説明

捕虫器の支持装置

【課題】捕獲された虫や捕虫器が床面へ落下することを防止できるようにすること。
【解決手段】捕虫器10は、帯状をなす基材シート16Aの一方の面に接着剤層16Bが積層された捕虫シート16に虫を接着して捕獲可能に設けられ、支持装置11によって支持される。支持装置11は、捕虫器10を吊り下げるためのワイヤ61と、このワイヤ61を巻き取り及び繰り出しして捕虫器10を昇降させる昇降手段62と、この昇降手段62によりワイヤ61を巻き取ったときに床面から離れて位置する捕虫器10の下方に設けられる受け部材63とを備えている。受け部材63は、捕虫器10の落下を規制可能に設けられ、且つ、捕虫シート16から落下した虫を受け止め可能に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕虫器の支持装置に係り、更に詳しくは、高所に捕虫器を支持することができる捕虫器の支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、食品や粘着シート、精密機械等の製品に虫が混入することを防止するために捕虫器が利用され、かかる捕虫器としては、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の捕虫器は、ハウジング内に設けられて虫を誘引する光源及び粘着シートを備え、ワイヤにより吊持されている。ワイヤは、ワイヤ巻取装置によって巻き取り及び繰り出しされる。捕虫を行う場合、ワイヤ巻取装置によってワイヤを巻き取り、捕虫器を高所に配置する。一方、粘着シートの交換を行う場合、ワイヤ巻取装置によってワイヤを繰り出して捕虫器を下降させ、作業者が高所に登ることなく作業を行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3151480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、ワイヤが経時劣化等に起因して切断してしまうと、捕虫器が床面に落下してしまうという危険性を有している、という不都合ある。また、捕虫シートに一旦接着した虫が落下すると、虫の死骸だけでなく、虫に付着した接着剤によって床面を汚染する、という不都合も招来する。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、捕虫器自体やこの捕虫器によって捕獲された虫が床面へ落下することを防止することができる捕虫器の支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、虫を捕獲する捕虫器を支持するための捕虫器の支持装置において、
床面から離れた使用位置に配置された前記捕虫器の下方に設けられた受け部材を備え、
前記受け部材は、使用位置に配置された前記捕虫器の落下を規制可能に設けられ、且つ、前記捕虫器から落下した虫を受け止め可能に設けられる、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記捕虫器を吊り下げるための吊持部材を出し入れすることによって当該捕虫器を前記使用位置に配置可能な昇降手段を備える、という構成を採ることが好ましい。
【0008】
また、前記昇降手段は、前記受け部材を迂回させて前記捕虫器を昇降させる迂回手段を備える、という構成も好ましくは採用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、捕虫器自体や、捕虫シートに接着した虫が落下した場合であっても、受け部材によって受け止められるため、捕虫器の落下による危険性を抑制することができる上、捕虫した虫が落下することによる床面の汚染を抑制することができる。
【0010】
また、昇降手段を備えたことで、捕虫器の使用位置が高所であった場合でも、当該捕虫器を容易に使用位置に配置することができる。
【0011】
更に、迂回手段を備えているので、受け部材を取り外すことなく捕虫器を高所から下降させることができる。しかも、捕虫器が受け部材に接触して汚れることを防止することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る支持装置が捕虫器を支持した状態の概略正面図。
【図2】捕虫器の内部構造の説明図。
【図3】図1の左側面図。
【図4】第1変形例を示す部分概略正面図。
【図5】第2変形例を示す図3と同様の左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「床面」とは、捕虫器を屋外で用いた際の地面を含む概念として用いる。また、特に明示しない限り、「上」、「下」、「右」、「左」は、図1を基準として用いる。
【0014】
図1〜図3において、実施形態に係る捕虫器10は、支持装置11を介して壁面Wに支持され、床面(図示省略)から離れた天井C付近の高所に配置されて使用される。
【0015】
前記捕虫器10は、箱状に形成されたフレーム体14と、このフレーム体14の内部に設けられ、例えば紫外線を発光可能な蛍光灯により構成された虫を誘引する誘引手段15と、この誘引手段15の近傍に繰り出される帯状の捕虫シート16と、この捕虫シート16を繰り出し可能に支持する支持軸27と、モータ43によって駆動されて捕虫シート16を巻き取る巻取軸37とを備えて構成されている。フレーム体14は、開口14Aを有する一対の側面部14Bと、各側面部14Bの上端側に連設される頂面部14Cと、各側面部14Bの下端側に連設される底面部14Dと、各側面部14Bの左右両側に連設される側面部14Eとを備えている。頂面部14Cの内面には、V字状の反射板23が設けられている。捕虫シート16は、帯状をなす基材シート16Aの一方の面に接着剤層16Bが積層され、接着剤層16Bに剥離シート16Cが仮着されている。そして、捕虫シート16は、支持軸27から図2中上下の開口14Aから接着剤層16Bが露出するように繰り出され、巻取軸37に巻き取られるように掛け回されている。なお、剥離シート16Cは、ローラ34によって剥離されて巻取軸37に巻き取られる。また、モータ43は、図示しないリモコン等の操作手段によって駆動と停止が可能に設けられている。
【0016】
前記支持装置11は、捕虫器10を吊り下げるための吊持部材としての2本ワイヤ61を出し入れすることによって捕虫器10を昇降可能に設けられた昇降手段62と、捕虫器10の直下近傍であって床面(図示省略)から離れて位置する受け部材63とを備えて構成されている。各ワイヤ61の一端側は、取付部材65を介してフレーム体14の側面部14Eに取り付けられ、取付部材65は、図3中矢印r方向に捕虫器10と相対回転可能に設けられている。
【0017】
前記昇降手段62は、天井C付近の壁面Wに取り付けられるフレームFに設けられた一対のブラケット70と、これらブラケット70に対して回転可能に支持されたシャフト71と、図示しない操作手段によって駆動と停止が可能に設けられるとともに、シャフト71を回転可能に設けられた昇降用モータ72と、シャフト71に連結されてワイヤ61が巻回される一対のリール74と、ブラケット70の上方でフレームFに回転可能に取り付けられ、リール74と取付部材65との間のワイヤ61が掛け回されるプーリ75と、フレームFに設けられた迂回手段76とを備えている。
【0018】
前記迂回手段76は、フレームFの下方の左右両側にそれぞれ設けられた突起部F1に回転可能に支持された回転軸79と、この回転軸79に固定された一対のアーム部80とを備えている。突起部F1には、受け部材63を出し入れ可能に支持する凹部F1Aと、アーム部80の回転を抑制するストッパF1Bとが設けられている。回転軸79は、図示しない付勢手段により図3の矢印A方向に常時付勢されている。各アーム部80の先端側には、穴80Aが形成され、この穴80Aにプーリ75から取付部材65に延びるワイヤ61が挿通される。各アーム部80は、図3中実線で示す起立姿勢と、ストッパ78Bによって回転抑制された同図中二点鎖線で示す倒伏姿勢との間で回転可能に設けられている。これにより捕虫器10は、プーリ75でワイヤ61を巻き取ることによって、取付部材65に押された各アーム部80が付勢手段の付勢力に抗して起立姿勢となり、図3中実線で示される使用位置P1に配置される。また、捕虫器10は、プーリ75からワイヤ61が巻き出されることで、各アーム部80が付勢手段の付勢力によって倒伏姿勢となり、迂回位置P2を経て下降位置P3に配置される。なお、捕虫器10は、重心が下方となるように設けられているため、アーム部80が回転しても取付部材65の回転によって常に底面部14Dが下方に位置するようになっている。
【0019】
前記受け部材63は、図3中右側が上向きとなる屈曲形状に形成されている。また、受け部材63は、捕虫器10が使用位置P1に配置された状態において、捕虫器10の両側面部14Bの幅よりも図3中左右方向に幅広に設けられている。
【0020】
前記捕虫器10は、使用位置P1に配置された状態で、誘引手段15を発光させると、その光は、捕虫シート16を透過して外部に発せられる。その光に誘引されて飛来した虫は、捕虫シート16に接着されて捕獲される。そして、所定期間が経過する毎にモータ43を駆動して捕虫シート16を順次繰り出し、この繰出動作が繰り返し行われることで、捕虫シート16が使い切られ、当該捕虫シート16の交換時期となる。
【0021】
上記のように捕虫シート16の交換時期となると、巻取軸37に巻き取られた捕虫シート16の回収や新しい捕虫シート16をセットすべく、図示しない操作手段によって昇降用モータ72を駆動してリール74からワイヤ61を繰り出し、捕虫器10を下降させる。このワイヤ61の繰り出しによって、捕虫器10は、迂回位置P2を経て下降し、床面上の作業者が作業し得る下降位置P3まで下降する。
