振動式部品搬送装置
【課題】複合振動式の部品搬送装置における部品搬送部材のピッチング運動を確実に抑えられるようにする。
【解決手段】トラフ(部品搬送部材)1が取り付けられる上部振動体2と基台3との間に中間振動体4を設け、中間振動体4と基台3とを水平振動用板ばね5で連結し、上部振動体2と中間振動体4とを鉛直振動用板ばね6で連結した振動式部品搬送装置において、基台3と床面Fとの間に防振ゴム18を設けるとともに、基台3の両端に錘19を設けて、基台3のピッチング運動の振幅が、これと逆位相となるトラフ1の基台3に対する相対的なピッチング運動の振幅に近づくように、基台3の質量を調整することにより、床上から見たトラフ1のピッチング運動を確実に抑制できるようにしたのである。
【解決手段】トラフ(部品搬送部材)1が取り付けられる上部振動体2と基台3との間に中間振動体4を設け、中間振動体4と基台3とを水平振動用板ばね5で連結し、上部振動体2と中間振動体4とを鉛直振動用板ばね6で連結した振動式部品搬送装置において、基台3と床面Fとの間に防振ゴム18を設けるとともに、基台3の両端に錘19を設けて、基台3のピッチング運動の振幅が、これと逆位相となるトラフ1の基台3に対する相対的なピッチング運動の振幅に近づくように、基台3の質量を調整することにより、床上から見たトラフ1のピッチング運動を確実に抑制できるようにしたのである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加振機構の駆動により部品搬送部材を振動させて部品を搬送する振動式部品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動式部品搬送装置には、部品搬送部材に対して部品搬送に最適な振動を付与することを目的として、鉛直方向に向けた水平振動用板ばねで床上に設置される基台と中間振動体とを連結し、水平方向に向けた鉛直振動用板ばねで部品搬送部材と中間振動体とを連結して、部品搬送部材の水平方向の振動と鉛直方向の振動をそれぞれ調整できる構成とした複合振動式のものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、上記のような複合振動式の部品搬送装置は、通常、部品搬送部材(これに取り付けられる上部振動体等も含む)の重心Gと支点の高さ方向位置に差があるため、部品搬送部材が水平方向に変位したときに重心Gまわりの回転運動(以下、「ピッチング運動」と称する。)を生じてしまう。したがって、実際に部品搬送部材に所望の振動を付与することはできず、安定した部品搬送が難しいという問題があった。
【0004】
これに対して、特許文献2では、複合振動式の部品搬送装置において、鉛直振動用板ばねを2枚1組とし、部品搬送部材および中間振動体とともにラーメン構造を構成するように配置することにより、ピッチング運動の発生を防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−84707号公報
【特許文献2】特開2003−40418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2で提案されているように鉛直振動用板ばねを配置した部品搬送装置においても、搬送する部品の性状や部品供給相手の構造等によって部品搬送部材が長くなったり質量が増加したりした場合には、部品搬送部材の重心Gまわりのモーメントが大きくなるため、ピッチング運動が発生することがある。また、部品搬送部材が非対称な形状となり、その重心Gの位置が加振機構を構成する電磁石の吸引位置からずれた場合は、その吸引力が重心Gからずれた位置に作用するため、その吸引力によって重心Gまわりのモーメントが生じ、ピッチング運動が発生する。
【0007】
一方、特許文献1等に記載された一般的な複合振動式の部品搬送装置でも、外部への振動の伝搬を遮断するために基台と床面との間に防振ゴムやコイルばね等の防振部材を設けた場合には、加振機構の電磁石で発生させる吸引力の反力や部品搬送部材の振動に伴う反力が基台の重心G’まわりのモーメントを生じ、ピッチング運動を発生させる。この基台の重心G’まわりのピッチング運動は部品搬送部材の振動にも影響を与え、部品搬送部材の重心Gまわりのピッチング運動を発生させてしまう。
【0008】
上述したように、従来の複合振動式部品搬送装置では、部品搬送部材の重心Gまわりのピッチング運動の発生を確実に抑えることはできず、ピッチング運動の発生によって部品搬送部材の水平方向の振動と鉛直方向の振動を所望のものに調整できなくなり、部品搬送が不安定になるおそれがある。
【0009】
本発明の課題は、複合振動式の部品搬送装置における部品搬送部材のピッチング運動を確実に抑えられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、部品搬送路が形成された部品搬送部材と、前記部品搬送部材が取り付けられる上部振動体と、床上に設置される基台と、前記上部振動体と基台との間に設けられる中間振動体と、前記中間振動体と基台とを連結する第1の弾性部材と、前記上部振動体と中間振動体とを連結する第2の弾性部材とを備え、前記第1の弾性部材と第2の弾性部材のうちの一方を水平振動用弾性部材、他方を鉛直振動用弾性部材とし、前記水平振動用弾性部材と第1の加振機構とで部品搬送部材に水平方向の振動を付与し、前記鉛直振動用弾性部材と第2の加振機構とで部品搬送部材に鉛直方向の振動を付与するようにした振動式部品搬送装置において、前記基台に錘を設けた構成を採用した。
【0011】
すなわち、基台と床面との間に防振部材を設けると、床上から見た部品搬送部材のピッチング運動は、部品搬送部材の基台に対する相対的なピッチング運動(以下、単に「相対的ピッチング運動」とも称する。)と、これと逆位相の基台のピッチング運動とを合成したものとなるので、基台に錘を設けて、基台のピッチング運動の振幅が部品搬送部材の相対的ピッチング運動の振幅に近づくように基台の質量を調整することにより、床上から見た部品搬送部材のピッチング運動を確実に抑制できるようにしたのである。
【0012】
例えば、部品搬送部材に作用するモーメントが小さい場合(部品搬送部材が短い場合や質量が小さい場合)は、部品搬送部材の相対的ピッチング運動の振幅が小さくなるため、基台の質量を減らして基台のピッチング運動の振幅を小さくすればよい。一方、部品搬送部材に作用するモーメントが大きい場合(部品搬送部材が長い場合や質量が大きい場合)には、部品搬送部材の相対的ピッチング運動の振幅が大きくなるため、基台の質量を増やして基台のピッチング運動の振幅を大きくすればよい。
