説明

振動アクチュエータ及び光学機器

【課題】振動アクチュエータの全長の短縮化を図ること。
【解決手段】電気機械変換素子により励振される振動子(11,12)と、振動子による振動により相対的に回転するロータ部13と、振動子とロータ部との間でスラスト方向に加圧力を発生させる加圧部4と、ロータ部のスラスト方向及びラジアル方向の位置を規制する中空状のロータホルダ2と、振動子の回転軸と回転軸が同軸に設けられたスラストベアリング1と、を備え、ロータホルダ2は、その外周部に設けられロータ部の加圧力を受ける外周側フランジ部2aと、その内周部に設けられスラストベアリングの第1軌道面となる内周側フランジ部2bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ及び光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば、電気機械変換素子を用いて、移動子を駆動する振動アクチュエータが知られているが(特許文献1)、ベアリングが外周部に配置されており、そのベアリングの摺動音が大きいという問題があった。
【0003】
一方、このような振動アクチュエータは、静音化を図るために、プラスチックのベアリングを用いることが提案されていた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−103675号公報
【特許文献2】特開2011−10539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の振動アクチュエータは、デジタル一眼レフカメラのレンズ鏡筒に用いられているが、レンズ鏡筒の小型化が要請されており、振動アクチュエータの全長を短縮することが望まれていた。
【0006】
本発明の課題は、レンズ鏡筒の全長の短縮化を図ることを可能にする振動アクチュエータ、光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、電気機械変換素子により励振される振動子(11,12)と、前記振動子による振動により相対的に回転するロータ部(13)と、前記振動子と前記ロータ部との間でスラスト方向に加圧力を発生させる加圧部(4)と、前記ロータ部のスラスト方向及びラジアル方向の位置を規制する中空状のロータホルダ(2)と、前記振動子の回転軸と回転軸が同軸に設けられたベアリング部材(1)と、を備え、前記ロータホルダ(2)は、その外周部に設けられ前記ロータ部の加圧力を受ける外周側フランジ部(2a)と、その内周部に設けられ前記ベアリング部材の第1軌道面となる内周側フランジ部(2b)とを有することを特徴とする振動アクチュエータである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータにおいて、前記ロータホルダは、前記外周側フランジ部と前記内周側フランジ部の間に円筒部(2c)有し、前記ベアリング部材に対する前記第1軌道面(2d)及びその第1軌道面の反対側に設けられる第2軌道面(3a)が、前記ロータホルダの前記円筒部(2c)の内周側に配置されていることを特徴とする振動アクチュエータである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータにおいて、前記ベアリング部材に対する前記第2軌道面を有する軌道部材(3)を備え、前記加圧部と前記軌道部材との接触面(3b)が、前記ロータホルダの前記円筒部(2c)の内周側に配置されていることを特徴とする振動アクチュエータである。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記ロータ部と前記ロータホルダの前記外周側フランジ部の間に設けられ、前記ロータ部の振動を吸収する吸振材(16)を有することを特徴とする振動アクチュエータである。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記ベアリング部材に対する前記第1及び第2軌道面(2d,3a)の少なくとも一方は、可塑性材料であることを特徴とする振動アクチュエータである。
請求項6の発明は、請求項5に記載の振動アクチュエータにおいて、前記ベアリング部材に対する前記第2軌道面(3a)は、熱硬化性樹脂であることを特徴とする振動アクチュエータである。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記ベアリング部材の鋼球(1b)数は、前記振動子の進行波の波数の整数倍でないことを特徴とする振動アクチュエータである。
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記ベアリング部材は、スラストベアリングであることを特徴とする振動アクチュエータである。
請求項9の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータの中空部に光路が配置されていることを特徴とする光学機器である。
以上、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明したが、これに限定されるものではない。なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成に代替してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動アクチュエータの全長の短縮化ができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による振動アクチュエータの実施形態を示す詳細断面図である。
【図2】本発明による振動アクチュエータの実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明による振動アクチュエータの実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明による振動アクチュエータの実施形態を示す部分分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施の形態について、さらに詳しく説明する。
まず、本実施形態の振動アクチュエータの基本構造について説明する。
本実施形態の振動アクチュエータは、ステータ11、圧電体12、ロータ13、中筒14、緩衝部材15、吸振材16等を備えている。
ステータ11は、ステンレス材料やインバー材料等の鉄合金や真鍮等の弾性変形が可能な金属材料を用いて形成された略円環形状の部材であり、一方の端面には、圧電体12が設けられ、他方の面には、複数の溝を切って形成された櫛歯部11aが形成されている。この櫛歯部11aの先端面は、圧電体12の励振により、進行波が発生し、ロータ13を駆動する駆動面となる。
【0011】
圧電体12は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する機能を有し、本実施形態では、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いて形成され、導電性の接着剤等を用いて、ステータ11に接合されている。圧電体12上には、不図示のフレキシブルプリント基板と電気的に接続された電極が形成されており、このフレキシブルプリント基板から供給される駆動信号によって、圧電体12が励振される。
【0012】
ロータ13は、略円環形状の部材であり、後述するウェーブワッシャ4の加圧力によってステータ11の駆動面に加圧接触され、ステータ11の進行波によって摩擦駆動される。
【0013】
中筒14は、本実施形態の振動アクチュエータをレンズ鏡筒に固定する部材である。
【0014】
緩衝部材15は、ゴム等を用いて形成された略円環形状の部材である。この緩衝部材15は、ステータ11の振動を中筒14側へ伝えないようにする部材であり、ステータ11と中筒14との間に設けられている。
【0015】
吸振材16は、不織布やフェルト等を用いて形成された略円環形状の部材である。この吸振材16は、ロータ13の振動をウェーブワッシャ4側へ伝えないようにする部材であり、ロータ13と後述するロータホルダ2の外周側フランジ部2aとの間に設けられている。
【0016】
次に、本実施形態による振動アクチュエータをさらに詳しく説明する。
この振動アクチュエータは、ステータ11とロータ13を圧接させることにより、ステータ11のロータ側面で発生する進行波を、ロータ13に回転力として変換して伝えている。振動アクチュエータは、この圧接力を適切に受けないと出力が落ちてしまい、性能が劣り、かつ、耐久性も劣ってしまう。
そのため、振動アクチュエータは、ベアリングが必要となる。中空状の振動アクチュエータの場合には、ベアリングとしては、大型のスラストベアリングを用いる場合と、3個のミニチュアベアリングを用いる場合の2通りの方法がある。ミニュチュアベアリングの場合には、全長を短縮するのには不向きである。そこで、本実施形態では、振動アクチュエータの回転軸と、スラストベアリングの回転軸が一致するタイプの大型のスラストベアリングを採用し、静音化と全長短縮化を図るようにしたものである。
【0017】
本実施形態の振動アクチュエータは、前述した基本構造に加え、スラストベアリングリテーナユニット(以下、リテーナユニットという)1と、ロータホルダ2と、軌道体3と、ウェーブワッシャ4と、バヨネット5等とを備えている。
【0018】
図1、図4に示すように、リテーナユニット1は、ステータ11の回転軸と回転軸が同軸に設けられ、ロータホルダ2の円筒部2cの内周側に配置されている。このリテーナユニット1は、ドーナツ板状のリテーナ1aに複数のベアリング鋼球1bが回転可能に保持されている。
【0019】
ロータホルダ2は、ロータ部13のスラスト方向及びラジアル方向の位置を規制する中空状の部材であり、外周側フランジ部2aと内周側フランジ部2bとが、円筒部2cの両側に形成されている。内周側フランジ部2bは、円筒部2c側(内側)の面が軌道面2dとなっている。また、外周側フランジ部2aは、ロータ部13の加圧力を受ける部分であり、外部に出力を取り出す出力取り出し部2eが設けられている。
【0020】
軌道体3は、ドーナツ板状の部材であり、リテーナユニット1側が軌道面3a,ウェーブワッシャ4側が当たり面3bになっている。軌道面3a及び当たり面3bは、ロータホルダ2の円筒部2cの内側に配置されている。
【0021】
ウェーブワッシャ4は、ロータ13とステータ11とをスラスト方向に圧接させる加圧部材である。
【0022】
バヨネット5は、ドーナツ板状の部材であり、内周側に3個の爪部5aが形成されており、内筒14の内周面に形成された溝14a(図4参照)に係合することにより、上記各部材を中筒14に固定することができる。
【0023】
本実施形態による振動アクチュエータは、上記のように構成されているので、以下のような効果がある。
(1)振動アクチュエータは、以下の3つが音の発生源になっている。
(a)ステータ11とロータ13の摺動面
(b)ベアリングの軌道面2d,3a
(c)ウェーブワッシャ4の当たり面3b
本実施形態は、ベアリング1の2つの軌道面2d,3aが共にロータホルダ2の内周側に配置される。また、軌道体3のウェーブワッシャ4の当たり面3bがロータホルダ2の内周側に配置される。
(b)と(c)の片面(当たり面3b)側まで、ロータホルダ2でカバーされることにより、外部への音の伝達がさえぎられ、静音化が図られた。
【0024】
(2)軌道体3の材質をプラスチック(可塑性材料)とすることによって、ベアリングから発生する音(b)とウェーブワッシャ4の当たり面3bから発生する音(c)を低減することができる。
また、リテーナ2aの材質をプラスチックとすることによって、ベアリング1から発生する音(b)を低減することができる。
プラスチックとして、好適な例は、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)等の熱硬化性樹脂である。
【0025】
(3)ベアリングの軌道面2d,3aから発生する音(b)に関して、スラストベアリングのベアリング鋼球1bの数を変化させて評価したところ、ステータ11の進行波の波数の整数倍では音が大きくなった。そのため、本実地形態では、スラストベアリングのベアリング鋼球1bの数をステータ11に発生する進行波の波数の整数倍でないようにすることにより、静音化が図られた。
【0026】
(4)ロータホルダ2のロータスラスト受けの外周側フランジ部2aよりも、ロータホルダ2のベアリングの軌道面2dを、ステータ11側に配置したことにより、振動アクチュエータの全長を短縮できた(例えば、従来25〜30mmであったものが、15mmに短縮できた)。
【0027】
(5)中筒14が中空状であり、内部に光路を通すことができるので、光学機器に用いる振動アクチュエータの全長を短縮化すると共に、静音化に最適である。
【0028】
以上説明したように、実施の形態によれば、振動アクチュエータのさらなる静音化と全長の短縮化ができるとともに、光学機器の動画撮影を好適に行うことができる、という効果がある。
【0029】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1) ロータホルダ2は、内周側フランジ部2bの円筒部2c側(内側)の面が軌道面2dとなっている。このため、軌道面2dにプラスチックの薄板を貼ったり、プラスチック層を形成することにより、さらなる静音化が図れる。
(2) 本実施形態では、デジタル一眼レフカメラについて説明したが、本発明はこれに限定されず、デジタルコンパクトカメラ、ビデオカメラなどにも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1:スラストベアリングリテーナユニット、1a:リテーナ、1b:ベアリング鋼球
2:ロータホルダ、2a,2b:フランジ部、2c:円筒部、2d:軌道面、2e:出力取り出し部、3:軌道体、3a:軌道面、3b:当たり面、4:ウェーブワッシャ、5:バヨネット、11:ステータ、12:圧電体、13:ロータ、14:中筒、15:緩衝部材、16:吸振材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械変換素子により励振される振動子と、
前記振動子による振動により相対的に回転するロータ部と、
前記振動子と前記ロータ部との間でスラスト方向に加圧力を発生させる加圧部と、
前記ロータ部のスラスト方向及びラジアル方向の位置を規制する中空状のロータホルダと、
前記振動子の回転軸と回転軸が同軸に設けられたベアリング部材と、
を備え、
前記ロータホルダは、
その外周部に設けられ前記ロータ部の加圧力を受ける外周側フランジ部と、
その内周部に設けられ前記ベアリング部材の第1軌道面となる内周側フランジ部とを有すること
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記ロータホルダは、前記外周側フランジ部と前記内周側フランジ部の間に円筒部を有し、
前記ベアリング部材に対する前記第1軌道面及びその第1軌道面の反対側に設けられる第2軌道面が、前記ロータホルダの前記円筒部の内周側に配置されていること
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記ベアリング部材に対する前記第2軌道面を有する軌道部材を備え、
前記加圧部と前記軌道部材との接触面が、前記ロータホルダの前記円筒部の内周側に配置されていること
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記ロータ部と前記ロータホルダの前記外周側フランジ部の間に設けられ、前記ロータ部の振動を吸収する吸振材を有すること
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記ベアリング部材に対する前記第1及び第2軌道面の少なくとも一方は、可塑性材料であること
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記ベアリング部材に対する前記第2軌道面は、熱硬化性樹脂であること
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記ベアリング部材の鋼球数は、前記振動子の進行波の波数の整数倍でないこと
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記ベアリング部材は、スラストベアリングであること
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータの中空部に光路が配置されていること
を特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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