説明

捨て型枠およびその型枠保持体ならびに型枠固定用アンカ

【課題】捨て型枠に対して歪みのない凸状の湾曲整形を簡単に施せ、捨て型枠への凹部の現出を抑え、捨て型枠間からのコンクリートの漏出を防ぎ、これに起因したフーチング部の変形、強度低下を防止可能な捨て型枠およびその型枠保持体を提供する。
【解決手段】シート材11のうち、上端部11a付近に円弧ガイド部15aの挿入口14を形成したので、立ち上げ型枠12に捨て型枠10を連結後、型枠保形体15の一部が挿入口14を通して捨て型枠10の内側空間へ挿入され、シート材11の内側から凸状に湾曲したート材11を保形する。よって、捨て型枠10に歪みのない凸状の湾曲整形を簡単に施せる。その結果、捨て型枠10への凹部の現出を抑制し、隣り合う捨て型枠10間からのコンクリートの漏れを防ぎ、フーチング部の変形および強度低下を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は捨て型枠およびその型枠保持体ならびに型枠固定用アンカ、詳しくはコンクリートにより住宅などの基礎を構築する際に使用され、打設後、そのまま地中に埋められる捨て型枠およびその型枠の形状を保持する型枠保持体ならびに捨て型枠を地盤に固定する型枠固定用アンカに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の建築時には、あらかじめ地盤に対して基礎工事が行われる。その施工方法の1つとして、例えば本願出願人が先に提出した特許文献1の捨て型枠およびその固定用具を利用し、転圧された地盤上にフーチング部と立ち上げ部とを分離不能にコンクリートにより打設する方法が知られている。
これは、まず地盤上の捨てコンクリートの表面上に、外部の支持構造体を用いて鋼製の立ち上げ型枠を立設し、その後、立ち上げ型枠の下端部に、埋め殺しされる紙製の捨て型枠(フーチング型枠)の上端部を掛止する一方、捨て型枠の下端部(裾部)を地盤に治具により固定する。
このとき、捨て型枠は中央部が外方に突出した凸状(断面円弧状)に湾曲され、また立ち上げ型枠は、前記支持構造体を利用し、捨て型枠と連結していない状態で組み立てられる。それから、型枠内に逆T字形の鉄筋を配筋してコンクリートを流し込み、その後、これを養生し固化させることで基礎が打設される。その結果、基礎施工の工期の短縮や施工コストの低下が図れ、コールドジョイントも解消される。
【0003】
また、紙製の捨て型枠の下端部を地盤に固定する治具としては、例えば頭部の外径が胴部の外径の3倍を超える型枠固定用釘が知られている(特許文献1)。このように、頭部の面積が大きい釘を使用するので、一般的な釘を使用したときに比べて、捨て型枠の下端部をしっかりと地盤に固定することができる。
【特許文献1】特開2003−336268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように特許文献1では、フーチング型枠として金属より軟らかい紙製の捨て型枠を採用していた。そのため、型枠組み立て時には、捨て型枠を手作業でその中央部が外方へ突出する断面円弧状に整形しなければならず、その捨て型枠の組み付け作業が面倒で熟練を要していた。
しかも、紙製の捨て型枠であるので、金属製の立ち上げ型枠や地盤に対する捨て型枠の固定状態によっては、整形後の捨て型枠に歪みが生じ、この型枠の一部に凹部が現出してコンクリートによる打設後のフーチング部に断面欠損が発生してしまい、フーチング部の強度が低下するおそれがあった。しかも、前記凹部が隣接するフーチング型枠間の継ぎ目部分に発生した場合には、型枠へのコンクリート流し込み時、凹部を通路としてコンクリートが型枠外へ漏れ出すおそれもあった。
【0005】
また、特許文献1のように、紙製のフーチング型枠の下端部を地盤に固定する治具として、頭部の外径が胴部の外径の3倍を超えるものを採用した場合でも、釘の製造技術的に、フーチング型枠の下端部を地盤にしっかりと固定できるまでは大径化することができなかった。
【0006】
そこで、この発明は、捨て型枠に対して歪みのない凸状の湾曲整形を簡単に施すことができ、これにより捨て型枠への凹部の現出を抑制し、隣り合う捨て型枠同士の隙間からのコンクリートの漏出を防止し、この漏出に起因したフーチング部の変形および強度低下を防止することができる捨て型枠およびその型枠保持体を提供することを目的としている。
