説明

振動振幅計測装置および振動振幅計測方法

【課題】物体の振動振幅を簡単に精度良く求める。
【解決手段】振動振幅計測装置は、物体10にレーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1を駆動するレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれる自己結合信号であるモードホップパルスの数を数える信号抽出部7と、信号抽出部7の計数結果に基づいて物体10の振動振幅を求める振幅計測部8とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動する物体の振動振幅を計測する振動振幅計測装置および振動振幅計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザを用いて、振動する物体を解析する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に開示された計測装置では、発振周波数が固定された半導体レーザから物体にレーザ光を照射し、物体からのドップラ周波数偏移した反射光の一部を半導体レーザに戻り光として帰還させ、自己混合効果を発生させる。そして、物体の振動に関係して生ずる半導体レーザの出力の変化をフォトダイオードで検出している。
【0003】
このとき、フォトダイオードの出力に現れるドップラビート波は自己混合効果により物体の変位の方向に応じて傾きが逆転するので、ドップラビート波の傾きから物体の変位の方向を判別することができる。特許文献1に開示された計測装置では、この変位の方向に応じてカウンタ回路の加算と減算を切り換えながら、カウンタ回路でドップラビート波の波数を数えることにより、物体の変位情報を得る。物体の変位情報を得ることができれば、物体の振動振幅(最大変位)を求めることが可能である。
【0004】
また、発明者は、半導体レーザの自己結合効果を用いた波長変調型の距離・速度計を提案した(特許文献2参照)。この距離・速度計の構成を図12に示す。図12の距離・速度計は、物体にレーザ光を放射する半導体レーザ201と、半導体レーザ201の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード202と、半導体レーザ201からの光を集光して物体210に照射すると共に、物体210からの戻り光を集光して半導体レーザ201に入射させるレンズ203と、半導体レーザ201に発振波長が連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返させるレーザドライバ204と、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅器205と、電流−電圧変換増幅器205の出力電圧を2回微分する信号抽出回路206と、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるMHPの数を数える計数回路207と、物体210との距離及び物体210の速度を算出する演算装置208と、演算装置208の算出結果を表示する表示装置209とを有する。
【0005】
レーザドライバ204は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ201に供給する。これにより、半導体レーザ201は、発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図13は、半導体レーザ201の発振波長の時間変化を示す図である。図13において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Tは三角波の周期である。
【0006】
半導体レーザ201から出射したレーザ光は、レンズ203によって集光され、物体210に入射する。物体210で反射された光は、レンズ203によって集光され、半導体レーザ201に入射する。フォトダイオード202は、半導体レーザ201の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅器205は、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅し、信号抽出回路206は、電流−電圧変換増幅器205の出力電圧を2回微分する。計数回路207は、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるモードポップパルス(MHP)の数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える。演算装置208は、半導体レーザ1の最小発振波長λaと最大発振波長λbと第1の発振期間P1におけるMHPの数と第2の発振期間P2におけるMHPの数に基づいて、物体210との距離及び物体210の速度を算出する。このような距離・速度計によれば、算出した速度を振動の半周期に当たる時間で積分することにより、物体の振動振幅を算出することが可能である。
【0007】
【特許文献1】特許第3282746号公報
【特許文献2】特開2006−313080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された計測装置では、半導体レーザの波長を高精度に固定する機構が必要になるという問題点があり、また光学的な外乱ノイズに弱いために非常に短い距離においてしか測定することができないという問題点があった。
【0009】
