説明

振動誘発皮膚反射制御システム

【課題】振動誘発皮膚反射が本来有している種々の機能を十分に引き出して利用することを可能にする、振動誘発皮膚反射制御システムを提供する。
【解決手段】少なくとも50〜70Hzの範囲で周波数が可変な励起信号を発生する励起信号発生装置1と、励起信号発生装置からの励起信号の供給を受けて機械的振動を発生する1又は複数の振動発生装置4と、制御装置8とを備え、制御装置は、励起信号発生装置が発生する励起信号の周波数を調整する手段、励起信号発生装置から振動発生装置に供給される励起信号の振幅を調整する手段2、励起信号発生装置から振動発生装置への励起信号の供給・停止を制御する手段であって、励起信号の停止期間を挟んで、同じ周波数の励起信号の供給期間を複数回設定する手段と、励起信号の供給期間及び/又は停止期間の時間的な長さを変化させて、励起信号の供給期間と停止期間との時間的な長さの比率を変化させる手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動誘発皮膚反射制御システムに関し、詳細には、生体に特定の周波数の制御された振動を伝達して、振動によって誘発される皮膚反射を制御する振動誘発皮膚反射制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動誘発皮膚反射とは、文字通り、振動によって誘発される皮膚反射であり、振動が刺激として生体の皮膚に与えられたときに、意識作用の関与なしに誘発される生体の反応である。人体の場合には、50〜70Hzという特定の範囲の周波数の振動が刺激として皮膚に与えられると、意識作用の関与なしに、その振動刺激を受けた部位を動かすように筋肉が収縮する現象が起こる。近年、この振動誘発皮膚反射を利用して、その皮膚反射が誘発される部位の血行を改善して体脂肪の燃焼を促進させたり、睡眠を誘導したりする試みが行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかしながら、従来行われている試みは、特定の周波数の振動を単に連続的に生体の皮膚に与えて、振動によって誘発される皮膚反射による睡眠誘導効果や血行改善効果を得るもの(特許文献1および特許文献2参照)であったり、特定の周波数の振動を間欠的に与えるものでも、振動を与える期間と休止する期間との長さを同じに揃えることで、血行改善効果を得ようとする(特許文献3参照)にとどまり、これら従来の試みにおいても、幾分かの睡眠誘導効果や血行改善効果は期待できるものの、振動誘発皮膚反射が有している種々の効果を十分に引き出すことができるものではなかった。
【特許文献1】特開2000−79149号公報
【特許文献2】特開2000−79150号公報
【特許文献3】特開2000−262578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、振動誘発皮膚反射を利用する従来の試みが未だ不十分であるとの知見に基づき為されたもので、振動誘発皮膚反射が本来有している種々の機能を十分に引き出して利用することを可能にする、振動誘発皮膚反射制御システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも50〜70Hzの範囲で周波数が可変な励起信号を発生する励起信号発生装置と、励起信号発生装置からの励起信号の供給を受けて機械的振動を発生する1又は複数の振動発生装置と、制御装置とを備え、制御装置は、励起信号発生装置が発生する励起信号の周波数を調整する手段、励起信号発生装置から振動発生装置に供給される励起信号の振幅を調整する手段、および、励起信号発生装置から振動発生装置への励起信号の供給・停止を制御する手段であって、励起信号の停止期間を挟んで、同じ周波数の励起信号の供給期間を複数回設定する手段と、励起信号の供給期間及び/又は停止期間の時間的な長さを変化させて、励起信号の供給期間と停止期間との時間的な長さの比率を変化させる手段とを備えている、振動誘発皮膚反射制御システムを提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0006】
本発明の好ましい一実施態様においては、制御装置は、個々の振動発生装置に供給される励起信号の位相を調整する手段を備えている。
【0007】
