説明

捕虫器及びこれの操作方法

【課題】捕虫シートの巻き取りのための作業効率を向上でき、捕虫シートを効率良く使用することができるようにすること。
【解決手段】捕虫器10は、本体部11と、この本体部11を昇降可能に支持する昇降手段12とを備えて構成されている。本体部11は、虫を誘引する誘引手段15と、帯状をなす基材シート16Aの一方の面に接着剤層16Bが積層された捕虫シート16を誘引手段15の近傍に繰り出し可能に支持する支持手段18と、捕虫シート16を巻き取る巻取手段19とを含む。巻取手段19は、捕虫シート16が巻回される巻取軸37と、この巻取軸37に連結されるとともに、操作棒45に係合可能な係合部43とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕虫器及びこれの操作方法に係り、更に詳しくは、捕虫シートの巻き取りを簡単に行うことができる捕虫器及びこれの操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、食品や粘着シート、精密機械等の製品に虫が混入することを防止するために捕虫器が利用され、かかる捕虫器としては、例えば、特許文献1及び2に開示されている。特許文献1の捕虫器は、ハウジング内に設けられて虫を誘引する光源及び粘着シートを備え、ワイヤにより吊持されている。ワイヤは、ワイヤ巻取装置によって巻き取り及び繰り出しされる。捕虫を行う場合、ワイヤ巻取装置によってワイヤを巻き取り、捕虫器を高所に配置する。一方、粘着シートの交換を行う場合、ワイヤ巻取装置によってワイヤを繰り出して捕虫器を下降させ、作業者が高所に登ることなく作業を行えるようになっている。
【0003】
特許文献2の捕虫器は、捕虫用の光源と、虫を接着して捕獲可能な捕虫シートと、ロール状に巻回された捕虫シートを光源の近傍に繰り出し可能に支持する支持手段と、捕虫シートを巻取軸に巻き取る巻取手段とを備えている。巻取手段は、巻取軸を回転させるハンドルを備え、このハンドルを回転操作することで、虫を捕獲した捕虫シートを巻取軸に巻き取り、捕虫シートの未使用面を光源の近傍に繰り出し可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3151480号公報
【特許文献2】特開2007−74908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の捕虫器は、巻取軸を回転させるハンドルを備えているために、機器からの出っ張りが大きくなり、狭い場所に配置するときにこの出っ張りが邪魔になって配置できない場合がある。また、特許文献1のワイヤ及びワイヤ巻取装置を介して特許文献2の捕虫器を吊持すると、捕虫シートを巻き取る場合、ハンドルを操作すべくワイヤ巻取装置によって捕虫器を下降させる必要がある。更には、捕虫シートを巻き取った後、捕虫器を元の高所に配置すべく、ワイヤ巻取装置により捕虫器を上昇させる必要もある。つまり、捕虫シートの巻き取りの度に、捕虫器を昇降させる時間と労力が不可欠となり、作業効率を低下させるという不都合を招来する。
【0006】
[発明の目的]
本発明の目的は、捕虫シートの巻き取りの作業効率を向上させることができる捕虫器及びその操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、虫を誘引する誘引手段と、帯状をなす基材シートの一方の面に接着剤層が積層された捕虫シートを前記誘引手段の近傍に繰り出し可能に支持する支持手段と、前記捕虫シートを巻き取る巻取手段とを含む本体部を備えた捕虫器において、
前記巻取手段は、捕虫シートが巻回される巻取軸と、この巻取軸に連結されるとともに、操作棒に係合可能な係合部とを備える、という構成を採っている。
【0008】
本発明において、前記本体部を昇降可能に支持する昇降手段を有する、という構成を採ることが好ましい。
【0009】
また、前記昇降手段は、操作棒を係合部に係合させることで、本体部を昇降可能に設けられる、という構成も好ましくは採用される。
【0010】
更に、前記巻取手段は、巻取軸の回転を規制可能な規制手段を更に備える、という構成を採ってもよい。
【0011】
また、本発明の捕虫器の操作方法は、請求項1ないし3の何れかに記載の捕虫器の操作方法であって、
