説明

振動型センサー回路

【課題】移相回路の温度の影響をキャンセルする。
【解決手段】第1の圧電振動子10と、第2の圧電振動子20と、第1の圧電振動子10を発振させ発振信号aを出力する発振回路30と、発振信号aの位相を−45°移相させた第1の移相信号bを出力する第1の抵抗R1と第1の容量素子C1とを含む第1の移相回路40と、発振信号aの位相を+45°移相させた第2の移相信号cを出力する第2の抵抗R2と第2の容量素子C2とを含む第2の移相回路50と、第2の移相信号cに基づき第2の圧電振動子20を共振させた共振信号dを出力する共振回路60と、第1の移相信号bと共振信号dとを乗算した乗算信号eを出力する乗算回路70と、乗算信号を積分した積分信号を出力する積分回路と、を含む振動型センサー回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサー、圧力センサー、温度センサー、力覚センサーなどの振動型センサーを用いた振動型センサー回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の振動型センサーの一種である加速度センサーは、所定の質量を有するマス部と、これを支持する梁部などのバネ要素で形成されたものが知られている。このような加速度センサーでは、バネ要素に生じた応力が加速度に対応するので、この応力を測定することにより、加速度を検出している。具体的には、加速度がマス部に作用すると、マス部は、バネ要素に生じた応力がマス部の慣性力とつりあうまで変位する。したがって、この変位から、バネ要素に生じた応力を検出し、加速度を知ることができるものである。
【0003】
しかしながら、このような方式の加速度センサーでは、応力検出に半導体センサーなどの特別な検出手段を用いる必要があることや、応力−電圧変換効率の問題などが指摘されている。
【0004】
この問題を解決するために、例えば特許文献1には、周波数変化型加速度検出素子を発振回路で発振させておき、その出力を90°移相器に通してから別の共振回路に注入し、加速度印加により周波数が変化すると共振回路から出力される位相が変化しそれを検波することで加速度値を求める方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−26303号公報(図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法では、図3に示すように90°移相器150は、コンデンサーC3と抵抗R3を含む+45°位相回路151とコンデンサーC4と抵抗R4を含む+45°位相回路152とを組み合わせた回路で構成されており、コンデンサーC3,C4と抵抗R3,R4とが温度特性を持つ。このため、圧電振動子10,20とからなる加速度センサー2の感度が十分に高い場合は温度特性による位相変化は無視できるが、感度が低い場合はこの影響が無視できなくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
第1の圧電振動子と、第2の圧電振動子と、前記第1の圧電振動子を発振させ発振信号を出力する発振回路と、前記発振信号の位相を−45°移相させた第1の移相信号を出力する第1の抵抗と第1の容量素子とを含む第1の移相回路と、前記発振信号の位相を+45°移相させた第2の移相信号を出力する第2の抵抗と第2の容量素子とを含む第2の移相回路と、前記第2の移相信号に基づき前記第2の圧電振動子を共振させた共振信号を出力する共振回路と、前記第1の移相信号と前記共振信号とを乗算した乗算信号を出力する乗算回路と、前記乗算信号を積分した積分信号を出力する積分回路と、を含む、ことを特徴とする振動型センサー回路。
【0009】
この構成によれば、第1の移相回路に含まれる第1の抵抗と第1の容量素子の値と第2の移相回路に含まれる第2の抵抗と第2の容量素子の値とが温度の影響でそれぞれ同様に変化するので、温度特性による位相変化をキャンセルすることができ、安定した感度を保つことができる。
【0010】
[適用例2]
上記に記載の振動型センサー回路において、前記第1の抵抗の抵抗値と前記第2の抵抗の抵抗値とは略等しく、かつ、前記第1の容量素子の容量値と前記第2の容量素子の容量値とは略等しい、ことを特徴とする振動型センサー回路。
【0011】
この構成によれば、第1の移相回路に含まれる第1の抵抗と第1の容量素子の値と第2の移相回路に含まれる第2の抵抗と第2の容量素子の値とが温度の影響でそれぞれ同様に変化するので、温度特性による位相変化をキャンセルすることができ、安定した感度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る振動型センサー回路の構成を示す回路図。
【図2】振動型センサーの一種である加速度センサーの構成を示すブロック図。
【図3】従来の振動型センサー回路の構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、振動型センサー回路の実施形態について図面に従って説明する。
【0014】
(第1実施形態)
<振動型センサー回路の構成>
先ず、第1実施形態に係る振動型センサー回路の構成について、図1を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る振動型センサー回路の構成を示す回路図である。
【0015】
図1に示すように、振動型センサー回路1は、第1の圧電振動子である圧電振動子10と、第2の圧電振動子である圧電振動子20と、発振回路30と、第1の移相回路である−45°移相回路40と、第2の移相回路である+45°移相回路50と、共振回路60と、乗算回路70と、積分回路80と、から構成されている。
【0016】
圧電振動子10及び圧電振動子20は、図2に示すように振動型センサーの一種である加速度センサー2を構成している。図1に示す加速度センサー2において、圧電振動子10及び圧電振動子20は、検出軸方向が互いに逆向きであり、例えば図2に示すように各々の振動腕11,21が正反対の方向となるように配置されている。
【0017】
発振回路30は、圧電振動子10を発振させ発振信号aを出力する。
【0018】
−45°移相回路40は、第1の抵抗である抵抗R1と第1の容量素子であるコンデンサーC1とを含んで構成されている。抵抗R1の一方の端子には発振信号aが入力され、抵抗R1の他方の端子から発振信号aの位相を−45°移相させた第1の移相信号である移相信号bが出力される。コンデンサーC1は、抵抗R1の他方の端子と接地電位との間に接続されている。
【0019】
+45°移相回路50は、第2の抵抗である抵抗R2と第2の容量素子であるコンデンサーC2とを含んで構成されている。コンデンサーC2の一方の端子には発振信号aが入力され、コンデンサーC2の他方の端子から発振信号aの位相を+45°移相させた第2の移相信号である移相信号cが出力される。抵抗R2は、コンデンサーC2の他方の端子と接地電位との間に接続されている。
【0020】
共振回路60は、移相信号cに基づき圧電振動子20を共振させた共振信号dを出力する。
【0021】
乗算回路70は、移相信号bと共振信号dとを乗算した乗算信号eを出力する。
【0022】
積分回路80は、乗算信号eを積分した積分信号OUTを出力する。
【0023】
なお、抵抗R1及び抵抗R2の抵抗値は略等しく、コンデンサーC1及びコンデンサーC2の容量値は略等しくなるように設計されている。
【0024】
以上に述べた本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0025】
本実施形態では、−45°移相回路40に含まれる抵抗R1とコンデンサーC1の値と+45°移相回路50に含まれる抵抗R2とコンデンサーC2の値とが温度の影響でそれぞれ同様に変化するので、温度特性による位相変化をキャンセルすることができ、安定した感度を保つことができる。
【0026】
以上、振動型センサー回路の実施形態を説明したが、こうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることができる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0027】
(変形例1)振動型センサー回路の変形例1について説明する。前記第1実施形態では、図1に示すように−45°移相回路40と+45°移相回路50とを配置するように説明したが、逆に配置してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…振動型センサー回路、10…圧電振動子、11,21…振動腕、20…圧電振動子、30…発振回路、40…−45°移相回路、50…+45°移相回路、60…共振回路、70…乗算回路、80…積分回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧電振動子と、
第2の圧電振動子と、
前記第1の圧電振動子を発振させ発振信号を出力する発振回路と、
前記発振信号の位相を−45°移相させた第1の移相信号を出力する第1の抵抗と第1の容量素子とを含む第1の移相回路と、
前記発振信号の位相を+45°移相させた第2の移相信号を出力する第2の抵抗と第2の容量素子とを含む第2の移相回路と、
前記第2の移相信号に基づき前記第2の圧電振動子を共振させた共振信号を出力する共振回路と、
前記第1の移相信号と前記共振信号とを乗算した乗算信号を出力する乗算回路と、
前記乗算信号を積分した積分信号を出力する積分回路と、
を含む、
ことを特徴とする振動型センサー回路。
【請求項2】
請求項1に記載の振動型センサー回路において、前記第1の抵抗の抵抗値と前記第2の抵抗の抵抗値とは略等しく、かつ、前記第1の容量素子の容量値と前記第2の容量素子の容量値とは略等しい、ことを特徴とする振動型センサー回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate