説明

持続感染または潜伏感染を引き起こすウイルスに対するワクチン

本発明は、一般に、持続感染および/または潜伏感染に関与するウイルスによる感染を予防または治療する方法および組成物に関する。本方法および組成物は、ウイルス、例えばサイトメガロウイルスを含む、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルスおよびパピローマウイルスなどにより引き起こされる感染の予防および治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、米国立衛生研究所による助成金番号R01A1051557の元で連邦政府の支援を受けて行われた。連邦政府は本発明に一定の権利を有しうる。
【0002】
技術分野
本発明は、一般に、持続感染および/または潜伏感染に関与するウイルスによる感染を予防または治療する方法および組成物に関する。
【0003】
優先権
本出願は、Vaccine for Human Cytomegalovirusと題して2006年3月10日に出願された米国仮出願出願番号US60/781,123に基づく優先権を主張する(その全体が参照により本願に組み込まれる)。
【0004】
背景技術
現行ワクチンの大部分は、急性感染を引き起こし、ついで免疫系により排除される疾患を標的とする。ワクチン開発において、重要な選択基準は、所定の免疫原が強力なT細胞応答を引き起こすことができる程度であった。しかしながら、この戦略は、持続感染または潜伏感染、例えばヒトサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus)(HCMV)により引き起こされるものには最適ではなかった。実際に、大変強力なT細胞応答を引き起こすが、持続感染または潜伏感染を引き起こすウイルスに対するワクチンとしては効果のない免疫原もある。
【0005】
ワクチンは、多くの場合の免疫優勢な(immunodominant)ウイルスタンパク質を標的とする。すなわち、ワクチンは、しばしば健常宿主の免疫系により認識され標的とされる同じ抗原を利用する。前臨床試験および臨床試験におけるHCMV候補ワクチンは、免疫適格健常宿主のHCMV感染中に標的とされることが知られているHCMVタンパク質に対してCD8+T細胞または中和抗体反応を誘発することに焦点が合わされている。試験されているCD8+T細胞媒介性免疫のHCMV標的は、通常、免疫優勢なUL83-pp65およびIE1-pp72タンパク質である。これらのウイルスタンパク質に特異的なCD8+T細胞は防御に有効と考えられるが、動物モデルにおける最近の結果により、感染宿主内に多数存在するにもかかわらず、免疫優勢なCMV抗原に対するCD8+T細胞は防御に有効ではないことが示唆されている。
【0006】
アメリカ合衆国においては、毎年おおよそ40,000人の新生児がヒトサイトメガロウイルス(HCMV)により先天的に感染を受けている。妊娠中、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)が胎児に効率的に感染することは長年の間認められていることであり、全新生児の0.5〜2.5%が先天性感染症の証拠を示す。残念なことに子宮内感染は無害ではなく、先天的に感染した乳児の5〜10%は出生時に症候性であり、重症の神経障害を伴う(概説については、(67)参照)。出生時に症候性である5%〜10%のうち、大部分は小頭症、感音難聴、視神経萎縮、脈絡網膜炎および肢体不自由などの後遺症を発症する。出生時に無症候性に見える感染した小児であっても、これらの小児のうち10〜15%は後年種々の程度の神経障害を示すのでハイリスクである。デイケアセンターにおける小児間のHCMV感染率は高く、これらの小児はしばしば血清反応陰性の母親または介護担当者にウイルスを感染させるので、デイケアセンターにおける幼児数の大幅な増加は問題を深刻にしている。感染した小児を生んだ女性の例年のセロコンバージョン率は30%であるのに対し、感染していない小児を生んだ女性のセロコンバージョン率は3%である。さらに、潜在的ワクチンとして試験されたHCMVのTowne株を用いる免疫感作は、感染率の有意の低下をもたらさなかった。通常は妊娠すると考えられる女性の群なので、新生児へのリスクは大きい。母親の血清学的状況は新生児の疾患の防御と正に相関するが、一方で、妊娠前免疫では、再発性感染または異なるHCMV株の感染から新生児の疾患を完全には防御しないことを最近の証拠は強く示唆している(4、21)。子宮内感染の破壊的な結果から、急性感染および潜伏の成立の両方を予防する有効で安全なワクチンを開発することが急務である。新生児における影響に加えて、他の集団、例えば固形組織および骨髄移植の両方を含む臓器移植者などにおけるHCMV疾患は極めて重篤な恐れがあり、移植数が顕著に増加してきているので、多くの注目を集めてきた。
【0007】
HCMV疾患からの回復は、CMV中和抗体の存在よりもむしろ細胞性免疫反応と関連している(59、70)。HCMV特異的CTLの大部分は、HCMV UL83(pp65)マトリックスリン酸化タンパク質に対するものであり、HCMV IE172-kDaタンパク質(MCMV gBの機能的ホモログ)および構造糖タンパク質Bに特異的なCTLが比較的低レベル伴っていると最初に推測された(1、5、23、28、55、78)。続いて、IE1に対するCD8+CTLの頻度はpp65(30、43)に対するものと同様であり、多数のHCMVタンパク質がCD8 T細胞の潜在的標的であることが見いだされた(14、50)。
【0008】
中和抗体およびCD8+T細胞応答の抗原標的の多くが同定されているにもかかわらず、HCMV疾患に対する有効なワクチンは長年の間手に入れることが困難な目標であった(概説については、(26、67)参照)。組織培養に継代接種したTowne株を用いた臨床試験により、中和抗体およびCTLの両方が誘導され、臓器移植者および低用量HCMVチャレンジを受けたボランティアにおける重篤な疾患に対してわずかに防御するが、幼児に接触している、HCMVを排出している女性における感染を防御する事ができないことが見いだされた。サブユニットワクチン(MF59でアジュバントされた)ばかりでなく、組換え複製欠損性キャナリーポックスベクターALVAC-CMV(gB)として、ウイルスの中和抗体を誘導するワクチンのために、エンベロープの糖タンパク質B(gB)が根拠として用いられてきた。どちらのワクチンも臨床試験において認容性が良好であることが見いだされ、サブユニットgBワクチンは血清反応陰性ボランティアにおいて高レベルのHCMV中和抗体を誘発することが見いだされたが、ALVAC-CMV(gB)は、Towneを用いる後続の追加免疫後に中和抗体を誘発することができたに過ぎなかった。強いpp65特異的CTLレベルばかりでなく、HCMV血清反応陽性被験者において見られるものと同様なCTL前駆細胞頻度が誘発されたので、pp65を発現するALVAC-CMV(pp65)ベクターを用いて血清反応陰性被験者にワクチン接種した後、予備的な結果が得られた。マウスにおいて前臨床試験が行われた他のワクチン接種アプローチには、gBまたはpp65をコードするプラスミドDNA(pDNA)、pp65の保存されたCD8+T細胞エピトープのペプチド、暗調小体(dark body)および、つい最近では、gBを発現する組換えワクシニアウイルスAnkaraが含まれる(2、16、17、46、69、91)。しかしながら、重要な問題は、血清反応陰性個体において、これらが感染を防ぐかどうかである。
【0009】
HCMV感染を予防することができ、HCMV複製およびおそらくは母子垂直感染または移植レシピエントにおけるウイルス播種および疾患を抑制することができるHCMVワクチンが求められている。
【0010】
単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)は世界中に分布する医学的に重要な病原体であり、米国では過去20年間にわたって血清陽性率が増加している。世界の人口の10〜50%がHSV-2に感染しており、米国では人口の20%が感染していると推定されている(概説については、(92)参照)。ヘルペスウイルスの特有の特徴は、潜伏期(すなわち、感染性ウイルスの不在および抑制されたウイルス遺伝子発現を特徴とする状態)に入ることができることである。種々の刺激に応じて、このウイルスは再活性化し、自己複製し、感染性ビリオンを生じる。通例、血清反応陰性個体と感染性ウイルスを排出している個体との性的接触に次いでHSV-2感染が始まる。生殖器、生殖器周囲または肛門の粘膜皮膚部位の一次感染に次いで、通常仙骨神経節への感染がおこり、そこでウイルスが潜伏を成立させる。神経節からの再活性化は、続いて膣または陰茎皮膚における感染およびウイルス排出を引き起こす。頻繁な生殖器ヘルペス再活性化は、身体的な不快感および心理的ストレスの原因となるばかりでなく、しばしば死に至る、新生児における重篤な疾患を引き起こす恐れもある。性感染を制御する上で主な問題は、ウイルスの排出が無症候性の場合があり、HSV-2感染の罹患率が増え続けていることである。抗ウイルス剤は利用できるが、このウイルスの終世にわたる存続は、感染および潜伏の成立を予防するためのワクチンの開発に対して強い機動力となっている。
【0011】
感染および潜伏の成立を予防し、それによって再発の可能性を排除するための有効なワクチンの開発が求められている。今日までの大抵のワクチン戦略はヒトの臨床試験に成功していないが、長年にわたって得られた免疫学的データにより、病変からのウイルスクリアランスに、自然免疫反応および、CD8およびCD4 T細胞が主な役割を果たす獲得免疫反応によりHSV-2感染が制御されることが示されている。T細胞系防御ワクチンの基礎を与えるために、最近の研究は、感染によりプライミングされるHSV-2タンパク質の多くを同定している。しかしながら、HSV-2感染に対する細胞性反応および抗体反応は、再発性感染およびウイルス排出に対して滅菌免疫(sterilizing immunity)および防御を示すには不十分である。従って、成功するワクチンにより引き起される免疫反応は、自然免疫よりもより有効でなければならない。
【0012】
概要
本発明は、一般に持続感染および/または潜伏感染に関与するウイルスによる感染を予防または治療する方法および組成物に関する。本方法および組成物は、ウイルス、例えばサイトメガロウイルスを含む、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルスおよびパピローマウイルスなどにより引き起こされる感染の予防および治療に関する。
【0013】
詳細な説明
驚いたことに、高度に保存された遺伝子由来のDNAまたは高度に保存された遺伝子産物をコードするDNAで免疫することにより、持続感染または潜伏感染を引き起こすウイルスに対する強力な免疫反応が得られることが見いだされた。通例免疫優勢なタンパク質を標的とする旧来のワクチンと対照的に、本来なら自然免疫反応により標的とされないタンパク質を標的とするワクチンにより、持続感染または潜伏感染に対する有効な反応が得られる。本発明はまた、例えば初回免疫段階において必須ウイルス遺伝子をコードするDNAワクチンを投与し、追加免疫段階において死滅ウイルスまたは弱毒生ウイルスを投与することにより、持続感染または潜伏感染を引き起こすウイルスに対して有効な免疫反応を誘導する新規な方法を提供する。本発明は、例えばサイトメガロウイルスを含む、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルスおよびパピローマウイルスなどの持続感染または潜伏感染関連ウイルスに対する有効な免疫を生じるのに使用できる。
【0014】
ワクチンの標的として高度に保存されたウイルスタンパク質を用いる1つの利点は、複製するためにはウイルスは標的とされる遺伝子産物を発現しなければならず、従ってそれらの発現を排除することにより免疫検出を逃れることができないことである。もう1つは、これらの遺伝子に特異的なCD8+T細胞を本来なら逃れることができるウイルス変異体が、それらのコードされるタンパク質の酵素活性を維持するためにそれらの遺伝子の保存の必要性があるため、生じる可能性が低いと考えられることである。
【0015】
本発明の一実施形態において、本ワクチンは、初回免疫段階および追加免疫段階において、必須で保存されたウイルス遺伝子をコードするプラスミドDNAおよび死滅ウイルスまたは弱毒生ウイルス製剤を送達することからなる。当業者は、送達の順序および方法を決定する事ができる。例えば、保存されたウイルス必須タンパク質に対する特異的CD8+T細胞応答を誘発するためにプラスミドDNAが送達される。その後のHCMVによる感染の際に、これらのCD8+T細胞は、宿主内のウイルスに感染した細胞を認識して破壊し、それにより標的器官内のウイルスの複製を抑制し、疾患を予防する事ができる。
【0016】
免疫感作手順の初回免疫アームは、CD8+Tリンパ球防御反応を誘発するウイルス遺伝子標的を発現する精製プラスミドDNAを送達することからなるが、ワクチンの追加免疫アームは、化学的死滅HCMVまたは弱毒生HCMVを送達して、ウイルスの播種を抑制するのに役立つウイルス中和抗体を誘発することからなる。高度に保存されたHCMV必須遺伝子に対する抗ウイルスCD8+T細胞免疫を標的とすることは特に重要である。なぜならば、1)複製するためにはウイルスは標的とされる遺伝子産物を発現しなければならず、従ってそれらの発現を排除することにより免疫検出を逃れることができない、2)これらの遺伝子に特異的なCD8+T細胞を本来なら逃れることができるウイルス変異体は、それらのコードされるタンパク質の酵素活性を維持するためにそれらの遺伝子の保存の必要性があるため、生じる可能性が低いと考えられる、3)HCMV感染中、これらの遺伝子産物に対するCD8+T反応は全般的に低いことが見いだされており、従ってプラスミドDNAでプライミングされた、これらの遺伝子産物に対するCD8+T細胞は、ウイルス感染により誘発される最終的に不完全防御よりも質的によりすぐれた防御を与えることができる、そして4)HCMVと、モデル動物に感染するCMVとの間での高レベルの保存は、ヒト被験者における第1相臨床試験に対する動物モデルにおける効果データを提供するからである。
【0017】
本ワクチンは、任意の個体を免疫するために使用できる。"個体"とは、任意の動物、例えば哺乳動物を意味し、または例えば、治療を必要とする患者などを含むヒトを意味する。FDAにより認可され、商用認可されたHCMVワクチンは、その防御能力に応じて、リスクのある特定の集団に、あるいは小児期予防接種の一部としてできる限りすべての小児に、医師または診療所により販売され、投与されることができる。"リスクのある"集団とは、例えば、妊娠可能年齢前の女性、小児、1歳未満の小児、介護担当者および臓器移植者または移植ドナーを含む、HCMVにより引き起こされる疾患または他へのHCMV感染を媒介する事ができる疾患のリスクのある任意の個体を意味する。例えば移植片が提供される前に移植ドナーを処置することにより、レシピエントの感染を避けることができる。移植片は、例えば、造血幹細胞および固形臓器移植片を含むことができる。
【0018】
疾患
本発明により治療、予防できあるいは症状の軽減を示すことがきる疾患または状態は、持続感染または潜伏感染を引き起こすウイルスによる急性または潜伏感染を含む任意の疾患または状態を含む。これらは、例えばサイトメガロウイルスを含む、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルスおよびパピローマウイルスなどによる感染を含む疾患などを含む。本明細書において治療というとき、成立した感染または症状の治療ばかりでなく予防にまで及ぶことは、当業者には明らかであろう。
【0019】
DNAワクチン接種
動物組織へのpDNAの直接接種("ネイキッド(naked)DNA法"または"DNA免疫感作")は、旧来の免疫感作法に伴う危険および限界の多くを克服しているので、ワクチン接種に広く使用されるアプローチとなった(概説については、(29)参照)。DNA免疫感作は、種々の伝染病モデルにおいて、体液性および細胞性防御反応を引き起こすことが明らかにされているが、MHCクラスI複合体上に抗原由来ペプチドを提示し、抗ウイルスCD8+Tリンパ球を生じるその能力は、CMV疾患に対する防御と強く相関する(上記参照)。このことは、主としてMHCクラスII媒介性反応を誘導する従来のタンパク質ベースの免疫感作法とは対照的であり、それ自身はCD8+Tリンパ球反応の弱い刺激剤である。加えて、マイクロプロジェクタイル(microprojectile)を用いる粒子銃(biolistic)(遺伝子銃)送達、筋肉内(i.m.)および皮内(i.d.)注射(針またはBioject無針ジェット注射による投与)ならびに粘膜送達を含む、pDNAを送達するためのいくつかの方法が、免疫反応を効果的に引き起こすために開発されている(22、72、80、84)。皮内DNA注射は、全身性MCMVチャレンジに対して防御を引き起こすが(27、62、64)、CMV免疫感作により粘膜免疫を誘起させるのには他のアプローチが必要な可能性がある。さらなるアプローチである、初回免疫段階としてDNAを用いる異種プライムブースト(heterologousprime-boost)が、HIV、単純ヘルペスウイルス、肝炎ウイルスBおよびC、結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクロシス/Mycobacterium tuberculosis)ならびにマラリアを引き起こすプラスモジウム寄生体(Plasmodium parasite)などの病原体に対するワクチン接種の有効な手段として浮上しつつあり、一部の例では臨床試験がすでに進行中である(概説については、(87)参照)。異種DNAプライムブーストは、同一抗原デリバリーシステムでの反復ブーストでは認められない、相乗的なT細胞免疫および抗体免疫レベルを誘発することが示されており、この相乗作用の基礎をなす機構は明確になりつつある(20、54)。高レベルの防御抗体を生じる能力と一緒になって、異種プライムブーストワクチン接種は、旧来のワクチン接種戦略を用いる制御では手に負えない病原体に対するワクチン接種のための待望のツールを提供する事ができる。
【0020】
DNAワクチンは、例えば複製型または非複製型ウイルスベクター、例えばアデノウイルスもしくはワクシニアウイルスベクター、精製プラスミドベクターまたは当業者に公知のDNAワクチンの他の形を用いることを含む任意の適切な方法を用いて投与する事ができる。
【0021】
"高度に保存された遺伝子由来の"は、高度に保存されたタンパク質の一部または全部をDNAがコードすることまたは高度に保存された遺伝子の一部または全部とDNA配列が同じであることを意味する。"一部"はタンパク質または遺伝子配列の少なくとも20、30、40、50、60、70、80または90%を意味する。遺伝子が高度に保存されているかどうかを測定する1つの方法は、その%FastA aa一致を測定することであり、この測定の手引きは、例えば表1を含む本願において見いだすことができる。
【0022】
本出願の多くの実施例はマウスCMVの使用を論じているが、本方法がヒトCMVならびにヒトCMVの遺伝子およびタンパク質の使用を含むことができることは当業者に明らかである。例えば、高度に保存されたタンパク質をコードするDNAは、HCMV由来のタンパク質コードセグメント、例えばGenBankアクセッション番号GI|28373214(NC001347)に登録されているDNA配列をを含むことができる。
【0023】
HCMV感染マウスモデル
HCMV感染に付随する深刻な問題により、HCMV感染の予防および治療のための戦略を開発するためには、このウイルスの病因および免疫学を理解することが避けられないこととなった。しかしながら、主としてこのウイルスの厳密な種特異性が動物モデルでの研究を阻んだため、ヒトウイルスに関する進歩は緩やかであった。別の方法として、in vivo研究の多くが、マウスのマウスCMV(MCMV)感染をモデルとして用いてきたが、急性感染、ウイルス遺伝子発現、潜伏の成立、ウイルス遺伝子産物に対する宿主の免疫反応および免疫抑制に続く再活性化に関しては、これはそのヒトカウンターパートと大変良く類似している。多数のマウスを用いる実験の行いやすさ、多くの遺伝学的に明確な近交系が利用可能であることおよびマウス免疫生物学に関する広い知識体系と相まって、これらの類似性は、このモデル系を極めて魅力的なものにした。このモデルの最も優れた価値の1つは、比較的低コストかつ妥当な期間内で大量の情報を得ることができることである。次いでこの知識を、ヒトワクチンの開発および試験のための、はるかに複雑で高価な研究を効率的に設計し優先順位をつけるために使用できる。
【0024】
CMVゲノムの分子構築、許容感染中の転写パターン、ウイルスDNA複製に関与する機構ならびに急性および潜伏感染中のin vivoでのウイルスの病因が明らかにされた(51〜53、56、57)。HCMVのDNAポリメラーゼ、糖タンパク質Bおよびマトリックスタンパク質のMCMVホモログが同定された(10、11、15)。このマウスモデルを用いてワクチンを開発するための努力がなされた。((27、61、62、64、88、89、93)。
【0025】
MCMVゲノムは長さで〜230kbpであり、少なくとも170のオープンリーディングフレームをコードしている(13、56、71)。許容感染中、少なくとも3つの区別できる遺伝子発現相が存在する(概説については、(60)参照)。IE遺伝子産物は、感染後直ちに合成され、その発現を主として宿主因子に依存する遺伝子産物である。初期のRNAおよびタンパク質合成はウイルスDNA複製よりも先に起こり、1以上のIE遺伝子の先行発現に依存している。最後に、ウイルスDNA合成開始後に後期遺伝子が転写される。
【0026】
MCMV感染は、自然免疫反応および獲得免疫反応の両方により制御される。NK細胞、マクロファージならびにサイトカインであるIFN-γ、TNF-α、IL-12およびIFNα/βからなる自然免疫反応は、感染に対する初期抵抗性における中心的役割を果たす(8、31、49、65、66、68、81)。加えて、cmvlで示される細胞遺伝子は、MCMVの初期の脾臓での複製を制御し、NK細胞媒介性抵抗性を与える(79)。この遺伝子は、キラー細胞受容体Ly49hとして同定されており、これはウイルス感染標的に対してNK細胞を活性化する(7、47)。
【0027】
臓器移植者におけるHCMV免疫および疾患の研究から、HCMV疾患に対する防御における細胞性免疫の重要性が示され(3、77)、MCMVモデルなどの動物モデルにおける研究から、特異的白血球サブセットの防御役割が解明された(74)。急性感染、持続感染、潜伏感染および再活性化感染を抑制するための、獲得細胞性免疫成分であるCD8+およびCD4+Tリンパ球の必要性は、枯渇研究および養子移植研究により立証されている((73)で概説されている)。免疫アブレーションした(immunoablated)マウスのMCMV特異的CD8+Tリンパ球による免疫再構築により、脾臓、肺、肝臓および副腎におけるウイルス量を低下させることが示され、感染マウスにおけるCD4+Tリンパ球の長期枯渇は、唾液腺における持続感染をもたらす(41)。抗ウイルスCD8+T細胞の特異性の正体は、その所見が、抗ウイルス細胞免疫療法および抗ウイルスワクチンに使用するためのウイルス抗原を選択することを強く示唆しているため、長い間関心の対象となってきた。前初期1(immediate early 1)(IE1) 遺伝子産物の免疫優勢ペプチドとBALB/cマウスにおけるIE1特異的CD8+T細胞の防御能力の正体は長い間知られてきたことであるが(74)、未確認のウイルス初期(early)(E)および後期(late)(L)遺伝子産物に対して生じたCD8+T細胞の存在を示す有力な証拠もまた存在してきた(75)。特異的CD8+T細胞の検出および定量のためのより信頼性のある方法の出現と共に、さらなるCD8+T細胞特異性の正体が明らかとなった。これらには、HCMV UL83-pp65ホモログであるM83-pp1O5およびM84-p65、抗アポトーシス遺伝子産物M45、MCMV immunoevasin遺伝子産物m04(gp34)ならびにMCMVに特有の2つのさらなる遺伝子であるm164およびm18(24、34〜40)が含まれる。これらのMCMV遺伝子の1つの共通な特徴は、感染のEまたはE/L期のいずれかでのそれらの発現である。
【0028】
CD8+T細胞標的としてのこれらのEおよびE/L遺伝子産物の同定は、MHCクラス1複合体上のウイルス由来抗原ペプチドの細胞表面提示または認識を妨げる糖タンパク質をコードするimmunoevasin E遺伝子の発現が既知であったため、当初は逆説的であった(73)。MCMV m152遺伝子産物gp37/40は、ER-シスゴルジ中間区画(intermediate compartment)においてペプチド負荷クラスI複合体を保持し、mO6-gp48はこれらの複合体を分解のためにリソソームに再送する(24、45、48、76、92)。mO4遺伝子産物であるgp34は、その細胞表面への輸送を妨げることなくMHCクラスI複合体と結合するが、CD8+T細胞による複合体の認識を予防すると思われる(44)。MCMVの変異解析により、MHCクラスIダウンレギュレーションにおける既知のimmunoevasinの相対役割ばかりでなく、immunoevasin間の協調的および競合的相互作用の一部が明らかとなった(42、85)。加えて、m152欠失変異体はT細胞コンピテントマウスにおいて弱毒化されていることが明らかにされており(45)、野生型に感染しているがm152が欠失していない細胞において、M45特異的CD8+Tリンパ球によりMCMVは認識されない(24、37)。C57BL/6マウスにおいて、M45は急性および記憶反応中における主要抗原であることが示されているので、このことは重要な結果である。この主要抗原に対する特異的CTL株を用いる細胞免疫療法はウイルス複製を抑制するのに有効ではなかったことから、このことはワクチンデザインにも重要な波及効果を有する(37)。
【0029】
MCMVタンパク質を発現する13プラスミドプールを用いて皮内(i.d.)DNAで免疫感作し、ついでホルマリン不活化MCMV(FI-MCMV)を用いる腹腔内(i.p.)ワクチン接種を行って強力な中和Abおよび抗原特異的CD8 T細胞を生じさせ、BALB/cマウスにおける感染に対する完全な短期間防御を付与し、ついで強毒性ウイルスを用いる全身性チャレンジを行うことからなるプライムブーストアプローチを試験するためにマウスモデルが用いられてきた(64、89)。脾臓または唾液腺のいずれにおいてもウイルスが検出されなかったので、滅菌免疫が達成された。皮内DNA免疫感作もホルマリン不活化MCMVを用いるワクチン接種も単独では完全防御を示さなかった。鼻腔内(i.n.)粘膜チャレンジに対する防御およびその防御が長期であるかどうかを試験するさらなる研究が行われた。脾臓および肺ならびに唾液腺の大部分におけるウイルス力価は全身性チャレンジに続くすべての時点で検出限界以下であることが見いだされた。完全な滅菌免疫は得られなかったが、粘膜チャレンジに次いで、非免疫感作対照における複製ピークに対応する時点で、肺および脾臓におけるウイルス力価は1,000〜10,000倍低下し、唾液腺における力価は、10,000倍低下した。
【0030】
感染のマウスCMV(MCMV)モデルを用い、保存されたMCMVの必須遺伝子をコードするプラスミドDNAでマウスに免疫感作することにより、ワクチン接種マウスの脾臓におけるそれに続くMCMV複製に対して防御免疫を与えることができる。全死滅MCMVウイルスまたは弱毒生ウイルス粒子の送達により、ウイルスを中和し、臓器から臓器へのウイルスの広がりを抑制するのに役立つことができる、ウイルスエンベロープにおける糖タンパク質に対する抗体反応が誘発される。
【0031】
マウスサイトメガロウイルス(MCMV)タンパク質を発現する13プラスミドプールを用いてDNA免疫感作し、ついでホルマリン不活化MCMV(FI-MCMV)を用いるワクチン接種を行うことからなるプライムブーストアプローチは、強力な中和Abばかりでなく抗原特異的CD8 T細胞を生じさせ、強毒性ウイルスを用いる全身性チャレンジに続いて、BALB/cマウスにおける感染に対する完全な短期間防御を付与する。実施例で詳述するように、免疫反応を引き起こすために、より小さなプラスミドプールを用いることができる。より小さいプールは、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つのまたは少なくとも6つのMCMVタンパク質を発現するDNAプラスミドを含むことができる。実施例に示すように、このプールは、例えばgB、M54およびM105の全部または一部をコードするDNAを含むことができる。各DNA配列を別々のプラスミド上に含むこともできるし、1つのプラスミドが2以上のDNA配列を含むこともできる。他のプロトコルにおいて、3つのMCMV DNAプラスミド(その内の1つはもともとの13にはなかった)を注射し、ついでホルマリン不活化MCMVで免疫感作した。最も重要な所見は、全身性チャレンジした全BALB/cマウスの肺、脾臓および唾液腺において、この二重免疫感作プロトコルは長期滅菌免疫を引き起こしたことであった。
【0032】
追加免疫ワクチン
本発明の追加免疫段階において、不活化ウイルスまたは弱毒生ウイルスのいずれかを用いることができる。例えば、化学的処理などを含む当業者に公知の化学的手段または加熱などの極端な温度での処理によりウイルスを不活化できる。例えば、ホルマリン処理は生ウイルスを不活化する1つの方法である。他の実施形態において、弱毒生ウイルスは追加免疫段階で用いられる。例えば、弱毒生ウイルスはHCMVのTowne株であることができる。典型的な実施形態において、ヒトの治療のために、HCMVのTowne株は追加免疫段階で用いられる。
【0033】
単純ヘルペスウイルス2型感染
A.HSV-2のゲノム構成および増殖サイクル
HSV-2ゲノムは長さ〜154kbpであり、少なくとも84のオープンリーディングフレーム(ORF)をコードする。許容感染中、遺伝子発現の少なくとも3つの期である、前初期(immediate early)(IE)、(E)および後期(late)(L)が存在する(実施例16で引用した70)。IE遺伝子産物は感染後直ちに合成され、主として宿主因子および少なくとも1つのインプットビリオンタンパク質(VP16)に発現を依存する。初期のRNAおよびタンパク質合成はウイルスDNA複製に先行し、1以上のIE遺伝子の先行発現に依存する。最後に、ウイルスDNA合成開始後に後期遺伝子が転写される。
【0034】
B.HSV-2感染に対する免疫反応
HSV-2感染は、自然免疫反応および獲得免疫反応の両方により制御される(実施例16で引用した41、67)。獲得免疫は中和および非中和抗体ならびに特異的細胞性免疫反応を含み、CD8およびCD4 T細胞の両方が主な役割を果たしている。これらの免疫反応は感染を制御するが、再発性感染または他のHSV-2分離株による感染を予防しない。しかしながら、それらの重要性は、免疫不全個体に見られる頻度の高い再発および疾患の重症度の増加により浮き彫りとなる。再発性HSV-2生殖器病変の分析により、細胞障害性Tリンパ球(CTL:CD4+およびCD8+)の浸潤は、病変からのウイルスのクリアランスと関連していることもまた示されている(実施例16で引用した44)。
【0035】
HSV-2感染個体における中和抗体は主としてgBおよびgDに対するものである。初期の研究により、ヒトにおいては、HSV-2タンパク質に対するCD8 T細胞応答は比較的限られていることが示され、以下のORPが検出された:gB2、gD2、gE2、UL46、UL47、UL49、ICP0、ICP4、ICP22、ICP27、UL7およびUL25(実施例16で引用した40、42、43、58、86、87)。最近になって、48のHSV-2 ORFに相当するペプチドを用いる詳しい分析によりCD8 T細胞応答がより広いことが示された(実施例16で引用した35)。全48ORFが検出され、異なる個体間で反応のパターンに大きな相違が存在した。最も大きい反応頻度はORFであるUL39、UL25、UL27、ICP0、UL46およびUL47に特異的であった。しかしながら、分析されたORFは主としてIEおよびウイルス構造タンパク質であったことに注意が必要である。
【0036】
ヘルペスウイルスは免疫逃避に堪能であり、HSV-2は例外ではない。HSV-1およびHSV-2は、抗原提示に関連する輸送体タンパク質(TAP)とウイルスタンパク質ICP47の相互作用を含む機構によりウイルス抗原のMHCクラスI提示を下方制御する(実施例16で引用した24、32、88)。この相互作用により、TAPによる、小胞体内腔へのウイルスペプチドの輸送が妨げられるが、小胞体内腔においては、ウイルスペプチドとMHCクラスI分子との複合体が形成され、それがCD8+CTLにより認識されるために細胞の表面へ輸送されると考えられる。免疫逃避の他の機構は、専門の抗原提示細胞(APC)である樹状細胞へのウイルスの影響を含む。HSV-2はマウス樹状細胞の機能をそこね、細胞死を誘導する事ができる(実施例16で引用した37)。特に、骨髄由来樹状細胞のHSV-2感染は、それらの同種刺激能およびIL-12を損ね、それによりHSV-2感染に対するナイーブT細胞のプライミングを抑制する事ができる。マウスにおけるHSV-2の膣内接種に続く防御Thl指向性T細胞免疫の開始を支配する機構の研究から、感染上皮に対する粘膜下樹上細胞の迅速な動員が存在する事が示された(実施例16で引用した96)。これらの細胞は感染していなかったが、ウイルス抗原を取得しており、おそらくはリンパ節に移動し、そこでCD4+T細胞に、MHCクラスII分子と結合したウイルス抗原を提示した。最近になって、ヒト単球由来樹状細胞のHSV-2感染もまたアポトーシスをもたらすが、感染していない樹状細胞は死細胞からの細胞フラグメントを貪食し、抗原を交差提示することができることが見いだされた(実施例16で引用した8)。このように、リンパ節におけるT細胞をプライミングすることにより、感染していない樹状細胞によるウイルス抗原の交差提示により、樹状細胞に対するウイルスの影響を宿主は阻止する事ができる。
【0037】
C.HSV-2ワクチン試験
HSV-1またはHSV-2に対するワクチンを開発するために、多くのアプローチが採用された(概説については、実施例16で引用した36、41、78参照)。動物モデルにおいて、ほとんどすべてが一定レベルの防御効果を示したが、強力な中和抗体反応を誘発する能力があるにもかかわらずヒトの臨床試験に失敗した。1980年代に用いられたアプローチは、不活化HSVウイルス製剤からなるワクチンを開発することであった。このアプローチには感染細胞からのHSV-1タンパク質のホルマリン不活化画分が含まれ、生殖器疾患を予防するために、HSV不一致(discordant)のカップルにおいてこれが試験された(実施例16で引用した74〜76)。イタリアにおいて、熱失活HSV-2およびHSV-1ビリオン製剤もまた試験された(実施例16で引用した49)。残念なことに、これらの研究は二重盲検無作為化臨床試験で行われておらず、そのことが結果の解釈を困難にした。他のワクチンは、界面活性剤で分離されたウイルス糖タンパク質の製剤を用いた。このワクチンは、動物モデルにおける急性感染および中枢神経系疾患を防御し、ヒトにおける免疫反応を誘発したが、臨床試験において防御を示さなかった(実施例16で引用した2、15、54、79)。
【0038】
種々の生弱毒HSVワクチンが試験されたが、それはそれらがより広範な免疫反応を引き起こすであろうと考えられたからである。これらのワクチンは、組織培養におけるウイルスの多数の継代培養または特定のウイルス遺伝子の変異のいずれかにより製造された。これらのワクチンに関する問題は、高い免疫原性および低下したビルレンスのバランスが保たれていなければならないということである。現在開発中のHSV-2に対する生弱毒ワクチンの1つは、リボヌクレオチドレダクターゼICP10の大サブユニットのプロテインキナーゼドメインの欠失を有するHSV-2からなる(実施例16で引用した実施例16で引用した4)。このドメインは極性化したTh2活性を有し、効率的なウイルス複製および潜伏感染・再活性化に必要である。このワクチン(ICP10DPK)は動物モデルにおいて防御を与え、最初の試験結果は、このワクチンがいくらかの治療効果を有することを示している(実施例16で引用した3、16)。γ134.5遺伝子のみならずUL55-56、UL43.5およびUS10-12のコピーを欠失させることにより他の生弱毒HSV-2ワクチンが得られた(実施例16で引用した69)。このワクチンは免疫原性を示し、疾患からモルモットを防御する事ができたが、感染を防御しなかった。
【0039】
生弱毒HSVワクチンに対する代替手段の1つは複製異常HSVを含むワクチンである。1つのアプローチは、gHを欠失し、それによりそのウイルスが1ラウンドの複製しか行うことができないHSV-1またはHSV-2のいずれかからなる(実施例16で引用した13、22)。これらのワクチンは動物モデルにおいて防御を示したが、gH陰性HSV-2ウイルスワクチンは、ヒトにおいて治療効果を試験したとき、再発に対して防御を示さなかった(実施例16で引用した14)。第2のアプローチは、ICP8(UL29)およびヘリカーゼ-プライマーゼ複合体のタンパク質の1つ(UL5)を発現しない複製欠損HSV-1およびHSV-2ウイルスを得ることであった(概説については、実施例16で引用した19参照)。d15-29HSV-2ワクチンは、マウスにおける致死的ウイルス感染に防御を示し、モルモットにおいて予防または治療用ワクチンとして使用されたとき防御効果を示した。このワクチンの主な利点は、それが潜伏を成立しないことである。このワクチンを用いる臨床試験が計画されている。
【0040】
他のアプローチとして、組換えHSV糖タンパク質(主としてgBおよびgD)を含むワクチンが開発された。Chironにより開発されたワクチンはHSV-2由来のgDおよびgBにアジュバントMF59を加えたものからなった(実施例16で引用した17)。GlaxoSmithKlineにより開発された他のワクチンは、アジュバントであるアラムおよび脱アシル化モノホスホリル脂質Aと共にHSV-2のgDを含有した(実施例16で引用した82)。HSV-2血清不一致(serodiscordant)カップルにおいて両方のワクチンが試験された。ChironのワクチンはHSV-2感染に対して統計的に有意な防御を示さなかったが、GlaxoSmithKlineのワクチンは、特にHSV-1およびHSV-2の両方に対して血清反応陰性の女性における疾患に対し有意な防御効果を示した(男性においてはそうではなかった)。興味深いことに、後者の研究において、HSV-1による先行感染はHSV-2疾患に対していくらかの防御を付与したと思われるが、ワクチンは防御レベルを高めなかった。ペプチドワクチンもまた代替的アプローチとして考慮されたが、異なるHLA遺伝子を有する個体において防御を発揮すると考えられる免疫原性ペプチドの適切な組み合わせを見いだすことが困難である(実施例16で引用した7、26)。
【0041】
HSV抗原(通例gD)を発現する事ができるいくつかのウイルスベクターもまた試験された:ワクシニアウイルス、アデノウイルス、Oka水痘帯状疱疹ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス(VSV)(実施例16で引用した1、5、6、23、25、53、64)。これらのワクチンは動物モデルにおいて防御を示したが、未だヒトの臨床試験に移行していない。VSVを除いては、これらのワクチンはベクターに対する事前免疫を有する個体において潜在的に有効性が低いという不都合を有する。
【0042】
製剤
本発明の組成物および方法は、通常ヒト患者の治療に用いられるが、獣医学において同様または同一の疾患を治療するために使用することもできる。本組成物は、例えば限定するものではないが、霊長類の動物および家畜哺乳動物を含む哺乳動物の治療に使用できる。本発明の組成物は、幾何異性体および光学異性体を含む。
【0043】
本発明における使用に適した医薬組成物は、その使用目的を達成するために活性成分が有効量含有されている組成物を含む。特に、本明細書に記載の詳細な説明を考慮に入れれば、有効量の決定は十分に当業者の能力の範囲内である。
【0044】
正確な投与量は、投与経路、組成物が投与される形態、治療対象、年齢、治療対象の体重/身長ならびに担当医の選択および経験に左右される。
【0045】
本発明の組成物は薬学的に許容される塩を含むことができる。薬学的に許容される塩は一般に当業者に公知であり、限定ではなく例として、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンファースルホネート、炭酸塩、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシラート、エストレート、エシラート、フマル酸塩、グルセプタート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、粘液酸塩、ナプシラート、硝酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩またはテオクル酸塩を含むことができる。他の薬学的に許容される塩は、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy (20.sup.th ed.) Lippincott, Williams & Wilkins (2000)中に見いだす事ができる。好ましい薬学的に許容される塩は、例えば、酢酸塩、安息香酸塩、臭化物、炭酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、マレイン酸塩、メシレート、ナプシラート、パモ酸塩(エンボネート)、リン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩または酒石酸塩を含む。
【0046】
本明細書記載のDNA分子の薬学的に許容される塩の投与は本発明の範囲に含まれる。例えば、薬学的に許容される塩は、有機塩基および無機塩基を含む無毒の塩基から製造する事ができる。無機塩基由来の塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む。薬学的に許容される毒性のない有機塩基由来の塩は、第一級、第二級および第三級アミン、塩基性アミノ酸などの塩を含む。薬学的に許容される塩は、例えば、S. M. Berge et al., Journal of Pharmaceutical Sciences 66:1-19 (1977) 中に見いだすことができる。
【0047】
DNAワクチンの送達方法のみならず製剤および投与方法は、例えば米国特許第6,806,084号および第5,580,859号に見いだすことができる。DNAワクチンは、例えば、トランスフェクション促進タンパク質、ウイルス粒子、金粒子、リポソーム製剤、荷電脂質およびリン酸カルシウム沈殿剤を含むように製剤化することもできるし、あるいはDNAワクチンはこれらの成分を含まないこともできる。当業者は、例えば皮内、筋肉内または鼻腔内などの投与経路などの要素を考慮して適切な製剤を決定することができる。投与方法は複製型または非複製型ベクターの使用を含むことができる。
【0048】
活性成分に加えて、これらの医薬組成物は、賦形剤および補助剤を含む適切な薬学的に許容される担体を含むことができる。
【0049】
キット
本発明は、さらに、ワクチン組成物またはワクチン組成物を製造するために使用できる成分を含むキットを提供する。例えば、このようなキットは本発明のDNA分子を含むことができ、このようなDNA分子は、例えば、ワクチン送達用に製剤化できる。このようなキットは、例えば、弱毒生ウイルスまたは不活化ウイルスを含む第2のワクチン組成物をさらに含むことができる。あるいは、例えば、このようなキットは、例えばホルマリンなどの、ウイルスを不活化するために用いることができる化学物質を提供することができ、このようなキットは、まだ化学的に不活化されていないウイルスをさらに含むことができる。
【0050】
キットは使用説明書を含むこともでき、免疫感作に必要な、例えば鼻腔内、筋肉内または経皮デリバリーシステムなどの他の構成要素、例えば針、シリンジおよび吸入もしくは霧吹き装置を含むこともできる。
【0051】
実施例
以下に示す実施例はMCMVにおける研究を詳細に説明するものではあるが、これらの実施例は他の持続または潜伏ウイルスにおいて使用できる方法の例証となる。従って、例えば、免疫感作プロトコルにおいて使用する適切なDNA配列または送達方法の決定方法を提供する実施例は、他のウイルスにおいて適切なDNA配列または送達方法を決定するために使用できる方法の例証となる。典型的な保存されたHCMV遺伝子のアミノ酸配列を、対応するヌクレオチド配列と共に図8に示す。場合によっては、提示したヌクレオチド配列は図におけるアミノ酸配列よりも長いタンパク質をコードするが、完全長または短縮型のヌクレオチド配列が適切かどうか当業者は決定することができる。当業者はまた、対応するタンパク質をコードするヌクレオチド配列と該ヌクレオチド配列が異なることができる場合、例えば、該ヌクレオチド配列がコード配列の相補鎖である場合を認識するであろう。加えて、図8においてHCMVの特定の株であるAD169が用いられているが、他の株および関連ウイルスもまた使用できることは当業者には明らかである。
【0052】
実施例1
3つのMCMVプラスミド(IE1、M84およびgBをコードする)およびホルマリン不活化ウイルスでのマウスの二重ワクチン接種に続く全身性および粘膜チャレンジに対する長期防御(31週間)
3つのMCMVプラスミドを皮内投与し、ついでFI-MCMVの注射を行った。IE1およびM84を発現するプラスミドは強力な防御を示したが、続いてFI-MCMVの注射によりDNAで免疫感作を行う場合でも共に滅菌免疫を生じなかった前回の結果に基づいてプラスミドの選択を行った。それによって、自然感染中の中和抗体の主要な標的である糖タンパク質Bを発現するプラスミドを加えた。第30週において、組織培養由来ウイルスでマウスの1群を粘膜チャレンジし、第31週において、第2群を唾液腺由来ウイルスで全身性チャレンジした。チャレンジ後6、10、14、18、24および32日目に臓器(脾臓、肝臓、肺および唾液腺)を採取し、ウイルス力価を測定した。粘膜チャレンジしたマウスの肺において、ウイルス力価は、MCMVプラスミドを単独で投与したマウスにおいて少し低下し、MCMVプラスミドおよびFI-MCMVを投与したマウスにおいて著しく低下した。チャレンジ後32日目には、二重免疫感作したマウスの肺においてウイルスは検出できなかった。粘膜チャレンジしたマウスの唾液腺において、二重免疫感作したマウスにおける力価の低下はより著しく、大部分のマウスに関して、力価は検出限界以下であった。最も重要な所見は、全身性チャレンジしたマウスの肺、脾臓および唾液腺において、この二重免疫感作プロトコルが長期滅菌免疫を生じさせたことであった(93)。
【0053】
実施例2
MCMV初期遺伝子産物M84における複数のエピトープは、感染一次マクロファージにおいて効率的に提示され、DNA免疫感作に続く強力なCD8+Tリンパ球反応および防御に寄与する
MCMV IE1またはM84でのBALB/cマウスのDNAワクチン接種後に、MCMV感染に対する同様なレベルの防御が得られた(89)。しかしながら、脾細胞をエピトープペプチドで刺激するとき、IE1により誘発される抗原特異的CD8+T細胞の、細胞内サイトカイン染色(ICCS)で測定される百分率はM84によるものより高かった。これらの結果により、MCMVチャレンジに対してどちらも同様な防御効果を示すのに、なぜ2つのワクチン間にCTL反応における大きな差異が存在するのかという問題が提起された。皮内DNA免疫感作に続くM84特異的CTL反応をさらに研究するために、完全長M84を発現する抗原提示細胞(APC)を刺激細胞として用いた改変ICCSアッセイを開発した。この改変ICCSアッセイを用いたとき、単一の確定されたエピトープに対する反応と比較して、ずっと高い百分率のM84特異的CD8+T細胞が検出された。M84遺伝子のサブフラグメントを発現するプラスミドでマウスに免疫することにより、M84において少なくとも2つのさらなるCD8+T細胞エピトープが明らかにされた。これらの結果は、DNAベースワクチンの免疫感作に続く免疫反応の強度とウイルス防御間の相関を説明する。改変ICCSアッセイでのBALB/cマウスのMCMV感染に続くIE1およびM84特異的CD8+T細胞応答も同様にさらに研究した。このアッセイにおいてさらなるエピトープを用いたとき、M84特異的CD8+T細胞の百分率のわずかな上昇しか検出されなかった。感染中、防御反応を誘発しない抗原がDNAワクチンで投与したとき強力な防御を示すことができることに留意する重要性をこれらの結果は強調している(88)。
【0054】
実施例3
IE1、M84およびgBをコードする3つのMCMVプラスミドまたはgBpDNA単独で免疫感作したBALB/cマウスにおける、IE1、M84およびgBに対するCD8 T応答
BALB/cマウスの各群を、1)pc3Δneoベクター単独、2)gBpDNA単独または3)IE1、gBおよびM84のプール、のいずれかで皮内免疫感作した。マウスの他の群をTC-MCMVで腹腔内感染させた。最終pDNA免疫感作またはMCMV感染の9日後に、ICSアッセイによるCD8 T細胞定量のために脾細胞を採取した。優性IE1ノナペプチドまたはgBもしくはM84のいずれかを発現する組換えワクシニアウイルスに感染したJ774(H-2d)マクロファージを用いて、in vitroで脾細胞を刺激した。
【0055】
ベクター単独で免疫感作したマウスからの脾細胞を、gBを発現するJ774細胞を用いて刺激したところ、0.08%という低いバックグラウンド染色レベルが得られた。それに引き換え、gBpDNA単独で皮内免疫感作したマウスは平均1.84%のgB特異的CD8 T細胞を有し、IE1、gBおよびM84pDNAプールで免疫感作したマウスは平均0.32%を有していた。MCMVでの感染はgB特異的CD8+T細胞を平均レベル0.66%まで誘発した。細胞M84を発現するJ774ばかりでなくIE1ペプチドも用いて、IE1、gBおよびM84群におけるこれらの抗原に対してCD8T反応が引き起されることを立証するために脾細胞を刺激した。総合すれば、MCMV gBはH-2d拘束性MHCクラスIエピトープを含み、pDNA免疫感作およびMCMV感染の両方ともBALB/cマウスにおけるgB特異的CD8+T細胞をプライミングすることをこれらの結果は明らかにしている。短期間腹腔内(i.p.)チャレンジ後にgBpDNAで免疫感作したマウスの脾臓におけるMCMV力価の有意な減少が見られないことがいくつかの実験で示されたので、CD8+T細胞それ自身は有意の防御を与えないと推測される。
【0056】
実施例4
BALB/cマウスにおける粘膜チャレンジに対する防御を高めるORFの同定―gBおよび/またはgH/gLプラスミドおよびFI-MCMVでの免疫感作に続く、短期および長期の全身性または粘膜チャレンジに対する防御
粘膜チャレンジに対する防御を改善するための1つのアプローチは、糖タンパク質H(gH)を標的とするウイルス中和抗体をコードするベクターを含むことである。MCMV gHは、可溶性gHタンパク質での免疫感作に次いで、マウスにおいて補体非依存性ウイルス中和抗体を誘発することができることが以前の研究で示された。HCMV感染細胞において、細胞表面へのgHの転送(trafficking)には、gLに対するgHのジスルフィド結合とそれに続くgOとの相互作用によるgH/gL/gO複合体の形成を必要とする。gHの適切な転送およびグリコシル化パターンならびにおそらくは天然の免疫原性にはアクセサリー糖タンパク質の共発現を必要とする可能性があるので、ウイルス中和抗体反応のレベルまたは寿命を増強するために、DNAプール中に用いるMCMVのgHおよびgL(MCMVは明白なgOホモログを欠く)を共発現するベクターを構築した。分泌され、それにより高レベルの中和抗体をプライミングすることができるgBの短縮型を発現するプラスミドもまた構築した。
【0057】
1)DNAベクター+PBS/アラム;2)DNAベクター+FI-MCMV/アラム;3)gBプラスミド+PBS/アラム;4)gBプラスミド+FI-MCMV/アラム;5)gB短縮型プラスミド+PBS/アラム;6)gB短縮型プラスミド+FI-MCMV/アラム;7)gB+gH/gL+PBS/アラム;8)gB短縮型プラスミド+gH/gL+PBS/アラム;および9)上記の反復としてgB+IE1+M84+FI-MCMV/アラム;でマウスの各群を免疫感作した。DNA注射は皮内に行い、一方、すべてのFI-MCMVまたはPBS/アラムの注射は腹腔内に行った。チャレンジ前に血液サンプルを採取し、中和抗体を試験した。FI-MCMVを投与した全マウスは、粘膜または全身性チャレンジの前に中和抗体を獲得し、予備的ではあるが、1つの興味ある所見は、短縮型gBプラスミド+PBS/アラムを投与した群は粘膜および全身性の両方のチャレンジ後に中和力価の急速な上昇を示したが、gBプラスミド+PBS/アラムを投与した群は全身性チャレンジ後に中和力価の急速な上昇を示したに過ぎなかったことである。
【0058】
上記の実験に対する補足として、ウイルス糖タンパク質のDNAによりプライミングされた抗体および防御反応を注意深く評価し、プライミングが長期の粘膜または全身性チャレンジからのさらなる防御を与えるかどうかを決定するために、gBおよびgH/gLDNAの組み合わせでプライミングし、続いてFI-MCMVで追加免疫することによりマウスの各群を免疫感作した。この実験において、種々のDNAプライム群における免疫および防御を、FI-MCMVブーストのみを投与した群と直接比較できるように、FI-MCMVブーストを投与する免疫感作群に焦点が置かれる。以下:1)ベクターDNA+PBS/アラム、2)ベクターDNA、3)gBDNA+FI-MCMV/アラム、4)gH/gLDNA+FI-MCMV/アラム、5)gB+gH/gLDNAs+FI-MCMV/アラムまたは6)gB+gH/gL+IE1+M84DNAs+FI-MCMV/アラムを用いて、上記のようにマウスの各群を免疫感作した。抗体反応の陽性対照として、マウスのもう1つの群を生MCMVで腹腔内感染させた。腹腔内または鼻腔内チャレンジより前に血液サンプルを採取し、チャレンジ後14日目に、MCMVの力価測定のために標的器官を採取した。さらに、後での長期防御レベルの測定のために、マウスの半分をチャレンジせずに残した。
【0059】
チャレンジ前ビリオン特異的血清IgGをELISAにより定量した。第1FI-MCMVブーストより前に、gBpDNAを単独でまたはgH/gLもしくはgH/gL+IE1+M84と共に用いてプライミングしたところ、群当たり4匹のマウスのうち2匹において低レベルのセロコンバージョンが引き起こされたが、gH/gL単独でプライミングされたマウスにおいては一匹もセロコンバージョンが引き起こされなかった。第1ブーストの3週間後、PBS/アラムで追加免疫したマウス以外の全マウスはセロコンバージョンを引き起こした。ベクター+FI-MCMV群の平均ELISA力価と比較して、他の群はやや高いELISA力価を示し、このことはgBまたはgH/gLpDNAでのpDNAプライミングが測定可能なB細胞のプライミングを引き起こしたことを示唆した。第2FI-MCMVブーストの3週間後、gH/gL単独で、あるいは他のプラスミド(gBまたはgB+IE1+M84)と組み合わせてプライミングされたマウスは、ベクターでプライミングし、FI-MCMVで追加免疫したマウスのELISA力価よりもおおよそ2倍高いELISA力価を示し、生SG-MCMVに感染したマウスにおけるELISA力価と同様なELISA力価を示した。gB単独でプライミングし、FI-MCMVで追加免疫したマウスは、ベクター単独でプライミングし、FI-MCMVで追加免疫したELISA力価と同様なELISA力価した。指標である力価の使用に内在するばらつきの存在に用心してのことであるが、チャレンジの時点で、ベクターまたはgBpDNA単独でプライミングしたマウス群におけるELISA力価よりも、gH/gLでプライミングした3つのマウス群におけるELISA力価の方が高かった傾向があることをこれらのデータは示唆している。
【0060】
実施例5
粘膜アジュバントの有り無しでFI-MCMVで粘膜(鼻腔内)免疫感作したBALB/cマウスにおける唾液腺のIgA反応および防御
上記のように、皮内pDNAプライミングとそれに続く腹腔内FI-MCMV追加免疫は、腹腔内チャレンジに次いで脾臓、唾液腺、肺および肝臓におけるウイルス複製に対して完全防御を与えると思われる。加えて、この非経口プライムブーストワクチンは、鼻腔内チャレンジに次いで、大部分のマウスにおいて脾臓、唾液腺および肝臓の完全防御を与えることができた。しかしながら、鼻腔内チャレンジしたマウスの肺において、ビヒクルのみで免疫感作した対照と比較して低レベルではあったが、マウスの大部分においてウイルスを検出することができた。そのため、FI-MCMVの鼻腔内送達が、鼻腔内チャレンジ後に、複製の最初の部位でMCMVに対する粘膜防御を増強する事ができるかどうかを調べた。一般に、鼻腔内免疫感作に続く粘膜反応は、タンパク質抗原に対して弱いので、一般的に用いられる2つの実験粘膜アジュバントであるコレラ毒素(CT)および免疫刺激CpG DNA(CpG)の、粘膜免疫および防御レベルの上昇を誘発する能力もまた試験した。
【0061】
鼻腔内チャレンジに続く肺において、CT、CpGまたは両方と共にPBSまたはFI-MCMVのいずれかで鼻腔内免疫感作したマウスはすべて、腹腔内PBS+アラムを投与した対照群におけるMCMV力価と同様なMCMV力価を示した。対照的に、FI-MCMV単独で鼻腔内免疫感作したマウスまたはFI-MCMV単独で腹腔内免疫感作したマウスは、肺において対照より35倍低い平均力価を示した。しかしながら、FI-MCMV単独で鼻腔内免疫感作により与えられる防御は、唾液腺において対照よりも4倍低い平均力価を示したにとどまった。対照的に、FI-MCMV単独またはそれにアラムを加えたものでの腹腔内免疫感作は、おおよそ40倍の平均力価の低下を与えた。最後に、腹腔内チャレンジに続くFI-MCMV単独での鼻腔内免疫感作は、対照と比較して肺、肝臓または唾液腺において防御を与えなかった。このことは腹腔内免疫感作によって与えられた腹腔内チャレンジに対する高レベルの防御と著しく異なっていた。
【0062】
腹腔内または鼻腔内MCMVチャレンジに続く、CTまたはCT+CpGと共にFI-MCMVを用いる鼻腔内免疫感作は、一部のマウスの死をもたらした。アジュバント単独で鼻腔内免疫感作した対照マウスにおいてこのことは起こらなかったが、これは単にCTの毒性によってのみ死が引き起こされたのではないことを示唆している。これらの結果は、抗原とアジュバントの間に有害な相互作用が存在しうることを示唆している。PBS+アジュバント対照におけるウイルス力価は、PBS+アラムで腹腔内免疫感作した対照マウスにおけるウイルス力価と匹敵していた。しかしながら、腹腔内チャレンジに次いで、FI-MCMV+CpGで鼻腔内免疫感作したマウスは、肝臓および肺において対照よりも50〜100倍高いウイルス力価を示した。
【0063】
FI-MCMVでの鼻腔内免疫感作の利点はない可能性があり、免疫感作のために種々の抗原を用いる実験からアジュバントの効果を推定することは困難であるということをこの研究は示しているといって差し支えない。
【0064】
実施例6
マウスの他の系統における二重免疫感作により与えられる防御のアッセイ
BALB/c以外のマウス系統における二重免疫感作プロトコルの有効性を試験するためにパイロットスタディを行った。C57BL/6(H-2b)マウスに:1)DNAベクター単独;2)DNAベクター+PBS/アラム;3)DNAベクター+FI-MCMV/アラム;4)13MCMV DNAプラスミド単独;5)13MCMV DNAプラスミド+PBS/アラム;または6)13MCMV DNAプラスミド+FI-MCMV/アラム、で免疫感作した。すべてのDNA注射は皮内に行い、FI-MCMVまたはPBS/アラムのすべての注射は腹腔内に行った。チャレンジ前に血液サンプルを採取し、FI-MCMVで免疫感作したマウスの全部が中和抗体を獲得した。最終FI-MCMVブーストの26週間後にマウスに腹腔内チャレンジした。チャレンジ後6日目および10日目に、MCMVの力価測定のために脾臓および唾液腺をそれぞれ採取した。
【0065】
13MCMV DNAプラスミド単独または13MCMV DNAプラスミド+PBS/アラムで免疫感作したマウスは、任意の臓器において有意の防御を示さなかった。唾液腺に関してこの結果は予期されたことであったが、脾臓における防御の欠如は、これらのMCMVプラスミド単独でのDNA免疫感作は防御CD8+T細胞応答を誘発する事ができなかったことを示した。しかしながら、DNAベクター+FI-MCMV/アラムで免疫感作したマウスの脾臓における力価は、DNAベクター単独で免疫感作したマウスにおける力価よりも45倍低かった。重要なことには、13MCMV DNA+FI-MCMVで免疫感作したマウスの脾臓におけるウイルス力価は、試験したマウス4匹のうち3匹で検出限界以下であった。加えて、DNAベクター+FI-MCMV/アラムで免疫感作したマウス4匹のうち3匹の唾液腺のMCMVは検知できないレベルであった。最も重要なことに、13MCMV DNAプラスミド+FI-MCMVで免疫感作したマウスのうち4匹全部の唾液腺のMCMVは検知できないレベルであった。総数は少なかったが、FI-MCMVでのH-2bマウス系統の免疫感作は、全身性チャレンジに次いで、脾臓および唾液腺の両方におけウイルス複製に対する長期防御を与えるのに有効であることをこれらの結果は示した。それらはまた、13MCMV DNAプラスミド+FI-MCMVでの連続免疫感作がさらなる防御を与えることを示した。
【0066】
実施例7
高度に保存されたHCMV DNAポリメラーゼ(M54)またはヘリカーゼ(M105)遺伝子のMCMVホモログでのDNA免疫感作は防御反応を誘発する
ウイルスDNA複製に必須であるMCMV(Smith株)遺伝子(71):M54(DNAポリメラーゼ‐HCMV UL54に対して415個のアミノ酸に関してFastAでの50%の一致);M105(ヘリカーゼ‐HCMV UL105に対して861個のアミノ酸に関してFastAでの43%の一致);およびM70(プライマーゼ‐HCMV UL70に対して982個のアミノ酸に関してFastAでの36%の一致)を、免疫を与えるその能力に関して試験した。
【0067】
1群当たり4匹のBALB/cマウスに、ベクタープラスミド単独(pc3Δneo)または、MCMV IE1遺伝子または保存された必須遺伝子M54、M70もしくはM105を発現するこのプラスミドのいずれかで2週間に3回皮内免疫感作した。最終免疫感作の2週間後、3つの投与量(50%致死量(LD50)の0.25倍、0.50倍または0.75倍)のうちの1つの毒性MCMVでマウスに腹腔内チャレンジし、チャレンジ後6日目に脾臓を採取し、ホモジナイズして感染チャレンジウイルス量を測定した。結果を、図1に、脾臓当たりのウイルスのプラーク形成単位(PFU)のlog10で示す。棒は群ごとの平均値を示し、円は各マウスからの数値を示す。陽性対照IE1 pDNAに加えて、M54およびM105をコードするpDNAは、腹腔内チャレンジ用量のすべてに次いで脾臓におけるウイルス複製に対して防御を示した(図1)。低用量のMCMVでのチャレンジに続く、M54およびM105 pDNAでの免疫感作により与えられた力価の低下は、IE1群における力価の低下に匹敵した。M54およびM105で免疫感作したマウス脾臓におけるウイルス力価の低下は、中間チャレンジ用量に次いでIE1で免疫感作したマウスにおけるウイルス力価の低下ほど大きくなかったが、高チャレンジ用量に次いで、IE1およびM54免疫感作は両方とも600倍を超えるウイルス力価の低下をもたらし、M105は60倍の低下をもたらした。M70 pDNAは、興味あることにそのHCMVホモログに対して最も低いaa一致を示すが、防御を示さなかった。
【0068】
実施例8
種々のマウス系統にわたって防御を示すMCMV ORFの同定
BALB/cマウスにおいて、より活発な粘膜防御反応を引き起こすことができる遺伝子の他の組み合わせを同定できる。関連する相同のヒトCMV遺伝子は、今度はヒトにおける、より強力な粘膜防御反応であることができる。種々のH-2ハプロタイプを有する動物における防御に必要な遺伝子の種々のサブセットもまた存在しうる。
【0069】
CMV自然感染に次いで成立した免疫は、ウイルスおよび疾患の播種を抑制することができるが、ウイルスが存続し、潜伏が成立している場合、ウイルスは再活性化でき、個体は種々の株のCMVに再感染することができる。従って、免疫感作は自然感染よりもより有効であるに違いない。血清反応陽性個体におけるCD8 T細胞(ならびにCD4 T細胞および抗体)の最も目立つ集団は、免疫優勢であることができるが、免疫防御的(immunoprotective)であることができない。高度に保存された必須非構造タンパク質は、"プライミングされた"CD8 T細胞にとって、感染細胞における優れた標的であることができるが、自然感染中、未だ見つかっていない、これらの抗原に対してプライミングされることからナイーブT細胞を予防する免疫回避機構が存在する。しかしながら、DNA免疫感作によるこれらの抗原の送達は、防御反応を誘発する事ができるであろう。
【0070】
CMVに対するCD8+T細胞応答を特徴づける最近の研究は、感染によりプライミングされるCD8+T細胞のレパートリーは既知のウイルスimmunoevasinにより顕著に影響を受けないものの(24、25、50)、immunoevasinはプライミングされたCD8+T細胞がウイルス複製のレベルを低下させるのを抑制する事ができることを強く示唆している。例えば、C57BL/6マウスのMCMV感染は、高レベルのM45特異的CD8+T細胞をプライミングする事が明らかにされている。しかしながら、照射レシピエントへのこれらの細胞の養子移植に次いで、野生型に感染した組織においてimmunoevasinの発現が見られるが、変異体では見られず、ウイルスはウイルスペプチドの提示を抑制し、M45特異的CD8+T細胞がウイルス複製を制御するのを抑える(37)。これらの所見は、理にかなったワクチンデザインのための少なくとも2つの重要な含意を有する。第1に、免疫学的アッセイはCMV感染により誘発されるCD8+T細胞のレパートリーを特徴づけることができるものの、ウイルス複製の制御を与える各特異的CD8+T細胞サブセットの能力は、防御アッセイにより直接に評価されなければならない。第2に、CMVでの感染既往は、ウイルスの再感染または再活性化および子宮内感染に対する完全な防御を与えないので、CMV感染は、CD8+T細胞のレパートリーをゆがめる(skew)ことができ、それによってプライミングされてはいるが効果のないCD8+T細胞の中でウイルスは持続感染および潜伏感染を成立させ維持できる。感染中、ナイーブCD8 T細胞は保存された非構造必須タンパク質に対してプライミングされていない可能性があるが(表1参照)、なぜなら、このウイルスは免疫反応を回避するためにこれらのタンパク質における変異を維持できないからである。従って、CMVワクチンに滅菌免疫を与えるために、CD8+T細胞応答を誘導されたワクチンは、ウイルス感染に関連してCD8 T細胞をプライミングしない必須ウイルスタンパク質に対する特異性を含むことを必要とする可能性がある。
【0071】
すでに使用されているDNAベクターにより引き起こされる免疫反応の幅を増強し、防御を誘発するMCMV遺伝子をさらに同定するための1つのアプローチは、DNAワクチン接種に既知のMCMV ORFから構築したDNA発現ライブラリーを使用することである。3つのマウスハプロタイプにおいて防御を示すさらなるMCMV ORFを決定するために、それぞれのHCMVホモログに対して高度に保存されたMCMV遺伝子(表1参照)がクローニングされ試験される(71)。これらの多くは、ウイルスDNA合成に寄与するタンパク質をコードし、他のヘルペスウイルスに対して保存された初期遺伝子である。加えて、M114を除いては、HCMVホモログのすべては初代線維芽細胞におけるウイルス複製に必須であることが明らかにされている(12、90)。前述のとおり、腹腔内チャレンジに次いで、M54およびM105遺伝子はBALB/cマウスの脾臓において防御を示す。興味あることに、防御を示さないM70は、HCMV UL70に対してアミノ酸一致度が最も低い。これらの遺伝子のPCR産物を、タンパク質検出を容易にするためにカルボキシ末端Flagタグを付加した真核発現ベクター(すなわちpcDNA3)に連結する。得られる形質転換体を、制限酵素分析により正しい方向のインサートの存在に関してスクリーニングし、各ORFの5'および3'末端を配列の決定する。各タンパク質の発現は、in vitroでの転写/翻訳反応またはin vivoでの一時的発現アッセイにおいて明らかにされる。最初のスクリーニング実験において、例えば、特定のマウス系統において未だ試験されていない、表における5つまたは6つの遺伝子のプールで、1群当たり12匹のマウスに2週間に3回皮内免疫感作する。陰性対照として、マウスの1群を空プラスミドベクターで免疫感作する。最終注射の2週間後、毒性SG-MCMVの致死量以下の3つのチャレンジ用量の1つでマウスに腹腔内チャレンジする。データの解釈を改善するために、複数回投与を用いる。チャレンジ後6日目に、MCMVの力価測定のために脾臓を採取する。DNAプールが防御を示すと判断するためには、チャレンジ群の少なくとも2つにおいて、ベクターで免疫感作した群に対して少なくとも5倍の脾臓の力価の低下が存在する。異なるMHCハプロタイプのマウスにおけるDNAプールの防御能力を試験するために、CMV感受性BALB/c(H-2d)、CBA(H-2k)、および129/J(H-2b)系統において該プールをスクリーニングする。目的は、全3マウスハプロタイプにわたって防御するために必要な、保存された必須MCMV遺伝子の最小数を含む最小限のDNAプールを構築することである。
【表1】

【0072】
実施例9
抗原特異的CD8+T細胞応答の確認
ひとたび、上記のスクリーニングで最小限の系統間防御DNAプールのメンバーが同定されたら、DNAのそれぞれが抗原特異的CD8+T細胞応答を引き起こすことを確認するのが重要である。M100(gM)を除いては、上記の保存されたMCMV遺伝子により誘発される防御は、それらが非構造抗原をコードすると思われるのでCD8+T細胞により媒介されると考えられる。最小限のプールを含む防御DNAのそれぞれでの免疫感作に誘発される抗原特異的CD8+T細胞レベルは定量できる。加えて、MCMV感染に次いで、これらの抗原が天然のCD8+T細胞のレパートリーの一部であるかどうか決定するために、これらのMCMV遺伝子に特異的なCD8+T細胞レベルを測定できる。これらの保存された遺伝子がDNA免疫感作後にCD8+T反応を誘発するがウイルスが持続し、潜伏を成立させるために、ウイルスが誤った反応の指図をすることによりMCMV感染を誘発しないことはまったくありうることである。
【0073】
トランスフェクトされた細胞を刺激細胞として用いる改変ICSアッセイにより、CD8+T細胞応答を定量できる(94)。例えば、1群当たり4匹のマウスに、空DNAベクターまたは防御DNAの最小限のプールのそれぞれのいずれかで皮内免疫感作する。加えて、マウスの1群をTC-MCMVで腹腔内感染させる。MCMV感染または最終DNA免疫感作の10日後に、脾細胞を単離し、空ベクターまたは防御DNAのいずれかでトランスフェクトされた、同系の容易にトランスフェクトできる細胞株(例えばK41 H-2b、BALB SV40 H-2dなど)で培養液中刺激する。刺激に次いで、脾細胞を蛍光CD8およびIFN-γ特異抗体で染色し、上記のようにフローサイトメトリーにより計数する。トランスフェクトされた細胞は完全長ORFを発現するため、プロテアソーム中で自然に生成でき、MHCクラスI複合体に結合されるすべての可能なエピトープを提示でき、各抗原の最小限のMHCクラスIエピトープを直ちに明らかにする必要性がない。この方法を用い、MCMV感染に次いで、C57BL/6マウスにおける抗原特異的CD8+T細胞の生成に関してMCMV Smith株のORFの大部分をスクリーニングした(94)。DNAで免疫感作し、MCMVで感染したマウスからのICSアッセイデータを一まとめにして考えれば、マウスハロタイプにわたって観察される防御の免疫学的基礎をすばやく評価できるばかりでなく、野生型MCMVでの感染は、感染中これらのほかの点では防御抗原に特異的なナイーブCD8+T細胞のプライミングを抑制する事ができるかどうかという問題に取り組むことができる。前述のとおり、M84は、DNA免疫感作に次いで高い抗原性および防御を示すが、MCMV感染中は最小限の抗原性を示す、MCMVの原型的なCD8+T細胞抗原であることが見いだされる。
【0074】
実施例10
CD8+T細胞応答を誘発する非構造E遺伝子の同定
本実施例において、CD8+T細胞応答を誘発する非構造初期遺伝子が同定された。本実施例はまた、抗原特異的CD8+T細胞応答が本発明の方法を用いて得られることを明らかにする。
【0075】
マウス、細胞およびウイルスならびにウイルス精製
3〜4週齢の特定病原体不在雌BALB/cマウスをハーラン・スプラーグ・ドーリー社(Harlan Sprague Dawley, Inc.)から購入し、Pacific Hall自然動物園(University of California, San Diego)内のマイクロアイソレーターケージで飼育した。免疫感作またはMCMV感染の少なくとも1週間前にマウスを順化させた。
【0076】
NIH 3T3(ATCC CRL1658)、COS-7(ATCC CRL1651)およびBALB/cマウスの胚細胞(MEC)を既述のように増殖させた(24)。BALB SV40細胞、SV40形質転換H-2d細胞株(95)をCOS-7培地中で培養した。
【0077】
唾液腺由来MCMV K181株(SG-MCMV)をBALB/cマウス内で増殖させ、組織培養由来MCMV K181株(TC-MCMV)を既述のようにMEC内で増殖させた(96、15)。NIH 3T3細胞を用いるプラークアッセイによりこれらの原液の力価を測定した(27)。本研究に用いたBALB/cマウスにおけるこのSG-MCMV原液のLD50は8x105PFUであった(63)。
【0078】
プラスミドの構築および発現
IE1-pp89のcDNAを発現するpc3Δneo-pp89の構築は前述した(89)。pcDNA3.1/V5-His-TOPO(Invitrogen Life Technologies)へのSmith株MCMVの細菌人工染色体由来のウイルスであるMCMV MW97.01のM54、M70およびM105遺伝子のクローニングもまた記載されている(97)。本明細書に記載の研究のために、クローニングされた3つのORFの全配列を決定し(Eton Biosciences, Inc., San Diego, CA)、公表されたMCMV Smithの配列(71)(GenBankアクセッション番号U68299(GI|21716071; NC004065))と比較した。M54およびM105のORFのコード配列は、公表された配列と同一であった。M70 ORFの配列は、MCMVによりコードされるORFの3'末端とベクターによりコードされるエピトープタグ配列の間での1個のTの挿入(immediate終止コドンをもたらす変異)を除けばSmith株の配列と同一であった。この変異は、M70タンパク質の、野生型タグなし全コード配列を生じた。全連続的リーディングフレームの確認は、製造業者による提案に従い、[35S]メチオニン、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)およびオートラジオグラフィーを用い、共役in vitro転写/翻訳システム(TNT T7 Quick Coupled Transcription/Translation System, Promega Corporation)により行った。一過性にトランスフェクトされたCOS-7細胞における発現のその後のウェスタンブロット分析を容易にするために、製造業者による提案に従って、M70クローンの外来TをQuikChange部位特異的突然変異誘発(Stratagene, Inc.)により欠失させ、得られたクローンをDNA配列決定により立証した。
【0079】
Effectene(Qiagen)を用いるCOS-7細胞の一過性トランスフェクションとそれに続くウェスタンブロット分析によりタンパク質発現を確認した。トランスフェクション後48時間で、還元条件SDSサンプル緩衝液で細胞溶解物を調製し、42℃で可溶化し、SDS-PAGEで分離し、タンパク質をニトロセルロース膜に転写した。プラスミドにより発現されたMCMVタンパク質は、製造業者の推奨に従って、マウス抗V5タグ特異的モノクローナル抗体(Invitrogen)およびSuperSignal West Pico試薬(Pierce)を用いて検出した。
【0080】
皮内免疫感作のために、Qiagen Endo-Free MegaまたはGigaカラムを用いてプラスミドを精製し、エンドトキシンフリー10mMトリス-HCl(pH8)に、1ml当たりDNAおおよそ2mgを再懸濁した。
【0081】
免疫感作、ウイルスチャレンジおよびウイルス滴定
注射の直前に、プラスミドをエンドトキシンフリー10mMトリス-HCl(pH8)緩衝生理食塩水に希釈した。マウスの尾の基部付近の刈り込んだ脇腹または基部からおおよそ1.5〜2cmの尾の皮内部位の1つのいずれかにおける3つの部位(部位当たり10μl)に希釈プラスミド30μlを皮内注射した。2週間に3回マウスに注射し、最終注射の2または3週間後に、致死量以下の種々の用量のSG-MCMVを含有するダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(DPBS)0.5mlを用いる腹腔内注射でチャレンジした。
【0082】
腹腔内チャレンジ後6日目にマウスを屠殺し、脾臓を無菌的に摘出し、DPBSで洗浄した。7ml Tenbroeckホモジナイザーを用い、10%熱失活新生仔ウシ血清(Invitrogen Life Technologies)および10%DMSOを含有するダルベッコ変法イーグル培地中で脾臓をホモジナイズし、ホモジネートを等分して滴定まで-80℃で保存した。既述(27)のように、24ウェルディッシュ中のNIH 3T3細胞を用い、清澄化ホモジネートのプラークアッセイにより感染性MCMVの力価を測定した。この最初のアッセイに対する感度限界は、脾臓当たり100PFUであった。脾臓のウイルス力価が検出限界の5倍以下(脾臓当たり<500PFU)の場合、培地中の熱失活新生仔ウシ血清の濃度を10%に増やす以外は既述(63、64)のようにして10cmディッシュ中にNIH 3T3細胞を用いる、より高感度のプラークアッセイにおいてホモジネートの他のアリコートからの清澄化ホモジネート100μlを用いた。このアッセイの感度限界は脾臓当たり10PFUであることが実験的に確認された。各群における個々のウイルス力価のLog10を取り、Log10の平均値を算出した。
【0083】
細胞内サイトカイン染色(ICS)アッセイ
前述のように、トランスフェクトされた刺激細胞を用いてICSアッセイにより、DNA免疫感作により誘発された特異的CD8 T細胞レベルを測定した(97)。比較目的のため、アッセイの2または4週間前に1.2x105PFUのTC-MCMVを腹腔内感染させた、1群当たり3匹のBALB/cマウスにおいて、MCMV感染により生じたCD8 T細胞レベルを測定した。最終pDNA免疫感作の2〜3週間後、ICSアッセイのために免疫感作群または感染群のそれぞれから3匹のマウスを屠殺した。簡潔に言えば、BALB SV40(H-2d)細胞を96ウェル組織培養プレートに播種し、1日後、プラスミドDNA0.5μgおよびFuGene6(Roche)1.25μl/ウェルで細胞(およそ60〜75%集密的)をトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、脾細胞を採取し、赤血球を溶解し(BD Pharm Lyse, BD Biosciences)、ブレフェルディンA(GolgiPlug, BD Pharmingen) の存在下で、トランスフェクトされた BALB SV40細胞の2連ウェルに免疫感作マウスまたは感染マウスからの8x105脾細胞を加えた。ペプチド刺激のために、2x106脾細胞を含む2連ウェルのそれぞれを、ブレフェルディンAの存在下、Ld拘束性ノナペプチドエピトープであるTEl(168YPHFMPTNL176)1μMで刺激した。CD8およびIFN-γ染色のゲート制御の役割をする脾細胞をペプチドは刺激した。37℃および7%CO2での刺激の8時間後、染色のために、脾細胞の2連ウェルを96ウェル丸底プレートの1ウェルにあわせた。フィコエリスリン-Cy5(PE-Cy5)で標識した抗マウスCD8a(Ly-2)抗体クローン53-6.7(eBioscience)で脾細胞を終夜表面染色し、固定および浸透化(BD Cytofix/Cytoperm, BD Biosciences)に次いで、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)で標識した抗マウスIFN-γ抗体クローンXMG1.2(eBioscience)で脾細胞を染色した。リンパ球はゲートされ、二重染色された脾細胞を、Research Flow Cytometry Core Facility, VA Medical Center, La Jolla, CaliforniaでのBD FACSDivaソフトウェアを用い、BD FACSCantoフローサイトメーター (BD Biosciences)で計数した。
【0084】
二次CD8 T応答の測定のために、DNA免疫感作マウスまたはTC-MCMV感染マウスに1.2x105PFUのSG-MCMVを腹腔内感染させ、感染後5日目に脾細胞を採取し、上記の様にICSアッセイにより分析した。
【0085】
統計分析
MCMV力価またはCD8 T細胞レベルを比較するために一元配置分散分析(ANOVA)を用い、対比較のための事後検定試験として、Fisherの制約付最小有意差検定(PLSD)を用いた。Macintosh用StatView4.51ソフトウェア(Abacus Concepts, Inc.)を用いて分析を行い、P<0.05のとき、統計的に有意であると定めた。
【0086】
MCMV DNA pol(M54)、プライマーゼ(M70)およびヘリカーゼ(M105)のクローニング、配列決定および発現
Smith株由来細菌人工染色体であるMCMV MW97.01から、pcDNA3.1/V5-His-TOPO(カルボキシ末端V5エピトープおよび6xHisタグを提供するベクター(97))に、M54、M70およびM105遺伝子をクローニングした。クローニングされたM54およびM105 ORFの全配列はMCMV Smith株の公表された配列(71)と同一であった。クローニングされたM70 ORFの配列は、M70 ORFの3'末端とベクターによりコードされるエピトープタグ配列の間での1個のTの挿入を除けばMCMV Smithと同一であった。この変異はimmediate終止コドンを生じ、従って、M70タンパク質の、タグなし全コード配列を生じた。M54、M70およびM105の全連続的リーディングフレームの確認は、共役in vitro転写-翻訳(TNT T7 Quick)反応および[35S]メチオニン標識(図3A)により行った。SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーにより、プラスミドのそれぞれは、予測相対分子量:M54に対して128.8kDa、タグなしM70に対して109.6kDaおよびM105に対して111.4kDaを有する単一の標識ポリペプチドを発現する事が見いだされた。マウスの皮内免疫感作のために、これらのDNAクローンの大規模なエンドトキシンフリー製剤を調製した。
【0087】
in vivo発現に続くその後のウェスタンブロット分析を容易にするために、M70 ORFの3'末端における外来Tを部位特異的突然変異誘発により欠失させた。得られたM70クローン(M70*で示される)のDNA配列はT欠失を除いては親と同一であることが見いだされた(データは示さず)。M54、M70*およびM105プラスミドをCOS-7細胞に一過性にトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後に還元条件SDS-PAGEサンプル緩衝液中で全細胞溶解物を調製し、V5タグ特異的モノクローナル抗体を用いてウェスタンブロット分析を行った。COS-7細胞におけるM70*の発現により、タンパク質分解産物を表すと思われる等しい強度の移動度の速いバンドと共に、予測された114.7kDAに対応するバンドが生じた(図3B)。もともとの変異体M70クローンでトランスフェクトされたCOS-7細胞のウェスタンブロット分析に次いで、抗V5に反応するバンドは認められなかった。加えて、M54およびM105レーンにおいて認められる主要なバンドは、in vitroでの発現に次いで観察される予期されるサイズであった(図3B)。マウス-抗MCMV高度免疫血清で2連ブロットを調べたが、血清に反応するバンドは検出できなかった。総合すれば、プラスミドは完全長のタグをつけたORFを発現するが、コードされるMCMV抗原はBALB/cマウスの反復感染に次いで検出できる抗体反応を誘発しないことをこれらの結果は立証している。
【0088】
M70ではなく、M54およびM105遺伝子でのDNA免疫感作は、BALB/cマウスにおける防御反応を誘発する。
次の調査は、BALB/cマウスにおける3つの保存された必須遺伝子のいずれかを用いて防御・予防反応を生じさせることができるかどうかであった。M54、M70およびM105の遺伝子産物ならびにそれぞれのHCMVホモログはウイルスエンベロープの一部ではないと推定されるので、これらの遺伝子を用いるDNA免疫感作に次いで誘発される任意の防御反応は、細胞性反応由来であって、中和抗体反応由来ではないと考えられる。これらのプラスミドDNAの防御効果を試験するために、1群当たり4匹のBALB/c雌マウスの刈り込んだ脇腹に、1)pc3Δneoベクター単独(20μg)またはpc3Δneo(10μg)に2)IE1(pp89)、3)M54、4)M70もしくは5)M105のいずれか(10μg)を加えたもので皮内免疫感作した。最終免疫感作の2週間後、SG-MCMVの致死量以下の3つの用量の1つ:0.25x LD50(2x105PFU)、0.50x LD50(4x105PFU)または0.75x LD50(6x105PFU)でマウスに腹腔内チャレンジした。MCMVの力価測定のために、チャレンジ後6日目に脾臓を採取した。
【0089】
陽性対照IE1 DNAに加えて、M54およびM105をコードするDNAは、すべての腹腔内チャレンジ用量に次いで、脾臓におけるウイルス複製に対して防御を示した(図1)。低用量のMCMVでのチャレンジに次いで、M54およびM105 DNAでの免疫感作により与えられる力価の平均低下は、IE1群におけるものに匹敵した(ベクター単独で免疫感作したマウスに対して12〜15倍)。M54およびM105で免疫感作したマウスの脾臓におけるウイルス力価の低下は、中間チャレンジ用量に次いでIE1で免疫感作したマウスにおけるものよりも高くはなかったが、高チャレンジ用量に次いで、IE1およびM54免疫感作は両方とも600倍を超えるウイルス力価の低下をもたらし、M105は60倍の低下をもたらした。それぞれのベクターDNA単独で免疫感作した対照と比較して、M54またはM105 DNAで免疫感作したマウスにおける脾臓の力価の低下は、高用量(0.75x LD50)チャレンジ後のM105群(P=0.13)を除いて統計的に有意であった。最後に、興味あることに、そのHCMVホモログに対するアミノ酸一致度が最も低いM70 DNAは、任意のチャレンジ用量レベルで防御を示さなかった。これらの結果は、高度に保存された必須遺伝子であるM54およびM105を、防御抗原の新規なクラスの防御メンバーとして同定している。
【0090】
M54およびM105 DNAの防御効果を確認するために、独立した実験を行った。BALB/cマウスの各群を、治療せずに放置(Naive)するか、または50μgのベクターDNA(Vect)、IE1、M54またはM105 DNAで尾に2週間に3回皮内免疫感作した。最終免疫感作の3週間後、0.50x LD50(4x103PFU)のSG-MCMVでマウスに腹腔内チャレンジし、ウイルス力価測定のためにチャレンジ後6日目に脾臓を採取した。図2に示すように、IE1またはM54 DNAでの免疫感作は、この実験における各マウスの防御レベルにおけるばらつきはより大きかったが、ベクターDNA単独で免疫感作した対照に対してそれぞれ700倍および500倍を超える、脾臓における平均ウイルス力価の低下をもたらした(図4)。これらのプラスミドのいずれかにより誘発されたウイルス力価の低下は統計的に有意であった(Vectと比較してP<0.002)。この実験において、M105 DNAでの免疫感作は、Vect群よりもおおよそ40倍の平均レベルを有する、より少量のウイルス力価の低下をもたらした(P=0.059)。総合すれば、M54 DNAでの免疫感作は、免疫優勢IE1 DNAにより誘発される防御と同様な高レベルの防御を与えたが、M105 DNAでの免疫感作はより少量のウイルス力価の低下を誘発した。
【0091】
M54またはM105での免疫感作は、ウイルスチャレンジに続く、急速に増強する特異的CD8 T反応を誘発する。
DNA修飾酵素をコードする保存された必須遺伝子でのDNA免疫感作により誘発される防御反応は、特異的獲得細胞性免疫反応、すなわちCD8またはCD4 Tリンパ球反応によるものと思われる。IE1またはM84を発現するプラスミドを単独または組み合わせで注射することによるDNA免疫感作は、致死量以下の腹腔内チャレンジ後に脾臓におけるウイルス複製に対して強力なCD8 T細胞応答および防御を誘発する(62、89)。ICSアッセイによる、DNA免疫感作マウスまたはMCMV感染マウスにおけるpM84特異的CD8 T細胞の計数は、Holtappelsらにより確定されたエピトープペプチドと比較して、完全長M84タンパク質を発現する細胞での脾細胞の刺激に次いで、一貫してIFN-γ+CD8+T細胞の高い数値をもたらした(37、88)。これらの結果は、これらの遺伝子産物のH-2d拘束性エピトープのすべての地図を作る試み(そしておそらくは防御特異性の一部を見逃している)というよりはむしろ完全長防御M54およびM105遺伝子産物に対する細胞性反応の測定をもたらした。容易にトランスフェクトできるSV40形質転換H-2d細胞株(95)であって、完全長MCMV ORFを発現するDNAであらかじめトランスフェクトされたBALB SV40細胞により脾細胞刺激が媒介されるICSアッセイを用いた。この技術は、最近、既知のMCMV ORFの全部170をコードするプラスミドを用いてMCMV感染C57BL/6マウスのCD8 T細胞のレパートリーの特異性を特徴づけるために用いられた(97)。
【0092】
DNAで免疫感作したマウスにおける特異的CD8 T反応の測定のために、空プラスミドベクター(Vect)またはIE1、M54もしくはM105を発現するプラスミドDNAのいずれか25μgで7週齢雌BALB/cマウスの尾を皮内免疫感作した。2週間に3回マウスに免疫感作し、ICSアッセイの2週間前(図6A)または3週間前(図6B)にさらなるブースターを与えた。DNA免疫感作マウスとMCMV感染マウスの特異的CD8 T細胞レベルを比較するために、ICSアッセイより2週間前(図5A)または4週間前(図5B)にさらなるマウスの群を1.2x105PFUのTC-MCMVで腹腔内感染させた。ICSアッセイのために、DNA免疫感作マウスまたはMCMV感染マウスからの脾細胞を採取する48時間前に、IE1、M54またはM105 DNAのいずれかで96ウェルディッシュ中のSV40 BALB刺激細胞をトランスフェクトした。刺激細胞のトランスフェクション効率をモニターするために、IE1 DNAまたは増強緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescent protein)(EGFP)であるpcDNA3-EGFPを発現するDNAのいずれかでさらなるウェルをトランスフェクトした。1群当たり3匹のマウスからの赤血球除去脾細胞をブレフェルディンAの存在下で刺激細胞と共に8時間インキュベートし、抗CD8抗体で終夜表面染色し、抗IFN-γ抗体で細胞内染色し、フローサイトメトリーで分析した。図4に、感染群の免疫感作についての1匹の典型的なマウス(マウス2)についてのフローサイトメトリー結果を示す。刺激細胞をトランスフェクトするために用いたDNAにかかわらず、ベクター免疫感作マウスからの脾細胞のバックグラウンド染色は、IFN-γ陽性に染色したCD8+T細胞の0.01%〜0.02%と、大変低かった。
【0093】
図6Aは、最終DNA免疫感作の2週間後またはMCMV感染の2週間後のマウスにおいて得られたCD8 T細胞レベルを示す。IE1 DNA免疫感作マウスまたはMCMV感染マウスにおけるIE1特異的CD8 T細胞レベルは、それぞれ平均レベルが0.38%および0.32%と、同等であった。全般的に、これらのレベルは優性IE1エピトープペプチドで脾細胞が刺激されたときに得られるレベルよりも低いが、このことは、おそらく、大過剰の刺激ペプチドのみで浸された脾細胞と比較して、単一のIE1エピトープを提示している刺激細胞との接触を生じる、プライミングされたCD8 T細胞の確率が低いことから生じると考えられる。刺激の時点で、トランスフェクトされた刺激細胞は通常85〜100%集密的であり、EGFPでトランスフェクトされた細胞の直接蛍光またはIE1でトランスフェクトされた細胞の免疫蛍光染色のいずれかによる測定では、60〜70%の細胞がトランスフェクトされた(データは示さず)。それにもかかわらず、DNA免疫感作マウスまたはMCMV感染マウスIE1特異的CD8 T細胞のレベルは、ベクターで免疫感作したマウスよりも統計的に有意に高かった(それぞれP=0.001および0.003)。すべてのM54 DNA免疫感作マウスまたはMCMV感染マウスにおいて、M54でトランスフェクトされた刺激細胞での刺激後、M54特異的CD8 T細胞を検出できたが、DNAで免疫感作したマウスはMCMV感染マウス(平均0.18%、範囲0.15〜0.21%)に対してやや高いがより変動するレベル(平均0.39%、範囲0.20%〜0.58%)を示した(図6A)。M54で免疫感作したマウスにおける反応は、ベクターで免疫感作した対照(P=0.006)よりも有意に高かったが、MCMV感染マウス(P=0.06)に対してはそうではなかった。MCMV感染マウスにおけるM54特異的反応は、同様にベクター対照よりも有意に高くはなかった(P=0.12)。M105 DNA免疫感作またはMCMV感染は、M105特異的CD8 T細胞を誘発したが、ここでも同様に、DNA免疫感作は、MCMV感染(平均0.30%、範囲0.20〜0.35%)と比較して高いが変動するレベル(平均0.74%、範囲0.52〜1.16%)を誘発した。上記のM54試験群と同様に、M105 DNAで免疫感作したマウスにおけるCD8 T細胞応答はベクターで免疫感作したマウスよりも有意に高かったが(P=0.006)、MCMV感染マウスにおける反応は、対照と比較して統計的に異ならなかった(P=0.15)。しかしながら、DNA免疫感作およびMCMV感染に対するM105特異的反応は、この群においてはかなり異なった(P=0.045)。
【0094】
続いて、最終DNA免疫感作後にさらに1週間休ませた(全部で3週間)またはMCMV感染後にさらに2週間休ませた(全部で4週間)マウスにおいてCD8 T細胞レベルを試験した。全般的に、これらの結果(図6B)は上記で得られた結果と大変類似していた。最も注目に値する例外は、M54 DNA免疫感作マウスにおけるM54特異的CD8 T反応はMCMV感染マウスに対して有意に増強したことである(P<0.001)。MCMV感染マウスにおける平均M54特異的CD8 T反応は、2つの実験間で同等であったが(0.18%および0.21%)、これは、M54 DNA免疫感作マウスにおいて観察された増強が、IE1またはM105 DNAと比較してM54 DNAに対するCD8反応のより遅いキネティクスに由来するものであったことを示唆している。この実験において、MCMV感染マウスにおいてM105特異的CD8 T細胞レベルはベクター免疫感作対照よりも有意に高かったが(P=0.03)、M105 DNA免疫感作マウスとは有意に異ならなかった(P=0.11)。総合すれば、これら2つの実験の結果は、M54およびM105 DNAは抗原特異的CD8 T細胞反応を誘発し、そしておそらくはM54 DNAに対する反応はより遅いキネティクスを示すことを明らかにしている。MCMVでの急性腹腔内感染に次いでM54およびM105特異的CD8 T細胞応答を検出できたが、ベクター対照と比較して4週間でのM105に対する反応のみが統計的に有意であった。同様に、MCMV感染によるものと比較してM54およびM105 DNAが、CD8 T細胞レベルのより高いレベル誘発する傾向が見られ、MCMV感染は、2つの実験の1つにおいてM54またはM105に対して統計的に有意なCD8 T細胞レベルを誘発した。
【0095】
DNA免疫感作によりプライミングされたCD8 T細胞がどのようにウイルスチャレンジに応答するかを測定するために、M54およびM105遺伝子産物に対する二次応答を測定した。MCMV感染はベクター単独で免疫感作したマウスにおいてチャレンジ後5日目までに有意なレベルのIE1またはM84特異的CD8 T細胞をプライミングしない(89)。対照的に、IE1またはM84 DNAで免疫感作したマウスにおけるCD8 T細胞は、この初期時点までに活発に応答することができ、二次応答が引き起こされたことを示した。MCMV感染によりプライミングされた低いM54またはM105特異的CD8 T細胞レベルがその後のウイルスチャレンジに次いで増強するかどうか、あるいは感染中のこれらの抗原の亜優性(subdominance)はプライミングされたCD8 T細胞の増加を妨げるかどうかが本実施例の目的でもあった。この目的のために、最終免疫感作の7週間後に、1群当たり3匹のDNA免疫感作マウスに1.2x105PFUのSG-MCMVで腹腔内チャレンジし、同様に、MCMV感染マウスのうち3匹を、一次MCMV感染の6週後にSG-MCMVで再感染した。チャレンジまたは再感染の5日後に脾細胞を分離し、上記のようにICSアッセイにより分析した。
【0096】
IE1、M54またはM105 DNAを発現する細胞で刺激するとき、チャレンジ後5日目にベクター単独で免疫感作したマウスにおける特異的CD8 T細胞の平均レベルは、それぞれ0.06%、0.09%および0.10%であった(図7)。これらの結果は、これらの抗原に対する一次反応は感染後のこの時点では全般的に低かったことを示し、DNA免疫感作マウスまたはMCMV感染マウスにおけるレベルへのそれらの貢献の可能性の大きさを示している。IE1 DNA免疫感作マウスにおけるIE1特異的CD8 T細胞の平均百分率は0.48%であった(図7)。この値はチャレンジ前に観察されたピークレベルよりもやや高かった(0.38%、図6A)。比較すると、再感染後のMCMV感染マウスにおける平均は0.73%であったが、これはチャレンジ前ピークレベルの0.32%よりも少なくとも2倍高かった(図6A)。
【0097】
最終免疫感作の7週間後にM54またはM105 DNAでMCMVチャレンジしたマウスにおけるCD8 T細胞レベルは、同様に、それぞれのチャレンジ前ピークレベルの2〜3倍高かった。対照的に、以前MCMVに感染したマウスにおいて、M54およびM105に特異的なCD8 T細胞のチャレンジ後レベルは、それぞれのチャレンジ前レベルとほぼ同一であった。ウイルスでの再刺激がない場合に、DNA免疫感作マウスのこの群におけるM54およびM105に対する特異的CD8 T細胞のレベルがどのくらいであったかはわからないが、IE1またはM84DNAで免疫感作したマウスは最終免疫感作の2週間後より低いか同じであるCD8 T細胞レベルを有していた(89)。より具体的には、IE1ペプチド特異的CD8 T細胞のレベルは、最終免疫感作の2週間後において5.2%であり、第4週において1.7%まで減少し、一方でM84ペプチド特異的CD8 T細胞のレベルは、第2週において1.1%であり、第4週において1.0%であった。総合すれば、DNA免疫感作マウスにおけるM54およびM105特異的CD8 T細胞は、ウイルスチャレンジに対してIFN-γ+細胞レベルの上昇を伴って迅速に応答できたが、MCMV感染マウスにおけるIFN-γ分泌M54およびM105特異的細胞は、IE1特異的CD8 T細胞とは異なり、その後の再感染により刺激されなかったことを我々のデータは示した。
【0098】
本実施例において、HCMVにおけるホモログが培養細胞内でのウイルス複製に必須であることが見いだされている、E遺伝子上のMCMVの防御CD8 T細胞標的が同定された。一過性トランスフェクションシステムにおけるoriLyt依存性DNA複製にHCMV UL54およびUL105が必須であることが明らかにされ(98)、in vivoでのそれらのウイルス複製のための必要性は、DunnらおよびYuらによる独立した突然変異誘発研究により確認されている(12、90)。UL54はDNAポリメラーゼ触媒サブユニットをコードし、UL5によりコードされるHSV-1ヘリカーゼタンパク質とのaa相同性に基づき、HCMV UL105は提案されているヘリカーゼ-プライマーゼ複合体(UL70-UL102-UL105)のヘリカーゼ活性を有すると考えられる。このように、MCMVは、同族のエフェクターCD8 T細胞に直面してin vivoでの増殖感染においてM54およびM105の発現を強く下方制御または排除する事ができることは起こりそうもない。しかしながら、MCMVがより遅い複製速度および病原性低下を促進するレベルまで感染組織内でのM54またはM105の発現を下方制御できるが、それらの同族のCD8 T細胞に認識されるための十分なM54またはM105由来ペプチドの表面提示が防止される可能性も残っている。感染性ウイルスでの比較的高用量の全身性チャレンジに続く急性期の脾臓でのウイルス複製の我々の防御アッセイにより示されるIE1およびM54 DNAの同様な防御能力は、IE1およびM54特異的CD8 T細胞の最終的防御能力間の質的差異を説明しないが、慢性または潜伏感染中にこれらの細胞の抗ウイルス効果における差異が存在するかどうかを決定するための研究が進行中である。
【0099】
M54またはM105でのDNA免疫感作により、一貫して、トランスフェクトされたH-2d刺激細胞での短期間のインキュベーションによりIFN-γ分泌能を有するCD8 T細胞応答が誘発された。このように、各ポリペプチド配列内に少なくとも1つのH-2d拘束性抗原ペプチドが存在する。M54に対するピーク反応はM105に対して遅れることもまた明らかとなった。このことは、IE1およびM84特異的CD8 T細胞応答のキネティクスもまた少し異なるという所見と一致する(89)。
【0100】
MCMV感染がM54またはM105のいずれかにCD8 T細胞応答を生じるかどうかを試験したとき、急性感染はこれらの抗原に対する特異的反応に対するプライミングしたことも見いだされたが、M105に対する反応は2つの実験にうち1つのみに統計的有意性が得られた。各マウスにおける急性MCMV感染に対するM54特異的反応は、2つの実験においてバックグラウンドレベルの9〜39倍であり、一方、これらの実験におけるM105特異的反応はバックグラウンドの20〜49倍であった。従って、MCMV感染はM54およびM105の両方の抗原ペプチド(単数または複数)に対する特異的CD8 T細胞応答を誘発することができ、これらの細胞を検出するために用いられるこの反応またはアッセイにおけるばらつきにより、群サイズ、ばらつきおよび増強レベルでの統計的有意性を得ることが困難である。M105およびIE1に特異的であった平均および個別のCD8 T細胞応答は、示された2つの実験内でMCMV感染マウスに対して同様であったが(図6Aおよび6B)、このアッセイは各抗原に対して厳密に最適化されていなかった。しかしながら、M54およびM105 DNAはそれぞれ各実験において、それらのコードされた抗原に対して、MCMV感染により誘発されるものよりも強いピーク反応を誘発することができたので(IE1反応とは異なる)、さらなる分析により、M54およびM105はBALB/cマウスにおけるMCMVの亜優性抗原(subdominant antigen)に分類されるであろう。急性MCMV感染はM54およびM105に対する高レベルの特異的CD8 T細胞をプライミングする事ができないが、DNA免疫感作によりプライミングされたCD8 T細胞の有効性は、M54およびM105由来抗原ペプチドがin vivoで感染脾細胞により実際に提示されることを明らかにしている。
【0101】
SylwesterらおよびMunksらは、それぞれ、HCMVおよびMCMV感染に対するCD8 T細胞免疫のレパートリーを包括的に記録した。HCMVの場合は、33名の血清反応陽性被験者のうち3名(9%)のみが検出可能なUL54ペプチド特異的CD8 T細胞応答を示し、レベルは1%未満であったが(99)、これはUL54が亜優性HLA拘束性抗原ペプチドをコードしていることを示唆している。33名の被験者のうち6名(18%)が検出可能なUL105特異的CD8 T細胞応答を示したので、UL105はこれらの被験者におけるCD8 T細胞によりやや高い頻度で認識されたが、1名の被験者のみが1%を超えるレベルを示した。
【0102】
3匹の急性感染C57BL/6マウスのプールにおいて、CD8 T細胞のレパートリーには、弱いがバックグラウンドの>5倍のM54に対する反応が含まれた(およそCD8 T細胞の0.2%)。しかしながら、M105に対する測定可能な反応はなかった(97)。C57BL/6の研究において用いられたものと同じ方法を用いる急性感染BALB/cマウスでの実験において、CD8 T細胞の0.2%のM54に同様な平均反応が認められ、0.3〜0.4%のより高いレベルのM105特異的CD8 T細胞が認められた。急性MCMV中、M54およびM105に対してプライミングされたこれらの反応は低かったが、MCMVでの再感染がこれらのCD8 T細胞レベルを増強するかどうか、または感染中これらの抗原の見掛けの亜優性を支配する機構(単数または複数)が増強された二次応答を予防するかどうかはまだ決定されていなかった。マウスの再感染により、M54およびM105特異的CD8 T細胞のレベル(図7)は、感染後4週間での急性感染マウスにおけるそれぞれのレベルよりも認めうるほどには高くはなかった(図6B)。しかしながら、一次感染後の第4週(再感染前に測定される最終時点)と第6週(マウスの再感染時)との間にCD8 T細胞レベルにおけるさらなる低下が存在し、その後の再感染により第4週レベルまでのCD8 T細胞応答の増強をもたらした可能性がある。いずれにしても、再感染マウスにおけるM54およびM105に対する反応は、測定時点でMCMVでの再感染により少なくとも2倍増強されたIE1特異的CD8 T細胞レベルと対照的であった。従って、もし感染マウスにおいてMCMVに対する既存の免疫が、その後の感染ウイルス(またはウイルス抗原)が脾臓の区画に入ってM54またはM105に対する二次応答を再刺激することを予防したとすれば、IE1に対する二次応答も同様に排除される。IE1に対する二次応答の生成はM54およびM105 Eタンパク質に優る一時の利点を有する考えられ、従って、強力な防御を示すIE1特異的CD8 T細胞における増強は、M54およびM105エピトープに対してプライミングされたCD8 T細胞を再刺激する、感染脾細胞における十分なE遺伝子発現を排除した可能性がある。チャレンジウイルスの用量の増加がM54およびM105に対する二次応答の不足を克服するかどうかは、DNA免疫感作マウスにおけるこれらの抗原に対する二次応答が明確に観察されたので、解らない。IE1 DNA免疫感作マウスにおける二次応答は、免疫優勢IE1 Ld拘束性エピトープペプチド(24)を用いるICSアッセイにおいて以前観察されたものよりも高くはなかったが、これはおそらくは用いたICSアッセイにおける差異によるものである。
【0103】
試験したMCMVの3つの保存された必須E遺伝子のうち2つに対する反応がウイルス複製に対して防御を示すことが見いだされたが、MCMV感染に対するCD8 T反応がウイルスにより故意にゆがめられてこれらの抗原に対する反応を限定するかどうかは未だに見いだされていない。免疫優勢ではあるが最終的に効果のないゆがんだCD8 T反応が、M45特異的CD8 T細胞で再構成した免疫アブレーションしたC57BL/6マウスにおけるウイルス制御の欠如から明らかにされた(7)。Db拘束性M45ペプチドは、おそらくは、感染していない樹状細胞におけるM45タンパク質のクロスプレゼンテーションにより、特異的CD8 T細胞応答をプライミングするのに大変有効であるが、感染組織におけるこのペプチドのMHCクラスI提示は、immunoevasin m152により十分に阻害されてウイルス制御のエフェクター機構を抑制する事が示された。T細胞のプライミングに関する現行の知識を考慮しても、ウイルス抗原に対する一次CD8 T反応の負のゆがみ(negative skewing)の機構は、容易に説明されない。しかしながら、CMVは、哺乳動物が放散を始めてからこれまで〜7千万年にわたってそれぞれの宿主と共に共進化し、拡散することに成功した。疑いもなく、宿主の選択的免疫圧力は、免疫優性の階層およびウイルスと宿主とのバランスを形成させ、通常は病原性ではない終生の持続感染を成立させるのに役立った。ウイルス特異的CD8 T細胞を誘発するDNA免疫感作を用いる利点は、immunoevasinまたは、ウイルス複製中発現される≧170ウイルスタンパク質間の抗原競合の非存在下で反応を生じさせることができることである。
【0104】
実施例11
全3マウス系統において個々のDNAと少なくとも同様に防御を示すCD8+T細胞応答を、組み合わせたDNAの最小限のプールが協力して誘発するかどうかの決定
BALB/cマウスにおけるMCMVに対するDNA免疫感作を実験により、単独で用いられたときそれぞれ防御を示す複数のプラスミドの組み合わせは、増強され、場合により相乗的な防御レベルをもたらすことが示された(62〜64、89)。しかしながら、マウスに最小限のDNAプールでプライミングし、FI-MCMVで追加免疫し、粘膜および全身性経路によりチャレンジする次の実験に進む前に、プール内のDNAが防御反応に悪影響を与えるかどうか最初に確認してもよいだろう。この可能性は、個別の防御pDNAが、他の防御を示すまたは防御を示さないプラスミドと混合されるとき十分に防御を示し続けることを示す結果と矛盾する可能性がある。それにもかかわらず、FI-MCMVでの追加免疫を用いる実験の期間ばかりでなく3つのマウス系統を免疫感作する必要性により、さらなる比較的短期間の実験を行う必要性が正当化される。追加の測定として、単独またはプールで注射したときの、最小限のDNAプールにおける各抗原に対するCD8+T反応を比較することにより組み合わせた免疫反応を特徴づける最良の機会を本実験は提供する。とりわけ、IE1およびM84 DNAでの同時免疫は、pDNA単独のそれぞれでの免疫感作と比較するとき、一般的には低レベルのIE1特異的CD8+T細胞および高レベルのM84特異的CD8+T細胞をもたらすが、同時免疫は一貫して相乗的なレベルの防御を与える(89)。従って、最小限のDNAプールで免疫感作したマウスからのCD8+T細胞データを解釈する場合、単一のDNA免疫感作に対して防御が増強または維持されている限り、個々のCD8+T細胞レベルにおける低下は準最適ワクチンを構成しない。
【0105】
最小限のDNAプールのCD8+T細胞および防御反応を測定するために、毎日の作業量を減じるために実験の日時をずらして、3つのマウス系統のそれぞれにおいて実験を行うことができる。1群当たり16匹のマウスに空ベクター(pcDNA3)DNA、最小限のDNAプールまたは、プールを構成する2または3の個別の防御DNAのそれぞれで皮内免疫感作する。さらにまた、gBまたはgH/gLプラスミド(単数または複数)の包含が防御を増強させることが見いだされる場合、最小限のDNAプールはこれらのプラスミドをも含む。最終免疫感作の7〜10日後、各群からの4匹のマウスを屠殺し、上記のようにICSアッセイのために脾細胞を調製する。空pcDNA3ベクターまたは、注射に用いたMCMV DNAの1つのいずれかでトランスフェクトされた適切な同系の細胞株で脾細胞を刺激する。ベクター単独および、最小限のDNAプールで免疫感作したマウスからの脾細胞は、共に、空ベクターおよび各MCMV DNAを発現するトランスフェクタントでそれぞれ刺激されるが、プールの個別成分で免疫感作したマウスからの脾細胞は、免疫感作に用いる空ベクターまたはDNAのいずれかでトランスフェクトされた細胞で刺激される。
【0106】
最終免疫感作の2週間後、最小限のプールにおけるDNAに対して最適の防御レベルを与えるために、上記のスクリーニング実験において示されるSG-MCMVの単回投与でマウスに腹腔内チャレンジし、上記のように脾臓を採取して、
MCMVの力価を測定した。これらの結果により、得られたCD8+T細胞および防御のレベルに関して、最小限のDNAプールにおけるプラスミドの相互作用を直ちに特徴づけるであろう。
【0107】
実施例12
最小限のDNAプールおよび弱毒生または不活化MCMVを用いるプライムブーストワクチン接種が粘膜および全身性チャレンジに対して全3マウス系統に対して完全な長期防御を与えるかどうかの決定
上記で定義された最小限のDNAプールが、弱毒生または不活化MCMVを用いる追加免疫より前にプライミング段階で用いられた場合の有効性を評価することができる。ウイルスの感染のための経粘膜経路の重要性から、鼻腔内チャレンジに対するプライムブーストワクチンの有効性を測定できる。
【0108】
MCMV感受性BALB/c(H-2d)、CBA(H-2k)、および129/J(H-2b)系統のそれぞれにおいて実験を行うことができる。標準的ワクチン接種スケジュール(スケジュール表については図2参照)を用いて、1群当たり52匹のマウスに、1)pcDNA3ベクターを用いる皮内プライミングおよびPBS+アラムを用いる腹腔内追加免疫または2)最小限のDNAプールを用いる皮内プライミングおよび弱毒生または不活化FI-MCMVを用いる腹腔内追加免疫、のいずれかにより免疫感作する。実施例2の実験が、最小限のDNAプール単独での免疫感作は、試験マウスの全3系統の脾臓において検知できるレベルのウイルスをもたらさないことを示すという事象において、DNA媒介性防御をさらに特徴づけるために、最小限のDNAプールでプライミングされ、PBS+アラムで追加免疫した第3の免疫感作群を含めることができる。最終皮内DNA免疫感作の7〜10日後、DNAプールにおける各抗原に特異的なCD8+T細胞のレベルを測定するために、各免疫感作群からの4匹のマウスにICSアッセイを行う。最終腹腔内ブーストの11〜12週間後、眼窩後方から血液サンプルを採取してビリオン特異的IgGおよびウイルス中和抗体を定量し、ついで最終腹腔内ブーストの12週間後、マウスにTC-MCMVで鼻腔内にまたはSG-MCMVで腹腔内にチャレンジする。3、6、10、14、21および32日目に免疫感作群当たり4匹のマウスを屠殺し、脾臓、肝臓、肺および唾液腺を摘出して急性感染の間のウイルス量を測定する。
【0109】
実施例13
最小限のDNAでプライミングされた/弱毒生または不活化MCMVで追加免疫したマウスにおいて弱毒もしくは不活化ウイルスまたはチャレンジウイルスが潜伏を成立させるかどうかの決定
【0110】
固形臓器または骨髄の臓器移植者などの免疫抑制された個体においてばかりでなく、エイズ患者における潜伏HCMVの再活性化は深刻な問題であり、しばしば移植片不全および重篤なCMV疾患を引き起こす(67)。感染性ウイルスの非存在下、ウイルスDNAおよび再活性化可能なウイルスの存在により確定される潜伏を成立させるチャレンジウイルスの能力を試験するために、1群当たり48匹のBALB/c雌マウスからなる2つの群に、A)ワクチン接種なしまたはB)ベクターDNAの皮内注射およびPBS/アラムの腹腔内注射のいずれかを接種させる。さらに、52匹のマウスからなる1つの群にC)最小限のDNAプールの皮内注射および弱毒生または不活化MCMV/アラム、例えばFI-MCMV/アラム(免疫感作群に関しては以下の表を参照)の腹腔内注射で免疫感作する。本実験において、チャレンジウイルスのゲノムとそのゲノムを区別するために、ホルマリン不活化および免疫感作のために使用する、ie1のイントロン3においてloxP部位を有するMCMVを構築するために公表された方法(61)を使用する事ができる。ie1のイントロン3における35bp loxP部位を有する免疫感作ウイルスのみにタグを付けることにより、ウイルスの抗原性および増殖特性を維持しながら、野生型K181(チャレンジウイルス)および不活化ワクチンMCMVからのゲノムDNA由来のie1配列を検出し識別する高感度PCRプロトコル(61)の使用が可能となる。
【0111】
最終免疫感作の8週間後、1群当たり12匹のマウスにTC-MCMVまたはSG-MCMVの致死量以下の2つの用量のうちの1つで鼻腔内または腹腔内にチャレンジする(経路および用量に関しては表を参照)。これらのチャレンジ条件により、低用量または高用量のウイルスでの粘膜または非経口チャレンジに続く潜伏成立の測定が可能となる。加えて、最適化されたpDNAプール/弱毒生またはFI-MCMV/アラム免疫感作群における4匹のマウスを、FI-MCMVからのゲノムiel配列のPCRベースの検出の対照としてチャレンジせずに残す。
【表2】

【0112】
チャレンジ後10日目に、腹腔内または鼻腔内チャレンジ経路および低または高チャレンジ用量の4つの組み合わせのそれぞれにつき4匹のマウスを屠殺し、完全な防御が得られたことを確認するために肺および唾液腺におけるMCMVの力価測定を行う。残りのマウスを少なくとも4ヶ月飼育して急性および持続感染を沈静化させ、潜伏の成立を可能にする。チャレンジ経路およびチャレンジ用量当たり2匹のマウスを屠殺し、高感度プラークアッセイでそれらの唾液腺のホモジネートを滴定することにより感染性ウイルスの不存在を確認する。潜伏成立の確認後、残りのマウスを屠殺し、1)感染性ウイルスの不存在、2)潜伏ウイルスDNAの相対レベルおよび3)再活性化可能な潜伏ウイルスのレベル、の測定を行う。簡潔に言えば、脾臓、唾液腺、肝臓および肺を採取し、それぞれを3つの画分に分割する。1つの画分をDounceでホモジナイズし、プラークアッセイにより感染性ウイルスの不存在を確認する。第2組織画分からゲノムDNAを精製し、ネステッドPCRにかけ、ie1ゲノム領域の増幅を行う。この方法は、組織DNA1μgのバックグラウンド中の標的DNAのシングルコピーまで確実に検出し、潜伏ウイルスDNAの相対量を半定量的に評価する(61)。ゲノムDNAが分解しておらず、PCR阻害剤を含んでいないことを確認するために、MCMV DNAが陰性である同一DNA希釈液からβ-アクチン配列を増幅した。加えて、弱毒生または不活化MCMV由来のウイルスDNAがまだ検出可能かどうかを決定するために、免疫感作したがチャレンジしていないマウスからの組織を並行して処理する。いずれにしても、FI-MCMVおよび生チャレンジウイルス中のie1配列を2つの方法で識別することができる:1)ネステッド反応からのPCR産物は、チャレンジウイルス中で310bpであり、弱毒生または不活化MCMV中ではおよそ350bpである、2)弱毒生または不活化MCMVにおけるloxP部位に特異的な標識オリゴヌクレオチドプローブは、PCR産物に寄与する任意の弱毒生または不活化MCMV配列のサザンブロットにより検出できる。さらにまた、IE1 cDNAの増幅に由来する188bp PCR産物は、不活化またはチャレンジウイルス中のゲノムie1配列とは明確に区別できる。最後に、潜伏マウスから採取した残りの組織をMECで共培養し、再活性化可能なウイルスの存在が検出される(58)。このように、PCRは潜伏ウイルスDNAの総量の最も高感度な測定値を与えるが、共培養によるMCMV再活性化の相対頻度は、再活性化し再発疾患またはウイルス感染を引き起こす可能性のあるウイルスDNAのレベルを明らかにする。
【0113】
実施例14
最小限のDNAプールおよび弱毒生または不活化MCMVでのプライムブーストワクチン接種は非近交系集団において急性および潜伏MCMV感染に完全な防御を与えるかどうかの決定
子宮内胎児にうつすことができる持続または不活化ウイルスが存在しないことを保障するので、全身性および粘膜感染に対する滅菌免疫を与えるワクチンの能力は、CMVに対するワクチン接種の黄金律を表す。ヒトにおいてこの目的を達成するためには、ワクチンは非近交系集団において有効でなければならない。上記の実験において、3つのマウスハプロタイプ(H-2d、H-2kおよびH-2b)のそれぞれからのマウスに保存されたMCMV遺伝子の最小限のプールでプライミングし、FI-MCMVで追加免疫することにより完全な系統間防御をもたらすことが明らかにできる。しかしながら、強力な初期NK反応の非存在下で保存された防御遺伝子をより明白に同定するために、これらの実験はMCMV感受性系統においてのみなされたであろう。加えて、ワクチン免疫を突破することができる任意のウイルスは、自然耐性株と比較してより効率的に検出可能レベルに複製されるので、MCMV感受性系統は、滅菌免疫を与えるためのDNAプライム/FI-MCMVブーストの能力の最も厳密な試験を提供する。
【0114】
最適のプライムブーストワクチンが、全身性または粘膜チャレンジに続く急性および潜伏MCMV感染の両方に対して完全に防御を示すかどうかを決定するための、Swiss Webster非近交系マウスにおけ免疫感作実験を行うことができる。この系統におけるチャレンジ条件を最適化するために、1)ベクターDNAプライム+PBS/アラムブーストまたは2)最小限のDNAプールプライム+弱毒生または不活化ウイルス、例えばFI-MCMV/アラムブースト、のいずれかでSwiss Websterマウスに免疫感作する。ウイルス特異的IgGおよび中和抗体のレベルを測定するために上記のように血液サンプルを採取する。最終ブーストの12週間後、マウスに鼻腔内または腹腔内チャレンジし、短期間チャレンジに続く防御レベルを評価するために標的器官を分析する。ついでチャレンジしたマウスの残りを飼育し分析して、ウイルス潜伏の成立を確認し、対照およびDNAプライミングされた/FI-MCMVで追加免疫したマウスにおける潜伏ウイルスDNA量および再活性化可能なウイルスのレベルを定量する。
【0115】
もし、保存された必須遺伝子の一次スクリーニングにおいて見いだされた防御プールの1以上が全3マウス系統に防御を示さない場合、1系統よりも2系統を防御するプールを優先して、引き続きの免疫感作実験を行う。従って、2系統における観察された防御に単一のプラスミドが関与するかどうかを決定するために、2系統において防御を示す一次スクリーニングからのプールをさらに分ける。もし単一のプラスミドが一次スクリーニングにおいて防御された両方のマウス系統を防御することが見いだされたら、それをマスタープールに加える。いったんこのマスタープールが、全3マウス系統を交差防御する最小数のプラスミドを含めば、このプールにより誘発される免疫反応および防御を上記の番号付けされた実験において評価される。
【0116】
個々のプラスミドを用いる二次スクリーニングからの結果が、2系統における防御が2以上のプラスミドにより媒介されたことを示す場合、第1にそれらが防御する系統に数により、ついでそれらが付与する防御のレベルに基づいて防御プラスミドの順位をつける。従って、最も複雑なマスタープールは、それぞれが1つのH-2ハプロタイプのみを防御する3つの保存された必須MCMV遺伝子からなり、一方、中間程度の複雑さのプールは、協力して全3系統を防御できる2プラスミド(すなわちプラスミド1―H-2dおよびH-2k系統、プラスミド2―H-2bおよびH-2k系統)を含む。
【0117】
全3マウス系統を交差防御する上記の保存された必須遺伝子のマスタープールが、1以上のマウス系統における防御の欠如により構成できない場合、最も保存された遺伝子であってIE、EおよびE/Lクラスのものを優先して、他のMCMV ORPを系統的にクローニングし、15の異なるMCMV遺伝子プールにおいてスクリーニングすることができる。個別的には防御を示さない10のさらなるプラスミドのプールにおけるIE1およびM84 DNAベクターでの皮内免疫感作は、腹腔内ウイルスチャレンジに続く脾臓におけるウイルス力価を顕著に低下させることができる。50に等しい防御を示さないプラスミドプール内のわずか1つのIE1防御プラスミドが完全な防御を与える。
【0118】
1群当たり4匹のマウスに、14〜20日間かけて、15のDNAワクチン候補(各プラスミドを2μg)の各プールを注射することができる。陰性対照として1つの群にベクター骨格単独を注射する。上記のスクリーニングにおいて、DNA免疫感作により与えられる防御をより容易に同定できるように、ホルマリン不活化ウイルスでブーストしない。ワクチン接種の2週間後、3つの異なる致死量以下の用量のSG-MCMVの1つでマウスに腹腔内チャレンジする。脾臓におけるMCMV力価を測定し、ORFのプールが防御を示すことが見いだされた場合、それを3プールの5ORPにさらに分割し、ついでそれを上記のように試験する。これらのサブプールの1つが防御を示す場合、ついでORFのそれぞれを個別的に試験する。ひとたび、系統間防御プラスミドの最小限のプールが確定されれば、このプールを用いて上記の番号付けされた実験を行うことができる。
【0119】
実施例15
粘膜および全身性チャレンジに対する防御免疫のためのDNA免疫感作経路の最適化
粘膜領域はCMV初感染の重要な侵入部位である。防御DNAでのプライミングおよび弱毒生または不活化MCMVでの追加免疫が粘膜チャレンジに対して完全に防御を示さない場合、粘膜感染に対する最適の防御をもたらす防御DNAを投与するための方法を決定できる。DNA(皮内)および弱毒生または不活化MCMV(腹腔内)、例えばFI-MCMVの両方の非経口投与は、鼻腔内チャレンジに次いで、免疫感作したマウスの大部分の脾臓、肝臓および唾液腺において完全な防御を与える(93)。加えて、DNAプライミングされた/FI-MCMVで追加免疫したマウスの肺におけるMCMV力価は、対照と比較して複製のピーク時に3logを超えて低下した。従って、二重非経口免疫感作は粘膜侵入部位でのウイルス複製の突破を許したが、他の標的器官へのウイルス播種をほぼ完全に防御した。加えて、gB、gBおよびM84を含む3種混合DNAカクテルでのみプライミングされたマウスは、腹腔内チャレンジに次いで肺において少しの防御を示したばかりでなく、鼻腔内チャレンジ後に肺においてウイルス特異的IgAのより急速な誘導を示した(93)。DNAおよびFI-MCMVにより与えられる免疫は肺において防御を示すが、DNAにコードされる抗原およびそれらの投与経路の選択は粘膜感染を防御するするために最適化できることをこれらの結果は示している。
【0120】
鼻腔内チャレンジに次いで肺において防御を増強させるために、マウスにFI-MCMVで鼻腔内免疫感作した。FI-MCMVでの鼻腔内免疫感作は鼻腔内チャレンジに次いで肺における防御を付与したが、その防御はFI-MCMVでの腹腔内免疫感作に次いでの防御と同一であり、他の臓器には広がらなかった。一般に、鼻腔内免疫感作に次いでのタンパク質抗原に対する粘膜反応は弱いので、2つの強力で一般的に用いられる粘膜アジュバントであるコレラ毒素(CT)および免疫刺激CpG DNA(CpG)の1つまたは両方と共に、マウスの各群をFI-MCMVで鼻腔内免疫感作した(33、83)。しかしながら、一方または両方のアジュバントは、FI-MCMVと共に、FI-MCMV単独と比較してウイルス特異的唾液腺IgAレベルを増強させたばかりでなく、FI-MCMVと共にこれらの鼻腔内アジュバントを投与した、'致死量以下で'腹腔内および鼻腔内チャレンジしたマウスは、アジュバント(単数または複数)単独を投与したマウスにおいては観察されなかった、異常に高い肝臓におけるウイルス力価、罹患率および死亡率までも有していた。
【0121】
DNAの鼻腔内または経口送達および弱毒生または不活化ウイルス(例えばFI-MCMV)での腹腔内追加免疫による免疫感作の有効性を決定できる。例えば、以下の粘膜免疫感作法を使用できる。第1の方法は、ウイルス遺伝子ならびにマクロファージ炎症性タンパク質1αおよび2(MIP-1αおよびMIP-2)をコードするプラスミドでの鼻腔内免疫感作を含む(19)。HSV糖タンパク質gB遺伝子をコードするDNAプラスミドでの免疫感作のこの方法は粘膜および全身性Th1型免疫反応を促進し、膣を介して投与されたHSVからの防御を与えることが示されている。これらの実験において、ケモカインMIP-1αおよびMIP-2をコードするプラスミド200μgと共に、防御DNAをコードするプラスミドプール100μg(防御を増強させることが見いだされた場合、gBおよび/またはgH/gLと共に)で、5日間隔で3回BALB/cマウスに免疫感作する。対照として、皮内経路により防御DNA(ケモカインDNAなしで)で1つの群のマウスに免疫感作し、空DNAベクター+MIP-1αおよびMIP-2 DNAでもう1つの群を鼻腔内免疫感作する。続いて、鼻腔内にプライミングしたマウスにFI-MCMV+アラムで腹腔内に追加免疫する。DNAプライミングおよび異種ブーストの順序は粘膜および全身性免疫ならびに防御のその後のレベルに影響することが示されているので(18)、最初にFI-MCMV+アラムの腹腔内注射、ついでMCMV ORFおよびMIPプラスミドの鼻腔内投与によりマウスの第4の群を免疫感作する。免疫感作したマウスにMCMVで鼻腔内または腹腔内チャレンジし、粘膜(肺および唾液腺)および腹部(脾臓および肝臓)臓器におけるウイルス力価を上記のように測定し、それぞれ粘膜および全身性防御のレベルを評価する。
【0122】
MIP-1αおよびMIP-2ケモカインプラスミドでの同時投与と同様に、Th1媒介性免疫および粘膜ウイルスチャレンジに対する防御を促進するために、サイトカインIL-2、IL-12、およびIL-15を発現するプラスミドでの粘膜免疫感作が用いられている。3つのサイトカインはすべてCD8+T反応の進行を促進するが、IL-15は記憶CD8+T細胞の増殖を促進する事が見いだされ、このことは後者を長期防御のための魅力的な遺伝子アジュバントにしている(83)。IL-2プラスミドと次善最適の防御MCMV遺伝子との皮内同時投与により、腹腔内MCMVチャレンジに対する防御レベルを増強することができたが、このことはこのアプローチがプラスミド媒介性粘膜防御を促進するのにも有効であることを示唆している。上記の実験と同様な実験において、FI-MCMVでの腹腔内免疫感作より前または後に、IL-2、IL-12またはIL-15 DNAのいずれかと共に防御DNAプールでマウスに鼻腔内免疫感作する。鼻腔内または腹腔内ウイルスチャレンジのいずれかに対する防御を上記のように測定する。
【0123】
最後の方法は、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)により調製される封入されたマイクロパーティクルの形でのロタウイルス遺伝子をコードするプラスミドの経口投与に次いで、ロタウイルス感染に対する粘膜および全身性免疫反応ならびに防御が誘発されることを示す試験に基づく(9、32、82)。つい最近、HTV env-gpl60 DNAおよび組換えワクシニアウイルスでの経口プライムブーストワクチン接種の2日後のPLGA封入IL-2 DNAの経口投与はgpl60特異的血清抗体、血清中和抗体、粘膜IgAおよび全身性env特異的CTL増強させたことが明らかにされた(86)。強制経口投与によりPLGAに封入されたプラスミドDNA(100μg/ml)0.5mlをマウスに接種することができる。
【0124】
最適のDNAプールがgHおよび/またはgH/gLプラスミドを含有する場合、血清IgA、gBおよびgHおよびウイルス構造タンパク質に対する全IgGならびにIgG2a/IgG1比の試験のために、最終経口免疫感作の4週間後に後眼窩血を採取する。同時に、膣IgAレベルおよび補体依存性中和力価を測定する。結果が陰性または境界線上の場合、さらに2週間後、マウスの血清を試験し、ついで弱毒生または不活化MCMVでマウスに腹腔内ブーストすることができる。4週間後、弱毒生または不活化MCMVでマウスに腹腔内追加免疫する。ブーストの5週間後に、後眼窩血を再度分析する。膣、糞便および鼻IgAレベルもまた測定する。マウスを3週間回復させ、腹腔内または鼻腔内チャレンジし、標的器官におけるMCMV力価を測定する。
【0125】
実施例16
単純ヘルペスウイルス2型に対するCD8+T細胞応答の誘発
本実施例におけるすべての引用は、本実施例内の参照番号を指す。免疫優勢MCMV抗原に特異的なCD8 T細胞はウイルス複製の抑制に効果を有さない(33)。逆に、感染中ほとんど免疫原性を示さないウイルス抗原を用いるDNA免疫感作は、強力な防御を示すCD8 T細胞応答を誘発する(94、95)。総合すれば、感染中の免疫優性は必ずしも防御と相関せず、ウイルスクリアランスよりもむしろウイルス持続感染に有利な特異性を優性にするために、ヘルペスウイルスは宿主T細胞応答をゆがませることができる。ヘルペスウイルス中で高度に保存された必須非構造タンパク質は、T細胞標的の新規クラスを代表できる。ウイルス複製のためにこれらの遺伝子が発現されなければならず、タンパク質活性を維持するために必要な高いアミノ酸保存性は変異による免疫回避を限定することが理論的根拠である。注目すべきは、ヒトCMV、MCMVおよびHSV-2での感染によりプライミングされたT細胞特異性の免疫学的検査により、このクラスの標的は主として亜優性であることが示されたことである(35、42、63、84)。本実施例は、DNAワクチン接種を用いることにより防御を示す保存された必須HSV-2遺伝子を同定し、これらの遺伝子の適切な組み合わせを決定し、適切なプライムブーストプロトコルを決定するための3組のアッセイを提供するが、それらは以下の3つの照準に要約される。
【0126】
照準A。予防DNAワクチン接種によりマウスにおいて防御を示す保存された必須HSV-2遺伝子の同定。マウス致死チャレンジモデルを用いて、保存されたHSV-2必須遺伝子のそれぞれを発現するDNAワクチンを試験する。該遺伝子は、単独および、分泌糖タンパク質D2をコードするDNA(gD2)(中和抗体の主要な標的)との組み合わせの両方で試験される。ついで、最も防御を示すDNAワクチンの組み合わせ同定するために、gD2 DNAの存在下または不存在下のいずれかで、互いに組み合わせて防御遺伝子を試験する。
【0127】
照準B。保存された必須HSV-2遺伝子の最適の組み合わせにより誘発される免疫および防御のモルモットモデルにおける測定。該組み合わせはそれ自身およびgD2プラスミドDNAの存在下で試験される。単独および、gD2を発現するDNAとの組み合わせの両方での最適化されたpDNAワクチンの防御効果をよりヒト関連性のあるモルモットモデルにおいて評価し、臨床試験において部分的ではあるが有意に防御を示すワクチンであることが示されているMPL/アラム中にgD2タンパク質を含有するサブユニットタンパク質ワクチンによって引き起こされる防御と該防御とを比較する。
【0128】
照準C。最適化されたプラスミドDNAワクチンおよび全死滅HSV-2+MPL/アラムでのプライムブースト免疫感作にに次いでの、モルモットにおける免疫および防御の測定。gD2ばかりでなく他のウイルスエンベロープ糖タンパク質に対するウイルス特異的Th1反応および中和抗体を誘発すると考えられる、全死滅ウイルスの新規組み合わせ+MPL/アラムアジュバントでの追加免疫によりDNA媒介性防御が増強されるどうかをモルモットモデルにおいて試験する。潜伏ウイルスDNA量に対する防御の免疫相関物およびワクチンの効果を試験する。
【0129】
照準A。予防DNAワクチン接種によりマウスにより防御を示す保存された必須HSV-2遺伝子の同定。単独および、分泌糖タンパク質D2をコードするDNA(gD2)との組み合わせで遺伝子を試験する。ついで、最も防御を示すDNAの組み合わせを同定するために、gD2 DNAの存在下および不存在下で互いに組み合わせて防御を示す保存された遺伝子を試験する。
【0130】
感染中、ナイーブCD8 T細胞は保存された非構造必須タンパク質(以下の表参照)に対してプライミングされることができない。なぜなら、ウイルスは免疫反応を回避するためにこれらのタンパク質における変異を維持する事ができないからである。従って、滅菌免疫を与えるために、ヘルペスウイルスワクチンで誘導されたCD8+T細胞応答は、ウイルス感染中にCD8 T細胞をプライミングしない必須ウイルスタンパク質に対する特異性を含む必要性があると考えられる。注目すべきは、ヒトCMV、MCMVおよびHSV-2での感染によりプライミングされたT細胞特異性の免疫学的検査により、このクラスの標的は主として亜優性であることが示されたことである(35、42、63、84)。前述のとおり、我々の予備的な結果は、この仮説に対する支持を与える。
【0131】
HSV-2病変のクリアランスはCD8+およびCD4+T細胞免疫と相関する事が示されているが、一方、組換えgD2+3-d-モノホスホリル脂質A(3-d-MPL)/アラムに対する予防抗体反応は、HSV-1および-2血清反応陰性の女性において有意な防御を与えることが示されている(82)。従って、最適のワクチンは、防御を示す細胞性および体液性免疫の両方をプライミングするべきである。種々の形態のgD2(完全長、分泌型および細胞内)を発現するプラスミドDNAワクチンがマウスおよびモルモットモデルにおいて評価されている(83)。完全長または分泌型gD2のいずれかをコードするDNAでのマウスの免疫感作は、致死膣内チャレンジに防御を示したが、一方、分泌型gD2 pDNAでの免疫感作は(完全長gD2ではより低い程度で)、膣内チャレンジ後にモルモットにおける急性期病変スコアの有意の低下を与えたが、ウイルス排出はせず、小幅ではあるが統計的に有意な再発病変の低下を与えた(83)。加えて、gD2またはgB1 pDNA免疫感作による防御および/または免疫は、弱毒ワクシニア(20)もしくはMVA(55)ベクターまたはおそらくは可溶性gD2タンパク質での追加免疫により増強させうることがいくつかの研究によって示された。マウスおよびモルモットへのgD2および/もしくはgB2可溶性抗原またはプラスミドの送達は、致死率、急性期ウイルス複製ならびに急性期病変の罹患率および重篤度における統計的に有意な低下をもたらすことが示されているが、結果として生じる反応は、なお有意なレベルの急性期ウイルス複製、再発性ウイルス排出および潜伏ウイルスゲノム量の余地があることに留意する事が重要である。従って、HSV-2ワクチンの有効性のこれらの動物モデルにおいてさえも、保存された必須HSV-2遺伝子に対する細胞性免疫により誘発されうる防御反応の増強を測定するための重要な窓が存在する。さらに、分泌型gD2発現プラスミドと保存された必須HSV-2遺伝子の包含は、特にD2および他のビリオン構造タンパク質の異種の送達方法での後続の追加免疫後に、質的に増強された防御を与えることができる(照準C参照)。
【0132】
遺伝子の選択およびDNA発現ベクターの構築
保存された必須MCMV遺伝子を用いる成功した我々の免疫感作戦略がHSV-2にも適用できるかどうかを試験するために、それぞれのHCMVホモログに必須で高度に保存されたHSV-2遺伝子(表参照)をクローニングし、DNA免疫感作により試験する。これらの多くはウイルスDNA合成に寄与するタンパク質をコードする初期遺伝子であり、他のヘルペスウイルスで保存されている。ヘルペスウイルス遺伝子をクローニングするためのPCRベースの方法は、あらかじめ最適化されており、実験室において能率化されているので、HSV-2 ORFのクローニングは簡単である。タンパク質検出を容易にするためにカルボキシ末端FLAGタグを付加した真核発現ベクター(pcDNA3)にPCR産物を連結する。制限酵素分析により、得られる形質転換細胞について正しい方向のインサートの存在をスクリーニングし、各ORFの5'および3'末端の配列の決定をする。in vivo一時的発現アッセイまたはin vitro転写/翻訳反応で、各タンパク質の発現を明らかにする。クローニングし、in vivoで試験するHSV-2 ORF(表参照)の優先順位は、1)CMVおよび他のヘルペスウイルスでのそれらのアミノ酸保存性および2)HSV-1でのそれらのアミノ酸保存性、に基づいて決める。タグを付けていない膜貫通および細胞内ドメインを欠くgD2を増幅するということを除いては、gD2の分泌型を発現するプラスミドも同様に構成する(31)。
【表3】

【0133】
DNAベクターの一次スクリーニング
我々の新規アプローチの最も迅速な評価のための致死的膣内感染のマウスモデルにおいて一次スクリーニング実験を行う。試験すべき保存された必須遺伝子の数に従って、2つのスクリーニング実験を行う。1群当たり8匹の6〜8週齢BALB/c雌マウスの尾の基部付近に、pDNA50μgで2週間に3回皮内免疫感作する。各保存された遺伝子に2つの群を用いる。保存された遺伝子単独での防御効果を試験するために、1群に保存された必須遺伝子pDNA25μg+空ベクター25μgを投与する。保存された遺伝子がgD2 pDNA媒介性防御を増強するかどうか決定するために、第2群には、保存された必須遺伝子pDNA25μg+分泌型gD2 pDNA25μgを投与する。2つの対照群を用いる。1つの対照群には、単独でのgD2 pDNA媒介性防御に対する対照として分泌型gD2 pDNA+空ベクターを投与する。陰性対照として、第2群を空プラスミドベクターのみで免疫感作する。
【0134】
文献記載の方法で(83)、最終免疫感作後14日目および20日目に、発情サイクルを同期させ、膣HSV感染に対する感受性を増強するために、酢酸メドロキシプロゲステロン(Depo-Provera)3mgでマウスに皮下注し、21日目に、HSV-2 333株5x105PFUでマウスの膣内にチャレンジする。膣の炎症の重篤度について、0(膣炎なし)、1(軽い腫れまたは発赤のみ)、2(中程度の腫れまたはびらん)、3(重い生殖器の浸軟)または4(中枢神経障害または死)で21日間毎日マウスのスコアをつける。膣でのウイルス複製を確認し、排出を測定するために、チャレンジ後1、3および5日目に膣スワブを採取し、Vero細胞単層上でのプラークアッセイによる滴定まで、抗生物質を含有するVero細胞培地中-80℃で保存する。gD2 pDNAの有り無しでの保存された必須遺伝子を用いるpDNA免疫感作の有効性を測定するために、1)感染および致死率(Fisherの直接確率検定)、2)毎日の病変スコア(Kruskal Wallisノンパラメトリック分散分析+対比較試験)および3)膣内ウイルス排出レベル(片側分散分析+対Fisherの最小有意差法)について統計分析(両側)を行う。総合すれば、これらの分析は、保存された必須HSV-2遺伝子のそれぞれにより誘発される任意の防御反応を同定する。防御を評価するためのパラメータの組み合わせを用いることにより、防御における差異を認識でき、弱く寄与する抗原を同定できる。さらに、たとえgD2単独の対照と比較するときこれらの防御レベルが低くても、gD2 pDNA媒介性防御を増強させる保存された必須遺伝子に対する任意の反応を同定できる。
【0135】
結果1
保存された必須遺伝子の1以上は、一次膣HSV-2感染および/または疾患に予防防御を与える
上記の結果に基づいて、HSV-2の保存された必須遺伝子のプラスミドを、第1にそれらの単独での防御効果レベルに従って、続いてそれらのgD2 pDNA媒介性防御の増強レベルに従って順位をつける。最高レベルの防御を与えるpDNAの最小限の組み合わせを決定するためのその後の実験の優先順位を決めるためにこの順位を用いる。HSV-2の保存された必須遺伝子が1つだけで防御効果を示す(単独でまたはgD2 pDNAを増強させることにより)場合、このプラスミドを照準Bでのモルモットモデルにおいて試験する。
【0136】
結果2
保存された必須遺伝子のいずれも、それ自身によるプラスミドDNA免疫感作に次いでの有意な防御を与えず、gD2 pDNA防御も増強しない
本新規抗原群の選択は、細胞性(CD4+またはCD8+T)防御反応を引き起こすそれらの潜在性に基づくため、抗原の推定上のMHCクラスIエピトープはBALB/c(H-2d)モデルに存在しないクラスI対立遺伝子に限定される可能性があることを考慮することは重要である。異なるMHC拘束を有することができる他のマウス系統における免疫感作実験を繰り返すよりはむしろ、照準Bの場合のように、感染および疾患のモルモットモデルにおいて直接にpDNAが試験される。このモデルからの結果はヒト感染により強く関連すると考えられるが、それにはコストおよび労力の増加が伴うため、どの遺伝子(単数または複数)が防御を示すか同定する前に第1に概念実証を明らかにするために、3つの保存された必須遺伝子pDNA+(または-)gD2 pDNAの4つのプールのうちの1つでモルモットを免疫感作する。上記のマウス実験におけるように、2つの群において保存された必須遺伝子pDNAの各プールを試験する。1つの群には、保存された必須遺伝子pDNA単独のプールを投与する。第2群には、gD2 pDNA媒介性防御の増強が測定できるように、gD2 pDNAと組み合わせて保存された必須遺伝子pDNAのプールを投与する。1以上の防御HSV-2遺伝子が同定されたら、残りの時間および助成金は、防御pDNAの1以上で各群を免疫することにより、モルモットにおける最適の防御を与える最小限のpDNAの組み合わせを同定することに使用する。1つのみの保存された必須遺伝子が防御を示し、かつ十分な時間が残されていたら、全死滅HSV-2およびMPL/アラムでプライミングしたモルモットのpDNAの異種追加免疫によりこの得られた免疫および防御が増強できるかどうか決定するために、照準CにおいてgD2プラスミドと共にそれを試験する。
【0137】
マウスにおいて膣内HSV-2チャレンジに対して最適の防御レベルを与える、最小限の数の防御を示す保存された必須遺伝子pDNAの決定
MCMV免疫のマウスモデルを用いる、2つの個別的に防御を示すpDNAでの免疫感作により、脾臓におけるチャレンジウイルス複製の低下により測定されるように、両方の抗原に特異的なCD8+T細胞を誘発し、相乗的な防御レベルを与えることができる(60)。加えて、個別的に防御を示すプラスミドおよび防御を示さないプラスミドの両方を発現する13のpDNAの組み合わせたプールでのマウスの免疫感作は、最高レベルの防御(ベクター単独で免疫感作した対照と比較しての脾臓におけるチャレンジウイルス力価の10,000倍の低下)をもたらした(62)。ヘルペスウイルス防御モデルにおいて、最適化されたプラスミドの組み合わせにより、相乗的なpDNAで誘導される細胞性免疫および防御レベルが達成できることを、これらの結果は例証している。さらに、非近交系集団にわたって広く防御を示すHSV-2ワクチンは、各抗原の防御エピトープは1または少数のHLA形に関連するだけなので、2以上のHSV抗原に対してCD4+および/またはCD8+T細胞をプライミングする必要性があると考えられる。同じ論法で、防御プラスミドは同じHLA状況で提示されるエピトープをそれぞれが含む抗原を発現できる。この場合は、組み合わせたプラスミドプールでの免疫感作は、拘束性HLA分子の競合をもたらす恐れがあり、得られる防御効果は増強されない恐れがあり、不必要に複雑なワクチンの解析はより困難なものとなるであろう。最後に、保存された必須遺伝子に対する細胞性免疫は、原発疾患(再発疾患ではなく)に対する防御を与えることが可能である。従って、感染のすべての期に対する最適の防御を得るために、防御プラスミドを組み合わせることが必要であろう。
この実験において、上記のように、1)空ベクター単独または2)分泌型gD2 pDNA+空ベクターのいずれかで8匹のBALB/cマウスの各群を皮内免疫感作する。上記の実験からの結果は、gD2 pDNAとの同時免疫は、保存された必須遺伝子pDNAにより誘発される防御ならびに、保存された遺伝子pDNAおよびgD2 pDNAにより誘発される防御の相対レベルにも影響を与えるかどうかを示すであろう。各pDNAを単独で再試験するかまたは他の防御pDNAのそれぞれと組み合わせて試験するために、1以上の防御を示す保存された必須遺伝子pDNAで残りのマウス群を皮内免疫感作する。加えて、gD2 pDNA媒介性防御を増強させるそれぞれの保存された遺伝子pDNAの組み合わせの能力を測定するために、これらの組み合わせをgD2 pDNAと共に試験する。3を超えるpDNAが防御を示す場合、群の数を処理可能に維持するために、全ての可能な組み合わせにおけるそれらの試験の優先順位を決めるために、それらの個別の防御効果の順位を用いる。上記のように免疫感作したマウスの膣内にチャレンジし、上記の実験におけるように、感染および致死率、毎日の病変スコアならびに膣内ウイルス排出レベルを測定し、分析する。モルモットモデルにおいてさらに評価できるように、膣内HSV-2チャレンジに対して最高レベルの防御を与える、最も簡単なpDNAワクチンの組み合わせを迅速に同定するためにこれらのデータを用いる。
【0138】
照準B
保存された必須HSV-2遺伝子の最適の組み合わせにより誘発される免疫および防御の予防のモルモットモデルにおける測定
照準Aからの結果により、最良のワクチン候補が迅速に同定され、T細胞免疫の新規標的としてHSV-2の保存された必須遺伝子を用いることの概念実証が明らかにされるであろう。その防御潜在性をより厳密に試験するために、最適化されたpDNAの組み合わせは生殖器HSV-2感染のモルモットモデルにおいてさらに評価される。このモルモットモデルはより厳密にヒト疾患を模倣するので、原発性および再発性の感染および疾患の両方に対する防御のにおけるその有効性に関するワクチンの試験を可能にする(80、81)。加えて、最適化されたpDNAワクチンの免疫および防御を、現在までに臨床試験で最も成功したワクチン接種戦略であるgD2タンパク質/MPL/アラムでのサブユニットワクチン接種と比較する。gD2タンパク質/MPL/アラムは一次感染および疾患に有意な防御を示すとはいえ、このワクチンは最終的に、男性またはHSV血清反応陽性個体において防御を示すことにその能力が限定されると思われ、感染を防御しない(82)。照準Bにおいて、HSV-2の保存された必須遺伝子の最適化された組み合わせ(分泌型gD2 pDNAの存在下および不存在下の両方で)でモルモットを免疫感作し、得られる免疫および防御レベルを、gD2タンパク質/MPL/アラムでのサブユニットワクチン接種により誘発されるものと比較する。
【0139】
実験計画
雌HartleyモルモットをCharles Riverから購入し、4〜6週齢(300〜400g)で免疫感作する。1群当たり10匹のモルモットの各脇腹の皮内にpDNA50μg(合計で100μg)で6週間に3回免疫感作する。陰性対照群に空ベクターを投与する。1つの試験群に、保存された防御必須遺伝子の最適化された組み合わせ単独を投与し、第2試験群に、gD2 pDNAと共に保存された防御必須遺伝子の最適化された組み合わせを投与する。さらなる群に、保存された必須遺伝子によるgD2 pDNA媒介性反応の任意の増強の対照として役立つgD2 pDNA(+空ベクター)単独を投与する。防御の陽性対照および免疫反応レベルの参照として、0日および32日目に、短縮型分泌型gD2タンパク質5μg+MPL(Sigma)12.5μgおよびアラム(Pierce)125μgを含有する全125μlで大腿四頭筋に両側注射することにより1群を免疫感作するが、なぜならモルモットにおける原発疾患および再発疾患の両方にこれが有意な防御を与えることが示されているからである(11)。既述のように、レンチルレクチンおよびイムノアフィニティクロマトグラフィーにより、安定的にトランスフェクトされたCHO細胞の馴化培地から分泌型gD2タンパク質を精製する(66)。最後に、MPLおよびアラムアジュバント単独で、mockサブユニット対照群を免疫感作する。
【0140】
免疫感作動物における抗体レベルを測定するために、チャレンジ(第9週)より1日前にトゥーネイルクリップにより血液を採取し、血清を-20℃で保存する。前述のように、1)上記の精製gD2タンパク質を用いるELISAによるgD2特異的IgGおよび、2)50〜100PFUのHSV-2を用いるVero細胞上でのプラーク低下アッセイによる補体非依存性ウイルス中和抗体に関して血清を試験する(34)。
【0141】
最終pDNA免疫感作の3週間後および第2サブユニット免疫感作の5週間後、既述のように麻酔モルモットの膣内にチャレンジする(9)。簡潔に言えば、アルギン酸カルシウムで先を湿らせた綿棒で膣閉鎖膜を断裂させ、5.7log10PFUのHSV-2 333株を含有するウイルス懸濁液0.1mlをプラスチックカテーテルにより腟円蓋に滴下することにより、モルモットにウイルスを接種する。0(病変なし)、1(紅斑症のみ)、2(1つまたは小数のベシクル)、3(大きいまたは融合したベシクル)または4(潰瘍性病変)の重症度に基づいて、毎日、動物の病変の発達のスコアをつける。急性期および再発病変の両方を評価するために、ワクチン群の識別を研究者に盲検化して、60日まで病変のスコアをつける。加えて、チャレンジ後2、5、7および10日目に、膣におけるウイルス排出を測定する。抗生物質を含有するVero細胞培地1mlに膣スワブを入れ、Vero細胞単層上のプラークアッセイによる滴定まで-80℃で保存する。実験の終わりに、各モルモットから腰仙骨神経節(動物当たり6〜8)を切開し、プールし、PBSで洗浄し、-20℃で保存して将来のDNAの抽出および潜伏HSV-2 DNAのリアルタイムPCRによる定量に用いる。潜伏HSV-2 DNAの量を定量するために、細胞およびウイルスのDNAをDNeasy Tissueキット(Qiagen)を用いて抽出し、ABI Prism7000検出システム(Applied Biosystems)を用いるリアルタイム定量PCRにかける。pDNAワクチン中に存在しないウイルス遺伝子に対してHSV-2プライマーおよびプローブをデザインし、モルモットラクトアルブミン遺伝子に特異的なプライマーおよびプローブを用いてインプットDNAを標準化する(64)。
【0142】
1)感染率、2)チャレンジ後(一次感染)14日目までの病変スコア、3)チャレンジ後(一次感染)10日目までの膣内ウイルスレベル、4)チャレンジ後(再発性感染)60日目までの累積病変スコアおよび、5)神経節における潜伏HSV-2 DNAの量、の統計分析(照準Aと同様)によりDNAで免疫感作したモルモットにおける防御を評価する。現行のサブユニット戦略に対して最適のpDNAの組み合わせにより誘発される防御を決定するために、単独または+gD2 pDNAで用いた保存された必須pDNAの組み合わせからのデータをgD2/MPL/アラムサブユニット群と比較する。
【0143】
結果1
マウス実験において最適化されたpDNAワクチンは、膣内HSV-2チャレンジに対してもモルモットを有意に防御する。
【0144】
この場合は、照準Cにおいて、全死滅HSV-2とMPLおよびアラムアジュバントとの新規組み合わせでの後続の追加免疫により、最適化されたpDNAにより誘発される防御を増強させることができるかどうかを試験する。
【0145】
結果2
マウス実験において最適と判明したpDNAワクチンは、モルモットを有意に防御しない。
【0146】
この場合は、感染組織において負荷したMHC複合体を認識することができるCD8 T細胞を抗原がプライミングできることは、マウスにおいてすでに明白であろう。潜在的問題の1つは、CD8 T細胞のDNAワクチン媒介性プライミングが大型げっ歯類において準最適である可能性があるということであろう。次の段階は、ポリ-乳酸-co-グリコリド(PLG)マイクロパーティクルに吸着させた各pDN Aプールでモルモットを免疫することによりDNA送達を最適化することであろう。この送達方法は、樹状細胞に対してDNAをターゲッティングすることにより、DNAワクチンに対する抗体または細胞反応を亢進することが、モルモットおよびヒト以外の霊長類を含む種々の動物モデルにおいて示されている(概説については、(65)参照)。加えて、同一PLG製剤により、いくつかのプラスミドを同時に送達する事ができる。
【0147】
結果3
保存された必須遺伝子のプールでのモルモットのDNA免疫感作は、単独で防御効果を示さず、gD2 pDNA防御を増強させない。
【0148】
この場合は、優先事項は、照準Cに移り、gD2 pDNAにより誘発される防御がTh1を促進するアジュバントであるMPLおよびアラムと共に全死滅HSV-2でのモルモットの後続の追加免疫により増強できるかどうかを試験することであろう。加えて、上記の結果2におけるように、PLG粒子に吸着した保存された必須遺伝子pDNAのプールでモルモットを免疫感作することができる。
【0149】
照準C
最適化されたプラスミドDNAワクチンおよび全死滅HSV-2+MPL/アラムでのプライムブースト免疫感作に次いでの、モルモットにおける免疫および防御の測定
【0150】
ホルマリン死滅MCMVでの追加免疫の前のMCMV gB pDNAでのマウスのプライミングが死滅ビリオン単独での防御と比較してより強力な防御をもたらす一方で(61)、HSV-2の保存された必須遺伝子およびgD2 pDNAを用いる防御のプライムブースト増強は、HSV-2疾患のモルモットモデルにおいて具体的に試験する必要性があると考えられる。再発性HSV感染の防御または治療のための臨床試験において、以前、全ホルマリン死滅ウイルス製剤が評価されたが、これらの初期の研究は、多くの場合、防御の客観的測定の欠如およびプラセボ群の不存在を含む方法的欠陥を欠点として持つ(概説については(41)参照)。加えて、全死滅ウイルスまたは界面活性剤抽出糖タンパク質を用いる試験は、いずれも、今日では入手可能な高い免疫原性を有するアジュバントを用いておらず、従って低いかまたは矛盾した抗体反応(細胞性反応も同様)が引き起こされ、防御に有意差が見られなかったのも驚くべきことではない。つい最近、リポ多糖誘導体MPLがTh1型反応の強力なアジュバントであることが示され、アラムと共に、gD2サブユニットワクチンはHSV血清反応陰性女性における症候性生殖器疾患に対する防御を与えることが見いだされた(82)。しかしながら、2つの第3相試験において、HSV-2感染に対してこのサブユニットワクチンは、単独では、限定された防御(46%および39%)しか与えることができなかった。最適のウイルス中和および防御には、他のHSV-2エンベロープ糖タンパク質(ビリオン粒子中に存在する)に対するさらなる抗体特異性が必要な可能性がある。例えば、dl5-29免疫感作は有意に低レベルのgD2特異的IgGを誘発するにもかかわらず、欠損HSV-2変異株dl5-29でのモルモットの免疫感作は可溶性gD2タンパク質と比較して有意に高レベルの中和抗体を誘発した(34)。より中和する抗体標的を含むことに加えて、ウイルスエンベロープに関連するHSV-2糖タンパク質の提示は、可溶性サブユニットワクチン中に存在できない非線形エピトープに対する防御抗体反応を誘発することもできる。総合すれば、生殖器の感染および疾患を対する最適の防御は、細胞性および抗体反応の両方の存在に左右される可能性がある。この目的のために、保存された必須防御遺伝子の最適化された組み合わせおよびgD2 pDNAでのプライミングの組み合わせた有効性とそれに続く全死滅HSV-2+MPL/アラムでの追加免疫が試験される。
【0151】
実験計画
VeroまたはBHK細胞内でHSV-2を増殖させ、CPEが100%に達した後、記載されている標準法を用いるショ糖勾配超遠心分離により清澄化上清から細胞外ウイルスを精製する(68)。死滅HSV-2ワクチンからのDNAが膣スワブまたは腰仙骨神経節のその後のPCRにより検出可能になるというあまりなさそうな可能性を抑えるために、ワクチンとチャレンジウイルスを区別するのにlacZ特異的プライマーおよびプローブを使用できるように、ワクチンに使用するウイルスには、IacZタグをつけたHSV-2 333株を用いる(77)。簡潔に言えば、感染性ウイルスバンドを緩衝液で希釈し、ペレット化し、感染性およびタンパク質含量を測定するために再懸濁する。該製剤は、タンパク質5μg当たり〜109PFUの純度を有すると予期される。この製剤は、ホルマリンにより不活化され、前述の感染性アッセイにより不活性であることが確認される(62)。
【0152】
1群当たり14匹のHartley雌モルモットを、照準Bの場合のようにpDNAプライミングを行い(6週間で3回の皮内注射)、第9週および第13週に、mockで皮内追加免疫するかまたは全ホルマリン死滅HSV-2+MPL/アラムで皮内追加免疫する。具体的には、各群に以下のプライムブーストの組み合わせを投与する:1)空ベクターpDNAでのプライムおよびMPL/アラム(ビヒクル対照)でのブースト;2)空ベクターpDNAでのプライムならびに死滅HSV-25μg+MPL(Sigma)12.5μgおよびアラム(Pierce)125μgでのブースト3)最適化された保存された必須pDNAの組み合わせ+gD2 pDNAでプライムおよびMPL/アラムでのブースト;4)最適化された保存された必須pDNAの組み合わせでのプライムおよび第2群におけるような死滅HSV-2でのブースト;5)gD2 pDNAでのプライムおよび死滅HSV-2でのブーストならびに6)最適化された保存された必須pDNAの組み合わせ+gD2 pDNAでのプライムおよび死滅HSV-2でのブースト。防御および免疫の両方の陽性対照および参照として、照準Bの場合のように、第7群をgD2/MPL/アラムタンパク質サブユニットワクチンでプライミングし、追加免疫する。
【0153】
照準Bの場合のように、2回のブーストのそれぞれの1日前およびチャレンジの1日前に血液サンプルを採取し、HSV-2特異的IgGおよびウイルス中和抗体の定量のために血清を保存する。pDNAプライムおよびタンパク質ブーストにより引き起こされる抗原特異的T細胞媒介性(CD4+T)免疫を明らかにするために、第1死滅HSV-2ブーストの3日前(モルモットにおいてはDTH測定は除外する)およびチャレンジの3日前(チャレンジされる動物において)にモルモットにおいて遅延型過敏症(DTH)反応を測定する。1群当たり4匹のモルモットの各耳に、感染していないまたはHSV-2感染細胞のいずれかからの清澄化UV-不活化Vero細胞溶解物10μgを皮内注射し、24、48および72時間後、細胞浸潤レベルを定量するために、マイクロキャリパーで硬結の直径を測定する(38、90)。全HSV-2細胞抗原に対する反応を、HSV-2および陰性対照耳(バックグラウンド)における硬結の直径の差として算出する。また、個々のHSV-2抗原に対するT細胞応答を測定するために、トランスフェクション後48時間目に、空ベクター(バックグラウンド対照)または、pDNAプライミングの組み合わせをふくむ保存された必須遺伝子pDNAの1つとともに、293T細胞からの溶解物で耳に皮内注射する(39)。上記のように炎症の大きさを測定し、算出する。トランスフェクトしていない細胞溶解物からのバックグラウンドが高すぎる場合、より大規模なトランスフェクションからの抗FLAG単一ステップイムノアフィニティ精製により保存された必須遺伝子産物を濃縮する。
【0154】
最終死滅HSV-2ブーストの4週間後、残りのモルモットに膣内チャレンジし、照準Bの場合のように感染および疾患を測定する。ウイルス感染を抑制するためのウイルス再活性化および排出の抑制におけるワクチン候補の重要性から、モルモットにおいてチャレンジ後90日まで、病変スコアおよび生殖管へのウイルス排出の両方を評価する。DNAを抽出し、リアルタイム定量PCRで分析するまで、モルモットから採取した膣スワブを-80℃で保存する。pDNAプライム中に存在しないウイルス遺伝子に対してHSV-2プライマーおよびプローブをデザインする。前述のとおり、膣スワブ中で検出されるウイルスDNAがチャレンジウイルス由来であり、死滅ウイルスワクチン由来ではないことを確認するために、PCR分析においてlacZ特異的プライマーおよびプローブもまた用いる。既述のように、罹患率、頻度(ウイルスDNAが分離された平均日数)および強さ(ウイルスゲノム相当数)に関して、対照群およびワクチン群におけるウイルス排出の再活性化を比較する(11)。実験の終わりに、各モルモットから腰仙骨神経節(動物当たり6〜8)を切開し、プールし、PBSで洗浄し、-20℃で保存する。潜伏HSV-2 DNAの量を定量するために、細胞およびウイルスのDNAを抽出し、上記のようにリアルタイム定量PCRにかける。モルモットラクトアルブミン遺伝子に特異的なプライマーおよびプローブを用いてインプットDNAを標準化する(64)。
【0155】
全身性チャレンジに次いでのウイルス複製に対するマウスの完全な防御のために、pDNA免疫感作に次いでのブーストとしてホルマリン死滅MCMVを使用できるが(61、62)、死滅HSV-2全ビリオンを用いては同じ成功は得られない可能性がある。中和抗体の主要な標的である、エンベロープ中のgD2およびgB2タンパク質の濃度は最適の防御抗体反応を誘発するのに十分ではなく、他のエンベロープ糖タンパク質による、防御に対する小さな寄与のみが与えられる可能性がある。従って、追加免疫において、gD2およびgB2タンパク質により焦点をあてた戦略を使用することができる。潜在的戦略は、上記に概略を記したように設計された反復実験において、改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)によりこれらの抗原を送達することであろう。MVAは、天然痘に対するワクチンとして安全に用いられてきた、つい最近ワクチンベクターとして用いられた高度弱毒化ワクシニアウイルスである。MVAは大部分のヒトおよび哺乳動物細胞に1以上の異種遺伝子を送達することができ、既存のポックスウイルス免疫を有する宿主においてさえも体液性および細胞性反応の両方を誘導することができる(91)。前述のとおり、異種プライムブースト法は、引き続き、同一抗原送達法を用いる反復ブーストと比較して免疫増強を与える見込みが高く、HIVおよびマラリアに対するMVAベクターベース実験ワクチン(単独で、あるいはDNAワクチンと組み合わせて)は、現在、第1相臨床試験中である。
【0156】
実施例16の参考文献・引用文献

















【0157】
引用文献
以下の文献番号は、本出願の実施例16以外のセクションに使用する。

















【0158】
本明細書に引用したすべての特許、特許出願、出版物、公報は参照により本願に組み込まれる。上記の特許、特許出願、出版物、公報の引用は、前述のいずれかが直接関係のある先行技術であると認めるものではなく、これらの公開または公報の内容または日付に関して認めるものでもない。
【0159】
文脈により明確に否定されない限りは、単数形の"a"、"an"および"the"は、複数指示を含む。従って例えば、"a subset"と言及する場合、複数個の前記サブセットを含み、"a nucleic acid"と言及する場合、1以上の核酸および当業者に公知のそれらの均等物を含む等々である。用語"or"は、それが指し示すものまたは用語に限定されると解されるものではない。例えば、構造"A or B"の語句中で用いられるときは、A単独、B単独またはAおよびBを意味することができる。
【0160】
特記しない限り、本明細書に記載のすべての学術用語は、本発明が属する技術分野の技術者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書記載のものと同様または等価な任意の方法またはシステムを使用する事ができるが、方法、装置および材料をここに記載する。本発明に関連して使用することができる、出版物に報告されている工程、システムおよび方法を記載し開示するための、本明細書記載のすべての出版物は、参照により本願に組み込まれる。先願発明によって、本発明がこのような開示に先行することの資格を与えないことを認めるものとしてこれらを解釈してはならない。
【0161】
本発明の基本的な側面から逸脱することなく前述のものに改変を加えることができる。1以上の特定の実施形態を参照して本発明を十分詳細に説明してきたが、本願において具体的に開示された実施形態に変更を加えることができ、かつこれらの改変および改良が本発明の趣旨と範囲内であることは、当業者に明らかであろう。例示として記載された本発明を、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(単数または複数)の非存在下で適切に実施することができる。従って例えば、用語"含む"、"から本質的になる"および"からなる"のいずれかは、本明細書のそれぞれの例において、他の2つの用語と置き換えることができる。従って、用いてきた用語および表現は、説明の用語として用いたものであって限定するものではなく、図面に示されかつ明細書に記載されている特徴の均等物またはそれらの部分は排除されず、本発明の範囲内での種々の修飾が可能であることは明らかである。本発明の実施形態は、請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】脾臓におけるチャレンジウイルス複製に対して矛盾のない防御を示す、M54(DNAポリメラーゼ)またはM105(ヘリカーゼ)でのマウスのDNA免疫感作の結果の図形描画である。1群当たり4匹のBALB/cマウスに、空ベクターDNA(pc3Δneo)またはIE1、M54、M70もしくはM105をコードするDNAのいずれかで2週間に3回皮内免疫感作した。最終免疫感作の2週間後、図面に示されたSG-MCMVの3つのLD5O用量のうちの1つでマウスに腹腔内チャレンジした。チャレンジ後6日目に脾臓を摘出し、ホモジナイズしてMCMVの力価を測定した。棒および円は、群ごとの平均および脾臓のそれぞれのウイルス力価の各Log10をそれぞれ示す。横線は高感度プラークアッセイの検出限界を示す。
【図2】免疫感作およびチャレンジ感染のスケジュール表の例である。
【図3】HCMV DNAポリメラーゼ(M54)、プライマーゼ(M70)およびヘリカーゼ(M105)のMCMVホモログのin vitroおよびin vivoでの発現を示す図である。A)pcDNA3.1/V5-His-TOPOにクローニングしたMCMV ORFを、[35S]メチオニンを用いる共役in vitro転写/翻訳反応(すなわちTNT T7 Quick)により、T7プロモーターを用いて発現させた。SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーにより、プラスミドのそれぞれは、予測相対分子量:M54に対して128.8kDa、タグなしM70に対して109.6kDaおよびM105に対して111.4kDaを有する単一の標識ポリペプチドを発現する事が見いだされた。各反応の一部を7%ポリアクリルアミドゲルで還元条件SDS-PAGEにかけ、標識タンパク質をオートラジオグラフィーで検出した。左側の数字および線はマーカータンパク質の位置および相対分子量を示す。VectはDNAベクター単独を用いて行ったTNT反応を示す。コードされるタンパク質の予測分子量は:M54、128.8kDa;M70(タグなし)、109.6kDa;およびM105、111.4kDaである。B)M70クローンを変異させてV5-および6xHis-タグをつけたM70*を得た後、プラスミドをCOS-7細胞に一過性にトランスフェクトし、トランスフェクション後48時間で還元条件SDS-PAGEサンプル緩衝液中に全細胞を溶解し可溶化した。上記のようにSDS-PAGEによりタンパク質溶解物を分離し、ニトロセルロース膜にエレクトロブロットし、続いてこれをマウス抗V5モノクローナル抗体で試験した。左側の数字は(A)の場合と同様であり、Vectは空プラスミドベクターでトランスフェクトされた細胞からの溶解物を示す。M70*タンパク質の予測分子量は114.7kDaである。
【図4】独立した実験においてM54およびM105により誘発される、脾臓におけるウイルス複製に対する防御を示す図である。図2の場合と同様に、6匹のBALB/c群を治療せずに放置(Naive)するかまたは免疫感作した。最終免疫感作の3週間後、0.5x LD50のSG-MCMVでマウスに腹腔内チャレンジし、チャレンジ後6日目に脾臓を採取し、図2の場合と同様に力価を測定した。棒、円および横線は図2の場合と同様に記載されている。
【図5】一過性にトランスフェクトされた刺激細胞を用いる、IE1、M54またはM105を発現するDNAで免疫感作したBALB/cマウスにおけるCD8 T細胞応答のフローサイトメトリー分析を示す図である。空プラスミドベクター(Vect DNA)またはIE1、M54もしくはM105を発現するプラスミドDNA.のいずれかでマウスに4回皮内免疫感作した。MCMV感染により誘発されるCD8 T反応を測定するために、1.2□105PFUのTC-MCMVで他の群のマウスに腹腔内感染させた。最終DNA免疫感作またはMCMV感染の2週間後、マウスをICSアッセイのために屠殺した。実施例に記載されているように、脾細胞を調製し、計測し、ブレフェルディンAの存在下で、(Stimulation)で示されるIE1、M54またはM105のいずれかを発現するプラスミドDNAで48時間前にトランスフェクトされたBALB SV40(H-2d)刺激細胞とインキュベートした。刺激後、脾細胞をPE-Cy5-抗マウス-CD8aで表面染色し、固定し、FITC-抗マウス-IFNγ抗体で細胞内染色し、フローサイトメトリーで分析した。マウス#2を任意に選択し、免疫感作/感染および刺激群に対する1匹のマウスの散布図を示す。示されている百分率は、刺激後IFN-γ+であったCD8+T細胞の百分率であり、CD8およびIFN-γの二重陽性細胞の細胞数は、象限Q2における細胞数からゲートP4におけるバックグラウンド染色を差し引いたものとして算出される。
【図6】IE1、M54またはM105を発現するDNAで免疫感作したBALB/cマウスにおけるCD8 T細胞応答を示す図である。図4の場合と同様に、マウスの各群をDNA免疫感作またはMCMV感染した。A)最終DNA免疫感作またはMCMV感染の2週間後、ICSアッセイのために1群当たり3匹のマウスを屠殺した。図4における実験の全データにおいて、棒は各ワクチン群に関してIFN-γ+であったCD8+T細胞の群平均百分率を示し、記号は群における各マウスの個々の値を示す。同一の3つのTC-MCMV感染したマウスからの脾細胞は3つの刺激細胞群のそれぞれで試験したことに注意されたい。B)最終DNA免疫感作の3週間後またはTC-MCMVでの感染の4週間後のマウスでICSアッセイを行ったこと以外は(A)の場合と同じに行った。
【図7】SG-MCMVでのチャレンジ後5日目にDNA免疫感作またはTC-MCMV感染したマウスにおけるCD8 T反応を示す図である。空ベクターまたはIE1、M54もしくはM105のいずれか発現するプラスミドDNAのいずれかで3匹のBALB/cマウスを2週間で3回免疫感作した。図4の場合と同様にTC-MCMVで他の群のマウスを腹腔内感染させた。最終DNA免疫感作の7週間後またはMCMV感染の6週間後、1.2x105PFUのSG-MCMVでマウスに腹腔内チャレンジし、上記のようにチャレンジ後5日目にこれらのマウスの脾細胞にICSアッセイを行った。棒および記号は図5の場合と同様である。
【図8】HCMV(AD169株)の23個の保存された必須遺伝子のアミノ酸およびヌクレオチド配列ならびにそれらのMCMV(Smith株)ホモログのアミノ酸配列である。
【図9】HCMV(AD169株)に高度に保存された単純ヘルペスウイルス2型(HG52株)の12個の必須遺伝子のアミノ酸配列および対応するヌクレオチド配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度に保存されたウイルス遺伝子由来の少なくとも1つのDNA配列を含むDNA分子を個体に投与することを含む、ウイルス感染を予防または治療する方法。
【請求項2】
前記ウイルスが持続感染または潜伏感染を引き起こす、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルスがヘルペスウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルスおよびパピローマウイルスからなる群から選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルスがサイトメガロウイルスである、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスがヒトサイトメガロウイルスである、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記DNA分子が精製プラスミドDNAである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
弱毒生ウイルスまたは不活化ウイルスを含む追加免疫ワクチンを投与することをさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルスが化学的に不活化されている、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記化学的不活化がホルマリン不活化である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ウイルスが弱毒化されている、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルスがHCMVであり、前記弱毒ウイルスがHCMVのTowne株である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記DNA分子が、少なくとも2つの高度に保存されたウイルス遺伝子由来の少なくとも2つのDNA配列を含む、請求項1〜11記載の方法。
【請求項13】
前記DNA分子が、少なくとも3つの高度に保存されたウイルス遺伝子由来の少なくとも3つのDNA配列を含む、請求項1〜11記載の方法。
【請求項14】
前記DNA分子が、少なくとも2つの高度に保存されたウイルス遺伝子由来の少なくとも4つのDNA配列を含む、請求項1〜11記載の方法。
【請求項15】
前記DNA分子が、5〜10の高度に保存されたウイルス遺伝子由来の5〜10のDNA配列を含む、請求項1〜11記載の方法。
【請求項16】
前記高度に保存されたウイルス遺伝子が、マウスgB、M54、M105、ヒトgB、UL54およびUL105からなる群から選択されるCMV遺伝子である、請求項1〜15記載の方法。
【請求項17】
高度に保存された必須HCMV遺伝子由来の少なくとも1つのDNA配列を含むDNA分子を投与することを含む、個体においてHCMV感染を予防または治療する方法。
【請求項18】
前記個体が妊娠している、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記個体が女性である、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記個体が臓器移植レシピエントである、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記個体が臓器移植ドナーである、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記個体が1歳未満の小児である、請求項16記載の方法。
【請求項23】
弱毒生HCMVウイルスまたは不活化HCMVウイルスを含む追加免疫ワクチンをさらに含む、請求項17〜22記載の方法。
【請求項24】
前記弱毒ウイルスがHCMVのTowne株である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
高度に保存されたウイルス遺伝子由来の少なくとも1つのDNA配列を含むDNA分子を含むワクチン組成物であって、前記ウイルスが持続感染または潜伏感染を引き起こす前記ワクチン組成物。
【請求項26】
前記ウイルスがヘルペスウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルスおよびパピローマウイルスからなる群から選択される、請求項25記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記ウイルスがヒトサイトメガロウイルスである、請求項26記載のワクチン組成物。
【請求項28】
前記DNA分子が、少なくとも2つの高度に保存されたウイルス遺伝子由来の少なくとも2つのDNA配列を含む、請求項27記載のワクチン組成物。
【請求項29】
前記DNA分子が、少なくとも3つの高度に保存されたウイルス遺伝子由来の少なくとも3つのDNA配列を含む、請求項27記載のワクチン組成物。
【請求項30】
前記高度に保存されたウイルス遺伝子がgB、UL54およびUL105からなる群から選択される、請求項27〜29記載のワクチン組成物。
【請求項31】
請求項25〜30のいずれかに記載の第1ワクチン組成物および弱毒生ウイルスまたは不活化ウイルスを含む第2ワクチン組成物を含むキット。
【請求項32】
前記第1ワクチン組成物が、高度に保存されたヒトサイトメガロウイルス遺伝子由来の少なくとも1つのDNA配列を含むDNA分子を含み、前記第2ワクチン組成物が弱毒生HCMVを含む、請求項31記載のキット。
【請求項33】
高度に保存されたウイルス遺伝子由来の少なくとも1つのDNA配列を含むDNA分子を前記個体に投与することを含む、個体においてCD8+T細胞応答を誘発する方法。
【請求項34】
前記ウイルスが持続感染または潜伏感染を引き起こす、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記ウイルスがヘルペスウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルスおよびパピローマウイルスからなる群から選択される、請求項33または34記載の方法。
【請求項36】
前記ウイルスがサイトメガロウイルスである、請求項33または34記載の方法。
【請求項37】
前記ウイルスがヒトサイトメガロウイルスである、請求項33または34記載の方法。
【請求項38】
前記DNA分子が精製プラスミドDNAである、請求項33〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
弱毒生ウイルスまたは不活化ウイルスを含む追加免疫ワクチンを投与することをさらに含む、請求項33〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記ウイルスが化学的に不活化されている、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記化学的不活化がホルマリン不活化である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルスが弱毒化されている、請求項39記載の方法。
【請求項43】
前記ウイルスがHCMVであり、前記弱毒ウイルスがHCMVのTowne株である、請求項40記載の方法。
【請求項44】
前記DNA分子が、少なくとも2つの高度に保存されたウイルス遺伝子由来の少なくとも2つのDNA配列を含む、請求項33〜43記載の方法。
【請求項45】
前記DNA分子が、少なくとも3つの高度に保存されたウイルス遺伝子由来の少なくとも3つのDNA配列を含む、請求項33〜43記載の方法。
【請求項46】
前記DNA分子が、少なくとも2つの高度に保存されたウイルス遺伝子由来の少なくとも4つのDNA配列を含む、請求項33〜43記載の方法。
【請求項47】
前記DNA分子が、5〜10の高度に保存されたウイルス遺伝子由来の5〜10のDNA配列を含む、請求項33〜43記載の方法。
【請求項48】
前記高度に保存されたウイルス遺伝子が、マウスgB、M54、M105、ヒトgB、UL54およびUL105からなる群から選択されるCMV遺伝子である、請求項33〜47記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図8−3】
image rotate

【図8−4】
image rotate

【図8−5】
image rotate

【図8−6】
image rotate

【図8−7】
image rotate

【図8−8】
image rotate

【図8−9】
image rotate

【図8−10】
image rotate

【図8−11】
image rotate

【図8−12】
image rotate

【図8−13】
image rotate

【図8−14】
image rotate

【図8−15】
image rotate

【図8−16】
image rotate

【図8−17】
image rotate

【図8−18】
image rotate

【図8−19】
image rotate

【図8−20】
image rotate

【図8−21】
image rotate

【図8−22】
image rotate

【図8−23】
image rotate

【図8−24】
image rotate

【図8−25】
image rotate

【図8−26】
image rotate

【図8−27】
image rotate

【図9−1】
image rotate

【図9−2】
image rotate

【図9−3】
image rotate

【図9−4】
image rotate

【図9−5】
image rotate

【図9−6】
image rotate

【図9−7】
image rotate

【図9−8】
image rotate

【図9−9】
image rotate

【図9−10】
image rotate

【図9−11】
image rotate

【図9−12】
image rotate

【図9−13】
image rotate

【図9−14】
image rotate

【図9−15】
image rotate


【公表番号】特表2009−529576(P2009−529576A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500402(P2009−500402)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/006113
【国際公開番号】WO2007/106404
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】