説明

指サック

【課題】静電容量型タッチパネルでも感知する指サックに関するものであり、タッチパネル面に対して滑りが良好で、指サック自身が耐久性に富み、タッチパネル表面に傷を生じさせず、また、持ち運びに不便のない指サックを提供する。
【解決手段】繊維表面に導電層を被覆していない繊維であって比抵抗値が10000Ωcm以下の繊維を50質量%以上含む指サックである。また、前記繊維が芯部にカーボンブラックを含む芯鞘型の複合繊維である指サックである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型タッチパネルでも感知する指サックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電容量型タッチパネルは鮮明な画像を表示可能、反応が早く誤作動が少ない、画面に傷をつけにくい、耐水性が高いなどの優れた特長があり、券売機や銀行端末、最近ではスマートフォンなど携帯端末への利用も増えてきている。
【0003】
静電容量型タッチパネルは、指先で入力を行うため、画面に皮脂により指紋が付着してしまい、見た目に衛生的でないなどの問題点があった。
【0004】
例えば特許文献1には、先端に導電性を持たせたスタイラスペンが提案されているが、スタイラスペンでの操作は、指先操作にくらべて快適性に乏しく、またスタイラスペン自体を常時携帯する必要があった。
【0005】
また、特許文献2には、導電繊維を使用した手袋型の繊維構造体も提案されているが、着脱が面倒であり、また使用していない状態で携帯するにもサイズが大きく、嵩張るものであった。
【0006】
また、特許文献3には、金属粉末を含有した炭素繊維を編み込んだ除電用指サックが記載されているが、構造的にタッチパネルと面接触とはなりにくいため、静電容量式タッチパネルの動作性が悪く、また金属粉末を使用しているため、強く擦ってしまうと画面を傷つけてしまう恐れがあった。
【0007】
また、特許文献4には、導電性粒子を練りこんだゴムを材料とした帯電防止指サックが示されているが、ゴムを使用した指サックは、タッチパネル面に対して滑りが悪いものであった。
【0008】
さらに、特許文献5には、被覆型導電繊維を指サックの表面に使用する方法も挙げられているが、被覆型導電繊維の被覆がはがれてしまい、耐久性に乏しかったり、タッチパネル表面に傷を生じたりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−187329号公報
【特許文献2】実用新案 第3160211号公報
【特許文献3】特開平9−306688号公報
【特許文献4】実公平4−56706号公報
【特許文献5】特開平11−135292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、タッチパネル面に対して滑りが良好で、耐久性に富み、タッチパネル表面に傷を生じず、また、持ち運びに不便のない指サックを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、繊維表面に導電層を被覆していない繊維であって比抵抗値が10000Ωcm以下の繊維を50質量%以上含む指サックである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、タッチパネル面に対して滑りが良好で、耐久性に富み、タッチパネル表面に傷を生じず、また、持ち運びに不便のない指サックを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の指サックの一例。
【図2】本発明の指サックの一例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳しく説明する。
(繊維表面に導電層を被覆していない繊維)
本発明の指サックに用いる繊維表面に導電層を被覆していない繊維は、比抵抗が10000Ωcm以下である必要があり、比抵抗が10000Ωcm以下であれば、指先程度の導電性が得られるので、静電容量型タッチパネルへの感度が良好となる。
【0015】
本発明の指サックに用いる繊維表面に導電層を被覆していない繊維の材質は、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどが挙げられるが、タッチパネル面に傷をつけにくい有機合成繊維が好ましい。
【0016】
本発明の指サックに好適に用いることができる繊維表面に導電層を被覆していない繊維としては、芯鞘型の複合繊維であることがさらに好ましく。芯鞘型の複合繊維の芯または鞘成分のいずれかに、炭化ジルコニウム、及び炭化チタン、炭化ハフニウム等の金属炭化物や、鉄、銅、アルミニウム、鉛、錫、金、銀、ニッケルなどに代表される金属類及びそれらの酸化物、硫化物、カルボニル塩、またはインジウム・スズ酸化物、アンチモン・スズ酸化物、酸化亜鉛の導電性金属酸化物及びこれらの硫酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カリ、アルミニウムの担体微粒子にコーティングした非金属系微粒子、またはファーネスブラック、チャネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックのカーボンブラックなどの導電性物質が含まれることが好ましいが、経済的に安価で粗大粒子の少ない微粒子の製造技術が工業的に確立されているカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0017】
カーボンブラックの添加方法は、繊維全体に均一となるように添加すると、得られる布帛全体にカーボンブラックに起因して繊維が黒色から灰色の色調となるために、後から所望の色に染色することが困難となる。染色性能を改善するために、カーボンブラックは、十分な導電性能が得られる量を、繊維中に局在化させて添加することが好ましい。
【0018】
本発明の指サックに好適に用いることができるカーボンブラックを含有する芯鞘複合繊維中の芯部又は鞘部のカーボンブラックの濃度は30質量%以上であることが好ましい。30質量%以上であれば、十分な導電性能を得ることができるため好ましく、また、後から布帛を染色する場合に、色相が限定されないので好ましい。また、繊維の製造段階での紡糸安定性の点から、60質量%以下の範囲が特に望ましい。
【0019】
本発明の指サックに好適に用いることができるカーボンブラックを含有する繊維については、ポリエステル繊維やナイロン繊維或いはポリプロピレン繊維などの一般的な溶融紡糸に製造される合成繊維、或いはアクリル繊維やビニロン繊維など湿式紡糸により製造される合成繊維など、一般的合成繊維を挙げることができるが、湿式紡糸方法では、芯部又は鞘部のカーボンブラック濃度を30質量%以上の濃度に上げた場合にも工業的に繊維の製造が可能である。さらに耐熱性、耐候性などの点から、アクリル繊維であることが特に好ましい。アクリル繊維の形態については特に限定されず、長繊維であっても、短繊維であってもよい。
【0020】
カーボンブラックを含有する部位については、芯鞘複合繊維の芯部又は鞘部であればよく、芯鞘複合繊維はどのような繊維断面の形状であってもよいが、繊維の表面にカーボンブラックの露出がないか、または露出が少ない芯鞘複合断面の芯部分への添加が脱落やガイドなどの磨耗が少ないこと、またタッチパネル面に対して滑りが良好で、耐久性に富み、タッチパネル表面に傷を生じないので好ましい。
【0021】
前記カーボンブラックを含有する繊維の布帛全体に占める割合は、十分な導電性能が得られ、かつ濃色系で任意染色できる範囲に設定されなければならない。十分な導電性能とは比抵抗値が10000Ωcm以下を示すことをいう。また、導電繊維に非導電繊維を混ぜることは可能であるが、誤作動防止のため、静電容量型タッチパネルは点接触では感知せず面接触で感知するようプログラムされていることが多いことから、導電繊維の混率は高いほうが良く、50質量%以上であることが必要であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは100質量%である。
【0022】
導電繊維と非導電繊維の混合方法は特に規定されないが、面接触で感知させるために好ましくは均一混合、すなわち紡績糸の場合は混紡、フィラメントの場合は混糸が好ましい。
【0023】
非導電繊維の材質も、導電繊維同様タッチパネル面に傷をつけにくいものが好ましく、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレンなどの有機合成繊維、レーヨン、キュプラに代表される半合成繊維、ウール、綿などの天然有機繊維が好ましい。
【0024】
(指サック)
本発明の指サックは、後述の条件が満たされるものであれば、不織布、織物、ニットなどどのような構造であってもよく、制電植毛(フロッキー)、合成皮革であってもかまわない。また、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などでコーティングすることも可能である。但し、あまり硬すぎるとタッチパネル面に傷をつけてしまうおそれがあるため、適度に軟らかい方が好ましい。
【0025】
本発明の指サックの厚み方向の抵抗値は、0〜10MΩの範囲内にあることが必要であり、この範囲であると、静電容量型タッチパネルが良好に感知できる。
【0026】
本発明の指サックは、指サックの指先と指腹部分に導電性繊維を使用することが好ましい。静電容量型タッチパネルは誤作動防止のために、導電性の有る部位との接触面積がある程度ないと反応しないため、導電性繊維を多く含む部位を最低でも半径10mm以上の円よりも大きい面積で含んでいることが好ましい。この要件を満たせば図2のように帯状、もしくは先端部全体、更には指サック全体が導電性繊維を多く含む部位であっても構わない。