【0013】
なお、部品搬送部材の質量を調整しても、上記と同じ作用効果を得ることができるが、部品搬送部材の質量を増加させた場合には、部品搬送部材の固有振動数が小さくなり、その固有振動数付近に設定される駆動周波数(振動周波数)も低くなって、部品搬送速度が遅くなったり加振機構の電磁石への負荷が大きくなったりするので、基台の質量を調整する方が望ましい。
【0014】
ここで、前記錘は、複数の錘片からなり、その錘片の数を増減することにより質量調整が可能なものとするとよく、前記基台の端部に設けることが望ましい。基台の質量を変化させる部位が重心から遠いほど、質量の増減によるピッチング運動の振幅への影響が大きくなり、質量調整が容易になるからである。
【0015】
また、前記錘は複数箇所に設けることが望ましい。基台の1箇所のみ質量を変化させると基台の重心が移動し、ピッチング運動の中心がずれて調整が困難になるが、錘の設置箇所を複数にすれば、基台の重心が移動しないように錘の質量を調整できるからである。逆に、複数箇所に設けた錘の質量を調整して基台の重心の位置を装置中心付近に移動させることにより、搬送挙動の安定化を図ることもできる。また、前記錘の設置位置を鉛直方向に調整可能としても、基台の重心を装置中心付近に移動させて安定した搬送挙動が得られるようにすることができる。
【0016】
前記水平振動用弾性部材は、前記中間振動体への固定位置と前記基台または上部振動体への固定位置が部品搬送方向と直交する同一水平線上に位置するように配置するとよい。このようにすれば、水平振動用弾性部材の水平方向の変形が鉛直方向の変位につながらなくなり、水平方向の振動に起因する鉛直方向の振動の発生が抑えられる。このとき、前記水平振動用弾性部材を、部品搬送方向に複数設け、それぞれの前記中間振動体への固定位置と前記基台または上部振動体への固定位置の位置関係が部品搬送方向で交互に入れ替わるように配置すれば、水平面内で部品搬送方向と直交する方向の振動も抑制できるので、搬送挙動をさらに安定させることができる。
【0017】
一方、前記鉛直振動用弾性部材は、部品搬送方向と直交する同一水平線上の2箇所の固定位置で固定したり、部品搬送方向と平行な同一水平線上の2箇所の固定位置で固定したりすればよい。
【0018】
前記各加振機構を電磁石と可動鉄心とで構成し、そのうちの一方の電磁石への印加電圧設定回路に、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段と、前記基準波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設け、他方の電磁石への印加電圧設定回路には、前記基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段と、位相差調整手段で発生した波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設けて、各電磁石への印加電圧の波形、周期、位相差および振幅を自在に制御できるようにすれば、水平方向の振動と鉛直方向の振動を容易に所望の振動に近づけることができる。
【0019】
また、前記各加振機構の電磁石への印加電圧設定回路に、それぞれの前記波形振幅調整手段で振幅を調整された波形をPWM(Pulse Width Modulation)信号に変換するPWM信号発生手段を設けて、PWM方式で各加振機構を駆動することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の振動式部品搬送装置は、上述したように、基台に錘を設けたものであるから、基台のピッチング運動の振幅が、これと逆位相となる部品搬送部材の基台に対する相対的なピッチング運動の振幅に近づくように、基台の質量を調整して、床上から見た部品搬送部材のピッチング運動を確実に抑制でき、ひいては部品搬送部材に所望の振動を容易に付与することができ、安定した部品搬送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の部品搬送装置の一部切欠き正面図
【図2】図1のトラフを除いた上面図
【図3】図1の側面図
【図4】図1の部品搬送装置の各加振機構の印加電圧設定回路の概略図
【図5】図1の鉛直振動用板ばねの配置の変形例を示す一部切欠き正面図
【図6】図5のトラフを除いた上面図
【図7】本発明の作用を説明するための部品搬送装置の簡易モデルの正面図
【図8】a、bは、それぞれ図7の簡易モデルでのピッチング運動の説明図
【図9】一般的な部品搬送装置のピッチング運動の挙動を示すグラフ
【図10】図1の部品搬送装置のピッチング運動の挙動を示すグラフ
【図11】一般的な部品搬送装置の別のピッチング運動の挙動を示すグラフ
【図12】図1の部品搬送装置の別のピッチング運動の挙動を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この振動式部品搬送装置は、図1乃至図3に示すように、直線状の搬送路1aが形成されたトラフ(部品搬送部材)1を上部振動体2の上面に取り付け、上部振動体2と床上に設置される基台3との間に中間振動体4を設け、中間振動体4と基台3とを2つの第1の弾性部材としての板ばね5で連結し、上部振動体2と中間振動体4とを4つの第2の弾性部材としての板ばね6で連結し、中間振動体4と基台3の間に水平方向(部品搬送方向、図中のX方向)の振動を発生させる第1の加振機構7を設け、上部振動体2と基台3の間に鉛直方向(図中のZ方向)の振動を発生させる第2の加振機構8を設けたものである。
【0023】
前記基台3は、矩形状に形成され、その対角の二隅に柱状の板ばね取付部3aが立設されており、床面Fに固定された防振ゴム(防振部材)18に支持されている。なお、防振部材にはコイルばね等を用いてもよい。
【0024】
また、基台3の部品搬送方向の両端には、それぞれ錘19が設けられている。これらの各錘19は、脱着可能な複数の錘片19aからなり、その錘片19aの数を増減することにより質量調整が可能なものとなっている。ここで、図示は省略するが、錘19の基台3への取付方法は、各錘片19aに通し孔を設け、ボルト等でねじ止めする方法とすることができる。このとき、基台3に設けるねじ穴を高さ方向に複数配置して、錘19の基台3への取付位置を鉛直方向に調整可能とすることにより、搬送挙動の安定化を図るために基台3の重心の位置を装置中心付近に移動させたり、錘19と他の機器との干渉を避けたりすることが容易にできるようになる。なお、この実施形態では錘19を複数の錘片19aで構成したが、単体で所望の質量となっている錘を用いてもよい。
【0025】
前記中間振動体4は、矩形枠形状に形成され、その対角の二隅が外周側で基台3の板ばね取付部3aの上端部と対向し、内周面が上部振動体2の下部と対向するように配置されている。また、その外周面には、基台3の板ばね取付部3aと対向しない対角の二隅から部品搬送方向(X方向)に突出する板ばね取付部4aが設けられている。
【0026】
前記第1の板ばね5は、表裏面を部品搬送方向に向けられ、両端の固定位置が部品搬送方向と直交する同一水平線上に位置するように、一端部を基台3の板ばね取付部3aに他端部を中間振動体4の板ばね取付部4aにそれぞれ固定されて、中間振動体4を水平方向に振動可能に支持する水平振動用板ばね(水平振動用弾性部材)となっている。ここで、基台3の2つの板ばね取付部3aと、中間振動体4の2つの板ばね取付部4aとは、同じ取付部の設置位置どうしを結んだ直線が平面視で交差するように設けられているため、2つの水平振動用板ばね5は、それぞれの2箇所の固定位置の位置関係が部品搬送方向で入れ替わるように配置されることになる。
【0027】
一方、前記第2の板ばね6は、表裏面を鉛直方向に向けられ、両端の固定位置が部品搬送方向と直交する同一水平線上に位置するように、一端部を上部振動体2の下部に他端部を中間振動体4の長手方向縁部にそれぞれ固定されて、上部振動体2を鉛直方向に振動可能に支持する鉛直振動用板ばね(鉛直振動用弾性部材)となっている。
【0028】
また、前記第1の加振機構7は、基台3上に設置される交流電磁石9と、この電磁石9と所定の間隔をおいて対向するように中間振動体4に取り付けられる可動鉄心10とで構成されている。なお、可動鉄心10は、この例では中間振動体4に取り付けたが、上部振動体2に取り付けるようにしてもよい。一方、前記第2の加振機構8は、基台3上に設置される交流電磁石11と、この電磁石11と所定の間隔をおいて対向するように上部振動体2に取り付けられる可動鉄心12とで構成されている。
【0029】
第1の加振機構7の電磁石9に通電すると、電磁石9と可動鉄心10との間に断続的な電磁吸引力が作用し、この電磁吸引力と水平振動用板ばね5の復元力により、中間振動体4に水平方向の振動が発生し、この振動が鉛直振動用板ばね6を介して上部振動体2およびトラフ1に伝わる。また、第2の加振機構8の電磁石11に通電すると、電磁石11と可動鉄心12との間に断続的な電磁吸引力が作用し、この電磁吸引力と鉛直振動用板ばね6の復元力により、上部振動体2およびトラフ1に鉛直方向の振動が発生する。そして、この水平方向の振動と鉛直方向の振動により、トラフ1に供給された部品が直線状搬送路1aに沿って搬送される。
【0030】
したがって、各加振機構7、8の電磁石9、11への印加電圧を別々に設定することにより、トラフ1の水平方向の振動と鉛直方向の振動をそれぞれ調整することができる。
【0031】
図4は各加振機構7、8の電磁石9、11へ印加電圧を設定する回路を示す。第1の加振機構7の回路には、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段13が設けられている。基準波形発生手段13では、波形の種類(例えば、正弦波)とその波形の周期(周波数)の設定値に応じた基準波形を発生させる。一方、第2の加振機構8の回路には、基準波形発生手段13で発生した基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段14が設けられている。
【0032】
そして、各加振機構7、8の回路において、基準波形発生手段13または位相差調整手段14で発生した波形を、波形振幅調整手段15で所定の振幅に調整して、PWM信号発生手段16でPWM信号に変換した後、電圧増幅手段17で昇圧し、それぞれの電磁石9、11へ印加するようになっている。これにより、各電磁石9、11への印加電圧の波形、周期、位相差および振幅を自在に制御して、水平方向の振動と鉛直方向の振動をそれぞれ調整することができる。なお、PWM方式で各加振機構を駆動しない場合は、PWM信号発生手段16は不要となる。
【0033】
この振動式部品搬送装置は、上記の構成であり、第1の加振機構7の駆動によって中間振動体4に振動が発生するとき、部品搬送方向と直交する同一水平線上の2箇所の固定位置で固定された水平振動用板ばね5は、水平方向にのみ変形して元の状態に戻る動作を繰り返す。これにより、中間振動体4に発生する振動は、鉛直方向の振動をほとんど含まず、ほぼ水平方向のみの振動となる。しかも、2つの水平振動用板ばね5の固定位置の位置関係が部品搬送方向で入れ替わるように配置されているので、水平面内で部品搬送方向と直交する方向(図2、3におけるY方向)の振動も抑制できる。
【0034】
図5および図6は上述した実施形態の鉛直振動用板ばね6の配置の変形例を示す。この変形例では、鉛直振動用板ばね6を、部品搬送方向(図中のX方向)と平行な同一水平線上の2箇所の固定位置で、上部振動体2と中間振動体4の短手方向縁部に固定している。
【0035】
次に、上述した実施形態における本発明の作用を図7乃至図12に基づいて説明する。図7は複合振動式の部品搬送装置の簡易モデルを示す。この簡易モデルにおける上部剛体Aは、実施形態のトラフ1(上部振動体2を含む)に相当する。また、ばねKaは鉛直振動用板ばね6に、下部剛体Bは中間振動体4および基台3に、ばねKbは防振ゴム18にそれぞれ相当する。そして、重心Gaは上部剛体Aの重心を、重心Gbは下部剛体Bの重心を表している。なお、実際には中間振動体4と基台3とは水平振動用板ばね5で連結されているが、水平振動用板ばね5は鉛直方向には作用しないため、この簡易モデルでは考慮しない。
【0036】
上記簡易モデルを用いて一般的な複合振動式部品搬送装置の鉛直方向の振動挙動を表すと、図8(a)、(b)に示すように、上部剛体Aが重心Gaのまわりにピッチング運動し、下部剛体Bが重心Gbのまわりにピッチング運動するものとなる。図8(a)は上部剛体Aの下部剛体Bに対する相対的なピッチング運動の振幅が下部剛体Bのピッチング運動の振幅よりも小さい場合であり、図8(b)は図8(a)と逆の場合である。
【0037】
図9は、部品搬送装置が図8(a)の振動挙動をとる場合について、図7中の上部剛体AのA1点および下部剛体BのB1点の鉛直方向変位の時間的変化を示すものである。図9中の点線はB1点から見たA1点の相対変位(上部剛体Aの相対的ピッチング運動)、一点鎖線は床上から見たB1点の絶対変位(下部剛体Bのピッチング運動)、実線が床上から見たA1点の絶対変位(上部剛体Aのピッチング運動)である(後述する図10乃至図12についても同じ)。A1点の相対変位とB1点の絶対変位は逆位相となっており、その合成がA1点の絶対変位となっている。この場合、実施形態の部品搬送装置では、下部剛体Bの質量(基台3に設けた錘19の質量)を減らすことにより、図10に示すように、下部剛体Bのピッチング運動の振幅を小さくして上部剛体Aの相対的ピッチング運動の振幅に近づけ、上部剛体Aのピッチング運動を抑制することができる。
【0038】
図11は、部品搬送装置が図8(b)の振動挙動をとる場合の、上部剛体AのA1点および下部剛体BのB1点の鉛直方向変位の時間的変化を示す。この場合には、実施形態の部品搬送装置では、下部剛体Bの質量(基台3に設けた錘19の質量)を増やすことにより、図12に示すように、下部剛体Bのピッチング運動の振幅を大きくして上部剛体Aの相対的ピッチング運動の振幅に近づけ、上部剛体Aのピッチング運動を抑制することができる。
【0039】
なお、実際には、上部剛体Aのピッチング運動が減少するにつれて下部剛体Bのピッチング運動も減少するので、図10および図11に示したA1点の相対変位やB1点の絶対変位も減少する。
【0040】
上述したように、実施形態の部品搬送装置は、基台3と床面Fとの間に防振ゴム18を設けるとともに、基台3に錘19を設けて、基台3のピッチング運動の振幅が、これと逆位相となるトラフ1の基台3に対する相対的なピッチング運動の振幅に近づくように、基台3の質量を調整することにより、床上から見たトラフ1のピッチング運動を確実に抑えられるようにしたので、安定した部品搬送を実現することができる。
【0041】
上述した実施形態では、中間振動体と基台とを連結する第1の板ばねを水平振動用板ばねとし、上部振動体と中間振動体とを連結する第2の板ばねを鉛直振動用板ばねとしたが、これとは逆に、第1の板ばねが鉛直振動用板ばね、第2の板ばねが水平振動用板ばねとなるように構成してもよい。また、板ばねは各箇所に1枚ずつ配置したが、2枚以上重ねたものを1つとして使用してもよい。
【0042】
また、水平振動用板ばねは2箇所に配置したが、3箇所以上で構成してもよく、その場合もそれぞれの中間振動体への固定位置と基台への固定位置との位置関係が部品搬送方向で交互に入れ替わるように配置すればよい。一方、鉛直振動用板ばねは4箇所に配置したが、2箇所以上で構成してもよい。
【0043】
さらに、実施形態では、水平振動用弾性部材および鉛直振動用弾性部材に板ばねを使用しているが、板ばね以外の弾性部材ももちろん用いることができる。また、各加振機構は、電磁石と可動鉄心とからなるものを使用しているが、これに限らず、同様の加振力を発生させることができるアクチュエータであればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 トラフ(部品搬送部材)
2 上部振動体
3 基台
4 中間振動体
5 第1の板ばね(水平振動用板ばね)
6 第2の板ばね(鉛直振動用板ばね)
7 第1の加振機構
8 第2の加振機構
9、11 電磁石
10、12 可動鉄心
18 防振ゴム(防振部材)
19 錘
19a 錘片
【技術分野】
【0001】
本発明は、加振機構の駆動により部品搬送部材を振動させて部品を搬送する振動式部品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動式部品搬送装置には、部品搬送部材に対して部品搬送に最適な振動を付与することを目的として、鉛直方向に向けた水平振動用板ばねで床上に設置される基台と中間振動体とを連結し、水平方向に向けた鉛直振動用板ばねで部品搬送部材と中間振動体とを連結して、部品搬送部材の水平方向の振動と鉛直方向の振動をそれぞれ調整できる構成とした複合振動式のものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、上記のような複合振動式の部品搬送装置は、通常、部品搬送部材(これに取り付けられる上部振動体等も含む)の重心Gと支点の高さ方向位置に差があるため、部品搬送部材が水平方向に変位したときに重心Gまわりの回転運動(以下、「ピッチング運動」と称する。)を生じてしまう。したがって、実際に部品搬送部材に所望の振動を付与することはできず、安定した部品搬送が難しいという問題があった。
【0004】
これに対して、特許文献2では、複合振動式の部品搬送装置において、鉛直振動用板ばねを2枚1組とし、部品搬送部材および中間振動体とともにラーメン構造を構成するように配置することにより、ピッチング運動の発生を防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−84707号公報
【特許文献2】特開2003−40418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2で提案されているように鉛直振動用板ばねを配置した部品搬送装置においても、搬送する部品の性状や部品供給相手の構造等によって部品搬送部材が長くなったり質量が増加したりした場合には、部品搬送部材の重心Gまわりのモーメントが大きくなるため、ピッチング運動が発生することがある。また、部品搬送部材が非対称な形状となり、その重心Gの位置が加振機構を構成する電磁石の吸引位置からずれた場合は、その吸引力が重心Gからずれた位置に作用するため、その吸引力によって重心Gまわりのモーメントが生じ、ピッチング運動が発生する。
【0007】
一方、特許文献1等に記載された一般的な複合振動式の部品搬送装置でも、外部への振動の伝搬を遮断するために基台と床面との間に防振ゴムやコイルばね等の防振部材を設けた場合には、加振機構の電磁石で発生させる吸引力の反力や部品搬送部材の振動に伴う反力が基台の重心G’まわりのモーメントを生じ、ピッチング運動を発生させる。この基台の重心G’まわりのピッチング運動は部品搬送部材の振動にも影響を与え、部品搬送部材の重心Gまわりのピッチング運動を発生させてしまう。
【0008】
上述したように、従来の複合振動式部品搬送装置では、部品搬送部材の重心Gまわりのピッチング運動の発生を確実に抑えることはできず、ピッチング運動の発生によって部品搬送部材の水平方向の振動と鉛直方向の振動を所望のものに調整できなくなり、部品搬送が不安定になるおそれがある。
【0009】
本発明の課題は、複合振動式の部品搬送装置における部品搬送部材のピッチング運動を確実に抑えられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、部品搬送路が形成された部品搬送部材と、前記部品搬送部材が取り付けられる上部振動体と、床上に設置される基台と、前記上部振動体と基台との間に設けられる中間振動体と、前記中間振動体と基台とを連結する第1の弾性部材と、前記上部振動体と中間振動体とを連結する第2の弾性部材とを備え、前記第1の弾性部材と第2の弾性部材のうちの一方を水平振動用弾性部材、他方を鉛直振動用弾性部材とし、前記水平振動用弾性部材と第1の加振機構とで部品搬送部材に水平方向の振動を付与し、前記鉛直振動用弾性部材と第2の加振機構とで部品搬送部材に鉛直方向の振動を付与するようにした振動式部品搬送装置において、前記基台に錘を設けた構成を採用した。
【0011】
すなわち、基台と床面との間に防振部材を設けると、床上から見た部品搬送部材のピッチング運動は、部品搬送部材の基台に対する相対的なピッチング運動(以下、単に「相対的ピッチング運動」とも称する。)と、これと逆位相の基台のピッチング運動とを合成したものとなるので、基台に錘を設けて、基台のピッチング運動の振幅が部品搬送部材の相対的ピッチング運動の振幅に近づくように基台の質量を調整することにより、床上から見た部品搬送部材のピッチング運動を確実に抑制できるようにしたのである。
【0012】
例えば、部品搬送部材に作用するモーメントが小さい場合(部品搬送部材が短い場合や質量が小さい場合)は、部品搬送部材の相対的ピッチング運動の振幅が小さくなるため、基台の質量を減らして基台のピッチング運動の振幅を小さくすればよい。一方、部品搬送部材に作用するモーメントが大きい場合(部品搬送部材が長い場合や質量が大きい場合)には、部品搬送部材の相対的ピッチング運動の振幅が大きくなるため、基台の質量を増やして基台のピッチング運動の振幅を大きくすればよい。
【0013】
なお、部品搬送部材の質量を調整しても、上記と同じ作用効果を得ることができるが、部品搬送部材の質量を増加させた場合には、部品搬送部材の固有振動数が小さくなり、その固有振動数付近に設定される駆動周波数(振動周波数)も低くなって、部品搬送速度が遅くなったり加振機構の電磁石への負荷が大きくなったりするので、基台の質量を調整する方が望ましい。
【0014】
ここで、前記錘は、複数の錘片からなり、その錘片の数を増減することにより質量調整が可能なものとするとよく、前記基台の端部に設けることが望ましい。基台の質量を変化させる部位が重心から遠いほど、質量の増減によるピッチング運動の振幅への影響が大きくなり、質量調整が容易になるからである。
【0015】
また、前記錘は複数箇所に設けることが望ましい。基台の1箇所のみ質量を変化させると基台の重心が移動し、ピッチング運動の中心がずれて調整が困難になるが、錘の設置箇所を複数にすれば、基台の重心が移動しないように錘の質量を調整できるからである。逆に、複数箇所に設けた錘の質量を調整して基台の重心の位置を装置中心付近に移動させることにより、搬送挙動の安定化を図ることもできる。また、前記錘の設置位置を鉛直方向に調整可能としても、基台の重心を装置中心付近に移動させて安定した搬送挙動が得られるようにすることができる。
【0016】
前記水平振動用弾性部材は、前記中間振動体への固定位置と前記基台または上部振動体への固定位置が部品搬送方向と直交する同一水平線上に位置するように配置するとよい。このようにすれば、水平振動用弾性部材の水平方向の変形が鉛直方向の変位につながらなくなり、水平方向の振動に起因する鉛直方向の振動の発生が抑えられる。このとき、前記水平振動用弾性部材を、部品搬送方向に複数設け、それぞれの前記中間振動体への固定位置と前記基台または上部振動体への固定位置の位置関係が部品搬送方向で交互に入れ替わるように配置すれば、水平面内で部品搬送方向と直交する方向の振動も抑制できるので、搬送挙動をさらに安定させることができる。
【0017】
一方、前記鉛直振動用弾性部材は、部品搬送方向と直交する同一水平線上の2箇所の固定位置で固定したり、部品搬送方向と平行な同一水平線上の2箇所の固定位置で固定したりすればよい。
【0018】
前記各加振機構を電磁石と可動鉄心とで構成し、そのうちの一方の電磁石への印加電圧設定回路に、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段と、前記基準波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設け、他方の電磁石への印加電圧設定回路には、前記基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段と、位相差調整手段で発生した波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設けて、各電磁石への印加電圧の波形、周期、位相差および振幅を自在に制御できるようにすれば、水平方向の振動と鉛直方向の振動を容易に所望の振動に近づけることができる。
【0019】
また、前記各加振機構の電磁石への印加電圧設定回路に、それぞれの前記波形振幅調整手段で振幅を調整された波形をPWM(Pulse Width Modulation)信号に変換するPWM信号発生手段を設けて、PWM方式で各加振機構を駆動することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の振動式部品搬送装置は、上述したように、基台に錘を設けたものであるから、基台のピッチング運動の振幅が、これと逆位相となる部品搬送部材の基台に対する相対的なピッチング運動の振幅に近づくように、基台の質量を調整して、床上から見た部品搬送部材のピッチング運動を確実に抑制でき、ひいては部品搬送部材に所望の振動を容易に付与することができ、安定した部品搬送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の部品搬送装置の一部切欠き正面図
【図2】図1のトラフを除いた上面図
【図3】図1の側面図
【図4】図1の部品搬送装置の各加振機構の印加電圧設定回路の概略図
【図5】図1の鉛直振動用板ばねの配置の変形例を示す一部切欠き正面図
【図6】図5のトラフを除いた上面図
【図7】本発明の作用を説明するための部品搬送装置の簡易モデルの正面図
【図8】a、bは、それぞれ図7の簡易モデルでのピッチング運動の説明図
【図9】一般的な部品搬送装置のピッチング運動の挙動を示すグラフ
【図10】図1の部品搬送装置のピッチング運動の挙動を示すグラフ
