説明

振動測定システム

【課題】各種センサーと測定器との間の結線を無くし、しかも各種センサーの振動測定同時性を確保できる振動測定システムを提供することである。
【解決手段】振動加速度を検出するための加速度センサーで検出した振動加速度信号をデジタル変換処理しそのデジタル信号を無線方式で計測器に伝送する加速度センサー機器14と、振動を検出するための振動センサーで検出した振動信号をデジタル変換処理しそのデジタル信号を無線方式で計測器に伝送する振動センサー機器16と、回転数を検出するための回転パルス計で検出した回転パルス信号を無線方式で計測器に伝送する回転パルスセンサー機器17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の振動変位を検出する振動測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転体の振動変位を検出する振動測定システムとしては、タービン、発電機、電動機などのローターの回転中の振動変位を検出し、回転体の診断を行うようにしたものがある。その診断を行う場合に回転機の回転数が変動する場合でも、適切な診断しきい値を迅速に設定することができるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、振動変位のアンバランス成分を評価するにあたっては、振動位相を検出するようにしている。すなわち、回転体ローターのアンバランスを検出するには、ローター回転中の振動変位を検出し、その振動変位だけでなく振動各周波数毎の位相を検出する必要がある。特に位相を検出する場合にあっては、測定部位毎に測定タイミングがあっていなければならない。
【0004】
そこで、従来では、測定対象機器について複数の測定ポイント全てにセンサーを取り付けた場合には、それら全てのセンサーで同時に振動測定できるように、測定器と全てのセンサーとを信号線(ケーブル)で繋いで測定を行っていた。
【0005】
図3は従来の振動測定システムの構成図である。図3では、回転体として電動機1で負荷装置2を駆動するものを示している。電動機1に2個の加速度センサー11a、11b、負荷装置2に2個の加速度センサー11c、11dが取り付けられ、さらに、電動機1の軸受部に振動センサー12a、負荷装置2の軸受部に振動センサー12bが取り付けられ、ローターには回転パルス計13が取り付けられている。そして、これら加速度センサー11a〜11d、振動センサー12a、12b、回転パルス計13は、それぞれ信号線で計測器4のデータ収集ボックス5に接続され、データ収集ボックス5に接続されたパソコン6で計測信号を処理し診断できるようにしている。
【特許文献1】特開2007−10415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の振動測定システムでは、測定対象機器について複数の測定ポイント全てにセンサー11、12、13を取り付け、それら全てのセンサー11、12、13から同時に振動測定を行う必要がある。そのため、測定器4と全てのセンサー11、12、13とを信号線(ケーブル)で繋いで測定を行わなければならない。従って、振動の測定に際しての段取り作業やケーブルの設置などコストが高くなっていた。
【0007】
本発明の目的は、各種センサーと測定器との間の結線を無くし、しかも各種センサーの振動測定同時性を確保できる振動測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の振動測定システムは、振動加速度を検出するための加速度センサーで検出した振動加速度信号をデジタル変換処理しそのデジタル信号を無線方式で計測器に伝送する加速度センサー機器と、振動を検出するための振動センサーで検出した振動信号をデジタル変換処理しそのデジタル信号を無線方式で計測器に伝送する振動センサー機器と、回転数を検出するための回転パルス計で検出した回転パルス信号を無線方式で計測器に伝送する回転パルスセンサー機器とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各種センサーと測定器との間の結線を無くし、しかも各種センサーの振動測定同時性を確保でき、振動測定効率向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の実施の形態に係わる振動測定システムの構成図である。加速度センサー機器14は、回転体の振動加速度を検出し無線方式で計測器4に伝送するものであり、振動加速度を検出するための加速度センサー11と、加速度センサー11で検出した振動加速度信号をデジタル変換処理しそのデジタル信号を無線方式で計測器4に伝送する無線伝送処理部15とを有している。
【0011】
振動センサー機器16は、回転体の振動を検出し無線方式で計測器4に伝送するもので、振動を検出するための振動センサー12と、振動センサー12で検出した振動信号をデジタル変換処理しそのデジタル信号を無線方式で計測器4に伝送する無線伝送処理部15とを有している。同様に、回転パルスセンサー機器17は、回転体の回転数を検出し無線方式で計測器4に伝送するものであり、回転数を検出するための回転パルス計13と、回転パルス計13で検出した回転パルス信号を無線方式で計測器に伝送する無線伝送処理部15とを有している。
【0012】
計測器4では、加速度センサー機器14、振動センサー機器16、回転パルスセンサー機器17からの計測信号をデータ収集ボックス5に入力し、データ収集ボックス5に接続されたパソコン6で計測信号を処理し診断する。また、携帯端末(PDA)18は、加速度センサー機器14、振動センサー機器16、回転パルスセンサー機器17に対し、信号の測定条件や測定タイミング等を設定するものである。携帯端末18は送受信モジュールを有し、全てのセンサー11、12、13の測定タイミングの同期を取る。また、携帯端末18には測定・解析ソフトウェアが実装され、測定対象機器である回転体の容量・回転数に応じて振動レベルの異常有無を自動判定する機能を有している。ここで、加速度センサーを振動音響センサーに代え、振動音響計測を複数個の無線方式で同期を取りながら計測することも可能である。
【0013】
図2は無線伝送処理部15の構成図である。無線伝送処理部15は、加速度センサー11、振動センサー12、回転パルス計13などのセンサー19で計測された計測信号を前処理器20で入力する。前処理器20は、センサー19から得た電気信号に対してエイリアシングフィルター処理を行う。そして、信号処理器21では、センサーから得た電気信号の感度調整を行う。すなわち、検出する振動信号のレベルに応じて信号検出レンジ(電圧)、離散化周期、測定周波数帯域の調整機能を有し、測定対象毎に周波数帯域を調整する。例えば電動機の軸受けであれば1kHz以上の帯域を通過させ、同じくアンバランスなど軸振動に関しては逆に1kHz以下の帯域のみ通過させる処理を行う。A/D変換器26では、信号処理器21で処理された信号をデジタル化しメモリ22に格納する。
【0014】
また、CPU23では計測した振動又は音の計測データに関して、その実効値やピーク値などの時間領域パラメータの算出と周波数解析を行う。メモリ22では、測定データに加えて、測定対象機器である回転体の情報とCPU23で求めた時間・周波数領域パラメータを1つのファイルとして記録する。通信モジュール24は、メモリ22に格納されたデータを計測器4に無線で送信する。タイマー初期化モジュール25は、CPU23に内蔵されたタイマー回路を初期化し、全てのセンサー11、12、13の測定タイミングの同期を取るために使用される。
【0015】
次に動作を説明する。例えば、振動測定については、振動信号を検出する振動センサー12を電動機1の軸受部に取り付け軸受部の振動を検出する。このとき振動センサー12が検出した振動音響信号は、無線伝送処理部15の前処理器20及び信号処理器21を経由し、A/D変換器26でA/D変換され、デジタル信号としてメモリ22に記憶され通信モジュール24により計測器4に送信される。
【0016】
この振動測定について、サンプリングレート並びに開始タイミングについてはCPU23に作用するソフトウェアで行う。予め測定器マスターである携帯端末18から振動センサー機器16に対して条件設定とタイマー初期化指令を送ることで調整する。
【0017】
次に、タイマー初期化方法について説明する。加速度センサー機器14、振動センサー機器16、回転パルスセンサー機器17の無線伝送処理部15のCPU23に内蔵したそれぞれのタイマー回路に対し、予め有線で全てを接続し、タイマー回路をそれぞれ調整しておいた後に、同時性が確保された状態で振動計測を行う。
【0018】
また、加速度センサー機器14、振動センサー機器16、回転パルスセンサー機器17の無線伝送処理部15のCPU23に内蔵したそれぞれのタイマー回路に対し、携帯端末18からタイマー回路の初期化を行う。初期化方法は以下の通りである。
【0019】
(1)電波時計受信による方法
