説明

振込み装置

【課題】多数のチップ部品を収容可能なトレイに振動運動及び揺動運動を付与する振込み装置において、その小型化及びランニングコストの低減を図れるようにする。
【解決手段】保持部載置台5を基台3上に回転軸線O1を中心に揺動可能に取り付ける共に、トレイ保持部7を保持部載置台5上に回転軸O1方向に移動可能に取り付け、基台3に、保持部載置台5を揺動させる揺動用モータ及びトレイ保持部7を回転軸線O1方向に振動させる振動用モータ11を固定した振込み装置1を提供する。振動用モータ11の出力軸21を保持部載置台5の挿通孔5cに挿通し、振動伝達機構25を介して該出力軸21の先端部をトレイ保持部7に連結する。揺動用モータによる保持部載置台5の揺動運動に係わらず、挿通孔5cと出力軸21との間の隙間が保持されると共に、振動伝達機構25による出力軸21の回転からトレイ保持部7の振動への変換が保持されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数のチップ部品をトレイに配列された挿入孔に振り込むための振込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器等に使用される各種チップ部品の検査や選別の高速化を図るために、検査前のチップ部品をトレイの上面に開口する多数の挿入孔に個別に収容し、多数のチップ部品の検査や選別をトレイ毎に行うことが考えられている。
また、従来では、チップ部品の検査に先立って、トレイ上に投入された多数のチップ部品がトレイの各挿入孔に効率よく収容できるように、トレイに振動及び揺動を付与する振込み装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この従来の振り込み装置は、例えば図6に示すように、基台101と、基台101に対して揺動可能に取り付けられた揺動部材103と、揺動部材103に対して直線往復運動可能に取り付けられたトレイのホルダユニット105とを備えている。そして、基台101に対して揺動部材103及びホルダユニット105を揺動駆動する揺動用モータ107は基台101に固定されており、揺動部材103に対してホルダユニット105を振動駆動する振動用モータ109は揺動部材103に固定されている。すなわち、この構成の振込み装置においては、振動用モータ109が揺動部材103と共に揺動することになる。
なお、従来の振込み装置には、振動用モータを基台に固定し、揺動用モータが振動用モータの駆動によってホルダユニットと共に振動するように構成されたものもある。
【特許文献1】特開平11−139541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の振込み装置において、振動用モータ及び揺動用モータの一方(一方のモータ)には、トレイ保持部の重量を動かす容量だけではなく、他方のモータの余分な重量も動かす容量が必要となるため、一方のモータの大型化に伴う振込み装置の大型化を避けられないという問題がある。また、振込み装置の作動に要する消費電力も大きくなるため、振込み装置のランニングコストが高くなってしまうという問題がある。
また、一方のモータがトレイと共に振動運動あるいは揺動運動すると、これらの運動に基づいて一方のモータの電源ケーブルや制御ケーブルに負荷がかかるため、これら電源ケーブルや制御ケーブルの保守点検を短い周期で実施する必要があり、振込み装置の取り扱いが面倒となる問題もある。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであって、小型化及びランニングコストの低減を図ることができると共に、メンテナンスを容易に行うことができる振込み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明の振込み装置は、多数のチップ部品を収容可能なトレイに振動運動及び揺動運動を付与する振込み装置であって、基台と、該基台に対して回転軸線を中心に揺動可能となるように前記基台上に取り付けられた保持部載置台と、該保持部載置台に対して前記回転軸線に沿う方向に移動可能となるように前記保持部載置台上に取り付けられて、前記トレイを着脱可能に保持するトレイ保持部と、前記保持部載置台及び前記トレイ保持部を前記基台に対して揺動駆動する揺動用モータと、前記トレイ保持部を前記保持部載置台に対して前記回転軸線に沿う方向に振動駆動する振動用モータとを備え、前記揺動用モータ及び前記振動用モータが前記基台に固定され、前記揺動用モータの出力軸が前記回転軸線方向に延びると共に前記保持部載置台に連結され、前記振動用モータの出力軸が、前記基台側から前記トレイ保持部に向けて延びると共に、前記保持部載置台に形成された挿通孔に挿通され、前記振動用モータの出力軸の先端部が、該出力軸の回転を前記回転軸線に沿う方向への振動に変換して伝達する振動伝達機構を介して前記トレイ保持部に連結され、前記揺動用モータによる前記保持部載置台及び前記トレイ保持部の揺動運動に係わらず、前記挿通孔と前記振動用モータの出力軸との間の隙間が保持されると共に、前記振動伝達機構による前記振動用モータの出力軸の回転から前記トレイ保持部の振動への変換が保持されることを特徴としている。
【0007】
この振込み装置によれば、揺動用モータによる保持部載置台及びトレイ保持部の揺動運動に係わらず、保持部載置台と振動用モータの出力軸とが相互干渉せず、また、振動伝達機構によって振動用モータの出力軸の回転がトレイ保持部の振動に変換される。すなわち、振動用モータによるトレイ保持部の振動運動が保持部載置台及びトレイ保持部の揺動運動によって阻害されない。
そして、揺動用モータ及び振動用モータは基台に固定されているため、従来のように揺動用モータ及び振動用モータの一方が、トレイ保持部と共に振動あるいは揺動することを防止できる。
【0008】
したがって、揺動用モータ及び振動用モータには、従来のように余分な容量が不要となるため、揺動用モータ及び振動用モータの大型化を防いで、振込み装置の小型化を図ることができる。さらに、振込み装置の作動に要する消費電力も小さくなるため、振込み装置のランニングコストを低く抑えることもできる。
また、揺動用モータ及び振動用モータが基台に固定されていることで、揺動用モータ及び振動用モータの電源ケーブルや制御ケーブルに負荷がかかることもなくなるため、これら電源ケーブルや制御ケーブルの保守点検を長い周期で実施することができる、すなわち、振込み装置を容易に取り扱うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、揺動用モータ及び振動用モータの一方が、他方のモータによってトレイ保持部と共に振動あるいは揺動しないため、他方のモータの大型化を防いで、振り込み装置の小型化を図ることができると共に、ランニングコストを低く抑えることができる。
また、揺動用モータ及び振動用モータの電源ケーブルや制御ケーブルに振動や揺動の負荷がかかることも防止できるため、振込み装置を容易に取り扱うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態に係る振込み装置1は、多数のチップ部品を収容可能なトレイTに振動運動及び揺動運動を付与するものであり、基台3上に、保持部載置台5及びトレイ保持部7を順番に配置すると共に、基台3に揺動用モータ9及び振動用モータ11を固定して構成されている。なお、トレイTは、例えば図3に示すように、その上面T1に開口して多数のチップ部品を個別に収容する多数の挿入孔T2を形成して構成されている。
【0011】
図1及び図2に示すように、保持部載置台5は、基台3に対して第1回転軸線O1を中心にAB方向に揺動可能となるように取り付けられている。一方、揺動用モータ9は基台3の上面3aに固定され、その出力軸13が第1回転軸線O1方向に延びて形成されると共に、保持部載置台5に連結されている。これにより、保持部載置台5は、揺動用モータ9の出力軸13が第1回転軸線O1を中心に回転することで揺動駆動されることになる。
なお、揺動用モータ9の出力軸13には、その回転位置を検出する位置検出手段15が取り付けられており、この位置検出手段15によって、出力軸13の回転角度の範囲、すなわち、保持部載置台5の揺動角度範囲が規定されている。また、この位置検出手段15の検出結果に基づいて、揺動用モータ9の駆動制御が行われる。
【0012】
トレイ保持部7は、トレイTを着脱可能に保持するものであり、スライド機構17を介して保持部載置台5上に取り付けられている。スライド機構17は、トレイ保持部7を第1回転軸線O1に沿う方向にのみ移動可能とし、その他の方向には移動させないように構成されている。すなわち、トレイ保持部7は、保持部載置台5と共に第1回転軸線O1を中心に揺動するように取り付けられている。
【0013】
振動用モータ11は、トレイ保持部7を保持部載置台5に対して第1回転軸線O1に沿う方向(CD方向)に振動駆動するものであり、基台3の下面3bに固定されている。そして、第2回転軸線O2を中心に回転可能な振動用モータ11の出力軸21は、基台3側からトレイ保持部7に向けて延びており、基台3に形成された貫通孔3c、保持部載置台5に形成された挿通孔5c、及び、トレイ保持部7に形成された内孔7cに挿通されている。また、振動用モータ11の出力軸21の先端部は、軸受23を介して基台3に取り付けられており、この軸受23によって出力軸21の直線性が保持されている。
【0014】
さらに、保持部載置台5の挿通孔5c及びトレイ保持部7の内孔7cは、第1回転軸線O1の直交方向に長く延びて形成されている。これにより、保持部載置台5及びトレイ保持部7が振動用モータ11の出力軸21に対して第1回転軸線O1を中心に揺動しても、保持部載置台5の挿通孔5c及びトレイ保持部7の内孔7cと、振動用モータ11の出力軸21及びその軸受23との間の隙間が保持されることになる(図5参照)。すなわち、保持部載置台5及びトレイ保持部7が揺動しても、振動用モータ11の出力軸21やその軸受23に接触することを防止している。
【0015】
この振動用モータ11の出力軸21の先端部は、振動伝達機構25を介してトレイ保持部7に連結されている。
振動伝達機構25は、図1,図2及び図4に示すように、振動用モータ11の出力軸21の回転をトレイ保持部7の第1回転軸線O1に沿う方向(CD方向)への振動に変換するものであり、振動用モータ11の出力軸21の先端部に固定された偏心ローラ27と、トレイ保持部7の内孔7cに設けられたローラ受け部29とを備えている。偏心ローラ27は、その中心軸O3を第2回転軸線O2に対してずらした状態で固定されている。
【0016】
ローラ受け部29は、偏心ローラ27をトレイ保持部7の振動方向から挟み込む一対の受け部材31によって構成されており、偏心ローラ27の外周面に当接する各受け部材31の案内面31aは、トレイ保持部7の振動方向に直交している。さらに、振動用モータ11側に位置する各受け部材31の案内面31aの下端31bは、第1回転軸線O1を中心とした円弧状に形成されており、案内面31aは、第1回転軸線O1を中心とした扇形状に形成されている。
なお、この振動伝達機構25においては、偏心ローラ27が案内面31aに当接した状態で回転するため、偏心ローラ27や受け部材31は耐摩耗性の高い材料により形成することが好ましい。
【0017】
次に、以上のように構成される振込み装置1の作用について説明する。
この振込み装置1においては、振動用モータ11の出力軸21を回転させることで、偏心ローラ27が振動用モータ11の出力軸21に対して第1回転軸線O1に沿う方向に振動する。そして、この振動がローラ受け部29の一対の案内面31aを介してトレイ保持部7に伝達され、トレイ保持部7が保持部載置台5に対して振動運動することになる。また、この振込み装置1においては、揺動用モータ9の出力軸13を回転させることで、第1回転軸線O1を中心に保持部載置台5及びトレイ保持部7を揺動運動させることができる。
【0018】
ここで、各受け部材31の案内面31aは扇形状に形成されているため、図5に示すように、保持部載置台5及びトレイ保持部7の揺動運動に係わらず、一対の受け部材31によって偏心ローラ27を挟み込む状態が保持される。すなわち、振動伝達機構25による振動用モータ11の回転からトレイ保持部7の振動への変換が保持されることになる。
したがって、この振込み装置1においては、トレイ保持部7に取り付けられたトレイTに対して振動運動及び揺動運動の両方を付与することができる。
【0019】
以上説明したように、上記実施形態による振込み装置1によれば、揺動用モータ9による保持部載置台5及びトレイ保持部7の揺動運動に係わらず、保持部載置台5と振動用モータ11の出力軸21とが相互干渉せず、また、振動伝達機構25によって振動用モータ11の出力軸21の回転がトレイ保持部7の振動に変換される。すなわち、振動用モータ11によるトレイ保持部7の振動運動が保持部載置台5及びトレイ保持部7の揺動運動によって阻害されない。
そして、揺動用モータ9及び振動用モータ11は共に基台3に固定されているため、従来のように揺動用モータ9及び振動用モータ11の一方が、トレイ保持部7と共に振動あるいは揺動することを防止できる。
【0020】
したがって、揺動用モータ9及び振動用モータ11には、従来のように余分な容量が不要となるため、揺動用モータ9及び振動用モータ11の大型化を防いで、振込み装置1の小型化を図ることができる。さらに、振込み装置1の作動に要する消費電力も小さくなるため、振込み装置1のランニングコストを低く抑えることもできる。
また、揺動用モータ9及び振動用モータ11が基台3に固定されていることで、揺動用モータ9及び振動用モータ11の電源ケーブルや制御ケーブル等のケーブル10,12に負荷がかかることもなくなるため、これらケーブル10,12の保守点検を長い周期で実施することができる、すなわち、振込み装置1を容易に取り扱うことができる。
【0021】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、各受け部材31の案内面31aは、第1回転軸線O1を中心とした扇形状に形成されるとしたが、少なくともトレイ保持部7の揺動運動に係わらず一対の受け部材31によって偏心ローラ27を挟み込む状態が保持されるように形成されていればよい。したがって、受け部材の案内面31aは例えば矩形状に形成されていてもよい。
また、偏心ローラ27に当接する案内面31aは、一対の受け部材31に形成されるとしたが、例えばトレイ保持部7の内孔7cに直接形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態である振込み装置を示す側断面図である。
【図2】図1の振込み装置を示す正断面図である。
【図3】図1の振込み装置に取り付けられるトレイの一例を示す上面図である。
【図4】図1の振込み装置を構成する振動伝達機構を示す拡大平面図である。
【図5】図1の振込み装置において、基台に対して保持部載置台及びトレイ保持部を揺動させた状態を示す側断面図である。
【図6】従来の振込み装置の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 振込み装置
3 基台
5 保持部載置台
5c 挿通孔
7 トレイ保持部
9 揺動用モータ
11 振動用モータ
13 揺動用モータ9の出力軸
21 振動用モータ11の出力軸
25 振動伝達機構
O1 第1回転軸線(回転軸線)
T トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のチップ部品を収容可能なトレイに振動運動及び揺動運動を付与する振込み装置であって、
基台と、該基台に対して回転軸線を中心に揺動可能となるように前記基台上に取り付けられた保持部載置台と、該保持部載置台に対して前記回転軸線に沿う方向に移動可能となるように前記保持部載置台上に取り付けられて、前記トレイを着脱可能に保持するトレイ保持部と、前記保持部載置台及び前記トレイ保持部を前記基台に対して揺動駆動する揺動用モータと、前記トレイ保持部を前記保持部載置台に対して前記回転軸線に沿う方向に振動駆動する振動用モータとを備え、
前記揺動用モータ及び前記振動用モータが前記基台に固定され、
前記揺動用モータの出力軸が前記回転軸線方向に延びると共に前記保持部載置台に連結され、
前記振動用モータの出力軸が、前記基台側から前記トレイ保持部に向けて延びると共に、前記保持部載置台に形成された挿通孔に挿通され、
前記振動用モータの出力軸の先端部が、該出力軸の回転を前記回転軸線に沿う方向への振動に変換して伝達する振動伝達機構を介して前記トレイ保持部に連結され、
前記揺動用モータによる前記保持部載置台及び前記トレイ保持部の揺動運動に係わらず、前記挿通孔と前記振動用モータの出力軸との間の隙間が保持されると共に、前記振動伝達機構による前記振動用モータの出力軸の回転から前記トレイ保持部の振動への変換が保持されることを特徴とする振込み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−100401(P2010−100401A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273434(P2008−273434)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【出願人】(591132955)株式会社秋田新電元 (29)
【Fターム(参考)】