指向性細胞増殖のためのポリマー接着性フィルム
記載される実施態様は、ポリマー接着性フィルムの第一の表面上に配置されたミクロパターンを含む、指向性細胞成長を促進する、損傷組織に適用するためのポリマー接着性フィルムに関する。該ミクロパターンは、損傷組織の細胞が、ミクロパターン内を指向性を有して成長することを許容するサイズとされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載された実施態様は、創傷を閉じるために使用されるポリマー接着性フィルムに関する。特には、迅速な創傷治癒を容易にするよう細胞増殖を導くためにミクロパターンを含むポリマー接着性フィルムに関する。
【0002】
発明の背景
感染を防止し、治癒を促進するため、縫合により創傷を閉じて、ドレッシング材または他の覆いで周囲の損傷組織を保護することが一般的である。例えば、口腔手術(すなわち、外科的な抜歯)の後の口腔組織の治癒は、通常の咀嚼の動作、会話中の舌の運動、および唾液の流れにより妨害されることがある。さらに、食物堆積物からの残骸は、カスケードの凝固を遅らせるか、または確立された凝塊を混乱させて、その結果、治癒を遅らせ、妨げる。したがって、口腔手術の後に、外科的な創傷は、治癒を促進するために傷を一次的に閉鎖するように典型的には縫合される。しかしながら、縫合技術は厄介であり、時間がかり、正しく行うためは高度の熟達を必要とする。さらに、縫合は傷を閉じて保持するための必要な強度を持つことができない場合がある。特に上で説明した正常な機能的なプロセスにより傷の治癒が妨害される口の中においてそうである。縫合を使用することの追加の欠点は、しばしば、後日、患者からそれらを取り除く必要があるということである。
【0003】
縫合に加えて、ガーゼまたは歯周部パックなどのドレッシング材は一般的に手術部位に置かれる。出血を防止し、汚染要因物から守り、口腔環境への一時的な物的障壁として作用するために、傷に圧力をかけるようにドレッシング材を適用できる。しかしながら、綿などの吸収材料で作られたドレッシング材は、飽和するので、湿り気と唾液が手術部位に達するのを防ぐ能力には限りがある。通常、そのようなドレッシング材は単に手術の後の数時間有効である。口腔環境の内部および外部の傷に使用されるドレッシング材には、たとえば以下の追加の欠点も生じる:頻繁な除去と変化の必要性;ドレッシング材を傷に接着させることの困難性;不十分な機械的性質;および適用の困難性。
【0004】
また、治癒を促進するために傷または手術部位に治療剤配合物を適用することが望ましいかもしれない。しかしながら、直接適用されるかまたは一般的に使用されるドレッシング材とともに適用された局所製剤は、すぐに湿り気と機械的作用のため失われ、さらにこれらの配合物は皮膚または粘膜内に浸透できない。ドレッシング材と組み合わせて使用される場合には、治療剤配合物はいくつかの更なる欠点が生じ、たとえば生物分解性の不足、ドレッシング材の除去の際の損傷または刺激、治療剤配合物とドレッシング材との間の共有結合または他の相互作用、さまざまな治療薬を使用することができないこと、およびドレッシング材の不十分な結合があげられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
必要であることは、以下を行うことのできる無菌ポリマー接着性フィルムである:傷または手術部位を縫合する必要性を排除すること、湿り気または残骸が部位に達するのを防止し、環境から手術部位または傷を適切に封鎖すること、任意に治療剤配合物を部位に提供すること、フィルムを取り除く必要性を排除するために生分解性であること、および指向性細胞増殖を促進してしっかりと治癒すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
記載された実施態様は、損傷した組織へ適用して指向性細胞発育(directional cell growth)を促進するようにポリマー接着性フィルムの第一の表面に配置されたミクロパターンを有するポリマー接着性フィルムに関連する。ミクロパターンは、負傷した組織の細胞の迅速かつ効率的な治癒を促進するためにミクロパターンの中の1または2つの方向に指向的に成長することを許容する大きさにされる。様々な実施態様では、ミクロパターンは、ミクロチューブ(micro−tubes)、ミクロリッジ(micro−ridges)、ミクロトラフ(micro−troughs)、またはそれの組み合わせで形成できる。
【0007】
損傷部を閉じ、および/または損傷された組織を覆うために、手術部位または他の損傷部位にポリマー接着性フィルムを適用できる。ポリマー接着性フィルムは口腔組織または内部組織などの湿った組織に接着するように配合され、水または食物残渣が損傷部位に入るのを防ぐために防水性であることができる。さらに、ポリマー接着性フィルムは、フィルムを取り除く必要性を防ぐために生分解性のであることができる。ポリマー接着性フィルムは、治癒を促進するために時間とともに損傷部位または手術部位で放出される治療剤配合物または製薬を含むことができる。ポリマー接着性フィルムは、これらに制限されるものではないが、たとえば抜歯または歯科インプラント材装着などの口腔外科手術後の、口腔組織内の手術部位を閉じるために特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの実施態様の平面図を示す。
【図2】図2は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの2番目の実施態様の平面図を示す。
【図3】図3は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの3番目の実施態様の平面図を示す。
【図4】図4は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの3番目の実施態様の部分の斜視図を示す。
【図5】図5は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの4番目の実施態様の断面図を示す。
【図6】図6は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの5番目の実施態様の断面図を示す。
【図7】図7は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの6番目の実施態様の断面図を示す。
【図8】図8は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの7番目の実施態様の断面図を示す。
【図9】図9は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの8番目の実施態様の断面図を示す。
【図10】図10は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの9番目の実施態様の断面図を示す。
【図11】図11は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの10番目の実施態様の断面図を示す。
【図12】図12は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの11番目の実施態様の断面図を示す。
【図13】図13は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの12番目の実施態様の断面図を示す。
【図14】図14は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの13番目の実施態様の平面図を示す。
【図15】図15は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの14番目の実施態様の平面図を示す。
【図16】図16は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの15番目の実施態様の斜視図を示す。
【0009】
発明の詳細な説明
外科的切開と他の損傷は一次治癒(primary intention)または二次治癒(secondary intention)で回復できる。一次治癒による回復では、すべての組織が集められ、機械的手段によって適所で保たれる。対照的に、二次治癒による回復では、損傷部位の縁が完全に近接(閉鎖)されず、損傷部位は部分的に開いた状態におかれる。損傷部位は回復するが、明瞭に異なる非常に遅いプロセス(すなわち、下部から上部へ向けて回復する)で回復する。一次治癒による回復は、二次治癒による回復よりも好ましい。なぜなら、感染のリスクを最低限にし、瘢痕組織の形成を抑えて、治癒の間の不快感を最小にして、より速い治癒を可能にするからである。一次治癒で回復するのを容易にするために様々な組織における損傷部位の端を結合するのに本明細書に記載された高分子接着性フィルムの実施態様が使用でき、さらにポリマー接着性フィルムの第一の表面に配置されたミクロパターンが、指向性の細胞発育を促進する。
【0010】
さらに、例えば、ギャップが完全に閉じることができないくらい大きい抜歯の場合のような、部位の縁を一緒にすることができない手術部位または損傷部位を閉じるための使用に本明細書に記載されるポリマー接着性フィルムが特に有用である。この場合、ポリマー接着性フィルムにおけるミクロパターンが部位の先端を横切って指向性の細胞発育を促進できるので、部位のすべての組織を集めることができなくても、該部位は一次治癒を受けているように振る舞う。したがって、部位は上から下方向(top down)へ、および下から上方向(bottom up)へ治癒し、速く回復するのが容易になる。
【0011】
添付される図面を参照して実施態様の実施例について説明する。同一参照番号が図面中の同様の特徴に一貫して使用される。図1はポリマー接着性フィルム100の実施態様の平面図を示している。高分子接着性フィルム100は、ポリマー接着性フィルム100の一面の上に配置されたミクロパターン部分104と非パターン部分102を含んでいる。使用時には、ミクロパターン部分104は手術部位または損傷部位の上に直接配置されるだろう。そして、非パターン部分102は部位のどちらかの側面に配置されるだろう。以下でさらに詳細に説明するように、ミクロパターン部分104のミクロパターンは、よりはやく損傷を治癒するためにミクロパターンに沿った指向性の細胞増殖を容易にするように配置される。