図2に示した無線伝送処理部15のタイマー初期化モジュール25に電波時計受信回路を内蔵し、任意の時刻でタイマー回路を初期化するソフトウェアを用意する。このソフトウェアは、図2のCPU23上で動作し、マスターからの初期化コマンドに基づいてCPU23内部に組み込まれたタイマー回路を初期化すると共に測定時刻をセットする。そして、設定された時刻になったことを確認した後測定を開始する。これを複数のセンサー19の全てに行うことで、センサー間の測定同期を取ることができる。これにより、測定開始タイミングを調整された各々のセンサー19で振動測定行う。
【0020】
(2)赤外線受信による方法
図2に示した無線伝送処理部15のタイマー初期化モジュール25に赤外線受信モジュールを内蔵させる。この場合、各センサー19に赤外線受信部を用意する。これに対して測定毎に開始信号を送り各センサーに測定指示を行う。
【0021】
(3)GPS(Global Positioning System)応用
各センサー19それぞれにGPS信号受信回路を内蔵し、マスターから測定時刻を指示する。各センサー19はその時刻を検知し、振動測定や回転パルスの計測を行う。この際、マスターからは各ノードに対してCPU23内のカレンダー用タイマーに対して時刻あわせ信号を用意する。これにより開始と終了タイミングとの同期を取ることが可能になる。
【0022】
本発明の実施の形態によれば、電動機など回転体のアンバランスを評価する際に、複数のセンサーと測定器とを無線で接続するので、ワイヤード結線する必要がなくなり、振動測定効率向上を図ることが可能になる。すなわち、携帯端末に送受信モジュールを用意し、測定タイミングの同期を取る手段を用意するので、センサーと測定器との間の結線を無くし、これにより測定効率を大幅に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係わる振動測定システムの構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係わる無線伝送処理部の構成図。
【図3】従来の振動測定システムの構成図。
【符号の説明】
【0024】
1…電動機、2…負荷装置、4…計測器、5…データ収集ボックス、6…パソコン、7…、8…、9…、10…、11…加速度センサー、12…振動センサー、13…回転パルス計、14…加速度センサー機器、15…無線伝送処理部、16…振動センサー機器、17…回転パルスセンサー機器、18…携帯端末、19…センサー、20…前処理器、21…信号処理器、22…メモリ、23…CPU、24…通信モジュール、25…タイマー初期化モジュール、26…A/D変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動加速度を検出するための加速度センサーで検出した振動加速度信号をデジタル変換処理しそのデジタル信号を無線方式で計測器に伝送する加速度センサー機器と、振動を検出するための振動センサーで検出した振動信号をデジタル変換処理しそのデジタル信号を無線方式で計測器に伝送する振動センサー機器と、回転数を検出するための回転パルス計で検出した回転パルス信号を無線方式で計測器に伝送する回転パルスセンサー機器とを備えたことを特徴とする振動測定システム。
【請求項2】
前記加速度センサー機器、前記振動センサー機器、前記回転パルスセンサー機器のそれぞれにタイマー回路を内蔵し、予め有線で全てを接続し前記タイマー回路をそれぞれ調整しておいた後に、同時性が確保された状態で振動計測を行うことを特徴とする請求項1記載の振動測定システム。
【請求項3】
前記加速度センサー機器、前記振動センサー機器、前記回転パルスセンサー機器のそれぞれに内蔵した無線送受信モジュールに無線で測定指示を同時に送信し振動測定同時性を確保することを特徴とする請求項1記載の振動測定システム。
【請求項4】
前記加速度センサー機器、前記振動センサー機器、前記回転パルスセンサー機器のそれぞれに電波時計信号受信回路を内蔵し、電波時計から受信する時刻に基づいて測定開始し振動測定同時性を確保することを特徴とする請求項1記載の振動測定システム。
【請求項5】
前記加速度センサー機器、前記振動センサー機器、前記回転パルスセンサー機器のそれぞれにGPS受信回路を内蔵し、GPSから受信する時刻に基づいて測定開始し振動測定同時性を確保することを特徴とする請求項1記載の振動測定システム。
【請求項6】
前記加速度センサー機器、前記振動センサー機器、前記回転パルスセンサー機器のそれぞれに赤外線受信回路を内蔵し、赤外線信号受信をタイミングとして振動測定を行い振動測定同時性を確保することを特徴とする請求項1記載の振動測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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