前記巻取軸の係合部に操作棒を係合させた後、操作棒を回転操作して巻取軸を回転し、当該巻取軸に捕虫シートを巻き取る、という方法を採っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、巻取軸が操作棒に係合可能な係合部を備えているため、必要に応じてこの係合部に操作棒を連結して捕虫器を所定操作できる。これにより、従来のようにハンドル等の大きな出っ張りが邪魔になり、狭い場所に配置することができなくなるといった制限を解消できる上、見かけ上もすっきりして見える。
更に、昇降手段を介して本体部を高所に配置しても、係合部に操作棒を係合させ、本体部を下降させることなく高所に配置したまま、捕虫シートを巻き取ることができる。これにより、捕虫シートを巻き取る度に、従来のように捕虫器を昇降させる必要がなくなり、作業時間の短縮化、労力の軽減を図ることが可能となる。
【0013】
また、操作棒に係合部を係合させることで本体部を昇降可能としたので、単一の操作棒により、捕虫シートを巻き取る操作と、本体部を昇降させる操作との両方の操作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る捕虫器の概略正面図。
【図2】図1の左側面図。
【図3】本体部の内部構造の説明図。
【図4】(A)は、捕虫シートの正面図。(B)は、(A)のA矢視断面図。
【図5】巻取手段及びその周辺の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において、特に明示しない限り、「上」、「下」は、図1を基準として用いる。
【0016】
図1〜図5において、捕虫器10は、図1中横長に設けられた本体部11と、この本体部11を昇降可能に支持する昇降手段12とを備えて構成されている。
【0017】
前記本体部11は、箱状に形成されたフレーム体14と、このフレーム体14の内部に設けられて虫を誘引する誘引手段15と、この誘引手段15の近傍に繰り出される帯状の捕虫シート16と、この捕虫シート16を誘引手段15の近傍に繰り出し可能に支持する支持手段18と、捕虫シート16を巻き取る(捕虫シート16を巻き取るとともに、捕虫シート16の未使用面を誘引手段15の近傍に繰り出す)巻取手段19と、フレーム体14に設けられた巻取時期通知手段20とを備えて構成されている。
【0018】
前記フレーム体14は、開口14Aを有する一対の側面部14Bと、各側面部14Bの上端側に連設される頂面部14Cと、各側面部14Bの下端側に連設される底面部14Dとを備えている。頂面部14Cの内面には、誘引手段15側に膨出するV字状の反射板23が設けられている。反射板23は、本実施形態では、ステンレス板等によって形成され、誘引手段15側が鏡面仕上げとされる。
【0019】
前記誘引手段15は、底面部14Dに支持された蛍光灯により構成されている。なお、蛍光灯は、虫を誘引可能な波長の光、例えば紫外線を発光するものが好ましい。
【0020】
前記捕虫シート16は、図4(A)及び(B)に示されるように、帯状をなす基材シート16Aと、この基材シート16Aの一方の面(図4(B)中上面)に積層された接着剤層16Bとからなる2層構造になっており、この接着剤層16B側に剥離シート16Cが仮着されている。基材シート16Aの短手方向両端、すなわち、図4中左右両端に沿う位置には、接着剤層16Bを積層しない非接着領域16Dがそれぞれ設けられている。
【0021】
前記支持手段18は、剥離シート16Cが仮着されロール状に巻回された捕虫シート16を支持する支持軸27と、この支持軸27の下方に設けられて捕虫シート16及び剥離シート16Cが載置される受けディスク28と、支持軸27の近傍に設けられた剥離手段32とを備え、支持軸27が図3中矢印R3方向に回転することで捕虫シート16を繰り出すことが可能になっている。なお、支持軸27は、図示しない回転規制手段によって図3中矢印R3方向の反対方向への回転が規制されている。
【0022】
前記剥離手段32は、支持軸27から繰り出された捕虫シート16を図3中右方向に導くガイドローラ33と、剥離シート16Cを同図中左方向へ導く剥離用ローラ34とを備えている。剥離用ローラ34により剥離された剥離シート16Cは、ガイドローラ35を経由して巻取手段19へ案内される。また、剥離シート16Cが剥離された捕虫シート16は、開口14Aからフレーム体14の外方に接着剤層16Bを表出しつつ誘引手段15の図3中下方へ案内される。
【0023】
前記巻取手段19は、捕虫シート16及び剥離シート16Cの両方が巻回される単一の巻取軸37と、この巻取軸37の下方に設けられて捕虫シート16及び剥離シート16Cが載置される受けディスク38と、巻取軸37の下端に連結されるとともに、操作棒45に係合可能なリング部52を有する係合部43と、受けディスク38の近傍に設けられた規制手段47が設けられている。巻取軸37は、図3中矢印R2方向に回転させて捕虫シート16及び剥離シート16Cの両方を巻き取る。規制手段47は、受けディスク38に接触可能なブレーキパッド48と、このブレーキパッド48を受けディスク38に当接及び離間させる直動モータ49とを備えている。規制手段47は、受けディスク38にブレーキパッド48を接触させることで、巻取軸37の回転を規制可能に設けられる一方、受けディスク38からブレーキパッド48を離すことで、巻取軸37の回転を許容するようになっている。
【0024】
前記操作棒45は、係合部43のリング部52内に挿入されることで係合可能なフック部44と、このフック部44から延びるロッド部54と、作業者が把持して回転が容易に行えるようにクランク状に形成された把持部55と、この把持部55とロッド部54との間に設けられ、ねじ構造を介して操作棒45の全体長さを調整可能なアジャスタ部56とを備えている。把持部55は、操作棒45に対して回転可能に設けられたグリップ部55A、55Bを備えている。
【0025】
前記巻取時期通知手段20は、図2中右側の側面部14Bの外側において点灯可能な点灯部58と、この点灯部58の点灯、消灯を制御する図示しない制御手段とを備えている。制御手段は、内部タイマを備え、巻取手段19による捕虫シート16の巻き取りから予め設定した時間を経過するまでは、点灯部58を消灯し、直動モータ49を駆動させてブレーキパッド48を受けディスク38に当接させて巻取軸37の回転を規制している。そして、予め設定した時間を経過すると、点灯部58が点灯或いは点滅し、直動モータ49を駆動させてブレーキパッド48を受けディスク38から離間させて巻取軸37の回転を許容する。これにより、予め設定した時間の経過前は、規制手段47によって巻取軸37の回転が規制され、作業者が頻繁に捕虫シート16を巻き取って捕虫シート16が無駄に消費されることを抑制できるようになっている。点灯部58が点灯或いは点滅すると、当該点灯部58の三角形部分等が目立つようになり、作業者の注意を喚起させることができる。
【0026】
前記昇降手段12は、壁面Wに取り付けられる一対のブラケット60と、これらブラケット60に対して回転可能に支持されたシャフト61と、巻きばね等によって構成されシャフト61に常時回転力を付与する付勢手段62と、シャフト61に連結された一対のリール64と、各リール64にそれぞれ巻回されるとともに、本体部11を吊持可能なワイヤ65とを備えている。
【0027】
前記捕虫器10を使用するときは、先ず、捕虫シート16を支持軸27から所定長さ引き出し、ガイドローラ33の位置で剥離シート16Cを剥離して誘引手段15の図3中下側近傍を通過し、同図中下側の開口14Aからフレーム体14の外方に接着剤層16Bが露出するように繰り出す。その後、捕虫シート16を一対のローラ25を介して同図中上方に案内した後、誘引手段15の同図中上側を通過し、同図中上側の開口14Aからフレーム体14の外方に接着剤層16Bが露出するように導き、リード端を巻取軸37に固定する。
そして、捕虫器10に電源が供給されると、誘引手段15が発光し、その光が捕虫シート16を透過して外部に発せられる。また、電源供給と同時に、図示しない制御手段が直動モータ49を駆動させて巻取軸37の回転を規制するとともに、その内部タイマによって時間のカウントを開始する。誘引手段15が発光した光に誘引されて飛来した虫は、捕虫シート16の接着剤層16Bに接着して捕獲される。
【0028】
その後、図示しない制御手段の内部タイマによって予め設定した時間が経過したことが確認されると、点灯部58が点灯或いは点滅して捕虫シート16の巻き取り時期になったことを案内表示するよう制御されるとともに、直動モータ49を駆動させて巻取軸37の回転を許容する。これにより、接着剤層16Aに捕獲された虫の量や接着剤層16Aの劣化状態等を作業者が目視にて確認を行う。そして、確認した作業者は、操作棒45のフック部44を係合部43に係合させる。この係合状態で、グリップ部55A、55Bを両手で持って図3中矢印R2方向に回転操作する。これにより、支持軸27に支持された捕虫シート16が図3中矢印R3方向に回転して繰り出され、捕虫シート16がガイドローラ33によって図3中右方向へ、剥離シート16Cが剥離用ローラ34によって同図中左方向へ繰り出され、未使用の接着剤層16Bが誘引手段15を囲むように繰り出される。また、これと同時に、剥離シート16Cと使用済みの捕虫シート16とが巻取軸37に巻き取られる。その後上記同様の動作が繰り返し行われることとなる。
【0029】
ここで、巻取軸37に巻き取られた捕虫シート16の回収や新しい捕虫シート16をセットすべく、本体部11を下降させる場合も、前述と同様に操作棒45のフック部44を係合部43に係合させる。そして、付勢手段62の付勢力に抗して操作棒45を引き下げることで、リール64からワイヤ65が繰り出されて本体部11が下降することとなる。そして、新しい捕虫シート16のセットが完了すると、付勢手段62の力でリール64にワイヤ65が巻き取られることで、本体部11は、元の位置に復帰される。
【0030】
従って、このような実施形態によれば、必要に応じて操作棒45を係合部43に係合させて捕虫器10を所定操作できるので、従来のようにハンドルが出っ張って配置する位置に制限を受けることはなくなる。更に、本体部11を高所に配置しても、操作棒45を用いて巻取軸37の回転を遠隔操作することができる。これにより、捕虫シート16の巻き取りを行う度に、本体部11を昇降させる必要がなくなり、作業負担の軽減、作業の迅速化を図ることが可能となる。
【0031】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0032】
例えば、誘引手段15は、虫を誘引する作用を奏する限りにおいて種々の変更が可能であり、匂いや音等で誘引可能なものであってもよく、蛍光灯に代替、若しくは、蛍光灯と併用することができる。また、前記蛍光灯に替え、環状の蛍光灯や電球、LED(発光ダイオード)等の他の発光源によって誘引手段15を構成してもよい。
【0033】
また、係合部43やフック部44は、図示構成例に限られるものでなく、相互に係合して操作棒45の操作により捕虫器10を所定操作できる限りにおいて、種々の設計変更が可能である。
【0034】
更に、巻取軸37を2本設け、使用済みの捕虫シート16と、剥離シート16Cとを別々の巻取軸37で巻き取りしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 捕虫器
11 本体部
12 昇降手段
15 誘引手段
16 捕虫シート
16A 基材シート
16B 接着剤層
18 支持手段
19 巻取手段
37 巻取軸
43 係合部
45 操作棒
47 規制手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫を誘引する誘引手段と、帯状をなす基材シートの一方の面に接着剤層が積層された捕虫シートを前記誘引手段の近傍に繰り出し可能に支持する支持手段と、前記捕虫シートを巻き取る巻取手段とを含む本体部を備えた捕虫器において、
前記巻取手段は、捕虫シートが巻回される巻取軸と、この巻取軸に連結されるとともに、操作棒に係合可能な係合部とを備えていることを特徴とする捕虫器。
【請求項2】
前記本体部を昇降可能に支持する昇降手段を有することを特徴とする請求項1記載の捕虫器。
【請求項3】
前記昇降手段は、操作棒を係合部に係合させることで、本体部を昇降可能に設けられていることを特徴とする請求項2記載の捕虫器。
【請求項4】
前記巻取手段は、巻取軸の回転を規制可能な規制手段を更に備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の捕虫器。
【請求項5】
請求項1ないし3の何れかに記載の捕虫器の操作方法であって、
前記巻取軸の係合部に操作棒を係合させた後、操作棒を回転操作して巻取軸を回転し、当該巻取軸に捕虫シートを巻き取ることを特徴とする捕虫器の操作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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