説明

捕虫器

【課題】捕虫器において、簡便且つ安価な構成でありながら、殺虫剤を用いることなく安全に虫を捕獲回収することができるようにする。
【解決手段】捕虫器1は、飛翔性を持つ虫2を誘引して捕獲するものであって、前後面が開放された筐体3と、筐体3内に虫2を誘引する誘引源である捕虫用の光源4と、水を貯留するタンク5と、タンク5内の水を沸騰させて蒸気を生成する加熱部6とを備える。また、捕虫器1は、加熱部6により生成された蒸気を虫2に噴霧する噴霧部7と、噴霧部7から噴霧された蒸気及び該蒸気を受けた虫2を回収する回収部8とを備える。光源4からの光に誘引された虫2に蒸気を噴霧し、虫2を殺虫又は弱らしてから捕獲回収することにより、大量の虫2を容易に捕獲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘引源に誘引された虫を捕獲する捕虫器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の捕虫器として、誘引光を出射する誘引光源により虫を誘引し、誘引された虫を粘着シートにより吸着して捕獲するものが知られている。しかしながら、このような吸着捕獲方式の捕虫器では、虫の捕獲に伴って粘着シートの粘着部分が減少するために、粘着シートを新しいものに交換する必要があり、利便性に劣る。
【0003】
また、上記捕虫器の他の形態として、天井面が開放された箱形状の捕獲容器に餌を充填し、ハエが餌に集まったときに、捕獲容器上方からバーナーで火炎を放射してハエを燃やす誘引装置が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、このような誘引装置では、捕獲容器を耐火性を有した部材で構成する必要があり、製造コストが高くなる。
【0004】
また、床や畳等に生息するダニ等を駆除する病害虫駆除機において、マグネトロン等の発振器によって強力なマイクロ波を床面に向けて照射し、虫を殺虫するものがある(特許文献2参照)。しかしながら、このような病害虫駆除機では、マイクロ波が外部に漏れることがないように、発振器を金属性のフードで覆う必要があり、機器全体が大掛かりなものとなる。
【0005】
また、薬液槽に入った殺虫溶液を超音波振動素子により微粒子化し、薬液槽の外部に噴霧する殺虫装置がある(特許文献3)。しかしながら、このような殺虫装置では、薬液槽の近辺に居る人が噴霧された殺虫液剤を吸い込む虞がある。
【特許文献1】特開2003−102359号公報
【特許文献2】特開平11−89499号公報
【特許文献3】特許第3728379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、簡便且つ安価な構成でありながら、殺虫剤を用いることなく安全に虫を捕獲回収することができる捕虫器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、虫を誘引する誘引源を有し、虫を捕獲する捕虫器において、水を沸騰させて蒸気を生成する加熱部と、前記加熱部により生成された蒸気を、前記誘引源に誘引された虫に噴霧する噴霧部と、前記噴霧部から噴霧された蒸気、及び該蒸気を受けた虫を回収する回収部とを備えるものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記噴霧部から噴霧される蒸気には、酸化発熱性の高い金属微粒子が含有されるものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記回収部に回収された水の温度を検知する温度センサを備え、前記噴霧部は、前記温度センサによる検知温度が設定温度に達したときに、蒸気の噴霧動作を停止するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、誘引源に誘引された虫に蒸気を噴霧して、虫を殺虫又は弱らしてから捕獲回収するので、大量の虫を容易に捕獲することができる。また、虫を捕獲するために殺虫剤を必要としないので、安全性が高く、さらに構造が簡単であるので、安価に製作できる。また、虫に電撃を与える電撃式の捕虫器と比較して、耳障りな電撃音等が発生することがなく、虫を静かに捕獲できる。
【0011】
請求項2の発明によれば、金属微粒子と蒸気を受けた虫との発熱反応により、虫の温度を急速に上昇させることができるので、殺虫効果が高くなる。
【0012】
請求項3の発明によれば、検知温度が設定温度に達したときに蒸気の噴霧動作を停止し、回収部に回収された水が上記発熱反応によって突騰するのを防止できるので、捕虫器の安全性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る捕虫器について図1及び図2を参照して説明する。図1、図2は本実施形態に係る捕虫器1の構成を示す。捕虫器1は、ハエや蚊等の飛翔性を持つ虫2を誘引し、これら虫2を捕獲するものであって、虫の多い屋外空間や、屋外空間に面した建物内の空間等に設置される。捕虫器1は、前後面が開放された筐体3と、筐体3内に虫2を誘引する誘引源である捕虫用の光源4と、水を貯留するタンク5と、タンク5内の水を沸騰させて蒸気を生成する加熱部6と、加熱部6により生成された蒸気を光源4に誘引された虫2に噴霧する噴霧部7とを備える。また、捕虫器1は、噴霧部7から噴霧された蒸気及び該蒸気を受けた虫2を回収する回収部8と、回収部8からタンク5に水を循環させるポンプ9と、回収部8に回収された水の温度を検知する温度センサ10とを備える。
【0014】
筐体3は、光源4及び回収部8を収容可能な箱形形状とされており、噴霧部7からの蒸気による腐食を防止するために、例えば、SUS材やアルミ材、ガラス等を用いて形成される。腐食防止のための構成は上記に限られず、筐体3内面にメッキ処理が施されたものであってもよい。筐体3の前後面には、下方に向かって傾斜する斜板31が隙間を隔てて複数配されており、これにより、光源4から出射される光が筐体3から出力され、併せて噴霧部7からの蒸気が捕虫器1外方に飛散することがない。
【0015】
光源4は、紫外線を含有する光を出射する直管形状のランプであり、筐体3内の略中央に横向きして設けられている。光源4の出射光に含まれる紫外線は、虫の走光曲線又は視感度曲線に基づいて設定されたUV−A(波長が315〜380nm)であり、高い誘虫効果を有している。光源4の種類としては、例えば、蛍光ランプや冷陰極ランプ、水銀ランプ、キセノンランプ等が挙げられる。光源4は、筐体3の両側内壁に配されたソケット11に取り付けられ、ソケット11は、噴霧部7からの蒸気がかからないようにカバー12に覆われている。また、ソケット11は、蒸気がかからない構成であれば上記に限定されず、例えば、筐体3外部に設けられるものであってもよい。
【0016】
タンク5は、筐体3の上側に設けられ、高い保温性を有している。タンク5内には、タンク水位を検知する水位センサ13が設けられている。加熱部6は、タンク5内に設けられており、例えば、発熱線をセラミックスの中に埋め込んだセラミックスヒータで構成される。
【0017】
噴霧部7は、タンク5に取り付けられており、吐出口を下向きとした複数のノズル71と、空気圧によってノズル71から蒸気を霧状に吐出させる吐出装置72とで構成される。ノズル71は上記のような構成に限られず、吐出口を横向きにして筐体3側部に設けられるものであってもよい。噴霧部7から噴霧される蒸気には、酸化発熱性の高い金属微粒子が含有されており、金属微粒子は吐出装置72内において蒸気と混合される。金属微粒子としては、例えば、アルミニウム粉が挙げられる。噴霧部7からの蒸気を受けた虫2は、金属微粒子との発熱反応により死滅する可能性が高くなる。また、金属微粒子を虫2に付着し易くするために、水溶性の粘着剤がタンク5内の水に添加されていてもよい。
【0018】
回収部8は、筐体3の下側に設けられ、上方が開口された箱型形状とされている。回収部8は、回収した虫2をユーザが廃棄できるように、筐体3に対して脱着自在とされている。回収部8についても、筐体3と同様に、耐食性ある部材を用いて形成される。
【0019】
ポンプ9は、配管14によりタンク5と接続され、配管15により回収部8と接続されている。配管15の回収部8側には、ポンプ9内への異物の侵入を防止するフィルタ16が設けられている。ポンプ9は、水位センサ13により検知されるタンク水位に応じて、回収部8内の水をタンク5に送り込む。
【0020】
温度センサ10は、上述した虫2と金属微粒子との発熱反応によって、回収部8に回収された水が突騰するのを防止するためのものである。温度センサ10は、検知温度が設定温度(例えば、80℃)に達したときに、噴霧部7に停止信号を送出し、蒸気の噴霧動作を停止させる。
【0021】
上記のように構成された捕虫器1の作用について説明する。捕虫器1の電源が投入されると、光源4が点灯し、光源4からの光が捕虫器1外方に出力される。併せて、加熱部6がタンク5内の水の沸騰させて蒸気を生成し、噴霧部7が蒸気の噴霧動作を開始する。噴霧部7の噴霧動作に伴ってポンプ9が駆動し、タンク5に回収部8内の水が適宜送り込まれる。捕虫器1周辺に居る虫2は、光源4からの光により誘引され、筐体3内に侵入する。筐体3内に侵入した虫2は、噴霧部7からの蒸気を受けて下方に落下し、回収部8に回収される。回収部8に回収された水の温度は、温度センサ10により検知され、検知温度が設定温度に達したときに、噴霧部7が噴霧動作を停止する。検知温度が設定温度を下回ると、噴霧部7が蒸気の噴霧動作を再び開始する。
【0022】
