説明

捕虫器

【課題】捕虫器において、吸引部の吸引能力を上昇させることなく、捕虫効率の向上を実現できるようにする。
【解決手段】捕虫器1は、虫2を吸引して捕獲するものであり、虫2を捕獲するための捕獲空間32を有した筐体3と、筐体3に取り付けられ、虫2を誘引する誘引源としての誘引光源4と、誘引光源4に誘引された虫2を捕獲空間32に吸引する吸引部5とを備える。また、捕虫器1は、吸引部5により吸引される虫2を撹乱させる撹乱部としての撹乱光源6を備える。撹乱光源6は、捕獲空間32の入口33近傍に設けられ、吸引部5により吸引される虫2に下方から誘引光を照射して虫2を撹乱させるものである。撹乱光源6からの誘引光による撹乱作用によって虫2の平衡感覚を失わせ、虫2を捕獲空間32に吸引し易くすることにより、虫2を高効率で捕獲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハエや蛾、ユスリカ等の害虫を吸引して捕獲する捕虫器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の捕虫器として、虫を誘引する光を出射する誘引光源と、誘引光源が取り付けられ虫を吸引するための開口を有した筐体と、開口から筐体内に虫を吸引する吸引部と、吸引部により吸引される虫を捕獲する捕獲部とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
しかしながら、上述のような吸引式の捕虫器においては、誘引光源に誘引されて開口に集まった虫が、吸引部による吸引に抗して飛翔することがあり、虫を高効率で捕獲することができない。また、このような問題に対して吸引部の吸引能力を上昇させた場合、吸引部が大掛かりなものとなり、機器のコストアップを招来すると共に、消費電力が増大する。
【特許文献1】特開2008−167669号公報
【特許文献2】特開2007−37429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、吸引部の吸引能力を上昇させることなく、捕虫効率の向上を実現できる捕虫器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、虫を吸引して捕獲する捕虫器であって、虫を捕獲するための捕獲空間を有した筐体と、前記筐体に取り付けられ、虫を誘引する誘引源と、前記誘引源に誘引された虫を前記捕獲空間に吸引する吸引部と、前記捕獲空間の入口近傍に設けられ、前記吸引部により吸引される虫に下方から誘引光を照射して虫を撹乱させる撹乱部とを備えたものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記誘引源は、誘引光を出射する光源で構成され、前記撹乱部からの光は、前記誘引源からの光よりも輝度が高いものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の発明において、定期的に閃光を発するキセノンフラッシュ光源であるものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の発明において、前記入口に居る虫の存在を検知する検知部を有し、前記検知部により虫が検知されたときに、前記撹乱部が所定回数、閃光を発するものである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項2に記載の発明において、前記入口に居る虫の存在を検知する検知部を有し、前記検知部により虫が検知されたときに、前記誘引部が一定時間、消灯又は減光するものである。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1に記載の発明において、前記誘引源及び撹乱部のうち、一方が誘引光を出射する光源で構成され、他方が該出射された光を反射する部材で構成されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、撹乱部からの誘引光による撹乱作用によって、虫の平衡感覚を失わせ、虫を捕獲空間に吸引し易くするので、虫を高効率で捕獲することができる。従って、捕虫効率向上のために、吸引部の吸引能力を上昇させる必要がなくなる。
【0012】
請求項2の発明によれば、誘引源に誘引された虫に対して撹乱部からの誘引光を強調して、虫の平衡感覚を確実に失わせることができるので、捕虫効率を向上できる。
【0013】
請求項3の発明によれば、撹乱部が発する閃光による残像効果によって、虫の視界をくらませて虫をさらに吸引し易くするので、捕虫効率を向上できる。
【0014】