特許文献2に開示された距離・速度計では、物体の振動振幅を算出するために物体の速度を算出する必要があるが、速度の算出方法が複雑であるという問題点があった。また、特許文献2に開示された距離・速度計では、物体の距離変化率と半導体レーザの波長変化率の大小関係により速度の候補値が2種類存在し、距離の最新の算出値とその直前の算出値との差分の符号変化に応じて2種類の速度の候補値の中から速度の真値を選択する。しかし、距離の分解能と比較して物体の速度(距離の変化)が著しく小さい場合、ノイズなどによって距離の差分の符号が反転する場合があり、速度の候補値の選択を誤る可能性があるため、算出精度の低下を招く可能性があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、物体の振動振幅を簡単に精度良く求めることができる振動振幅計測装置および振動振幅計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の振動振幅計測装置は、測定対象にレーザ光を放射する半導体レーザと、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手段と、この信号抽出手段の計数結果の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、前記信号抽出手段の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手段と、前記距離比例個数と前記信号抽出手段の最新の計数結果とを比較することにより、前記測定対象の変位方向を判別する変位方向判別手段と、この変位方向判別手段の判別結果に基づいて前記測定対象の振動半周期あたりの変位比例個数の和を求め、この和と前記半導体レーザの平均半波長との積を求めることにより、前記測定対象の振動振幅を算出する振幅算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の振動振幅計測装置は、測定対象にレーザ光を放射する半導体レーザと、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手段と、この信号抽出手段の計数結果の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、前記信号抽出手段の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値とを比較し、最新の計数結果の方が大きいときのみ、または最新の計数結果の方が小さいときのみ、前記信号抽出手段の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手段と、前記距離比例個数と前記信号抽出手段の最新の計数結果とを比較することにより、前記測定対象の変位方向を判別する変位方向判別手段と、この変位方向判別手段の判別結果に基づいて前記測定対象の振動半周期あたりの変位比例個数の和を求め、この和と前記半導体レーザの平均半波長との積を求めることにより、前記測定対象の振動振幅を算出する振幅算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の振動振幅計測装置の1構成例は、さらに、前記信号抽出手段の1回前の計数結果とこの計数結果よりも過去の計数結果を用いて算出された前記距離比例個数の2倍数との大小関係に応じて前記信号抽出手段の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与手段を備え、前記距離比例個数算出手段は、前記距離比例個数の算出に用いる全ての計数結果に前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き計数結果を用い、前記変位比例個数算出手段は、前記変位比例個数の算出に用いる全ての計数結果に前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き計数結果を用いることを特徴とするものである。
また、本発明の振動振幅計測装置の1構成例において、前記振幅算出手段は、前記変位比例個数を前記測定対象の振動半周期のn(nは正の整数)倍の期間にわたって積分して前記変位比例個数の和を求め、この和をnで除算して求めた、振動半周期あたりの変位比例個数の和と前記半導体レーザの平均半波長との積を求めることにより、前記測定対象の振動振幅を算出することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の振動振幅計測方法は、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる発振手順と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手順と、この信号抽出手順の計数結果の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手順と、前記信号抽出手順の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手順と、前記距離比例個数と前記信号抽出手順の最新の計数結果とを比較することにより、前記測定対象の変位方向を判別する変位方向判別手順と、この変位方向判別手順の判別結果に基づいて前記測定対象の振動半周期あたりの変位比例個数の和を求め、この和と前記半導体レーザの平均半波長との積を求めることにより、前記測定対象の振動振幅を算出する振幅算出手順とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の振動振幅計測方法は、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる発振手順と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手順と、この信号抽出手順の計数結果の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手順と、前記信号抽出手順の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値とを比較し、最新の計数結果の方が大きいときのみ、または最新の計数結果の方が小さいときのみ、前記信号抽出手順の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手順と、前記距離比例個数と前記信号抽出手順の最新の計数結果とを比較することにより、前記測定対象の変位方向を判別する変位方向判別手順と、この変位方向判別手順の判別結果に基づいて前記測定対象の振動半周期あたりの変位比例個数の和を求め、この和と前記半導体レーザの平均半波長との積を求めることにより、前記測定対象の振動振幅を算出する振幅算出手順とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体レーザの自己結合効果を用いた波長変調型の振動振幅計測装置を実現することができる。