説明

振動検出システム

【課題】光ファイバが設けられた箇所の振動を検出する。
【解決手段】光ファイバ地震検出システム1において、光パルス試験器2は、既設の光ケーブル4に接続され、光ケーブル4のうち、未使用である1芯の光ファイバに光パルス(光信号)を入射し、その光パルスのレベル(強度)を監視し、その監視した結果である光レベルデータを地震検出装置3に送信する。地震検出装置3は、光パルス試験器2から光ケーブル4における光レベルデータを受信し、その光レベルデータにおける減衰部分に基づいて、該当箇所で発生している地震の震度を判定し、その箇所ごとに地震の震度を表示する。電柱5aに添架されている光ケーブル4aには、混雑を避けるために巻かれた余長部4a1が存在する。電柱5bに添架されている光ケーブル4bには、電柱5bの配置によって曲げられた曲折部4b1が存在する。そのような部分における光パルスの減衰を検知し、地震の震度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの余長等を利用して、地震等の振動を検出するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを用いて地震やその予兆を検出する方法がいろいろ提案されている。例えば、特許文献1及び2には、光ファイバで伝送される光信号の偏波変動が架空地線を流れる地電流によって変化することを利用して、微弱な地電流を高精度に計測する方法及びそのシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−046938号公報
【特許文献2】特開2010−249848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2の技術は、光ファイバの光信号が架空地線の地電流から影響を受けることを利用するので、架空地線と、光ファイバとが一体になっていることが前提条件となる。これに対して、市街地に立設された配電柱では、架空地線と、光ファイバとが別々になっているので、上記の技術を適用するのは難しい。そこで、光ファイバだけを用いて、地震等の振動を検出することが望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、光ファイバが設けられた箇所の振動を検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、揺動可能な曲線部分を有する、既設の光ファイバを用いて振動を検出する振動検出システムであって、前記光ファイバにおける光信号の強度である光強度の減衰の位置分布を取得する手段と、前記取得した光強度の減衰の位置分布に基づいて、前記光強度の減衰量が所定値以上であった箇所を特定する手段と、前記特定した箇所において、前記光ファイバを支持する物が振動したことを出力する手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、光ファイバでは、ある箇所の曲率が閾値を超えて、内部を通る光信号が全反射しなくなる(すなわち、反射もれが発生する)と、光信号の強度(光強度)が減衰する。そして、予め曲がった部分の方が、光ファイバの支持物が振動したときに、その部分の曲率が閾値を超えやすくなり、すなわち、光強度が減衰しやすくなる。そこで、曲線部分を有する光ファイバにおける、光強度の減衰の位置分布を取得し、光強度が所定値以上減衰していれば、その箇所で光ファイバの支持物(例えば、電柱等)が所定以上振動したことが分かる。これによれば、光ファイバが設けられた箇所の振動を検出することができる。
【0008】
また、本発明の上記振動検出システムにおいて、前記光ファイバの各曲線部分の位置における、前記減衰量と、前記振動の要因である地震の震度とを対応付けた光ファイバ特性データを記憶する手段と、前記光ファイバ特性データに基づいて、前記特定した箇所における前記減衰量から前記震度を特定する手段と、前記特定した箇所において、前記特定した震度の地震が発生したことを出力する地震出力手段と、をさらに備えることとしてもよい。
【0009】
この構成によれば、光ファイバの支持物の振動が地震によるものであった場合に備えて、光ファイバの各曲線部分における、光強度の減衰量と、震度との関係を予め特定しておく。すなわち、曲線部分は、当初の曲率、支持物の位置や支持点の高さ等が異なり、それらに応じて、振動に対する減衰量が変わってくるので、曲線部分ごとに特性データを記憶する。そして、特性データに基づいて、曲線部分の位置及び減衰量から震度を特定し、出力する。これによれば、地震が発生したときに、震度を精度よく検出することができる。
【0010】
また、本発明の上記振動検出システムにおいて、前記光ファイバが設置された地域の地図データを記憶する手段を備え、前記地震出力手段は、前記地図データ上の、前記特定した箇所において、前記特定した震度を表示することとしてもよい。
この構成によれば、地震の震度を出力する際に、地図データ上の該当する位置に震度を表示するので、地図データに含まれる地域における震度を把握することができる。そして、当該地域において、曲線部分を有する光ファイバを張り巡らすことにより、震度の2次元分布をきめ細かく把握することができる。
【0011】
また、本発明の上記振動検出システムにおいて、前記曲線部分は、前記光ファイバが巻かれた余長であることとしてもよい。
この構成によれば、余長は、光ファイバの延設方向から外側に巻かれた物であり、自由に揺動可能なので、光強度を測定し、その光強度の減衰を検出するための曲線部分として非常に有用である。
【0012】
また、本発明の上記振動検出システムにおいて、前記曲線部分として、前記光ファイバ上の所定距離以内に、互いに垂直な2つの前記余長が設けられることとしてもよい。
通常の余長は、光ファイバの延設方向に揺れるときには、歪みが生じて光強度を減衰させるので、振動を検出できる。ところが、延設方向に垂直な方向(横方向)に揺れるときには、歪みが生じないので、振動を検出できない。この構成によれば、光ファイバの延設方向だけでなく、垂直方向にも余長を設けるので、延設方向から垂直方向までの振動を検出することができる。
【0013】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光ファイバが設けられた箇所の振動を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】光ファイバ地震検出システム1の構成を示す図である。
【図2】地震検出の原理を示す図であり、(a)は光ケーブルの余長により地震を検出する原理を示し、(b)は光ケーブルの余長により全方向の地震を検出する原理を示し、(c)は光ケーブルの距離と、反射光レベルとの関係を示す。
【図3】光レベルの減衰量と、地震の震度との関係を説明するための図であり、(a)は光ファイバの曲率半径と、伝送損失量(減衰量)との関係を示し、(b)は光ファイバの曲げ特性例を示し、(c)は地震の震度ごとに周期と、加速度との関係を示し、(d)は地震発生時に光ファイバの曲率半径が小さくなる様子を示す。
【図4】地震検出装置3の記憶部35に記憶されるデータの構成を示す図であり、(a)は光ケーブル特性データ35Aの構成を示し、(b)は震度表示データ35Bの内容を示す。
【図5】地震検出装置3の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施の形態に係る光ファイバ地震検出システム(振動検出システム)は、電柱に添架している光ケーブル(光ファイバ)の途中にある余長部や曲がった形状の部分が、地震等の振動を受けて揺動し、変形すると、光ケーブルの内部で光の屈折や反射が発生することを利用して、光パルス試験器を用いて透過光や反射光の変化を監視することにより、どの位置に、どの程度の振動が発生しているかを把握するものである。そして、光ケーブルを張り巡らせた地域において、場所ごとの地震動を細かく把握する。なお、余長部や曲がった形状の部分は、拘束されることなく、自由に揺動可能になっていることが望ましい。また、光パルス試験器は、OTDR(Optical Time-Domain Reflectometer)とも呼ばれる。
【0017】
≪システムの構成と概要≫
図1は、光ファイバ地震検出システム1の構成を示す図である。光ファイバ地震検出システム1は、光パルス試験器2及び地震検出装置3を備え、それらが相互に通信可能に接続される。光パルス試験器2は、既設の光ケーブル4に接続され、その光ケーブル4のうち、未使用である1芯の光ファイバに光パルス(光信号)を入射し、その光パルスのレベル(強度)を監視し、その監視した結果であり、反射光レベルの距離分布である光レベルデータ(例えば、図2(c)に示すデータ)を地震検出装置3に送信する。地震検出装置3は、光パルス試験器2から光ケーブル4における光レベルデータを受信し、その光レベルデータにおける減衰部分に基づいて、該当箇所で地震が発生しているか否かを判定し、その判定結果に基づいて、その地震の発生状況を表示する。
【0018】
架空地線や電柱に添架されている光ケーブル4には、巻かれた余長部や曲がった形状が存在し、そのような部分における光パルスの減衰を検知して、地震の発生を検出する。図1の10aは、光ケーブル4aが電柱5aに架設された様子を示す側面図である。光ケーブル4aには、電柱5aの箇所に余長部4a1が存在する。余長部4a1は、光ケーブル4aの曲げ半径が最小曲げ半径より小さくならないように維持することにより、通信品質を保持しながら、ケーブルの混雑を避けるために巻かれた部分であり、例えば、約0.5〜1mの直径を有する。図1の10bは、光ケーブル4bが電柱5bに架設された様子を示す平面図である。光ケーブル4bには、3本の電柱5bのうち、中央にある電柱5bの箇所に曲折部4b1が存在する。曲折部4b1は、光ケーブル4bが、架設された電柱5bの配置によって曲げられた部分である。
【0019】
地震検出装置3は、通信部31、表示部32、入力部33、処理部34及び記憶部35を備え、各部がバス36を介してデータを送受信可能なように構成される。通信部31は、通信線を介して光パルス試験器2とデータ通信を行う部分であり、例えば、通信プロトコル制御モジュール等によって実現される。表示部32は、処理部34からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部33は、オペレータがデータ(例えば、光ケーブル4ごとの震度データ等)や指示を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等によって実現される。処理部34は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、地震検出装置3全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部35は、処理部34からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0020】
≪地震検出の原理≫
図2は、地震検出の原理を示す図である。図2(a)は、光ケーブルの余長部により地震を検出する原理を示す。光ケーブルは、支点から所定の曲率により下方に曲げられ、余長部として数回巻かれた後、その同一の支点から水平方向に戻り、そのまま延設される。地震が発生したときに、余長部が支点を中心として光ケーブルの設置方向に揺れると、支点付近の光ファイバが変形し、歪が発生する。これにより、光パルスの反射量が増加し、光パルスのレベルが減衰する。そこで、その減衰量に応じて、地震が発生した否かを判定し、発生した地震の震度を推定する。
【0021】
曲折部については、図1の10bの平面図において、例えば、両端の電柱5bが動かずに、地震により中央の電柱5bが図面の上方に揺れたときに、曲折部4b1の位置が図面の上方にずれて、その付近の光ファイバに歪が発生する。これにより、光パルスの反射量が増加し、光パルスのレベルが減衰する。そこで、その減衰量に応じて、地震が発生した否かを判定し、発生した地震の震度を推定する。
【0022】
図2(b)は、光ケーブルの余長部により全方向の地震を検出する原理を示す。図2(a)の余長部は、光ケーブルの延設方向(光の進行方向)に揺れた場合に比べて、その延設方向に垂直な方向に揺れた場合には、光ファイバの変形は小さくなる。そこで、全方向の揺れを高感度で検出するために、光ケーブルの設置方向に垂直な方向(直角方向)にも、余長部を設けることとしている。なお、延設方向の余長部の支点(ループの始点と終点が重なる点)と、垂直方向の余長部の支点とは、同じ位置であってもよいし、同じ箇所と見なせる程度の距離以内にあってもよい。
【0023】
図2(c)は、光ケーブルの距離と、反射光レベルとの関係を示す。図2(a)及び(b)に示す原理に基づいて、光パルス試験器2を用いて、光ケーブル4の内部における透過光や反射光を監視することにより、その光レベルの減衰状況に応じて、どの位置で地震が発生しているかを検出する。また、所定の地域範囲を網羅するように、異なる経路を通る複数の光ケーブル4、又は、張り巡らされた1本の光ケーブル4を監視することにより、2次元的に地震動の大きさを把握する。
【0024】
詳細には、光レベルの減衰状況を常時監視しておくと、地震発生時には、通常よりさらに減衰が大きくなる。そこで、光ケーブル4全体における光レベルの変化を示すデータ(光レベルデータ)を取り込んで、所定値以上の変化(急激な減衰等)があった箇所を検出する。
【0025】
図3は、光レベルの減衰量と、地震の震度との関係を説明するための図である。図3(a)は、光ファイバの曲率半径と、伝送損失量(減衰量)との関係を示す。図3(a)によれば、光ファイバの曲率半径が大きくなる(すなわち、歪みが小さくなる)ほど、減衰量が小さくなっている。逆に言えば、光ファイバの歪みが大きくなれば、減衰量が大きくなることを示している。
【0026】
図3(b)は、光ファイバの曲げ特性例であり、光ファイバの曲率半径と、光量保持率との関係を示す。光量保持率は、光信号が光ファイバの曲がった部分を通る前の光量に対する、通った後の光量の割合を示す。図3(b)によれば、光ファイバの曲率半径が大きくなるほど、光量保持率が高くなり、100%に近付く。
【0027】
図3(c)は、地震の震度ごとに周期と、加速度との関係を示す。光ファイバの標準的な余長部は、10mを4回巻いたものであり、余長部の半径は、10/4/π/2≒0.4[m]=40[cm]となる。地震発生時には、余長部が静止し、光ファイバが動くと仮定する。また、地震の周期を数秒とし、光ファイバが移動する時間を1秒とする。
【0028】
(1)震度3の場合
周期が数秒のときの加速度αは、標準的には10cm/秒程度となるから、1秒間に1/2αt=5[cm]移動する。図3(d)に示すように、例えば、半径40cmの円周となる余長部のうち、4分の1の円弧に相当する光ファイバの一端が40cm移動したとすると、半径が20cmになる。
【0029】
(2)震度5の場合
周期が数秒のときの加速度αは、標準的には100cm/秒=1m/秒となるから、1秒間に1/2αt=0.5[m]移動する。移動距離が余長部の半径である40cmを超えるため、張力で引っ張られ、支点における角度が直角に近くなり、曲率半径はさらに小さくなる。
【0030】
以上によれば、曲率半径と、減衰量との関係が分かり、震度と、曲率半径との関係が分かるので、減衰量と、震度との関係を特定することができる。
例えば、地震検出装置3は、地図システム上において、光ケーブルの経路及び距離、支持物の位置及び支持点の高さ、余長部の位置及び径を管理する。そして、上記のような特性に基づいて、これらの諸元から、各支持物の地震動に対する各余長部の振動による、光ファイバの歪及び減衰量と、地震の震度との関係を事前に計算し、対応付けておく。そして、光パルス試験器2が測定する減衰量を監視することにより、地図上で数100m単位ごと(余長部の間隔による)に、震度をリアルタイム、かつ、時系列に把握することができる。それに関する実施例は、後記する。
【0031】
≪データの構成≫
図4は、地震検出装置3の記憶部35に記憶されるデータの構成を示す図である。図4(a)は、光ケーブル特性データ35Aの構成を示す。光ケーブル特性データ35Aは、光ケーブル4ごとに、余長部4a1及び曲折部4b1の各位置における減衰量と、震度との関係を示すデータであり、距離35A1、減衰量35A2及び震度35A3を含むレコードからなる。距離35A1は、光ケーブル4の端部に接続された光パルス試験器2と、光ケーブル4上の、余長部4a1及び曲折部4b1の各位置との間の距離であり、詳細には、光パルス試験器2が所定値以上の減衰量を検出した距離に対応する。減衰量35A2は、距離35A1における光レベルの減衰量を示し、余長部4a1や曲折部4b1の揺れによる歪みの程度に対応する。震度35A3は、距離35A1における減衰量35A2に応じた震度を示し、余長部4a1や曲折部4b1の揺れの特性による。なお、光ケーブル4の曲率の当初設定により、減衰量と、震度との対応付けを調整可能である。
【0032】
図4(b)は、震度表示データ35Bの内容を示す。震度表示データ35Bは、光ケーブル4上の余長部4a1、4c1や曲折部4b1の各位置における震度を表示したデータである。図4(b)では、光ケーブル4の経路を実線で示し、その経路上の、余長部4a1、4c1の位置を円で指示し、曲折部4b1の位置を三角形で指示する。そして、各位置における震度を、円又は三角形の中に表示する。震度表示データ35Bと、図示しない地図データ35Cとを合わせて表示部32に表示することにより、地図上で各位置の震度を把握可能とする。なお、当初の震度表示データ35Bには、震度を示す数字が表示されておらず、円や三角形の中は空欄になっているものとする。
【0033】
なお、記憶部35は、管轄する地域を網羅する地図データ35C(図示せず)をさらに記憶するものとする。
【0034】
≪装置の処理≫
図5は、地震検出装置3の処理を示すフローチャートである。本処理は、地震検出装置3において、主として処理部34が、通信部31により光パルス試験器2からデータを受信し、記憶部35のデータを参照、更新しながら、光ケーブル特性データ35Aの作成と、震度表示データ35B及び地図データ35Cの表示とを行うものである。
【0035】
まず、地震検出装置3は、光ケーブル特性データ35Aを作成し、記憶部15に記憶する(S501)。詳細には、実験により、電柱5aを振動させて、光ケーブル4aの余長部4a1における光信号の減衰量を測定し、減衰量と、振動に相当する震度とを対応付ける。また、電柱5bを振動させて、光ケーブル4bの曲折部4b1における光信号の減衰量を測定し、減衰量と、振動に相当する震度とを対応付ける。そして、減衰量35A2及び震度35A3のデータと、余長部4a1や曲折部4b1の位置する距離35A1とを、さらに対応付ける。
続いて、地震検出装置3は、各光ケーブル4について、S502〜S504の処理を行う。
【0036】
光パルス試験器2は、約1秒間に1回の時間間隔で光パルスを光ファイバに送信し、光パルスのレベルを監視し、その監視結果である光レベルデータを地震検出装置3に送信する。それに対して、地震検出装置3は、通信部31を通じて光パルス試験器2から光レベルデータを取得する(S502)。なお、取得した光レベルデータは、所定のメモリ上に格納され、例えば、図2(c)に示すような、距離と、光レベルとの関係(光強度の減衰の位置分布)が参照可能となる。
【0037】
次に、地震検出装置3は、光レベルデータから、光ケーブル4の余長部及び曲折部における減衰量及び距離を抽出する(S503)。例えば、図2(c)の光レベルデータを参照すると、破線の円で囲まれた箇所は、単位距離あたりの光レベルの減衰量が他の箇所より大きい。その減衰量が所定値以上であれば、その減衰量及びその箇所に対応する距離を抽出する。このときに基準となる所定値には、例えば、光ケーブル特性データ35Aのうち、当該距離35A1における最小の減衰量35A2(震度35A3が1に相当する減衰量35A2)が用いられる。
【0038】
続いて、地震検出装置3は、光ケーブル特性データ35Aに基づいて、抽出した減衰量及び距離から震度を特定し、震度表示データ35Bを作成し、記憶部35に記憶する(S504)。詳細には、当該光ケーブル4に対応する光ケーブル特性データ35Aにおいて、抽出した距離35A1及び減衰量35A2に対応する震度35A3を特定する。そして、記憶部35から震度表示データ35Bを読み出して、当該光ケーブル4の、距離に応じた余長部の円、又は、曲折部の三角形の中に、震度を示す数字を書き入れる。そのときに残った空欄には、その箇所では所定値以上の減衰量が検出されなかったということなので、地震の揺れがなかったことを示す0を書き入れる。
【0039】
さらに、地震検出装置3は、記憶部35から震度表示データ35B及び地図データ35Cを読み出し、両データを合わせて表示部32に表示する(S505)。これにより、表示部32を見れば、地図上において各震度の地震が発生した箇所を確認することができる。
【0040】
なお、上記実施の形態では、図1に示す地震検出装置3内の各部を機能させるために、処理部34で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る地震検出装置3が実現されるものとする。この場合、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0041】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、光ケーブル4が設けられた場所、すなわち、余長部4a1や曲折部4b1における地震を検出することができる。
【0042】
詳細には、図3に示すように、光ケーブル4に含まれる光ファイバ(特に、余長部や曲折部)は、曲率半径に応じて光信号の減衰量が変化し、地震等による振動で曲率半径が変化する。そこで、地震検出装置3は、図5のS501に示すように、光ケーブル4上の距離ごとに、減衰量と、震度との関係を特定し、図4(a)に示すような光ケーブル特性データ35Aとして記憶する。そして、S502〜S504に示すように、光パルス試験器2から光レベルデータを取得し、その光レベルデータと、光ケーブル特性データ35Aとから、震度表示データ35Bを作成する。これによれば、光ケーブル4、特に、余長部4a1や曲折部4b1が設けられた箇所の振動を検出することができ、さらに、地震の震度を把握することができる。
【0043】
続いて、S505に示すように、震度表示データ35Bと、地図データ35Cとを合わせて表示する。これによれば、光ケーブル4を地域に張り巡らすことにより、震度の平面分布を把握することができる。
【0044】
以上によれば、光ケーブル4が張られている地域や場所の地震動を細かく把握することができるため、地域や場所ごとに、地震動の大きさに合った復旧対応計画が立てられ、効率的かつ迅速な復旧が可能となる。
【0045】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
【0046】
(1)上記実施の形態では、地震を検出し、その震度を推定するように説明したが、自動車が電柱5に衝突したときに、電柱5において発生する振動を検出してもよい。いずれにしても、光ケーブル4が設置された構造物や地面のうち、光ケーブル4の余長部や曲折部を支持している箇所において発生する振動を検出することができる。なお、風による揺れの場合には変化が遅いので、変化の速度により地震や衝突の場合と区別することができる。
【0047】
(2)光ケーブルの余長部以外の部分であっても、振動の実験を行うことにより、減衰量35A2と、震度35A3との対応関係を示す光ケーブル特性データ35Aを作成することが可能である。
【0048】
(3)上記実施の形態では、余長部や曲折部の位置を考慮して地震の発生を検出するように説明したが、必ずしもその位置に関係することなく、光信号の減衰量が所定値以上であった箇所を抽出し、その箇所で地震や振動があったことを表示してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 光ファイバ地震検出システム(振動検出システム)
2 光パルス試験器
3 地震検出装置
34 処理部
35 記憶部
35A 光ケーブル特性データ
35A1 距離(位置)
35A2 減衰量
35A3 震度
35B 震度表示データ
4、4a、4b 光ケーブル(光ファイバ)
4a1 余長部(曲線部分)
4b1 曲折部(曲線部分)
5、5a、5b 電柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動可能な曲線部分を有する、既設の光ファイバを用いて振動を検出する振動検出システムであって、
前記光ファイバにおける光信号の強度である光強度の減衰の位置分布を取得する手段と、
前記取得した光強度の減衰の位置分布に基づいて、前記光強度の減衰量が所定値以上であった箇所を特定する手段と、
前記特定した箇所において、前記光ファイバを支持する物が振動したことを出力する手段と、
を備えることを特徴とする振動検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の振動検出システムであって、
前記光ファイバの各曲線部分の位置における、前記減衰量と、前記振動の要因である地震の震度とを対応付けた光ファイバ特性データを記憶する手段と、
前記光ファイバ特性データに基づいて、前記特定した箇所における前記減衰量から前記震度を特定する手段と、
前記特定した箇所において、前記特定した震度の地震が発生したことを出力する地震出力手段と、
をさらに備えることを特徴とする振動検出システム。
【請求項3】
請求項2に記載の振動検出システムであって、
前記光ファイバが設置された地域の地図データを記憶する手段を備え、
前記地震出力手段は、
前記地図データ上の、前記特定した箇所において、前記特定した震度を表示する
ことを特徴とする振動検出システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の振動検出システムであって、
前記曲線部分は、前記光ファイバが巻かれた余長である
ことを特徴とする振動検出システム。
【請求項5】
請求項4に記載の振動検出システムであって、
前記曲線部分として、前記光ファイバ上の所定距離以内に、互いに垂直な2つの前記余長が設けられる
ことを特徴とする振動検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−72800(P2013−72800A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213159(P2011−213159)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】