また、本発明の好ましい他の一実施態様においては、励起信号発生装置は、50〜70Hzの範囲に加え、100〜120Hzの範囲で周波数が可変な励起信号を発生するものである。
【0008】
さらに、本発明の好ましい他の一実施態様においては、生体信号をモニターする1又は複数のセンサが備えられており、本発明のシステムにおける制御装置は、その又はそれらのセンサからの出力に基づいて、個々の若しくは全ての振動発生装置に供給される励起信号の周波数、振幅、位相、供給、停止のいずれか又は複数を調整する手段を備えている。
【0009】
本発明の好ましい他の一実施態様においては、振動発生装置は、ベッド、椅子、椅子の付属品、寝具、衣服、衣服の付属品、又は帽子に取り付けられているか、それらの一部を構成している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の振動誘発皮膚反射制御システムによれば、制御装置が、振動を励起する励起信号の周波数や振幅を調整する手段を備えているとともに、励起信号の供給期間と停止期間との時間的な長さの比率を変化させる手段とを備えているので、種々のパターンの振動を生体に与えることができ、そのときに生体に誘導させる皮膚反射によってもたらされる種々の効果を利用することができるという利点が得られる。特に、睡眠誘導効果についていえば、励起信号の供給期間と停止期間との時間的な長さの比率を変化させて、振動を与えている期間と停止している期間との時間的な長さの比率を1対1でなくすることによって、深い睡眠が増え、誘導される睡眠の質が極めて良くなるという優れた効果が得られる。
【0011】
また、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムが、個々の振動発生装置に供給される励起信号の位相を調整する手段を備えている場合には、個々の振動発生装置に供給される励起信号の位相を同相にし、生体に与えられる振動の位相を揃えることによって、睡眠誘導効果を得ることができるとともに、逆に、個々の振動発生装置に供給される励起信号の位相をずらし、生体に与えられる振動の位相を異ならせることによって、覚醒効果を得ることができるという利点がある。
【0012】
また、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムが、50〜70Hzの範囲に加え、100〜120Hzの範囲で周波数が可変な励起信号を発生するものであるときには、100〜120Hzの振動によって、生体に緊張性振動反射と呼ばれる反応を誘発することができ、単に振動誘発皮膚反射だけを生体に与えた場合よりも優れた血行改善効果が得られるという利点がある。
【0013】
さらに、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムが、生体信号をモニターするセンサとともに、そのセンサからの出力に基づいて、個々の若しくは全ての振動発生装置に供給される励起信号の周波数、振幅、位相、供給、停止のいずれか又は複数を調整する手段を備えている場合には、振動誘発皮膚反射により生体の種々の反応をモニターしながら、生体に与える振動の周波数や振幅や時間などを制御することができ、目的とする効果を得る上で、最適な振動を、最適の部位に与えることが可能になるという利点がある。
【0014】
本発明の振動誘発皮膚反射制御システムにおける振動発生装置は、ベッド、椅子、椅子の付属品、寝具、衣服、衣服の付属品、又は帽子に取り付けられているか、それらの一部を構成することができるので、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムを、日常生活に即した形態で、無理なく利用することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムを図面を用いて説明するが、本発明が図示のものに限られないことはいうまでもない。
【0016】
図1は、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムの一例を示すブロック図であり、1は励起信号発生装置、2a、2b、2cは、励起信号発生装置1の出力端に接続された振幅・位相調整装置、3a、3b、3cは、振幅・位相調整装置2a、2b、2cのそれぞれの出力端に接続された開閉装置、4a、4b、4cは、開閉装置3a、3b、3cのそれぞれの出力端に接続された振動発生装置、5a、5b、5cは、振動発生装置4a、4b、4cのそれぞれと機械的に結合している振動拡散板である。6はベッド、7はベッド6のマットレスであり、振動発生装置4a、4b、4cは、振動拡散板5a、5b、5cを介して、マットレス7内に取り付けられている。
【0017】
振動発生装置4a、4b、4cとしては、励起信号の供給を受けて振動を発生することができるものであれば、その振動発生の機構には特段の制限はなく、どのような機構で振動を発生させるものであっても、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムにおいては使用することができる。振動発生装置4a、4b、4cの数にも特段の制限はなく、1個であっても良いし、2個、3個、或いは4個以上であっても良い。振動発生装置4a、4b、4cの数が変化すると、それぞれに接続されている開閉装置3a、3b、3cの数、および、振幅・位相調整装置2a、2b、2cの数も変化することはいうまでもない。振動発生装置4a、4b、4cの種類や構造等にも依るが、振動拡散板5a、5b、5cが不要の場合には、マットレス7内に振動発生装置4a、4b、4cを直接取り付けるようにしても良い。
【0018】
8は制御装置、9は制御装置8の入出力装置、10はモニター画面、11はプリンタ、12a、12b、12cは生体センサである。制御装置8は、励起振動発生装置1、振幅・位相調整装置2a、2b、2c、および開閉装置3a、3b、3cと信号線(或いは無線)によって接続されており、入出力装置9を介して入力される命令やプログラム、或いは、制御装置8の内部に記憶されている命令やプログラムに従って、励起信号発生装置1に制御信号を送り、励起信号発生装置1が発生する励起信号の周波数を調整したり、振幅・位相調整装置2a、2b、2cに制御信号を送って、個々の振動発生装置4a、4b、4cに供給される励起信号の振幅や位相を調整したり、開閉装置3a、3b、3cに制御信号を送って、振動発生装置4a、4b、4cへの励起信号の供給、停止を制御することができるようになっている。入出力装置9としては、例えばパーソナルコンピュータを使用することができる。また、図示の例では、制御装置8と入出力装置9とは別個のものとして示されているけれども、両者の機能を持ち合わせた1つの装置で、制御装置8と入出力装置9を構成するようにしても良い。
【0019】
励起信号発生装置1が発生する励起信号は、少なくとも50〜70Hzの範囲で周波数が可変であり、制御装置8からの制御信号に基づいて、励起信号発生装置1は、指定された周波数の励起信号を発生し、振幅・位相調整装置2a、2b、2cに出力する。図示の例においては、励起信号発生装置1は、50〜70Hzの範囲に加えて、100〜120Hzの範囲で周波数が可変の励起信号を発生することができ、制御装置8からの制御信号によって100〜120Hzの範囲内の周波数が指定された場合には、その周波数の励起信号を発生し、振幅・位相調整装置2a、2b、2cに出力する。上述したとおり、周波数が50〜70Hzの振動、中でも、周波数60〜65Hzの振動は、ヒトの生体に加えられたときに皮膚反射を誘導する振動であり、周波数が100〜120Hzの振動は、緊張性振動反射と呼ばれる反応を誘発する振動である。したがって、図示の例においては、励起信号発生装置1は、振動誘発皮膚反射と緊張性振動反射の双方を誘発することができる周波数の励起信号を発生するものである。
【0020】
励起信号発生装置1から出力された励起信号は、3つに分けられ、それぞれ振幅・位相調整装置2a、2b、2cに供給される。励起信号発生装置1の数を増やし、1つの励起信号発生装置1からの励起信号を、1又は複数の振幅・位相調整装置2a、2b、2cに供給するようにしても良いことは勿論である。振幅・位相調整装置2a、2b、2cは、制御装置8からの制御信号に基づいて、供給を受けた励起信号の振幅及び/又は位相を調整する機能を有している。振幅・位相調整装置2a、2b、2cによって、振幅及び/又は位相が調整された励起信号は、開閉装置3a、3b、3cを介して、振動発生装置4a、4b、4cに供給され、振動発生装置4a、4b、4cは、供給を受けた励起信号と同じ周波数の振動を発生する。
【0021】