波長変調型の計測装置では自己結合効果による干渉波形と外乱との分離が容易になるので、波長固定型の従来の計測装置に比べて外乱光に強くすることができ、振動振幅を測定可能な距離を長くすることができる。また、半導体レーザの波長を高精度に固定する機構も不要となる。さらに、本発明では、波長変調型の距離・速度計よりも簡単な方法で物体の振動振幅を算出することができ、距離・速度計のように速度の候補値を選択するといった処理が不要になるので、振動振幅算出精度の低下を招く可能性を低減することができる。
【0017】
また、本発明では、信号抽出手段の1回前の計数結果とこの計数結果よりも過去の計数結果を用いて算出された距離比例個数の2倍数との大小関係に応じて信号抽出手段の最新の計数結果に正負の符号を付与し、距離比例個数算出手段では、距離比例個数の算出に用いる全ての計数結果に符号付与手段によって符号が与えられた符号付き計数結果を用い、変位比例個数算出手段では、変位比例個数の算出に用いる全ての計数結果に符号付与手段によって符号が与えられた符号付き計数結果を用いることにより、測定対象の距離変化率が半導体レーザの発振波長変化率よりも大きい場合であっても、測定対象の振動振幅を正しく求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る振動振幅計測装置の構成を示すブロック図である。
図1の振動振幅計測装置は、測定対象の物体10にレーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、物体10からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動する発振波長変調手段となるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれる自己結合信号であるモードホップパルス(以下、MHPとする)の数を数える信号抽出部7と、信号抽出部7の計数結果に基づいて物体10の振動振幅を求める振幅計測部8と、振幅計測部8の計測結果を表示する表示部9とを有する。
【0019】
フォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とは、検出手段を構成している。以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
【0020】
レーザドライバ4は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間P1と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間P2とを交互に繰り返すように駆動される。このときの半導体レーザ1の発振波長の時間変化は、図13に示したとおりである。本実施の形態では、発振波長の最大値λb及び発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。
【0021】
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、物体10に入射する。物体10で反射された光は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0022】
フィルタ部6は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図2(A)は電流−電圧変換増幅部5の出力電圧波形を模式的に示す図、図2(B)はフィルタ部6の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2の出力に相当する図2(A)の波形(変調波)から、図13の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、図2(B)のMHP波形(干渉波形)を抽出する過程を表している。
【0023】
次に、信号抽出部7と振幅計測部8の動作について説明する。図3は信号抽出部7と振幅計測部8の動作を示すフローチャートである。
信号抽出部7は、フィルタ部6の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える(図3ステップS1)。信号抽出部7は、論理ゲートからなるカウンタを利用するものでもよいし、FFT(Fast Fourier Transform)を利用してMHPの周波数(すなわち単位時間あたりのMHPの数)を計測するものでもよい。
【0024】
ここで、自己結合信号であるMHPについて説明する。図4に示すように、ミラー層1013から物体10までの距離をL、レーザの発振波長をλとすると、以下の共振条件を満足するとき、物体10からの戻り光と半導体レーザ1の光共振器内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(1)
式(1)において、qは整数である。この現象は、物体10からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザ1の共振器内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。
