説明

指のピンチ操作によってタイムスケールを切り替えるユーザインタフェースプログラム、端末及び方法

【課題】マルチタッチパネルを搭載した端末の画面に表示されたタイムスケールについて、異なるタイムスケールに切り替わっても、ユーザがピンチ操作に違和感を生じないように表示するユーザインタフェースプログラム等を提供する。
【解決手段】ユーザの2本の指の移動に基づくピンチイン/ピンチアウト操作を検出すると共に、移動前時点tと移動後時点t+1との指間のピンチ距離(dt−dt+1)を検出するピンチ操作検出手段と、移動前時点tの第1のタイムスケールの単位長xtを、移動距離(dt−dt+1)に基づいて移動後時点tの第1のタイムスケールの単位長xt+1へ伸縮させるタイムスケール伸縮手段と、移動後時点t+1の第1のタイムスケールの単位長xt+1が、第2のタイムスケールの基準単位長と一致した際に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ表示を切り替えるタイムスケール切替手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列データを表示するユーザインタフェース画面の技術に関する。例えば医療従事者によって観察される電子カルテ情報の表示画面に適用される。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクト管理用の時系列データを、ユーザが理解しやすいように様々な観点から表示する「ユーザインタフェースアプリケーション」がある。特に、医療用の電子カルテ情報については、医療従事者が、患者毎に、次の治療計画を検討するために、過去の治療行為を時間軸に沿って迅速に観察できることが望まれる。このようなユーザインタフェースアプリケーションとして、スケジュール表によって医療行為を観察することができる、例えば「クリニカルパス」と称される技術がある。
【0003】
電子カルテ情報を表示するユーザインタフェースとして、横軸に、例えば年ベース・月ベース・日ベースのような多段階の時間軸を表示し、縦軸に医療行為(病名・投薬・診断・検査等)を表示する技術がある(例えば特許文献1〜3参照)。この技術によれば、実際に行われた医療行為が、時間軸に沿ったオブジェクトとして表示されている。観察者は、時間軸の一定のタイムスケール(時間尺度)を変更することによって、過去の医療行為の経緯を俯瞰することができる。この情報の俯瞰性の高さは、医療従事者の思考に対して、過去の行為項目同士の因果関係の推定を容易にするようサポートする。特に、最適なタイムスケールで見ることによって、一見ランダムに見える医療行為の因果関係を見比べることもできる。医療従事者は、患者への投薬情報や検査情報などの過去の医療データを、時系列に視覚的に閲覧する。そのために、観察表示における時間間隔(タイムスケール)を伸長させたり収縮させたりしながら、閲覧する。
【0004】
医療従事者が、患者の時系列の医療行為データを観察する際に、長期観察と、短期観察とを併用することが好ましい。例えば1983年生まれの患者の場合、1983〜1984年の間に乳幼児特有の病気や検査(イベント)が集中する。成人後にその乳幼児期の病気等が影響している場合、その乳幼児期の短い期間のタイムスケールを長く表示することが所望される。一方で、高齢の患者の場合、若年齢時期の病気等を含めて、比較的長いタイムスケールで表示することも所望される。即ち、医療従事者にとっては、患者に対する医療行為全体を視覚的に俯瞰すると共に、医療行為が多く行われた時期については詳細に観察したいとする要求もある。前述した特許文献1〜3に記載された技術によれば、電子カルテ情報は、タイムスケールを伸縮させることができる。
【0005】
電子カルテシステムとしては、従来、専用端末が用いられており、医療従事者は、システム特有の操作をする必要があった。これに対し、近年では、タッチパネルディスプレイを搭載し、ユーザの指で直感的に操作することができるタブレット型/スレート型パーソナルコンピュータ及びスマートフォンのような端末が普及してきている。また、電子カルテシステムについても、このようなタブレット型端末を用いることによって、医療従事者における操作負担を軽減させることができる。
【0006】
タッチパネルの中でも、複数の指に接触位置を同時に検出することができるマルチタッチパネルがある。このようなマルチタッチパネルに対して、「ピンチ」(pinch)という操作がある。これは、マルチタッチパネルに対して、2本の指で摘むように接触させ、画面上の対象物を拡大又は縮小させる操作をいい、直感的に入力することができる。
【0007】
「ピンチイン」(pinch-in)(又はピンチクローズ(pinch-close))とは、マルチタッチパネルに接触させた2本の指で、その間隔を縮める操作をいう。これによって、画面に表示された対象物を縮小して表示させることができる。
【0008】
また、「ピンチアウト」(pinch-out)(又はピンチオープン(pinch-open))とは、マルチタッチパネルに接触させた2本の指で、その間隔を拡げる操作をいう。これによって、画面に表示された対象物を拡大して表示させることができる。
【0009】
マルチタッチパネルを搭載した端末を用いることによって、例えば医療従事者は、タイムスケールに対してピンチ操作をすることによって、観察表示における時間間隔を伸長させたり、収縮させたりしながら、閲覧することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−192002号公報
【特許文献2】特開2009−134713号公報
【特許文献3】特開2009−282557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、複数のタイムスケールの中で、タイムスケール同士の時間区間の比が、異なる。例えば、日ベースのスケールは、1ヶ月を30日に区切って表示するのに対し、月ベースのスケールは、1年を12ヶ月に区切って表示する。このような比の相違によって、ピンチ操作における指の移動距離が同じであっても、タイムスケール毎に、画面上のタイムスケールの伸縮比率が異なることとなる。そのために、ユーザは、第1のタイムスケールにおける指の第1の移動距離に対する伸縮長と、第2のタイムスケールにおける指の第2の移動距離に対する伸縮長とは、異なる。そのために、ユーザは、タイムスケール毎に、その指の移動距離を感覚的に調整する必要がある。
【0012】
また、複数のタイムスケールが切り替わるときには、ユーザは、更に違和感を感じる。なぜなら、第1のタイムスケールで表示されているイベントオブジェクトの位置が、第2のタイムスケールに切り替わることによって、移動するためである。ユーザは、タイムスケールが切り替わる度に、そのタイムスケールを意識して、再度、イベントオブジェクトを視覚的に認識し直す必要がある。
【0013】
更に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ切り替わるまでのユーザによるピンチ操作回数と、第2のタイムスケールから第3のタイムスケールへ切り替わるまでのユーザによるピンチ操作回数とは、異なる。これも、ユーザのピンチ操作の違和感を生じさせる。伸縮比率が大きい場合、目的のイベントオブジェクトの周辺に対する僅かなずれが大きく影響する。
【0014】
そこで、本発明は、マルチタッチパネルを搭載した端末の画面に表示されたタイムスケールについて、異なるタイムスケールに切り替わっても、ユーザがピンチ操作に違和感を生じないように表示するユーザインタフェースプログラム、端末及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、ユーザの指によって操作可能なマルチタッチパネルを有する端末に搭載されたコンピュータを機能させるユーザインタフェースプログラムであって、
時間軸を所定時間単位に区分したものであって、同一の時間軸に基づいて関連した複数のタイムスケールを表示するタイムスケール表示手段と、
タイムスケールの方向における、ユーザの2本の指の移動に基づくピンチイン/ピンチアウト(2本の指の間の距離の拡大/縮小)操作を検出すると共に、移動前時点tの指間の第1の距離dtと、移動後時点t+1の指間の第2の距離dt+1との差分となるピンチ距離(dt−dt+1)を検出するピンチ操作検出手段と、
移動前時点tの第1のタイムスケールの単位長xtを、移動距離(dt−dt+1)に基づいて移動後時点tの第1のタイムスケールの単位長xt+1へ伸縮させるタイムスケール伸縮手段と、
移動後時点t+1の第1のタイムスケールの単位長xt+1が、第2のタイムスケールの基準単位長と一致した際に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ表示を切り替えるタイムスケール切替手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0016】
本発明のユーザインタフェースプログラムにおける他の実施形態によれば、
タイムスケール切替手段は、第1のタイムスケールが、第2のタイムスケール/第1のタイムスケールの比に伸長又は収縮された際に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ切り替えるようにコンピュータを機能させるものであってもよい。
【0017】
本発明のユーザインタフェースプログラムにおける他の実施形態によれば、
秒ベース(60秒)で表されたタイムスケールが、当該秒ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/60に収縮された際に、分ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
分ベース(60分)で表されたタイムスケールが、当該秒ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/60に収縮された際に、時間ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
時間ベース(24時間)で表されたタイムスケールが、当該時間ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/24に収縮された際に、日ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
日ベース(例えば30日)で表されたタイムスケールが、当該日ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/30に収縮された際に、月ベースのタイムスケールへ切り替えられ、又は
月ベース(12ヶ月)で表されたタイムスケールが、当該月ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/12に収縮された際に、年ベースタイムスケールへ切り替えられるようにコンピュータを機能させるものであってもよい。
【0018】
本発明のユーザインタフェースプログラムにおける他の実施形態によれば、
年ベースで表されたタイムスケールが、当該年ベースのタイムスケールにおける基準単位長の12倍に伸長された際に、月ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
月ベース(12ヶ月)で表されたタイムスケールが、当該月ベースのタイムスケールにおける基準単位長の30倍(例えば30日として)に伸長された際に、日ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
日ベース(例えば30日)で表されたタイムスケールが、当該日ベースのタイムスケールにおける基準単位長の24倍に伸長された際に、時間ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
時間ベース(24時間)で表されたタイムスケールが、当該時間ベースのタイムスケールにおける基準単位長の60倍に伸長された際に、分ベースのタイムスケールへ切り替えられ、又は、
分ベース(60分)で表されたタイムスケールが、当該分ベースのタイムスケールにおける基準単位長の60倍に伸長された際に、秒ベースのタイムスケールへ切り替えられる
ようにコンピュータを機能させるものであってもよい。
【0019】
本発明のユーザインタフェースプログラムにおける他の実施形態によれば、
行為項目と、行為時刻(又は時刻幅)とを対応付けたイベントを記憶するイベント記憶手段と、
タイムスケールに対して、行為項目毎に且つ所定時間単位毎に、イベントのオブジェクトを表示するイベントオブジェクト表示手段と
を更に有し、
タイムスケール切替手段によってタイムスケールが切り替えられた際であっても、イベントのオブジェクトの位置が変化しないように作用するようにコンピュータを機能させるものであってもよい。
【0020】
本発明のユーザインタフェースプログラムにおける他の実施形態によれば、
当該ユーザインタフェースプログラムは、医療従事者によって観察される電子カルテ情報を表示するものであり、
行為項目は、医療行為を意味し、
行為時刻(又は時刻幅)は、当該医療行為を行った時刻(又は時刻幅)を表す
ようにコンピュータを機能させるものであってもよい。
【0021】
本発明のユーザインタフェースプログラムにおける他の実施形態によれば、
タブレット型/スレート型パーソナルコンピュータ又はスマートフォンの端末に搭載されたコンピュータを機能させるものであってもよい。
【0022】
本発明によれば、ユーザの指によって操作可能なマルチタッチパネルを有する端末において、
時間軸を所定時間単位に区分したものであって、同一の時間軸に基づいて関連した複数のタイムスケールを表示するタイムスケール表示手段と、
タイムスケールの方向における、ユーザの2本の指の移動に基づくピンチイン/ピンチアウト(2本の指の間の距離の拡大/縮小)操作を検出すると共に、移動前時点tの指間の第1の距離dtと、移動後時点t+1の指間の第2の距離dt+1との差分となるピンチ距離(dt−dt+1)を検出するピンチ操作検出手段と、
移動前時点tの第1のタイムスケールの単位長xtを、移動距離(dt−dt+1)に基づいて移動後時点tの第1のタイムスケールの単位長xt+1へ伸縮させるタイムスケール伸縮手段と、
移動後時点t+1の第1のタイムスケールの単位長xt+1が、第2のタイムスケールの基準単位長と一致した際に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ表示を切り替えるタイムスケール切替手段と
を有することを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、ユーザの指によって操作可能なマルチタッチパネルを有する端末における時系列データ表示方法であって、
時間軸を所定時間単位に区分したものであって、同一の時間軸に基づいて関連した複数のタイムスケールを表示する第1のステップと、
タイムスケールの方向における、ユーザの2本の指の移動に基づくピンチイン/ピンチアウト(2本の指の間の距離の拡大/縮小)操作を検出すると共に、移動前時点tの指間の第1の距離dtと、移動後時点t+1の指間の第2の距離dt+1との差分となるピンチ距離(dt−dt+1)を検出する第2のステップと、
移動前時点tの第1のタイムスケールの単位長xtを、移動距離(dt−dt+1)に基づいて移動後時点tの第1のタイムスケールの単位長xt+1へ伸縮させる第3のステップと、
移動後時点t+1の第1のタイムスケールの単位長xt+1が、第2のタイムスケールの基準単位長と一致した際に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ表示を切り替える第4のステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のユーザインタフェースプログラム、端末及び方法によれば、マルチタッチパネルを搭載した端末の画面に表示されたタイムスケールについて、異なるタイムスケールに切り替わっても、ユーザがピンチ操作に違和感を生じないように表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】時系列データがディスプレイに表示されたタブレット型端末の外観図である。
【図2】本発明におけるタブレット型端末の機能構成図である。
【図3】本発明おけるタイムスケールの切り替えを表す第1の説明図である。
【図4】本発明おけるタイムスケールの切り替えを表す第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
図1は、時系列データがディスプレイに表示されたタブレット型端末の外観図である。
【0028】
図1によれば、タブレット型/スレート型パーソナルコンピュータ又はスマートフォンの端末(以下「タブレット型端末」という)に適用されている。タブレット型端末1には、マルチタッチパネルディスプレイ101が搭載されている。マルチタッチパネルディスプレイ101は、時系列データを表示すると共に、ユーザの指による操作(ピンチ操作)を受け付ける。勿論、タッチパネルディスプレイに限られず、表示機能のみのディスプレイと、ユーザ操作機能のみのマルチタッチパネルとから構成されるものであってもよい。
【0029】
図1によれば、タッチパネルディスプレイ101は、横型に向けられており、医療従事者によって観察される電子カルテ情報(時系列データ)が表示されている。図1によれば、縦軸に複数の行為項目(医療行為)が表示され、横軸に時間軸が表示されている。時間軸の上部には、時間尺度(タイムスケール)を持つ少なくとも1つ以上の「タイムライン」が表示されている。例えば、時間尺度として、例えば以下のようなタイムラインを表示することができる。
・秒ベースのタイムライン (タイムスケールが小さい)
・分ベースのタイムライン
・日ベースのライン
・月ベースのライン
・年ベースのライン (タイムスケールが大きい)
【0030】
医療従事者は、その患者の過去の診療経緯に基づいて、ピンチ操作によって、多段階のタイムスケールのラインのいずれか1つを選択することができる。選択されたラインに応じて、所望の時点(例えば現日時)から過去の診療経緯が表示される。
【0031】
また、図1によれば、行為項目毎に、その行為が実行された旨のイベントが、時間軸上の該当位置に表示されている。イベントは、簡単な長方形のオブジェクトとして表示されている。「イベント」は、行為項目と、行為時刻(又は時刻幅)とが対応付けられた情報単位をいう。これらオブジェクト同士の間の距離は、選択されたラインにおけるタイムスケールによって変化する。即ち、タイムスケールが大きいほど、オブジェクト同士の間の距離は短くなり、タイムスケールが小さいほど、その距離は長くなる。
【0032】
図2は、本発明におけるタブレット型端末の機能構成図である。
【0033】
図2によれば、タブレット型端末1は、マルチタッチパネルディスプレイ101と、イベント記憶部111と、タイムスケール表示部112と、イベントオブジェクト表示部113と、ピンチ操作検出部114と、タイムスケール伸縮部115と、タイムスケール切替部116とを有する。これら機能構成部は、タブレット型端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。尚、各機能構成部の処理の流れは、ユーザインタフェース表示方法としても理解できる。
【0034】
イベント記憶部111は、その行為に基づく情報単位であるイベントを記憶する。イベントは、行為項目と、行為時刻(又は時刻幅)とを対応付けたものである。電子カルテ情報に関する「行為項目」としては、例えば「投薬」「検査」「注射」等となる。また、「時刻」としては、例えば検査日や投薬日である。尚、「時刻幅」としては、例えばその医療行為の開始日と終了日との間の期間である。更に、例えば検査値や投薬量のような「行為内容情報」が含まれるものであってもよい。
【0035】
各イベントは、構造化されたデータ(COA)として記憶される。COAデータの最小単位は、時刻(又は時刻幅)を含み、時刻幅については、開示日時(begintime)と終了日時(endtime)とをメンバ変数として含む。縦型の向きへの変化が検知された際に、時刻幅に基づく時間単位区分について、その時間範囲に含まれるCOAデータが検索される。例えば月ベースのタイムスケールであれば、時刻幅に基づくその月ベース区分について、その月に含まれるCOAデータが検索される。
【0036】
タイムスケール表示部112は、時間軸を所定時間単位に区分したものであって、同一の時間軸に基づいて関連した少なくとも1つ以上のタイムスケールを表示する。所定時間単位とは、例えば「年」「月」「日」等をベースであって、各タイムスケールは、これら所定時間単位が異なる。例えば、年ベースのタイムスケールにおける1年分の時間区分と、月ベースのタイムスケールにおける12ヶ月分の時間区分とは一致する。即ち、複数のタイムスケールは、同一の時間軸に基づいて関連する。
年ベースの1年分 =月ベースの12ヶ月分
月ベースの1ヶ月分=日ベースの(例えば)30日分
タイムスケール表示部112は、タイムスケール伸縮部115及びタイムスケール切替部116からの指示に応じて、タイムスケールを伸縮させ且つ切り替える。
【0037】
イベントオブジェクト表示部113は、タイムスケールの時間軸に対して、行為項目毎に、時間単位区分に応じてイベントオブジェクトを表示する。イベントオブジェクトは、イベント記憶部111から取得される。
【0038】
ピンチ操作検出部114は、ユーザの指によるピンチ操作を検出する。検出されるピンチ操作は、タイムスケールの方向における、ユーザの2本の指の移動に基づくピンチイン/ピンチアウト(2本の指の間の距離の拡大/縮小)操作をいう。ピンチ操作検出部115は、以下のようにピンチ距離を検出する。
t−dt+1:ピンチ距離
t :移動前時点tの指間の第1の距離
t+1:移動後時点t+1の指間の第2の距離
検出されたピンチ距離は、タイムスケール伸縮部115及びタイムスケール切替部116へ出力される。
【0039】
タイムスケール伸縮部115は、タイムスケール表示部112に対して、以下のようにタイムスケールを伸縮させる。
t+1=xt+(dt−dt+1)・α
t :移動前時点tの第1のタイムスケールの単位長
t+1 :移動後時点t+1の第1のタイムスケールの単位長
α :表示画面を考慮した係数
【0040】
タイムスケール切替部116は、移動後時点t+1の第1のタイムスケールの単位長xt+1が、第2のタイムスケールの基準単位長yと一致した際に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ表示を切り替える。これによって、タイムスケールが切り替えられた際であっても、イベントのオブジェクトの位置が変化しない。そのために、ユーザから見て、タイムスケールの切り替えによってイベントオブジェクトを視覚的に認識し直す必要がない。具体的なタイムスケールの切り替えは、図3及び図4によって後述する。
【0041】
タイムスケール毎に、基準単位長が予め規定されている。基準単位長とは、画面に表示されている単位時間当たりの長さを意味する。尚、基準単位長の画面上の長さは、予め任意に決定された長さである。
月ベース->年ベース:年ベースのタイムスケールにおける1年分の基準単位長
年ベースの基準単位長=月ベースの基準単位長/12
日ベース->月ベース:月ベースのタイムスケールにおける1ヶ月分の基準単位長
月ベースの基準単位長=日ベースの基準単位長/30
年ベース->月ベース:年ベースのタイムスケールにおける1年分の基準単位長
月ベースの基準単位長=年ベースの基準単位長×12
月ベース->日ベース:月ベースのタイムスケールにおける1ヶ月分の基準単位長
日ベースの基準単位長=月ベースの基準単位長×30
タイムスケール切替部116は、第1のタイムスケールが、第2のタイムスケール/第1のタイムスケールの比に伸長又は収縮された際に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ切り替える。
【0042】
尚、他の実施形態として、本発明の端末の各機能部を、サーバ・クライアント型のシステムに適用することも好ましい。例えば、図2の端末によれば、イベント記憶部111のみをサーバに備えさせることもできる。端末は、切り替えられたタイムスケールの情報をサーバへ送信する。サーバは、受信したタイムスケールの情報に応じて、当該端末に対して表示すべきイベントの情報のみを返信する。端末は、サーバから受信したイベントの情報に基づくオブジェクトを、イベントオブジェクト表示部113からマルチタッチパネルディスプレイ101に表示する。
【0043】
図3は、本発明おけるタイムスケールの切り替えを表す第1の説明図である。
【0044】
図3(a)によれば、ピンチイン操作(収縮方向)によって、月ベースのタイムスケールから年ベースのタイムスケールへ切り替えられている。
(S301)月ベースのタイムスケールとして、2009年1月〜12月が表されている。
(S302)ここで、ユーザがピンチイン操作をしたとする。これによって、月ベースのタイムスケールが収縮されていく。
(S303)そして、月ベースの1月〜12月の長さが、年ベースの基準単位長と一致したとする。
(S304)このとき、月ベースのタイムスケールから年ベースのタイムスケールへ切り替わる。切り替え前後のタイムスケールは異なるが、その時間幅は同一であるために、表示されているイベントオブジェクトの位置に変化が生じない。
【0045】
図3(b)によれば、ピンチイン操作(収縮方向)によって、日ベースのタイムスケールから月ベースのタイムスケールへ切り替えられている。
(S311)日ベースのタイムスケールとして、2009年6月1日〜30日が表されている。
(S312)ここで、ユーザがピンチイン操作をしたとする。これによって、日ベースのタイムスケールが収縮されていく。
(S313)そして、日ベースの1日〜30日の長さが、月ベースの基準単位長と一致したとする。
(S314)このとき、日ベースのタイムスケールから月ベースのタイムスケールへ切り替わる。切り替え前後のタイムスケールは異なるが、その時間幅は同一であるために、表示されているイベントオブジェクトの位置に変化が生じない。
【0046】
図4は、本発明おけるタイムスケールの切り替えを表す第2の説明図である。
【0047】
図4(a)によれば、ピンチアウト操作(伸長方向)によって、年ベースのタイムスケールから月ベースのタイムスケールへ切り替えられている。
(S401)年ベースのタイムスケールとして、2007年〜2011年が表されている。
(S402)ここで、ユーザがピンチアウト操作をしたとする。これによって、年ベースのタイムスケールが伸長されていく。
(S403)そして、年ベースの1月〜12月の長さが、月ベースの基準単位長と一致したとする。
(S404)このとき、年ベースのタイムスケールから月ベースのタイムスケールへ切り替わる。切り替え前後のタイムスケールは異なるが、その時間幅は同一であるために、表示されているイベントオブジェクトの位置に変化が生じない。
【0048】
図4(b)によれば、ピンチアウト操作(伸長方向)によって、月ベースのタイムスケールから日ベースのタイムスケールへ切り替えられている。
(S411)月ベースのタイムスケールとして、2008年1月〜2010年12月が表されている。
(S412)ここで、ユーザがピンチアウト操作をしたとする。これによって、月ベースのタイムスケールが伸長されていく。
(S413)そして、月ベースの1日〜30日の長さが、日ベースの基準単位長と一致したとする。
(S414)このとき、月ベースのタイムスケールから日ベースのタイムスケールへ切り替わる。切り替え前後のタイムスケールは異なるが、その時間幅は同一であるために、表示されているイベントオブジェクトの位置に変化が生じない。
【0049】
前述した図3及び図4によれば、年ベース、月ベース及び日ベースについて説明したが、秒ベース、分ベースであっても全く同様である。ピンチイン操作(収縮操作)については、以下のように動作する。
(1)秒ベース(60秒)で表されたタイムスケールが、当該秒ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/60に収縮された際に、分ベースのタイムスケールへ切り替えられる。
(2)分ベース(60分)で表されたタイムスケールが、当該秒ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/60に収縮された際に、時間ベースのタイムスケールへ切り替えられる。
(3)時間ベース(24時間)で表されたタイムスケールが、当該時間ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/24に収縮された際に、日ベースのタイムスケールへ切り替えられる。
(4)日ベース(例えば30日)で表されたタイムスケールが、当該日ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/30に収縮された際に、月ベースのタイムスケールへ切り替えられる。
(5)月ベース(12ヶ月)で表されたタイムスケールが、当該月ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/12に収縮された際に、年ベースタイムスケールへ切り替えられる。
【0050】
また、ピンチアウト操作(伸長操作)については、以下のように動作する。
(1)年ベースで表されたタイムスケールが、当該年ベースのタイムスケールにおける基準単位長の12倍に伸長された際に、月ベースのタイムスケールへ切り替えられる。
(2)月ベース(12ヶ月)で表されたタイムスケールが、当該月ベースのタイムスケールにおける基準単位長の30倍(例えば30日として)に伸長された際に、日ベースのタイムスケールへ切り替えられる。
(3)日ベース(例えば30日)で表されたタイムスケールが、当該日ベースのタイムスケールにおける基準単位長の24倍に伸長された際に、時間ベースのタイムスケールへ切り替えられる。
(4)時間ベース(24時間)で表されたタイムスケールが、当該時間ベースのタイムスケールにおける基準単位長の60倍に伸長された際に、分ベースのタイムスケールへ切り替えられる。
(5)分ベース(60分)で表されたタイムスケールが、当該分ベースのタイムスケールにおける基準単位長の60倍に伸長された際に、秒ベースのタイムスケールへ切り替えられる。
【0051】
以上、詳細に説明したように、本発明のユーザインタフェースプログラム、端末及び方法によれば、マルチタッチパネルを搭載した端末の画面に表示されたタイムスケールについて、異なるタイムスケールに切り替わっても、ユーザがピンチ操作に違和感を生じないように表示することができる。
【0052】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0053】
1 タブレット型端末
101 マルチタッチパネルディスプレイ
111 イベント記憶部
112 タイムスケール表示部
113 イベントオブジェクト表示部
114 ピンチ操作検出部
115 タイムスケール伸縮部
116 タイムスケール切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの指によって操作可能なマルチタッチパネルを有する端末に搭載されたコンピュータを機能させるユーザインタフェースプログラムであって、
時間軸を所定時間単位に区分したものであって、同一の時間軸に基づいて関連した複数のタイムスケールを表示するタイムスケール表示手段と、
前記タイムスケールの方向における、前記ユーザの2本の指の移動に基づくピンチイン/ピンチアウト(2本の指の間の距離の拡大/縮小)操作を検出すると共に、移動前時点tの指間の第1の距離dtと、移動後時点t+1の指間の第2の距離dt+1との差分となるピンチ距離(dt−dt+1)を検出するピンチ操作検出手段と、
移動前時点tの第1のタイムスケールの単位長xtを、前記移動距離(dt−dt+1)に基づいて移動後時点tの第1のタイムスケールの単位長xt+1へ伸縮させるタイムスケール伸縮手段と、
移動後時点t+1の第1のタイムスケールの単位長xt+1が、第2のタイムスケールの基準単位長と一致した際に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ表示を切り替えるタイムスケール切替手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするユーザインタフェースプログラム。
【請求項2】
前記タイムスケール切替手段は、第1のタイムスケールが、第2のタイムスケール/第1のタイムスケールの比に伸長又は収縮された際に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ切り替えるようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1に記載のユーザインタフェースプログラム。
【請求項3】
秒ベース(60秒)で表されたタイムスケールが、当該秒ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/60に収縮された際に、分ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
分ベース(60分)で表されたタイムスケールが、当該秒ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/60に収縮された際に、時間ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
時間ベース(24時間)で表されたタイムスケールが、当該時間ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/24に収縮された際に、日ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
日ベース(例えば30日)で表されたタイムスケールが、当該日ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/30に収縮された際に、月ベースのタイムスケールへ切り替えられ、又は
月ベース(12ヶ月)で表されたタイムスケールが、当該月ベースのタイムスケールにおける基準単位長の1/12に収縮された際に、年ベースタイムスケールへ切り替えられるようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項2に記載のユーザインタフェースプログラム。
【請求項4】
年ベースで表されたタイムスケールが、当該年ベースのタイムスケールにおける基準単位長の12倍に伸長された際に、月ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
月ベース(12ヶ月)で表されたタイムスケールが、当該月ベースのタイムスケールにおける基準単位長の30倍(例えば30日として)に伸長された際に、日ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
日ベース(例えば30日)で表されたタイムスケールが、当該日ベースのタイムスケールにおける基準単位長の24倍に伸長された際に、時間ベースのタイムスケールへ切り替えられ、
時間ベース(24時間)で表されたタイムスケールが、当該時間ベースのタイムスケールにおける基準単位長の60倍に伸長された際に、分ベースのタイムスケールへ切り替えられ、又は、
分ベース(60分)で表されたタイムスケールが、当該分ベースのタイムスケールにおける基準単位長の60倍に伸長された際に、秒ベースのタイムスケールへ切り替えられる
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項2に記載のユーザインタフェースプログラム。
【請求項5】
行為項目と、行為時刻(又は時刻幅)とを対応付けたイベントを記憶するイベント記憶手段と、
前記タイムスケールに対して、前記行為項目毎に且つ所定時間単位毎に、前記イベントのオブジェクトを表示するイベントオブジェクト表示手段と
を更に有し、
前記タイムスケール切替手段によってタイムスケールが切り替えられた際であっても、前記イベントのオブジェクトの位置が変化しないように作用するようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のユーザインタフェースプログラム。
【請求項6】
当該ユーザインタフェースプログラムは、医療従事者によって観察される電子カルテ情報を表示するものであり、
前記行為項目は、医療行為を意味し、
前記行為時刻(又は時刻幅)は、当該医療行為を行った時刻(又は時刻幅)を表す
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項5に記載のユーザインタフェースプログラム。
【請求項7】
タブレット型/スレート型パーソナルコンピュータ又はスマートフォンの端末に搭載されたコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のユーザインタフェースプログラム。
【請求項8】
ユーザの指によって操作可能なマルチタッチパネルを有する端末において、
時間軸を所定時間単位に区分したものであって、同一の時間軸に基づいて関連した複数のタイムスケールを表示するタイムスケール表示手段と、
前記タイムスケールの方向における、前記ユーザの2本の指の移動に基づくピンチイン/ピンチアウト(2本の指の間の距離の拡大/縮小)操作を検出すると共に、移動前時点tの指間の第1の距離dtと、移動後時点t+1の指間の第2の距離dt+1との差分となるピンチ距離(dt−dt+1)を検出するピンチ操作検出手段と、
移動前時点tの第1のタイムスケールの単位長xtを、前記移動距離(dt−dt+1)に基づいて移動後時点tの第1のタイムスケールの単位長xt+1へ伸縮させるタイムスケール伸縮手段と、
移動後時点t+1の第1のタイムスケールの単位長xt+1が、第2のタイムスケールの基準単位長と一致した際に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ表示を切り替えるタイムスケール切替手段と
を有することを特徴とする端末。
【請求項9】
ユーザの指によって操作可能なマルチタッチパネルを有する端末における時系列データ表示方法であって、
時間軸を所定時間単位に区分したものであって、同一の時間軸に基づいて関連した複数のタイムスケールを表示する第1のステップと、
前記タイムスケールの方向における、前記ユーザの2本の指の移動に基づくピンチイン/ピンチアウト(2本の指の間の距離の拡大/縮小)操作を検出すると共に、移動前時点tの指間の第1の距離dtと、移動後時点t+1の指間の第2の距離dt+1との差分となるピンチ距離(dt−dt+1)を検出する第2のステップと、
移動前時点tの第1のタイムスケールの単位長xtを、前記移動距離(dt−dt+1)に基づいて移動後時点tの第1のタイムスケールの単位長xt+1へ伸縮させる第3のステップと、
移動後時点t+1の第1のタイムスケールの単位長xt+1が、第2のタイムスケールの基準単位長と一致した際に、第1のタイムスケールから第2のタイムスケールへ表示を切り替える第4のステップと
を有することを特徴とする時系列データ表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−173890(P2012−173890A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33911(P2011−33911)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】