説明

指向性切替機能を有する音声呼出装置

【課題】従来のスピーカシステム(音声呼出装置)では、放送する者の判断のみで、スピーカの指向性を切り替えていたため、スピーカの指向性を狭くした状態で音声信号を再生しようとした場合に、通知対象者が確実に音声信号を聴取可能な状況にあるか否かを確認できず、また目的の通知対象者でない人にも不必要に用件が伝ってしまう不都合があった。
【解決手段】スピーカの指向性を狭くした状態で音声信号を再生する場合に、出力される音声信号を聴取可能な位置に人が存在しているか否かを検知する人存在検知手段と、該所定位置にいる人物が目的の通知対象者であるか否かを検知する個人識別情報読取手段と対象者判定手段を有して、所定位置に目的の通知対象者が確実に存在していることが確認できた場合に、スピーカの指向性を狭くした状態で音声信号を再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通知対象者の所在や個人を認識できた場合に、スピーカの指向性を切り替えて音声信号を報知することを可能とした音声呼出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスピーカの指向性切替機能を有する音声呼出装置(スピーカシステム)では、報知する者が通知内容を判断して、スピーカの指向性を広くするか狭くするかを切り替えていた。このことは特許文献1で示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−27586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来のスピーカシステムでは、報知する者の判断のみによって、スピーカの指向性を切り替えていたため、指向性を狭くした状態で音声を再生した場合に、通知対象者が確実に音声を聴取可能なエリアにいるか否かを確認できず、目的の通知対象者に確実に用件を伝えられなかったり、目的の通知対象者以外の人にも不必要に用件が伝わってしまうなどの不都合があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、特定の通知対象者が確実に音を聴取可能な状況であることを確認した上で、スピーカの指向性を制御する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明では、所定のエリアに再生音声を到達させるスピーカによる再生音声の指向性を切り替える機能を備えた音声呼出装置であって、前記スピーカによる再生音声の指向性を広くするか狭くするかを切り替える指向性切替手段と、前記指向性切替手段が前記スピーカによる再生音声の指向性を狭くした場合の当該再生音声を聴取可能な予め定められた聴取位置に人が存在しているか否かを検知する人存在検知手段と、を有し、前記人存在検知手段が前記聴取位置に人が存在していないことを検知している場合に前記指向性切替手段は前記スピーカによる再生音声の指向性を広くするように切り替え、前記人存在検知手段が前記聴取位置に人が存在していることを検知している場合に前記指向性切替手段は前記スピーカによる再生音声の指向性を狭くするように切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、指向性を狭くした状態で再生した音声を聴取可能な位置に人が存在するか否か判断する、また通知対象者から受信した個人識別情報と予め記憶されている個人識別情報とを照合することで、指定した通知対象者が聴取位置にいることを特定した上で、用件を報知することにより、目的の通知対象者に対して確実に用件を伝えることが可能となる。
【0008】
また超音波再生(超指向性)スピーカを用いた場合、前記指向性制御手段は、超音波信号によって音を変調するか否かを制御することにより、指向性を狭くするか広くするかを切り替えることができ、ひとつの超音波再生スピーカで指向性の切替が可能となり、スピーカシステム(音声呼出装置)を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】は、本発明による音声呼出装置のブロック構成を示す図である。
【図2】は、本発明による音声呼出装置の制御部の動作フローチャートである。
【図3】は、識別情報記憶部の記憶内容例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0011】
図1は、本発明による音声呼出装置のブロック構成を示す図である。
【0012】
本発明による音声呼出装置4には、広い指向性で音声信号を出力するスピーカ420と、狭い指向性で音声信号を出力する超音波再生スピーカ430を備え、マイク5から入力された音声信号を音声信号入力部410で受信し、指向性制御部411でスピーカ420または超音波再生スピーカ430のいずれかのスピーカを選択し、入力された音声信号を信号増幅部421または431で適切な音量に増幅して、それぞれのスピーカから放送エリア1aまたは通知エリア1bに送出する。
【0013】
音声呼出装置4の操作部402には、通知対象者を選択し呼出動作(放送)の開始を指示する複数の通知対象者選択呼出ボタンと、呼出動作の中止を指示する呼出中止ボタンを有しており、特定の通知対象者選択呼出ボタンが押下されたことを制御部401で検知すると、表示部403より通常呼出状態であることを表示する。
【0014】
また指向性制御部411に指示して、スピーカ420と信号増幅部421を有効にして、音声信号入力部410で入力した音声信号を、スピーカ420から広い指向性の音声信号2として広い放送エリア1aに出力する。
【0015】
この状態では、マイク5より入力された音声信号は、広い放送エリア1aに向けて送出されるため、報知内容は特定の通知対象者を呼び出し、狭い指向性で音声信号を出力する超音波再生スピーカ430からの音声信号を聴取可能な位置(通知エリア1b)に移動することを促す内容とする。
【0016】
尚、本音声呼出装置4によって呼び出された通知対象者は、床面や天井や壁面等の表示やあらかじめ設置された構造物等で示される超音波再生スピーカ430からの音声信号を聴取可能な位置(通知エリア1b)に移動することによって、本人以外に用件を聴取されないよう行動する。
【0017】
次に、センサ50と人存在検知部405によって、狭い指向性で音声信号を出力する超音波再生スピーカ430からの音声信号3を聴取可能な位置(通知エリア1b)に人が存在していることを検知した場合、制御部401は、受信機60と個人識別情報検知部406を有効にして、通知エリア1bにいる通知対象者が所持する個人識別情報送信機11から送信された個人識別情報を検知(受信)する。
【0018】
次に、操作部402によって選択した通知対象者と個人識別情報検知部406で検知した個人識別情報とを、図3に示す識別情報記憶部407に記憶された通知対象者選択呼出ボタンの選択肢(V4071)と個人識別情報(V4072)を元に照合し、選択した通知対象者と受信した個人識別情報とが一致するかを判断し、一致した場合は、表示部403に対して図3に示す識別情報記憶部407に記憶された対応する通知対象者名称(V4073)を表示する。
【0019】
また指向性制御部411に指示して、超音波再生スピーカ430と信号増幅部431を有効にして、音声信号入力部410で入力した音声信号を、スピーカ430から狭い指向性の音声信号3として出力する。
【0020】
尚、超音波再生スピーカ430から出力される音声信号は、信号変調部432において、音声信号入力部410で入力した音声信号を、超音波生成部433で生成された超音波信号で変調したものであり、また複数の超音波再生スピーカ430を並列に設置するケースもある。これら超音波変調された音声信号は、その特性上、極めて狭い指向性が得られる。この技術は、いわゆる「パラメトリックスピーカ」の原理を利用したものである。
【0021】
この状態では、マイク5より入力される音声信号は、狭い通知エリア1bに向けて送出されるため、報知内容は特定の通知対象者のみに伝えたい用件とする。
【0022】
尚、本実施例では、通常のスピーカ420と超音波再生スピーカ430を切り替えることによって、再生する音声信号の指向性を切り替えているが、超音波再生スピーカのみを用いて、その超音波変調を行うか否かを制御することで、再生する音声信号の指向性を切り替えてもよい。
【0023】
図2は、本発明による音声呼出装置の制御部の動作フローチャートである。
【0024】
本音声呼出装置に電源が投入されると、制御部401は、図示しないが各機能部を初期化し、指向性制御部411に指示してスピーカ420と信号増幅部421と超音波再生スピーカ430と信号増幅部431を無効とし音声信号の出力を停止し、表示部403より待機状態(呼出停止)を表示した後、待機状態(S4000)に移行する。
【0025】
待機状態(S4000)において、操作部402で特定の通知対象者を指定する通知対象者選択呼出ボタンが押下されたことを制御部401で検知すると(S4001,Y)、呼出状態の継続を監視する呼出状態監視タイマ(例として60秒)を起動し(S4002)、表示部403より通常呼出状態(広い指向性モード)であることを表示した後(S4003)、スピーカ420と信号増幅部421を有効とするよう指向性制御部411に指示して、音声入力部410から入力された音声信号を広い指向性を呈するスピーカ420から音声信号2として放送エリア1aに出力する(S4004)。
【0026】
次に、呼出状態継続監視タイマが満了せず(S4010,N)、呼出中止ボタンが押下されない状態において(S4011,N)、人存在検知部405とセンサ50によって通知エリア1bに人が存在していることを検知した場合(S4031,Y)、個人識別情報検知部406と受信機60を有効にし、通知エリア1bにいる通知対象者が所持する個人識別情報送信機11より送信された個人識別情報を検知(受信)した場合(S4032,Y)、図3に示す識別情報記憶部407に記憶された前記押下した通知対象者選択呼出ボタン(V4071)に対応する個人識別情報(V4072)と前記受信した個人識別情報とを照合し、一致したと判断した場合(S4033,Y)、指向性制御部411に指示して、スピーカ420と信号増幅部421を無効とし(S4041)、通知状態の継続を監視する通知状態監視タイマ(例として90秒)を起動し(S4042)、表示部403より対応する通知対象者名称(図3のV4073)を表示した後(S4043)、スピーカ430と信号増幅部431を有効とするよう指向性制御部411に指示して、音声入力部410から入力された音声信号を狭い指向性を呈する超音波再生スピーカ430から音声信号3として通知エリア1bに出力する(S4044)。
