説明

拭取り方法および拭取り装置

【課題】多量の部品の表面に残存している処理液を能率よく拭き取ることができるようにする。
【解決手段】多数の部品Wと拭取り材11とを処理容器7に収容し、処理容器7を回転駆動することにより処理容器7内で部品Wを回転攪拌し、これにより部品W表面の処理液に拭取り材11を接触させることで当該部品Wの表面から処理液を拭き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として小型の部品に潤滑液などの処理液を塗布した後、部品の表面に残存する処理液を拭き取る方法、および、同方法を実施する拭取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンパクトなどの化粧料容器においては、蓋を閉じると蓋に備えられたロック爪が弾性変形しながら容器本体側の突起を乗り越え、該突起に係止されて閉蓋状態となり、フックピースを押し込み操作してスライド移動させることでロック爪を突起から外してロック解除するようになっており、樹脂成形品であるフックピースが容器本体にスライド自在に組み込まれている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−118949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記フックピースは、そのスライド移動を容易にして操作感覚を良好にすると共に、スライド摩耗を防止するために、シリコンオイルなどの潤滑液(処理液)に浸漬し、その後、表面に残存する処理液を手作業で拭き取っており、多量のフックピースを処理する場合、拭取り作業に多大な労力と時間を必要としていた。
【0005】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、フックピースなどの多量の小型の部品の表面に残存している処理液を能率よく拭き取ることができる方法と装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0007】
本発明の拭取り方法は、小型の部品の表面に残存する処理液を拭き取る拭取り方法であって、前記処理液を拭き取る拭取り材を、多数の部品と共に処理容器に収容し、処理容器を回転させて該処理容器内で回転攪拌される部品を前記拭取り材に接触させて部品表面の処理液を拭き取る、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によると、処理容器を回転させることにより処理容器内で多数の部品を拭取り材と共に攪拌し、多数の部品の表面の処理液が拭取り材に接触して該表面から拭き取られることになり、手作業で処理液を拭き取る場合と比較して能率的に均一な拭取りを行うことが可能となる。
【0009】
本発明において、好ましい態様は、前記拭取り材が布状である。この態様によると、しなやかに変形する布状の拭取り材は、小さい部品の表面にも接触しやすく、部品への接触機会が多くなる。
【0010】
本発明において、別の好ましい態様は、前記処理容器を天地反転して回転させる。この態様によると、多数の部品全体の攪拌が強力に実行され、多数の部品表面それぞれの処理液に対して拭取り材の確実な接触を促進させることができる。
【0011】
本発明の拭取り装置は、小型の部品の表面に残存する処理液を拭き取る拭取り装置であって、前記処理液を拭き取る拭取り材および多数の部品を収容する処理容器を保持する容器保持部材と、前記容器保持部材を回転駆動して、前記処理容器内で前記多数の部品を前記拭取り材と共に回転攪拌する駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によると、前記容器保持部材に前記処理容器を保持させた状態で前記駆動手段により当該容器保持部材を回転駆動することにより、本発明の拭取り方法を好適に実施することができる。
【0013】
本発明において、好ましい態様は、前記容器保持部材は、蓋付きの処理容器を載置する受け台と、蓋を処理容器に押圧固定する蓋押さえ部材とを備える。この態様によると、多数の部品を入れて搬送する蓋付きの容器を処理容器として容器保持部材に装填して回転処理し、処理後には前記容器保持部材から取り外した前記処理容器を直ちに搬出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多量の小型の部品の表面に残存する処理液を、従来のように人手をかけることなく能率よく拭き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る拭取り装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の拭取り装置で拭取り処理される部品の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1の拭取り装置をその一部を切り欠いて示す側面図である。
【図4】図4は、図1の拭取り装置に使用される拭取り材の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して本発明の一実施形態に係る拭取り方法およびこの方法を実施するための装置を詳細に説明する。
【0017】
図1に、本発明の実施形態に係る拭取り装置全体の外観を示し、図2に、図1の拭取り装置で拭取り処理される部品の一例を示す。また、図3に、図1の拭取り装置をその一部を切り欠いて示し、図4に、図1の拭取り装置に使用される拭取り材の一例を示す。
【0018】
まず、図1を参照して、この実施形態の拭取り装置Sは、小型の部品を潤滑液などの処理液に浸漬した後、部品の表面に残存する余剰の処理液を拭き取るために使用する装置である。この拭取り装置Sは、基台1と、容器保持部材2と、電動モータ3と、操作ボックス4とを備えている。
【0019】
部品Wは、例えば、図2に一例として示すような手指で扱うことができる程度の大きさの小型の部品である。この実施形態では、小型の部品Wとして、化粧コンパクトにおいて閉蓋解除用に組み込まれるフックピースを例示している。このフックピースは、例えば幅5mm、厚さ4mm、長さ20mm程度の樹脂成形製のフックピースであって、潤滑用の処理液であるシリコンオイルに浸漬された後、当該拭取り装置Sでその表面の処理液の拭取り処理が実施される。
【0020】
拭取り装置Sにおいて、基台1は、床面上に安定よく設置するための平面形状が片仮名の「コ」の字形の脚部1aと、その脚部1a中心部から垂直に立設された支柱部1bとを備える。図3に示すように、基台1の支柱部1bの上端部に回転軸5が水平に支持されている。この回転軸5の前端に前記容器保持部材2が連結支持されている。また、基台1の支柱部1bの内部には、電動モータ3と前記回転軸5とを連動連結するチェーン伝動機構6が、収容されている。
【0021】
容器保持部材2は、上下に対向する辺部2a,2bとこれらを連結する辺部2cとで側面形状が片仮名の「コ」の字形に形成されており、対向する下方側の辺部2aは、部品Wを収容した処理容器7を載置する平坦な受け台に構成されると共に、対向する上方側の辺部2bには、処理容器7に蓋7aを押圧固定するネジ込み操作式の蓋押さえ部材8が装備され、辺部2cに回転軸5前端が連結支持されている。
【0022】
操作ボックス4は、基台1の支柱部1bに支持されている。操作ボックス4は、電動モータ3の起動ボタン9と、停止ボタン10とが備えられると共に、電動モータ3の回転速度を制御する制御装置が内装されている。
【0023】
この実施形態の拭取り装置は以上のように構成されており、多量の部品Wを入れて持ち込んだポリバケツなどの容器を処理容器7に兼用して容器保持部材2の受け台2aに載置する。部品Wの投入個数は、処理容器7のサイズ等に応じて適宜選択することができるが、少なくとも数十個、好ましくは数百個、より好ましくは、数千個、あるいは、それ以上である。この部品Wの投入量は、攪拌効果が得られるように、処理容器7の容積の4割〜9割程度とするのが好ましく、5割〜8割程度とするのがより好ましい。
【0024】
この多数の部品Wと共に、図4に示すような平面形状が例えば数10cm角の四辺形形状をなしマイクロファイバークロスからなる拭取り材11を、1枚ないし数枚容器内に投入する。更に、蓋押さえ部材8をねじ込み操作して蓋7aを処理容器7に押圧固定し、蓋付きの処理容器7を受け台2aと蓋押さえ部材8との間にしっかり挟持固定する。
【0025】
なお、拭取り材11は、マイクロファイバーをモップ状に形成したものを使用すると、部品Wが拭取り材11の紐状部分の繊維に接触する機会が多くなる。また、拭取り材11は両面が凹凸生地加工したクロスでもよい。また、拭取り材11は、素材がマイクロファイバークロスでなく、超極細繊維使用のナノファイバークロスなど、他の素材のクロスでもよい。拭取り材11は、油取り紙や吸取り紙などの紙製のものでもよい。