振動の発生と停止は、制御装置8からの制御信号によって開閉装置3a、3b、3cの開閉を制御して、振動発生装置への励起信号の供給と停止のタイミングを制御することにより、自在に行うことができる。制御装置8には、励起信号の停止期間を挟んで、同じ周波数の励起信号の供給期間を複数回設定するプログラムが組み込まれており、このプログラムによれば、励起信号の供給期間及び/又は停止期間の時間的な長さを変化させて、励起信号の供給期間と停止期間との時間的な長さの比率を変化させることが可能である。なお、励起信号の供給期間及び/又は停止期間の時間的な長さは、予め制御装置8内に複数通りの場合を記憶させておき、入出力装置9を介して、そのうちのいずれかを選択することが可能であるとともに、入出力装置9を介して、その都度、適宜設定・変更できるようになっている。
【0022】
生体センサ12a、12b、12cは、振動が付与されている生体の状態をモニターするものである。生体センサ12a、12b、12cとしては種々の生体センサを用いることができる。例えば、血流、血圧、心拍数、脈拍、体温、体脂肪率、皮膚電位、脳波、心臓活動電流などを測定するセンサを1種又は複数種を1個又は複数個設けることができる。生体センサ12a、12b、12cからの生体信号は制御装置8に供給され、制御装置8は、供給された生体信号に基づいて、振動発生装置4a、4b、4cに供給される励起信号の周波数、振幅、位相などを調整したり、振動発生装置4a、4b、4cへの励起信号の供給や停止のタイミング、回数などを制御する。例えば、測定された心拍数や体温、或いは脳波などの生体信号に基づいて、制御装置8内に備えられたアルゴリズムに基づいて、振動を受けている生体が睡眠状態に入ったと判断された場合には、制御装置8は、励起信号の振幅を徐々に小さくして、生体に与えられる振動刺激を漸減させてフェイドアウトさせることができる。また、逆に、血圧や心拍数が急激に上昇したような場合には、制御装置8は、振動発生装置4a、4b、4cへの励起信号の供給を停止させ、振動を停止させることができる。このように生体の状態をモニターする生体センサ12a、12b、12cが設けられているので、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムにおいては、常に、振動を受けている生体の状態に応じた適切な振動を与えることが可能となる。
【0023】
以上のような生体センサ12a、12b、12cからの生体信号に基づく振動の制御は、振動発生装置4a、4b、4cごとに個別に行っても良く、その場合には、振動発生装置4a、4b、4cと、それらの振動発生装置によって振動を受けている生体の部位との対応関係の情報を予め制御装置8に記憶させておくことによって、最適な振動を、生体の最適の部位に与えることが可能になる。
【0024】
図2〜図5に、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムによって発生することができる振動パターンの例を示す。図2は、例えば周波数が60Hzで同じ振幅の励起信号を、休止期間を挟んで、2回供給したときの振動発生装置4a、4b、4cによって発生する振動のパターンである。図2に示す例においては、振動の発生期間と停止期間との時間の長さの比率、(t3−t2)/(t2−t1)は「1」ではない。この比率(t3−t2)/(t2−t1)は、制御装置8によって、開閉装置3a、3b、3cの開閉の時期を制御して、振動発生装置4a、4b、4cへの励起信号の供給と停止のタイミングを制御することによって、時間(t3−t2)及び/又は時間(t2−t1)を変化させて、変化させることができる。また、1回目の振動の発生期間の長さ(t2−t1)と、2回目の振動の発生期間の長さ(t4−t3)も異ならせることができる。
【0025】
図3は、制御装置8によって、振幅・位相調整装置2a、2b、2cを制御して、励起信号の振幅を漸増、或いは、漸減させた場合の振動パターンである。図3に示すとおり、発生される振動の振幅は、t1からしばらくの間は振幅は一定であるが、その後、徐々に減少して、t6で零になっている。このように漸増或いは漸減する振幅の振動を発生させることにより、例えば、振動誘発皮膚反射を徐々に起こさせて生体のショックを緩和したり、徐々になくして、心地よい睡眠誘導を実現したりすることができる。このような制御を、生体センサ12a、12b、12cからの生体信号に基づいて行うことができるのは上述したとおりである。
【0026】
図4は、振動の振幅を徐々に漸増或いは漸減させるのではなく、振動の発生ごとに発生する振動の振幅を変化させた場合の振動パターンである。このような振動パターンも、制御装置8によって振幅・位相調整装置2a、2b、2cを制御して、励起信号の振幅を変化させることにより実現できることは明らかである。
【0027】
図5は、当初、周波数60Hzの振動を2回、発生させた後に、しばらく時間をおいて、今度は、周波数110Hzの振動(図中t5からt6までの間のハッチングされた部分)を発生させる振動パターンである。このような振動パターンも、制御装置8によって励起信号発生装置1を制御して、励起信号の周波数を変化させることにより実現できることは明らかである。周波数110Hzの振動は、緊張性振動反射と呼ばれる反応を誘発する振動であり、通常、ヒトはこのような周波数の振動を受けると覚醒するので、図5に示すような振動パターンは、周波数60Hzの振動で睡眠誘導したヒトを、覚醒させる場合に有効である。
【0028】
以上の振動パターンにおいては、発生する振動の位相はすべて同じであるけれども、図2〜図5に示すような振動パターンにおいて、発生する振動の位相を、異ならすことも可能である。このためには、制御装置8によって、振幅・位相調整装置2a、2b、2cを制御すれば良い。また、複数存在する振動発生装置4a、4b、4cのいずれにおいても、同じ振動パターンの振動を発生させる必要はなく、各振動発生装置4a、4b、4cごとに、パターンが異なる振動を発生させても良い。また、同じパターンであっても、位相の異なる振動を発生させても良い。位相の異なる振動は、たとえ、その振動の周波数が睡眠誘導に有効な周波数であっても、覚醒効果があり、眠っているヒトの覚醒に有効である。
【0029】
以上の例においては、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムをベッドに適用した場合、すなわち、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムにおける振動発生装置4a、4b、4cをベッド6のマットレス7内に取り付けた場合について説明したけれども、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムは、ベッドだけでなく、その他、生体と接触する可能性のあるあらゆるものに適用することができる。例えば、椅子や、フットレストなどの椅子の付属品、マットレスや布団、敷物等の寝具、下着を含めた衣服、ベルト、帯などの衣服の付属品、又は帽子などに、振動発生装置を取り付けるか、振動発生装置によってそれらの一部を構成することにより、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムを備えた椅子、椅子の付属品、寝具、衣服、衣服の付属品、又は帽子とすることができる。このように、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムは、日常的に使用する物品の一部とすることができるので、日常生活に即した形態で、無理なく利用することができるという利点がある。
【0030】
〈実験例〉
本発明の振動誘発皮膚反射制御システムを用いて、睡眠障害を訴えている被験者(1名)に、睡眠誘導を行った。すなわち、睡眠障害を訴えている被験者を、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムを備えているベッドに寝かせ、実験開始の23時に60Hzの振動を5分供給、1分停止、5分供給というパターンで1回与え、23時から翌朝6時半までの脳波を測定し、睡眠状態を解析した。日を改めて、振動を与えない以外は上記と同様にして、23時から翌朝までの脳波を測定し、睡眠状態を解析し、対照とした。結果を、図6(対照)、図7(振動付与)として示す。
【0031】
対照である図6に示すとおり、被験者は、通常は、寝入りばなと、2時〜3時の間、および、明け方の5時前後に睡眠状態となるだけで、しかも、脳波から解析された睡眠の深度を示すステージも、5時半頃にステージ3のレベルの睡眠が一時的に現れる程度であり、睡眠時間の長さはもとより、睡眠の質においても、強い睡眠障害が窺われた。ところが、この被験者に60Hzの振動を上記のパターンで与えると、図7に示すとおり、入眠までの時間が大幅に短くなる上に、睡眠時間は大幅に増加し、ステージ3のレベルの睡眠も度々出現するようになり、睡眠時間の長さだけでなく、睡眠の質においても大幅な改善が認められた。このような深いレベルの睡眠は、睡眠薬によっては通常得られないものであり、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムが、睡眠誘導だけでなく、睡眠の質の改善にも極めて有効であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムによれば、制御された振動を生体に与えることができ、振動誘発皮膚反射によってもたらされる種々の生体反応を自在に調べることができる。また、本発明の振動誘発皮膚反射制御システムを睡眠誘導に用いれば、入眠までの時間が短くなるだけでなく、睡眠の質が大幅に改善されるという優れた効果が得られる。このような本発明の振動誘発皮膚反射制御システムは、学術的には言うに及ばず、実用上も極めて優れたものであり、その産業上の利用可能性には多大のものがある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の振動誘発皮膚反射制御システムの一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の振動誘発皮膚反射制御システムによって発生される振動パターンの一例を示す図である。
【図3】本発明の振動誘発皮膚反射制御システムによって発生される振動パターンの一例を示す図である。
【図4】本発明の振動誘発皮膚反射制御システムによって発生される振動パターンの一例を示す図である。
【図5】本発明の振動誘発皮膚反射制御システムによって発生される振動パターンの一例を示す図である。
【図6】振動を与えないときの睡眠状態の解析図(対照)である。
【図7】振動を与えたときの睡眠状態の解析図(振動付与)である。
【符号の説明】
【0034】
1 励起信号発生装置
2a、2b、2c 振幅・位相調整装置
3a、3b、3c 開閉装置
4a、4b、4c 振動発生装置
5a、5b、5c 振動拡散板
6 ベッド
7 マットレス
8 制御装置
9 入出力装置
10 モニター画面
11 プリンタ
12a、12b、12c 生体センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも50〜70Hzの範囲で周波数が可変な励起信号を発生する励起信号発生装置と、励起信号発生装置からの励起信号の供給を受けて機械的振動を発生する1又は複数の振動発生装置と、制御装置とを備え、制御装置は、励起信号発生装置が発生する励起信号の周波数を調整する手段、励起信号発生装置から振動発生装置に供給される励起信号の振幅を調整する手段、および、励起信号発生装置から振動発生装置への励起信号の供給・停止を制御する手段であって、励起信号の停止期間を挟んで、同じ周波数の励起信号の供給期間を複数回設定する手段と、励起信号の供給期間及び/又は停止期間の時間的な長さを変化させて、励起信号の供給期間と停止期間との時間的な長さの比率を変化させる手段とを備えている、振動誘発皮膚反射制御システム。
【請求項2】
制御装置が、個々の振動発生装置に供給される励起信号の位相を調整する手段を備えている請求項1記載の振動誘発皮膚反射制御システム。
【請求項3】
励起信号発生装置が、50〜70Hzの範囲に加え、100〜120Hzの範囲で周波数が可変な励起信号を発生するものである請求項1又は2記載の振動誘発皮膚反射制御システム。
【請求項4】
生体信号をモニターする1又は複数のセンサを備え、制御装置が、その又はそれらのセンサからの出力に基づいて、個々の若しくは全ての振動発生装置に供給される励起信号の周波数、振幅、位相、供給、停止のいずれか又は複数を調整する手段を備えている請求項1、2又は3記載の振動誘発皮膚反射制御システム。
【請求項5】
振動発生装置が、ベッド、椅子、椅子の付属品、寝具、衣服、衣服の付属品、又は帽子に取り付けられているか、それらの一部を構成している請求項1〜4のいずれかに記載の振動誘発皮膚反射制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−119268(P2008−119268A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307216(P2006−307216)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(592228561)
【Fターム(参考)】