【0027】
次に、通知状態継続監視タイマが満了した場合(S4051,Y)、または操作部402において呼出中止ボタンが押下されたことを検知した場合(S4052,Y)、または個人識別情報検知部406が対象の個人識別情報を受信できなくなった場合には(S4053,N)、表示部403より待機状態(呼出停止)を表示した後(S4061)、スピーカ430と信号増幅部431を無効とするよう指向性制御部411に指示して、超音波再生スピーカ430からの音声信号出力を中止して(S4062)、待機状態(S4000)に戻る。
【0028】
また、ステップ4010及びステップ4011において、呼出状態継続監視タイマが満了した場合(S4010,Y)または操作部402において呼出中止ボタンが押下されたことを検知した場合(S4011,Y)には、表示部403より待機状態(呼出停止)を表示した後(S4021)、スピーカ420と信号増幅部421を無効とするよう指向性制御部411に指示して、スピーカ420からの音声信号出力を中止して(S4022)、待機状態(S4000)に戻る。
【0029】
尚、本実施例では、通知対象者選択呼出ボタンの押下によって1名の通知対象者を呼出し、用件を通知するものとして示しているが、1ないし複数の通知対象者選択呼出ボタンを押下することで、複数の通知対象者を指定するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1a 放送エリア
1b 通知エリア
2 広い指向性の音声信号
3 狭い指向性の音声信号
4 本発明による音声呼出装置
5 マイク
11 個人識別情報送信機
50 センサ
60 受信機
401 制御部
402 操作部
403 表示部
405 人存在検知部
406 個人識別情報検知部
407 識別情報記憶部
410 音声信号入力部
411 指向性制御部
420 スピーカ
421 信号増幅部
430 超音波再生スピーカ
431 信号増幅部
432 信号変調部
433 超音波生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリアに再生音声を到達させるスピーカによる再生音声の指向性を切り替える機能を備えた音声呼出装置であって、
前記スピーカによる再生音声の指向性を広くするか狭くするかを切り替える指向性切替手段と、 前記指向性切替手段が前記スピーカによる再生音声の指向性を狭くした場合の当該再生音声を聴取可能な予め定められた聴取位置に人が存在しているか否かを検知する人存在検知手段と、を有し、
前記人存在検知手段が前記聴取位置に人が存在していないことを検知している場合に前記指向性切替手段は前記スピーカによる再生音声の指向性を広くするように切り替え、前記人存在検知手段が前記聴取位置に人が存在していることを検知している場合に前記指向性切替手段は前記スピーカによる再生音声の指向性を狭くするように切り替えることを特徴とする指向性切替機能を有する音声呼出装置。
【請求項2】
請求項1記載の音声呼出装置において、
呼び出す対象者を指定する対象者指定手段と、前記聴取位置に存在している人が所持する個人識別情報を読み取る個人識別情報読取手段と、前記個人識別情報読取手段が読み取った個人識別情報は前記対象者指定手段が指定した対象者に対応しているか否かを判定する対象者判定手段と、を更に有し、
前記人存在検知手段が人の存在を検知した場合に、前記個人識別情報読取手段は前記聴取位置に存在している人が所持する個人識別情報を読み取り、前記対象者判定手段が前記読み取った個人識別情報は前記対象者指定手段が指定した対象者に対応していると判定したならば、前記指向性切替手段は前記スピーカによる再生音声の指向性を狭くするように切り替え、
前記対象者判定手段が前記読み取った個人識別情報は前記対象者指定手段が指定した対象者に対応していないと判定したならば、前記指向性切替手段は前記スピーカによる再生音声の指向性を広くするように切り替えることを特徴とする指向性切替機能を有する音声呼出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の音声呼出装置において、
前記スピーカは、超音波信号で変調された音声信号を再生することにより再生音声の指向性を狭くする機能を備えるスピーカであって、
前記指向性切替手段は、前記音声信号を前記超音波信号で変調するか否かを制御することによって指向性を広くするか狭くするかを切り替えることを特徴とする指向性切替機能を有する音声呼出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−151810(P2012−151810A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10958(P2011−10958)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】