説明

拡張式表面ブリーザ及び方法

【課題】品のフィーチャにより形成された複雑な表面形状を含む場合、ブリーザ材料で部品レイアップを覆うことが困難である。部品レイアップの表面領域全体に、素早く且つ容易に広げることができ、真空バッグ処理の間に複雑な部品の輪郭に適合する一片のブリーザが必要とされている。
【解決手段】単一シート26のブリーザを使用することにより、ブリーザ材料を取り付けるのに必要な作業量が低減し、ブリーザ材料を様々な大きさのストリップに切断する必要から生じる材料の無駄を低減することができる。単一シート26のブリーザ材料に複数のスリット34が切り込まれる。スリット34は、元の長さより長く伸張することにより、ブリーザシートを拡張させることができる。成形プロセスの間に、スリット34が拡張することにより、ブリーザシート26は部品の表面フィーチャ22a及び輪郭に適合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、複合部品の作製に使用される真空バッグ装備及び供給品に関し、具体的には、部品レイアップの、複雑な輪郭を持つ表面と適合する拡張式の表面ブリーザに関する。
【背景技術】
【0002】
複合部品の作製中に、表面ブリーザは、シールされた真空バッグの直下で、後に真空下で処理される部品レイアップの表面の上に配置される。ブリーザは、レイアップの表面上に概ね均一な通気経路を提供し、成形及び硬化処理のサイクルの間にレイアップから空気及び揮発性物質を逃がすことができる。空気及び揮発性物質を除去することは、部品の通気度を低減し、部品性能を向上させるために望ましい。ブリーザは、典型的には、ポリエステル又はナイロンの、特定の用途に適した大きさに切断された様々な重量及び厚みの不織布材料からなる。
【0003】
部品が、部品のフィーチャにより形成された複雑な表面形状を含む場合、ブリーザ材料で部品レイアップを覆うことが困難である。このようなフィーチャの上にブリーザ材料の大きな切片を配置すると、表面のフィーチャに適合せずに、ブリッジングとしても知られる隙間ができることがある。このような隙間を避けるために、ブリーザ材料は、様々な幅の複数のストリップに切断され、それらの個々のストリップは、ブリッジングなしで部品レイアップをほぼ完全に覆うために、複雑な輪郭を有する表面のフィーチャの上及びそのようなフィーチャの周りに注意深く配置される。部品レイアップを覆うために複数のブリーザストリップを使用することは、長時間を要し、特に部品レイアップが極めて大きく、且つ複雑な外形を有する場合、材料が無駄になりうる。
【0004】
したがって、部品レイアップの表面領域全体に、素早く且つ容易に広げることができ、真空バッグ処理の間に複雑な部品の輪郭に適合する一片のブリーザが必要とされている。また、人件費及び材料の無駄を低減し、ブリーザ材料のブリッジングをなくす複合部品作製方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
開示される表面ブリーザは、複合部品レイアップの全面積を覆って部品の複雑な表面形状に適合する一枚の不織布ブリーザ材料からなっている。単一シートのブリーザを使用することにより、ブリーザ材料を取り付けるのに必要な作業量が低減し、ブリーザ材料を様々な大きさのストリップに切断する必要から生じる材料の無駄を低減することができる。単一シートのブリーザ材料に複数のスリットが切り込まれる。スリットは、元の長さより長く伸張することにより、ブリーザシートを拡張させることができる。成形プロセスの間に、スリットが拡張することにより、ブリーザシートは部品の表面フィーチャ及び輪郭に適合する。スリットは、一般的な切断技術を用いて形成することができ、必要に応じて、シートの一又は複数の部分を拡張させる様々な寸法、形状、及び方向を有することができる。
【0006】
開示される一実施形態によれば、複合部品を処理する真空バッグに用いるためのブリーザが提供され、このブリーザは、部品の上に配置される、少なくとも一のスリットを有する一枚の透過性材料のシートからなる。透過性材料のシートは、シートの厚みのほぼ全体にわたる複数のスリットを含み、各スリットは拡張可能である。一実施形態では、少なくともスリットの幾つかは互いにほぼ平行であり、シート全体にほぼ均一に分配されている。一実施形態では、スリットは複数の隣合う列に配列されており、各列のスリットは、隣接する列のスリットからずれている。
【0007】
別の実施形態によれば、真空バッグ処理の間に、凹凸のある表面を有する複合部品から空気と揮発性物質とを逃がすことができるブリーザが提供される。ブリーザは、真空バッグ内部で部品上で伸張させることができる一枚の透過性材料のシートからなる。ブリーザは、真空バッグが部品に対して成形圧力を印加するときに拡張して部品表面の輪郭に適合することができる。一枚の透過性材料のシートは、成形プロセスの間にシートの拡張を可能にする複数の拡張可能なスリットを含む。一実施形態では、各スリットは、細長く、縦軸を有している。スリットは、縦軸にほぼ直行する方向に拡張可能である。透過性材料のシートは、部品のほぼ全体を覆う面積を有している。
【0008】
また別の一実施形態によれば、部品を真空バッグ処理するための拡張可能なブリーザを作製する方法が提供される。この方法は、一枚のブリーザ材料のシートに少なくとも一つのスリットを形成することを含む。この方法は、シートにスリットを入れて材料シートに複数のスリットを形成することをさらに含む。一実施形態では、方法は、ブリーザ材料のシートを折り畳んで複数層のスタックを形成すること、及び層のスタックに複数の切り込みを入れることを含む。
【0009】
また別の実施形態によれば、表面に凹凸のある複合部品を成形するための真空バッグアセンブリが提供される。この真空バッグアセンブリは、複合部品が上に配置されるツールと、ツールに対してシールされて部品を成形するために真空引きされる真空バッグとを備えている。真空バッグアセンブリは、部品とバッグとの間に、部品から空気と揮発性物質とを逃がすためのブリーザをさらに備えている。ブリーザは部品の面積のほぼ全体を覆い、その少なくとも一部は、真空バッグが真空引きされると、拡張して部品の表面の凹凸に適合する。ブリーザは、一枚の不織布材料のシートを含み、ブリーザの拡張可能な部分は複数の拡張可能なスリットを含んでいる。
【0010】
また別の実施形態によれば、複雑な、凹凸のある表面を有する複合部品の作製方法が提供される。この方法は、複合プライレイアップを組み立てること、ブリーザにスリットを形成すること、複合プライレイアップの上にブリーザを配置すること、複合プライレイアップ及びブリーザを真空バッグ処理すること、及び真空バッグを用いてプライレイアップを成形することを含む。プライレイアップの上にブリーザを配置することは、一枚のブリーザ材料のシートをプライレイアップの表面全体に広げることを含む。ブリーザにスリットを形成することは、ブリーザの、真空バッグによるプライレイアプの成形の間に複合部品の凹凸のある表面にブリーザを適合させる領域内に切り込みを入れることを含む。
【0011】
すなわち、本発明の一態様によれば、複合部品を処理する真空バッグに用いるためのブリーザが提供され、このブリーザは、部品の上に配置される、少なくとも一のスリットを有する一枚の透過性材料のシートからなる。
【0012】
有利には、本ブリーザにおいて、透過性材料のシートは、シートの厚みを貫通する複数のスリットを含み、各スリットは拡張可能である。
【0013】
有利には、本ブリーザにおいて、スリットの少なくとも幾つかは互いに概ね平行である。
【0014】
有利には、本ブリーザにおいて、部品は凹凸のある領域を含み、スリットの少なくとも幾つかは、部品の凹凸のある領域に適合することが必要なシートの領域に概ね均一に分配される。
【0015】
有利には、本ブリーザにおいて、透過性材料のシートは不織布材料である。
【0016】
有利には、本ブリーザにおいて、透過性材料のシートは、少なくとも一方向に伸張可能であり、少なくとも一つのスリットは少なくとも一方向に拡張可能である。
【0017】
有利には、本ブリーザにおいて、スリットは複数の隣合う列に配列されており、各列のスリットは、隣接する列のスリットからずれている。
【0018】
有利には、本ブリーザにおいて、少なくともスリットの一部は弓形である。
【0019】
本発明の別の態様によれば、真空バッグ処理の間に凹凸のある表面を有する複合部品から空気と揮発性物質とを逃がすことのできるブリーザであって、真空バッグ内部で部品の上に広げられる一枚の透過性材料のシートを含むブリーザが提供され、このブリーザは、真空バッグにより部品に成形圧力が印加されるとき、部品の凹凸のある表面に適合するように拡張可能である。
【0020】
有利には、本ブリーザの透過性材料のシートは、シートが伸張するとシートに隙間を形成する複数の拡張可能なスリットを含む。
【0021】
有利には、本ブリーザにおいて、スリットは、透過性材料のシートの厚み全体にわたって延びており、スリットの少なくとも幾つかは互いに概ね平行である。
【0022】
有利には、本ブリーザにおいて、各スリットは細長く、縦軸を有しており、縦軸とほぼ直交する方向に拡張可能である。
【0023】
有利には、本ブリーザにおいて、透過性材料のシートは、部品のほぼ全体を覆う面積を有している。
【0024】
本発明の別の態様によれば、部品を真空バッグ処理するための拡張可能なブリーザの作製方法が提供され、この方法はブリーザ材料のシートに少なくとも一つのスリットを形成することを含む。
【0025】
有利には、この方法は、ブリーザ材料のシートに複数のスリットを形成することをさらに含む。
【0026】
有利には、この方法では、スリットを形成することは、ブリーザ材料のシートにスリットを切り込むことにより実行される。
【0027】
有利には、この方法では、スリットを形成することは、ブリーザ材料のシートを折り畳んで複数層のスタックを形成すること、及び層のスタックに複数の切り込みを入れることを含む。
【0028】
有利には、この方法では、スリットを形成することは、ブリーザ材料のシートに、概ね平行な複数の切り込みを入れることにより実行される。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、凹凸のある表面を有する複合部品を成形するための真空バッグアセンブリが提供され、このアセンブリは、上に複合部品を載せるツールと、ツールにシールされて部品を成形するために真空引きされる真空バッグと、部品とバッグとの間に配置されて、部品から空気と揮発性物質とを逃がすブリーザとを含んでおり、ブリーザは部品の面積のほぼ全体を覆い、ブリーザの少なくとも一部は、真空バッグが真空引きされると、部品の表面形状に適合するように拡張可能である。
【0030】
有利には、この真空バッグアセンブリにおいて、ブリーザは、一枚の不織布材料のシートを含み、ブリーザの拡張可能な部分は複数の拡張可能なスリットを含んでいる。
【0031】
本発明のまた別の態様によれば、凹凸のある複雑な表面を有する複合部品の作製方法が提供され、この方法は、複合部品レイアップを組み立てること;ブリーザにスリットを形成すること;複合部品レイアップの上にブリーザを配置すること;複合部品レイアップとブリーザとを真空引きすること、及び真空バッグを用いて部品レイアップを成形することを含む。
【0032】
有利には、この方法では、部品レイアップの上にブリーザを配置することは、ブリーザを伸張させることを含む。
【0033】
有利には、この方法では、部品レイアップの上にブリーザを配置することは、一枚のブリーザ材料のシートを部品レイアップの表面全体に広げることを含む。
【0034】
有利には、この方法では、ブリーザにスリットを形成することは、ブリーザの、真空バッグによる部品レイアップの成形の間に複合部品の凹凸のある表面にブリーザを適合させる領域内に切り込みを入れることを含む。
【0035】
有利には、この方法では、ブリーザにスリットを形成することは、ブリーザ材料のシートを折り畳んで複数層のスタックを形成すること、及び層のスタックに複数の切り込みを入れることを含む。
【0036】
上記のフィーチャ、及び機能は、本発明の様々な実施形態で独立に達成可能であるか、又は他の実施形態において組み合わせることが可能である。これらの実施形態について、後述の説明及び添付図面を参照してさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
新規のフィーチャと考えられる有利な実施形態の特徴は、特許請求の範囲に明記される。しかしながら、有利な実施形態と、好ましい使用モードと、さらにはその目的及び利点とは、添付図面を参照して本発明の有利な一実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより最もよく理解されるであろう。
【0038】
【図1】開示される表面ブリーザを用いている真空バッグアセンブリの斜視図である。
【図2】図1に示す真空バッグアセンブリをさらに詳細に示す、部分的に展開した断面図である。
【図3】真空バッグを真空引きした後の、図2と同様の断面図である。
【図4】拡張させる前の、ブリーザ材料に設けられたスリットの一つを示している。
【図5】拡張させた後の、ブリーザ材料に設けられたスリットの一つを示している。
【図6】図1に示す表面ブリーザの平面図であり、スリットをさらに詳細に示している。
【図7】様々な構成のスリットを用いている別の実施形態による表面ブリーザの平面図である。
【図8】一枚のブリーザ材料のシートの平面図であり、スリット形成に使用される一のステップを示している。
【図9】一枚のブリーザ材料のシートの平面図であり、図8に連続するスリット形成ステップを示している。
【図10】一枚のブリーザ材料のシートの平面図であり、図9に連続するスリット形成ステップを示している。
【図11】一枚のブリーザ材料のシートの平面図であり、図10に連続するスリット形成ステップを示している。
【図12】図11の線12−12に沿った断面図であり、カッターも示されている。
【図13】図8と同様の、一枚のブリーザ材料のシートの平面図であるが、図8〜12に示す方法によりシートにはスリットが切り込まれている。
【図14】開示される拡張可能なブリーザを用いた複合部品の作製方法のステップを示すフロー図である。
【図15】航空機の製造及び保守方法を示すフロー図である。
【図16】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
まず図1を参照する。図1に示す真空バッグアセンブリ20は、複合部品レイアップ22を形成し、成形し、及び/又は圧密化するために使用される。真空バッグアセンブリ20は、広義には、ツール24、ブリーザ材料のシート26、柔軟な真空バッグ28、及びエッジブリーザ30を備えている。真空バッグ28は、処理中にバッグ28から空気と揮発性物質とを逃がすことのできる一又は複数の出口31を有することができる。図示の実施形態では、複合部品レイアップ22は、概ね平坦な頂部22bに向かって集まる4つの湾曲した側面22aからなる、凹凸のある複雑な表面を有している。図1に示す複合部品レイアップ22は、凹凸のある単純な又は複雑な表面、並びに/或いは一又は複数の湾曲した側面を有する多岐にわたる複合部品を例示しているにすぎない。ツール24は、概ね平坦なツール表面24aを含むが、他の実施形態では、作製される複合部品の輪郭によっては、ツール表面24aは一又は複数の湾曲又は凹凸を有してもよい。
【0040】
エッジブリーザ30は、複合部品レイアップ22の外縁を囲んでおり、加熱及び成形されるとき、部品レイアップ22から空気と揮発性物質とを逃がす働きをする。ブリーザ材料のシート26(以降シート26又はブリーザシート26と呼ぶ)は、部品レイアップ22の表面領域のほぼ全体を覆うもので、空気及び揮発性物質を通すことのできるナイロン又はポリエステルといった従来の透過性の不織布材料から形成することができる。後述でさらに詳細に説明するように、ブリーザ材料のシート26は複数のほぼ平行なスリット34を含み、これらのスリットは、シート26の厚みtを貫通しており、伸張25することによりシートを拡張させて、凹凸のある表面領域22a、22bにブリーザシート26を容易に適合させることができる。真空バッグ28は、エッジシーラント32によりツール表面24aにシールされる膜又は従来の柔軟なバッグから構成することができる。有利には、後述するように、図1に示すコンポーネントを組立てる間に部品レイアップ22の上に一枚のシート26が広げられるので、ブリーザ材料の個々のストリップを切断して凹凸のある表面領域22a、22bの上及び周囲に配置する必要がなく、よって真空バッグ処理のためにレイアップ22を準備するのに要する時間が短縮される。図示の実施形態では一枚のブリーザシート26を使用して部品レイアップ22の全領域を覆うが、他の用途においては、開示される実施形態の有利な利点は、部品レイアップを覆うために複数のブリーザシート26を使用することにより実現されてもよい。
【0041】
図2は、図1に示す真空バッグアセンブリ20の他のコンポーネントを示している。随意で、剥離層38、40が部品レイアップ22の上と下に配置されてもよい。また、剥離層40の上に放出膜(図示しない)を配置することができ、レイアップ22の上、真空バッグ20の下、又は真空バッグ20の上に一又は複数の当て板(図示しない)を配置することにより、部品レイアップ22の様々なフィーチャに成形圧力を分配することができる。図3は、バッグ28が真空引きされた後の真空バッグアセンブリ20を示している。部品レイアップ22を生成する間に、バッグ28を真空引きすると、バッグ28によってブリーザシート26が部品レイアップ22の凹凸のある表面22a、22bの上に押し付けられる。また、バッグ28の真空引きにより、空気と揮発性物質は部品レイアップ22から引き抜かれる。引き抜かれる空気と揮発性物質とはブリーザシート26を通過して出口31からバッグ28を出る。真空バッグ28の真空引きを行う間に、バッグ28によりブリーザ材料のシート26は部品レイアップ22の凹凸のある表面22a、22bに押し付けられる。バッグ28によりブリーザ26に印加される気圧はスリット34を拡張させ、これにより、必要に応じてブリーザ材料のシート26が拡張して凹凸のある表面22a、22bに適合する。
【0042】
図4及び図5に示されるように、各スリット34は細長く、縦軸37を有している。真空バッグ28によってブリーザ材料のシート26が部品レイアップ22上に押し付けられると、スリット34が拡張35して40の位置で広がるか、又は隙間が開き(図5)、スリット34に近接するシート26の領域が部品レイアップ22の実際の凹凸に適合する。スリット34は、スリット34の縦軸37に直交する方向に拡張する。
【0043】
次に図6を参照する。図4及び5に示すスリット34の拡張により、シート26は、元の長さL1からL2へと伸びることにより拡張することができる。スリット34の大きさ、数、位置、及び形状は、複合部品レイアップ22の用途と、表面の凹凸及びフィーチャとに応じて様々でよい。図6は、スリット34に可能な多くのレイアウト構成のうちの一つを例示しているに過ぎない。図6では、スリット34は、隣合うほぼ平行な列33a、33bに配列されており、隣接する列33a、33b内のスリット34は、互いからずれているので、スリット34は互い違いに並んでいる。このようにスリット34を互い違いに配置することにより、ブリーザシート26の伸張がさらに均一なものになる。各スリット34の長さ48と、隣接する列33a、33b内のスリット間の距離46とは、用途に応じてすべて変化させることができる。各スリット34の幅42も変化させることができる。例えば、一実施形態では、各スリット34の幅42はスリット34を形成するために使用されるカッター(図示しない)の厚みと概ね同じである。しかしながら、他の実施形態では、スリットは、カッターの幅より大きな幅42を有し、ブリーザシート26上においてスロット状の開口となっている。スリット34は、図6に示した実施形態では互いにほぼ平行であるが、他の実施形態では非平行でもよい。
【0044】
前述のように、スリット34の大きさ、形状、及び位置と、その数とは、用途に応じて変化させることができる。例えば、図7では、ブリーザシート26の領域50には、実質的にランダムに配置された平行なスリット34が設けられており、これらスリット48の長さは同じでもばらばらでもよい(図6)。同じブリーザシート26の別の領域52に設けられたスリット34の長さ48は、領域50内のスリット34より長くすることができ、その数は領域50内のスリット34の数より少なくても多くてもよい。幾つかの実施形態では、前述のように、スリット34は直線以外の形状を有することができる。例えば、ブリーザシート26の領域53に設けられたスリット34の各々は、弓形で、部品レイアップ22のフィーチャ(図示しない)に対応する円形パターンに配置されており、これによりブリーザシート26はフィーチャの周囲に適合することができる。他の実施形態では、ブリーザシート26は、交差する二つ一組の拡張可能なスリット34’、34’’を含む一又は複数の領域55を有することができ、このような領域により、ブリーザシート26は、スリット34’、34’’の相対的な角度方向に応じて、複数の方向、例えば縦横に伸張することができる。また別の実施形態では、互いに交差する三つ以上のスリット34を設けることにより、ブリーザシート26は三つ以上の方向に伸張可能である。
【0045】
次に、図8〜12を参照する。図8〜12は、迅速且つ容易にブリーザシート26にスリット34を形成する方法の連続するステップを示している。図8に示すように、適切なブリーザ材料からなるシート26を、折り畳み線56に沿って折り畳む(54)。次に、図9に示すように、折り畳んだシート26を、第2の折り畳み線58に沿って再び折り畳む(54)。次に、図10に示すように、折り畳み線60に沿ってシート26をさらに折り畳み(54)、図11及び12に示すような折り畳まれた層65のスタック62を生成する。図8〜10に示す折り畳みステップは、ブリーザシート26の大きさ及び厚みと特定の用途とに応じて、任意の回数にわたって繰り返すことができる。次に図11及び12を参照する。図11及び12に示すように、スタック62の両側の縁62a、62bに、折り畳まれたスタック62を貫通する切り込み64を入れる。切り込み64の長さ、方向、及び間隔は、複合部品レイアップ22の用途及び形状に応じて変化させることができる。図12は、切り込み64を入れるために、折り畳まれたスタック62に垂直に通過させる(68)カッター66の使用を示している。カッター66は、ガーバー(Gerber)カッターのようないずれかの適切なデバイス、又は手動式はさみ(どちらも図示しない)を含むことができる。上述から明らかなように、ブリーザシート62を折り畳まれたスタック26に形成することにより、一つ一つの切り込み64により多数のスリット34が生成される。
【0046】
このようにして完成したスリット34付きブリーザシート26を図13に示す。図11及び図12に示される切断技術を用いることで、スリット34aの幾つかはシート26の縁26aに達する。他の実施形態では、図11に示す切り込み64は、スタック62の縁62a、62bの内側に位置しているので、図13に示すスリット34aはシートの縁26aの内側に位置することになる。図8〜12に示される、ブリーザシート26にスリット34を形成する方法は、スリット34を形成するために利用できる広範な技術を例示しているにすぎない。例えば、スリット34はレーザカッター(図示しない)、又はプレス機を使用したダイカット(図示しない)により形成することができる。しかしながら、図8〜12に示す方法は、単純な切断設備を用いて非熟練者によって迅速に実行することが可能なため、一部の製造環境において有利でありうる。
【0047】
次に図14を参照する。図14は、上述のブリーザシート26を用いて、複雑な表面形状を有する複合部品を作製する方法のステップを示している。本方法は、ステップ70において、適切なブリーザ材料のシート26を準備することにより開始される。上述のように、ブリーザ材料は、ポリエステル又はナイロンのような、部品レイアップ22の表面から空気及び揮発性物質を逃がすことのできる透過性の不織布材料から構成することができる。有利には、シート26は、一片のブリーザ材料からであり、部品レイアップの面積のほぼ全体を覆うのに十分な面積を有している。次に、72に示すように、ステップ70で準備したブリーザ材料のシートに適切な切り込み64を入れる。一実施形態では、74に示すように、ブリーザシート26を一又は複数回に亘って折り畳むことにより、複数層のスタック65を形成する。次いで、76に示すように、層のスタック65に適切な切り込み64を入れることにより、層のスタック65に個々の切り込みを入れる間に複数のスリット34を同時に形成する。スリット34は、部品レイアップ22の特定の輪郭にシート26を適合させる又はカスタマイズするように、ブリーザシート26に配置される。78では、従来のプライレイアップ技術を用いて複合部品レイアップ22をツール24上に組み立てることにより、一又は複数の単純な又は複雑な凹凸のある部品表面22a、22bを有する部品22を形成する。図14には示さないが、ステップ78において部品レイアップ22を完成させた後で、一又は複数の剥離層、放出膜、当て板又は真空バッグアセンブリに一般に使用される他のコンポーネントを取り付けることができる。ステップ80では、ブリーザシート26を部品レイアップの上に広げ、部品レイアップ22の表面上で引き伸ばす。次に、82では、真空バッグ28をツール24にシールし、部品レイアップ22とブリーザシートとを覆う。84では、バッグ28を真空引きしてバッグ28をブリーザシート26と部品レイアップ22との上に押し付けることにより、部品レイアップ22を成形及び/又は圧密化する。86では、ブリーザシート26のスリット34により、ブリーザシート26が拡張して部品レイアップ22の表面形状22a、22bに適合する。ステップ88において、真空バッグ28、ブリーザ26、及び真空バッグアセンブリ20の他のコンポーネントを除去した後、ステップ90で、成形された部品レイアップ22を取り出す。
【0048】
本発明の実施形態は、様々な用途に使用される可能性を有し、例えば航空宇宙、船舶、自動車、及び自動レイアップ装備が使用される他の用途を含む特に輸送産業に用途を見出すことができる。したがって、図15及び図16に示すように、本発明の実施形態は、図15に示す航空機の製造及び保守方法92、及び図16に示す航空機94に関して使用することが可能である。開示される実施形態の航空機の応用分野には、例えば、限定されないが、広範な複合部品及びコンポーネントのいずれかの、レイアップ、成形、及び硬化が含まれ、そのような部品及びコンポーネントとは、幾つか例を挙げると、限定されないが、梁、桁、及び縦通材を含むスチフナーメンバーなどである。製造前の段階では、例示的な方法92は、航空機94の仕様及び設計96と、材料調達98とを含みうる。製造段階では、航空機94のコンポーネント及びサブアセンブリの製造100と、システムインテグレーション102とが行われる。その後、航空機94は認可及び納品104を経て運航106される。顧客により運航される間に、航空機94は定期的な整備及び保守106(改造、再構成、改修なども含みうる)を受ける。
【0049】
方法92の各プロセスは、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレーター(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレーターは、限定しないが、任意の数の航空機製造者、及び主要システムの下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0050】
図16に示されるように、例示的方法92によって製造された航空機94は、複数のシステム112及び内装114を有する機体110を含むことができる。高レベルのシステム112の例には、推進システム116、電気システム118、油圧システム120、及び環境システム122のうちの一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示したが、本発明の原理は、船舶及び自動車産業などの他の産業にも適用可能である。
【0051】
本明細書に具現化されたシステムと方法は、製造及び保守方法92の一又は複数の任意の段階で採用することができる。例えば、製造工程100に対応するコンポーネント又はサブアセンブリは、航空機94が運航106中に製造されるコンポーネント又はサブアセンブリに類似の方法で作製又は製造される。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせは、例えば、航空機94の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機94のコストを削減することにより、製造段階100及び102の間に利用することができる。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせのうちの一又は複数を、航空機94の運航中に、例えば限定しないが、整備及び保守108に利用することができる。
【0052】