以上、本実施形態に係る捕虫器1によれば、光源4からの光に誘引された虫2に蒸気を噴霧して、虫2を殺虫又は弱らしてから捕獲回収するので、大量の虫2を容易に捕獲することができる。また、虫2を捕獲するために殺虫剤を必要としないので、安全性が高く、さらに構造が簡単であるので、安価に製作できる。また、虫に電撃を与える電撃式の捕虫器と比較して、耳障りな電撃音等が発生することがなく、虫を静かに捕獲できる。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る捕虫器について図3を参照して説明する。図3は本実施形態に係る捕虫器1の構成を示す。捕虫器1は、上述のポンプ9及び配管14、15に代えて、給水源からタンク5に水を送る給水管17と、回収部8から水を排出する排水管18とを備える。タンク5は、給水弁19を介して給水管17と接続されており、水位センサ13によるタンク水位に応じて給水弁19を開き、給水管17からの給水を行う。回収部8は、フィルタ16を介して排水管18と接続されており、フィルタ16により異物を除去された水を排水管18より排出口へと排水する。
【0024】
また、捕虫器1は、筐体3内に侵入した虫2を検知する虫検知部20を備える。虫検知部20は、赤外線センサで構成され、筐体3の前側及び後側に設けられている。虫検知部20は、所定時間(例えば、0.5秒)以上、赤外線遮断が発生した場合に、虫の侵入ありと判断し、噴霧部7に噴霧動作を所定時間行うよう制御信号を送出する。虫検知部20は上記のような構成に限られず、筐体3内に侵入する虫2をカウントし、虫2の数量が一定量を超えたときに、噴霧部7に上記制御信号を送出するようにしてもよい。また、筐体3前面及び後面をカメラにより撮像し、その画像データに基づき、筐体3内に侵入する虫2の数量をカウントするような構成であってもよい。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0025】
上記のように構成された捕虫器1の作用について説明する。捕虫器1の電源が投入されると、光源4が点灯し、光源4からの光が捕虫器1外方に出力される。併せて、加熱部6がタンク5内の水の沸騰させて蒸気を生成する。捕虫器1周辺に居る虫2は、光源4からの光により誘引され、筐体3内に侵入する。このとき、虫検知部20により虫2が検知され、噴霧部7が噴霧動作を所定時間行う。筐体3内に侵入した虫2は、噴霧部7からの蒸気を受けて下方に落下し、回収部8に回収される。噴霧部7の噴霧動作に伴って給水弁19が開き、給水管17からタンク5に水が送り込まれる。温度センサ10により噴霧部7の噴霧動作が制御される点は、上述と同様である。
【0026】
以上、本実施形態についても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、タンク5に水を送り込むために、ポンプを用いる必要がなくなり、捕虫器1の構成を一層簡素化できる。また、虫2の侵入に応じて噴霧部7が噴霧操作を行うので、ランニングコストの低減を図れる。
【0027】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上述の実施形態では誘引源として光源4を用いた例を示したが、これに限られず、誘虫効果のある匂い源や音源等を用いてもよい。匂い源としては、捕獲する虫の性フェロモンや集合フェロモン、虫の餌となる動植物抽出物、これらに類似する匂いを有するもの等が挙げられる。音源としては、虫の羽ばたき音のような超音波成分を含んだ音を発するものが挙げられる。また、CO発生装置により虫を誘引するようにしてもよい。また、回収部8の周囲に冷却装置を設け、温度センサ10による検知温度が設定温度に達したときに、冷却装置により回収部8内の水の温度を低下させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る捕虫器の一部破断斜視図。
【図2】上記捕虫器の側断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る捕虫器の側断面図。
【符号の説明】
【0029】
1 捕虫器
2 虫
4 光源(誘引部)
6 加熱部
7 噴霧部
8 回収部
10 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫を誘引する誘引源を有し、虫を捕獲する捕虫器において、
水を沸騰させて蒸気を生成する加熱部と、
前記加熱部により生成された蒸気を、前記誘引源に誘引された虫に噴霧する噴霧部と、
前記噴霧部から噴霧された蒸気、及び該蒸気を受けた虫を回収する回収部とを備えることを特徴とする捕虫器。
【請求項2】
前記噴霧部から噴霧される蒸気には、酸化発熱性の高い金属微粒子が含有されることを特徴とする請求項1に記載の捕虫器。
【請求項3】
前記回収部に回収された水の温度を検知する温度センサを備え、
前記噴霧部は、前記温度センサによる検知温度が設定温度に達したときに、蒸気の噴霧動作を停止することを特徴する請求項2に記載の捕虫器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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