また、この発明は、立ち上げ型枠の起立部から捨て型枠の上端部が脱落し難い型枠保持体を提供することを目的としている。
さらに、この発明は、捨て型枠の下端部の広い範囲を、地盤にしっかりと固定することができ、しかも不使用時にはコンパクトに折り畳むことができる型枠固定用アンカを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、建築物の基礎の立ち上げ部用のコンクリートを打設する立ち上げ型枠に上端部が連結され、かつ前記基礎のフーチング部用のコンクリートを打設する湾曲可能なシート材からなる捨て型枠において、前記シート材のうち、前記上端部を除く部分に、凸状に湾曲された該シート材の形状を該シート材の内側から保持する型枠保形体の一部が挿入される挿入口が形成された捨て型枠である。
【0008】
請求項1に記載の捨て型枠によれば、立ち上げ型枠に連結された捨て型枠には、型枠保形体の一部が挿入口を通して捨て型枠の内側空間へ挿入され、凸状に湾曲されたシート材の形状をシート材の内側から保持する。このとき、型枠保形体のうち、挿入口の外に配置される部分(残部)は、例えば立ち上げ型枠など、捨て型枠とは別の物体に連結されるものとする。これにより、捨て型枠に対して歪みのない凸状の湾曲整形を簡単に施すことができる。その結果、捨て型枠への凹部の現出を抑制し、隣り合う捨て型枠同士の隙間からのコンクリートの漏出を防止し、この漏出に起因したフーチング部の変形および強度低下を防止することができる。
【0009】
捨て型枠は、コンクリートの止め部分を打設する止め用型枠でもよいし、コンクリートの入隅部分を打設する入隅用型枠でもよい。さらに、コンクリートの出隅部分を打設する出隅用型枠でもよい。
基礎としては、例えば住宅などの建物の基礎、橋りょうや擁壁の基礎などが挙げられる。基礎は主として地中に構築され、上部構造物の荷重を所定の支持地盤に伝え、安定した支持機能を負担する部分であればよい。
基礎の種類としては、例えば柱1本に対して1個打設される独立基礎、複数本の組柱に対して1個打設される連続(布)基礎および複合基礎、上部構造物の全体に対して1個のべた基礎などが挙げられる。この発明でいう打設とは、コンクリートを所定の型枠に流し込み、これを養生、固化する打設をいう。
基礎の被打設面としては、例えば捨てコンクリートの表面、填圧された地面などが挙げられる。捨てコンクリートは、直接、地面に打設してもよいし、割りぐり石などを介して打設してもよい。
【0010】
シート材の素材は任意である。例えば紙などが挙げられる。ただし、遮水性を有する素材の方が、シート材自体からのコンクリートの液分の漏れがないので好ましい。遮水性を有するシート材としては、例えば、各種の合成樹脂シート、各種の合成樹脂膜により被覆されたラミネート紙、含有水分の増加に伴う強度の低下が小さい紙管原紙、撥水段ボール、耐水段ボール、紙素材に溶融パラフィンや微結晶ワックスなどを含浸された耐水紙などが挙げられる。
シート材が凸状に湾曲するとは、捨て型枠の使用時において、シート材の幅方向(高さ方向)の中間部が、この幅方向の両端部より型枠の外方向へ突出するように円弧状に曲がることをいう。
湾曲するシート材の曲率は限定されない。例えば、フーチング高さが住宅金融公庫仕様と同じで、フーチング部の体積が住宅金融公庫仕様と等しくなる半径120〜140mm程度である。
シート材の厚さは、シート材が湾曲可能で、かつ打設中でも打設前の形状を保持可能な厚さであれば限定されない。例えば0.7〜1.3mmくらいである。
【0011】
立ち上げ型枠への捨て型枠の上端部の連結は、掛止などの着脱自在な連結でもよいし、接着、溶着、溶接などの分離不能な連結でもよい。
挿入口が形成されるシート材の部分は、例えば上端部の近傍でもよいし、シート材の高さ方向の中間部でもよいし、シート材の下端部でもよい。
挿入口の形状としては、例えば三角形、四角形以上の多角形または任意の形状を挙げることができる。
挿入口の大きさは、型枠保形体のうち、シート材の内側空間に挿入される部分が挿入可能な大きさであれば任意である。挿入口の形成数は1つまたは2つ以上である。