【0025】
図5は、半導体レーザ1の発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード2の出力波形との関係を示す図である。式(1)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と光共振器内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザ1の発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力をフォトダイオード2で検出すると、図5に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つがMHPである。前記のとおり、ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変化する。
【0026】
次に、振幅計測部8は、信号抽出部7が数えたMHPの数に基づいて物体10の振動振幅を算出する。図6は振幅計測部8の構成の1例を示すブロック図である。振幅計測部8は、信号抽出部7の計数結果等を記憶する記憶部80と、信号抽出部7の計数結果の平均値を算出することにより、半導体レーザ1と物体10との平均距離に比例したMHPの数(以下、距離比例個数とする)NLを求める距離比例個数算出部81と、信号抽出部7の1回前の計数結果とこの計数結果よりも過去の計数結果を用いて算出された距離比例個数NLの2倍数との大小関係に応じて信号抽出部7の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与部82と、最新の符号付き計数結果と過去の符号付き計数結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、物体10の変位に比例したMHPの数(以下、変位比例個数とする)NVを求める変位比例個数算出部83と、距離比例個数算出部81が求めた距離比例個数NLと信号抽出部7の計数結果とを比較することにより、物体10の変位方向を判別する変位方向判別部84と、物体10の振動半周期あたりの変位比例個数NVの和を求め、この和と半導体レーザ1の平均半波長との積を求めることにより、物体10の振動振幅を算出する振幅算出部85とから構成される。
【0027】
信号抽出部7の計数結果は、振幅計測部8の記憶部80に格納される。振幅計測部8の距離比例個数算出部81は、信号抽出部7の計数結果から距離比例個数NLを求める(図3ステップS2)。図7は距離比例個数算出部81の動作を説明するための図であり、信号抽出部7の計数結果の時間変化を示す図である。図7において、Nuは第1の発振期間P1の計数結果、Ndは第2の発振期間P2の計数結果である。
【0028】
物体10の距離変化率が半導体レーザ1の発振波長変化率よりも小さく、物体10が単振動している場合、計数結果Nuの時間変化と計数結果Ndの時間変化は、図7に示すように互いの位相差が180度の正弦波形となる。特許文献2では、このときの物体10の状態を微小変位状態としている。
【0029】
図13から明らかなように、第1の発振期間P1と第2の発振期間P2は交互に訪れるので、計数結果Nuと計数結果Ndも交互に現れる。計数結果Nu,Ndは、距離比例個数NLと変位比例個数NVとの和もしくは差である。距離比例個数NLは、図7に示した正弦波形の平均値に相当する。また、計数結果NuまたはNdと距離比例個数NLとの差が、変位比例個数NVに相当する。
【0030】
距離比例個数算出部81は、次式に示すように現時刻tの2回前までに計測された偶数回分の計数結果の平均値を算出することにより、距離比例個数NLを算出する。
NL={N(t−2)+N(t−3)}/2 ・・・(2)
【0031】
式(2)において、N(t−2)は現時刻tの2回前に計測されたMHPの数Nであることを表し、N(t−3)は現時刻tの3回前に計測されたMHPの数Nであることを表している。現時刻tの計数結果N(t)が第1の発振期間P1の計数結果Nuであれば、2回前の計数結果N(t−2)も第1の発振期間P1の計数結果Nuであり、3回前の計数結果N(t−3)は第2の発振期間P2の計数結果Ndである。反対に、現時刻tの計数結果N(t)が第2の発振期間P2の計数結果Ndであれば、2回前の計数結果N(t−2)も第2の発振期間P2の計数結果Ndであり、3回前の計数結果N(t−3)は第1の発振期間P1の計数結果Nuである。
【0032】
式(2)は2回分の計数結果で距離比例個数NLを求める場合の式であるが、2m(mは正の整数)回の計数結果を用いる場合、距離比例個数算出部81は、次式のように距離比例個数NLを算出する。
NL={N(t−2m−1)+N(t−2m)+・・・+N(t−2)}/2m
・・・(3)
【0033】
ただし、式(2)、式(3)は振動振幅の計測開始初期に用いる式で、途中からは式(2)の代わりに後述する符号付き計数結果を用いる次式により距離比例個数NLを算出する。
NL={N’(t−2)+N’(t−3)}/2 ・・・(4)
N’(t−2)は2回前の計数結果N(t−2)に後述する符号付与処理を施した後の符号付き計数結果、N’(t−3)は3回前の計数結果N(t−3)に符号付与処理を施した後の符号付き計数結果である。式(4)が使用されるのは、現時刻tの計数結果N(t)がMHPの数の計測開始から7回目の計数結果になったとき以降である。
【0034】
また、計測開始初期に式(3)を用いる場合には、途中からは式(3)の代わりに符号付き計数結果を用いる次式により距離比例個数NLを算出する。
NL={N’(t−2m−1)+N’(t−2m)+・・・+N’(t−2)}/2m
・・・(5)