請求項4の発明によれば、虫が捕獲空間の入口に居るときにだけ、撹乱部が閃光を発するので、撹乱部のランプ寿命を延長できると共に、捕虫器の省電力化を図れる。
【0015】
請求項5の発明によれば、虫の撹乱作用が高くなり、捕虫効率を向上できる。また、虫が誘引されて入口に集まったときに、誘引部が一定時間、消灯又は減光するので、捕虫器の省電力化を図れる。
【0016】
請求項6の発明によれば、虫を撹乱させるために、光源や匂い源等の誘引手段を複数用いる必要がなく、捕虫器の構成を簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る捕虫器について図1乃至図3を参照して説明する。図1、図2は本実施形態に係る捕虫器1の構成を示す。捕虫器1は、ハエや蛾、ユスリカ等の虫2を吸引して捕獲するものであって、虫の多い屋外空間や、屋外空間に面した建物内の空間等に設置される。捕虫器1は、前面が開口された筐体3と、この開口31から筐体3内に虫2を誘引する誘引源としての誘引光源4とを備える。ここで、筐体3は、虫2を捕獲するための捕獲空間32を有している。また、捕虫器1は、誘引光源4に誘引された虫2を捕獲空間32に吸引する吸引部5と、吸引部5により吸引される虫2を撹乱させる撹乱部としての撹乱光源6とを備える。
【0018】
筐体3は、上述の各構成部品を収容可能な横長の箱形形状とされ、例えば、SUS材、アルミ材等の鋼板を用いた板金加工や、アクリル樹脂等を用いた射出成形により形成される。捕獲空間32は、開口31と吸引部5との間に区画形成されており、虫2を吸引するための入口33が誘引光源4の下方に配されている。入口33の外縁は、誘引光源4の長手方向に延在する略方形とされている。入口33は上記のような構成に限られず、横長楕円形の外縁を有するものであってもよいし、捕獲空間32前方に配された板状部材に複数の穴を形成して成るものであってもよい。捕獲空間32を形成する隔壁の一部部分34は、筐体3に対して脱着自在とされており、捕獲された虫2をユーザが排出できるようになっている。虫排出のための構成は上記に限られず、筐体3に開閉自在な窓を設けたものであってよい。筐体3前方の下部は、捕獲空間32と連通され、吸引部5を取り付けるための配設部35となっている。
【0019】
誘引光源4は、紫外線を含有する誘引光を出射する直管形状のランプであり、撹乱光源6の上方に横向きして設けられている。誘引光に含まれる紫外線は、虫の走光曲線又は視感度曲線に基づいて設定されたUV−A(波長が315〜380nm)であり、高い誘虫効果を有している。誘引光源4の種類としては、例えば、蛍光ランプや冷陰極ランプ、水銀ランプ、キセノンランプ等が挙げられる。誘引光源4は、筐体3の両側内壁に配されたソケット7に取り付けられており、ソケット7は安定器8を介して端子台9と接続されている。端子台9は、電源線10により商用電源と接続される。誘引光源4の後方には、該光源からの光を前方に反射する反射板11が設けられており、これにより誘引光源4からの光が開口31を通って捕虫器1外方に無駄なく出力される。
【0020】
吸引部5は、モータにより回転駆動されるエアバキュームポンプであり、筐体3内の空気を吸入して配設部35に形成された排気口36から排出することで、捕獲空間32の入口33から虫2を吸引するようになっている。吸引部5は、上記のような構成に限られず、単軸のプロぺラで構成される軸流ファンであってもよい。吸引部5についても、上記同様に端子台9と接続される。吸引部5の捕獲空間32側には、吸引した空気と虫2とを分離する分離部12が設けられている。分離部12は、虫2を通過させない目合いを有したネットで構成される。例えば、捕虫器1の捕虫対象をイエバエ、ユスリカ(体長が5mm程度)とする場合、目合いは0.5〜3mm程度であることが望ましい。ネットの材料には、耐腐食性のあるアルミ材やステンレス材、ナイロン等の合成繊維を用いることが望ましい。分離部12は、上記のような構成に限られず、通気性を有した不織布製のフィルタであってもよい。
【0021】
撹乱光源6は、入口33近傍に設けられ、吸引部5により吸引される虫2に下方から誘引光を照射して虫2を撹乱させるものである。ここで、虫2の多くは、紫外線を含有する光を手掛りに平行感覚を決定しており、具体的には、該光を照射する光源のある方向を上(天)方向と判断する。そのため、虫2に対して下方から強烈な誘引光を照射すると、虫2の平衡感覚(天地の方向感覚)を奪うことが可能になる。本発明は、このような虫の撹乱作用を利用している。
【0022】