【0012】
型枠保形体とは、挿入口を介して、一部がシート材の内側に配置されるとともに、残部がシート材の外側に配置されて、湾曲されたシート材の形状を内側から保持する部材である。したがって、前記型枠保形体の残部は、例えば型枠保形体の取り付け架台となる立ち上げ型枠などに固定される。
型枠保形体の素材は任意である。例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの各種の金属、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの各種の合成樹脂、杉、檜、松などの各種の木などを採用することができる。型枠保形体は弾性体でもよいし、剛体でもよい。型枠保形体は、フーチング部の打設後、挿入口を通して型枠保形体の一部を捨て型枠から引き抜いてもよいし、引き抜かなくてもよい。
型枠保形体の形状(外観形状)は任意である。例えば、三角形、四角形以上の多角形を採用することができる。
型枠保形体の一部は、凸状に湾曲されたシート材の曲率と略同じ曲率で湾曲している方が、型枠保持体とシート材との接触面積が大きくなり、安定性が高まって好ましい。
【0013】
シート材には、打設時に流し込まれたコンクリートの漏れから、コンクリートの充填完了を確認可能な充填確認孔を形成してもよい。充填確認孔は、シート材に一定ピッチで複数形成した方が好ましい。こうすれば、定規を用いることなく、捨て型枠の長さを大まかに認識することができる。
充填確認孔の大きさは、コンクリートの液分は外部に漏れ、骨材などの固形物は漏れない大きさである。具体的には、直径2〜10mm、好ましくは4〜6mmである。2mm未満では目詰まりが生じて閉塞するおそれがある。また、10mmを超えるとモルタル成分が多量に漏れるおそれがある。
充填確認孔の形状は任意である。通常は円形であるが、楕円形、三角形以上の多角形などでもよい。
充填確認孔の形成数は、例えば1つでもよいし、2つ以上形成してもよい。充填確認孔が複数の場合には、例えば縦方向60mm、横方向151.5mm程度の一定ピッチでシート材に形成することができる。
【0014】
フーチング型枠と立ち上げ型枠とは、ほとんど隙間が存在しないように連結される。そのため、コンクリート流し込み時にコンクリートの締め固め用のバイブレータの使用が可能になる。
打設用のコンクリートの種類は任意である。例えば、普通ポルトランドセメントなどが挙げられる。
コンクリートの中には、直交する2つの仮想面内でそれぞれ屈曲したコンクリート補強用金属繊維を混入した方が好ましい。その混入量は、コンクリートの用途により異なる。例えば、建物の基礎用で20〜40kg/mである。
【0015】
コンクリート補強用金属繊維の原料である金属材料は任意である。例えば、鋼鉄材料である純鉄、鋼鉄、軟鋼、特殊鋼、電気用鋼、鋳鋼、鋳鉄などが挙げられる。鋼鉄材料の場合、コンクリート補強用金属繊維がコンクリート補強用鋼繊維となる。なお、比較的安価で高強度を有する非鉄金属、例えばアルミニウム合金なども採用することができる。
コンクリート補強用金属繊維の種類も任意である。例えば、断面矩形状の細長い板である平線型の金属繊維、断面円形状の細長い金属繊維、突条の節を所定間隔ごとに有するインデント型の金属繊維、折れ曲がったフックが両端部に配置された両端フック型の金属繊維、略繊維全長にわたって波形状に屈曲した波型の金属繊維などが挙げられる。コンクリート補強用金属繊維は、その表面を防錆膜で覆うことができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、建築物の基礎の立ち上げ部用のコンクリートを打設する立ち上げ型枠に上端部が連結され、かつ前記基礎のフーチング部用のコンクリートを打設する湾曲可能なシート材からなる捨て型枠を、該シート材の内側から凸形の湾曲形状に保持する型枠保持体であって、前記型枠保持体の一部は、前記シート材のうち、前記上端部を除く部分に形成された挿入口を通して、湾曲後の該シート材の内側空間へ挿入されて該シート材の内面に当接され、前記型枠保持体の残部は、前記立ち上げ型枠に着脱自在または分離不能に連結された型枠保持体である。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、立ち上げ型枠に連結された捨て型枠には、型枠保形体の一部が挿入口を通して捨て型枠の内側空間へ挿入され、凸状に湾曲したシート材の形状をシート材の内側から保持する。このとき、型枠保形体の残部は、立ち上げ型枠に着脱自在または分離不能に連結される。