【図11】一般的な部品搬送装置の別のピッチング運動の挙動を示すグラフ
【図12】図1の部品搬送装置の別のピッチング運動の挙動を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この振動式部品搬送装置は、図1乃至図3に示すように、直線状の搬送路1aが形成されたトラフ(部品搬送部材)1を上部振動体2の上面に取り付け、上部振動体2と床上に設置される基台3との間に中間振動体4を設け、中間振動体4と基台3とを2つの第1の弾性部材としての板ばね5で連結し、上部振動体2と中間振動体4とを4つの第2の弾性部材としての板ばね6で連結し、中間振動体4と基台3の間に水平方向(部品搬送方向、図中のX方向)の振動を発生させる第1の加振機構7を設け、上部振動体2と基台3の間に鉛直方向(図中のZ方向)の振動を発生させる第2の加振機構8を設けたものである。
【0023】
前記基台3は、矩形状に形成され、その対角の二隅に柱状の板ばね取付部3aが立設されており、床面Fに固定された防振ゴム(防振部材)18に支持されている。なお、防振部材にはコイルばね等を用いてもよい。
【0024】
また、基台3の部品搬送方向の両端には、それぞれ錘19が設けられている。これらの各錘19は、脱着可能な複数の錘片19aからなり、その錘片19aの数を増減することにより質量調整が可能なものとなっている。ここで、図示は省略するが、錘19の基台3への取付方法は、各錘片19aに通し孔を設け、ボルト等でねじ止めする方法とすることができる。このとき、基台3に設けるねじ穴を高さ方向に複数配置して、錘19の基台3への取付位置を鉛直方向に調整可能とすることにより、搬送挙動の安定化を図るために基台3の重心の位置を装置中心付近に移動させたり、錘19と他の機器との干渉を避けたりすることが容易にできるようになる。なお、この実施形態では錘19を複数の錘片19aで構成したが、単体で所望の質量となっている錘を用いてもよい。
【0025】
前記中間振動体4は、矩形枠形状に形成され、その対角の二隅が外周側で基台3の板ばね取付部3aの上端部と対向し、内周面が上部振動体2の下部と対向するように配置されている。また、その外周面には、基台3の板ばね取付部3aと対向しない対角の二隅から部品搬送方向(X方向)に突出する板ばね取付部4aが設けられている。
【0026】
前記第1の板ばね5は、表裏面を部品搬送方向に向けられ、両端の固定位置が部品搬送方向と直交する同一水平線上に位置するように、一端部を基台3の板ばね取付部3aに他端部を中間振動体4の板ばね取付部4aにそれぞれ固定されて、中間振動体4を水平方向に振動可能に支持する水平振動用板ばね(水平振動用弾性部材)となっている。ここで、基台3の2つの板ばね取付部3aと、中間振動体4の2つの板ばね取付部4aとは、同じ取付部の設置位置どうしを結んだ直線が平面視で交差するように設けられているため、2つの水平振動用板ばね5は、それぞれの2箇所の固定位置の位置関係が部品搬送方向で入れ替わるように配置されることになる。
【0027】
一方、前記第2の板ばね6は、表裏面を鉛直方向に向けられ、両端の固定位置が部品搬送方向と直交する同一水平線上に位置するように、一端部を上部振動体2の下部に他端部を中間振動体4の長手方向縁部にそれぞれ固定されて、上部振動体2を鉛直方向に振動可能に支持する鉛直振動用板ばね(鉛直振動用弾性部材)となっている。
【0028】
また、前記第1の加振機構7は、基台3上に設置される交流電磁石9と、この電磁石9と所定の間隔をおいて対向するように中間振動体4に取り付けられる可動鉄心10とで構成されている。なお、可動鉄心10は、この例では中間振動体4に取り付けたが、上部振動体2に取り付けるようにしてもよい。一方、前記第2の加振機構8は、基台3上に設置される交流電磁石11と、この電磁石11と所定の間隔をおいて対向するように上部振動体2に取り付けられる可動鉄心12とで構成されている。
【0029】
第1の加振機構7の電磁石9に通電すると、電磁石9と可動鉄心10との間に断続的な電磁吸引力が作用し、この電磁吸引力と水平振動用板ばね5の復元力により、中間振動体4に水平方向の振動が発生し、この振動が鉛直振動用板ばね6を介して上部振動体2およびトラフ1に伝わる。また、第2の加振機構8の電磁石11に通電すると、電磁石11と可動鉄心12との間に断続的な電磁吸引力が作用し、この電磁吸引力と鉛直振動用板ばね6の復元力により、上部振動体2およびトラフ1に鉛直方向の振動が発生する。そして、この水平方向の振動と鉛直方向の振動により、トラフ1に供給された部品が直線状搬送路1aに沿って搬送される。
【0030】
したがって、各加振機構7、8の電磁石9、11への印加電圧を別々に設定することにより、トラフ1の水平方向の振動と鉛直方向の振動をそれぞれ調整することができる。
【0031】
図4は各加振機構7、8の電磁石9、11へ印加電圧を設定する回路を示す。第1の加振機構7の回路には、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段13が設けられている。基準波形発生手段13では、波形の種類(例えば、正弦波)とその波形の周期(周波数)の設定値に応じた基準波形を発生させる。一方、第2の加振機構8の回路には、基準波形発生手段13で発生した基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段14が設けられている。
【0032】
そして、各加振機構7、8の回路において、基準波形発生手段13または位相差調整手段14で発生した波形を、波形振幅調整手段15で所定の振幅に調整して、PWM信号発生手段16でPWM信号に変換した後、電圧増幅手段17で昇圧し、それぞれの電磁石9、11へ印加するようになっている。これにより、各電磁石9、11への印加電圧の波形、周期、位相差および振幅を自在に制御して、水平方向の振動と鉛直方向の振動をそれぞれ調整することができる。なお、PWM方式で各加振機構を駆動しない場合は、PWM信号発生手段16は不要となる。
【0033】
この振動式部品搬送装置は、上記の構成であり、第1の加振機構7の駆動によって中間振動体4に振動が発生するとき、部品搬送方向と直交する同一水平線上の2箇所の固定位置で固定された水平振動用板ばね5は、水平方向にのみ変形して元の状態に戻る動作を繰り返す。これにより、中間振動体4に発生する振動は、鉛直方向の振動をほとんど含まず、ほぼ水平方向のみの振動となる。しかも、2つの水平振動用板ばね5の固定位置の位置関係が部品搬送方向で入れ替わるように配置されているので、水平面内で部品搬送方向と直交する方向(図2、3におけるY方向)の振動も抑制できる。
