説明

拭き上げ型親水化処理剤、親水性保護膜の形成方法及び親水性保護膜

【課題】樹脂成形品又は塗膜表面に親水性、美観、硬度、密着性、防汚性及び保存安定性に優れる保護膜を形成する拭き上げ型親水化処理剤の提供。
【解決手段】一般式(1)で示されるオルガノシラン化合物、シランカップリング剤を混合した混合物の加水分解縮合物、非イオン界面活性剤、グリセリン、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル変性シリコーン等の液状の水性有機化合物と、水又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒とを含む拭き上げ型親水化処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性の樹脂成形品又は塗膜の表面を親水化する拭き上げ型親水化処理剤に関する。また、樹脂成形品又は塗膜の表面に形成するための親水性保護膜の形成方法、樹脂成形品又は塗膜の表面に形成される親水性保護膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ユーザーは、自動車塗膜の外観保護のために油性ワックスをコーティング処理して、塗膜の艶や美観を維持していた。しかしながら、油性ワックスの被膜の表面には水滴痕が残留したり、大気中のダスト成分が吸着したりする上に、各種の汚れと油性ワックスが複合化して塗膜上に固着することがあった。
【0003】
このような問題を解決する方法として、疎水性の塗膜表面を親水化する方法が提案されている。
例えば、特許文献1では、コロイド状無機酸化物と界面活性剤とを含む防汚コーティング液が提案されている。しかし、特許文献1に記載のコーティング液を用いた場合には、塗布した直後から被膜が形成されるため、塗布時の液のタレや拭き筋を修正することが困難であった。また、塗膜に対する密着性が得られにくいという問題があった。
【0004】
特許文献2では、脂肪族スルホン酸化合物、カルボキシ基含有化合物、特定のオルガノシリケート及び樹脂成分を含む耐汚染性の塗料組成物が提案されている。しかし、特許文献2に記載の塗料組成物による処理方法は、自動車の製造工程に適用され、膜厚を数十μmに調整し、140℃で30分の加熱処理を行う方法である。この方法は簡便ではないため、自動車ユーザーが行うことは困難であった。さらに、オルガノシリケートとして不完全な加水分解物を使用した場合には接触角が小さくならず、被膜が親水化しないことがあった。また、完全加水分解物を使用した場合でも、縮合させるために加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりすると、加水分解で生じた親水性の水酸基が縮合反応して減少する。その結果、得られた被膜は期待した親水性が得られず、しかも鉛筆硬度が硬くなってクラックを生じることがあった。
【0005】
特許文献3では、光触媒を用いた親水化方法が提案されている。しかしながら、光触媒を自動車塗膜に適用するためには、有機物である塗膜を光触媒の酸化分解作用から保護するためのバインダー層を設ける必要があった。また、親水性塗膜形成時に加熱処理が必要になるため、自動車ユーザーが手軽に行う方法ではない。
【0006】
特許文献4では、特定の界面活性剤、シリケート化合物、シランカップリング剤、有機溶媒、触媒及び水を含む親水化処理剤が提案されている。しかしながら、特許文献4に記載の親水化処理剤を用いた場合でも、塗布した直後から被膜が形成されるため、塗布時の液のタレや拭き筋を修正することが困難であった。さらに、有機溶媒中で加水分解、脱水縮合反応が進行した生成物は該溶媒中で難溶性であるため析出しやすく、ポットライフが短く、保存安定性が低いという問題があった。
【特許文献1】特開2003−206416号公報
【特許文献2】特開2002−69374号公報
【特許文献3】特許第2917525号公報
【特許文献4】特開2004−269629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、疎水性の樹脂成形品又は塗膜表面に親水性、美観、硬度、密着性及び防汚性に優れる保護膜を自動車ユーザーが簡便に形成でき、しかも保存安定性に優れる拭き上げ型親水化処理剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、疎水性の樹脂成形品又は塗膜表面に親水性、美観、硬度、密着性及び防汚性に優れる保護膜を自動車ユーザーが簡便に形成できる親水性保護膜の形成方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、美観、硬度、密着性及び防汚性に優れる親水性保護膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を包含する。
[1] (A)下記一般式(1)で表されるオルガノシラン化合物(a−1)と、下記一般式(2)及び/又は下記一般式(3)で表されるシランカップリング剤(a−2)とを混合した混合物の加水分解縮合物、
(B)液状の水性有機化合物、
(C)水又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒、
を含有する拭き上げ型親水化処理剤であって、
(A)成分における(a−1)成分と(a−2)成分との混合比率[(a−1):(a−2)]が質量比率で1:1〜20:1であり、且つ、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比率[(A):(B)]が1:9〜4:1であることを特徴とする拭き上げ型親水化処理剤。
【0009】
【化1】

【0010】
(式(1)中、R〜Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3のいずれかのアルキル基を表す。また、mは1〜40のいずれかの整数を表す。)
【0011】
【化2】

【化3】

【0012】
(式(2)及び式(3)中、R,R,R10は、各々独立して、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、フェニル基、ウレイド基及び炭素数1〜4のいずれかのポリオキシアルキレン基からなる群から選択される1種の置換基を有する炭化水素基、又は、炭素数1〜8のいずれかのアルキル基を表す。R〜R,R11,R12は、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3のいずれかのアルキル基を表す。また、n,nは、各々独立して、1〜10のいずれかの整数を表す。)
【0013】
[2] (A−1)下記一般式(1)で表されるオルガノシラン化合物(a−1)の加水分解縮合物、
(A−2)下記一般式(2)及び/又は下記一般式(3)で表されるシランカップリング剤(a−2)の加水分解縮合物、
(B)液状の水性有機化合物、
(C)水又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒、
を含有する拭き上げ型親水化処理剤であって、
(A−1)成分の含有量と(A−2)成分の含有量との質量比率[(A−1):(A−2)]が1:1〜20:1であり、且つ、(A−1)成分及び(A−2)成分の含有量の合計量と(B)成分の含有量との質量比率[(A−1)+(A−2):(B)]が1:9〜4:1であることを特徴とする拭き上げ型親水化処理剤。
【0014】
【化4】

【0015】
(式(1)中、R〜Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3のいずれかのアルキル基を表す。また、mは1〜40のいずれかの整数を表す。)
【0016】
【化5】

【化6】

【0017】
(式(2)及び式(3)中、R,R,R10は、各々独立して、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、フェニル基、ウレイド基及び炭素数1〜4のいずれかのポリオキシアルキレン基からなる群から選択される1種の置換基を有する炭化水素基、又は、炭素数1〜8のいずれかのアルキル基を表す。R〜R,R11,R12は、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3のいずれかのアルキル基を表す。また、n,nは、各々独立して、1〜10のいずれかの整数を表す。)
【0018】
[3] (B)液状の水性有機化合物が、非イオン界面活性剤、グリセリン類、ポリアルキレングリコール類、ポリエーテル変性シリコーン類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の拭き上げ型親水化処理剤。
[4] 基材に[1]〜[3]のいずれかに記載の拭き上げ型親水化処理剤を塗布し、拭き上げることを特徴とする親水性保護膜の形成方法。
[5] 拭き上げの際に、軟質バフ又は軟質パッドを備えたポリッシャーを用いることを特徴とする[4]に記載の親水性保護膜の形成方法。
[6] [4]又は[5]に記載の親水性保護膜の形成方法で形成されたことを特徴とする親水性保護膜。
【発明の効果】
【0019】
本発明の拭き上げ型親水化処理剤は、疎水性の樹脂成形品又は塗膜表面に親水性、美観、硬度、密着性及び防汚性に優れる保護膜を自動車ユーザーが簡便に形成でき、しかも保存安定性に優れる。
本発明の親水性保護膜の形成方法によれば、疎水性の樹脂成形品又は塗膜表面に親水性、美観、硬度、密着性及び防汚性に優れる保護膜を自動車ユーザーが簡便に形成できる。
本発明の親水性保護膜は、親水性、美観、硬度、密着性及び防汚性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<親水化処理剤>
(第1の実施形態例)
本発明の拭き上げ型親水化処理剤(以下、親水化処理剤と略す。)の第1の実施形態例について説明する。
本実施形態例の親水化処理剤は、(A)オルガノシラン化合物(a−1)とシランカップリング剤(a−2)とを混合した混合物の加水分解縮合物、(B)液状の水性有機化合物、及び、(C)水又は水と親水性有機溶媒(以下、(C)水又は水と親水性有機溶媒の混合溶媒のことを(C)溶媒という。)との混合溶媒とを含有するものである。
【0021】
[(A)加水分解縮合物]
オルガノシラン化合物(a−1)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0022】
【化7】

【0023】
式(1)におけるR〜Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3のいずれかのアルキル基(具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基)を表す。炭素数が4以上のアルキル基の場合には、加水分解が不十分になって、得られる親水性保護膜の強度が不十分になる
また、mは1〜40のいずれかの整数を表し、好ましくは、1〜20のいずれかの整数である。mが40を超えると、(A)成分を得る際の加水分解縮合反応を制御することが困難となる。
【0024】
オルガノシラン化合物(a−1)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、これらテトラアルコキシシランの部分加水分解物及びテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらオルガノシラン化合物のうちでも、親水性保護膜の親水性をより高くできることから、テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物が好ましく、特にテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物がより好ましい。
【0025】
シランカップリング剤(a−2)は、下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される化合物である。
【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
式(2)及び式(3)中、R,R,R10は、各々独立して、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、フェニル基、ウレイド基及び炭素数1〜4のいずれかのポリオキシアルキレン基からなる群から選択される1種の置換基を有する炭化水素基、又は、炭素数1〜8のいずれかのアルキル基を表す。R,R,R10が、炭素数9以上のアルキル基の場合には、得られる親水性保護膜の親水性及び防汚性が低下する傾向にある。
また、R,R,R10としては、より親水性の高い保護膜が得られることから、ポリオキシアルキレン基、エポキシ基、アミノ基、ウレイド基のいずれかの置換基を有する炭化水素基が好ましい。
〜R,R11,R12は、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3のいずれかのアルキル基を表す。炭素数が4以上のアルキル基の場合には、架橋速度の低下、親水性の 低下、並びに防汚性の低下が顕著となる。
また、n,nは、各々独立して、1〜10のいずれかの整数を表す。n,nが10を超えると親水性保護膜が形成しにくくなる。
【0029】
一般式(2)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ポリエーテル変性トリアルコキシシランなどのシランカップリング剤、これらシランカップリング剤の部分加水分解物及びシランカップリング剤の部分加水分解縮合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
一般式(3)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ポリエーテル変性ジアルコキシシランなどのシランカップリング剤、これらシランカップリング剤の部分加水分解物及びシランカップリング剤の部分加水分解縮合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
一般式(2)又は(3)で表されるシランカップリング剤のうち、得られる保護膜の親水性制御の点から、ポリエーテル変性シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが好ましい。
【0032】
(A)加水分解縮合物を得る方法としては、オルガノシラン化合物(a−1)とシランカップリング剤(a−2)の混合物に対して3〜100質量倍の水の存在下、30〜70℃で1〜3時間加水分解縮合することが好ましい。
水の量を3〜100質量倍にすれば、容易に反応させることができる。反応温度を30℃以上にすれば、反応速度を速くできるが、70℃を超えると反応速度の向上効果が飽和するので、実益がない。反応時間が1時間以上であれば、充分な収率を確保できるが、3時間以上反応させても収率が増加しないため、実益がない。
また、この反応の際に、溶媒(C)を含有させても構わない。
【0033】
オルガノシラン化合物(a−1)とシランカップリング剤(a−2)との混合比率[(a−1):(a−2)]は質量比率で1:1〜20:1であり、3:2〜10:1であることが好ましい。(a−1)成分を、20:1を超えるように混合すると、親水性保護膜が硬くて脆くなり、また樹脂成形品表面や塗膜表面に密着しにくくなる。一方、(a−1)成分を、1:1より少なくなるように混合すると、親水性保護膜が形成しにくくなり、耐久性も低下するようになる。したがって、オルガノシラン化合物(a−1)とシランカップリング剤(a−2)とを上記の割合で混合することにより、樹脂成形品表面や塗膜表面での被膜形成性、密着性に優れ、耐久性を有する親水性保護膜を形成できる。
【0034】
前記混合物を加水分解縮合する際には、反応速度が高くなることから、触媒を用いることが好ましい。
加水分解縮合の触媒としては、アルコキシシリル基の加水分解を進行させることができるものであれば特に制限はなく、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、モノアルキルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル等の有機酸類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等の無機塩基類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機塩基類、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミン系シランカップリング剤類、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等のアルミ系化合物類、ジンクビス(アセチルアセトネート)等の亜鉛系化合物類、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)等のチタン系化合物類、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等のスズ系化合物類が挙げられる。