【0022】
前記下降位置P3で捕虫シート16の交換が完了すると、昇降用モータ72を駆動させてリール74でワイヤ61を巻き取り、捕虫器10を上昇させる。このワイヤ61の巻き取りによって、捕虫器10は、下降位置P3から迂回位置P2を経て、図示しないセンサによってアーム部80が起立姿勢となったことが検知されると、昇降用モータ72の駆動が停止し、捕虫器10が使用位置P1に配置されることとなる。
【0023】
ここで、捕虫器10が使用位置P1に配置された状態で、ワイヤ61の切断等により落下しても、受け部材63上によって当該捕虫器10が下方へ落下することを防止することができる。また、捕虫シート16で捕獲された虫が落下しても、受け部材63によって受け止められ、虫の死骸や接着剤によって床面が汚染されることを回避することができる。
【0024】
従って、このような実施形態によれば、捕虫器10が落下する危険性や、捕虫シート16で捕獲した虫が落下して床面を汚染するといった不都合を未然に防ぐことができる。
また、迂回手段76を備えているので、受け部材63を取り外すことなく捕虫器10を使用位置P1から下降位置P3に下降させることができる。
【0025】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0026】
例えば、捕虫器10は、捕虫シート16を用いて虫を捕獲するもの以外に、例えば、特開2009−232734に示されるような電撃によって捕獲するもの、実公平7−6778に示されるような捕虫袋によって捕獲するもの、特開2003−61540に示されるような泡によって捕獲するもの等、公知の捕虫器を使用することができる。
更に、吊持部材は、ワイヤ61以外にチェイン、ばね鋼板、更に紐状部材や帯状部材等、種々の変更が可能である。
【0027】
また、前記実施形態の昇降用モータ72の代わりに、図4に示されるように、シャフト71を回転させるウォームホイール90と、このウォームホイール90を回転させるウォーム91とを採用してもよい。この場合、ウォーム91の下端側に設けられたリング部93にフック部86を有する操作棒87を掛け、当該操作棒87を介してウォーム91、ウォームホイール90を回転させて捕虫器10を昇降させることができる。この場合、フック部86やリング部93は、図示構成例に限られるものでなく、相互に係合して操作棒87の操作によりウォーム91やウォームホイール90の回転を行える限りにおいて、種々の設計変更が可能である。
【0028】
更に、前記迂回手段76は、種々の設計変更が可能であり、例えば、図5に示される構成に代替することができる。同図において、迂回手段76は、プーリ75の装着位置付近でフレームFから図中右方向に延設された支持アーム97と、この支持アーム97の先端側に設けられるとともに、プーリ75から捕虫器10に延びるワイヤ61が掛け回される一対のガイドプーリ98とを備えている。なお、ワイヤ61における捕虫器10から所定距離離れた位置に、昇降ストッパ61Aが取り付けられている。支持アーム97は、同図中左右方向に伸縮可能なテレスコピック構造とされ、常時は図示しない付勢手段により伸長する方向の付勢力が付与されている。
【0029】
また、前記支持装置11において、ワイヤ61及び昇降手段62を省略した構成としてもよく、かかる構成によっても、捕虫器10や虫の死骸の床面への落下を受け部材63によって回避することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 捕虫器
11 支持装置
61 ワイヤ(吊持部材)
62 昇降手段
63 受け部材
76 迂回手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫を捕獲する捕虫器を支持するための捕虫器の支持装置において、
床面から離れた使用位置に配置された前記捕虫器の下方に設けられた受け部材を備え、
前記受け部材は、使用位置に配置された前記捕虫器の落下を規制可能に設けられ、且つ、前記捕虫器から落下した虫を受け止め可能に設けられていることを特徴とする捕虫器の支持装置。
【請求項2】
前記捕虫器を吊り下げるための吊持部材を出し入れすることによって当該捕虫器を前記使用位置に配置可能な昇降手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の捕虫器の支持装置。
【請求項3】
前記昇降手段は、前記受け部材を迂回させて前記捕虫器を昇降させる迂回手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の捕虫器の支持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate