説明

据え付け型機器およびそのリモコン

【課題】浴室の天井に取り付けられる浴室暖房機などの据え付け型機器では、使用者の手が届かないなどの理由から機器側には電源スイッチが設けられていない場合がある。このような機器の電源のオンオフはリモコンによって行われるが、機器の電源がオンの状態でリモコンを誤って落下させてリモコンが破損した場合に、機器の電源をオフにすることができない。
【解決手段】リモコンの内部に落下の開始および着地を検知する加速度センサを設け、落下開始により落下信号を発信し、着地時に着地信号をリモコンから発信させるようにした。機器側では落下信号を受信してから所定時間経過するまでに着地信号を受信しないと、リモコンが破損したと判断して自動的に電源をオフにするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室暖房機等の据え付け型機器およびその据え付け型機器を操作するためのリモコンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のリモコンとして、浴室内の天井に浴室暖房機を取り付け、その浴室暖房機の操作を行うリモコンを浴室外の壁面に固定したホルダに着脱自在にセットしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、リモコンをホルダから取り外した状態でリモコンに設けた各種の操作ボタンを押し操作することによりリモコンから赤外線信号が発信される。浴室内の浴室暖房機に向けてこの赤外線信号を発信すると、浴室暖房機はその赤外線信号を受信し、赤外線信号に重畳されている制御信号を分離して各制御信号に対応する動作を行う。なお、リモコンを操作する際にリモコンを誤って落下させるとリモコンが破損する恐れがあるため、リモコンをボールチェーン等でホルダに連結して、リモコンを操作中に誤って落下させてもリモコンが床まで落下しないように構成されている。
【0003】
なお、リモコンではないがラップトップ型のパソコン内部に加速度センサを内蔵させ、ラップトップ型パソコンが自由落下を開始したことを検知してハードディスクドライブの磁気ヘッドを待避させ、ハードディスクドライブの破損を防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。ただし、上記リモコンには通常ハードディスクドライブが内蔵されいないので、リモコンの自由落下開始を検知してもリモコン自体の破損を防止することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開兵08−289997号公報(図2)
【特許文献2】特開2010−140575号公報(段落0001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リモコンを固定せずに手に持って操作する場合、常に手から離れて自由落下する恐れがある。上記ハードディスクの磁気ヘッドを待避させる技術は、磁気ヘッドのような可動部を備えていないリモコンには適用することができず、また例え磁気ヘッドのような可動部を待避できたとしても、着地時に大きな衝撃が作用するとやはり破損する恐れが生じる。
【0006】
上述のようなリモコンで操作される据え付け型の機器が、例えば浴室暖房機のように天井に取り付けられている場合には、通常、使用者の手が届かない状態に取り付けられるので、機器の表面には電源スイッチを含めて使用者が直接操作するための操作ボタンが設けられていない。そのため、すべての操作はリモコンを介して行われるが、上述のようにリモコンを落下させて破損してしまうと、それ以降、機器の操作を行えなくなるという不具合が生じる。特に、機器の電源がオンの状態でリモコンが破損し、リモコンによって電源をオフにできない状態になれば、新たなリモコンを手配して電源をオフにするまで作動し続けることになる。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、上記のリモコンを落下させた場合に、リモコンが破損した場合には自動的に機器の電源をオフにすることのできる据え付け型機器およびその機器用のリモコンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明によるリモコンは、壁などに固定されることなく使用者が手にとって使用するリモコンであって、少なくとも電源のオンオフスイッチを備えたものにおいて、リモコン自体が自然落下を開始したことを検知する落下開始検知手段と自然落下が終了したことを検知する落下終了検知手段とを備え、落下開始検知手段が自然落下の開始を検知すると落下信号を発信し、落下終了検知手段が自然落下の終了を検知すると着地信号を発信することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、リモコンが落下信号を発信することにより、その落下信号を受信した機器はリモコンが自然落下を介したことを知ることができる。なお、落下の衝撃によりリモコンが破損すれば着地信号を発信することができない。そのため、落下信号を受信した機器は着地信号を続けて受信することによりリモコンが破損していないことを検知することができ、逆に着地信号を受信しなければリモコンが破損したことを検知することができる。
【0010】
なお、落下途中で操作ボタンが他のものに触れて使用者が意図しない制御信号が発信される恐れがある。そこで、上記落下開始検知手段が自然落下の開始を検知すると、上記落下終了検知手段が自然落下の終了を検知するまでの間、落下信号および着地信号以外の信号の発信を禁止する発信制限手段を備えることが望ましい。
【0011】
また、上記課題を解決するために本発明による据え付け型機器は、電源スイッチを有さない据え付け型の機器であって、上記請求項1または請求項2に記載のリモコンを介しての操作以外では電源をオフにできないものにおいて、上記落下信号を受信すると所定時間が経過するまでの間に着地信号を受信しなければ電源をオフにして運転を停止する強制停止手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
落下信号を受信した後、所定時間が経過しても着地信号を受信しない場合にはリモコンが破損し、リモコンを使用して電源をオフにすることができなくなるので、機器側で強制的に電源をオフにする。
【0013】
なお、落下途中で意図しない制御信号が発信された場合、電源スイッチを有さない据え付け型の機器であって、上記請求項1に記載のリモコンを介しての操作以外では電源をオフにできないものにおいて、上記落下信号を受信すると所定時間が経過するまでの間に着地信号を受信しなければ電源をオフにして運転を停止する強制停止手段を備えると共に、落下信号を受信すると着信号を受信するまでの間、その他の信号を受信しても無視する制御信号無視手段を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明は、リモコンが自然落下した場合、リモコン自体の破損を防止することはできないものの、そのリモコンによって操作される据え付け型機器が運転中であれば、リモコンが故障した場合には運転状態を継続するのではなく機器側で強制的に電源をオフにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】リモコンおよび浴室暖房機での制御を示すフロー図
【図3】リモコンおよび浴室暖房機での制御の他の例を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、1は本発明に係るリモコンの一例であり、10はこのリモコン1によって操作される浴室暖房機である。1は浴室内の壁に固定された図示しないホルダに取り付けられるが、使用する際にはそのホルダから取り外して使用者が手に持って操作を行う。このリモコン1の表面には各種の操作ボタン4が設けられており、通常のリモコンと同様に電源ボタンを備えており、電源ボタンを押し操作することにより浴室暖房機10の電源がオンになり、再び電源ボタンを押し操作すれば浴室暖房機10の電源がオフになる。また、電源ボタンのほかに例えば浴室暖房機10からミストを発生させるためのボタンやその他の各種の機能が操作ボタン4の各々に割り当てられている。
【0017】
電源ボタンを含めて各種の操作ボタン4が押し操作されると、その信号はマイコン2に入力され、押し操作された操作ボタン4に割り当てられた操作内容の種類に応じた制御信号がマイコン2で生成される。そして、その制御信号が重畳された赤外線が発光部5から外部へと発信される。
【0018】
3は加速度センサであり、リモコン1に作用する加速度を検知する。そして、加速度センサ3からの検知信号は上記マイコン2に入力される。加速度センサ3からの検知信号によってマイコン2はリモコン1に作用する加速度を知ることができ、その加速度からリモコン1の運動状態を認識することができる。例えば、リモコン1が振られたことを検知することができるので、上記操作ボタン4に対する操作以外に、リモコン4が一定の振られ方をされると特定の操作信号を赤外線に重畳して発信することが可能である。本発明では、この加速度センサ3からの検知信号から、リモコン1が使用者の手から離れて自由落下を開始したこと、および地面に着地したことを検知するようにマイコン2にプログラムした。そして、マイコン2はリモコン1が自由落下を開始したと判断すると落下信号を赤外線に重畳して発信し、着地したと判断すると着地信号を同じく赤外線に重畳して発信するようにプログラムされている。
【0019】
一方、浴室暖房機10には図示しない受光部が浴室内に臨むように設けられており、リモコン1から発信された赤外線を受光して、その赤外線に重畳されている制御信号を分離し、浴室暖房機10の制御を行うように構成されている。ところで、浴室暖房機10は上述のように、浴室の天井に取り付けられているので、通常では使用者の手が届かない。そのため、浴室暖房機10には電源スイッチを含めて操作ボタン等が設けられていない。従って、浴室暖房機10の電源のオンオフはリモコン1を介してのみ行うことができる。
【0020】
図2を参照して、リモコン1側で常に自由落下が開始されることを監視している(S11)。具体的には加速度センサ3からの検知信号のレベルから重力加速度に相当する大きさの加速度が継続して検知された場合に、リモコンが自由落下を開始したと判断する。自由落下を開始するまでは、操作ボタン4による他の操作を受け付け、各操作に対応する制御信号を発信して通常のリモコンとして作用する(S12,S13)。