【0012】
高分子接着性フィルム100は、フィルム100が適用される具体的組織に使用するのに適したポリマーで形成できる。例えば、ポリマーは、生物学的適合性や生物分解性、使用される具体的組織と適合する機械的な伸展性、湿潤または乾燥条件での強い接着性、最小量の炎症反応の惹起、治療剤もしくは医薬品を送達する能力などの様々な組み合わせを含むことができる。ポリマー接着性フィルムは、口腔または内部の粘膜組織などのような湿潤組織に接着することが知られているポリマーから配合することができ、水または食物残渣が損傷部位に入るのを防ぐために防水性であることができる。
【0013】
1つの実施態様では、ポリマー接着性フィルム100を形成するのに使用されるポリマーとしては、グリセロールと二酸の生分解性の縮合重合体を含むことができる。その例は米国特許出願第2003/0118692に記載されており、その開示全体はここに参考として援用される。例えば、高分子接着性フィルム100は、ポリ(グリセロールセバケート)、低いアクリル分のポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート、高いアクリル分のポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート、ポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート−コ−ポリ(エチレングリコール)ネットワーク、ポリ(グリセロールマロネート)、ポリ(グリセロールスクシネート)、ポリ(グリセロールグルタレート)、ポリ(グリセロールアジペート)、ポリ(グリセロールピメレート)、ポリ(グリセロールスベレート)、ポリ(グリセロールアゼレート)、グリセロールと10以上、15以上、20以上、または25以上の炭素原子を有する二酸のポリマー、グリセロールと非脂肪族二酸のポリマー、およびそれらの混合物から作ることができる。様々な実施態様では、アミンおよび芳香族基、たとえばテレフタル酸やカルボキシフェノキシプロパンなどを炭素鎖に組み入れることができる。また、二酸は、架橋に利用できる部位の数を増加するためにアミンおよびヒドロキシルなどの置換基を含むことができ、ポリマーの生物的性質を変更するためにアミノ酸および他のバイオ分子を含むことができ、またポリマー内の鎖間相互作用を変更するために芳香族基、脂肪族基、およびハロゲン原子を含むことができる。
【0014】
ポリマーはさらにバイオ分子、親水性基、疎水性基、非蛋白質有機基、酸、低分子化合物、生物活性薬剤、徐放性治療薬、医薬品、またはそれらの組み合わせを含むことができる。ポリマーは、高分子接着性フィルム100が速やかな治癒を容易にするためにカバーするように設計されている組織と適合性の細胞でシードされることができる。
【0015】
高分子接着性フィルム100は、例えばスピンコーティングで、高分子接着性フィルム100が適用される組織と共有結合性架橋を促進するために、アルデヒド官能性を有する酸化型デキストラン(DXTA)の薄膜層でコーティングすることができる。DXTAの端末のアルデヒド基は蛋白質類におけるアミン基と反応してイミンを形成し、一方DXTAのアルデヒド基は高分子接着性フィルム100の表面のグリセロールサブユニットからの遊離ヒドロキシル基とヘミアセタールを形成する。DXTAの使用は、口腔または内部組織のような湿潤環境でポリマー接着性フィルム100の組織への結合を向上させるのに特に有用である。
【0016】
フィルム100の意図される用途に応じて、高分子接着性フィルム100のミクロパターン部分104と非パターン部分102の相対幅を様々な長さに調整できる。例えば、図2はミクロパターン部分204がポリマー接着性フィルム200の全表面に及ぶ高分子接着性フィルム200である2番目の実施態様の平面図を示している。さらに、具体的な用途のために必要に応じて、ポリマー接着性フィルム100、200の大きさを変更できる。例えば、フィルムの強度と柔軟性の間の適切なバランスをとるように、本明細書に記載された様々な実施態様のポリマー接着性フィルムの全厚を調整できる。
【0017】
図3は指向性の細胞増殖を促進するためのミクロパターン部分304と、ポリマー接着性フィルム300の組織への結合を増加させるためのナノパターン部分306を含んでいる高分子接着性フィルム300である3番目の実施態様の平面図を示している。図4はナノパターン部分306の部分の斜視図を示している。図4に示されるように、ナノパターン部分306は、ポリマー接着性フィルム300のナノパターン部分306の表面に配置されたピラー408の配列を含んでいる。ピラー408は、フィルム300が組織の平坦ではない表面に追従して、界面接触を最大にし、接着を向上させることにより、ポリマー接着性フィルム300の組織への接着を向上させる。
【0018】
ナノパターン部分306のピラー408を製造するのに使用される型は、リソグラフィーと反応性イオンエッチングの組み合わせを使用してシリコン基板をパターニングして型を作ることによって、調製することができる。次に、ポリマー接着性フィルム300を型の上にキャスティングし、接着性フィルム300を硬化することによって、ピラー408を形成できる。硬化は、具体的なポリマーに応じて、例えば紫外線光または熱を使用して行うことができる。チップ幅w、高さh、およびピッチpをはじめとするピラー408の大きさは、高分子接着性フィルム300が接着されることになっている組織に応じて変えることができる。1つの実施態様では、ピラー408は約100ナノメートルからlミクロンのチップ幅wと、約0.8ミクロンから約3ミクロンのピラーの高さhを有することができる。上記のように、ポリマー接着性フィルム300の接着性をさらに改良するために、DXTAの層でナノパターン部分306をコーティングできる。
【0019】
図5は、ポリマー層502と、ポリマー層502の片面の上に配置されたミクロチューブ506のミクロパターン部分504から作られたポリマー接着性フィルム500である4番目の実施態様の断面図を示す。図1−3に示された実施態様である高分子接着性フィルム100、200、300のミクロパターン部分104、204、304として、接着性フィルム500のミクロパターン部分504を取り入れることができる。図5に示されたように、ミクロチューブ506は密に充填され、修復されるべき組織の細胞がミクロチューブ506を通って指向性に育つようにされる。生分解性重合体接着性フィルム500が崩壊するとき、細胞はフィルム500により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0020】
ミクロチューブ506は、炭素ミクロチューブまたは任意の他のタイプのミクロチューブであることができ、それらは商業的に利用でき、好ましくは精製される。たとえばシングルウォールのミクロ−チューブもしくはナノチューブ、マルチウォールのミクロ−チューブもしくはナノチューブ、竹ミクロ−チューブもしくはナノチューブ、および同様のものであることができる。炭素またはその他の材料でミクロチューブ506を形成でき、生分解性であることができる。
【0021】
ミクロチューブ506の直径Dは、高分子接着性フィルム500が接着される損傷箇所または部位を囲む細胞のタイプに適合するような寸法にされる。ミクロチューブ506の直径Dは、最低限、少なくとも1つの生体細胞または少なくとも1つの細胞プロセスのサイズとされ、または細胞群の組み合わされたサイズに適合するような寸法にされる。様々な実施態様では、ミクロチューブ506の直径Dは、約0.5μmから100μmの間、約100μmより大きいか、または約10μmから約40μmの間である。また、希望の用途に応じて、ミクロチューブ506の長さは異なることができる。様々な実施態様では、ミクロチューブ506はミクロパターン領域104、204、304のいっぱいに伸びることができる。他の実施態様では、ミクロチューブ506は、ミクロパターン領域104、204、304の幅より短いことができ、お互いに重ね合わされることができる。
【0022】
1つの実施態様では、ポリマー層502を例えば、キャスティングまたは押出により形成することによって、高分子接着性フィルム500を形成できる。次に、ポリマー層502が半固体相にある間に、ミクロチューブ506をポリマー層502に、例えば、ローリング、スプレー、または浸積により適用することができる。ついで、ポリマ層502を一方向にこするかまたは櫛でといて(combed)、ポリマー分子を同じ方向に並べることができる。ミクロチューブ506とポリマー分子の物理的接触は、ほぼ同じ方向にミクロチューブ506を並べる。次に、例えば紫外線光もしくは熱によりポリマー層502を硬化して、ミクロチューブ506の方向を固定する。また、ミクロチューブ506のより大きい部分を露出し、細胞がチューブを通してより容易に成長できるように、ポリマー層502をエッチングバックする追加の段階を行うことができる。
【0023】
図6は、ポリマー層602と、ポリマー層602の片面の上に配置されたミクロチューブ506のミクロパターン部分604から作られたポリマー接着性フィルム600である5番目の実施態様の断面図を示す。高分子接着性フィルム600は図5の高分子接着性フィルム500と同様であるが、ポリマー接着性フィルム600のミクロチューブ506が離れて配置され、修復されるべき組織の細胞がミクロチューブ506を通してと、ミクロチューブ506の間で指向性に成長される。生分解性重合体接着性フィルム600が崩壊するとき、細胞は、フィルム600により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0024】
図7は、ポリマー層702と、ポリマー層702の片面の上に配置されたミクロチューブ506aと506bのミクロパターン部分704から作られたポリマー接着性フィルム700である6番目の実施態様の断面図を示す。高分子接着性フィルム700は図5の高分子接着性フィルム500と同様であるが、ミクロチューブ506aおよび506bは、第一の方向に配置されたミクロチューブ506aの第一の層と、第一の方向と直角な方向に配置されたミクロチューブ506bの第2の層を含む。直角なミクロチューブ506aおよび506bは2つの方向に指向性の細胞増殖を容易にするだろう。生分解性重合体接着性フィルム700が崩壊するとき、細胞はフィルム700により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0025】
1つの実施態様では、ポリマー層702を形成することによって、高分子接着性フィルム700を形成できる。次に、ポリマー層702が半固体相にある間に、ミクロチューブ506aをポリマー層702に適用できる。ついで、ポリマー層702を一方向にこするかまたは櫛でといて、ポリマー分子とミクロチューブ506aを同じ方向に並べることができる。直角な方向に配向するポリマーとミクロチューブ506bの第2の層を、第一のポリマー層702の上に配置することができる。次に、ポリマー層702を硬化することができる。そして、ミクロチューブ506a、506bの、より大きい部分を露出するためにポリマー層702をエッチングバックできる。
【0026】
図8は、ポリマー層802と、ポリマー層802の片面の上に配置されたミクロリッジ806で作られたミクロパターン部分804から作られたポリマー接着性フィルム800である7番目の実施態様の断面図を示す。図1−3に示された実施態様である高分子接着性フィルム100、200、300のミクロパターン部分104、204、304として、接着性フィルム800のミクロパターン部分804を取り入れることができる。ミクロリッジ806は、お互いに平行に配置されて、ミクロパターン部分104、204、304の長さ方向全体にわたり延びることができる。高分子接着性フィルム800が損傷部位または手術部位に当てられるとき、ミクロリッジ806は、ミクロリッジ806の間で損傷部位または手術部位を横切って(直角に)細胞発育を導くだろう。生分解性重合体接着性フィルム800が崩壊するとき、細胞は、フィルム800により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0027】
様々な幾何的または不規則形状にミクロリッジ806を形成できる。図8に示されるように、ミクロリッジ806はポリマー層802から延びる半円として断面を形成することができる。図9は、ポリマー層902と、角形の断面形状を有するミクロリッジ906で作られたミクロパターン部分904から作られたポリマー接着性フィルム900である8番目の実施態様の断面図を示す。図10は、ポリマー層1002と、三角形の断面形状を有するミクロリッジ1006で作られたミクロパターン部分1004から作られたポリマー接着性フィルム1000である9番目の実施態様の断面図を示す。他の様々な実施態様では、ミクロリッジは他の断面形状を持つことができ、たとえば部分的な楕円形、弧、台形、正方形、不規則な多角体、およびそれらの組み合わせなどであることができる。
【0028】
高分子接着性フィルム800、900、1000が接着される傷または部位を囲む細胞のタイプに対応して、ミクロリッジ806、906、1006の間のスペーシングSの幅を変化することができる。ミクロリッジ806、906、1006の間のスペーシングSは、最低限、少なくとも1つの生体細胞または少なくとも1つの細胞プロセスのサイズとされ、または細胞群の組み合わされたサイズに適合するような寸法にされる。様々な実施態様では、ミクロリッジ806、906、1006の間のスペーシングSは、約0.5μmから約100μm、約100μmより大きく、または約10μmから約40μmの間であることができる。用途によって、ミクロリッジ806、906、1006の幅Wと高さHを変えることができる。
【0029】
1つの実施態様では、ポリマー層802、902、1002を、例えば、キャスティングまたは押出により形成することによって、高分子接着性フィルム800、900、1000を形成できる。次に、ポリマー層802、902、1002が半固体相にある間に、例えば、ポリマー層802、902、1002に雌型を適用することによってポリマー層802、902、1002上にミクロリッジ806、906、1006を形成できる。
次にポリマー層802、902、1002を、例えば紫外線光または熱で硬化することができる。様々な実施態様では、例えば、フォトレジストおよびエッチングプロセスのような他の方法でミクロリッジ806、906、1006を形成できる。
【0030】
図11は、ポリマー層1102と、ポリマー層1102の片面の上に配置されたミクロトラフ1106で作られたミクロパターン部分1104から作られたポリマー接着性フィルム1100である10番目の実施態様の断面図を示す。図1−3に示された実施態様である高分子接着性フィルム100、200、300のミクロパターン部分104、204、304として、接着性フィルム1100のミクロパターン部分1104を取り入れることができる。ミクロトラフ1106は、お互いに平行に配置されて、ミクロパターン部分104、204、304の長さ方向に延びることができる。高分子接着性フィルム1100が損傷または手術部位に当てられるとき、ミクロトラフ1106は、ミクロトラフ1106の間を、損傷または手術部位を横切る直角な方向への細胞発育を指向するだろう。生分解性重合体接着性フィルム1100が崩壊するとき、細胞は、フィルム1100により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0031】
様々な幾何学的形状または不規則形状でミクロトラフ1106を形成できる。図11に示されたように、ミクロトラフ1106はポリマー層1102に延びる半円としての断面形状を形成することができる。図12は、ポリマー層1202と、角形の断面形状を有するミクロトラフ1206で作られたミクロパターン部分1204から作られたポリマー接着性フィルム1200である11番目の実施態様の断面図を示す。図13は、ポリマー層1302と、三角形の断面形状を有するミクロトラフ1306で作られたミクロパターン部分1304から作られたポリマー接着性フィルム1300である12番目の実施態様の断面図を示す。他の様々な実施態様では、ミクロトラフは他の横断面形状を持つことができ、たとえば部分的な楕円形、弧、台形、正方形、不規則な多角体、およびそれらの組み合わせなどであることができる。
【0032】
ミクロトラフ1106、1206、1306の幅Wは、高分子接着性フィルム1100、1200、1300が接着されることになっている損傷部位または部位を取り囲む細胞のタイプに応じて変えることができる。ミクロトラフ1106、1206、1306の幅Wは、最低限、少なくとも1つの生体細胞または少なくとも1つの細胞プロセスのサイズとされ、または細胞群の組み合わされたサイズに適合するような寸法にされる。様々な実施態様では、ミクロトラフ1106、1206、1306の間の幅Wは、約0.5μmから約130μmの間、約130μmより大きいか、または約13μmから約40μmの間である。ミクロトラフ1106、1206、1306の間のスペーシングSおよび高さHは用途に応じて変化することができる。
【0033】
1つの実施態様では、ポリマー接着性フィルム1100、1200、1300を、例えば、キャスティングまたは押出により形成することによって形成できる。次に、ポリマー層1102、1202、1302が半固体相にある間に、例えば、ポリマー層1102、1202、1302に雄型を適用することによってミクロトラフ1106、1206、1306をポリマー層1102、1202、1302の上に形成できる。ポリマー層1102、1202、1302は、たとえば紫外線または熱により硬化することができる。種々の実施例においては、ミクロトラフ1106、1206、1306は他の方法、たとえばフォトレジストまたはエッチングプロセスにより形成することができる。
【0034】
図14は、ポリマー層1402の上に、互いに平行に形成された多くのミクロ構造1406を有する、ポリマー接着性フィルム1400である13番目の実施態様の平面図を示す。ミクロ構造1406は、それぞれ図8−13に示されたミクロリッジ806,906、1006、またはミクロトラフ1106、1206、1306であることができる。図14の実施態様のミクロ構造1406は直線の側面を有するものとして示されているが、種々の実施例においては、ミクロ構造は波打っていてもよく、とがっていてもよく、もしくは他の形状でも良い。
【0035】
図15は、ポリマー層1502の上に配置された、多数の第一のミクロ構造1506と、それと交叉する多数の第二のミクロ構造1506bを含む、ポリマー接着性フィルム1500である、14番目の実施態様の平面図を示す。第一のミクロ構造1506aは互いに平行に配置され、第二のミクロ構造1506bと直角にされる。ミクロ構造1506aおよび1506bは、それぞれ図11−13に示されたミクロトラフ1106、1206、1306であることができる。直角に交叉するミクロ構造1506aおよび1506bは、ポリマー接着性フィルム1500が適用される損傷部位または手術部位に対して、平行方向および直角方向の二方向での細胞成長を許容する。
【0036】
図16は、ポリマー層1602と、ポリマー層1602の片面の上に配置された、ミクロリッジ1606とナノパターンのピラー1608の組み合わせで作られるミクロパターン部分1604から作られたポリマー接着性フィルム1600である15番目の実施態様の斜視図を示す。ポリマー接着性フィルム1600のミクロパターン部分1604は、それぞれ図1−3に示された実施態様のポリマー接着性フィルム100、200、300のミクロパターン部分104、204、304として組み込まれることができる。ミクロリッジ1606は互いに平行に配置することができ、ミクロパターン部分104、204、304の長さ方向に延びることができる。ミクロリッジ1606は様々な幾何学形状または不規則な形状に形成することができ、それぞれ図8、9、10に記載したミクロリッジ806、906、1006として賦形し、間隔を開けることができる。ピラー1608は、図4に記載されたピラー408の一部として、またはそれの全体として形成されることができる。
【0037】
ポリマー接着性フィルム1600が損傷部位または手術部位に適用される時、ミクロリッジ1606は、ミクロリッジ1606の間、および損傷部位または手術部位を横切り、すなわち損傷部位または手術部位と直角な方向にも細胞を指向性を有して成長させ、またナノパターンのピラー1608はポリマー接着性フィルム1600の損傷部位または手術切開部位への接着を向上させる。生分解性重合体接着性フィルム1600が崩壊するとき、細胞はフィルム1600により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0038】