【0027】
また、多点検知式(マルチタッチスクリーン)の場合は、人差し指と同時に親指での操作を求められることがあるため、2つの指サック状繊維構造体を図3のように結び付けておくことにより、片方だけの紛失を防ぐことができる。
【0028】
(比抵抗の測定)
導電性アクリル繊維を、正確に1cm離して銀ペースト(藤倉化成株式会社製ドータイト)により金属端子に接着した。この金属端子間に温度20℃、相対湿度40RH%の雰囲気において1000Vの直流電圧を印加し、金属端子間の抵抗値を測定した(東亜電波株式会社製SM−8210)。
【0029】
(厚み方向の抵抗値)
導電繊維または非導電繊維を用いて、番手1/34Nm 撚数610t/m Z撚りで紡績糸を作り、18ゲージ筒編地を編み立てた。この編地を、銅板(大きさ:2cm×5cm、厚さ:0.5mm)二枚で挟み込み、デジタルマルチメータ(三和電気計器株式会社製、製品名:P11)を使用して厚み方向の抵抗値を測定した。
【0030】
(起動試験)
導電繊維または非導電繊維を用いて、番手1/34Nm 撚数610t/m Z撚りで紡績糸を作り、18ゲージ筒編地を編み立てた。この編地から、直径15mmの円状に切り取った試料を作成した。さらに、前記試料を、あらかじめ軍手の人差し指腹側を直径10mmの円状に切り取った純綿軍手(5本取り 7ゲージ)の切り取った部分に穴をふさぐようなに接着剤を使用して貼り付けた。さらに、指先部分のみを切り取り試験用試料とした。前記試験用試料を試験者の右手人差し指に嵌め、スマートフォン(Apple Inc.社製 iPhone 3G 8MB)の起動画面のスライドスイッチが動くかどうかを確認した。スライドスイッチが右側まで動き、スマートフォンが起動した場合を良好と判定した。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例をあげて本発明を説明する。
(導電繊維1)
カーボンブラック(三菱化学株式会社製、製品名:ファーネスブラックMA100B)を、芯部に芯部の質量に対して、濃度32質量%で添加し、芯鞘質量比15対85である繊度3.3dtexのアクリル芯鞘型複合繊維を得た。これを、長さ38mmに切断したものを導電繊維1として用いた。なお、比抵抗値は、425Ωcmであった。
【0032】
(導電繊維2)
アクリロニトリル93.5部、アクリル酸メチル6.0部、メタリルスルフォン酸ソーダ0.5部からなるアクリロニトリル共重合体(分子量16万)を重合体濃度が30%になるようにジメチルホルムアミドに溶解し紡糸原液Aを調製した。粒子径0.2〜0.3μm、導電率0.4S/cmの粒状導電性酸化チタン(石原産業(株)製、製品名:ET−500W)90質量部を上記紡糸原液Aと同様のアクリロニトリル共重合体からなる紡糸原液100部に分散し、紡糸原液Bを調製した。
【0033】
かくして得られた紡糸原液A,Bをそれぞれ130℃に加熱した後、紡糸原液Bを芯部に、紡糸原液Aを鞘部になるように孔数400、孔直径0.2mmの芯鞘紡糸口金を用い230℃の不活性ガス中に吐出した。得られた未延伸糸を引き続き100℃の熱水中で3.75倍に延伸し、更に95℃の熱水で洗浄した。得られた繊維束を無緊張状態下に相対湿度40%、温度150℃で乾燥、緩和処理し20%収縮した。
この繊維は繊度3dtex、芯鞘比率:75/25,芯部中の導電材の含有率43体積%であった。これを、長さ38mmに切断したものを導電繊維2として用いた。なお、比抵抗値は、17800Ωcmであった。
【0034】
(非導電繊維)
非導電繊維として、単繊維繊度1.7dtex、長さ38mmのアクリル繊維ステープル(三菱レイヨン株式会社製 商品名:ボンネル 品番:H815BRE1.7T38)を用いた。なお、比抵抗値は、1000000Ωcm以上であった。
【0035】
上記の繊維を使用して、表1に示した組合せで、番手1/34Nm 撚数610t/m Z撚りで紡績糸を作り、18ゲージ筒編地を編み立てた。
【0036】
【表1】

【符号の説明】
【0037】
1 指サック
2 導電性繊維を多く含む部位
3 非導電性繊維を多く含む部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維表面に導電層を被覆していない繊維であって比抵抗値が10000Ωcm以下の繊維を50質量%以上含む指サック。
【請求項2】
厚み方向の抵抗値が0〜10MΩである請求項1に記載のある指サック。
【請求項3】
繊維表面に導電層を被覆していない繊維が、芯部にカーボンブラックを含む芯鞘型の複合繊維である請求項1または2のいずれかに記載のある指サック。
【請求項4】
複数の指サックを連結した請求項1〜3のいずれか一項に記載のある指サック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate