説明

振動要素駆動回路および振動要素保護回路

【課題】簡単な構成によって振動要素を過度な励振から保護することのできる振動要素駆動回路および振動要素保護回路を実現する。
【解決手段】入力信号S0を受けその相対的に低い第1の周波数域の信号成分を出力する第1のフィルタ部110と、入力信号S0を受け前記第1の周波数域に比し相対的に高い第2の周波数域の信号成分を出力する第2のフィルタ部120と、第1のフィルタ部110の出力信号S1と第2のフィルタ部120の出力信号S2とを加算する加算部130と、加算回路130の出力信号S3を電力増幅して駆動信号S4を生成する駆動部140とを備え、第1のフィルタ部110と第2のフィルタ部120とは、振動要素150の共振周波数付近の周波数においてそれらの出力信号が相互に反対位相になるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、撮像装置における特定要素の駆動部、人の皮膚に振動を与える美容器具、或いは、音響機器等における電気―機械変換部を構成する振動要素を駆動するための振動要素駆動回路およびこれらの振動要素を過度な励振から保護するための振動要素保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電気―機械変換部を含む振動要素は、撮像装置、美容器具、或いは、音響機器等の種々の装置に組み込まれて、それらの装置における重要な可動部を構成している。
上述のような振動要素は、それぞれに固有の共振周波数が存在し、装置によっては共振現象を積極的に利用して電気―機械変換における変換効率の向上に寄与せしめている。
他方、電気―機械変換要素における共振現象は、場合によっては過度な励振を誘発して所望の特性を阻害し、更には、装置の故障や破壊を招来する危惧をも孕んでいる。
【0003】
特に振動要素をその絶対定格付近まで出力させる用途の場合は上述のような危惧に繋がりやすい現象について十分考慮しておく必要がある。
小型のデジタルカメラ等に摘要されるワイパの駆動装置において上述のような危惧を回避するべく、電気―機械変換要素における機械的振動の振幅を検出して過度な励振を回避する技術も既に提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
或いはまた、人の皮膚に振動を与える美容器具のアプリケータヘッドにおける不要な寄生共振を抑制して負荷状態と無負荷状態との誤検出を防止するべく、中央に開口を有する特殊な形状のアプリケータヘッドを用いる技術も既に提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−204394号公報
【特許文献2】特許第4165562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、電気―機械変換要素における機械的振動の振幅を検出する手段を用いることを必須の要件とし、該手段による検出出力に基づいて過度な励振を回避するようにしている。従って、装置の複雑化が避けられないといった問題を惹起する。
また、特許文献2に開示の技術は、振動要素自体の構造を特殊なものとすることが必須であり、振動要素駆動回路側で寄生共振による悪影響を除こうとするものではない。
本発明は上述のような状況に鑑みてなされたものであり、簡単な構成によって振動要素を過度な励振から保護することのできる振動要素駆動回路および振動要素保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、以下に列挙するような技術を提案する。
(1)機械的な振動要素を駆動する駆動信号を生成する振動要素駆動回路であって、
入力信号を受けその相対的に低い第1の周波数域の信号成分を出力する第1のフィルタ部と、
前記入力信号を受け前記第1の周波数域に比し相対的に高い第2の周波数域の信号成分を出力する第2のフィルタ部と、
前記第1のフィルタ部の出力信号と前記第2のフィルタ部の出力信号とを加算する加算部と、
前記加算部の出力信号に基づき前記駆動信号を生成する駆動部とを備え、
前記第1のフィルタ部と前記第2のフィルタ部とは、前記振動要素の共振周波数付近の周波数においてそれらの出力信号が相互に反対位相になるように構成されていることを特徴とする振動要素駆動回路。
【0008】
上記(1)の振動要素駆動回路では、第1のフィルタ部と前記第2のフィルタ部とは、前記振動要素の共振周波数付近の周波数においてそれらの出力信号が相互に反対位相になるため、第1のフィルタ部と前記第2のフィルタ部との各出力は加算部において差動的に作用して、結果的に、前記振動要素の共振周波数付近の周波数成分の信号レベルを減衰させるノッチフィルタ特性を呈する。
【0009】
(2)前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部の少なくとも何れか一方のフィルタ特性を、前記振動要素の共振周波数の値に合わせて調整するフィルタ特性調整回路を備えたことを特徴とする(1)の振動要素駆動回路。
(3)前記第1のフィルタ部は1次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする(1)の振動要素駆動回路。
(4)前記第1のフィルタ部は2次バンドパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする(1)の振動要素駆動回路。
(5)前記第1のフィルタ部は2次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は1次ハイパスフィルタであることを特徴とする(1)の振動要素駆動回路。
(6)前記第1のフィルタ部は2次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする(1)の振動要素駆動回路。
【0010】
(7)入力信号より生成される駆動信号によって駆動される機械的な振動要素が過度に励振されないように保護する振動要素保護回路であって、
前記入力信号を受けその相対的に低い第1の周波数域の信号成分を出力する第1のフィルタ部と、
前記入力信号を受け前記第1の周波数域に比し相対的に高い第2の周波数域の信号成分を出力する第2のフィルタ部と、
前記第1のフィルタ部の出力信号と前記第2のフィルタ部の出力信号とを加算する加算部とを備え、
前記第1のフィルタ部と前記第2のフィルタ部とは、前記振動要素の共振周波数付近の周波数においてそれらの出力信号が相互に反対位相になるように構成されていることを特徴とする振動要素保護回路。
【0011】
上記(7)の振動要素保護回路では、第1のフィルタ部と前記第2のフィルタ部とは、前記振動要素の共振周波数付近の周波数においてそれらの出力信号が相互に反対位相になるため、第1のフィルタ部と前記第2のフィルタ部との各出力は加算部において差動的に作用して、結果的に、前記振動要素の共振周波数付近の周波数成分の信号レベルを減衰させるノッチフィルタ特性を呈する。
【0012】
(8)前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部の少なくとも何れか一方のフィルタ特性を、前記振動要素の共振周波数の値に合わせて調整するフィルタ特性調整回路を備えたことを特徴とする(7)の振動要素保護回路。
(9)前記第1のフィルタ部は1次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする(7)の振動要素保護回路。
(10)前記第1のフィルタ部は2次バンドパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする(7)の振動要素保護回路。
(11)前記第1のフィルタ部は2次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は1次ハイパスフィルタであることを特徴とする(7)の振動要素保護回路。
(12)前記第1のフィルタ部は2次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする(7)の振動要素保護回路。
【発明の効果】
【0013】
振動要素の駆動を行うための回路以外の検出素子等の他の要素を必要としない簡単な構成によって振動要素を過度な励振から保護することのできる振動要素駆動回路および振動要素保護回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態である振動要素駆動回路および振動要素保護回路を表すブロック図である。
【図2】本発明の振動要素駆動回路によって駆動される振動要素の周波数−インピーダンス特性を表す図である。
【図3】図1の振動要素駆動回路および振動要素保護回路における各フィルタ部および加算部の周波数−位相特性を表す図である。
【図4】図1の振動要素駆動回路および振動要素保護回路における各フィルタ部および加算部の周波数−ゲイン特性を表す図である。
【図5】本発明の振動要素保護回路の第1実施例を表す図である。
【図6】本発明の振動要素保護回路の第2実施例を表す図である。
【図7】本発明の振動要素保護回路の第3実施例を表す図である。
【図8】本発明の振動要素保護回路の第4実施例を表す図である。
【図9】本発明の他の実施の形態である振動要素保護回路を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態につき詳述することにより本発明を明らかにする。
(振動要素駆動回路および振動要素保護回路の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態である振動要素駆動回路および振動要素保護回路を表すブロック図である。
この振動要素駆動回路10は、第1のフィルタ部110、第2のフィルタ部120、加算部130、および、駆動部140を備えている。
第1のフィルタ部110および第2のフィルタ部120は、共通の入力端子101から入力信号S0がそれぞれ入力される。
第1のフィルタ部110の出力信号S1および第2のフィルタ部120の出力信号S2は、加算部130に入力され加算部130から出力信号S3を得る。
【0016】
出力信号S3が駆動部140に入力され、駆動信号S4が生成される。ここで、駆動部140は出力信号S3を所定の増幅率により増幅してもよい。尚、加算部130の後段に出力信号S3を増幅する増幅部を別に設けてもよく、第1のフィルタ部110および第2のフィルタ部120のどちらか一方の後段にその出力信号を増幅する増幅部を設けてもよく、第1のフィルタ部110および第2のフィルタ部120の両方の後段に設けてもよい。
【0017】
この駆動信号S4が振動要素150に供給されて該振動要素150が励振される。振動要素150としては、例えば、圧電アクチュエータ、医療検査用プローブ、モバイル機器用スピーカ等があげられる。
以上の振動要素駆動回路10における第1のフィルタ部110、第2のフィルタ部120、および、加算部130によって振動要素保護回路11が構成されている。
【0018】
第1のフィルタ部110は、第2のフィルタ部120との相対において低域の周波数を通過させるフィルタ特性を有するように構成される。例えば、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタがあげられる。
第2のフィルタ部120は、第1のフィルタ部110との相対において高域の周波数を通過させるフィルタ特性を有するように構成される。例えば、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタがあげられる。
そして、第1のフィルタ部110と第2のフィルタ部120とは、振動要素150の共振周波数f0付近の周波数においてそれらの出力信号が相互に反対位相になるように構成されている。ここで、反対位相とは各出力信号の位相差が180度もしくはそれに近い位相差を有することを言う。
【0019】
図2は、振動要素150の周波数−インピーダンス特性を定性的に表す図である。図2において横軸は周波数、縦軸は振動要素150の入力端におけるインピーダンスに対応している。
図示の周波数範囲における略中央域の周波数においてインピーダンスはピークを呈するが、この周波数付近が振動要素150の機械的な共振点(共振周波数f0)に該当している。このような機械的な共振周波数ないしその近傍域では、何等の手立ても行わない場合には、振動要素150は過励振状態を呈し、劣化や故障を生じ、場合によっては破損するおそれがある。
【0020】
図3は、図1の振動要素駆動回路10(振動要素保護回路11)における各フィルタ部および加算部の周波数−位相特性を表す図である。
図3において、横軸が周波数に対応し、縦軸が位相に対応している。そして、図1の第1のフィルタ部110の出力信号S1が一点鎖線で、第2のフィルタ部120の出力信号S2が破線で表されている。
図示のように、比較的低域の領域、および、比較的高域の領域では、信号S1とS2とは、何れかが支配的であるため、両者の位相差は無視できる。
一方、共振周波数f0の近傍領域では、信号S1とS2とは位相差が180度(即ち、反対位相)の状態を呈し、加算部130における加算は、実効的に差動的(減算)になる。これは、即ち、共振周波数f0の近傍領域では信号S1とS2との和である信号S3が最も減衰することを意味し、従って、既述のような過度な励振が有効に回避される。
【0021】
図4は、図1の振動要素駆動回路10(振動要素保護回路11)における各フィルタ部および加算部の周波数−ゲイン特性を表す図である。
図4において、横軸が周波数に対応し、縦軸がゲインに対応している。そして、図1の第1のフィルタ部110の出力信号S1が一点鎖線で、第2のフィルタ部120の出力信号S2が破線で、加算部130の出力信号S3が実線で表されている。
【0022】
図4から、共振周波数f0の近傍領域で信号S1とS2との和である信号S3が減衰する特性が顕著であることが容易に理解される。
即ち、本発明の振動要素駆動回路10(振動要素保護回路11)によれば、共振周波数f0の近傍領域で振動要素150を励振するための駆動信号S3に関するゲインが極小となる特性が得られ、従って、共振周波数領域近傍での過度な励振が抑止される。
【0023】
図3および図4の特性から理解されるとおり、本発明の振動要素駆動回路10(振動要素保護回路11)によれば、共振周波数f0の近傍領域で入力信号が減衰する特性を呈し、該特性は、共振周波数f0の近傍領域の信号を減衰させるノッチフィルタ(バンドエリミネーションフィルタ)の特性と実効的に同様の特性であることが分かる。
換言すれば、本発明の振動要素駆動回路10(振動要素保護回路11)によれば、極めて簡単な構成であるにも関わらず、入力信号に関する或る設計値の周波数域(上掲の例ではf0の近傍領域)の信号を減衰させ、それ以外の周波数域の信号を透過させる入出力特性が実現されている。
【0024】
このようなノッチフィルタ特性を呈する振動要素駆動回路10(振動要素保護回路11)を振動要素としての例えば電気−機械−音響変換要素(ベル音を発生する小型発音体とスピーカとを一体化したトランスデューサ)等に適用した場合には、高品位な楽音を再現しつつ、共振周波数近傍領域における過励振でトランスデューサの劣化や故障を招来することのない理想的な楽音再生装置を実現することが可能になる。
(一つの実施の形態としての振動要素保護回路の実施例)
【実施例1】
【0025】
図5は、本発明の振動要素保護回路の第1実施例を表す図である。図5(A)は第1の実施例を表す回路図、図5(B)は図5(A)の回路に関する周波数−ゲイン特性を表す図、図5(C)は図5(A)の回路に関する周波数−位相特性を表す図である。
図5(A)の振動要素保護回路51は、第1のフィルタ部510、第2のフィルタ部520、加算部530を備えている。
【0026】
第1のフィルタ部510および第2のフィルタ部520は、共通の入力端子501から入力信号S50がそれぞれ入力される。
第1のフィルタ部510は1次のローパスフィルタであり、第2のフィルタ部520は2次のハイパスフィルタである。第1のフィルタ部510の出力信号S51および第2のフィルタ部520の出力信号S52は、加算部530に入力され加算部530の出力端である振動要素保護回路51の出力端子502から出力信号S53を得る。
出力信号S53を電力増幅した駆動信号によって振動要素が励振される。
【0027】
図5(B)および図5(C)において、信号S51が一点鎖線で、信号S52が破線で、信号S53が実線で表されている。
図5(B)および図5(C)を容易に理解されるとおり、共振周波数f0の近傍領域で信号S51とS52とが略180度の位相差がある、すなわち反対位相の関係にあり、周波数f0近傍領域で両者の信号の和である信号S53が減衰する特性が顕著である。即ち、周波数f0近傍で極めて急峻な減衰特性を有するノッチフィルタ特性が実現されていることが分かる。
【実施例2】
【0028】
図6は、本発明の振動要素保護回路の第2実施例を表す図である。図6(A)は第1の実施例を表す回路図、図6(B)は図6(A)の回路に関する周波数−ゲイン特性を表す図、図6(C)は図6(A)の回路に関する周波数−位相特性を表す図である。
図6(A)の振動要素保護回路61は、第1のフィルタ部610、第2のフィルタ部620、加算部630を備えている。
【0029】
第1のフィルタ部610および第2のフィルタ部620は、共通の入力端子601から入力信号S60がそれぞれ入力される。
第1のフィルタ部610は2次のバンドパスフィルタであり、第2のフィルタ部620は2次のハイパスフィルタである。第1のフィルタ部610の出力信号S61および第2のフィルタ部620の出力信号S62は、加算部630に入力され加算部630の出力端である振動要素保護回路61の出力端子602から出力信号S63を得る。
出力信号S63を電力増幅した駆動信号によって振動要素が励振される。
【0030】
図6(B)および図6(C)において、信号S61が一点鎖線で、信号S62が破線で、信号S63が実線で表されている。
図6(B)および図6(C)を容易に理解されるとおり、共振周波数f0の近傍領域で信号S61とS62とが180度に近い位相差がある、すなわち反対位相の関係にあり、周波数f0近傍領域で両者の信号の和である信号S63が減衰する特性が顕著である。即ち、周波数f0近傍で比較的急峻な減衰特性を有するノッチフィルタ特性が実現されていることが分かる。
【実施例3】
【0031】
図7は、本発明の振動要素保護回路の第3実施例を表す図である。図7(A)は第1の実施例を表す回路図、図7(B)は図7(A)の回路に関する周波数−ゲイン特性を表す図、図7(C)は図7(A)の回路に関する周波数−位相特性を表す図である。
図7(A)の振動要素保護回路71は、第1のフィルタ部710、第2のフィルタ部720、加算部730を備えている。
【0032】
第1のフィルタ部710および第2のフィルタ部720は、共通の入力端子701から入力信号S70がそれぞれ入力される。
第1のフィルタ部710は2次のローパスフィルタであり、第2のフィルタ部720は1次のハイパスフィルタである。第1のフィルタ部710の出力信号S71および第2のフィルタ部720の出力信号S72は、加算部730に入力され加算部730の出力端である振動要素保護回路71の出力端子702から出力信号S73を得る。
出力信号S73を電力増幅した駆動信号によって振動要素が励振される。
【0033】
図7(B)および図7(C)において、信号S71が一点鎖線で、信号S72が破線で、信号S73が実線で表されている。
図7(B)および図7(C)を容易に理解されるとおり、共振周波数f0の近傍領域で信号S71とS72とが略180度の位相差がある、すなわち反対位相の関係にあり、周波数f0近傍領域で両者の信号の和である信号S73が減衰する特性が顕著である。即ち、図5の第1実施例におけると同様の、周波数f0近傍で極めて急峻な減衰特性を有するノッチフィルタ特性が実現されていることが分かる。
【実施例4】
【0034】
図8は、本発明の振動要素保護回路の第4実施例を表す図である。図8(A)は第1の実施例を表す回路図、図8(B)は図8(A)の回路に関する周波数−ゲイン特性を表す図、図8(C)は図8(A)の回路に関する周波数−位相特性を表す図である。
図8(A)の振動要素保護回路81は、第1のフィルタ部810、第2のフィルタ部820、加算部830を備えている。
【0035】
第1のフィルタ部810および第2のフィルタ部820は、共通の入力端子801から入力信号S80がそれぞれ入力される。
第1のフィルタ部810は2次のローパスフィルタであり、第2のフィルタ部820は2次のハイパスフィルタである。第1のフィルタ部810の出力信号S81および第2のフィルタ部820の出力信号S82は、加算部830に入力され加算部830の出力端である振動要素保護回路81の出力端子802から出力信号S83を得る。
出力信号S83を電力増幅した駆動信号によって振動要素が励振される。
【0036】
図8(B)および図8(C)において、信号S81が一点鎖線で、信号S82が破線で、信号S83が実線で表されている。
図8(B)および図8(C)を容易に理解されるとおり、共振周波数f0の近傍領域で信号S81とS82とが180度からややずれるものの180度に近い位相差がある、すなわち反対位相の関係にあり、周波数f0近傍領域で両者の信号の和である信号S83が減衰する特性を呈している。即ち、入力信号を周波数f0近傍で相対的に多く減衰させる特性を有するノッチフィルタ特性が実現されていることが分かる。
図8の第4実施例では、第1のフィルタ部810および第2のフィルタ部820の双方が2次のフィルタであることから、双方のフィルタのQを協調して調整することが比較的容易であり、従って、ノッチフィルタ特性の形を調整し易い。
【0037】
上述した実施例においては、適用する振動要素の共振特性に対応するように、第1のフィルタ部および第2のフィルタ部の次数や、各回路の抵抗値および容量値などの回路定数を選択し、第1のフィルタ部および第2のフィルタ部のカットオフ周波数または中心周波数、Q値を調整して、ノッチの形状(周波数、鋭さ、深さ)を決定することで、振動要素を過励振による劣化や故障から保護するという用途によく適合したノッチフィルタ特性を実現することができる。更に、第1のフィルタ部および第2のフィルタ部の後段にその出力信号を増幅する増幅部を夫々設け各増幅率を変えることにより、低周波数領域および高周波数領域のゲインを低くまたは高くすることもできる。
また、上述した実施例では、第1のフィルタ部および第2のフィルタ部は2次以下のフィルタで構成したが、3次以上のフィルタで構成しても良い。2次以上のフィルタで構成する場合、フィルタのQ値も調整できるので、ノッチの鋭さを変更することもできる。
【0038】
(他の実施の形態としての振動要素保護回路)
図9は、本発明の他の実施の形態である振動要素保護回路を表すブロック図である。
図9の振動要素保護回路91は、第1のフィルタ部910、第2のフィルタ部920、加算部930を備えている。
第1のフィルタ部910および第2のフィルタ部920は、共通の入力端子901から入力信号S90がそれぞれ入力される。
第1のフィルタ部910はローパスフィルタまたはバンドパスフィルタであり、第2のフィルタ部920はハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタである。
【0039】
第1のフィルタ部910の出力信号S91および第2のフィルタ部920の出力信号S92は、加算部930に入力され加算部930の出力端である振動要素保護回路91の出力端子902から出力信号S93を得る。
出力信号S93を電力増幅した駆動信号によって振動要素が励振される。
以上において、図9の振動要素保護回路91では、特に、第1のフィルタ部910および第2のフィルタ部920のフィルタ特性を、適用する振動要素の共振周波数の値に合わせて調整するフィルタ特性調整回路960が備えられている。
【0040】
第1のフィルタ部910および第2のフィルタ部920の各回路を構成する抵抗および容量の抵抗値および容量値は可変となっており、フィルタ特性調整回路960はそれら抵抗値および容量値を変えるための制御信号を生成する。
従って、フィルタ特性調整回路960によって、適用する振動要素の共振特性に対応するように、第1のフィルタ部910および第2のフィルタ部920の各回路の抵抗値および容量値などの回路定数を変え、第1のフィルタ部910および第2のフィルタ部920のカットオフ周波数または中心周波数、Q値などを調整して、ノッチの形状(周波数、鋭さ、深さ)を変えることで、振動要素を過励振による劣化や故障から保護するという用途によく適合したノッチフィルタ特性を実現することができる。
【0041】
また、振動要素の共振特性が経年変化等によって変化するようなことがあっても、この変化に対し適応的に第1のフィルタ部910および第2のフィルタ部920を追随させて、振動要素を十全に保護することが可能になる。
尚、第1のフィルタ部910および第2のフィルタ部920の少なくとも何れか一方のフィルタ特性を調整するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…………………………………………………………振動要素駆動回路
11、51、61、71、81、91…………………振動要素保護回路
101、501、601、701、801、901…入力端子
110、510、610、710、810、910…第1のフィルタ部
120、520、620、720、820、920…第2のフィルタ部
130、530、630、730、830、930…加算部
140………………………………………………………駆動部
150………………………………………………………振動要素
501、601、701、801、901……………出力端子
960………………………………………………………フィルタ特性調整回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的な振動要素を駆動する駆動信号を生成する振動要素駆動回路であって、
入力信号を受けその相対的に低い第1の周波数域の信号成分を出力する第1のフィルタ部と、
前記入力信号を受け前記第1の周波数域に比し相対的に高い第2の周波数域の信号成分を出力する第2のフィルタ部と、
前記第1のフィルタ部の出力信号と前記第2のフィルタ部の出力信号とを加算する加算部と、
前記加算部の出力信号を電力増幅して前記駆動信号を生成する駆動部とを備え、
前記第1のフィルタ部と前記第2のフィルタ部とは、前記振動要素の共振周波数付近の周波数においてそれらの出力信号が相互に反対位相になるように構成されていることを特徴とする振動要素駆動回路。
【請求項2】
前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部の少なくとも何れか一方のフィルタ特性を、前記振動要素の共振周波数の値に合わせて調整するフィルタ特性調整回路を備えたことを特徴とする請求項1の振動要素駆動回路。
【請求項3】
前記第1のフィルタ部は1次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項1の振動要素駆動回路。
【請求項4】
前記第1のフィルタ部は2次バンドパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項1の振動要素駆動回路。
【請求項5】
前記第1のフィルタ部は2次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は1次ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項1の振動要素駆動回路。
【請求項6】
前記第1のフィルタ部は2次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項1の振動要素駆動回路。
【請求項7】
入力信号より生成される駆動信号によって駆動される機械的な振動要素が過度に励振されないように保護する振動要素保護回路であって、
前記入力信号を受けその相対的に低い第1の周波数域の信号成分を出力する第1のフィルタ部と、
前記入力信号を受け前記第1の周波数域に比し相対的に高い第2の周波数域の信号成分を出力する第2のフィルタ部と、
前記第1のフィルタ部の出力信号と前記第2のフィルタ部の出力信号とを加算する加算部とを備え、
前記第1のフィルタ部と前記第2のフィルタ部とは、前記振動要素の共振周波数付近の周波数においてそれらの出力信号が相互に反対位相になるように構成されていることを特徴とする振動要素保護回路。
【請求項8】
前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部の少なくとも何れか一方のフィルタ特性を、前記振動要素の共振周波数の値に合わせて調整するフィルタ特性調整回路を備えたことを特徴とする請求項7の振動要素保護回路。
【請求項9】
前記第1のフィルタ部は1次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項7の振動要素保護回路。
【請求項10】
前記第1のフィルタ部は2次バンドパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項7の振動要素保護回路。
【請求項11】
前記第1のフィルタ部は2次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は1次ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項7の振動要素保護回路。
【請求項12】
前記第1のフィルタ部は2次ローパスフィルタであり、前記第2のフィルタ部は2次ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項7の振動要素保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143099(P2011−143099A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6798(P2010−6798)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】