【0026】
拭取り材11は、図3では、多数の部品Wの最上に配置した状態で示されるが、多数の部品Wの中に1枚ないし複数枚で配置してもよいことは勿論である。拭取り材11は、図4の平面形状に限定されず、任意の形状とすることができる。
【0027】
以上の実施形態に係る拭取り装置Sでは、電動モータ3を起動して容器保持部材2を回転軸5の軸心X周りに所定速度で回転駆動させて容器内の多数の部品Wを拭取り材11と共に回転攪拌させると、多数の部品Wの表面に残存する処理液が拭取り材11に接触することで当該多数の部品W表面から余剰な処理液が次第に拭き取られていく。そして、適当時間に亘って上記攪拌を継続することで、全ての部品Wの表面に残存する処理液が拭取り材11と接触する機会が与えられ、全ての部品Wの表面から処理液は均一に短時間で拭き取られる。
【0028】
因みに、部品Wとして例示したフックピースの表面からの拭取りのため、数千個、例えば、4千個のフックピースと35cm角の2枚の拭取り材11とを処理容器7に入れて45rpmの回転速度で駆動させた結果、約30分で全てのフックピース表面から処理液を均一に拭取り処理することができた。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、以下のような実施形態でも同様に実施することもできる。すなわち、拭取り材11を処理容器7に投入するのみならず、処理容器7の内面全体、あるいは、内面の一部に拭取り材11を、面ファスナーなどを用いて取替え可能に貼り付けておけば、部品Wが拭取り材11に接触する機会が更に増えて、処理時間を短縮することができる。
【0030】
また、処理容器7を横向き水平あるいは略水平に保持して容器7中心周りに回動させるようにしてもよい。この場合、処理容器7の胴部内面に部品攪拌用のリブを突設しておくとよい。さらに、蓋7aをバックル金具などで処理容器7に強固に閉じ固定できる場合は、拭取り装置における容器保持部材2を、処理容器7の胴部を把持する仕様に構成して実施することもできる。
【0031】
この実施形態では、部品Wを入れたポリバケツなどの搬送用容器を持ち込んで処理容器7として容器保持部材2に装填し、処理後に容器ごと搬出するものとしているが、搬送用容器で持ち込んだ部品Wを予め容器保持部材2に取り付け固定した専用の処理容器7に移し替えて拭取り処理を行い、処理後に処理容器7から搬送用容器に再び移し替えて搬出するようすることもできる。
【0032】
また、拭取り装置を、成形樹脂材料を混合攪拌する攪拌装置で兼用してもよい。
【符号の説明】
【0033】
2 容器保持部材
2a 受け台
7 処理容器
7a 蓋
8 蓋押さえ部材
11 拭取り材
S 拭取り装置
W 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型の部品の表面に残存する処理液を拭き取る拭取り方法であって、
前記処理液を拭き取る拭取り材を、多数の部品と共に処理容器に収容し、処理容器を回転させて該処理容器内で回転攪拌される部品を前記拭取り材に接触させて部品表面の処理液を拭き取る、
ことを特徴とする拭取り方法。
【請求項2】
前記拭取り材が布状である、
請求項1に記載の拭取り方法。
【請求項3】
前記処理容器を天地反転して回転させる、
請求項1または2に記載の拭取り方法。
【請求項4】
小型の部品の表面に残存する処理液を拭き取る拭取り装置であって、
前記処理液を拭き取る拭取り材および多数の部品を収容する処理容器を保持する容器保持部材と、
前記容器保持部材を回転駆動して、前記処理容器内で前記多数の部品を前記拭取り材と共に回転攪拌する駆動手段と、
を備えることを特徴とする拭取り装置。
【請求項5】
前記容器保持部材は、蓋付きの処理容器を載置する受け台と、蓋を処理容器に押圧固定する蓋押さえ部材とを備える、
請求項4に記載の拭取り装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−196624(P2012−196624A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62682(P2011−62682)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】