式(5)が使用されるのは、現時刻tの計数結果N(t)がMHPの数の計測開始から(2m×2+3)回目の計数結果になったとき以降である。
【0035】
距離比例個数NLは、記憶部80に格納される。距離比例個数算出部81は、以上のような距離比例個数NLの算出処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
なお、距離比例個数NLの算出に用いる計数結果が十分に多いときは、奇数回分の計数結果で距離比例個数NLを算出してもよい。
【0036】
次に、符号付与部82は、現時刻tの1回前に計測された計数結果N(t−1)と距離比例個数NLの2倍数2NLとの大小関係に応じて信号抽出部7の計数結果N(t)に正負の符号を付与する(図3ステップS3)。符号付与部82は、具体的には以下の式を実行する。
If N(t−1)≧2NL Then N’(t)→−N(t) ・・・(6)
If N(t−1)<2NL Then N’(t)→+N(t) ・・・(7)
【0037】
図8は符号付与部82の動作を説明するための図であり、信号抽出部7の計数結果の時間変化を示す図である。物体10の距離変化率が半導体レーザ1の発振波長変化率よりも大きい場合、計数結果Nuの時間変化は、図8の80で示す負側の波形が正側に折り返された形になり、同様に計数結果Ndの時間変化は、図8の81で示す負側の波形が正側に折り返された形になる。特許文献2では、この計数結果の折り返しが生じている部分における物体10の状態を変位状態としている。一方、計数結果の折り返しが生じていない部分における物体10の状態は、上記の微小変位状態である。
【0038】
変位状態を含む振動における振動振幅を求めるためには、物体10が変位状態であるか微小変位状態であるかを判定し、物体10が変位状態である場合には、正側に折り返されている計数結果が図8の80,81で示した軌跡を描くように補正する必要がある。式(6)、式(7)は、物体10が変位状態であるか微小変位状態であるかを判定するための式である。図8において計数結果の折り返しが生じている変位状態では、N(t−1)≧2NLが成立する。したがって、式(6)に示すように、N(t−1)≧2NLが成立する場合には、信号抽出部7の現時刻tの計数結果N(t)に負の符号を与えたものを符号付き計数結果N’(t)とする。
【0039】
一方、図7および図8において計数結果の折り返しが生じていない微小変位状態では、N(t−1)<2NLが成立する。したがって、式(7)に示すように、N(t−1)<2NLが成立する場合には、信号抽出部7の現時刻tの計数結果N(t)に正の符号を与えたものを符号付き計数結果N’(t)とする。
【0040】
符号付き計数結果N’(t)は、記憶部80に格納される。符号付与部82は、以上のような符号付与処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
なお、式(6)の成立条件をN(t−1)>2NLにして、式(7)の成立条件をN(t−1)≦2NLにしてもよい。
【0041】
続いて、変位比例個数算出部83は、次式のように符号付き計数結果N’(t)と現時刻tの1回前までに算出された偶数回分の符号付き計数結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、変位比例個数NVを求める(図3ステップS4)。
NV=|N’(t)−{N’(t−2m)+N’(t−2m+1)+・・・
+N’(t−1)}/2m| ・・・(8)
【0042】
変位比例個数NVは、記憶部80に格納される。変位比例個数算出部83は、以上のような変位比例個数NVの算出処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
なお、平均値の算出に用いる符号付き計数結果が十分に多いときは、符号付き計数結果N’(t)と現時刻tの1回前までに算出された奇数回分の符号付き計数結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、変位比例個数NVを算出してもよい。
【0043】
次に、変位方向判別部84は、距離比例個数算出部81が求めた距離比例個数NLと信号抽出部7の計数結果とを比較することにより、物体10の変位方向を判別する(図3ステップS5)。変位方向判別部84は、半導体レーザ1の発振波長が増加しているときの計数結果Nuが距離比例個数NLより大きいか、あるいは半導体レーザ1の発振波長が減少しているときの計数結果Ndが距離比例個数NLより小さい場合、物体10の移動方向は半導体レーザ1に接近する方向であると判定し、計数結果Nuが距離比例個数NLより小さいか、あるいは計数結果Ndが距離比例個数NLより大きい場合、物体10の移動方向は半導体レーザ1から遠ざかる方向であると判定する。変位方向判別部84は、以上のような変位方向判別処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
【0044】
次に、振幅算出部85は、変位比例個数NVを物体10の振動半周期の期間にわたって積分することにより、振動半周期あたりの変位比例個数NVの和ΣNVを求め、次式に示すように変位比例個数NVの和ΣNVと半導体レーザ1の平均半波長λ/2との積を求めることにより、物体10の振動振幅Aを算出する(図3ステップS6)。
A=ΣNV×(λ/2) ・・・(9)
λ=(λb+λa)/2 ・・・(10)
【0045】
物体10の振動半周期は、変位方向判別部84の判別結果から求めることができる。すなわち、物体10の移動方向が半導体レーザ1に対して接近する方向から遠ざかる方向に変わった時点から、次に接近する方向に変わるまでの時点が振動半周期である。あるいは、物体10の移動方向が半導体レーザ1に対して遠ざかる方向から接近する方向に変わった時点から、次に遠ざかる方向に変わるまでの時点が振動半周期である。振幅算出部85は、以上のような振動振幅の算出処理を振動半周期毎に行う。
表示部9は、振幅計測部8が算出した振動振幅Aの値を表示する。
【0046】
以上のように、本実施の形態では、半導体レーザの自己結合効果を用いた波長変調型の振動振幅計測装置とした。波長変調型の計測装置では、レーザ発振波長を変調することで、MHPの発生周期に規則性を与えることができるために、MHPと外乱との分離が容易になる。このため、特許文献1に開示された計測装置に比べて外乱光に強くなるので、振動振幅を測定可能な距離を長くすることができる。また、半導体レーザの波長を高精度に固定する機構も不要となる。
【0047】
さらに、本実施の形態では、特許文献2に開示された距離・速度計よりも簡単な方法で物体の振動振幅を算出することができる。また、本実施の形態では、特許文献2に開示された距離・速度計のように速度の候補値を選択するといった処理が不要になるので、振動振幅算出精度の低下を招く可能性を低減することができる。
【0048】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、物体10の振動振幅を振動半周期毎に算出していたが、振動半周期の整数倍の期間毎に算出するようにしてもよい。振動半周期のn(nは正の整数)倍の期間で物体10の振動振幅Aを求める場合、振幅算出部85は、変位比例個数NVを振動半周期のn倍の期間にわたって積分することにより変位比例個数NVの和ΣNVを求め、このΣNVをnで除算することにより振動半周期あたりの変位比例個数NVの和(ΣNV)/nを求め、次式に示すように変位比例個数NVの和(ΣNV)/nと半導体レーザ1の平均半波長λ/2との積を求めることにより、物体10の振動振幅Aを算出する。
A=(ΣNV)/n×(λ/2) ・・・(11)
【0049】
こうして、物体10の振動半周期の整数倍の期間毎に振動振幅を算出することができる。第1の実施の形態は、n=1の場合であることは言うまでもない。
【0050】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態においても、振動振幅計測装置の構成は第1、第2の実施の形態と同様であるので、図1、図6の符号を用いて説明する。本実施の形態では、図3のステップS4以降の処理が第1、第2の実施の形態と異なる。
【0051】
振幅計測部8の変位比例個数算出部83は、現時刻tの符号付き計数結果N’(t)と現時刻tの1回前までに算出された偶数回分の符号付き計数結果の平均値{N’(t−2m)+N’(t−2m+1)+・・・+N’(t−1)}/2mとを比較し、符号付き計数結果N’(t)の方が大きいときのみ、式(8)によって変位比例個数NVを算出する(図3ステップS4)。あるいは、変位比例個数算出部83は、符号付き計数結果N’(t)と偶数回分の符号付き計数結果の平均値{N’(t−2m)+N’(t−2m+1)+・・・+N’(t−1)}/2mとを比較し、符号付き計数結果N’(t)の方が小さいときのみ、変位比例個数NVを算出するようにしてもよい。
【0052】
第1の実施の形態と同様に、平均値の算出に用いる符号付き計数結果が十分に多いときは、奇数回分の符号付き計数結果から平均値を求めるようにしてもよい。
変位方向判別部84の動作は第1の実施の形態と同じである。
【0053】
振幅算出部85は、変位比例個数NVを振動半周期のn倍の期間にわたって積分することにより変位比例個数NVの和ΣNVを求め、このΣNVをnで除算することにより振動半周期あたりの変位比例個数NVの和(ΣNV)/nを求め、式(11)に示すように変位比例個数NVの和(ΣNV)/nと半導体レーザ1の平均半波長λ/2との積を求めることにより、物体10の振動振幅Aを算出する(図3ステップS6)。
【0054】
なお、第1〜第3の実施の形態において、ステップS2〜S4で用いる計数結果の平均値の算出精度は、これらの平均値の算出に用いる計数結果が多くなるほど高くなるが、振動振幅が大きくなるにつれて誤算出する可能性が高くなるので、高精度を求める際にだけ、平均値の算出に用いる計数結果の数を徐々に増やしていくと良い。
【0055】
以下、計数結果の折り返しによる誤算出が発生する場合について図9を用いて説明する。距離比例個数NLの算出に折り返しされた計数結果を含む場合(図9の90の部分)、距離比例個数NLが図9の91のように誤算出され、計数結果N(t−1)が本来の距離比例個数NLの2倍より大きくても、誤算出された距離比例個数NLの2倍以上にはならないため、N(t)は折り返しされた計数結果と判断されない。誤算出が生じている場合でも、距離比例個数NLの算出に折り返しされた計数結果を含まない場合(図9の92の部分)があると、距離比例個数NLは正しい値になり、それ以降の折り返しされた計数結果は正しく算出される。そこで、図10に示すように、3回続けて距離比例個数NLよりも小さな計数結果Nが発生した場合(図10の93の部分)には、距離比例個数算出部81は、距離比例個数NLの誤算出と判断し、最初の2つの計数結果(図10の94と95)の平均値を距離比例個数NLとする。
【0056】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第1〜第3の実施の形態では、MHP波形を含む電気信号を検出する検出手段としてフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とを用いたが、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することも可能である。図11は本発明の第4の実施の形態に係る振動振幅計測装置の構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の振動振幅計測装置は、第1〜第3の実施の形態のフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5の代わりに、検出手段として電圧検出部11を用いるものである。
【0057】
電圧検出部11は、半導体レーザ1の端子間電圧、すなわちアノード−カソード間電圧を検出して増幅する。半導体レーザ1から放射されたレーザ光と物体10からの戻り光とによって干渉が生じるとき、半導体レーザ1の端子間電圧には、MHP波形が現れる。したがって、半導体レーザ1の端子間電圧からMHP波形を抽出することが可能である。
【0058】
フィルタ部6は、電圧検出部11の出力電圧から搬送波を除去する。振動振幅計測装置のその他の構成は、第1〜第3の実施の形態と同じである。
こうして、本実施の形態では、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することができ、第1〜第3の実施の形態と比較して振動振幅計測装置の部品を削減することができ、振動振幅計測装置のコストを低減することができる。また、本実施の形態では、フォトダイオードを使用しないので、外乱光による影響を除去することができる。
【0059】
本実施の形態では、レーザドライバ4から半導体レーザ1に供給する駆動電流をレーザ発振のしきい値電流付近に制御することが好ましい。これにより、半導体レーザ1の端子間電圧からMHPを抽出することが容易になる。
【0060】
なお、第1〜第4の実施の形態において少なくとも信号抽出部7と振幅計測部8とは、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、レーザを用いて物体の振動振幅を計測する技術に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る振動振幅計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における電流−電圧変換増幅部の出力電圧波形およびフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における信号抽出部と振幅計測部の動作を示すフローチャートである。
【図4】モードホップパルスについて説明するための図である。
【図5】半導体レーザの発振波長とフォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における振幅計測部の構成の1例を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における信号抽出部の計数結果の時間変化の1例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における信号抽出部の計数結果の時間変化の他の例を示す図である。
【図9】本発明の第1、第2の実施の形態における問題点を説明するための図である。
【図10】本発明の第1、第2の実施の形態における誤算出の検出方法を説明するための図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る振動振幅計測装置の構成を示すブロック図である。
【図12】従来の距離・速度計の構成を示すブロック図である。
【図13】図12の距離・速度計における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1…半導体レーザ、2…フォトダイオード、3…レンズ、4…レーザドライバ、5…電流−電圧変換増幅部、6…フィルタ部、7…信号抽出部、8…振幅計測部、9…表示部、10…物体、11…電圧検出部、80…記憶部、81…距離比例個数算出部、82…符号付与部、83…変位比例個数算出部、84…変位方向判別部、85…振幅算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象にレーザ光を放射する半導体レーザと、
発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、
この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手段と、
この信号抽出手段の計数結果の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、
前記信号抽出手段の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手段と、
前記距離比例個数と前記信号抽出手段の最新の計数結果とを比較することにより、前記測定対象の変位方向を判別する変位方向判別手段と、
この変位方向判別手段の判別結果に基づいて前記測定対象の振動半周期あたりの変位比例個数の和を求め、この和と前記半導体レーザの平均半波長との積を求めることにより、前記測定対象の振動振幅を算出する振幅算出手段とを備えることを特徴とする振動振幅計測装置。
【請求項2】
測定対象にレーザ光を放射する半導体レーザと、
発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、
この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手段と、
この信号抽出手段の計数結果の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、
前記信号抽出手段の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値とを比較し、最新の計数結果の方が大きいときのみ、または最新の計数結果の方が小さいときのみ、前記信号抽出手段の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手段と、
前記距離比例個数と前記信号抽出手段の最新の計数結果とを比較することにより、前記測定対象の変位方向を判別する変位方向判別手段と、
この変位方向判別手段の判別結果に基づいて前記測定対象の振動半周期あたりの変位比例個数の和を求め、この和と前記半導体レーザの平均半波長との積を求めることにより、前記測定対象の振動振幅を算出する振幅算出手段とを備えることを特徴とする振動振幅計測装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の振動振幅計測装置において、
さらに、前記信号抽出手段の1回前の計数結果とこの計数結果よりも過去の計数結果を用いて算出された前記距離比例個数の2倍数との大小関係に応じて前記信号抽出手段の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与手段を備え、
前記距離比例個数算出手段は、前記距離比例個数の算出に用いる全ての計数結果に前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き計数結果を用い、
前記変位比例個数算出手段は、前記変位比例個数の算出に用いる全ての計数結果に前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き計数結果を用いることを特徴とする振動振幅計測装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の振動振幅計測装置において、
前記振幅算出手段は、前記変位比例個数を前記測定対象の振動半周期のn(nは正の整数)倍の期間にわたって積分して前記変位比例個数の和を求め、この和をnで除算して求めた、振動半周期あたりの変位比例個数の和と前記半導体レーザの平均半波長との積を求めることにより、前記測定対象の振動振幅を算出することを特徴とする振動振幅計測装置。
【請求項5】
発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる発振手順と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、
この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手順と、
この信号抽出手順の計数結果の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手順と、
前記信号抽出手順の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手順と、
前記距離比例個数と前記信号抽出手順の最新の計数結果とを比較することにより、前記測定対象の変位方向を判別する変位方向判別手順と、
この変位方向判別手順の判別結果に基づいて前記測定対象の振動半周期あたりの変位比例個数の和を求め、この和と前記半導体レーザの平均半波長との積を求めることにより、前記測定対象の振動振幅を算出する振幅算出手順とを備えることを特徴とする振動振幅計測方法。
【請求項6】
発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる発振手順と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、
この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手順と、
この信号抽出手順の計数結果の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手順と、
前記信号抽出手順の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値とを比較し、最新の計数結果の方が大きいときのみ、または最新の計数結果の方が小さいときのみ、前記信号抽出手順の最新の計数結果と過去の計数結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手順と、
前記距離比例個数と前記信号抽出手順の最新の計数結果とを比較することにより、前記測定対象の変位方向を判別する変位方向判別手順と、
この変位方向判別手順の判別結果に基づいて前記測定対象の振動半周期あたりの変位比例個数の和を求め、この和と前記半導体レーザの平均半波長との積を求めることにより、前記測定対象の振動振幅を算出する振幅算出手順とを備えることを特徴とする振動振幅計測方法。
【請求項7】
請求項5または6記載の振動振幅計測方法において、
さらに、前記距離比例個数算出手順と前記変位比例個数算出手順との間において、前記信号抽出手順の1回前の計数結果とこの計数結果よりも過去の計数結果を用いて算出された前記距離比例個数の2倍数との大小関係に応じて前記信号抽出手順の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与手順を備え、
前記距離比例個数算出手順は、前記距離比例個数の算出に用いる全ての計数結果に前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き計数結果を用い、
前記変位比例個数算出手順は、前記変位比例個数の算出に用いる全ての計数結果に前記符号付与手順によって符号が与えられた符号付き計数結果を用いることを特徴とする振動振幅計測方法。
【請求項8】
請求項5または6記載の振動振幅計測方法において、
前記振幅算出手順は、前記変位比例個数を前記測定対象の振動半周期のn(nは正の整数)倍の期間にわたって積分して前記変位比例個数の和を求め、この和をnで除算して求めた、振動半周期あたりの変位比例個数の和と前記半導体レーザの平均半波長との積を求めることにより、前記測定対象の振動振幅を算出することを特徴とする振動振幅計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−78393(P2010−78393A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245408(P2008−245408)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】