説明

振動波モータ

【課題】出力性能が安定して経時的変化が少なく、鳴きの発生が抑制された振動波モータの提供。
【解決手段】表面に進行波を発生する振動体12に、摩擦材14を介して動体13を加圧接触させ、進行波によって生じた摩擦力を利用して、動体13を移動させる振動波モータ1において、摩擦材14を、振動体12又は動体13の、これらが対向する面に固定し、摩擦材14を、液晶高分子を含み且つ流動開始温度が350℃以上である成形材から得られた成形体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、振動波モータは、圧電体に固定された振動体と、動体とが加圧接触した構造を有し、圧電体へ電力を印加することによって、圧電体及び振動体に進行波を発生させ、摩擦力によって動体を相対移動させて、機械エネルギーを得るものである。
【0003】
図1は、このような振動波モータの要部を例示する図であり、(a)は斜視図、(b)は拡大断面図である。
ここに示す振動波モータ1は、圧電体11上に振動体12が固定され、動体13上に摩擦材14が固定されて、摩擦材14が振動体12上に重ねられて、振動体12に摩擦材14を介して動体13が加圧接触され、構成されたものである。
圧電体11に電力を印加すると、振動体12に矢印A方向の進行波が発生する。この時、振動体12の各質点は、矢印Bのような楕円運動をしており、その各波頭は、進行波の方向に対して水平に逆方向に動き、進行波の谷の部分は、進行波と同方向に水平に動く性質がある。したがって、振動体12上に摩擦材14を介して配置された動体13は、波頭の上部のみに接触し、振動体12との摩擦力によって、矢印Cの方向に水平に移動する。
【0004】
通常、振動体12及び動体13の材質としては、鉄、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属が挙げられる。そして、振動波モータ1は、振動体12に動体13が加圧接触した構造を有するので、大きなモータ出力を得るためには、加圧時の圧力を大きくするか、振動体12と摩擦材14との間の摩擦係数を大きくすることが必要となる。摩擦材14は、このために使用され、ゴムやエンジニアリングプラスチックからなる。これにより、振動波モータ1は、振動体12及び動体13の摩耗が少なくなり、長期間安定して機械エネルギーが得られる。
【0005】
しかしながら、摩擦材14がゴム製等で摩擦係数が大きい場合には、摩擦材14の摩耗が激しく、摩耗粉が振動体12及び摩擦材14の接触面に付着して、両者間の摩擦力、すなわちブレーキトルクが経時的に変動してしまうという問題点があった。また、摩擦材14として、耐摩耗性が高いアスベスト繊維や無機粉末が充填されたエンジニアリングプラスチックを使用した場合、振動体12の表面に引っかき傷が多く発生し、ブレーキトルクが経時的に変動してしまうという問題があった。さらに、振動体12に付着した摩耗粉の影響で、振動体12の共振周波数が経時的に変動し、安定した起動性が得られないという問題点もあった。
【0006】
そこで、これら問題点を解決する手段として、摩擦材に液晶高分子組成物を使用することが開示されている。
例えば、特許文献1には、液晶ポリマー、又は摩擦力調整のための充填材を含有した液晶ポリマー組成物からなる摩擦材を使用した振動波モータが開示されている。そして、ガラス繊維とフェノール樹脂からなる摩擦材と比べて、充填材としてカーボン繊維、ガラス繊維又はポリ四フッ化エチレンを含有した組成物を使用した場合に、摩擦材の摩耗が少なく、回転数やトルク等の機械出力の経時劣化が抑制されることが開示されている。
【0007】
特許文献2には、芳香族ポリエステルからなる液晶ポリマーを母材として充填材を含有した複合樹脂層を摩擦材として使用した振動波モータが開示されている。そして、この振動波モータによれば、無負荷作動時又は低負荷作動時に鳴きがでない大出力型振動波モータを実現できることが記載されている。
【0008】
特許文献3には、ガラス転移点が100℃以上の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とし、周方向に配向された繊維状強化材が配合された複合樹脂の成形品を動体として使用することが開示されている。また、無負荷作動時又は低負荷作動時の鳴きを抑制し、動体と出力軸との間に従来必要とされた振動減衰のためのゴム弾性シートの介挿を不要とするために、前記マトリックス樹脂として液晶ポリマーを使用することが開示されている。そして、この振動波モータによれば、定格稼動時のトルクのうねりやムラを低減できることが記載されている。
【0009】
特許文献4には、摺動材(スライダー材)の微小時間での摩耗係数の変動が小さい材料として、サーモトロピック液晶ポリマーと無機充填材とを主成分とする液晶ポリマー組成物が開示されており、この組成物を使用することで、振動波モータのトルク、効率、回転数が安定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−17872号公報
【特許文献2】特開平3−173370号公報
【特許文献3】特開平3−285574号公報
【特許文献4】特開平6−197567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載の発明では、摩擦材の摩耗が少なく、無負荷作動時の回転数や起動トルク等の出力の劣化は抑制されるものの、その効果は十分とはいえず、トルクが不安定となり回転数や効率等も安定せず、使用時に鳴きが生じるという問題点があった。
また、特許文献2に記載の発明では、充填材としてグラファイトやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用した場合には、摩擦材の耐摩耗性が低いために中出力しか得られないという問題点があった。また、充填材として炭素繊維を使用した場合には、摩擦材の耐摩耗性は高いものの、炭素繊維が高価であり、さらに振動体の接触面が、超硬材処理と研磨を行った硬質のものであっても、炭素繊維によって生じた傷に起因すると推測されるトルクムラが発生してしまうという問題点があった。
また、特許文献3に記載の発明でも、トルクのうねりやムラの発生が十分に抑制できないという問題点があった。
また、特許文献4に記載の発明では、摺動材の耐摩耗性が低く、振動波モータの効率及び回転数の変動が大きいという問題点があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、出力性能が安定して経時的変化が少なく、鳴きの発生が抑制された振動波モータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、
本発明は、表面に進行波を発生する振動体に、摩擦材を介して動体を加圧接触させ、進行波によって生じた摩擦力を利用して、前記動体を移動させる振動波モータであって、前記摩擦材は、前記振動体又は動体の、これらが対向する面に固定され、前記摩擦材は、液晶高分子を含み且つ流動開始温度が350℃以上である成形材から得られた成形体であることを特徴とする振動波モータを提供する。
本発明の振動波モータにおいては、前記液晶高分子が液晶ポリエステルであることが好ましい。
本発明の振動波モータにおいては、前記成形材が、さらに充填材を含むことが好ましい。
本発明の振動波モータにおいては、前記充填材のモース硬度が7以下であることが好ましい。
本発明の振動波モータにおいては、前記充填材がガラス繊維又はガラス粒子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、出力性能が安定して経時的変化が少なく、鳴きの発生が抑制された振動波モータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】振動波モータの要部を例示する図であり、(a)は斜視図、(b)は拡大断面図である。
【図2】本発明の振動波モータの一実施形態を例示する概略斜視図である。
【図3】図2に示す振動波モータの要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の振動波モータは、表面に進行波を発生する振動体に、摩擦材を介して動体を加圧接触させ、進行波によって生じた摩擦力を利用して、前記動体を移動させる振動波モータであって、前記摩擦材は、前記振動体又は動体の、これらが対向する面に固定され、前記摩擦材は、液晶高分子を含み且つ流動開始温度が350℃以上である成形材から得られた成形体であることを特徴とする。摩擦材として、流動開始温度が350℃以上である成形材から得られたものを使用することで、振動波モータは、摩擦材が作動中に生じた摩擦熱の影響を受け難く、耐摩耗性に優れ、振動体又は動体の表面を傷付けることもない。その結果、回転数と起動トルクの変動が抑制され、鳴きの発生が抑制される。
【0017】
本発明の振動波モータは、摩擦材として上記のものを使用すること以外は、従来の振動波モータと同様の構成とすることができる。
図2は、本発明の振動波モータの一実施形態を例示する概略斜視図である。なお、図2では、振動波モータの構成を見易くするため、一部に切欠きを設けている。
ここに示す振動波モータ1は、圧電体11上に振動体12が固定され、動体13上に摩擦材14が固定されて、摩擦材14が振動体12上に重ねられて、振動体12に摩擦材14を介して動体13が加圧接触され、構成されたものである。圧電体11、振動体12及び動体13は、いずれも略円板状で、直径はほぼ同一であるが、これらの形状及び大きさは、ここに示すものに限定されず、適宜調節できる。
【0018】
圧電体11は公知のものでよく、特に限定されない。
振動体12及び動体13の材質は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属又は合金であることが好ましく、互いに同一でもよいし、異なってもよい。
振動体12は、圧電体11の表面に接着剤等により固定されている。
【0019】
振動体12の、圧電体11との固定面とは反対側の表面(すなわち、動体13と対抗する面)12aには、振動体12の外周に沿って、円を描くように直方体状の複数の突起121,121・・・が設けられている。そして、これら複数の突起121,121・・・は、対向する二辺(ここでは長辺)を振動体12の前記表面12aの径方向に向けて放射状に設けられている。また、これら複数の突起121,121・・・は、隣り合うもの同士の間の空間の位置(突起121,121・・・を、帯状の突起に切り込みが設けられたものとして見た時の切り込みの位置)が、圧電体11の駆動時に振動変位が最大となるように調節されている。突起121は、振動部を機械的により振動し易くするために設けられている。
突起121の高さは、目的に応じて適宜調節すればよいが、0.001〜1mmであることが好ましい。
【0020】
動体13の、振動体12と対抗する表面13aには、動体13の外周に沿って、リング状の摩擦材14が固定されている。摩擦材14は、動体13に接着剤等により固定されていることが好ましい。
摩擦材14は、複数の突起121,121・・・と重なるようにして、これらの上に接触して配置されている。
摩擦材14の厚さは、目的に応じて適宜調節すればよいが、0.1〜10mmであることが好ましい。また、摩擦材14の幅は、突起121の接触面全面を覆うように、設定することが好ましい。
【0021】
摩擦材14は、液晶高分子を含み且つ流動開始温度が350℃以上である成形材から得られた成形体である。ここで、成形材とは、液晶高分子、又は液晶高分子を含む組成物(以下、液晶高分子組成物という。)である。そして、前記成形材の流動開始温度は、好ましくは360〜400℃である。下限値以上とすることで、摩擦材は耐熱性及び高温強度がより向上し、振動波モータ作動時の摩耗に起因するトルクのムラやうねりの発生をより抑制できる。また、上限値以下とすることで、溶融温度や溶融粘度が低くなり、その成形に必要な温度も低くなって、成形加工性がより向上する。
【0022】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、成形材を溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、成形材の分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0023】
摩擦材14は、前記成形材を成形することにより作製できる。成形法としては、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法及びプレス成形法が挙げられる。これらの中でも、射出成形法が好ましい。
【0024】
振動波モータ1は、ばね締め付け手段(図示略)等の公知の加圧手段によって、振動体12に動体13が加圧接触されて、構成されている。
【0025】
図3は、図2に示す振動波モータ1の要部を突起121に沿って示す拡大図であり、図3のうち、圧電体11、振動体12、摩擦材14及び動体13の積層部分を拡大して示したものは、図1と一致する。なお、図3では、一部を断面表示している。
【0026】
圧電体11に電力を印加すると、振動体12に進行波が発生し、振動体12と摩擦材14との間に生じた摩擦力によって動体13が移動する。
【0027】
本発明の振動波モータは、ここに示すものに限定されず、本発明の効果を妨げない範囲内において、一部構成を適宜変更してもよい。例えば、ここでは、動体の振動体と対向する面に摩擦材が固定されたものついて説明したが、振動体の動体と対向する面に摩擦材が固定されていてもよい。
【0028】
以下、成形材について、さらに詳しく説明する。
本発明の振動波モータにおいて、前記成形材が液晶高分子組成物である場合、該組成物が含む液晶高分子以外の成分は、特に限定されないが、充填材であることが好ましい。充填材を含むことで、成形時の寸法安定性がより向上し、摩擦材の強度の向上によって耐摩耗性がより向上する。
【0029】
前記充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、繊維状及び板状以外で、球状等のその他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;ステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラス粒子、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。
これらの中でも、摩擦材として耐摩耗性に優れ、振動体又は動体の表面を傷付けることもないというより優れた効果が得られ、出力性能がさらに安定して経時的変化が少なくなうという観点から、前記充填材は、モース硬度が7以下であるものが好ましく、ガラス繊維又はガラス粒子が好ましい。このような充填材は、市販品の中からも適宜選択できる。
充填材は一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
充填材の含有量は、液晶高分子100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部である。
【0030】
前記成形材が液晶高分子組成物である場合、該組成物が含む液晶高分子以外の成分としては、前記充填材以外に、さらに添加剤、前記液晶高分子以外の樹脂等が例示できる。これらの成分は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0031】
添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられる。
添加剤の含有量は、液晶高分子100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部である。
【0032】
液晶高分子以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂で、且つ液晶高分子に該当しない樹脂が挙げられる。
液晶高分子以外の樹脂の含有量は、液晶高分子100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部である
【0033】
液晶高分子組成物は、液晶高分子、及び必要に応じて用いられる他の成分を、押出機を用いて溶融混練し、ペレット状に押し出すことにより調製することが好ましい。押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリュウと、シリンダーに設けられた1箇所以上の供給口とを有するものが好ましく用いられ、さらにシリンダーに設けられた1箇所以上のベント部を有するものがより好ましく用いられる。
【0034】
本発明の振動波モータにおいては、前記液晶高分子は、液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0035】
液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0036】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、
(I)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの、
(II)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、
(III)芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合させてなるもの、
(IV)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重合させてなるもの
が挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0037】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0038】
液晶ポリエステルは、下記一般式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記一般式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記一般式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
【0039】
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
【0040】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar、Ar又はArで表される前記基毎に、それぞれ独立に2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0041】
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は1〜10であることが好ましい。
【0042】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Arがp−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びArが2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0043】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Arがp−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arがm−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びArがジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0044】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Arがp−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びArが4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0045】
繰返し単位(1)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30〜80モル%、さらに好ましくは40〜70モル%、特に好ましくは45〜65モル%である。
繰返し単位(2)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは15〜30モル%、特に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
繰返し単位(3)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは15〜30モル%、特に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
繰返し単位(1)の含有量が多いほど、溶融流動性、耐熱性、強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
【0046】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0047】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に二種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0048】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが好ましく、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することがより好ましい。このようにすることで、液晶ポリエステルは溶融粘度が低くなり易い。
【0049】
液晶ポリエステルは、これを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下で行ってもよく、この場合の触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0050】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは350℃以上、より好ましくは360℃〜400℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、高過ぎると、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、その成形に必要な温度が高くなり易い。
【0051】
流動開始温度が350℃以上の液晶ポリエステルを得る場合には、例えば、繰り返し単位として、イソフタル酸に由来する繰り返し単位のように、m−フェニレン基を有する場合には、そのm−フェニレン基の含有比率を3モル%以下とすることが好ましい。また、繰り返し単位として2,6−ナフチレン基を有する場合には、その2,6−ナフチレン基の含有率を3モル%以下、又は45モル%以上とすることが好ましい。
