説明

振動溶着方法

【課題】スペースをとらない簡単な構造で溶着粉の問題を解決できる樹脂部品の接合方法を提供する。
【解決手段】上側樹脂部品の溶着凸部の先端に位置する溶着予定端面と下側樹脂部品の溶着部の先端に位置する溶着予定端面とを突き当てて振動溶着してなる振動溶着方法であって、上側樹脂部品と下側樹脂部品との当接部の外周又は周囲の少なくとも一部に、振動溶着時に発生する溶着粉の飛散を抑えるための液状部材を配置させた状態で、振動溶着を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部品を振動溶着により接合する振動溶着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂部品同士の安価な接合方法として振動溶着方法が知られている。この振動溶着方法は、先ず、複数の樹脂部品の溶着予定端面同士を加圧しながら当接させ、その端面同士を振動させる。そしてこのとき発生する摩擦熱を利用して溶着予定端面の樹脂を溶融する。溶着予定端面の樹脂が溶融したら振動を停止し、これに伴い冷却凝固する溶着部の樹脂により樹脂部品同士を接合するようになっている。
【0003】
上記振動溶着法は、大型の部品及び複雑な形状の部品の接合に適しており、自動車、家電製品、OA機器及び医療機器等、様々な分野における樹脂部品同士の接合に利用されている。
【0004】
上記の通り、振動溶着法により樹脂部品同士を接合する際には、樹脂部品の溶着予定端面同士が振動により擦れ合う。この擦れ合いによって樹脂部品の溶着予定端面から樹脂粉が発生する。この樹脂粉は溶着粉と呼ばれる。
【0005】
上記溶着粉が樹脂部品同士を振動溶着してなる溶着体の内部に混入すると、溶着体の使用時に溶着粉が他の部品等に悪影響を及ぼす等の問題が発生する場合がある。また、この溶着粉が溶着装置等に付着することにより溶着装置の作動不良が生じ、しばしば生産を停止させるという問題がある。また、飛散した溶着粉は作業現場を汚し、環境衛生上問題となる。そして、溶着粉の除去作業による作業工数の増大、溶着治具のオーバーホール等が必要となる等の問題がある。
【0006】
上記のような振動溶着の際に発生する溶着粉が、飛散することを防止するための様々な改善案が開示されている。例えば、特許文献1には樹脂振動溶着時に発生する溶着粉を除去して、環境衛生上の問題をなくし、且つ生産もスムーズに行うことができる溶着粉除去装置が開示されている。また、特許文献2には、振動溶着法により樹脂部品同士を接合する場合に、接合部周辺における樹脂粉体の発生を抑制することができる成形材料が開示されている。また、特許文献3には、溶着粉が発生しないような構造を備える自動車の自動変速機等に使用されるオイルストレーナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−66740号公報
【特許文献2】特開2007−177059号公報
【特許文献3】特開2008−128417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、振動溶着法は樹脂部品同士を接合する際の方法として、様々な場面で用いられるが、溶着粉の問題がある。上記の通り、溶着粉による問題に対しては、様々な改善案が開示されているものの更なる改善が求められている。具体的には、より簡単な方法で溶着粉の課題を解決することが求められている。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、スペースをとらない簡単な構造で溶着粉の問題を解決できる樹脂部品の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、上側樹脂部品の溶着凸部の先端に位置する溶着予定端面と下側樹脂部品の溶着部の先端に位置する溶着予定端面とを突き当てて振動溶着してなる振動溶着方法であって、上側樹脂部品と下側樹脂部品との当接部の外周又は周囲の少なくとも一部に、振動溶着時に発生する溶着粉の飛散を抑えるための液状部材を配置させた状態で、振動溶着を行なうことで、溶着粉が液体に捕捉され上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1) 上側樹脂部品の溶着凸部の先端に位置する溶着予定端面と下側樹脂部品の溶着部の先端に位置する溶着予定端面とを突き当てて振動溶着してなる振動溶着方法であって、前記上側樹脂部品と前記下側樹脂部品との当接部の外周又は周囲の少なくとも一部に、前記振動溶着時に発生する溶着粉の飛散を抑えるための液状部材を配置させた状態で、前記振動溶着を行なう振動溶着方法。
【0012】
(2) 前記振動溶着後に前記液状部材を硬化させる(1)に記載の振動溶着方法。
【0013】
(3) 前記振動溶着後に前記液状部材を除去する(1)又は(2)に記載の振動溶着方法。
【0014】
(4) 前記下側樹脂部品の基部から前記上側樹脂部品の基部に向けて、前記溶着凸部が延びる方向と同じ方向に延びる第一凸部を備え、前記上側樹脂部品の溶着予定端面と前記下側樹脂部品の溶着予定端面とを当接させた状態で、前記溶着凸部と前記第一凸部との間に第一凹部が形成されており、該第一凹部に前記液状部材が配置される(1)から(3)のいずれかに記載の振動溶着方法。
【0015】
(5) 前記上側樹脂部品の基部から前記溶着凸部と前記第一凸部との間の空間に向けて延出される第二凸部を備える(4)に記載の振動溶着方法。
【0016】
(6) 前記下側樹脂部品の基部から前記上側樹脂部品の基部に向けて、前記溶着凸部が延びる方向と同じ方向に延びる第三凸部をさらに備え、前記第三凸部は、前記溶着凸部を挟んで前記第一凸部と並ぶように設けられ、前記上側樹脂部品の溶着予定端面と前記下側樹脂部品の溶着予定端面とを当接させた状態で、前記溶着凸部と前記第三凸部との間に第二凹部が形成されており、該第二凹部に前記液状部材が配置される(4)又は(5)に記載の振動溶着方法。
【0017】
(7) 前記上側樹脂部品の基部から前記溶着凸部と前記第三凸部との間の空間に向けて延出される第四凸部を備える(6)に記載の振動溶着方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上側樹脂部品と下側樹脂部品との当接部の外周又は周囲の少なくとも一部に、前記振動溶着時に発生する溶着粉の飛散を抑えるための液状部材を配置させた状態で振動溶着を行なうことで、樹脂部品同士を接合する際の溶着予定端面同士の振動による擦れ合いによって発生する溶着粉が上記液状部材に捕捉される。その結果、溶着体の使用時に溶着粉が他の部品等に悪影響を及ぼす等する問題を容易に解決することができる。また、溶着粉が溶着装置等に付着することにより溶着装置の作動不良が生じ、しばしば生産を停止させるという問題、さらに、飛散した溶着粉が作業現場を汚すという環境衛生上の問題、さらに、溶着粉の除去作業による作業工数の増大、溶着治具のオーバーホール等が必要となる等の問題を容易に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(A)は、本実施形態の振動溶着方法で接合された溶着容器1を示す斜視図である。図1(B)は溶着容器1のA−A断面図である。
【図2】第一実施形態の上側樹脂部品11と下側樹脂部品12とが振動溶着により接合される様子を示す図である。
【図3】従来技術の一例であり、当接部Cの外周又は周囲に硬化性接着剤3を配置しない場合について示す図である。
【図4】第二実施形態の振動溶着方法について示す図である。
【図5】第三実施形態の振動溶着方法について示す図である。
【図6】第四実施形態の振動溶着方法について示す図である。
【図7】図6とは別の第四実施形態の振動溶着方法について示す図である。
【図8】第五実施形態の振動溶着方法について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に記載される発明に限定されない。
【0021】
<振動溶着方法>
本発明の第一実施形態における振動溶着方法について説明する。本発明の振動溶着方法は、上側樹脂部品の溶着凸部の先端に位置する溶着予定端面と下側樹脂部品の溶着部の先端に位置する溶着予定端面とを突き当てて振動溶着してなる振動溶着方法であって、上側樹脂部品と下側樹脂部品との当接部の外周又は周囲の少なくとも一部に、前記振動溶着時に発生する溶着粉の飛散を抑えるための液状部材を配置させた状態で、振動溶着を行なう振動溶着方法である。
【0022】
以下、本発明の振動溶着方法について、図面を参照しながら具体例を用いてさらに詳細に説明する。図1(A)は、本実施形態の振動溶着方法で接合された溶着容器1を示す斜視図である。以下、図1(A)に示すような溶着容器1を得るための接合方法について説明する。図1(B)は溶着容器1のA−A断面図である。溶着容器1は、図1(B)に示すように、上側樹脂部品11と下側樹脂部品12とが白抜き矢印方向に移動し、接合部2を介して振動溶着してなる。図1(B)から明らかなように、溶着容器1の断面図からは2箇所で振動溶着する様子を観察することができる。この2箇所で観察できる振動溶着される様子は同じものであることから、以下の説明では、一方のみに着目して振動溶着方法を説明する。
【0023】
図2は、上側樹脂部品11と下側樹脂部品12とが振動溶着により接合される様子を示す図であり、(A)は振動溶着前の上側樹脂部品11の溶着予定端面と下側樹脂部品12の溶着予定端面とが、白抜き矢印方向に移動することにより当接し、当接部Cを形成した状態を示す図であり、(B)は上側樹脂部品11と下側樹脂部品12との接合途中を示す図であり、(C)は上側樹脂部品11と下側樹脂部品12との接合後の状態を示す図である。
【0024】
図2に示すように、上側樹脂部品11は、溶着容器1を構成する第一容器構成部材であり、溶着方向に延びる環状の溶着凸部111と、第一基部112とを備える。
【0025】
図2に示すように、下側樹脂部品12は、溶着容器1を構成する第二容器構成部材であり、溶着凸部111と接合部2を介して接合される環状の溶着部121と、第二基部122とを備える。
【0026】
[上側樹脂部品]
上側樹脂部品11は、樹脂組成物を成形してなる。樹脂組成物に含まれる樹脂は、特に限定されず従来公知の樹脂を用いることができる。従来公知の樹脂としては、熱硬化性樹脂、結晶性熱可塑性樹脂、非晶性熱可塑性樹脂等が挙げられる。本発明の振動溶着方法は、溶着粉の発生しやすいポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物を用いる場合であっても、溶着粉の問題が容易に解決できる。
【0027】
樹脂組成物は、複数の樹脂をブレンドした樹脂混合物であってもよい。また、樹脂組成物には、核剤、カーボンブラック、無機焼成顔料等の顔料、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤及び難燃剤等の添加剤を添加して、所望の特性を付与した樹脂組成物も含まれる。
【0028】
上側樹脂部品11は、従来公知の成形方法で得ることができる。従来公知の成形方法としては、例えば、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、押出成形、ブロー成形等種々の成形方法を挙げることができる。
【0029】
溶着凸部111は、上側樹脂部品11の第一基部112の端面Aに設けられる凸部である。また、溶着凸部111は、第一基部112の端面Aから下側樹脂部品12の溶着部121に向けて延びる環状の凸部である。溶着凸部111の先端には溶着予定端面が存在する。
【0030】
[下側樹脂部品]
下側樹脂部品12は、樹脂組成物を成形してなる。樹脂組成物に含まれる樹脂は、特に限定されず、上側樹脂部品11の説明で記載した樹脂組成物と同様のものを用いることができる。下側樹脂部品12は、上側樹脂部品11と同様に、従来公知の成形方法で得ることができる。
【0031】
溶着部121は、図1及び2に示すように、下側樹脂部品12の第二基部122の端面Bに設けられる部位である。溶着部121は、第二基部122の端面Bから上側樹脂部品11の溶着凸部111の先端に向けて延びる環状の凸部である。溶着部121の先端には溶着予定端面が存在する。
【0032】
[振動溶着方法]
次に、上側樹脂部品11と下側樹脂部品12との接合について詳細に説明する。
先ず、図2(A)に示すように、上側樹脂部品11の溶着凸部111の先端の溶着予定端面と、下側樹脂部品12の溶着部121の先端に存在する溶着予定端面とを当接させ、当接部Cを形成させる。
当接部Cを形成する前(図2(A)の二点鎖線)の段階で常温硬化型の硬化性接着剤3を溶着凸部111の先端の角部に配置する。この常温硬化型の硬化性接着剤3が液状部材にあたる。このように上側樹脂部品11と下側樹脂部品12との当接前に予め硬化性接着剤3を配置することで、溶着凸部111の先端の溶着予定端面と溶着部121の先端の溶着予定端面とを当接して当接部Cを形成した時に、当接部Cの外周の少なくとも一部に硬化性接着剤が配置された状態になる。即ち、「上側樹脂部品と下側樹脂部品との当接部の外周の少なくとも一部に、振動溶着時に発生する溶着粉の飛散を抑えるための液状部材を配置させた状態」とは、図2(A)に示すように、当接部Cの外周の少なくとも一部に、硬化性接着剤3(液上部材)が接する状態を指す。
図2(A)に示すように、上側樹脂部品11の溶着予定端面と下側樹脂部品12の溶着予定端面とを当接し、当接部Cを形成した状態で、当接部Cの外周の少なくとも一部に常温硬化型の硬化性接着剤3が配置されるのであれば、その硬化性接着剤3の設け方は、特に限定されない。例えば、当接前の溶着部121の先端の角部に硬化性接着剤3を予め配置しておく方法等でもよい。
【0033】
次いで、従来公知の振動溶着装置を用いて、上側樹脂部品11と下側樹脂部品12の溶着予定端面同士が振動により擦れ合うようにして当接部Cに熱を与える。この熱により溶着凸部111の当接部付近と、溶着部121の当接部付近には溶融層が形成される(図2(B)中の当接部Cを挟む斜線部)。図2(B)に示すように、溶融層が形成されるとともに、この擦れ合いによって樹脂部品の溶着予定端面同士が当接する当接部Cから溶着粉4が発生する。
発生した溶着粉4は、液状(硬化前)の硬化性接着剤3に捕捉される。その結果、溶着容器1内に溶着粉4が混入することを抑える。また、溶着容器1の外部に溶着粉4が出ることを抑える。「溶着粉4の飛散」とは、上記のような、溶着容器1内への溶着粉4の混入、溶着容器1の外部へ溶着粉4が出ることを指す。
当接部Cの外周全体に硬化性接着剤3を配置した状態で振動溶着すれば、振動溶着時に発生する溶着粉4のほとんどを捕捉できるため好ましい。
これに対して、図3には、従来技術の一例であり、当接部Cの外周に硬化性接着剤3を配置しない場合について示した。この場合、振動溶着時に発生する溶着粉4は、溶着容器1の内部に混入しやすい。また、溶着容器1の外部に出やすい。その結果、上述の溶着粉4による問題を生じやすい。
【0034】
接合後を示す図2(C)から明らかなように、図2(B)に示す溶融層同士が突き当てにより重なり、溶融層同士の重なり部分のほとんどがバリ5として排出される。そして、図2(C)に示すように、溶着凸部111と溶着部121との間には接合部2が形成される。この接合部2の形成により上側樹脂部品11と下側樹脂部品12との振動溶着は終了する。なお、図2(C)に示すように、接合部2の周囲には、バリ5が形成され、バリ5と硬化性接着剤3が混ざる。
【0035】
硬化性接着剤3は液状である。このため、溶着容器1の内部に硬化性接着剤3は混入しないように、溶着容器1の外部に硬化性接着剤3が出て行かないように、接合後、硬化性接着剤3を硬化させることが好ましい。
また、溶着容器1の内部に硬化性接着剤3が混入することの防止及び溶着容器1の外部に硬化性接着剤3が出ることを抑えることが目的であるため、振動溶着後に硬化性接着剤3を除去してもよい。
【0036】
図4は、図2とは別の第二実施形態の溶着容器についての振動溶着方法について示す。図4に示すように、上側樹脂部品11は、上記第一実施形態のものと同じである。以下において、第一実施形態に対応する構成については、適宜その説明を省略する。
【0037】
第二実施形態における下側樹脂部品12は、溶着凸部111と接合部2を介して接合される環状の溶着部121と、溶着凸部111と同じ方向に延びる環状の第一凸部123と、溶着部121を挟んで第一凸部123と並ぶように設けられる環状の第三凸部124と、第二基部122とを備える。第一凸部123、第三凸部124を備える点で第一実施形態における下側樹脂部品12と異なる。
【0038】
第一凸部123は、下側樹脂部品12の第二基部122の端面Bに、溶着部121と並ぶように設けられる。第一凸部123は、第二基部122の端面Bから第一基部112の端面Aに向けて延びる環状の凸部である。
【0039】
第三凸部124は、下側樹脂部品12の第二基部122の端面Bに、溶着部121を挟んで第一凸部123と並ぶように設けられる。第三凸部124は、第二基部122の端面Bから第一基部112の端面Aに向けて延びる環状の凸部である。
【0040】
第二基部122は、第二基部122の端面Bに第一凸部123、第三凸部124、溶着部121が設けられる。端面B上には、溶着部121を挟むように、第一凸部123と第三凸部124とが設けられる。
【0041】
図4(A)に示すように、上側樹脂部品11の溶着予定端面と下側樹脂部品12の溶着予定端面とを当接した状態で、溶着凸部111と第一凸部123との間に第一凹部Dが形成され、溶着凸部111と第三凸部124との間に第二凹部Eが形成される。
【0042】
次に第二実施形態の具体的な振動溶着方法について説明する。
先ず、図4(A)に示すように上側樹脂部品11の溶着予定端面と下側樹脂部品12の溶着予定端面とを当接させて当接部Cを形成する。
図4(A)に示すように、当接前の下側樹脂部品12の第一凸部123と第三凸部との間の空間に溶着部121を浸すようにして常温硬化型の硬化性接着剤3を配置する。なお、硬化性接着剤3は液上部材にあたる。
第一凸部123と第三凸部124とを備える下側樹脂部品12を用いる第二実施形態の振動溶着方法であれば、上記のように溶着部121を硬化性接着剤3で浸せる。このため、上側樹脂部品11の溶着予定端面と下側樹脂部品12溶着予定端面とを当接させ当接部Cを形成した状態で当接部Cの外周全体を硬化性接着剤3で覆うことができる。その結果、後述する通り、溶着粉4の飛散を抑える効果が大きくなる。
以上より、溶着部121を硬化性接着剤3で浸すことができるようにするために、第一凸部123の長さY1、第三凸部124の長さY2は、ともに溶着部の長さY3より長くすることが好ましい。
【0043】
次いで、従来公知の振動溶着装置を用いて、第一実施形態の方法と同様に当接部Cに熱を与える。すると、図4(B)に示すように、第一実施形態の場合と同様に、上側樹脂部品11と下側樹脂部品12との振動溶着時には当接部Cから溶着粉4が発生する。
第二実施形態では当接部Cの外周が完全に硬化性接着剤3で覆われている。このため、図4(B)に示すように、発生した溶着粉4のほぼ全てが硬化性接着剤3に捕捉される。その結果、溶着容器1内に溶着粉4が入る可能性、溶着容器1外に溶着粉4が飛散する可能性がほぼ無くなる。
なお、振動溶着時に第一凸部123の先端と第一基部112の端面Aが接しないようにする必要がある。したがって、第一凸部123の先端から端面Aまでの距離Y4は、これらが互いに接しないように設定する必要がある。なお、第三凸部124の先端と端面Aとの間の距離Y5についてもY4と同様の方法で設定する。
【0044】
最後に、当接部Cの付近に形成された溶融層がバリ5として排出され接合部2が形成されて振動溶着は終了する。振動溶着後の状態を図4(C)に示した。
図4(C)から明らかなように、第一凸部123及び第三凸部124は、バリ溜めとして働く。したがって、第一凸部123の長さY1及び第三凸部124の長さY2を設定する際には、バリ溜めとしての効果が充分に発揮できるような長さに設定する必要がある。
即ち、第一凸部123の長さY1及び第三凸部124の長さY2は、溶着部121を硬化性接着剤3で浸すという観点、第一凸部の先端、第二凸部の先端と第一基部112の端面Aとが振動溶着時に衝突しないという観点、第一凹部D及び第二凹部Eをバリ溜めとして働かせる観点から設定する。
【0045】
図5は、図2、4とは別の第三実施形態の振動溶着方法について示す。図5に示すように、下側樹脂部品12は、上記第一実施形態のものと同じである。以下において、第一実施形態、第二実施形態に対応する構成については、適宜その説明を省略する。
【0046】
第三実施形態における上側樹脂部品11は、溶着方向に延びる環状の溶着凸部111と、溶着凸部111と並ぶように設けられる環状の第二凸部113と、溶着凸部111を挟んで第二凸部113と並ぶように設けられる環状の第四凸部114と、第一基部112とを備える。
【0047】
第二凸部113は、上側樹脂部品11の第一基部112の端面Aに、溶着凸部111と並ぶように設けられる。第二凸部113は、第一基部112の端面Aから、第二基部122にお端面Bに向けて延びる環状の凸部である。
【0048】
第四凸部114は、上側樹脂部品11の第一基部112の端面Aに、第二凸部113と溶着凸部111を挟んで並ぶように設けられる。第四凸部114は、第一基部112の端面Aから、第二基部122にお端面Bに向けて延びる環状の凸部である。
【0049】
第一基部112は、第一基部112の端面Aに第二凸部113、第四凸部114、溶着凸部111が設けられる。端面A上には、溶着凸部111を挟むように第二凸部113と第四凸部114とが設けられる。
【0050】
次に第三実施形態の振動溶着方法について具体的に説明する。
先ず、図5(A)に示すように上側樹脂部品11の溶着予定端面と下側樹脂部品12の溶着予定端面とを当接させて当接部Cを形成する。
図5(A)に示すように、常温硬化型の硬化性接着剤3を当接前の溶着凸部111の先端の角部に配置する。この常温硬化型の硬化性接着剤3が液状部材にあたる。このように予め硬化性接着剤3を配置することで、第一実施形態の場合と同様に当接部Cの外周の少なくとも一部に硬化性接着剤が配置された状態になる。
また、本実施形態では、硬化性接着剤3の設け方として、図5(A)に示すように、硬化性接着剤3を当接部Cと第二凸部113との間に挟まれるように配置する方法、硬化性接着剤3を当接部Cと第四凸部114との間に配置する方法が好ましい。後述する通り、振動溶着時に発生する溶着粉4を捕捉する効果が高まるからである。したがって、第二凸部113の長さY6、第四凸部114の長さY7は、溶着凸部111の長さY8より長くすることが好ましい。第二凸部113、第四凸部114と溶着凸部111の先端の角部との間に硬化性接着剤3を配置しやすいからである。
【0051】
次いで、従来公知の振動溶着装置を用いて、第一実施形態の方法と同様に当接部Cに熱を与える。すると、図4(B)に示すように、第一実施形態の場合と同様に、上側樹脂部品11と下側樹脂部品12との振動溶着時には当接部Cから溶着粉4が発生する。
第三実施形態では、第一実施形態の場合と同様に、発生した溶着粉4は、液状(硬化前)の硬化性接着剤3に捕捉される。その結果、溶着容器1内に溶着粉4が混入することを抑える。また、溶着容器1の外部に溶着粉4が出ることを抑える。
さらに、第三実施形態では、接合部Cの外周で硬化性接着剤3と接触していない部分があり、溶着粉4が硬化性接着剤3に捕捉されずに飛散しても、図4(B)に示すように、第二凸部113、第四凸部114に溶着粉4が衝突し、溶着容器内部に溶着粉4が混入すること及び溶着容器外に溶着粉4が飛散することを抑える。
なお、振動溶着時に第二凸部113の先端と第二基部122の端面Bが接しないようにする必要がある。したがって、第二凸部113の先端から端面Bまでの距離Y9は、これらが互いに接しないように設定する必要がある。なお、第四凸部114の先端と端面Bとの間の距離Y10についてもY9と同様の方法で設定する。
【0052】
最後に、当接部Cの付近に形成された溶融層がバリ5として排出され接合部2が形成されて振動溶着は終了する。振動溶着後の状態を図5(C)に示した。
【0053】
図6、図7は、図2、4、5とは別の第四実施形態の振動溶着方法について示す。図6、図7に示すように、上側樹脂部品11については、第三実施形態のものと同じであり、下側樹脂部品12は、上記第二実施形態のものと同じである。以下において、第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態に対応する構成については、適宜その説明を省略する。
【0054】
第四実施形態の振動溶着方法について具体的に説明する。
先ず、図6、7に示すように上側樹脂部品11の溶着予定端面と下側樹脂部品12の溶着予定端面とを当接させて当接部Cを形成する。
図6では、図に示すように、常温硬化型の硬化性接着剤3を当接前の溶着凸部111の先端の角部に配置する。この常温硬化型の硬化性接着剤3が液状部材にあたる。このように予め硬化性接着剤3を配置することで、第一実施形態の場合と同様に当接部Cの外周の少なくとも一部に硬化性接着剤が配置された状態になる。
第三実施形態と同様に硬化性接着剤の設け方として、図5(A)に示すように、硬化性接着剤3を当接部Cと第二凸部113との間に挟まれるように配置する方法、硬化性接着剤3を当接部Cと第四凸部114との間に配置する方法が好ましい。
図7では、第二実施形態の場合と同様に、当接前の下側樹脂部品12の第一凸部123と第三凸部との間の空間に溶着部121を浸すようにして常温硬化型の硬化性接着剤3を配置する。第二実施形態の場合と同様に当接部Cの外周全体を硬化性接着剤で覆うように調整する方法が好ましい。
【0055】
当接部Cの形成後、振動溶着を行う。
図6に示す場合には、第三実施形態の場合と同様に、振動溶着時に溶着粉4が硬化性接着剤3に捕捉されずに飛散しても、第二凸部113、第四凸部114に溶着粉4が衝突し、溶着容器内部に溶着粉4が混入すること及び溶着容器外に溶着粉4が飛散することを抑える。
図7に示す場合には、第二実施形態の場合と同様に、当接部Cの外周が完全に硬化性接着剤3で覆われているため、振動溶着時に発生した溶着粉4のほぼ全てが硬化性接着剤3に捕捉される。その結果、溶着容器1内に溶着粉4が入る可能性、溶着容器1外に溶着粉4が飛散する可能性がほぼ無くなる。
【0056】
振動溶着終了後について説明する。
図6、7のいずれの場合にも、第二実施形態の場合と同様に、第一凸部123及び第三凸部124は、バリ溜めとして働く。
【0057】
図8は、図2、及び図4から図7とは別の第五実施形態の振動溶着構造について示す。第四実施形態のものと同様に、上側樹脂部品11については、第三実施形態のものと同じであり、下側樹脂部品12は、上記第二実施形態のものと同じである。以下において、第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態、第四実施形態に対応する構成については、適宜その説明を省略する。
【0058】
第五実施形態の振動溶着方法について具体的に説明する。
先ず、図8に示すように上側樹脂部品11の溶着予定端面と下側樹脂部品12の溶着予定端面とを当接させて当接部Cを形成する。
具体的には、先ず、溶着部121と第一凸部123との間の空間、溶着部121と第三凸部124との間の空間に硬化性接着剤3を配置する。次いで、図8に示すように、当接部Cを形成させるとともに、第二凸部113の先端と第四凸部114の先端を、硬化性接着剤3内に侵入させる。なお、このように硬化性接着剤3の使用量、第二凸部113の長さ、第四凸部114の長さを調整し、第二凸部113の先端と第四凸部114の先端を、硬化性接着剤3内に侵入させる方が効果的ではあるが、第二凸部113の先端と第四凸部114の先端を、硬化性接着剤3内に侵入させなくても一定の効果が得られる。
「当接部の周囲の少なくとも一部に、振動溶着時に発生する溶着粉の飛散を抑えるための液状部材を配置させた状態」とは、図8に示すように、当接部Cの外周に硬化性接着剤3が直接接しない状態で、当接部Cの周囲に硬化性接着剤3を配置させる状態を指す。当接部Cの周囲に硬化性接着剤を設ける方法は特に限定されない。振動溶着時に発生する溶着粉4が捕捉されるように硬化性接着剤3が配置されていればよい。
【0059】
当接面Cの形成後、振動溶着を行う。
図8に示す状態で振動溶着を行うと、振動溶着時に溶着粉4が飛散しても、第二凸部113、第四凸部114に溶着粉4が衝突し、さらには先端が常温硬化型の硬化性接着剤3に浸されていることにより、溶着凸部111及び溶着部121との間の空間Fに留まるかもしくは硬化性接着剤3に補足されることから、溶着容器内部に溶着粉4が混入すること及び溶着容器外に溶着粉4が飛散することを抑える。このような形状の場合、硬化性接着剤3が振動溶着の際に飛散することがあり、接着剤の選定、形状、溶着条件等において配慮が必要なことがある。
【0060】
振動溶着終了後について説明する。
本実施形態の場合にも、第二実施形態の場合と同様に、第一凸部123及び第三凸部124は、バリ溜めとして働く。
【符号の説明】
【0061】
1 溶着容器
11 上側樹脂部品
111 溶着凸部
112 第一基部
113 第二凸部
114 第四凸部
12 下側樹脂部品
121 溶着部
122 第二基部
123 第一凸部
124 第三凸部
3 硬化性接着剤
4 溶着粉
5 バリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側樹脂部品の溶着凸部の先端に位置する溶着予定端面と下側樹脂部品の溶着部の先端に位置する溶着予定端面とを突き当てて振動溶着してなる振動溶着方法であって、
前記上側樹脂部品と前記下側樹脂部品との当接部の外周又は周囲の少なくとも一部に、前記振動溶着時に発生する溶着粉の飛散を抑えるための液状部材を配置させた状態で、前記振動溶着を行なう振動溶着方法。
【請求項2】
前記振動溶着後に前記液状部材を硬化させる請求項1に記載の振動溶着方法。
【請求項3】
前記振動溶着後に前記液状部材を除去する請求項1又は2に記載の振動溶着方法。
【請求項4】
前記下側樹脂部品の基部から前記上側樹脂部品の基部に向けて、前記溶着凸部が延びる方向と同じ方向に延びる第一凸部を備え、
前記上側樹脂部品の溶着予定端面と前記下側樹脂部品の溶着予定端面とを当接させた状態で、前記溶着凸部と前記第一凸部との間に第一凹部が形成されており、該第一凹部に前記液状部材が配置される請求項1から3のいずれかに記載の振動溶着方法。
【請求項5】
前記上側樹脂部品の基部から前記溶着凸部と前記第一凸部との間の空間に向けて延出される第二凸部を備える請求項4に記載の振動溶着方法。
【請求項6】
前記下側樹脂部品の基部から前記上側樹脂部品の基部に向けて、前記溶着凸部が延びる方向と同じ方向に延びる第三凸部をさらに備え、
前記第三凸部は、前記溶着凸部を挟んで前記第一凸部と並ぶように設けられ、
前記上側樹脂部品の溶着予定端面と前記下側樹脂部品の溶着予定端面とを当接させた状態で、前記溶着凸部と前記第三凸部との間に第二凹部が形成されており、該第二凹部に前記液状部材が配置される請求項4又は5に記載の振動溶着方法。
【請求項7】
前記上側樹脂部品の基部から前記溶着凸部と前記第三凸部との間の空間に向けて延出される第四凸部を備える請求項6に記載の振動溶着方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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