これにより、捨て型枠に対して歪みのない凸状の湾曲整形を簡単に施すことができる。その結果、捨て型枠への凹部の現出を抑制し、隣り合う捨て型枠同士の隙間からのコンクリートの漏出を防止し、この漏出に起因したフーチング部の変形および強度低下を防止することができる。
【0018】
型枠保形体の残部を、立ち上げ型枠に着脱自在に連結する方法としては、例えば、ボルトナットによる連結、クリップによる連結、型枠保形体を弾性体とした場合の弾性力を利用した連結などを採用することができる。また、型枠保形体の残部を立ち上げ型枠に分離不能に連結する方法としては、例えば、接着、溶着、溶接などによる連結を採用することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記シート材の上端部は、前記立ち上げ型枠の下部外端に設けられた起立部に掛止される板片で、前記型枠保持体の残部には、前記起立部からの前記シート材の上端部の外れを防止する外れ止め部が設けられた請求項2に記載の型枠保持体である。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、立ち上げ型枠の起立部にシート材の上端部を掛止し、この掛止状態を外れ止め部により保持する。これにより、起立部からのシート材の上端部の外れを防止することができる。
【0021】
起立部付きの立ち上げ型枠としては、例えばリップ付形鋼を採用することができる。
外れ止め部の構造は任意である。例えば、起立部とシート材の上端部と挟持するクリップ方式のものでもよいし、起立部に被せられたシート材の上端部を押圧部材により外方から押圧する押圧方式のものでもよい。押圧部材としては、U字形の部材、V字形の部材を採用することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、建築物の基礎の立ち上げ部用のコンクリートを打設する立ち上げ型枠に上端部が連結され、かつ前記基礎のフーチング部用のコンクリートを打設する湾曲可能なシート材からなる捨て型枠の下端部を地盤に固定する型枠固定用アンカであって、前記捨て型枠の下端部の上から地盤に突き刺される釘部と、該釘部の長さ方向の所定位置に、該釘部の長さ方向に対して軸線が直交した回動軸を中心にして回動自在に連結され、かつ前記シート材の下端部を上方から前記地盤に押圧する地盤押圧部材とを有した型枠固定用アンカである。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、捨て型枠の下端部を地盤に固定する際には、例えば、地盤押圧部材を回動軸を中心にして回動し、地盤押圧部材の長さ方向を釘部の軸線に対して直交させる。その後、捨て型枠の下端部の上から地盤に釘部を突き刺す。これにより、地盤押圧部材の長さ方向の全体で、捨て型枠の下端部を地盤に押し付けることができる。その結果、捨て型枠の下端部の広い範囲を、地盤にしっかりと固定することができる。
型枠固定用アンカの不使用時には、地盤押圧部材を回動軸を中心にして回動し、地盤押圧部材の長さ方向を釘部の軸線方向に揃えることで、型枠固定用アンカをコンパクトに折り畳むことができる。
【0024】
型枠固定用アンカとは、捨て型枠の本体となるシート材の下端部を地盤に押圧する地盤押圧部材が、釘部に回動自在に連結されたものである。
釘部の素材としては、例えば鉄、ステンレス、硬質アルミニウム、黄銅などの各種の金属、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ABS、ポリカーボネートなどの各種の合成樹脂などを採用することができる。
釘部の長さは10〜50cmである。10cm未満ではコンクリート打設時における型枠固定用アンカの引き抜けが発生するおそれがある。また、50cmを超えると運搬に手間を要する。
釘部の直径は5〜13mmである。5mm未満ではコンクリート打設時における型枠固定用アンカの引き抜けが発生したり、打ち込み時(使用時)に釘部が曲がるおそれがある。また、13mmを超えると捨て型枠の下端部に対して太すぎてしまい、打ち込み時に捨て型枠が破損するおそれがある。
【0025】
回転軸の素材としては、例えば鉄、ステンレスなどの各種の金属、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ABS、ポリカーボネートなどの各種の合成樹脂を採用することができる。
地盤押圧部材の素材としては、例えば、釘部の素材として上記されたものの中から選択したものを採用することができる。
地盤押圧部材の形状としては、例えば丸棒状、角棒状、板状を採用することができる。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に記載の捨て型枠によれば、シート材のうち、上端部を除く部分に型枠保形体の一部が挿入される挿入口を形成したので、立ち上げ型枠に捨て型枠を連結後、型枠保形体の一部が挿入口を通して捨て型枠の内側空間へ挿入され、シート材の内側から凸状に湾曲されたシート材の形状を保持する。これにより、捨て型枠に対して歪みのない凸状の湾曲整形を簡単に施すことができる。その結果、捨て型枠への凹部の現出を抑制し、隣り合う捨て型枠同士の隙間からのコンクリートの漏出を防止し、この漏出に起因したフーチング部の変形および強度低下を防止することができる。
【0027】
また、請求項2に記載の型枠保持体によれば、立ち上げ型枠に連結された捨て型枠には、型枠保形体の一部が挿入口を通して捨て型枠の内側空間へ挿入され、凸状に湾曲したシート材の形状をシート材の内側から保持する。このとき、型枠保形体の残部は、立ち上げ型枠に着脱自在または分離不能に連結される。
これにより、捨て型枠に対して歪みのない凸状の湾曲整形を簡単に施すことができる。その結果、捨て型枠への凹部の現出を抑制し、隣り合う捨て型枠同士の隙間からのコンクリートの漏出を防止し、この漏出に起因したフーチング部の変形および強度低下を防止することができる。
【0028】
特に、請求項3に記載の型枠保持体によれば、立ち上げ型枠の起立部にシート材の上端部を掛止し、この掛止状態を外れ止め部により保持する。これにより、起立部からのシート材の上端部の外れを防止することができる。
【0029】
さらに、請求項4に記載の型枠固定用アンカによれば、回動軸を介して、釘部に地盤押圧部材を回動自在に連結したので、地盤押圧部材の長さ方向の全体でシート材の下端部を地盤に押圧することができる。その結果、捨て型枠の下端部の広い範囲を、地盤にしっかりと固定することができる。しかも、型枠固定用アンカの不使用時には、地盤押圧部材を回動軸を中心にして回動し、地盤押圧部材の長さ方向を釘部の軸線方向に揃えることで、型枠固定用アンカをコンパクトに折り畳むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0031】
図1において、10は住宅用の略逆T字形を有する基礎のうち、フーチング部用のコンクリートを打設する際に利用される湾曲自在な捨て型枠(フーチング型枠/ストレート部用型枠)である。ここでは、基礎が施工される仮想直線を中心とした線対称状態で、多数の捨て型枠10が使用される。
図1〜図4に示すように、捨て型枠10は、ラミネート紙製のシート材11を本体とする。シート材11は、紙の表裏両面が防水フィルムにより覆われている。その紙サイズは、縦900mm、横330mmで、厚さ0.7〜1.0mmである。表裏両面のフィルム厚さは20μmである。これにより、シート材11は、型枠組立時に半径132mmのなだらかに湾曲する法面を有し、打設中でも打設前の形状を保持可能なものとなる。
【0032】
シート材11の上端部(シート幅方向の一端部)11aは、折り目を中心にして、屈曲自在に設けられている。また、この上端部には、シート長さ方向へ向かって所定ピッチで1対の折り返し片11bが配設されている。両折り返し片11bは、捨て型枠10の使用時、基礎の立ち上げ部用のコンクリートを打設する立ち上げ型枠12の側面に配置された2本の縦リブ(垂直な補強リブ)13を跨ぐものものである。
また、捨て型枠10の上端部より若干下方位置には、シート材11の長さ方向のうち、両折り返し片11bにより3分割された部分の各中間位置に挿入口14が配設されている。各挿入口14は、捨て型枠10の長さ方向へ長い孔で、後述する型枠保形体15の円弧ガイド部15aが、周囲に若干の隙間を形成して挿入される。
【0033】
捨て型枠10の上端部を除く部分には、シート長さ方向に向かって151.5mmピッチ、シート幅方向に向かって60mmピッチで、多数の充填確認孔11cが点在されている。充填確認孔11cとは、打設時に流し込まれたコンクリートの漏れから、コンクリートの充填完了を確認する孔である。その直径は5mmである。
立ち上げ型枠12は、横長な矩形状のステンレス板製で、立ち上げ型枠12の上部外端および下部外端には、それぞれ高さ10mmの起立部(上部外端のものは垂直下向き、下部外端のものは垂直上向き)12aが一体的に形成されている。また、立ち上げ型枠12の外側には、縦リブ13と横リブ16とが格子状に配置されている。立ち上げ型枠12は、離間配置された複数個の支持台17上に載置されている。各支持台17は、コンクリート製の土台部17aの上に、P字形状の支柱鉄筋17bが立設されたものである。
【0034】
次に、図2〜図4を参照して、立ち上げ型枠12と捨て型枠10とを連結するとともに、シート材11をその内側から凸形の湾曲形状に保持する型枠保形体15について説明する。
型枠保形体15は弾性を有したステンレス製の薄板(幅31mm、厚さ1mm)からなる。型枠保形体15の上半分は、立ち上げ型枠12に着脱自在に連結される長さ215mmの平坦な板ばね部15bを構成している。板ばね部15bは、立ち上げ型枠12の縦リブ13の1/3の長さ(200mm)より長い。また、型枠保形体15の下半分は、捨て型枠10と同じ半径132mmのなだらかに湾曲した法面を有し、シート材11の内側からシート材11を保持する前記円弧ガイド部15aとなっている。
また、板ばね部15bの円弧ガイド部15a側の端部は、円弧ガイド部15aとの連結部分より外方へ17mm程度突出した突出部15cとなっている。一方、円弧ガイド部15aの板ばね部15bとの連結部の近傍は、突出部15cに対して60度だけ傾斜した傾斜部15dとなっている。これらの突出部15cと傾斜部15dとにより、起立部12aに掛止されたシート材11の上端部11aを挟持するクリップ部(外れ止め部)18が構成される。
【0035】
シート材11の下端部は外方へ折れ、鍔状の裾部11dとなっている。裾部11dは、型枠固定用アンカ19により、転圧された地盤26に固定されている(図5)。以下、図5〜図7を参照して、型枠固定用アンカ19を詳細に説明する。
型枠固定用アンカ19は、裾部11dの上から地盤26に突き刺される釘部20と、釘部20の長さ方向の略中間部に、釘部20の長さ方向に対して軸線が直交した回動軸21を中心にして回動自在に連結され、かつ裾部11dを上方から地盤26に押圧する地盤押圧部材22とを備えている。
【0036】
釘部20は、直径9mm、長さ430mmの釘で、その上端部20aが直角に屈曲された鋼製の釘である。また、地盤押圧部材22は、直径9mm、長さ400mmの鋼製の丸棒である。
回動軸21は、釘部20の長さ方向に対して軸線が直交したボルト23の頭部が固定されている。地盤押圧部材22の長さ方向の中間部には、厚肉なリング部24が連結されている。リング部24はボルト23の全周にわたり隙間を有して挿通され、リング部24の端面から突出したボルト23のねじ部に1対のナット25が螺合されている。これにより、地盤押圧部材22は、ボルト23を中心にして回動自在に構成されている。
【0037】
次に、図1,図3,図4および図5を参照して、この発明の実施例1に係る捨て型枠10の使用方法を説明する。
まず、地盤26上に捨てコンクリートを打設する。地盤26には、あらかじめ割ぐりを敷設した割ぐり地業、砂を敷設した砂地業、砂利を敷設した砂利地業、杭打ちを行った杭打ち地業などを施しておく。
その後、捨てコンクリートの表面に、基礎が施工される仮想直線を線対称の中心として、複数の支持台17を互いに離間状態で対配置する。
各支持台17の上面は、複数の立ち上げ型枠12を、それぞれの長さ方向を揃えて略隙間がない連結状態で組み立てる。これにより、組み立て後の立ち上げ型枠12は、仮想直線の両側に2列状態で配置される。
【0038】
次に、各立ち上げ型枠12の下端部に、凸状に湾曲された捨て型枠10をそれぞれ連結させる。具体的には、立ち上げ型枠12の下側の起立部12aに、シート材11の内折りされた上端部11aを掛止する。その際、各折り返し片11bが外折りされ、開口部が現出される。各開口部には、対応する縦リブ13の元部が対峙される。
続いて、捨て型枠10の各挿入口14に、対応する型枠保形体15の円弧ガイド部15aが、周囲に若干の隙間を形成してそれぞれ挿入される。これにより、凸状に湾曲したシート材11の形状が、シート材11の内側から保持(支持)される。
【0039】
各型枠保形体15のクリップ部18は、起立部12aに掛止されたシート材11の上端部11aをそれぞれ挟持する。そして、各型枠保形体15の板ばね部15bは、その弾性力に抗して湾曲され、各型枠保形体15の板ばね部15bが横リブ16のうち、2本の縦リブ13により3等分された各部分の下面に、所定の弾性力で押し当てられる。このように、各板ばね部15bを立ち上げ型枠12に弾性的に掛止した状態で、各円弧ガイド部15aにより各シート材11の形状を内側から保持するので、捨て型枠10に対して歪みのない凸状の湾曲整形を簡単に施すことができる。よって、捨て型枠10への凹部の現出を抑制し、隣り合う捨て型枠10同士の隙間からのコンクリートの漏出を防止し、この漏出に起因したフーチング部の変形および強度低下を防止することができる。
また、前記起立部12aにシート材11の上端部11aを掛止し、この掛止状態をクリップ部18により保持するので、起立部12aからの上端部11aの外れを防止することができる。
【0040】
さらに、各捨て型枠10の組み立て時には、複数の型枠固定用アンカ19を用いて、各シート材11の裾部11dを地盤26に固定する。特に、隣接する両捨て型枠10の裾部11d間の固定用として用いた方が、シート材11の隙間の捲りを防げるので有効である。具体的には、地盤押圧部材22を回動軸21を中心にして回動し、地盤押圧部材22の長さ方向を釘部20の軸線に対して直交させる。
【0041】
その後、捨て型枠10の下端部の上から地盤26に釘部20を突き刺す。これにより、地盤押圧部材22の長さ方向の全体で、裾部11dを地盤26に押圧することができる。その結果、捨て型枠10の裾部11dの広い範囲を、地盤26にしっかりと固定可能となる。
型枠固定用アンカ19の不使用時には、地盤押圧部材22を回動軸21を中心にして回動し、地盤押圧部材22の長さ方向を釘部20の軸線方向に揃えることで、型枠固定用アンカ19をコンパクトに折り畳むことができる。
【0042】
次に、各立ち上げ型枠12間の上端開口部から、対峙された捨て型枠10間に形成されたフーチング部打設空隙、および、対峙された立ち上げ型枠12間に形成された立ち上げ部打設空隙にコンクリートを一連に流し込む。その際、棒状のバイブレータを挿入し、コンクリートを流動化させ、コンクリート中の空隙や不要の水分を排除し、型枠内でコンクリートを密実に締め固める。これにより基礎の耐久性が高まる。その際、前述したように捨て型枠10の連結部分には、隙間がほとんど存在しない。そのため、この型枠10の連結部分からコンクリートが漏れるおそれはほとんどない。
コンクリートの流し込み時、フーチング部打設空隙の内部空気の一部分およびコンクリートに含まれている空気は、充填確認孔11cを通して型枠の外に円滑に排出される。これにより、捨て型枠10などの外方に膨出した両端部上に空気が溜まり、コンクリートにより打設されたフーチング部の強度低下を招くおそれが低減される。
【0043】
特に、実施例1のように、捨て型枠10が湾曲自在なシート材11で作製されている場合には、シート材11の柔軟性の度合いによっては、捨て型枠10などの全体またはその一部分に大小の凹凸が現出し、前記空気の溜まり部分が多発するおそれがある。しかしながら、各捨て型枠10は、型枠組立時になだらかに湾曲する法面を有し、打設中でも打設前の形状を保持可能な硬度を有し、かつ各型枠保形体15の円弧ガイド部15aによりシート材11の形状を内側から保持しているので、凹凸(とりわけ凹み)が現出するおそれがない。しかも、コンクリート中の空気は、近傍の充填確認孔11cから型枠の外に抜き出せる。
その後、作業者が充填確認孔11cからのコンクリートの漏れを視認することで、フーチング部打設空隙のうちの、この充填確認孔11cが形成された部分まではコンクリートが充填されていることを、容易に知ることができる。
【0044】
コンクリートの流し込み後、所定の時間だけ放置し、コンクリートを養生、固化する。その後、脱型することで、捨てコンクリート上にフーチング部および立ち上げ部からなる基礎が得られる。このとき、シート状の捨て型枠10は、フーチング部の表面から剥ぎ取らずに放置することで、続くコンクリートの養生にも利用することができる。また、打設後に各横リブ16から板ばね部15bを外し、挿入口14を通して、対応する円弧ガイド部15aを引き抜く。その結果、型枠保形体15の使い回しが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の実施例1に係る捨て型枠を利用した基礎の施工状態を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施例1に係る型枠保持体の斜視図である。
【図3】この発明の実施例1に係る捨て型枠の立ち上げ型枠への組み付け作業中を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施例1に係る捨て型枠を利用した基礎の施工状態を示す背面方向からの斜視図である。
【図5】この発明の実施例1に係る型枠固定用アンカの使用状態を示す斜視図である。
【図6】この発明の実施例1に係る型枠固定用アンカの使用状態の正面図である。
【図7】この発明の実施例1に係る型枠固定用アンカの使用状態の側面図である。
【符号の説明】
【0046】
10 捨て型枠、
11 シート材、
11a 上端部、
12 立ち上げ型枠、
12a 起立部、
14 挿入口、
15 型枠保形体、
18 クリップ部(外れ止め部)、
19 型枠固定用アンカ、
20 釘部、
21 回動軸、
26 地盤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の基礎の立ち上げ部用のコンクリートを打設する立ち上げ型枠に上端部が連結され、かつ前記基礎のフーチング部用のコンクリートを打設する湾曲可能なシート材からなる捨て型枠において、
前記シート材のうち、前記上端部を除く部分に、凸状に湾曲された該シート材の形状を該シート材の内側から保持する型枠保形体の一部が挿入される挿入口が形成された捨て型枠。
【請求項2】
建築物の基礎の立ち上げ部用のコンクリートを打設する立ち上げ型枠に上端部が連結され、かつ前記基礎のフーチング部用のコンクリートを打設する湾曲可能なシート材からなる捨て型枠を、該シート材の内側から凸形の湾曲形状に保持する型枠保持体であって、
前記型枠保持体の一部は、前記シート材のうち、前記上端部を除く部分に形成された挿入口を通して、湾曲後の該シート材の内側空間へ挿入されて該シート材の内面に当接され、
前記型枠保持体の残部は、前記立ち上げ型枠に着脱自在または分離不能に連結された型枠保持体。
【請求項3】
前記シート材の上端部は、前記立ち上げ型枠の下部外端に設けられた起立部に掛止される板片で、
前記型枠保持体の残部には、前記起立部からの前記シート材の上端部の外れを防止する外れ止め部が設けられた請求項2に記載の型枠保持体。
【請求項4】
建築物の基礎の立ち上げ部用のコンクリートを打設する立ち上げ型枠に上端部が連結され、かつ前記基礎のフーチング部用のコンクリートを打設する湾曲可能なシート材からなる捨て型枠の下端部を地盤に固定する型枠固定用アンカであって、
前記捨て型枠の下端部の上から地盤に突き刺される釘部と、
該釘部の長さ方向の所定位置に、該釘部の長さ方向に対して軸線が直交した回動軸を中心にして回動自在に連結され、かつ前記シート材の下端部を上方から前記地盤に押圧する地盤押圧部材とを有した型枠固定用アンカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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