【0034】
図5および図6は上述した実施形態の鉛直振動用板ばね6の配置の変形例を示す。この変形例では、鉛直振動用板ばね6を、部品搬送方向(図中のX方向)と平行な同一水平線上の2箇所の固定位置で、上部振動体2と中間振動体4の短手方向縁部に固定している。
【0035】
次に、上述した実施形態における本発明の作用を図7乃至図12に基づいて説明する。図7は複合振動式の部品搬送装置の簡易モデルを示す。この簡易モデルにおける上部剛体Aは、実施形態のトラフ1(上部振動体2を含む)に相当する。また、ばねKaは鉛直振動用板ばね6に、下部剛体Bは中間振動体4および基台3に、ばねKbは防振ゴム18にそれぞれ相当する。そして、重心Gaは上部剛体Aの重心を、重心Gbは下部剛体Bの重心を表している。なお、実際には中間振動体4と基台3とは水平振動用板ばね5で連結されているが、水平振動用板ばね5は鉛直方向には作用しないため、この簡易モデルでは考慮しない。
【0036】
上記簡易モデルを用いて一般的な複合振動式部品搬送装置の鉛直方向の振動挙動を表すと、図8(a)、(b)に示すように、上部剛体Aが重心Gaのまわりにピッチング運動し、下部剛体Bが重心Gbのまわりにピッチング運動するものとなる。図8(a)は上部剛体Aの下部剛体Bに対する相対的なピッチング運動の振幅が下部剛体Bのピッチング運動の振幅よりも小さい場合であり、図8(b)は図8(a)と逆の場合である。
【0037】
図9は、部品搬送装置が図8(a)の振動挙動をとる場合について、図7中の上部剛体AのA1点および下部剛体BのB1点の鉛直方向変位の時間的変化を示すものである。図9中の点線はB1点から見たA1点の相対変位(上部剛体Aの相対的ピッチング運動)、一点鎖線は床上から見たB1点の絶対変位(下部剛体Bのピッチング運動)、実線が床上から見たA1点の絶対変位(上部剛体Aのピッチング運動)である(後述する図10乃至図12についても同じ)。A1点の相対変位とB1点の絶対変位は逆位相となっており、その合成がA1点の絶対変位となっている。この場合、実施形態の部品搬送装置では、下部剛体Bの質量(基台3に設けた錘19の質量)を減らすことにより、図10に示すように、下部剛体Bのピッチング運動の振幅を小さくして上部剛体Aの相対的ピッチング運動の振幅に近づけ、上部剛体Aのピッチング運動を抑制することができる。
【0038】
図11は、部品搬送装置が図8(b)の振動挙動をとる場合の、上部剛体AのA1点および下部剛体BのB1点の鉛直方向変位の時間的変化を示す。この場合には、実施形態の部品搬送装置では、下部剛体Bの質量(基台3に設けた錘19の質量)を増やすことにより、図12に示すように、下部剛体Bのピッチング運動の振幅を大きくして上部剛体Aの相対的ピッチング運動の振幅に近づけ、上部剛体Aのピッチング運動を抑制することができる。
【0039】
なお、実際には、上部剛体Aのピッチング運動が減少するにつれて下部剛体Bのピッチング運動も減少するので、図10および図11に示したA1点の相対変位やB1点の絶対変位も減少する。
【0040】
上述したように、実施形態の部品搬送装置は、基台3と床面Fとの間に防振ゴム18を設けるとともに、基台3に錘19を設けて、基台3のピッチング運動の振幅が、これと逆位相となるトラフ1の基台3に対する相対的なピッチング運動の振幅に近づくように、基台3の質量を調整することにより、床上から見たトラフ1のピッチング運動を確実に抑えられるようにしたので、安定した部品搬送を実現することができる。
【0041】
上述した実施形態では、中間振動体と基台とを連結する第1の板ばねを水平振動用板ばねとし、上部振動体と中間振動体とを連結する第2の板ばねを鉛直振動用板ばねとしたが、これとは逆に、第1の板ばねが鉛直振動用板ばね、第2の板ばねが水平振動用板ばねとなるように構成してもよい。また、板ばねは各箇所に1枚ずつ配置したが、2枚以上重ねたものを1つとして使用してもよい。
【0042】
また、水平振動用板ばねは2箇所に配置したが、3箇所以上で構成してもよく、その場合もそれぞれの中間振動体への固定位置と基台への固定位置との位置関係が部品搬送方向で交互に入れ替わるように配置すればよい。一方、鉛直振動用板ばねは4箇所に配置したが、2箇所以上で構成してもよい。
【0043】
さらに、実施形態では、水平振動用弾性部材および鉛直振動用弾性部材に板ばねを使用しているが、板ばね以外の弾性部材ももちろん用いることができる。また、各加振機構は、電磁石と可動鉄心とからなるものを使用しているが、これに限らず、同様の加振力を発生させることができるアクチュエータであればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 トラフ(部品搬送部材)
2 上部振動体
3 基台
4 中間振動体
5 第1の板ばね(水平振動用板ばね)
6 第2の板ばね(鉛直振動用板ばね)
7 第1の加振機構
8 第2の加振機構
9、11 電磁石
10、12 可動鉄心
18 防振ゴム(防振部材)
19 錘
19a 錘片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品搬送路が形成された部品搬送部材と、前記部品搬送部材が取り付けられる上部振動体と、床上に設置される基台と、前記上部振動体と基台との間に設けられる中間振動体と、前記中間振動体と基台とを連結する第1の弾性部材と、前記上部振動体と中間振動体とを連結する第2の弾性部材とを備え、前記第1の弾性部材と第2の弾性部材のうちの一方を水平振動用弾性部材、他方を鉛直振動用弾性部材とし、前記水平振動用弾性部材と第1の加振機構とで部品搬送部材に水平方向の振動を付与し、前記鉛直振動用弾性部材と第2の加振機構とで部品搬送部材に鉛直方向の振動を付与するようにした振動式部品搬送装置において、前記基台に錘を設けたことを特徴とする振動式部品搬送装置。
【請求項2】
前記基台と床面との間に防振部材を設け、前記基台のピッチング運動の振幅が前記部品搬送部材の基台に対する相対的なピッチング運動の振幅に近づくように基台の質量を調整したことを特徴とする請求項1に記載の振動式部品搬送装置。
【請求項3】
前記錘は、複数の錘片からなり、その錘片の数を増減することにより質量調整が可能なものであることを特徴とする請求項1または2に記載の振動式部品搬送装置。
【請求項4】
前記錘を前記基台の端部に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項5】
前記錘を複数箇所に設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項6】
前記錘の設置位置を鉛直方向に調整可能としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項7】
前記水平振動用弾性部材は、前記中間振動体への固定位置と前記基台または上部振動体への固定位置が部品搬送方向と直交する同一水平線上に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項8】
前記水平振動用弾性部材は、部品搬送方向に複数設けられ、それぞれの前記中間振動体への固定位置と前記基台または上部振動体への固定位置の位置関係が部品搬送方向で交互に入れ替わるように配置されていることを特徴とする請求項7に記載の振動式部品搬送装置。
【請求項9】
前記鉛直振動用弾性部材を、部品搬送方向と直交する同一水平線上の2箇所の固定位置で固定したことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項10】
前記鉛直振動用弾性部材を、部品搬送方向と平行な同一水平線上の2箇所の固定位置で固定したことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項11】
前記各加振機構を電磁石と可動鉄心とで構成し、そのうちの一方の電磁石への印加電圧設定回路に、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段と、前記基準波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設け、他方の電磁石への印加電圧設定回路には、前記基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段と、位相差調整手段で発生した波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項12】
前記各加振機構の電磁石への印加電圧設定回路に、それぞれの前記波形振幅調整手段で振幅を調整された波形をPWM信号に変換するPWM信号発生手段を設けたことを特徴とする請求項11に記載の振動式部品搬送装置。
【請求項1】
部品搬送路が形成された部品搬送部材と、前記部品搬送部材が取り付けられる上部振動体と、床上に設置される基台と、前記上部振動体と基台との間に設けられる中間振動体と、前記中間振動体と基台とを連結する第1の弾性部材と、前記上部振動体と中間振動体とを連結する第2の弾性部材とを備え、前記第1の弾性部材と第2の弾性部材のうちの一方を水平振動用弾性部材、他方を鉛直振動用弾性部材とし、前記水平振動用弾性部材と第1の加振機構とで部品搬送部材に水平方向の振動を付与し、前記鉛直振動用弾性部材と第2の加振機構とで部品搬送部材に鉛直方向の振動を付与するようにした振動式部品搬送装置において、前記基台に錘を設けたことを特徴とする振動式部品搬送装置。
【請求項2】
前記基台と床面との間に防振部材を設け、前記基台のピッチング運動の振幅が前記部品搬送部材の基台に対する相対的なピッチング運動の振幅に近づくように基台の質量を調整したことを特徴とする請求項1に記載の振動式部品搬送装置。
【請求項3】
前記錘は、複数の錘片からなり、その錘片の数を増減することにより質量調整が可能なものであることを特徴とする請求項1または2に記載の振動式部品搬送装置。
【請求項4】
前記錘を前記基台の端部に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項5】
前記錘を複数箇所に設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項6】
前記錘の設置位置を鉛直方向に調整可能としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項7】
前記水平振動用弾性部材は、前記中間振動体への固定位置と前記基台または上部振動体への固定位置が部品搬送方向と直交する同一水平線上に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項8】
前記水平振動用弾性部材は、部品搬送方向に複数設けられ、それぞれの前記中間振動体への固定位置と前記基台または上部振動体への固定位置の位置関係が部品搬送方向で交互に入れ替わるように配置されていることを特徴とする請求項7に記載の振動式部品搬送装置。
【請求項9】
前記鉛直振動用弾性部材を、部品搬送方向と直交する同一水平線上の2箇所の固定位置で固定したことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項10】
前記鉛直振動用弾性部材を、部品搬送方向と平行な同一水平線上の2箇所の固定位置で固定したことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項11】
前記各加振機構を電磁石と可動鉄心とで構成し、そのうちの一方の電磁石への印加電圧設定回路に、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段と、前記基準波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設け、他方の電磁石への印加電圧設定回路には、前記基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段と、位相差調整手段で発生した波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の振動式部品搬送装置。
【請求項12】
前記各加振機構の電磁石への印加電圧設定回路に、それぞれの前記波形振幅調整手段で振幅を調整された波形をPWM信号に変換するPWM信号発生手段を設けたことを特徴とする請求項11に記載の振動式部品搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−95597(P2013−95597A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243393(P2011−243393)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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