【0035】
触媒の使用量は、オルガノシラン化合物(a−1)とシランカップリング剤(a−2)との合計量100質量%に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。触媒の使用量が0.1質量%未満であると、加水分解が十分に進行せず、架橋密度が不十分となり、親水性が得られにくくなる傾向にある。また、触媒の使用量が20質量%を超えると、親水性保護膜の形成が阻害されて十分な被膜強度を確保できないことがある。
【0036】
本実施形態例の親水化処理剤における(A)加水分解縮合物の含有量は0.1〜10質量%であることが好ましい。(A)加水分解縮合物の含有量が0.1質量%未満であると、得られる親水性保護膜の防汚性が低下する傾向にあり、10質量%を超えると、親水化処理剤の保存安定性が低下したり、拭き上げ作業が難しくなったりする傾向にある。
【0037】
[(B)液状の水性有機化合物]
(B)液状の水性有機化合物とは、25℃において液状であり、かつ、大気圧での沸点が250℃を超える水溶性又は水分散性の有機化合物である。
(B)液状の水性有機化合物の具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリンなどのグリセリン類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール共重合体などのポリアルキレングリコール類、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルエステル、ポリグリセリンアルキルエステルなどの非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレン変性ジメチルシリコーンなどのポリエーテル変性シリコーン類等が挙げられる。
【0038】
(B)液状の水性有機化合物の25℃における粘度は100,000mPa・s以下であることが好ましい。(B)液状の水性有機化合物の粘度が100,000mPa・sを超えると、塗布時のタレや筋状の斑を拭き上げによって消失させることができず、均一な親水性保護膜を形成することが困難になる。
【0039】
[(C)溶媒]
(C)溶媒における親水性有機溶媒は、オルガノシラン化合物(a−1)とシランカップリング剤(a−2)との混合物及びその加水分解縮合物(A)を溶解でき、かつ、大気圧での沸点が250℃以下の水溶性又は水分散性の液状有機化合物である。
親水性有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類が挙げられ、これらのうちでも、揮発性、取り扱い性に優れることから、アルコール類、グリコールエーテル類が好ましい。
【0040】
親水性有機溶媒の配合量は、(C)溶媒を100質量%とした際の70質量%未満とすること、言い換えれば水を30質量%以上とすることが好ましい。親水性有機溶媒の配合量が70質量%を超えると、(A)加水分解縮合物が難溶性になって析出したり、ポットライフが短くなったりする傾向にあり、さらには被処理物である樹脂成形品や塗膜を溶解するおそれがある。
【0041】
[各成分の配合]
本実施形態例の親水化処理剤における(A)加水分解縮合物と(B)液状の水性有機化合物との質量比率は1:9〜4:1であり、1:4〜2:1であることが好ましい。(A)成分が上記上限値を超えて含まれる場合には、該親水化処理剤を塗布した直後から硬い親水性保護膜を形成するため、拭き上げによる修正が困難で、親水性保護剤の筋やタレが引き起こす外観不良を修復できない。一方、(A)成分が上記下限値を下回って含まれる場合には、親水性保護膜が形成しにくくなる。
【0042】
また、本実施形態例の親水化処理剤においては、(A)加水分解縮合物及び(B)液状の水性有機化合物の合計量が0.3〜10質量部、(C)溶媒が90〜99.7質量部であることが好ましい(ただし、合計が100質量部である。)。(A)成分と(B)成分との合計量が0.3質量部未満であると、樹脂成形品又は塗膜の全面に均一に親水性保護膜を形成できず、欠陥が生じるため、親水性に斑が生じ、耐久性、防汚性も充分に発揮されないことがある。(A)成分と(B)成分との合計量が10質量部を超えると、親水化処理剤を塗布した直後から親水性保護膜を形成するため、拭き上げによる修正ができず、該親水化処理剤の筋やタレが目立ち、外観不良が生じる傾向にある。また、親水性保護膜表面が平滑になりにくく、かつ、樹脂成形品又は塗膜の表面に不均一に付着するため、親水性が不均一になる傾向にある。
【0043】
[他の成分]
本実施形態例の親水化処理剤においては、(A)加水分解縮合物、(B)液状の水性有機化合物、(C)溶媒の必須成分に加えて、樹脂成分、充填剤、分散剤、増粘剤、有機系紫外線防止剤、有機系酸化防止剤、レベリング剤、防腐剤などの添加剤が添加されていてもよい。
樹脂成分としては、例えば、アクリル−ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。
充填剤としては、例えば、シリカ、有機顔料、無機顔料、セラミック、金属酸化物などが挙げられる。
親水化処理剤中の添加剤の含有量は、親水性保護膜としての機能を充分に確保する点で、(A)〜(C)成分の合計量を100質量部とした際の30質量部以下であることが好ましい。
【0044】
本発明者らが調べた結果、(A)加水分解縮合物と(B)液状の水性有機化合物と(C)溶媒とを含有する本実施形態例の親水化処理剤によれば、スプレーガンや加熱設備などの特別な設備や技術を必要とせずに、自動車ユーザーが従来のワックス掛けと同様に手軽な手作業によって、疎水性の樹脂成形品又は塗膜表面に均一な保護膜を形成できる。得られる保護膜は、親水性が高く、防汚性に優れる。
また、該親水化処理剤によって得られる親水性保護膜は、疎水性の樹脂成形品又は塗膜表面に強固に密着する上に、鉛筆硬度が硬くなりすぎず、クラックを生じにくい。
また、該親水化処理剤では、拭き上げ後に被膜が形成されるため、塗布時の液のタレや拭き筋を修正することができるため、美観に優れる親水性保護膜を容易に形成できる。
また、該親水化処理剤は、ポットライフが長く、保存安定性に優れる。
【0045】
(第2の実施形態例)
本発明の親水化処理剤の第2の実施形態例について説明する。
本実施形態例の親水化処理剤は、(A−1)オルガノシラン化合物(a−1)の加水分解縮合物、(A−2)シランカップリング剤(a−2)の加水分解縮合物、(B)液状の水性有機化合物、(C)溶媒及び必要に応じて添加剤を含有するものである。
本実施形態例におけるオルガノシラン化合物(a−1)、シランカップリング剤(a−2)、(B)液状の水性有機化合物、(C)溶媒及び添加剤は第1の実施形態例と同様のものが使用される。
【0046】
(A−1)の加水分解縮合物及び(A−2)の加水分解縮合物は、オルガノシラン化合物(a−1)とシランカップリング剤(a−2)とを混合せずに、各々を単独で加水分解縮合させること以外は第1の実施形態例と同様に加水分解縮合することにより得られる。
【0047】
本実施形態例の親水化処理剤では、(A−1)成分の含有量と(A−2)成分の含有量との質量比率[(A−1):(A−2)]が1:1〜20:1であり、3:2〜9:1であることが好ましい。(A−1)成分を、20:1を超えるように配合すると、親水性保護膜が硬くて脆くなり、また樹脂成形品表面や塗膜表面に密着しにくくなる。一方、(A−1)成分を、1:1より少なくなるように配合すると、親水性保護膜が形成しにくくなり、耐久性に劣るようになる。したがって、(A−1)成分と(A−2)成分とを上記の割合で混合することにより、樹脂成形品表面や塗膜表面での被膜形成性、密着性に優れ、耐久性を有する親水性保護膜を形成できる。
【0048】
本実施形態例の親水化処理剤における(A−1)成分と(A−2)成分の合計含有量は0.1〜10質量%であることが好ましい。(A−1)成分と(A−2)成分の合計含有量が0.1質量%未満であると、得られる親水性保護膜の防汚性が低下する傾向にあり、10質量%を超えると、親水化処理剤の保存安定性が低下したり、拭き上げ作業が難しくなったりする傾向にある。
【0049】
また、本実施形態例の親水化処理剤では、(A−1)成分及び(A−2)成分の含有量の合計量と(B)成分の含有量との質量比率が1:9〜4:1であり、1:4〜2:1であることが好ましい。(A−1)成分と(A−2)成分の含有量の合計の比率が上記上限を超える場合には、水性親水化処理剤を塗布した直後から硬い親水性保護膜を形成するため、拭き上げによる修正ができず、該処理剤による筋やタレが引き起こす外観不良を修復できない。一方、(A−1)成分と(A−2)成分の含有量の合計の比率が上記下限を下回る場合には、被膜形成性が悪くなり、耐久性のある親水性保護膜を得ることが困難になる。
【0050】
また、本実施形態例の親水化処理剤においては、(A−1)成分、(A−2)成分及び(B)成分の合計量が0.3〜10質量部、(C)成分が90〜99.7質量部であることが好ましい(ただし、合計が100質量部である。)。(A−1)成分と(A−2)成分と(B)成分との合計量が0.3質量部未満であると、樹脂成形品又は塗膜の全面に均一に親水性保護膜を形成できず、欠陥が生じるため、親水性に斑が生じ、耐久性、防汚性も充分に発揮されないことがある。(A−1)成分と(A−2)成分と(B)成分との合計量が10質量部を超えると、親水化処理剤を塗布した直後から親水性保護膜を形成するため、拭き上げによる修正ができず、該親水化処理剤の筋やタレが目立ち、外観不良が生じる傾向にある。また、親水性保護膜表面が平滑になりにくく、かつ、樹脂成形品又は塗膜の表面に不均一に付着するため、親水性が不均一になる傾向にある。
【0051】
(A−1)の加水分解縮合物と(A−2)の加水分解縮合物と(B)液状の水性有機化合物と(C)溶媒とを含有する本実施形態例の親水化処理剤によっても、第1の実施形態例と同様に、疎水性の樹脂成形品又は塗膜表面に親水性、美観、硬度、密着性及び防汚性に優れる保護膜を自動車ユーザーが簡便に形成できる。
【0052】
<親水性保護膜及びその形成方法>
本発明の親水性保護膜の形成方法について説明する。本発明の親水性保護膜の形成方法は、上述した親水化処理剤を塗布し、拭き上げて、親水性保護膜を形成する方法である。
【0053】
この方法において、親水化処理剤を塗布する方法としては、例えば、刷毛塗り、スプレー塗装等が挙げられる。
親水化処理剤を塗布する際の温度は0〜100℃であることが好ましい。温度が100℃を超える場合には溶媒の揮発速度が速すぎるため、塗り伸ばすことが困難となり、また、0℃未満の場合には溶媒が揮発しにくいため、親水性保護膜形成時間が長くなる。
【0054】
親水化処理剤の塗布は、一回の塗布であってもよいが、ある程度乾燥した後に再塗布しても構わない。再塗布は、一週間程度の時間経過後に、再び塗布するとより効果的であるが、1時間程度の短時間で連続して4回以下の塗布回数で塗布することが好ましい。5回以上を重ねて塗布しても効果の向上が期待できないからである。
【0055】
拭き上げ後には、放置して縮合反応を充分に進行させる熟成期間をおくことが好ましい。熟成期間をおけば、さらに耐久性に優れた親水性保護膜を得ることができる。熟成の温度については特に制限はないが、10〜80℃程度であることが好ましい。また、熟成の時間についても特に制限はないが、10分から一週間程度が好ましい。
【0056】
拭き上げの際には、親水化処理剤が塗布される樹脂成形品表面又は塗膜表面を傷つけない用具を用いることが好ましい。例えば、布や紙、スポンジ等を用いて、手作業で拭き上げることが好ましい。また、ポリッシャーを用いてもよいが、その場合には、樹脂成形品表面又は塗膜表面の傷つきを防止する点で、軟質バフ又は軟質パッドを備えたポリッシャーを用いることが好ましい。
【0057】
上述した方法によれば、自動車ユーザーが、疎水性の樹脂成形品又は塗膜表面に、親水性、美観、硬度、密着性及び防汚性に優れる保護膜を簡便に形成できる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
1Lセパラブルフラスコにイオン交換水25g、エタノール25g、酢酸0.1gをとって混合攪拌し、50℃に加熱した。次に(a−2)成分であるポリエーテル変性シランカップリング剤(日本ユニカー(株)製:商品名「A−1230」)1.0g、(a−1)成分であるテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(三菱化学(株)製:商品名「MKCシリケートMS−51」)6.0gを加えて、50℃で1時間の第一次加水分解縮合反応を行った。
次いで、イオン交換水100gを加えて、さらに50℃で1時間の熟成反応を行い、第二次加水分解縮合を行った。その後、(B)成分であるポリエーテル変性水溶性ジメチルシリコーン(東レ・ダウコーニング(株)製:商品名「SH−3746」)を10.0g加え、さらにイオン交換水を加えて全量を1000gとして親水化処理剤を得た。
【0060】
得られた親水化処理剤を下記の試験用塗装板に塗布し、拭き上げて親水性保護膜を形成した。そして、その親水性保護膜を下記に示す評価方法により評価した。その評価結果を表1に示す。
【0061】
[試験用塗装板(ブルーパール・クリヤー入り塗装)の作製方法]
カチオン電着塗装板(テストピース(株)製、JIS G−3141(SPCC SD)、70mm×150mm×0.8mm)に、中塗り塗料(HS60,関西ペイント(株)製)を乾燥膜厚30μmになるようにバーコーターで塗装し、140℃で20分焼き付けた。次いで、ブルーパール上塗りベースコート塗料(マジクロンHM32−1、塗料番号B−96P、関西ペイント(株)製)を乾燥膜厚20μmになるようにバーコーターで塗装し、140℃で20分焼き付けた。更に、ブルーパール上塗りトップコート塗料(ルーガーベークHK−4クリヤー、関西ペイント(株)製)を乾燥膜厚30μmになるようにバーコーターで塗装し、140℃で20分焼き付けてブルーパール・クリヤー入り塗装板を得た。さらに、この塗装板をコンパウンド(カット 1−L 5967、住友スリーエム(株)製)を用いて研磨し、イソプロパノールで湿らせた脱脂綿を用いて研磨面を拭き取って脱脂して試験用塗装板(ブルーパール・クリヤー入り塗装)を得た。
【0062】
[試験用塗装板(白ソリッド塗装)の作製方法]
カチオン電着塗装板(テストピース(株)製、JIS G−3141(SPCC SD)、70mm×150mm×0.8mm)に、中塗り塗料(HS60,関西ペイント(株)製)を乾燥膜厚30μmになるようにバーコーターで塗装し、140℃で20分焼き付けた。次いで、白ソリッド塗料(NH−578、関西ペイント(株)製)を乾燥膜厚30μmになるようにバーコーターで塗装し、140℃で20分焼き付けて、白ソリッド塗装板を得た。さらに、この塗装板をコンパウンド(カット 1−L 5967、住友スリーエム(株)製)を用いて研磨し、イソプロパノールで湿らせた脱脂綿を用いて研磨面を拭き取って脱脂して、試験用塗装板(白ソリッド塗装)とした。
【0063】
[親水性保護膜の形成方法(親水化処理方法)]
上記の試験用塗装板に、親水化処理剤を試験片(70mm×150mm×0.8mm)全体に均一に約0.5mLスプレー噴霧し、乾燥した布を用いて拭き伸ばし、さらに乾燥状態で仕上げ拭きを行った。次いで20℃にて30分間試験用塗装板を静置後、流水にてすすぎ洗いをし、自然乾燥し、親水性保護膜を形成した。以下、親水性保護膜を備える塗装板のことを親水化処理板という。
【0064】
[親水性]
FACE接触角測定器(協和界面科学機器(株))を用いて、イオン交換水の接触角を測定した。
親水化処理前後を比較して、10°以上の接触角の低下が認められるものを○、5°以上10°未満の接触角の低下が認められるものを○△、0°以上5°未満の接触角の低下が認められるものを△、接触角の増加が認められるものを×として判定した。
【0065】
[耐久親水性]
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液5mLをスポンジに取り、上記の親水化処理板を30秒間擦り洗いした。次いで流水で十分にすすぎ、自然乾燥して、FACE接触角測定器(協和界面科学機器(株))を用いて、イオン交換水の接触角を測定した。
擦り洗い処理の後の接触角が、親水化処理前と比較して10°以上の接触角の低下が認められるものを○、5°以上10°未満の接触角の低下が認められるものを○△、0°以上5°未満の接触角の低下が認められるものを△、接触角の増加が認められるものを×として判定した。
【0066】
[滑水性]
前記試験用塗装板の上にイオン交換水30μLを静かに付着させた後、塗装板を水平から10°/秒の速度で傾斜させていき、水滴が移動し始めるときの角度を転落角とした。この角度が小さいほど滑水性がよいと判断できる。
親水化処理前後を比較して、10°以上の転落角の低下が認められるものを○、10°未満の転落角の低下又は増加が認められるものを△、10°以上の転落角の増加が認められるもの、又は濡れ広がってしまい水滴の転落が認められないものを×とする。
滑水性は、水滴の残りにくさの指標になり、滑水性が高い程、汚れが付きにくくなり、水滴のレンズ効果による塗膜へのダメージも少なくなる。
【0067】
[光沢性]
micro−TRI−gloss(ビック−ガードナー社製)を用いて、前記試験用塗装板の20°グロスを測定した。
親水化処理前後を比較して、20°グロスが3ポイント以上向上したものを○、20°グロスが1ポイント以上3ポイント未満向上したものを○△、20°グロスの向上が1ポイント未満であったものを△、20°グロスが1ポイント以上低下したものを×とした。
光沢性は外観の指標になる。
【0068】
[防汚性]
福井県福井市内の5階建て建物の屋上において、南向き45°で30日間暴露試験を行った。試験期間における平均気温は21.9℃、降水量は32mm、日照時間は153時間であった。暴露試験前後における明度を色彩色差計(コニカミノルタ社製、CR−200)にて測定した。
暴露試験前後における明度の低下が0.3未満であるものを○、0.3以上0.7未満のものを△、0.7以上のものを×とした。
【0069】
【表1】

【0070】
なお、表1中の略語は下記の化合物を表す。
MS−51:テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(三菱化学(株)製:商品名「MKCシリケートMS−51」)
TEOS:テトラエトキシシラン
A−1230:ポリエーテル変性シランカップリング剤(日本ユニカー(株)製)
KBM−1003:ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
KBM−403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
SH−3746:ポリエーテル変性水溶性ジメチルシリコーン(東レ・ダウコーニング(株)製)
ソフタノール70:非イオン界面活性剤((株)日本触媒製)
【0071】
(実施例2〜12)
(a−1)成分、(a−2)成分、(B)成分、(C)成分の種類、配合量を表1又は2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして親水化処理剤を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1又は2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
なお、表2中の略語は下記の化合物を表す。
M2−ジエトキシ:ジメチルジエトキシシラン(旭化成ワッカーシリコーン株)製)
TES40WN:メチルトリメトキシシラン部分加水分解縮合物(旭化成ワッカーシリコーン(株)製)
【0074】
(実施例13)
300mLセパラブルフラスコにイオン交換水20g、イソプロパノール30g、リン酸0.05gをとって混合攪拌し、50℃に加熱した。次に(a−1)成分であるテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(三菱化学(株)製:商品名「MKCシリケートMS−51」)6.0gを加えて、50℃で1時間の第一次加水分解縮合反応を行った。
次いで、イオン交換水50gを加えて、さらに50℃で1時間の熟成反応を行い、第二次加水分解縮合を行って(A−1)加水分解縮合物を得た。
これとは別に、300mLセパラブルフラスコにイオン交換水20g、イソプロパノール30g、酢酸0.1gをとって混合攪拌し、50℃に加熱した。次に(a−2)成分であるポリエーテル変性シランカップリング剤(日本ユニカー(株)製:商品名「A−1230」)1.0gを加えて、50℃で1時間の第一次加水分解縮合反応を行って(A−2)加水分解縮合物を得た。
次いで、1Lセパラブルフラスコにイオン交換水500gをとり、50℃に加熱した中に、前記(A−1)加水分解縮合物と(A−2)加水分解縮合物とを加えて混合撹拌した。その後、(B)成分であるポリエーテル変性水溶性ジメチルシリコーン(東レ・ダウコーニング(株)製:商品名「SH−3746」)を10g加え、さらにイオン交換水を加えて全量を1000gとして親水化処理剤を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0075】
(比較例1〜4)
(a−1)成分、(a−2)成分、(B)成分、(C)成分の配合量を表3のように変更したこと以外は実施例1と同様にして親水化処理剤を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
【0076】
(比較例5)
1Lセパラブルフラスコに、コロイド状シリカ(日産化学工業(株)製、商品名「スノーテックス20」)50g、界面活性剤スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)エステルナトリウム塩(有効成分70%)2.5gをとって混合攪拌した。その後、水を加えて全量を1000gとして親水化処理剤を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
【0077】
(比較例6)
1Lセパラブルフラスコに(a−1)成分であるテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(三菱化学(株)製:商品名「MKCシリケートMS−51」)6.0g、(a−2)成分であるポリエーテル変性シランカップリング剤(日本ユニカー(株)製:商品名「A−1230」)1.0g、(B)成分であるポリエーテル変性水溶性ジメチルシリコーン(東レ・ダウコーニング(株)製:商品名「SH−3746」)10gをとって混合攪拌し、(C)成分のイソプロパノールを加えて全量を1000gとした。その後、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)0.1gを加えて10分間攪拌した後に、水10gを加えて、室温(25℃)で3時間攪拌して、親水化処理剤を得た。この親水化処理剤を用いて、実施例1と同様の評価試験を行った結果を表3に示す。
【0078】
(比較例7)
市販のカルナバワックス(シュアラスター社製:商品名「インパクト・マスター・フィニッシュ」)を前記試験用塗装板にコーティング処理したものについて、実施例1と同様に評価した。その評価結果を表3に示す。
【0079】
(比較例8)
前記試験用塗装板そのものを実施例1と同様に評価した。その評価結果を表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
なお、表3中の略語は下記の化合物を表す。
D2EH−SS・Na:スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)エステルナトリウム塩
【0082】
オルガノシラン化合物(a−1)とシランカップリング剤(a−2)との混合物の加水分解縮合物、(B)液状の水性有機化合物及び(C)溶媒を特定範囲内で含有する実施例1〜12の親水化処理剤によれば、親水性、耐久親水性、滑水性、光沢性及び防汚性のいずれもが優れた保護膜を形成できた。
また、オルガノシラン化合物(a−1)の加水分解縮合物、シランカップリング剤(a−2)の加水分解縮合物、(B)液状の水性有機化合物及び(C)溶媒を特定範囲内で含有する実施例13の親水化処理剤も、親水性、耐久親水性、滑水性、光沢性及び防汚性のいずれもが優れた保護膜を形成できた。
【0083】
これに対し、オルガノシラン化合物(a−1)の混合比率が下限値より少なかった比較例1の親水化処理剤では、保護膜の耐久親水性が低かった。
シランカップリング剤(a−2)の混合比率が下限値より少なかった比較例2の親水化処理剤では、保護膜の滑水性が低かった。
(B)液状の水性有機化合物の量が上限値より多かった比較例3の親水化処理剤では、保護膜の親水性及び耐久親水性が低かった。
(B)液状の水性有機化合物の量が下限値より少なかった比較例4の親水化処理剤では、保護膜の滑水性が低かった。また、光沢性が低く、外観不良が見られた。
(A)成分、(A−1)成分及び(A−2)成分を含有する代わりにコロイド状シリカを含有する比較例5の親水化処理剤では、保護膜の耐久親水性、滑水性、光沢性が低かった。
(A)加水分解縮合物が含まれない比較例6の親水化処理剤では、保護膜の親水性が不足しており、また光沢性も低かった。
なお、カルナバワックスを用いた従来例である比較例7では、親水性、防汚性を有する保護膜が得られなかった。
また、未処理の試験用塗装板である比較例8では、親水性、耐久親水性、滑水性、光沢性及び防汚性を発揮しない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、自動車の塗膜や樹脂成形品の外観保護に好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるオルガノシラン化合物(a−1)と、下記一般式(2)及び/又は下記一般式(3)で表されるシランカップリング剤(a−2)とを混合した混合物の加水分解縮合物、
(B)液状の水性有機化合物、
(C)水又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒、
を含有する拭き上げ型親水化処理剤であって、
(A)成分における(a−1)成分と(a−2)成分との混合比率[(a−1):(a−2)]が質量比率で1:1〜20:1であり、且つ、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比率[(A):(B)]が1:9〜4:1であることを特徴とする拭き上げ型親水化処理剤。
【化1】

(式(1)中、R〜Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3のいずれかのアルキル基を表す。また、mは1〜40のいずれかの整数を表す。)
【化2】

【化3】

(式(2)及び式(3)中、R,R,R10は、各々独立して、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、フェニル基、ウレイド基及び炭素数1〜4のいずれかのポリオキシアルキレン基からなる群から選択される1種の置換基を有する炭化水素基、又は、炭素数1〜8のいずれかのアルキル基を表す。R〜R,R11,R12は、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3のいずれかのアルキル基を表す。また、n,nは、各々独立して、1〜10のいずれかの整数を表す。)
【請求項2】
(A−1)下記一般式(1)で表されるオルガノシラン化合物(a−1)の加水分解縮合物、
(A−2)下記一般式(2)及び/又は下記一般式(3)で表されるシランカップリング剤(a−2)の加水分解縮合物、
(B)液状の水性有機化合物、
(C)水又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒、
を含有する拭き上げ型親水化処理剤であって、
(A−1)成分の含有量と(A−2)成分の含有量との質量比率[(A−1):(A−2)]が1:1〜20:1であり、且つ、(A−1)成分及び(A−2)成分の含有量の合計量と(B)成分の含有量との質量比率[(A−1)+(A−2):(B)]が1:9〜4:1であることを特徴とする拭き上げ型親水化処理剤。
【化4】

(式(1)中、R〜Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3のいずれかのアルキル基を表す。また、mは1〜40のいずれかの整数を表す。)
【化5】

【化6】

(式(2)及び式(3)中、R,R,R10は、各々独立して、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、フェニル基、ウレイド基及び炭素数1〜4のいずれかのポリオキシアルキレン基からなる群から選択される1種の置換基を有する炭化水素基、又は、炭素数1〜8のいずれかのアルキル基を表す。R〜R,R11,R12は、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3のいずれかのアルキル基を表す。また、n,nは、各々独立して、1〜10のいずれかの整数を表す。)
【請求項3】
(B)液状の水性有機化合物が、非イオン界面活性剤、グリセリン類、ポリアルキレングリコール類、ポリエーテル変性シリコーン類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の拭き上げ型親水化処理剤。
【請求項4】
基材に請求項1〜3のいずれかに記載の拭き上げ型親水化処理剤を塗布し、拭き上げることを特徴とする親水性保護膜の形成方法。
【請求項5】
拭き上げの際に、軟質バフ又は軟質パッドを備えたポリッシャーを用いることを特徴とする請求項4に記載の親水性保護膜の形成方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の親水性保護膜の形成方法で形成されたことを特徴とする親水性保護膜。

【公開番号】特開2008−150457(P2008−150457A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338706(P2006−338706)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】