具体的には、液晶ポリエステルが繰り返し単位(1)、(2)及び(3)からなり、繰り返し単位(1)がp−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰り返し単位、繰り返し単位(2)がテレフタル酸とイソフタル酸に由来する繰り返し単位、繰り返し単位(3)が4,4‘−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰り返し単位からなる4元系の場合には、イソフタル酸に由来する繰り返し単位の含有量を、液晶ポリエステルを構成する全繰り返し単位の合計量に対して、3モル%以下とすることが好ましい。また、液晶ポリエステルが繰り返し単位(1)、(2)及び(3)からなり、繰り返し単位(1)がp−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰り返し単位、繰り返し単位(2)がテレフタル酸に由来する繰り返し単位、繰り返し単位(3)が4,4‘−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰り返し単位からなる4元系の場合には、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰り返し単位の含有量を、液晶ポリエステルを構成する全繰り返し単位の合計量に対して3モル%以下、又は45モル%以上とすることが好ましい。
【0052】
本発明の振動波モータは、例えば、携帯電話等の通信機器;ゲーム機等の玩具・模型;CDプレーヤ、デジタルビデオカメラ等の音響・映像機器;ヘアドライヤ、ドリル等の家電機器・電動工具;印刷機、複写機、デジタルカメラ等の光学・精密機器;パワーウインドウ用、鏡面駆動用等の自動車電装機器;空調機器;計測機器;医療機器;産業用ロボット、海底探査ロボット、災害救助・支援ロボット等のロボット;その他に幅広く適用できる。
【実施例】
【0053】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、液晶ポリエステル及び液晶ポリエステル組成物の流動開始温度は、以下の方法で測定した。
【0054】
(流動開始温度の測定)
フローテスター(島津製作所社製、CFT−500型)を用いて、液晶ポリエステル又は液晶ポリエステル組成物約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステル又は液晶ポリエステル組成物を溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0055】
<液晶ポリエステルの製造>
[製造例1]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸828.8g(6.0モル)、テレフタル酸473.4g(2.85モル)、イソフタル酸24.9g(0.15モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル558.6.g(3.0モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、室温で窒素ガス気流下、15分間攪拌して十分に窒素置換した後、攪拌しながら、室温から145℃まで30分かけて昇温し、145℃で3時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、320℃で1時間保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーの流動開始温度は、258℃であった。次いで、このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、382℃であった。以下、この液晶ポリエステルをLCP1という。
【0056】
[製造例2]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸358.8g(2.16モル)、イソフタル酸39.9g(0.24モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、無水酢酸1347.6g(13.2モル)及び1−メチルイミダゾール0.194gを入れ、室温で窒素ガス気流下、15分間攪拌して十分に窒素置換した後、攪拌しながら、室温から145℃まで30分かけて昇温し、145℃で1時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から 320℃まで2時間50分かけて昇温し、320℃で1時間保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーの流動開始温度は、258℃であった。次いで、このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、362℃であった。以下、この液晶ポリエステルをLCP2という。
【0057】
[製造例3]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、無水酢酸1347.6g(13.2モル)及び1−メチルイミダゾール0.194gを入れ、室温で窒素ガス気流下、15分間攪拌して十分に窒素置換した後、攪拌しながら、室温から145℃まで30分かけて昇温し、145℃で1時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から 320℃まで2時間50分かけて昇温し、320℃で1時間保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーの流動開始温度は、261℃であった。次いで、このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、327℃であった。以下、この液晶ポリエステルをLCP3という。
【0058】
<液晶ポリエステル組成物の製造>
[製造例4]
LCP1(100質量部)と、ガラス繊維(セントラル硝子社製「EFH75−01」)(44質量部)とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、得られた混合物を、二軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30」)を用いて、シリンダー温度400℃で造粒し、液晶ポリエステル組成物のペレットを得た。この液晶ポリエステル組成物の流動開始温度は380℃であった。以下、この液晶ポリエステル組成物をLCP4という。
【0059】
[製造例5]
LCP3(100質量部)と、ガラス繊維(セントラル硝子社製「EFH75−01」)(44質量部)とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、得られた混合物を、二軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30」)を用いて、シリンダー温度360℃で造粒し、液晶ポリエステル組成物のペレットを得た。この液晶ポリエステル組成物の流動開始温度は322℃であった。以下、この液晶ポリエステル組成物をLCP5という。
【0060】
[製造例6]
LCP1(100質量部)と、炭素繊維(東邦テナックス社製ミルド炭素繊維「HTACMF−0160−0H」)(44質量部)とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、得られた混合物を、二軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30」)を用いて、シリンダー温度400℃で造粒し、液晶ポリエステル組成物のペレットを得た。この液晶ポリエステル組成物の流動開始温度は380℃であった。以下、この液晶ポリエステル組成物をLCP6という。
【0061】
<振動波モータの製造>
[実施例1]
図2に示す振動波モータを作製した。圧電体、振動体及び動体は、いずれも直径50mmの円板状とし、全体の厚さを3mmとした。振動体及び動体は、いずれもステンレス製とした。また、前記LCP1を、温風循環式乾燥器を用いて180℃で12時間乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業社製「PS40E−5ASE型」)を用いて射出成形することで、厚さ1mmの摩擦材を得た。射出成形時のシリンダー温度は400℃とした。そして、ばねによる締め付けで、振動体に摩擦材を介して動体を加圧接触させ、振動波モータとした。
【0062】
[実施例2]
LCP1に代えてLCP2を用い、射出成形時のシリンダー温度を400℃に代えて380℃としたこと以外は、実施例1と同様に振動波モータを作製した。
【0063】
[実施例3]
LCP1に代えてLCP4を用いたこと以外は、実施例1と同様に振動波モータを作製した。
【0064】
[実施例4]
LCP1に代えてLCP6を用いたこと以外は、実施例1と同様に振動波モータを作製した。
【0065】
[比較例1]
LCP1に代えてLCP3を用い、射出成形時のシリンダー温度を400℃に代えて360℃としたこと以外は、実施例1と同様に振動波モータを作製した。
【0066】
[比較例2]
LCP1に代えてLCP5を用い、射出成形時のシリンダー温度を400℃に代えて360℃としたこと以外は、実施例1と同様に振動波モータを作製した。
【0067】
<振動波モータの特性評価>
上記各実施例及び比較例の振動波モータについて、その円周方向に進行波が励振されるように電極を配置して、所定の加圧力に設定した。そして、約70kHzの共振周波数、600mAの入力電流を印加してモータを作動させ、初期(作動開始時)と、初期から100時間連続作動させた後とで、無負荷作動時の回転数の変動、起動トルクの変動、振動体の突起の表面状態、鳴きについて、それぞれ下記基準に従って評価した。結果を表1に示す。
【0068】
(無負荷作動時の回転数の変動)
○:変動がない。
△:わずかな変動があるが、実用上問題ない。
×:大きな変動がある。
(起動トルクの変動)
○:変動がない。
△:わずかな変動があるが、実用上問題ない。
×:大きな変動がある。
(振動体の突起の表面状態)
○:傷が見られない。
×:明らかな傷が見られる。
(鳴き)
○:鳴きがある。
×:鳴きがない。
【0069】
【表1】

【0070】
表1から明らかなように、実施例1〜4の振動波モータは、いずれの項目も良好な結果が得られ、回転数と起動トルクの変動が抑制されており、鳴きの発生も抑制されていた。特に実施例1〜3の振動波モータの特性が優れていた。
これに対して、比較例1〜2の振動波モータは、いずれの項目も十分満足できる結果ではなかった。特に比較例1では、作動開始から短時間で回転ムラが生じた。また、いずれの比較例でも、摩擦材の摩耗が原因と考えられる鳴きが発生した。
【符号の説明】
【0071】
1・・・振動波モータ、11・・・圧電体、12・・・振動体、12a・・・振動体の動体と対抗する面、13・・・動体、13a・・・動体の振動体と対抗する面、14・・・摩擦材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に進行波を発生する振動体に、摩擦材を介して動体を加圧接触させ、進行波によって生じた摩擦力を利用して、前記動体を移動させる振動波モータであって、
前記摩擦材は、前記振動体又は動体の、これらが対向する面に固定され、
前記摩擦材は、液晶高分子を含み且つ流動開始温度が350℃以上である成形材から得られた成形体であることを特徴とする振動波モータ。
【請求項2】
前記液晶高分子が液晶ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の振動波モータ。
【請求項3】
前記成形材が、さらに充填材を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の振動波モータ。
【請求項4】
前記充填材のモース硬度が7以下であることを特長とする請求項3に記載の振動波モータ。
【請求項5】
前記充填材がガラス繊維又はガラス粒子であることを特長とする請求項3又は4に記載の振動波モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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