説明

振動体の異常診断装置及び異常診断方法

【課題】異常状態に至るまでの情報を反映した、高精度な異常状態の診断装置及び診断方法を提供する。
【解決手段】振動体に接触して振動体から発生する振動を第1の音の波形に変換するセンサと、第1の音の波形をウェーブレット変換により第2の音の波形に変換する変換手段と、第2の音の波形から入力データを抽出する抽出手段と、入力データに対して自己組織化マップモデルを適用することにより正常状態領域及び異常状態領域を有するマップを作成する作成手段と、マップ上に入力データを配置した際の位置が正常状態領域又は異常状態領域の何れの領域に含まれるかを判断することにより振動体が正常状態又は異常状態の何れの状態かを診断する診断手段と、を有する振動体の異常診断装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動体の異常診断装置及び異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動体の状態を診断する装置が検討されている。
特許文献1(特開2007−304057号公報)には、複数の周波数範囲対応振動データを得る範囲対応振動データ算出手段と、周波数範囲対応変化最小振動データを算出する範囲対応変化最小振動データ算出手段と、周波数範囲対応変化最小振動データを高速フーリエ変換により周波数領域の振動信号を得る周波数領域信号変換手段と、周波数領域の振動信号の総和と予め定められる周波数領域の振動信号の総和とを比較し、比較結果に基づいて、生産設備の状態を判定する判定手段と、を備えた故障診断装置が開示されている。
【0003】
特許文献2(特開2008−292288号公報)には、減速機の軸受の異常を診断する軸受診断装置であって、複数の周波数の信号波形を抽出するフィルタ処理部と、累乗された振幅値の時間軸上の変化を示す累乗波形にフーリエ変換を施して周波数スペクトルを求めるとともに、軸受の構造と回転数とに起因する特定周波数毎の振幅値を算出する周波数分析部と、特定周波数毎の判定基準値を格納する判定基準格納部と、特定周波数毎に周波数分析部で算出した振幅値と判定基準格納部に格納した判定基準値とを比較する比較演算部と、比較演算部での比較結果に基づく判定結果を表示する判定結果表示部と、を備えた軸受診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−304057号公報
【特許文献2】特開2008−292288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載のような診断装置では、得られた振動に基づく信号をフーリエ変換によって処理していた。このフーリエ変換を行うと時間方向の情報が失われるため、時間方向の情報を反映させた診断を行うことが不可能であった。また、上記特許文献1及び2を含む従来の異常診断装置では、安定した高精度な異常状態の診断が困難であった。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、異常状態に至るまでの情報を反映した、高精度な振動体の異常診断装置及び異常診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、
振動体に接触して、前記振動体から発生する振動を第1の音の波形に変換するセンサと、
前記第1の音の波形をウェーブレット変換により第2の音の波形に変換する変換手段と、
前記第2の音の波形から入力データを抽出する抽出手段と、
前記入力データに対して、自己組織化マップ(Self Organizing Map)モデルを適用することにより、正常状態領域及び異常状態領域を有するマップを作成する作成手段と、
前記マップ上に前記入力データを配置した際の位置が前記正常状態領域又は異常状態領域の何れの領域に含まれるかを判断することにより、前記振動体が正常状態又は異常状態の何れの状態かを診断する診断手段と、
を有する振動体の異常診断装置に関する。
【0008】
他の一実施形態は、
(1)正常状態のマップ作成用振動体及び異常状態のマップ作成用振動体を準備する工程と、
(2)前記正常状態及び異常状態のマップ作成用振動体に接触させたセンサにより、前記マップ作成用振動体から発生する振動を、マップ作成用の第1の音の波形に変換する工程と、
(3)変換手段を用いることにより、前記マップ作成用の第1の音の波形を、ウェーブレット変換によりマップ作成用の第2の音の波形に変換する工程と、
(4)抽出手段により、前記マップ作成用の第2の音の波形からマップ作成用の入力データを抽出する工程と、
(5)作成手段により、前記マップ作成用の入力データに対して、自己組織化マップ(Self Organizing Map)モデルを適用することにより、正常状態領域及び異常状態領域を有するマップを作成する工程と、
(6)診断用振動体に接触させたセンサにより、前記診断用振動体から発生する振動を診断用の第1の音の波形に変換する工程と、
(7)変換手段を用いることにより、前記診断用の第1の音の波形を、ウェーブレット変換により診断用の第2の音の波形に変換する工程と、
(8)抽出手段により、前記診断用の第2の音の波形から診断用の入力データを抽出する工程と、
(9)診断手段により、前記マップ上に前記診断用の入力データを配置した際の位置が前記正常状態領域又は異常状態領域の何れの領域に含まれるかを判断することにより、前記診断用振動体が正常状態又は異常状態の何れの状態かを診断する工程と、
を有する振動体の異常診断方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
異常状態に至るまでの情報を反映した、高精度な振動体の異常診断装置及び異常診断方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例の振動体の異常診断装置を模式的に示す図である。
【図2】第1実施例の振動体の診断過程を表すフローチャートである。
【図3】第1実施例で得られた、マップ作成用の第1の音の波形を表す図である。
【図4】第1実施例で得られた、マップ作成用の第2の音の波形を表す図である。
【図5】第1実施例において、マップ作成用の第2の音の波形からマップ作成用の入力データを抽出する過程を模式的に表す図である。
【図6】第1実施例の学習開始前のマップを表す図である。
【図7】第1実施例の学習終了後のマップを表す図である。
【図8】第2実施例のマップ上の学習過程を表す図である。
【図9】第3実施例の振動体の異常診断装置を模式的に表す図である。
【図10A】センサを模式的に示す図である。
【図10B】センサを模式的に示す図である。
【図11】センサと振動体との接触状態を模式的に表す図である。
【図12】実施例1で得られた、マップ作成用の第1の音の波形を表す図である。
【図13】実施例1で得られた、マップ作成用の第1の音の波形を表す図である。
【図14】実施例1で得られた、マップ作成用の第2の音の波形を表す図である。
【図15】実施例1で得られた、マップ作成用の第2の音の波形を表す図である。
【図16】実施例1の学習終了後のマップを表す図である。
【図17】実施例1の診断後のマップを表す図である。
【図18A】参考例1で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図18B】参考例1で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図19A】参考例1で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図19B】参考例1で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図20A】参考例1で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図20B】参考例1で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図21A】参考例1で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図21B】参考例1で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図22A】参考例1で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図22B】参考例1で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図23】参考例1で得られた、マップを表す図である。
【図24】参考例2のセンサとモータの接触状態を模式的に表す図である。
【図25A】参考例2で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図25B】参考例2で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図26】参考例2で得られた、マップを表す図である。
【図27】参考例2で得られた、第2の音の波形を表す図である。
【図28】参考例3における、σ2と学習回数の関係を表す図である。
【図29】参考例3で得られた、マップを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の振動体の異常診断装置は、センサ、変換手段、抽出手段、作成手段、及び診断手段を有する。センサは、振動体に接触して、振動体から発生する振動の波形を第1の音の波形に変換する。変換手段は、第1の音の波形をウェーブレット変換により第2の音の波形に変換する。抽出手段は、第2の音の波形から入力データを抽出する。作成手段は、この入力データに対して、ニューラルネットワークを用いた自己組織化マップ(Self Organizing Map)モデルを適用することにより、正常状態領域及び異常状態領域を有するマップを作成する。診断手段は、マップ上に入力データを配置した際の位置が正常状態領域又は異常状態領域の何れの領域に含まれるかを判断することにより、振動体が正常状態又は異常状態の何れの状態かを診断する。
【0012】
本発明の異常診断装置及び異常診断方法で診断可能な振動体は特に限定されるわけではないが、例えば、回転モータ、管、一般の産業機械、プラント、原動機、熱処理炉、タービン、流量系,その他各種の産業機器の異常時に振動音の変化があるものを診断することができる。
【0013】
以下、振動体の異常診断装置及び異常診断方法の具体例を説明する。なお、下記具体例は、本発明のより一層の深い理解のために示される具体例であって、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。また、下記実施例では、便宜上、複数の実施例に分割して説明する。しかし、特に明示した場合及び原理的に不可能な場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例の関係にある。
【0014】
(第1実施例)
図1は、本実施例の振動体の異常診断装置の一例を模式的に示した図である。図2は、この装置を用いた振動体の異常診断方法の診断過程を表すフローチャートである。
【0015】
まず、異常状態及び正常状態にある複数のマップ作成用振動体11を準備する。そして、センサ12をこのマップ作成用振動体11に接触させることにより、マップ作成用振動体11から発生する振動を、マップ作成用の第1の音の波形に変換して測定する(S1)。図3は、このようにして測定した、マップ作成用の第1の音の波形の一例を表す図である。なお、センサを振動体に接触させる位置は、振動が発生すると共に、センサの針部先端を安定して接触可能な位置であれば特に限定されない。ただし、センサをマップ作成用振動体及び後述する診断用振動体に接触させる位置は常に同じ位置とする。
【0016】
次に、変換手段13により、マップ作成用の第1の音の波形を、マップ作成用の第2の音の波形に変換する(S2)。マップ作成用の第1から第2の音の波形への変換は、第1の音の波形に対してウェーブレット変換を行うことによって行う。
【0017】
このウェーブレット変換(Wavelet Transform)は、フーリエ変換(Fourier Transform;FT)と異なり、時間方向の情報を取り出すことができる。また、基底関数の拡大縮小を行うため、広い周波数領域の解析を行うことが可能という特徴を有する。
【0018】
ウェーブレット変換は、下記式(1)で表される。
【0019】
【数1】

【0020】
なお、1/k、lはそれぞれ第2の音の波形における周波数、時間を表す。従って、第2の音の波形を得る周波数及び時間の範囲(例えば、図4では、1/k=15〜約1000Hz、l=0〜約0.60)で、1/k及びlを変化させることで、第2の音の波形を得ることができる。
【0021】
また、x(t)はマップ作成用の第1の音の波形、ψ(t)はマザーウェブレットであり公知の関数を用いることができる。ψ(t)としては例えば、下記式(2)で表される関数を利用して計算することができる。
【0022】
【数2】

【0023】
なお、上記(2)式中のσ1はパラメータであり、予め任意の値を設定する。上式(2)中には、複素数が含まれるが、実際のウェーブレット変換では(2)式の実部と虚部の計算を別々に行い、その二乗和をマザーウェブレットψ(t)の計算結果として用いる。
【0024】
ウェーブレット変換後に得られた、マップ作成用の第2の音の波形の一例を図4に示す。このマップ作成用の第1から第2の音の波形へ変換する条件は、後述する診断用の第1から第2の音の波形へ変換する条件と同じものとする。
【0025】
次に、抽出手段14により、得られたマップ作成用の第2の音の波形からマップ作成用の入力データを抽出する(S3)。この入力データの抽出方法としては特に限定されるわけではないが、マップ作成用の入力データ、及び後述する診断用の入力データを抽出する条件は常に同じものとする。抽出条件としては、例えば、特定の時間及び周波数における第2の音の波形のデータを抽出する条件を挙げることができる。この場合、特定時間としては、Aの倍数で表される時間(Aは定数)とすることができる。また、特定周波数としては、同様にBの倍数で表される周波数(Bは定数)とすることができる。また、この場合に、予めノイズが入っており診断に向かない時間及び周波数の範囲を、入力データを抽出する範囲から除外しても良い。
【0026】
図5は、マップ作成用の第2の音の波形から、マップ作成用の入力データを抽出する過程を模式的に説明する図である。図5に示すように、マップ作成用の第2の音の波形において、特定の時間(図5中の縦軸に平行な点線)及び特定の周波数(図5中の横軸に平行な点線)の接点における入力データを抽出する。図5の例では、x1〜x25で表される25個のデータを抽出した。なお、マップ作成用の第2の音の波形から抽出する入力データの数は25個に限られるわけではなく、診断にかかる時間や診断精度を考慮して適宜、設定することができる。通常は、数千から数万のマップ作成用の入力データを抽出する。
【0027】
図5に示すように、マップ作成用の第2の音の波形はグレースケールで表される。このため、具体的には、このマップ作成用の入力データはグレースケールの256階調(8ビット)を規格化したものとして抽出する。すなわち、マップ作成用の入力データが真っ黒の場合は0/255=0となり、真っ白の場合は255/255=1となる。また、マップ作成用の入力データの色が真っ黒でも真っ白でもないグレーの場合は、0から1までの1/255の倍数で表される値となる。
【0028】
このように抽出した、マップ作成用の入力データから入力ベクトルxi(図5の場合では、i=1〜25)を作成する。
【0029】
マップ作成用の入力データとしては、65536階調(16ビット)を規格化したものを使用しても良い。この場合、入力データが真っ黒の場合は0/65535=0となり、真っ白の場合は65535/65535=1となる。また、マップ作成用の入力データの色が真っ黒でも真っ白でもないグレーの場合は、0から1までの1/65535の倍数で表される値となる。
【0030】
次に、作成手段15により、マップ作成用の入力データに対して、ニューラルネットワークを用いた自己組織化マップ(Self Organizing Map;SOM)モデルを適用することにより、正常状態領域及び異常状態領域を有するマップを作成する。
【0031】
以下に、このマップを作成するアルゴリズムを説明する。まず、任意の行数a及び列数bを有する、合計a×b個のユニットからなるマップを作成する。次に、各ユニットにランダムに参照ベクトルを発生させる。この際、参照ベクトルの成分数は、入力ベクトルの成分数と同じ数とする(図5に対応させて図6のマップを作成する場合、参照ベクトルの成分数は25となる)。図6はこの状態を表す図であり、一例として5行5列の25ユニットを有するマップを表している。なお、マップのユニット数は25に限定されるわけではなく、25未満又は25を超えるユニット数としても良い。また、行数と列数は同じであっても異なっていても良い。更に、マップは行及び列で表される2次元のものに限定されず、3次元以上のものであっても良い。通常は、視覚化しやすく、診断時間も短縮できる2次元のマップが作成される。
【0032】
図6において、各ユニットの参照ベクトルをmi(ab)で表す。なお、mi(ab)とは、a行b列で表されるユニットの参照ベクトルを表している。
【0033】
次に、下記式(3)で表される式に従って、入力ベクトルxiと各ユニットの参照ベクトルmi(ab)の間のユークリッド距離dabを算出する。
【0034】
【数3】

【0035】
(上式(3)において、nは入力ベクトル及び参照ベクトルの成分数を表す)。
【0036】
そして、ユークリッド距離dabの中で最小の値を示すdabを与えるユニットを勝者ユニットとする。次に、勝者ユニット及びその近傍のユニットの参照ベクトルを、学習により更新していく(以後、1回目の更新以降の参照ベクトルを、「重みベクトル」と記載する)。具体的には、下記式(4)に示すように、dmi(ab)を元のmi(ab)に加算することによって、重みベクトルの更新を行う。
【0037】
【数4】

【0038】
なお、上式(4)中のtは更新回数を表し、0以上の整数である。また、dmi(ab)は下記式(5)及び(6)で表される。
【0039】
【数5】

【0040】
上式(5)中のηは任意の定数、h(t)は近傍関数を表す。また、上式(6)中のa*及びb*はそれぞれ勝者ユニットのマップ上の位置を表す行数及び列数、a及びbはそれぞれ勝者ユニットの近傍のユニットのマップ上の位置を表す行数及び列数を表す。すなわち、勝者ユニットはマップ上のa*行b*列の位置に存在し、近傍ユニットはマップ上のa行b列の位置に存在するものとする。また、(a−a*2+(b−b*2は、マップ上の勝者ユニットと近傍ユニットの間の距離の2乗を表す。上式(6)中のσ2は定数であり、σ2が大きいほど、多くの範囲の重みベクトルを更新し、かつ勝者ユニットの近傍に存在するユニットほど近傍関数は大きな値を示すこととなる。
【0041】
予め定めた学習終了回数になるまで、上式(3)〜(6)の演算処理を繰り返すことによって、学習を進める(S4、S5)。このように学習を進めることによって、同じ傾向を有する入力ベクトル(入力データを成分とするベクトル)の勝者ユニットは、マップ上の近い位置に集まるようになってくる。このため、マップ上に、故障などの異常状態にある振動体の勝者ユニット同士、正常状態にある振動体の勝者ユニット同士がそれぞれ集まって所定領域を占めるようになってくる。
【0042】
そして、予め定めた学習終了回数の学習を終了した時点で重みベクトルの更新を終了する。この時点におけるマップ上に、異常状態の振動体の入力ベクトルに対する勝者ユニットが占める領域が異常状態領域、正常状態の振動体の入力ベクトルに対する勝者ユニットが占める領域が正常状態領域となり、マップが完成する(S6)。
【0043】
図7は、このようにして得られた、正常状態領域及び異常状態領域を有するマップの一例を示す図である。図7のマップでは、1行1列、1行2列、2行1列、2行2列の4つのユニットが正常状態領域21を占めるようになっている。同様にして、4行4列、5行4列、4行5列、5行5列の4つのユニットが異常状態領域22を占めるようになっている。なお、マップ上には、正常状態領域21及び異常状態領域22の何れの領域にも属さない遷移領域(図7中の白色の領域)が存在する。振動体の種類、並びにマップの行数及び列数によって、マップ上には遷移領域が存在する場合と、存在しない場合がある。行数及び列数が大きなマップを作成する場合には通常、遷移領域が存在する。
【0044】
なお、上式(3)〜(6)中の定数η、σ2やマップの行数、列数は任意の値を用いることができるが、同種の振動体の学習過程を元にして経験的に得られた値としても良い。
【0045】
次に、上記と同様にして、診断用振動体に接触させたセンサにより、診断用振動体から発生する振動を診断用の第1の音の波形に変換する(S7)。この後、変換手段13により、診断用の第1の音の波形を、ウェーブレット変換により、診断用の第2の音の波形に変換する(S8)。次に、抽出手段14により、診断用の第2の音の波形から診断用の入力データを抽出する(S9)。
【0046】
この後、診断手段16により、マップ上に診断用の入力データの勝者ユニットを配置した際の位置が、正常状態領域又は異常状態領域の何れの領域に含まれるかを判断することにより、診断用の振動体が正常状態又は異常状態の何れの状態かを診断する。以下に、このアルゴリズムを説明する。
【0047】
上記のようにして得られた、診断用の入力データを成分とする入力ベクトルと、完成後のマップの各ユニットの重みベクトルとの間のユークリッド距離を計算する。ユークリッド距離の計算は、上式(3)と同様の方法に従って行う。このようにして計算したユークリッド距離が最小となるユニットを発火ユニットとする。この発火ユニットが、マップ上の異常状態領域に属する場合には「異常状態」と診断される。一方、発火ユニットが、マップ上の正常状態領域に属する場合には「正常状態」と診断される(S10)。例えば、図7のマップの場合、発火ユニットが21の領域内に存在する場合には「正常状態」と診断され、22の領域内に存在する場合には「異常状態」と診断される。なお、正常状態領域及び異常状態領域のどちらの領域にも属さない場合には「注意」と診断してもよい。
【0048】
本実施例では、ニューラルネットワークを用いた自己組織化マップ(Self Organizing Map)モデルを適用することにより、迅速かつ高精度で異常状態又は正常状態の診断が可能となる。このため、一般の産業機械やプラントでの異常発生や設備劣化の診断に利用できる。
【0049】
また、本実施例では、予め故障状態と正常状態にある振動体を用いてマップを作成した。本実施例では、ウェーブレット変換を使用しているため、最終的に作成したマップの異常状態領域の重みベクトルには、正常状態から異常状態に至るまでの振動体の経時的な情報が含まれている。このため、完全に故障した状態ではなく、振動体が摩耗や劣化などにより正常状態から異常状態に移行する途中の過程であっても、高精度で診断を行い、適切なタイミングでその保全を行うことができる。
【0050】
(第2実施例)
本実施例は、作成手段15がマップを作成する際に、最初、近傍関数((6)式)中のσ2を大きな値に設定し、学習を進めるにつれてσ2を徐々に小さくしていく点が、第1実施例とは異なる。
【0051】
図8は、この学習過程を模式的に示した図である。例えば、図8において勝者ユニットが3行2列のユニットの場合、図8(a)に示すように、最初はこのユニット及びその近傍の広い範囲のユニットについて、重みベクトルを更新する(図8(a)中の黒色のユニットが勝者ユニット、灰色のユニットが重みベクトルを更新する近傍ユニットを表す。以下、図8(b)〜(d)も同様である)。なお、図8(a)において、近傍ユニットの中でも、勝者ユニットに距離が近いユニットほど勝者ユニットの影響を受けやすいものとして、重みベクトルを更新する度合いを大きくする。
【0052】
次に、学習が進むにつれてσ2を徐々に小さくして、図8(b)及び(c)に示すように、重みベクトルを更新する近傍ユニットの範囲を徐々に狭めていく。この場合も、図8(a)と同様に、勝者ユニットに距離が近いユニットほど重みベクトルを更新する度合いを大きくする。そして、最終的にはσ2を最小にすることにより、図8(d)に示すように、勝者ユニットのみの重みベクトルを更新する。
【0053】
このように学習を進めることによって、学習の初期は多くのユニットが勝者ユニットの近傍と見なされるため、大まかなマップが作成される。学習の進行と共に、近傍と見なされるユニットの数は少なくなる。このため、局所的な微調整が進む。最終的に特徴の類似するユニットはより近傍に、特徴の異なるユニットはより遠くに配置されるようになる。この結果、より少ない更新回数で、異常状態を高精度で診断可能なマップを作成することができる。
【0054】
σ2は所定(2回以上)の学習回数を経るごとに一定割合を減少させていっても良いし、1回の学習を経るごとに一定割合を減少させていっても良い。たとえば、σ2の初期値を5.0に設定し、1回の学習を進めるごとにσ2を5/10001ずつ減らすことができる。
【0055】
(第3実施例)
本実施例は、振動体の異常診断装置が、更新手段を有する点が第1及び第2実施例とは異なる。本実施例の振動体の異常診断装置を図9に示す。更新手段17は、所定時間ごとに、センサによる診断用の第1の音の波形の測定、変換手段による診断用の第1の音の波形から診断用の第2の音の波形への変換、抽出手段による診断用の第2の音の波形から診断用の入力データの抽出を行うように指示を出す。また、所定時間ごとに、診断用の入力データをマップ上に配置することにより、診断用振動体が正常状態又は異常状態の何れの状態かを判断するように指示を出すようになっている。このように定期的に、診断を行うことによって、長時間、高精度な診断が可能となる。つまり、本実施例は、振動体にセンサを長時間、接触させて診断を行う定置型診断にも適用できる。
【0056】
(各手段の説明)
以下に、振動体の異常診断装置を構成する各手段を説明する。
センサは、振動を検出し、振動の波形を音の波形に変換できるものであれば特に限定されない。図10は、センサの一例を表す図であり、図10Aはセンサの斜視図、図10Bはセンサの分解断面図を表す。図10に示すように、センサは中空の筒部2を有する。筒部2の一端には針部1が設けられており、この針部1の先端部分3は鋭利な形状になっており、針部1を介して振動体の振動を精確に伝達できるようになっている。筒部2内にはマイク部7が設けられている。
【0057】
診断を行う際には、図11に示すように、このセンサの針部の先端部分3を直接、振動体に接触させる。そうすると、振動体から発生する振動によって針部1も振動し、この振動は針部1内を伝達されて針部1の一端8にまで到達する。筒部2の内部には、この針部の一端8の振動によって音が発生する。この音をマイク部7によって収録する。このマイク部7が収録した音は、電気信号(第1の音の波形)となってプラグ5を介して図示しない変換手段等に伝達される。
【0058】
なお、針部の先端3を振動体に接触させる角度や、針部3の軸方向と筒部2の軸方向がなす角度は、振動体の形状や測定条件によって適宜、設定することができる。振動体の外周面の接平面の垂線とセンサの針部の軸方向がなす角度θ1=0〜30°であることが好ましい。針部の軸方向と筒部の軸方向がなす角度θ2は、0〜5°であることが好ましい。θ1=0〜30°及び/又はθ2=0〜5°であることによって、安定した高精度な診断が可能となる。また、振動体が、狭隘部や接近が困難なところに配置されている場合であっても、容易にセンサを振動体に接触させることができる。
【0059】
また、振動体の異常診断装置を構成する各手段は個々の独立した存在である必要はなく、複数の手段が1個の部材として形成されていること、ある手段が他の手段の一部であること、ある手段の一部と他の手段の一部とが重複していること等が可能である。
【0060】
また、上記の各手段はその機能を実現するように形成されていれば良く、例えば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与されたものや、コンピュータプログラムにより各手段に実現された所定の機能及びこれらの組み合わせ等として実現することができる。
【0061】
例えば、センサを接続する変換手段、抽出手段、作成手段、診断手段及び更新手段は、コンピュータプログラムを読み取って対応する処理動作を実行できるハードウェアとすることができる。具体的には、CPU(Central Processing Unit)を主体として、これに、ROM、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)ユニット等の各種デバイスが接続されたハードウェア(例えば、コンピュータ)などで良い。
【0062】
また、本発明の装置は、センサの測定条件、第1の音の波形をウェーブレット変換により第2の音の波形に変換する条件、自己組織化マップモデルによるマップの作成条件や、得られた第1及び第2の音の波形、入力データ、マップを記憶できるように、記憶手段を有しても良い。この記憶手段は、各種処理を実行させるためのコンピュータプログラム等が事前に格納されたハードウェアであれば良く、例えば、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disc Drive)、記憶装置に交換自在に装着されるCD(Compact Dics)−ROMやFD(Flexible Disc−cartridge)及びこれらの組み合わせ等で実施することが可能である。
【0063】
更に、本発明の装置は、第1及び第2の音の波形やマップを視覚化させる表示手段を有しても良い。この表示手段としては液晶ディスプレイなどを挙げることができる。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
1.マップの作成
振動音の学習を行わせるため、複数個のマップ作成用の12V DCモータ(EM−7(商品名);EPSONJAPAN社製)を準備した。このうち、一部は正常状態のものとし、残りはモータ軸受けの内側にヤスリで傷を付けた異常状態のモータとした。
【0065】
次に、図10に示すセンサを用いて、モータの両端(電源サイドと負荷サイドの部分の振動音を測定した。センサにより得られたこの音の波形は、マップ作成用の第1の音の波形に相当する。図12は正常状態のモータの第1の音の波形の一例、図13は異常状態のモータの第1の音の波形の一例を示す図である。
【0066】
この第1の音の波形に対して、変換手段により、上式(1)及び(2)に従ったウェーブレット変換を行った。この際、上式(2)中のσ1=4とした。このウェーブレット変換後の、マップ作成用の第2の音の波形の一例を、図14及び15に示す。図14は正常状態のモータの第2の音の波形、図15は異常状態のモータの第2の音の波形を表す。なお、図14及び15における、横軸及び縦軸の目盛りは省略する。
【0067】
図14及び15の各音の波形に対して、抽出手段により、50〜1000Hzにおいて周波数を対数換算で均等となるように50分割し、時間についても0.7秒の測定時間を50分割した。各周波数と時間における色を規格化したグレースケールの256階調で換算した(すなわち、真っ黒の場合は0、真っ白の場合は1、真っ黒でも真っ白でもない場合は0から1までの1/255の倍数で表される)、マップ作成用の入力データを抽出した。そして、合計2500個の入力データを成分とする入力ベクトルを得た。
【0068】
次に、作成手段により、この入力ベクトルを用いて正常状態領域及び異常状態領域を有する5行5列のマップを作成した。このマップの作成は、上式(3)〜(6)に従い、入力ベクトルに対して、ニューラルネットワークによる自己組織化マップ(Self Organizing Map)モデルを適用することにより学習を行った。この際、学習終了回数は10000回とした。
【0069】
また、上式(6)中のσ2の初期値は5.0に設定し、1回の学習を進めるごとにσ2を5/10001ずつ減らし、10000回の学習を行った。学習終了後のマップを、図16に示す。図16から明らかなように、正常状態のマップの入力ベクトルはマップ上の左上側、異常状態のマップの入力ベクトルはマップ上の右下側に位置していることが分かる。従って、図16のマップにおいて、1行1列、2行1列、1行2列、2行2列の4つのユニットが占める領域が正常状態領域21、3行3列、4行3列、5行3列、3行4列、4行4列、5行4列、3行5列、4行5列、5行5列、の9つのユニットが占める領域が異常状態領域22となった。
【0070】
2.発火テスト
図16のマップ上に、別に準備した診断用のモータの、診断用の入力ベクトルをマッピングして、正常状態又は異常状態の診断が可能か否かを調べた。
【0071】
8個の診断用の12V DCモータ(EM−7(商品名);EPSONJAPAN社製)を準備し、このうち4個は正常状態(正常モータ)とし、残りの4個はモータ軸受けの内側にヤスリで傷を付けた異常状態のモータ(異常モータ)とした。
【0072】
これらのモータについて、上記と同様のセンサによる、診断用の第1の音の波形の測定、診断用の第1の音の波形から診断用の第2の音の波形への変換、診断用の第2の音の波形からの診断用の入力ベクトルの抽出を行った。
【0073】
次に、診断手段によって、上式(3)と同様にして、入力ベクトルとマップ上の各ユニットの重みベクトルとの間のユークリッド距離を計算した。そして、ユークリッド距離が最小となるユニットを発火ユニットとした。
【0074】
このようにして、8個のモータについて、得られた発火ユニットを下表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
このようにして得られた8つの発火ユニットを図16のマップ上に配置した結果を図17に示す。図17に示すように、正常モータの発火ユニットは全て正常状態領域21内に配置され、異常モータの発火ユニットは全て異常状態領域22内に配置されていることが分かる。以上のように、本実施例により、モータの正常状態又は異常状態を診断できることを確認できた。
【0077】
(参考例1)
本参考例1では、実機モータから発生する振動音を測定して、自己組織化マップ(Self Organizing Map)モデルによりマップを作成し、実機モータの種類によってマップ上のどの位置に配置されるかを調べた。本例では、下表2で表される正常状態のモータを10機、準備し、各モータがマップ上のどの位置に配置されるのか、を調べた。
【0078】
【表2】

【0079】
まず、表2で示される10機のモータについて、センサによりファン側及び負荷側の第1の音の波形を測定した後、変換手段により第2の音の波形に変換した。変換後の第2の音の波形を図18〜22に示す。
【0080】
図18〜22のように得られた第2の音の波形のうち、負荷側の波形を用いて、実施例1と同様にしてマップを作成した。
【0081】
作成後のマップ及びマップ上の各モータの入力ベクトルの勝者ユニットの配置を図23に示す。図23の結果を見ると、測定を行ったモータの中でも回転数及び出力が小さいモータがマップの左側に配置され、回転数及び出力が大きいモータがマップの右側に配置されることが分かる。以上より、本例では、回転数及び出力の大小を診断可能なマップを作成することができた。
【0082】
(参考例2)
図24(a)に示すように、円筒型の外周面を有するモータ23にセンサ24の針部を接触させた状態で、モータ外周面の接平面の垂線とセンサ24の針部の軸方向がなす角度θ1°を変化させて、第1の音の波形を測定した。この後、実施例1と同様にして、第2の音の波形に変換した。θ1=0〜30°における、第2の音の波形を図25に示す。
【0083】
次に、図24(b)に示すように、モータ23にセンサ24を接触させた状態で、センサ24の針部の軸方向と筒部の軸方向がなす角度θ2°を変化させて、第1の音の波形を測定した。この後、実施例1と同様にして、第2の音の波形に変換した。θ2=0〜30°における、第2の音の波形を図27に示す。
【0084】
このθ1=0及びθ2=0における第2の音の波形を用いて、実施例1と同様にしてマップを作成した。この結果、θ1=0及びθ2=0の入力データが31のユニットに配置される、図26に示すマップが得られた。次に、θ1=10°、20°、30°、及びθ2=5°、10°、15°、20°の第2の音の波形に対して実施例1と同様に発火テストを行い、これらの第2の音の波形に対応する入力データを、得られた図26のマップ上に配置した。
【0085】
この結果、θ1=0°、10°、20°、30°の全てが、図26のマップ上の31のユニットに配置された。従って、少なくとも、θ1=0〜30°の角度範囲までは、安定して振動体の診断が可能なことが分かる。
【0086】
また、θ2=0°、5°の入力データは、図26のマップ上の31のユニットに配置されたのに対して、θ2=10°、15°、20°の入力データは32のユニットに配置された。従って、少なくとも、θ2=0〜5°の角度範囲までは、安定して振動体の診断が可能なことが分かる。
【0087】
(参考例3)
第2の音の波形のサンプルデータを用いて、上式(6)中のσ2の初期値を0.5、2.5、5とした。次に、図28に示すように、学習を進めるにつれてσ2を一定割合で減少させ、学習回数が10000回でσ2がほぼ0となるようにしてマップを作成した。
【0088】
この結果を図29に示す。図29(c)に示すように、σ2の初期値が0.5で小さいと、学習範囲が小さいため同じユニットばかりの学習を行うこととなった。このため、全体的に学習を行ったマップが作成されなかった。
【0089】
また、図29(b)に示すように、σ2の初期値が2.5であるとマップは作成されるが,マップ中央の列に白い画像が配置されているのに対して,その周りには似ていない画像が配置されることとなった。このため、類似した状態を表すユニットが集まった領域を有するマップを作成することができなかった。この理由は、σ2を早い段階で小さくしたため、画像の並びが整理されなかったためと考えられる。
【0090】
これに対して、図29(a)のマップは、図29(b)のマップに比べて画像の並び方が整理されており、画像の分類が行いやすいことが分かる。一方、σ2を5よりも大きくすると、ウェーブレット変換の特性である時間軸方向の情報量が少なくなってしまう。このため、本例の結果より、σ2の初期値を5.0に設定し、1回の学習を進めるごとにσ2を5/10001ずつ減らすことにより高精度な診断が可能なマップを作成できたことが分かる。
【符号の説明】
【0091】
1 針部
2 筒部
3 針部の先端
4 スライド部分
5 ミニプラグ
6 バネ
7 マイク部
8 筒部の一端
9 モータ
11 振動体
12 センサ
13 変換手段
14 抽出手段
15 作成手段
16 診断手段
17 更新手段
21 正常状態領域
22 異常状態領域
23 モータ
24 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体に接触して、前記振動体から発生する振動を第1の音の波形に変換するセンサと、
前記第1の音の波形をウェーブレット変換により第2の音の波形に変換する変換手段と、
前記第2の音の波形から入力データを抽出する抽出手段と、
前記入力データに対して、自己組織化マップ(Self Organizing Map)モデルを適用することにより、正常状態領域及び異常状態領域を有するマップを作成する作成手段と、
前記マップ上に前記入力データを配置した際の位置が前記正常状態領域又は異常状態領域の何れの領域に含まれるかを判断することにより、前記振動体が正常状態又は異常状態の何れの状態かを診断する診断手段と、
を有する振動体の異常診断装置。
【請求項2】
前記センサは、
中空状の筒部と、
前記筒部の一端に設けられた針部であって、前記針部の先端が前記振動体に接触可能な針部と、
前記筒部内に設けられ、前記針部を介して伝達される前記振動体の振動によって前記筒部内に発生する音を検出するマイク部と、
を有する請求項1に記載の振動体の異常診断装置。
【請求項3】
前記針部の軸方向と前記筒部の軸方向がなす角度は、0〜5°の範囲内である請求項2に記載の振動体の異常診断装置。
【請求項4】
前記作成手段は、
前記自己組織化マップモデルの近傍関数h(t)として下記式(1)で表される関数を使用し、下記式(1)中のσ2を学習回数の増加と共に減少させる請求項1〜3の何れか1項に記載の振動体の異常診断装置。
【数1】

(ただし、式(1)中のh(t)は近傍関数、a*は勝者ユニットのマップ上の位置を表す行数、b*は勝者ユニットのマップ上の位置を表す列数、aは勝者ユニットの近傍のユニットのマップ上の位置を表す行数、bは勝者ユニットの近傍のユニットのマップ上の位置を表す列数、σ2はパラメータを表す)。
【請求項5】
更に、更新手段を有し、
前記更新手段は、
所定時間ごとに、前記センサによる第1の音の波形の測定、前記変換手段による第1の音の波形から第2の音の波形への変換、前記抽出手段による前記第2の音の波形からの入力データの抽出を行ように指示を出し、且つ
前記診断手段に対して、所定時間ごとに前記入力データを前記マップ上に配置することにより、前記振動体が正常状態又は異常状態の何れの状態かを診断するように指示を出す、請求項1〜4の何れか1項に記載の振動体の異常診断装置。
【請求項6】
前記振動体は、回転モータである請求項1〜5の何れか1項に記載の振動体の異常診断装置。
【請求項7】
(1)正常状態のマップ作成用振動体及び異常状態のマップ作成用振動体を準備する工程と、
(2)前記正常状態及び異常状態のマップ作成用振動体に接触させたセンサにより、前記マップ作成用振動体から発生する振動を、マップ作成用の第1の音の波形に変換する工程と、
(3)変換手段を用いることにより、前記マップ作成用の第1の音の波形を、ウェーブレット変換によりマップ作成用の第2の音の波形に変換する工程と、
(4)抽出手段により、前記マップ作成用の第2の音の波形からマップ作成用の入力データを抽出する工程と、
(5)作成手段により、前記マップ作成用の入力データに対して、自己組織化マップ(Self Organizing Map)モデルを適用することにより、正常状態領域及び異常状態領域を有するマップを作成する工程と、
(6)診断用振動体に接触させたセンサにより、前記診断用振動体から発生する振動を診断用の第1の音の波形に変換する工程と、
(7)変換手段を用いることにより、前記診断用の第1の音の波形を、ウェーブレット変換により診断用の第2の音の波形に変換する工程と、
(8)抽出手段により、前記診断用の第2の音の波形から診断用の入力データを抽出する工程と、
(9)診断手段により、前記マップ上に前記診断用の入力データを配置した際の位置が前記正常状態領域又は異常状態領域の何れの領域に含まれるかを判断することにより、前記診断用振動体が正常状態又は異常状態の何れの状態かを診断する工程と、
を有する振動体の異常診断方法。
【請求項8】
前記センサは、
中空状の筒部と、
前記筒部の一端に設けられた針部であって、前記針部の先端が振動体に接触可能な針部と、
前記筒部内に設けられ、前記針部を介して伝達される振動体の振動によって前記筒部内に発生する音を検出するマイク部と、
を有する請求項7に記載の振動体の異常診断方法。
【請求項9】
前記針部の軸方向と前記筒部の軸方向がなす角度は、0〜5°の範囲内である請求項8に記載の振動体の異常診断方法。
【請求項10】
前記工程(5)において、
前記自己組織化マップモデルの近傍関数h(t)として下記式(1)で表される関数を使用し、下記式(1)中のσ2を学習回数の増加と共に減少させる請求項7〜9の何れか1項に記載の振動体の異常診断方法。
【数2】

(ただし、式(1)中のh(t)は近傍関数、a*は勝者ユニットのマップ上の位置を表す行数、b*は勝者ユニットのマップ上の位置を表す列数、aは勝者ユニットの近傍のユニットのマップ上の位置を表す行数、bは勝者ユニットの近傍のユニットのマップ上の位置を表す列数、σ2はパラメータを表す)。
【請求項11】
所定時間ごとに、前記工程(6)〜(9)を行うことにより、前記診断用振動体が正常状態又は異常状態の何れの状態かを診断する、請求項7〜10の何れか1項に記載の振動体の異常診断方法。
【請求項12】
前記マップ作成用振動体及び診断用振動体は、回転モータである請求項7〜11の何れか1項に記載の振動体の異常診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図17】
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【図24】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−107093(P2011−107093A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265323(P2009−265323)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】