【0021】
自由落下が開始したとマイコン2が判断すると、操作ボタン4が押し操作されても無視をして、例え操作ボタン4が押されてもその押された操作ボタン4に対応する制御信号の発信を行わない(S14)。これはリモコン1が落下途中で固定物に当たって使用者の操作によらずに操作ボタン4が押された状態になる恐れがあるからである。
【0022】
マイコン2は自由落下が開始されたと判断すると、上記落下信号を発信する(S15)。この落下信号は自由落下開始時に1回発信する仕様でもよいが、浴室暖房機10が落下信号を受信し損なうことも考えられるので、自由落下中は連続して発信するようにした。そして、リモコン1に所定の大きさ以上の加速度が作用することにより着地したことを検知すると(S16)、着地信号を発信するとともに(S17)、操作ボタン4の押し操作を無視するモードを解除して、それ以降の押し操作を受け付けることとした(S18)。
【0023】
一方、浴室暖房機10側では落下信号を受信すると(S21)、タイマを作動させることとした(S22)。本実施の形態ではタイマがスタートしてからカウントを終了するまでの時間を5秒としたが、自由落下開始から着地までの所要時間より十分に長ければよく、タイマの設定時間は適宜変更してもよい。なお、上述のように落下信号は連続して発信されるが、最初に受信した時点からタイマをスタートさせる。タイマをスタートさせると、タイマが終了するまでの間に着地信号を受信しなければ、着地信号が発信できないほどにリモコン1が破損したものとして(S23,S24)、浴室暖房機10の電源をオフにして運転を停止させるとともに(S25)、浴室暖房機10の表面に設けたLEDを点滅させるなどしてリモコン1が故障し、かつそのことで浴室暖房機10の運転が停止したことを報知することとした(S26)。なお、タイマが終了するまでに着地信号を受信すれば、リモコン1は着地信号を発信できるので破損していないと判断してS21に戻ることとした。
【0024】
上記図2に示したフローでは落下中に操作ボタン4が押された場合に、その操作を無視する機能をリモコン2側に設けたが、浴室暖房機10側にその機能を持たせてもよい。図3を参照して、この実施の形態では、浴室暖房機10が落下信号を受信すると(S41)、それ以降リモコン1から操作信号が発信されても浴室暖房機10がその操作信号を無視するようにした(S42)。そして、タイマ終了までに着地信号を受信すると(S45)、操作信号の受信を無視するモードを解除してから(S46)、S41に戻るようにした。
【0025】
なお、上記図2および図3に示した制御ではともに着地信号を発信もしくは受信すると直ちに他の操作信号に関する禁止モードを解除するようにしたが、リモコン1が床ではねて着地後にも操作ボタン4が予期せず押されることがある場合には、着地後から所定時間経過した後に禁止モードを解除するようにしてもよい。
【0026】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0027】
1 リモコン
10 浴室暖房機
3 加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁などに固定されることなく使用者が手にとって使用するリモコンであって、少なくとも電源のオンオフスイッチを備えたものにおいて、リモコン自体が自然落下を開始したことを検知する落下開始検知手段と自然落下が終了したことを検知する落下終了検知手段とを備え、落下開始検知手段が自然落下の開始を検知すると落下信号を発信し、落下終了検知手段が自然落下の終了を検知すると着地信号を発信することを特徴とするリモコン。
【請求項2】
上記落下開始検知手段が自然落下の開始を検知すると、上記落下終了検知手段が自然落下の終了を検知するまでの間、落下信号および着地信号以外の信号の発信を禁止する発信制限手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のリモコン。
【請求項3】
電源スイッチを有さない据え付け型の機器であって、上記請求項1または請求項2に記載のリモコンを介しての操作以外では電源をオフにできないものにおいて、上記落下信号を受信すると所定時間が経過するまでの間に着地信号を受信しなければ電源をオフにして運転を停止する強制停止手段を備えたことを特徴とする据え付け型機器。
【請求項4】
電源スイッチを有さない据え付け型の機器であって、上記請求項1に記載のリモコンを介しての操作以外では電源をオフにできないものにおいて、上記落下信号を受信すると所定時間が経過するまでの間に着地信号を受信しなければ電源をオフにして運転を停止する強制停止手段を備えると共に、落下信号を受信すると着信号を受信するまでの間、その他の信号を受信しても無視する制御信号無視手段を備えたことを特徴とする据え付け型機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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