1つの実施態様では、ポリマー接着性フィルム1600は、例えば、キャスティングまたは押出によりポリマー層1602を成形することによって形成できる。次に、ポリマー層1602が半固体相にある間に、例えば、ポリマー層1602に雌微細型を適用することによってミクロリッジ1606およびピラー1608をポリマー層1602の上に形成できる。ポリマー層1602は、たとえば紫外線または熱により硬化することができる。
【0039】
具体的に記載された実施態様および方法の変更と改良は、特許請求の範囲の請求項によってのみ制限される本発明の精神を逸脱することなく行うことができる。例えば、接頭語「ミクロ」と「ナノ」が明細書と請求項の中の様々な場所で使用されるが、様々な実施態様では、ミクロについて記載された特徴がナノスケールで形成されることができ、その逆もまた同様であると理解されるべきである。さらに、様々な実施態様の特徴は、ある特定の実施態様で組み合わされることができると想定される。
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載された実施態様は、創傷を閉じるために使用されるポリマー接着性フィルムに関する。特には、迅速な創傷治癒を容易にするよう細胞増殖を導くためにミクロパターンを含むポリマー接着性フィルムに関する。
【0002】
発明の背景
感染を防止し、治癒を促進するため、縫合により創傷を閉じて、ドレッシング材または他の覆いで周囲の損傷組織を保護することが一般的である。例えば、口腔手術(すなわち、外科的な抜歯)の後の口腔組織の治癒は、通常の咀嚼の動作、会話中の舌の運動、および唾液の流れにより妨害されることがある。さらに、食物堆積物からの残骸は、カスケードの凝固を遅らせるか、または確立された凝塊を混乱させて、その結果、治癒を遅らせ、妨げる。したがって、口腔手術の後に、外科的な創傷は、治癒を促進するために傷を一次的に閉鎖するように典型的には縫合される。しかしながら、縫合技術は厄介であり、時間がかり、正しく行うためは高度の熟達を必要とする。さらに、縫合は傷を閉じて保持するための必要な強度を持つことができない場合がある。特に上で説明した正常な機能的なプロセスにより傷の治癒が妨害される口の中においてそうである。縫合を使用することの追加の欠点は、しばしば、後日、患者からそれらを取り除く必要があるということである。
【0003】
縫合に加えて、ガーゼまたは歯周部パックなどのドレッシング材は一般的に手術部位に置かれる。出血を防止し、汚染要因物から守り、口腔環境への一時的な物的障壁として作用するために、傷に圧力をかけるようにドレッシング材を適用できる。しかしながら、綿などの吸収材料で作られたドレッシング材は、飽和するので、湿り気と唾液が手術部位に達するのを防ぐ能力には限りがある。通常、そのようなドレッシング材は単に手術の後の数時間有効である。口腔環境の内部および外部の傷に使用されるドレッシング材には、たとえば以下の追加の欠点も生じる:頻繁な除去と変化の必要性;ドレッシング材を傷に接着させることの困難性;不十分な機械的性質;および適用の困難性。
【0004】
また、治癒を促進するために傷または手術部位に治療剤配合物を適用することが望ましいかもしれない。しかしながら、直接適用されるかまたは一般的に使用されるドレッシング材とともに適用された局所製剤は、すぐに湿り気と機械的作用のため失われ、さらにこれらの配合物は皮膚または粘膜内に浸透できない。ドレッシング材と組み合わせて使用される場合には、治療剤配合物はいくつかの更なる欠点が生じ、たとえば生物分解性の不足、ドレッシング材の除去の際の損傷または刺激、治療剤配合物とドレッシング材との間の共有結合または他の相互作用、さまざまな治療薬を使用することができないこと、およびドレッシング材の不十分な結合があげられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
必要であることは、以下を行うことのできる無菌ポリマー接着性フィルムである:傷または手術部位を縫合する必要性を排除すること、湿り気または残骸が部位に達するのを防止し、環境から手術部位または傷を適切に封鎖すること、任意に治療剤配合物を部位に提供すること、フィルムを取り除く必要性を排除するために生分解性であること、および指向性細胞増殖を促進してしっかりと治癒すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
記載された実施態様は、損傷した組織へ適用して指向性細胞発育(directional cell growth)を促進するようにポリマー接着性フィルムの第一の表面に配置されたミクロパターンを有するポリマー接着性フィルムに関連する。ミクロパターンは、負傷した組織の細胞の迅速かつ効率的な治癒を促進するためにミクロパターンの中の1または2つの方向に指向的に成長することを許容する大きさにされる。様々な実施態様では、ミクロパターンは、ミクロチューブ(micro−tubes)、ミクロリッジ(micro−ridges)、ミクロトラフ(micro−troughs)、またはそれの組み合わせで形成できる。
【0007】
損傷部を閉じ、および/または損傷された組織を覆うために、手術部位または他の損傷部位にポリマー接着性フィルムを適用できる。ポリマー接着性フィルムは口腔組織または内部組織などの湿った組織に接着するように配合され、水または食物残渣が損傷部位に入るのを防ぐために防水性であることができる。さらに、ポリマー接着性フィルムは、フィルムを取り除く必要性を防ぐために生分解性のであることができる。ポリマー接着性フィルムは、治癒を促進するために時間とともに損傷部位または手術部位で放出される治療剤配合物または製薬を含むことができる。ポリマー接着性フィルムは、これらに制限されるものではないが、たとえば抜歯または歯科インプラント材装着などの口腔外科手術後の、口腔組織内の手術部位を閉じるために特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの実施態様の平面図を示す。
【図2】図2は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの2番目の実施態様の平面図を示す。
【図3】図3は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの3番目の実施態様の平面図を示す。
【図4】図4は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの3番目の実施態様の部分の斜視図を示す。
【図5】図5は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの4番目の実施態様の断面図を示す。
【図6】図6は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの5番目の実施態様の断面図を示す。
【図7】図7は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの6番目の実施態様の断面図を示す。
【図8】図8は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの7番目の実施態様の断面図を示す。
【図9】図9は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの8番目の実施態様の断面図を示す。
【図10】図10は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの9番目の実施態様の断面図を示す。
【図11】図11は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの10番目の実施態様の断面図を示す。
【図12】図12は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの11番目の実施態様の断面図を示す。
【図13】図13は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの12番目の実施態様の断面図を示す。
【図14】図14は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの13番目の実施態様の平面図を示す。
【図15】図15は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの14番目の実施態様の平面図を示す。
【図16】図16は本明細書に記載されたポリマー接着性フィルムの15番目の実施態様の斜視図を示す。
【0009】
発明の詳細な説明
外科的切開と他の損傷は一次治癒(primary intention)または二次治癒(secondary intention)で回復できる。一次治癒による回復では、すべての組織が集められ、機械的手段によって適所で保たれる。対照的に、二次治癒による回復では、損傷部位の縁が完全に近接(閉鎖)されず、損傷部位は部分的に開いた状態におかれる。損傷部位は回復するが、明瞭に異なる非常に遅いプロセス(すなわち、下部から上部へ向けて回復する)で回復する。一次治癒による回復は、二次治癒による回復よりも好ましい。なぜなら、感染のリスクを最低限にし、瘢痕組織の形成を抑えて、治癒の間の不快感を最小にして、より速い治癒を可能にするからである。一次治癒で回復するのを容易にするために様々な組織における損傷部位の端を結合するのに本明細書に記載された高分子接着性フィルムの実施態様が使用でき、さらにポリマー接着性フィルムの第一の表面に配置されたミクロパターンが、指向性の細胞発育を促進する。
【0010】
さらに、例えば、ギャップが完全に閉じることができないくらい大きい抜歯の場合のような、部位の縁を一緒にすることができない手術部位または損傷部位を閉じるための使用に本明細書に記載されるポリマー接着性フィルムが特に有用である。この場合、ポリマー接着性フィルムにおけるミクロパターンが部位の先端を横切って指向性の細胞発育を促進できるので、部位のすべての組織を集めることができなくても、該部位は一次治癒を受けているように振る舞う。したがって、部位は上から下方向(top down)へ、および下から上方向(bottom up)へ治癒し、速く回復するのが容易になる。
【0011】
添付される図面を参照して実施態様の実施例について説明する。同一参照番号が図面中の同様の特徴に一貫して使用される。図1はポリマー接着性フィルム100の実施態様の平面図を示している。高分子接着性フィルム100は、ポリマー接着性フィルム100の一面の上に配置されたミクロパターン部分104と非パターン部分102を含んでいる。使用時には、ミクロパターン部分104は手術部位または損傷部位の上に直接配置されるだろう。そして、非パターン部分102は部位のどちらかの側面に配置されるだろう。以下でさらに詳細に説明するように、ミクロパターン部分104のミクロパターンは、よりはやく損傷を治癒するためにミクロパターンに沿った指向性の細胞増殖を容易にするように配置される。
【0012】
高分子接着性フィルム100は、フィルム100が適用される具体的組織に使用するのに適したポリマーで形成できる。例えば、ポリマーは、生物学的適合性や生物分解性、使用される具体的組織と適合する機械的な伸展性、湿潤または乾燥条件での強い接着性、最小量の炎症反応の惹起、治療剤もしくは医薬品を送達する能力などの様々な組み合わせを含むことができる。ポリマー接着性フィルムは、口腔または内部の粘膜組織などのような湿潤組織に接着することが知られているポリマーから配合することができ、水または食物残渣が損傷部位に入るのを防ぐために防水性であることができる。
【0013】
1つの実施態様では、ポリマー接着性フィルム100を形成するのに使用されるポリマーとしては、グリセロールと二酸の生分解性の縮合重合体を含むことができる。その例は米国特許出願第2003/0118692に記載されており、その開示全体はここに参考として援用される。例えば、高分子接着性フィルム100は、ポリ(グリセロールセバケート)、低いアクリル分のポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート、高いアクリル分のポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート、ポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート−コ−ポリ(エチレングリコール)ネットワーク、ポリ(グリセロールマロネート)、ポリ(グリセロールスクシネート)、ポリ(グリセロールグルタレート)、ポリ(グリセロールアジペート)、ポリ(グリセロールピメレート)、ポリ(グリセロールスベレート)、ポリ(グリセロールアゼレート)、グリセロールと10以上、15以上、20以上、または25以上の炭素原子を有する二酸のポリマー、グリセロールと非脂肪族二酸のポリマー、およびそれらの混合物から作ることができる。様々な実施態様では、アミンおよび芳香族基、たとえばテレフタル酸やカルボキシフェノキシプロパンなどを炭素鎖に組み入れることができる。また、二酸は、架橋に利用できる部位の数を増加するためにアミンおよびヒドロキシルなどの置換基を含むことができ、ポリマーの生物的性質を変更するためにアミノ酸および他のバイオ分子を含むことができ、またポリマー内の鎖間相互作用を変更するために芳香族基、脂肪族基、およびハロゲン原子を含むことができる。
【0014】
ポリマーはさらにバイオ分子、親水性基、疎水性基、非蛋白質有機基、酸、低分子化合物、生物活性薬剤、徐放性治療薬、医薬品、またはそれらの組み合わせを含むことができる。ポリマーは、高分子接着性フィルム100が速やかな治癒を容易にするためにカバーするように設計されている組織と適合性の細胞でシードされることができる。
【0015】
高分子接着性フィルム100は、例えばスピンコーティングで、高分子接着性フィルム100が適用される組織と共有結合性架橋を促進するために、アルデヒド官能性を有する酸化型デキストラン(DXTA)の薄膜層でコーティングすることができる。DXTAの端末のアルデヒド基は蛋白質類におけるアミン基と反応してイミンを形成し、一方DXTAのアルデヒド基は高分子接着性フィルム100の表面のグリセロールサブユニットからの遊離ヒドロキシル基とヘミアセタールを形成する。DXTAの使用は、口腔または内部組織のような湿潤環境でポリマー接着性フィルム100の組織への結合を向上させるのに特に有用である。
【0016】
フィルム100の意図される用途に応じて、高分子接着性フィルム100のミクロパターン部分104と非パターン部分102の相対幅を様々な長さに調整できる。例えば、図2はミクロパターン部分204がポリマー接着性フィルム200の全表面に及ぶ高分子接着性フィルム200である2番目の実施態様の平面図を示している。さらに、具体的な用途のために必要に応じて、ポリマー接着性フィルム100、200の大きさを変更できる。例えば、フィルムの強度と柔軟性の間の適切なバランスをとるように、本明細書に記載された様々な実施態様のポリマー接着性フィルムの全厚を調整できる。
【0017】
図3は指向性の細胞増殖を促進するためのミクロパターン部分304と、ポリマー接着性フィルム300の組織への結合を増加させるためのナノパターン部分306を含んでいる高分子接着性フィルム300である3番目の実施態様の平面図を示している。図4はナノパターン部分306の部分の斜視図を示している。図4に示されるように、ナノパターン部分306は、ポリマー接着性フィルム300のナノパターン部分306の表面に配置されたピラー408の配列を含んでいる。ピラー408は、フィルム300が組織の平坦ではない表面に追従して、界面接触を最大にし、接着を向上させることにより、ポリマー接着性フィルム300の組織への接着を向上させる。
【0018】
ナノパターン部分306のピラー408を製造するのに使用される型は、リソグラフィーと反応性イオンエッチングの組み合わせを使用してシリコン基板をパターニングして型を作ることによって、調製することができる。次に、ポリマー接着性フィルム300を型の上にキャスティングし、接着性フィルム300を硬化することによって、ピラー408を形成できる。硬化は、具体的なポリマーに応じて、例えば紫外線光または熱を使用して行うことができる。チップ幅w、高さh、およびピッチpをはじめとするピラー408の大きさは、高分子接着性フィルム300が接着されることになっている組織に応じて変えることができる。1つの実施態様では、ピラー408は約100ナノメートルからlミクロンのチップ幅wと、約0.8ミクロンから約3ミクロンのピラーの高さhを有することができる。上記のように、ポリマー接着性フィルム300の接着性をさらに改良するために、DXTAの層でナノパターン部分306をコーティングできる。
【0019】
図5は、ポリマー層502と、ポリマー層502の片面の上に配置されたミクロチューブ506のミクロパターン部分504から作られたポリマー接着性フィルム500である4番目の実施態様の断面図を示す。図1−3に示された実施態様である高分子接着性フィルム100、200、300のミクロパターン部分104、204、304として、接着性フィルム500のミクロパターン部分504を取り入れることができる。図5に示されたように、ミクロチューブ506は密に充填され、修復されるべき組織の細胞がミクロチューブ506を通って指向性に育つようにされる。生分解性重合体接着性フィルム500が崩壊するとき、細胞はフィルム500により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0020】
ミクロチューブ506は、炭素ミクロチューブまたは任意の他のタイプのミクロチューブであることができ、それらは商業的に利用でき、好ましくは精製される。たとえばシングルウォールのミクロ−チューブもしくはナノチューブ、マルチウォールのミクロ−チューブもしくはナノチューブ、竹ミクロ−チューブもしくはナノチューブ、および同様のものであることができる。炭素またはその他の材料でミクロチューブ506を形成でき、生分解性であることができる。
【0021】
ミクロチューブ506の直径Dは、高分子接着性フィルム500が接着される損傷箇所または部位を囲む細胞のタイプに適合するような寸法にされる。ミクロチューブ506の直径Dは、最低限、少なくとも1つの生体細胞または少なくとも1つの細胞プロセスのサイズとされ、または細胞群の組み合わされたサイズに適合するような寸法にされる。様々な実施態様では、ミクロチューブ506の直径Dは、約0.5μmから100μmの間、約100μmより大きいか、または約10μmから約40μmの間である。また、希望の用途に応じて、ミクロチューブ506の長さは異なることができる。様々な実施態様では、ミクロチューブ506はミクロパターン領域104、204、304のいっぱいに伸びることができる。他の実施態様では、ミクロチューブ506は、ミクロパターン領域104、204、304の幅より短いことができ、お互いに重ね合わされることができる。
【0022】
1つの実施態様では、ポリマー層502を例えば、キャスティングまたは押出により形成することによって、高分子接着性フィルム500を形成できる。次に、ポリマー層502が半固体相にある間に、ミクロチューブ506をポリマー層502に、例えば、ローリング、スプレー、または浸積により適用することができる。ついで、ポリマ層502を一方向にこするかまたは櫛でといて(combed)、ポリマー分子を同じ方向に並べることができる。ミクロチューブ506とポリマー分子の物理的接触は、ほぼ同じ方向にミクロチューブ506を並べる。次に、例えば紫外線光もしくは熱によりポリマー層502を硬化して、ミクロチューブ506の方向を固定する。また、ミクロチューブ506のより大きい部分を露出し、細胞がチューブを通してより容易に成長できるように、ポリマー層502をエッチングバックする追加の段階を行うことができる。
【0023】
図6は、ポリマー層602と、ポリマー層602の片面の上に配置されたミクロチューブ506のミクロパターン部分604から作られたポリマー接着性フィルム600である5番目の実施態様の断面図を示す。高分子接着性フィルム600は図5の高分子接着性フィルム500と同様であるが、ポリマー接着性フィルム600のミクロチューブ506が離れて配置され、修復されるべき組織の細胞がミクロチューブ506を通してと、ミクロチューブ506の間で指向性に成長される。生分解性重合体接着性フィルム600が崩壊するとき、細胞は、フィルム600により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0024】
図7は、ポリマー層702と、ポリマー層702の片面の上に配置されたミクロチューブ506aと506bのミクロパターン部分704から作られたポリマー接着性フィルム700である6番目の実施態様の断面図を示す。高分子接着性フィルム700は図5の高分子接着性フィルム500と同様であるが、ミクロチューブ506aおよび506bは、第一の方向に配置されたミクロチューブ506aの第一の層と、第一の方向と直角な方向に配置されたミクロチューブ506bの第2の層を含む。直角なミクロチューブ506aおよび506bは2つの方向に指向性の細胞増殖を容易にするだろう。生分解性重合体接着性フィルム700が崩壊するとき、細胞はフィルム700により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0025】
1つの実施態様では、ポリマー層702を形成することによって、高分子接着性フィルム700を形成できる。次に、ポリマー層702が半固体相にある間に、ミクロチューブ506aをポリマー層702に適用できる。ついで、ポリマー層702を一方向にこするかまたは櫛でといて、ポリマー分子とミクロチューブ506aを同じ方向に並べることができる。直角な方向に配向するポリマーとミクロチューブ506bの第2の層を、第一のポリマー層702の上に配置することができる。次に、ポリマー層702を硬化することができる。そして、ミクロチューブ506a、506bの、より大きい部分を露出するためにポリマー層702をエッチングバックできる。
【0026】
図8は、ポリマー層802と、ポリマー層802の片面の上に配置されたミクロリッジ806で作られたミクロパターン部分804から作られたポリマー接着性フィルム800である7番目の実施態様の断面図を示す。図1−3に示された実施態様である高分子接着性フィルム100、200、300のミクロパターン部分104、204、304として、接着性フィルム800のミクロパターン部分804を取り入れることができる。ミクロリッジ806は、お互いに平行に配置されて、ミクロパターン部分104、204、304の長さ方向全体にわたり延びることができる。高分子接着性フィルム800が損傷部位または手術部位に当てられるとき、ミクロリッジ806は、ミクロリッジ806の間で損傷部位または手術部位を横切って(直角に)細胞発育を導くだろう。生分解性重合体接着性フィルム800が崩壊するとき、細胞は、フィルム800により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0027】
様々な幾何的または不規則形状にミクロリッジ806を形成できる。図8に示されるように、ミクロリッジ806はポリマー層802から延びる半円として断面を形成することができる。図9は、ポリマー層902と、角形の断面形状を有するミクロリッジ906で作られたミクロパターン部分904から作られたポリマー接着性フィルム900である8番目の実施態様の断面図を示す。図10は、ポリマー層1002と、三角形の断面形状を有するミクロリッジ1006で作られたミクロパターン部分1004から作られたポリマー接着性フィルム1000である9番目の実施態様の断面図を示す。他の様々な実施態様では、ミクロリッジは他の断面形状を持つことができ、たとえば部分的な楕円形、弧、台形、正方形、不規則な多角体、およびそれらの組み合わせなどであることができる。
【0028】
高分子接着性フィルム800、900、1000が接着される傷または部位を囲む細胞のタイプに対応して、ミクロリッジ806、906、1006の間のスペーシングSの幅を変化することができる。ミクロリッジ806、906、1006の間のスペーシングSは、最低限、少なくとも1つの生体細胞または少なくとも1つの細胞プロセスのサイズとされ、または細胞群の組み合わされたサイズに適合するような寸法にされる。様々な実施態様では、ミクロリッジ806、906、1006の間のスペーシングSは、約0.5μmから約100μm、約100μmより大きく、または約10μmから約40μmの間であることができる。用途によって、ミクロリッジ806、906、1006の幅Wと高さHを変えることができる。
【0029】
1つの実施態様では、ポリマー層802、902、1002を、例えば、キャスティングまたは押出により形成することによって、高分子接着性フィルム800、900、1000を形成できる。次に、ポリマー層802、902、1002が半固体相にある間に、例えば、ポリマー層802、902、1002に雌型を適用することによってポリマー層802、902、1002上にミクロリッジ806、906、1006を形成できる。
次にポリマー層802、902、1002を、例えば紫外線光または熱で硬化することができる。様々な実施態様では、例えば、フォトレジストおよびエッチングプロセスのような他の方法でミクロリッジ806、906、1006を形成できる。
【0030】
図11は、ポリマー層1102と、ポリマー層1102の片面の上に配置されたミクロトラフ1106で作られたミクロパターン部分1104から作られたポリマー接着性フィルム1100である10番目の実施態様の断面図を示す。図1−3に示された実施態様である高分子接着性フィルム100、200、300のミクロパターン部分104、204、304として、接着性フィルム1100のミクロパターン部分1104を取り入れることができる。ミクロトラフ1106は、お互いに平行に配置されて、ミクロパターン部分104、204、304の長さ方向に延びることができる。高分子接着性フィルム1100が損傷または手術部位に当てられるとき、ミクロトラフ1106は、ミクロトラフ1106の間を、損傷または手術部位を横切る直角な方向への細胞発育を指向するだろう。生分解性重合体接着性フィルム1100が崩壊するとき、細胞は、フィルム1100により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0031】
様々な幾何学的形状または不規則形状でミクロトラフ1106を形成できる。図11に示されたように、ミクロトラフ1106はポリマー層1102に延びる半円としての断面形状を形成することができる。図12は、ポリマー層1202と、角形の断面形状を有するミクロトラフ1206で作られたミクロパターン部分1204から作られたポリマー接着性フィルム1200である11番目の実施態様の断面図を示す。図13は、ポリマー層1302と、三角形の断面形状を有するミクロトラフ1306で作られたミクロパターン部分1304から作られたポリマー接着性フィルム1300である12番目の実施態様の断面図を示す。他の様々な実施態様では、ミクロトラフは他の横断面形状を持つことができ、たとえば部分的な楕円形、弧、台形、正方形、不規則な多角体、およびそれらの組み合わせなどであることができる。
【0032】
ミクロトラフ1106、1206、1306の幅Wは、高分子接着性フィルム1100、1200、1300が接着されることになっている損傷部位または部位を取り囲む細胞のタイプに応じて変えることができる。ミクロトラフ1106、1206、1306の幅Wは、最低限、少なくとも1つの生体細胞または少なくとも1つの細胞プロセスのサイズとされ、または細胞群の組み合わされたサイズに適合するような寸法にされる。様々な実施態様では、ミクロトラフ1106、1206、1306の間の幅Wは、約0.5μmから約130μmの間、約130μmより大きいか、または約13μmから約40μmの間である。ミクロトラフ1106、1206、1306の間のスペーシングSおよび高さHは用途に応じて変化することができる。
【0033】
1つの実施態様では、ポリマー接着性フィルム1100、1200、1300を、例えば、キャスティングまたは押出により形成することによって形成できる。次に、ポリマー層1102、1202、1302が半固体相にある間に、例えば、ポリマー層1102、1202、1302に雄型を適用することによってミクロトラフ1106、1206、1306をポリマー層1102、1202、1302の上に形成できる。ポリマー層1102、1202、1302は、たとえば紫外線または熱により硬化することができる。種々の実施例においては、ミクロトラフ1106、1206、1306は他の方法、たとえばフォトレジストまたはエッチングプロセスにより形成することができる。
【0034】
図14は、ポリマー層1402の上に、互いに平行に形成された多くのミクロ構造1406を有する、ポリマー接着性フィルム1400である13番目の実施態様の平面図を示す。ミクロ構造1406は、それぞれ図8−13に示されたミクロリッジ806,906、1006、またはミクロトラフ1106、1206、1306であることができる。図14の実施態様のミクロ構造1406は直線の側面を有するものとして示されているが、種々の実施例においては、ミクロ構造は波打っていてもよく、とがっていてもよく、もしくは他の形状でも良い。
【0035】
図15は、ポリマー層1502の上に配置された、多数の第一のミクロ構造1506と、それと交叉する多数の第二のミクロ構造1506bを含む、ポリマー接着性フィルム1500である、14番目の実施態様の平面図を示す。第一のミクロ構造1506aは互いに平行に配置され、第二のミクロ構造1506bと直角にされる。ミクロ構造1506aおよび1506bは、それぞれ図11−13に示されたミクロトラフ1106、1206、1306であることができる。直角に交叉するミクロ構造1506aおよび1506bは、ポリマー接着性フィルム1500が適用される損傷部位または手術部位に対して、平行方向および直角方向の二方向での細胞成長を許容する。
【0036】
図16は、ポリマー層1602と、ポリマー層1602の片面の上に配置された、ミクロリッジ1606とナノパターンのピラー1608の組み合わせで作られるミクロパターン部分1604から作られたポリマー接着性フィルム1600である15番目の実施態様の斜視図を示す。ポリマー接着性フィルム1600のミクロパターン部分1604は、それぞれ図1−3に示された実施態様のポリマー接着性フィルム100、200、300のミクロパターン部分104、204、304として組み込まれることができる。ミクロリッジ1606は互いに平行に配置することができ、ミクロパターン部分104、204、304の長さ方向に延びることができる。ミクロリッジ1606は様々な幾何学形状または不規則な形状に形成することができ、それぞれ図8、9、10に記載したミクロリッジ806、906、1006として賦形し、間隔を開けることができる。ピラー1608は、図4に記載されたピラー408の一部として、またはそれの全体として形成されることができる。
【0037】
ポリマー接着性フィルム1600が損傷部位または手術部位に適用される時、ミクロリッジ1606は、ミクロリッジ1606の間、および損傷部位または手術部位を横切り、すなわち損傷部位または手術部位と直角な方向にも細胞を指向性を有して成長させ、またナノパターンのピラー1608はポリマー接着性フィルム1600の損傷部位または手術切開部位への接着を向上させる。生分解性重合体接着性フィルム1600が崩壊するとき、細胞はフィルム1600により残された隙間を満たし、治癒過程を完了する。
【0038】
1つの実施態様では、ポリマー接着性フィルム1600は、例えば、キャスティングまたは押出によりポリマー層1602を成形することによって形成できる。次に、ポリマー層1602が半固体相にある間に、例えば、ポリマー層1602に雌微細型を適用することによってミクロリッジ1606およびピラー1608をポリマー層1602の上に形成できる。ポリマー層1602は、たとえば紫外線または熱により硬化することができる。
【0039】
具体的に記載された実施態様および方法の変更と改良は、特許請求の範囲の請求項によってのみ制限される本発明の精神を逸脱することなく行うことができる。例えば、接頭語「ミクロ」と「ナノ」が明細書と請求項の中の様々な場所で使用されるが、様々な実施態様では、ミクロについて記載された特徴がナノスケールで形成されることができ、その逆もまた同様であると理解されるべきである。さらに、様々な実施態様の特徴は、ある特定の実施態様で組み合わされることができると想定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性細胞成長を促進する、損傷組織に適用するためのポリマー接着性フィルムであって、
該ポリマー接着性フィルムの第一の表面上に配置されたミクロパターンを含み、
該ミクロパターンが、損傷組織の細胞がミクロパターン内を指向性を有して成長することを許容するサイズとされる、ポリマー接着性フィルム。
【請求項2】
該ミクロパターンが、該ポリマー接着性フィルムの第一の表面の一部にのみ配置される、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項3】
該ミクロパターンが、複数のミクロチューブを含む、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項4】
該ミクロパターンが、ほぼ第一の方向に配置された第一の複数のミクロチューブを含む、請求項3記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項5】
該ミクロパターンが、さらにほぼ第二の方向に配置された第二の複数のミクロチューブをさらに含み、該第二の方向が該第一の方向とほぼ直角である、請求項4記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項6】
該ミクロチューブが、損傷組織の単一細胞のサイズよりも大きな直径を有する、請求項3記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項7】
該ミクロチューブが、約0.5ミクロンから約100ミクロンの間の直径を有する、請求項3記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項8】
該ミクロパターンが、複数のミクロリッジを含む、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項9】
該ミクロリッジが、矩形、正方形、円の一部、楕円の一部、または三角形の断面形状を有する、請求項8記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項10】
該ミクロリッジが、損傷組織の単一細胞のサイズよりも大きな距離で互いに離れて配置される、請求項8記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項11】
該ミクロリッジが、約0.5ミクロンから約100ミクロンの間の距離で互いに離れて配置される、請求項8記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項12】
該ミクロリッジが、該ミクロリッジの上に配置される複数のピラーをさらに含む、請求項8記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項13】
該ミクロパターンが、複数のミクロトラフを含む、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項14】
該複数のミクロトラフが、複数の第一のミクロトラフと、これに直角に配置された複数の第二のミクロトラフを含む、請求項13記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項15】
該ミクロトラフが、矩形、正方形、円の一部、楕円の一部、または三角形の断面形状を有する、請求項13記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項16】
該ミクロトラフが、損傷組織の単一細胞のサイズよりも大きな幅を有する、請求項13記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項17】
該ミクロトラフが、約0.5ミクロンから約100ミクロンの間の幅を有する、請求項13記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項18】
該ポリマー接着性フィルムが、グリセロールと二酸の生分解性縮合ポリマーを含む、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項19】
該ポリマー接着性フィルムが、ポリ(グリセロールセバケート)、低いアクリル分のポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート、高いアクリル分のポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート、ポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート−コ−ポリ(エチレングリコール)ネットワーク、ポリ(グリセロールマロネート)、ポリ(グリセロールスクシネート)、ポリ(グリセロールグルタレート)、ポリ(グリセロールアジペート)、ポリ(グリセロールピメレート)、ポリ(グリセロールスベレート)、ポリ(グリセロールアゼレート)、グリセロールと10以上の炭素原子を有する二酸のポリマー、グリセロールと15以上の炭素原子を有する二酸のポリマー、グリセロールと20以上の炭素原子を有する二酸のポリマー、またはグリセロールと25以上の炭素原子を有する二酸のポリマー、グリセロールと非脂肪族二酸のポリマーから成る群から選択されるポリマーを含む、請求項18記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項20】
該組織が歯肉組織である、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項21】
指向性細胞成長を促進する、損傷組織に適用するためのポリマー接着性フィルムの形成方法であって、
該ポリマー接着性フィルムの第一の表面上に配置されたミクロパターン形成することを含み、
該ミクロパターンが、損傷組織の細胞がミクロパターン内を指向性を有して成長することを許容するサイズとされる、ポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項22】
該ミクロパターンが、複数のミクロチューブを含む、請求項21記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項23】
該ミクロパターンの形成が、第一の複数のミクロチューブを第一のポリマー接着性フィルムに適用し、該第一のポリマー接着性フィルムを硬化することを含む、請求項21記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項24】
該第一のポリマー接着性フィルムをエッチングし、該第一の複数のミクロチューブを露出させることを含む、請求項23記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項25】
該第一の複数のミクロチューブを第一の方向にほぼ整列させることを含む、請求項23記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項26】
該第一のポリマー接着性フィルムをこすり、第一の複数のミクロチューブを第一の方向にほぼ整列させることをさらに含む、請求項25記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項27】
第二のポリマー接着性フィルムに第二の複数のミクロチューブを適用し、第二のポリマー接着性フィルムをこすり、第二の複数のミクロチューブを第二の方向にほぼ整列させ、該第二のポリマー接着性フィルを該第一のポリマー接着性フィルに適用することをさらに含み、前記第一の方向と第二の方向とはほぼ直角である、請求項26記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項28】
該ミクロパターンが、複数のミクロリッジを含む、請求項21記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項29】
該ミクロリッジが、該ミクロリッジの上に配置される複数のピラーをさらに含む、請求項28記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項30】
該ミクロトラフが型を使用して成形される、請求項28記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項31】
該ミクロパターンが複数のミクロトラフを含む、請求項28記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項32】
該ミクロトラフが型を使用して成形される、請求項31記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項1】
指向性細胞成長を促進する、損傷組織に適用するためのポリマー接着性フィルムであって、
該ポリマー接着性フィルムの第一の表面上に配置されたミクロパターンを含み、
該ミクロパターンが、損傷組織の細胞がミクロパターン内を指向性を有して成長することを許容するサイズとされる、ポリマー接着性フィルム。
【請求項2】
該ミクロパターンが、該ポリマー接着性フィルムの第一の表面の一部にのみ配置される、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項3】
該ミクロパターンが、複数のミクロチューブを含む、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項4】
該ミクロパターンが、ほぼ第一の方向に配置された第一の複数のミクロチューブを含む、請求項3記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項5】
該ミクロパターンが、さらにほぼ第二の方向に配置された第二の複数のミクロチューブをさらに含み、該第二の方向が該第一の方向とほぼ直角である、請求項4記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項6】
該ミクロチューブが、損傷組織の単一細胞のサイズよりも大きな直径を有する、請求項3記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項7】
該ミクロチューブが、約0.5ミクロンから約100ミクロンの間の直径を有する、請求項3記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項8】
該ミクロパターンが、複数のミクロリッジを含む、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項9】
該ミクロリッジが、矩形、正方形、円の一部、楕円の一部、または三角形の断面形状を有する、請求項8記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項10】
該ミクロリッジが、損傷組織の単一細胞のサイズよりも大きな距離で互いに離れて配置される、請求項8記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項11】
該ミクロリッジが、約0.5ミクロンから約100ミクロンの間の距離で互いに離れて配置される、請求項8記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項12】
該ミクロリッジが、該ミクロリッジの上に配置される複数のピラーをさらに含む、請求項8記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項13】
該ミクロパターンが、複数のミクロトラフを含む、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項14】
該複数のミクロトラフが、複数の第一のミクロトラフと、これに直角に配置された複数の第二のミクロトラフを含む、請求項13記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項15】
該ミクロトラフが、矩形、正方形、円の一部、楕円の一部、または三角形の断面形状を有する、請求項13記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項16】
該ミクロトラフが、損傷組織の単一細胞のサイズよりも大きな幅を有する、請求項13記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項17】
該ミクロトラフが、約0.5ミクロンから約100ミクロンの間の幅を有する、請求項13記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項18】
該ポリマー接着性フィルムが、グリセロールと二酸の生分解性縮合ポリマーを含む、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項19】
該ポリマー接着性フィルムが、ポリ(グリセロールセバケート)、低いアクリル分のポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート、高いアクリル分のポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート、ポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート−コ−ポリ(エチレングリコール)ネットワーク、ポリ(グリセロールマロネート)、ポリ(グリセロールスクシネート)、ポリ(グリセロールグルタレート)、ポリ(グリセロールアジペート)、ポリ(グリセロールピメレート)、ポリ(グリセロールスベレート)、ポリ(グリセロールアゼレート)、グリセロールと10以上の炭素原子を有する二酸のポリマー、グリセロールと15以上の炭素原子を有する二酸のポリマー、グリセロールと20以上の炭素原子を有する二酸のポリマー、またはグリセロールと25以上の炭素原子を有する二酸のポリマー、グリセロールと非脂肪族二酸のポリマーから成る群から選択されるポリマーを含む、請求項18記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項20】
該組織が歯肉組織である、請求項1記載のポリマー接着性フィルム。
【請求項21】
指向性細胞成長を促進する、損傷組織に適用するためのポリマー接着性フィルムの形成方法であって、
該ポリマー接着性フィルムの第一の表面上に配置されたミクロパターン形成することを含み、
該ミクロパターンが、損傷組織の細胞がミクロパターン内を指向性を有して成長することを許容するサイズとされる、ポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項22】
該ミクロパターンが、複数のミクロチューブを含む、請求項21記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項23】
該ミクロパターンの形成が、第一の複数のミクロチューブを第一のポリマー接着性フィルムに適用し、該第一のポリマー接着性フィルムを硬化することを含む、請求項21記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項24】
該第一のポリマー接着性フィルムをエッチングし、該第一の複数のミクロチューブを露出させることを含む、請求項23記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項25】
該第一の複数のミクロチューブを第一の方向にほぼ整列させることを含む、請求項23記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項26】
該第一のポリマー接着性フィルムをこすり、第一の複数のミクロチューブを第一の方向にほぼ整列させることをさらに含む、請求項25記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項27】
第二のポリマー接着性フィルムに第二の複数のミクロチューブを適用し、第二のポリマー接着性フィルムをこすり、第二の複数のミクロチューブを第二の方向にほぼ整列させ、該第二のポリマー接着性フィルを該第一のポリマー接着性フィルに適用することをさらに含み、前記第一の方向と第二の方向とはほぼ直角である、請求項26記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項28】
該ミクロパターンが、複数のミクロリッジを含む、請求項21記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項29】
該ミクロリッジが、該ミクロリッジの上に配置される複数のピラーをさらに含む、請求項28記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項30】
該ミクロトラフが型を使用して成形される、請求項28記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項31】
該ミクロパターンが複数のミクロトラフを含む、請求項28記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【請求項32】
該ミクロトラフが型を使用して成形される、請求項31記載のポリマー接着性フィルムの形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2013−503000(P2013−503000A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526975(P2012−526975)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046776
【国際公開番号】WO2011/025866
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(510186982)イノベイテイブ ヘルス テクノロジーズ エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046776
【国際公開番号】WO2011/025866
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(510186982)イノベイテイブ ヘルス テクノロジーズ エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】
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