撹乱光源6は、複数のLEDが組み合わされた狭角配光型のLEDマトリックスで構成され、誘引光を上方に向けて出射するように配光調整されている。従って、撹乱光源6からの誘引光が捕虫器1の外方に漏れることがなく、捕虫器1周辺に居る虫2が撹乱光源6に誘引されることがない。撹乱光源6の分光特性は、波長が360nm近辺の紫外領域をピークとするものが望ましく、白色光領域を含有するものであっても構わない。撹乱光源6からの光は、入口33付近において誘引光源4からの光よりも輝度が高くなるように設定される。撹乱光源6は、上記のような構成に限られず、蛍光ランプや冷陰極ランプ、水銀ランプ、ハロゲンランプ等であってもよい。撹乱光源6についても、上記同様に端子台9と接続される。
【0023】
上記のように構成された捕虫器1の作用について説明する。図3(a)乃至(d)は、虫2が捕獲空間32の入口33から吸引され、捕獲空間32に捕獲される様子を時系列に示す。捕虫器1の電源が投入されると、図3(a)に示すように、誘引光源4と撹乱光源6とが点灯し、併せて吸引部5が運転を開始する。捕虫器1周辺に居る虫2は、誘引光源4からの誘引光により誘引され、筐体3内に侵入する。筐体3内に侵入した虫2は、図3(b)に示すように、撹乱光源6からの誘引光を下方から受けて平衡感覚を失う。正常に飛翔できなくなった虫2は、図3(c)に示すように、吸引部5により入口33から吸引され、捕獲空間32に捕獲される。捕獲された虫2は、図3(d)に示すように、餌や水分の不足によって死に至る。
【0024】
以上、本実施形態に係る捕虫器1によれば、撹乱光源6からの誘引光による撹乱作用によって、虫2の平衡感覚を失わせ、虫2を捕獲空間32に吸引し易くするので、虫2を高効率で捕獲することができる。従って、捕虫効率向上のために、吸引部5の吸引能力を上昇させる必要がなくなる。また、撹乱光源6からの光は誘引光源4からの光よりも輝度が高いので、誘引光源4に誘引された虫2に対して撹乱光源6からの誘引光を強調して、虫2の平衡感覚を確実に失わせることができる。これにより、捕虫効率を更に向上できる。
【0025】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る捕虫器について図4乃至図6を参照して説明する。図4、図5は本実施形態に係る捕虫器1の構成を示す。本捕虫器1の撹乱光源6は、定期的に閃光を発するキセノンフラッシュ光源で構成される。ここで、撹乱光源6が発する閃光は、紫外線を含む誘引光である。
【0026】
また、捕虫器1は、入口33に居る虫2の存在を検知する検知部13を備える。検知部13は、アクティブ型の赤外線センサで構成されており、赤外線を投光する発光部13aと、投光された赤外線を受光する受光部13bとが、捕獲空間32の前方に互いに対向するよう設けられている。検知部13は、所定時間(例えば、0.5秒)以上、赤外線遮断が発生した場合に、虫の存在ありと判断し、撹乱光源6に所定回数、閃光を発するよう制御信号を送出する。上記併せて検知部13は、誘引光源4に一定時間、消灯又は減光させるよう制御信号を送出する。検知部13は上記のような構成に限られず、筐体3内に侵入する虫2をカウントし、虫2の数量が一定量を超えたときに、撹乱光源6及び誘引光源4に上記制御信号を送出するようにしてもよい。また、捕獲空間32の前方をカメラにより撮像し、その画像データに基づき、入口33に居る虫2の数量をカウントするような構成であってもよい。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0027】
上記のように構成された捕虫器1の作用について説明する。図6(a)乃至(d)は、虫2が捕獲空間32に捕獲される様子を時系列に示す。捕虫器1の電源が投入されると、図6(a)に示すように、誘引光源4が点灯し、併せて吸引部5が運転を開始する。捕虫器1周辺に居る虫2は、誘引光源4からの誘引光により誘引され、筐体3内に侵入してくる。このとき、検知部13により虫2の存在が検知され、図6(b)に示すように、撹乱光源6が所定回数、閃光を発し、併せて、誘引光源4が一定時間、消灯又は減光する。筐体3内に侵入した虫2は、撹乱光源6の光により平衡感覚を失い、さらに閃光による残像効果により視界がくらんで周囲状況が把握できなくなる。正常に飛翔できなくなった虫2は、図6(c)に示すように、吸引部5により入口33から吸引され、捕獲空間32に捕獲される。捕獲された虫2は、図6(d)に示すように、餌や水分の不足によって死に至る。撹乱光源6は所定回数、閃光を発した後に消灯し、誘引光源4は、一定時間経過後に再び点灯する。
【0028】
以上、本実施形態についても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、撹乱光源6が発する閃光による残像効果により、虫2の視界をくらませて虫2をさらに吸引し易くするので、捕虫効率を一層向上できる。また、虫2が入口33に居るときに、撹乱光源6が閃光を発すると共に、誘引光源4が一定時間、消灯又は減光するので、捕虫器1の省電力化を図れる。
【0029】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る捕虫器について図7を参照して説明する。図7は本実施形態に係る捕虫器1の構成を示す。捕虫器1は、撹乱光源4に代えて、誘引光源4から出射された光を反射する反射部材14を撹乱部として備える。反射部材14は、紫外領域(波長が365nm付近)の光を鏡面反射する特性を有しており、特に、上記光の反射率が90%以上のアルマイト材や、アルミ蒸着を施した樹脂材等が最も適している。反射部材14の他の構成としては、ステンレス材、アルミ材、銀蒸着を施した樹脂材等が挙げられる。反射部材14の形状は、誘引光源4からの誘引光を上方に反射するよう、誘引光源4を焦点とする放物線状とされており、これにより、吸引部5により吸引される虫2に下方から誘引光を照射する。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0030】
以上、本実施形態についても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、虫2を撹乱させるために、光源や匂い源等の誘引手段を複数用いる必要がなくなり、捕虫器1の構成を簡素化できる。
【0031】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上述の実施形態では誘引源として誘引光源4を用いた例を示したが、これに限られず、誘虫効果のある匂い源や音源等を用いてもよい。匂い源としては、捕獲する虫の性フェロモンや集合フェロモン、虫の餌となる動植物抽出物、これらに類似する匂いを有するもの等が挙げられる。音源としては、虫の羽ばたき音のような超音波成分を含んだ音を発するものが挙げられる。また、CO発生装置により虫を誘引するようにしてもよい。また、撹乱部が誘引光を出射する光源で構成され、誘引部が該出射された光を捕虫器前方に向けて反射する部材で構成されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る捕虫器の斜視図。
【図2】上記捕虫器の側断面図。
【図3】(a)乃至(d)は上記捕虫器において虫を捕獲する作用を時系列に示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る捕虫器の斜視図。
【図5】上記捕虫器の側断面図。
【図6】(a)乃至(d)は上記捕虫器において虫を捕獲する作用を時系列に示す図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る捕虫器の側断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 捕虫器
2 虫
3 筐体
32 捕獲空間
33 入口
4 誘引光源(誘引部)
5 吸引部
6 撹乱光源(撹乱部)
13 検知部
14 反射部材(撹乱部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫を吸引して捕獲する捕虫器であって、
虫を捕獲するための捕獲空間を有した筐体と、
前記筐体に取り付けられ、虫を誘引する誘引源と、
前記誘引源に誘引された虫を前記捕獲空間に吸引する吸引部と、
前記捕獲空間の入口近傍に設けられ、前記吸引部により吸引される虫に下方から誘引光を照射して虫を撹乱させる撹乱部とを備えたことを特徴とする捕虫器。
【請求項2】
前記誘引源は、誘引光を出射する光源で構成され、
前記撹乱部からの光は、前記誘引源からの光よりも輝度が高いことを特徴とする請求項1に記載の捕虫器。
【請求項3】
前記撹乱部は、定期的に閃光を発するキセノンフラッシュ光源であることを特徴とする請求項2に記載の捕虫器。
【請求項4】
前記入口に居る虫の存在を検知する検知部を有し、
前記検知部により虫が検知されたときに、前記撹乱部が所定回数、閃光を発することを特徴とする請求項3に記載の捕虫器。
【請求項5】
前記入口に居る虫の存在を検知する検知部を有し、
前記検知部により虫が検知されたときに、前記誘引部が一定時間、消灯又は減光することを特徴とした請求項2に記載の捕虫器。
【請求項6】
前記誘引源及び撹乱部のうち、一方が誘引光を出射する光源で構成され、他方が該出射された光を反射する部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の捕虫器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate