の方向性拡張装置30の第1の長さL1が長くなるほど、第1の方向性拡張装置30の近位端33は、組み立てられて動作する形態において、患者から出て遠くに延びることになり、外科医は、たとえ第2の方向性拡張装置40が患者に挿入された後においても、第1の把持部39を把持して、第1の方向性拡張装置30を取り除き又はその他の操作を行うことができる。第1の好ましい実施形態においては、第1の長さは220mmであり、第2の長さは200mmであるけれども、そのように制限される分けではなく、近位端33,43を患者の外に延在させて、患者への挿入を許容するようなほとんどあらゆる長さを有し得る。加えて、第1の方向性拡張装置30は、好ましくは、第1の直径D1を有し、第2の方向性拡張装置40は、第2の直径D2を有し、第2の直径D2は好ましくは第1の直径D1に比べて大きくなっている。第1の好ましい実施形態においては、第1の直径D1は、およそ7.7mmであり、第2の直径D2は、およそ17.5mmである。しかしながら、第1及び第2の直径D1,D2は、そのようには限定されず、刺激プローブ20から様々な距離に組織を拡張させるために、外科医によって望まれる、ほとんどあらゆる直径を有し得る。さらに、第1及び第2の方向性拡張装置30,40は、円形の横断面を有するものとは限定されず、ほとんどあらゆる横断面を有し、外科医にとって好ましい方法にて、方向性拡張を許容する形状に適合される。例えば、第1及び第2の方向性拡張装置30,40は、卵形又は長円形の横断面形状を有して拡張を促進し、及び外科的作業通路を有し、円形の横断面を有する拡張装置に比べて、検出された神経9からさらに遠ざかる。
【0019】
以下、刺激プローブ20と第1及び第2の方向性拡張装置30,40とを使用して、患者の脊椎2にアクセスする方法について説明する。技術は、横方向のアプローチを介して、脊椎2の腰部領域にアクセスするために、特に望ましいけれども、類似の又は同一の方法は、患者の身体における他の部分にも使用できる。
【0020】
刺激プローブ20と、トリガーされた筋電計(EMG)50とを使用して、外科医は好ましくは安全領域、すなわち、興味のある組織(例えば、腰部筋肉4)において、なんら神経要素又は神経9が存在していない領域をマッピングする。例えば、腰部筋肉4では、前方第3の腰部筋肉4は、一般的に安全領域であると考えられる。
【0021】
いったん安全領域が確立されたならば、解剖学的な配置が、好ましくは、術中X線透視を介して確認される。外科医は、患者の脊椎2に向けて、腰部筋肉4を通して、刺激プローブ20を挿入する。外科手術が椎間板の空間6に対して実行されているならば、刺激プローブ20における遠位端は、所望の椎間板の空間6の環に挿入される。好ましくは、刺激プローブ20は、安全領域における最も後方の部分を介して挿入される。
【0022】
外科医は、刺激プローブ20にかぶせて、第1の方向性拡張装置30を挿入又は摺動でき、第1の長手軸線31を刺激プローブ20の片側に、好ましくは、検出された神経要素又は神経9から遠くに配置し、腰部筋肉4に通して、患者の脊椎2に近い位置へ入れる。次に、外科医は、第2の方向性拡張装置40を挿入し、必要ならば、第1の方向性拡張装置30の外面32に近接した組織をさらに拡張し、検出された神経要素又は神経9からさらに遠ざける。外科医は、必要に応じて、この手順を頻繁に繰り返す。最後に、必要ならば、第2の方向性拡張装置40にかぶせて開創器60を挿入し、続いて、組織を開創させ、第1及び第2の方向性拡張装置30,40及び刺激プローブ20を除去できるようにする。変形例としては、作業カニューレ(図示せず)を第2の拡張装置40にかぶせて挿入し、作業カニューレを通して脊椎2への手順を実行する。
【0023】
さらに、必要ならば、第2の方向性拡張装置40を挿入する前に、刺激プローブ20を第1のボア35から取り除き、拡張装置/プローブの組合せを回転させる。その後、トリガーされたEMGの刺激50を使用して、外科医は、好ましくは、第1の通路38の反対側である、第1の方向性拡張装置30の期待する側に、神経根9が配置されていることを確認する。第2の方向性拡張装置40を挿入する前に、刺激プローブ20は、好ましくは、第1のボア35の中に再挿入される。
【0024】
第1及び第2の方向性拡張装置30,40を使用することで、当業者に一般的に知られている同軸的な順次拡張装置と比較すると、方向性順次拡張システム10は、好ましくは、アクセス開口部が腰部筋肉4における神経要素又は神経9から離れて形成されることを保証し、従って、例えば、刺激プローブ20の後方側に配置された、あらゆる神経要素又は神経9を避ける。さらに、方向性順次拡張システム10はまた、組織を分離させるとき、組織の分離の量を最小化させることで、組織の損傷の量を減少させる。
【0025】
変形例としては、図7乃至図10に示すように、本願の第2の好ましい実施形態による拡張システムを備えた、ワンステップのブラント刺激拡張装置100が使用されている。ブラント刺激拡張装置100は、外面102と、近位端104と、遠位端106と、近位端104から遠位端106へ延びたボア108とを具備している。近位端104は、刺激クリップ又はコードを取り付けるための領域110を具備している。遠位端106は、露出した、好ましくは、尖った先端部112を具備し、電気刺激を届ける。近位端及び遠位端104,106の間にある、刺激拡張装置100の外面102は、好ましくは、コーティングされて漏電を防止している。また、刺激拡張装置100は、好ましくは、刺激プローブ120を受け入れるために、外面102に形成された通路114を具備している。刺激プローブ120は、現在又は将来公知になるあらゆるプローブであって、電気パルスを伝達するものである。
【0026】
刺激拡張装置100は、外科医に、腰部筋肉4を刺激するのと同時に拡張する能力を提供する。刺激拡張装置100の先端部112を椎間板の空間に配置した後、刺激プローブ120は、拡張装置100の外面102に沿い、通路114を通って挿入され、拡張された組織の周辺を刺激する。
【0027】
変形例としては、図11及び図12に示すように、刺激拡張装置100’は、本願の第3の好ましい実施形態から構成され、外面102に形成された複数の通路114を具備している。例えば、図示の通り、刺激拡張装置100’は、4つの通路114a〜dを具備し、拡張装置100’の外面102に間隔を隔てて直径上に配置されている。このように、外科医は、前方、後方、頭方、及び尾方を刺激して、いったん拡張装置100’が所定位置に配置されたならば、神経根の位置を確認する。当業者には理解されるだろうが、刺激拡張装置100’は、任意の数の通路114を具備し、それらには、例えば、2つ、3つ、5つ以上が含まれる。
【0028】
以下、ブラント刺激拡張システムの使用方法を説明するが、脊椎2へのアクセスを創り出し、特に、横方向のアプローチを介して、脊椎2の腰部領域に、腰部筋肉4を通してアクセス開口部を提供する。当業者は理解するだろうが、方法は、身体の他の部分に使用され、及び代替的なアプローチを利用する。
【0029】
使用に際しては、外科医は、好ましくは横方向に、ブラント刺激拡張装置100,100’を、腰部筋肉4に、例えば、捩り運動を介して挿入する。外科医は、好ましくは、トリガーされたEMG50を使用して、電気パルスをブラント刺激拡張装置100,100’に伝達し、神経根9を位置決めすることで、患者の腰部筋肉4における安全領域を位置決めする。いったんいずれかの神経根9の位置が、ブラント刺激拡張装置100,100’の後方に確認されると、外科医は、ブラント刺激拡張装置100,100’を横方向に挿入し、腰部筋肉4を通して患者の脊椎2へ向けて、好ましくは、椎間板の空間6の環に入れる。外科医は、ブラント刺激拡張装置100,100’の外面102に形成された通路114の中に、刺激プローブ120を挿入又は摺動させる。必要ならば、外科医は、通路114に配置された刺激プローブ120と一緒にブラント刺激拡張装置100を回転させつつ、EMG50を使用して、神経根9の位置を確認する。変形例としては、4通路のブラント刺激拡張装置100’においては、ブラント刺激拡張装置100の回転は必要ではない。むしろ、刺激プローブ120は、神経根9の位置を確認するために、それぞれの通路114a〜dの中に独立して挿入される。次に、外科医は、必要ならば、開創器を刺激拡張装置100,100’にかぶせて挿入する。
【0030】
上述した説明と図面とは、本発明の好ましい実施形態を表しているけれども、特許請求の範囲に定められた本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な追加、変更、及び置換を行うことが可能であることを理解されたい。特に、本発明は、その精神又は本質的な特性から逸脱せずに、他の特定の形態、構造、構成、比率において、及び他の要素、材料、及び構成要素と共に具現されることは当業者にとって明らかである。当業者は認識するだろうが、本発明は、構造、構成、比率、材料、及び構成要素及び本発明の実施に使用されるその他の要素の多くの変形例と共に使用でき、本発明の原理から逸脱せずに、特定の環境及び動作要件に特に適合できる。加えて、本願において開示した特徴は、単独にて、又は他の特徴との組合せにて使用される。従って、本願に開示された実施形態は、あらゆる観点において、例示的であり、制限的ではないと考えられ、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって指示され、上述の説明によって限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の解剖学的構造における神経から遠ざけて拡張させる方向性順次拡張システムであって、この方向性順次拡張システムが、
プローブ軸線を有する刺激プローブと、
第1の方向性拡張装置であって、第1の長手軸線と、近位端から遠位端へ延びた第1のボアと、第1のボアと連通している第1の通路とを具備し、第1のボアは第1のボア軸線を有し、第1の長手軸線が第1のボア軸線からオフセットしている、上記第1の方向性拡張装置と、
第2の方向性拡張装置であって、第2の長手軸線と、第2の方向性拡張装置における近位端から遠位端へ延びた第2のボアと、第2のボアと連通している第2の通路とを具備し、第2のボアは第2のボア軸線を有し、第2の長手軸線は第2のボア軸線からオフセットしており、刺激プローブは第1のボアの中に着脱可能に受け入れられ、第1の方向性拡張装置は第2のボアの中に着脱可能に受け入れられる、上記第2の方向性拡張装置と、
を備えていることを特徴とする方向性順次拡張システム。
【請求項2】
プローブ軸線は、組み立てられた状態において、第1のボア軸線と同軸的になっていることを特徴とする請求項1に記載の方向性順次拡張システム。
【請求項3】
第1の長手軸線は、組み立てられた状態において、第2のボア軸線と同軸的になっていることを特徴とする請求項1に記載の方向性順次拡張システム。
【請求項4】
前記システムが、さらに、
第1の方向性拡張装置の遠位端に配置された第1の先端部であって、第1の長手軸線が第1の先端部を通過している、上記第1の先端部と、
第2の方向性拡張装置の遠位端に配置された第2の先端部であって、第2の長手軸線が第2の先端部を通過している、上記第2の先端部と、
とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方向性順次拡張システム。
【請求項5】
前記方向性順次拡張システムが、さらに、
複数の第1の深さ指示器であって、第1の方向性拡張装置における第1の外面に配置され、複数の第1の深さ指示器は、第1の長手軸線に対して略垂直である第1の外面上にそれぞれ延び、複数の第1の深さ指示器は、第1の先端部と複数の第1の深さ指示器との間に、それぞれ複数の第1の距離を形成する、上記複数の第1の深さ指示器と、
複数の第2の深さ指示器であって、第2の方向性拡張装置における第2の外面に配置され、複数の第2の深さ指示器は、第2の長手軸線に対して略垂直である第2の外面上にそれぞれ延び、複数の第2の深さ指示器は、第2の先端部と複数の第2の深さ指示器との間に、それぞれ複数の第1の距離を形成する、上記第2の深さ指示器と、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載の方向性順次拡張システム。
【請求項6】
第1及び第2の拡張装置は、それぞれそれらの近位端に配置された、第1及び第2の把持部を具備していることを特徴とする請求項1に記載の方向性順次拡張システム。
【請求項7】
第1の方向性拡張装置は第1の長さを有し、第2の方向性拡張装置は第2の長さを有し、第1の長さは、第2の長さに比べて長くなっていることを特徴とする請求項1に記載の方向性順次拡張システム。
【請求項8】
刺激プローブは、プローブ長さを有し、プローブ長さは、第1の長さ及び第2の長さに比べて長くなっていることを特徴とする請求項7に記載の方向性順次拡張システム。
【請求項9】
第1の方向性拡張装置は第1の直径を有し、第2の方向性拡張装置は第2の直径を有し、第2の直径は、第1の直径に比べて大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の方向性順次拡張システム。
【請求項10】
神経を避けるために、刺激プローブと第1の方向性拡張装置と第2の方向性拡張装置とを有する方向性順次拡張システムを用いて、腰部筋肉を通して患者の脊椎へのアクセス開口部を形成する方法であって、第1及び第2の方向性拡張装置が、第1及び第2のボアを有し、第1及び第2のボア軸線が第1及び第2の長手軸線からそれぞれオフセットしており、この方法が、
(a) 腰部筋肉の中へ刺激プローブを横方向に挿入する段階と、
(b) 腰部筋肉における安全領域に配置させるために、刺激プローブに、EMGを介して電気パルスを伝達する段階と、
(c) プローブ先端部が患者の脊椎に近接するように、腰部筋肉を通して刺激プローブを横方向に挿入する段階と、
(d) 第1の方向性拡張装置を腰部筋肉に通して患者の脊椎に向けて挿入し、第1のボアを備えた刺激プローブの摺動係合によって案内し、第1のボア軸線を第1の長手軸線に比べて神経の近くに配置する段階と、
(e) 第2の方向性拡張装置を腰部筋肉に通して患者の脊椎に向けて挿入し、第2のボアを備えた第1の方向性拡張装置の摺動係合によって案内し、第2のボア軸線を第2の長手軸線に比べて神経の近くに配置する段階と、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記方法が、さらに、
(f) 第2の方向性拡張装置にかぶせて開創器を挿入する段階、
を備えていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、さらに、
(f) 段階(c)の前に、安全領域の位置を術中X線透視を介して確認する段階、
を備えていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
神経を避けるために、刺激プローブとEMGと第1の刺激通路及び第2の刺激通路を備えてなる刺激拡張装置とを有するブラント刺激拡張システムを用いて、腰部筋肉を通して患者の脊椎へのアクセス開口部を形成する方法であって、この方法が、
(a) 腰部筋肉の中へ刺激拡張装置を横方向に挿入する段階と、
(b) 患者の腰部筋肉における安全領域に配置させるために、刺激拡張装置に、EMGを介して電気パルスを伝達する段階と、
(c) 腰部筋肉を通して、患者の脊椎に向けて刺激拡張装置を横方向に挿入する段階と、
(d) 刺激通路の中へ刺激プローブを挿入する段階と、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記方法がさらに、EMGを使用しつつ刺激拡張装置及び刺激プローブを回転させて、神経の位置を確認する段階(e)を備えていることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、さらに、
(e) 通路から刺激プローブを取り外す段階と、
(f) 第2の刺激通路の中へ刺激プローブを再挿入する段階と、
を備えていることを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−540196(P2010−540196A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528207(P2010−528207)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/078927
【国際公開番号】WO2009/046414
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(505377463)ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【Fターム(参考)】