上述した種々の有利な実施形態の説明は、例示及び説明を目的とするものであり、完全な説明であること、又はこれらの実施形態を開示された形態に限定することを意図していない。当業者には、多数の修正例及び変形例が明らかであろう。さらに、種々の有利な実施形態は、他の有利な実施形態とは異なる利点を提供することができる。選択された一又は複数の実施形態は、実施形態の原理、実際の用途を最もよく説明するため、及び他の当業者に対し、様々な実施形態の開示内容と、考慮される特定の用途に適した様々な修正との理解を促すために選択及び記述されている。
【符号の説明】
【0053】
20 真空バッグアセンブリ
22 部品レイアップ
22a、 部品の、凹凸のある表面領域
22b 部品表面の、概ね平坦な頂部
24 ツール
24a ツール表面
25 伸張
26 ブリーザ材料のシート
26a シートの縁
28 真空バッグ
30 エッジブリーザ
31 出口
32 エッジシーラント
33a、33b スリットの列
34、 スリット
35 拡張
37 スリットの縦軸
38、40 剥離層
42 スリットの幅
46 スリット間の距離
48 スリットの長さ
50、52、53、55 ブリーザシート上の一領域
56、58、60 折り畳み線
62 スタック
62a、62b スタックの縁
64 切り込み
65 層のスタック
66 カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合部品の真空バッグ処理に用いられるブリーザであって、
前記部品の上に配置される、透過性材料からなるシートであって、少なくとも一つのスリットを有するシート
を含むブリーザ。
【請求項2】
前記透過性材料のシートには、シートの厚みを貫通する複数のスリットが設けられており、
前記スリットの各々は拡張可能である、
請求項1に記載のブリーザ。
【請求項3】
前記スリットの少なくとも幾つかが互いに概ね平行である、請求項2に記載のブリーザ。
【請求項4】
部品が凹凸のある領域を含み、前記部品の凹凸のある領域に適合することが必要な前記シートの領域に、前記スリットの少なくとも幾つかが概ね均一に分配されている、請求項2又は3に記載のブリーザ。
【請求項5】
前記透過性材料のシートが不織布材料である、請求項2ないし4のいずれか一項に記載のブリーザ。
【請求項6】
前記透過性材料のシートが少なくとも一方向に伸張可能であり、
前記少なくとも一つのスリットが少なくとも一方向に拡張可能である、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のブリーザ。
【請求項7】
前記スリットが複数の隣接する列に配列されており、
前記列の各々に含まれるスリットは、隣接する列内のスリットからずれている、
請求項2ないし6のいずれか一項に記載のブリーザ。
【請求項8】
前記スリットの少なくとも一部は弓形である、請求項2ないし7のいずれか一項に記載のブリーザ。
【請求項9】
部品の真空バッグ処理に使用される拡張式ブリーザの作製方法であって、
一枚のブリーザ材料のシートに少なくとも一つのスリットを形成すること
を含む方法。
【請求項10】
ブリーザ材料のシートに複数のスリットを形成すること
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記スリットを形成することが、ブリーザ材料のシートにスリットを切ることにより実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記スリットを形成することが、
ブリーザ材料のシートを折り畳むことにより、複数層のスタックを形成すること、及び
前記層のスタックに複数の切り込みを入れること
を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記スリットを形成することが、ブリーザ材料のシートに、概ね平行な複数の切り込みを入れることにより実行される、請求項10ないし12のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−107707(P2013−107707A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−249333(P2012−249333)
【出願日】平成24年11月13日(2012.11.13)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】