説明

排ガスを吸引するエジェクタを備えた焼却炉

【課題】焼損や消費動力の増加の原因となる誘引送風機を使用せずに、焼却炉の炉内を負圧に維持することができる焼却炉を提供すること。
【解決手段】焼却炉の炉体1に蒸気発生器2を配設するとともに、この蒸気発生器2で発生させた蒸気を駆動媒体に用いて焼却炉の排ガスを吸引するエジェクタ3を焼却炉の排ガスの排出流路4に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉に関し、特に、排ガスを吸引するエジェクタを備えた焼却炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物等の可燃物(本明細書において、「焼却物」という。)を焼却するために用いられる焼却炉は、焼却炉の炉内を負圧に維持することによって、随時、焼却炉の扉を開いて焼却物を炉内に投入することができるようにしている。
そして、焼却炉の炉内を負圧に維持するために、従来の焼却炉においては、排ガスの排出流路に誘引送風機を設け、排ガスの温度を下げるために冷却用空気と共に焼却炉の炉内の排ガスを吸い込んで、排出するようにしている。
【0003】
しかしながら、この際、排ガスの温度を下げるために排ガスに対する冷却用空気の混合割合を多くすると、誘引送風機に必要とされる動力が増大し、設備コストやランニングコストが上昇することになるため、冷却用空気の混合割合に制限を加えるようにしている。
このため、誘引送風機が取り扱う混合ガスの温度が高くなり、誘引送風機が焼損しやすく、また、誘引送風機に必要とされる動力が大きいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記誘引送風機を用いた焼却炉が有する問題点に鑑み、焼損や消費動力の増加の原因となる誘引送風機を使用せずに、焼却炉の炉内を負圧に維持することができるようにするとともに、そのために消費されるエネルギを低減できるようにした焼却炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の焼却炉は、焼却炉の炉体に蒸気発生器を配設するとともに、該蒸気発生器で発生させた蒸気を駆動媒体に用いて焼却炉の排ガスを吸引するエジェクタを焼却炉の排ガスの排出流路に配設したことを特徴とする。
【0006】
この場合において、前記エジェクタに冷却用空気の吸引流路を付設することができる。
【0007】
また、前記エジェクタに加圧空気供給源からの加圧空気を駆動媒体に用いる駆動媒体の補助供給流路を付設することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の焼却炉によれば、焼却炉の炉体に配設した蒸気発生器で発生させた蒸気を駆動媒体に用いるエジェクタを排ガスの排出流路に配設して、焼却炉の排ガスを吸引するようにすることにより、焼損や消費動力の増加の原因となる誘引送風機を使用せずに、焼却炉の炉内を負圧に維持することができる。
この場合、エジェクタは、少量の駆動媒体(蒸気)で大量の吸引媒体(排ガス)を吸引、排出することができるため、効率よく、かつ、確実に、焼却炉の炉内を負圧に維持することができる。
また、この焼却炉は、高温の排ガスを取り扱う部分には可動部がないため、耐火材による火傷防止(熱遮蔽)を簡単に実施することができ、また、エジェクタは、駆動媒体に焼却炉の炉体に配設した蒸気発生器で発生させた蒸気を用いるようにしているので、焼却炉を稼働するために消費されるエネルギを著しく低減することができる。
【0009】
また、前記エジェクタに冷却用空気の吸引流路を付設することにより、排出される排ガスの温度を下げることができる。
【0010】
また、前記エジェクタに加圧空気供給源からの加圧空気を駆動媒体に用いる駆動媒体の補助供給流路を付設することにより、焼却炉の起動時においてエジェクタの駆動媒体に蒸気発生器で発生させた蒸気を用いることができない場合でも、加圧空気を駆動媒体に用いてエジェクタを作動させ、焼却炉の炉内を負圧に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の焼却炉の一実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の焼却炉の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に、本発明の焼却炉の一実施例を示す。
この焼却炉は、バーナ11を設けた炉体1に蒸気発生器2を配設するとともに、この蒸気発生器2で発生させた蒸気を駆動媒体に用いて焼却炉の排ガスを吸引するエジェクタ3を焼却炉の排ガスの排出流路4に配設するようにしている。
【0014】
蒸気発生器2は、特に限定されるものではないが、本実施例においては、炉体1を冷却し、その放熱を回収することができる蒸気ボイラを用いるようにしている。
蒸気ボイラには、種々の型式があるが、ここでは、単管式貫流ボイラを用いるようにし、より具体的には、炉体1の周囲に炉体1の形に合わせて配設したボイラ管21、ボイラ管21に給水ポンプ22を介して水を供給する空気分離器を兼ねた給水タンク23及び汽水分離器24等からなる公知の構成とし、汽水分離器24において分離された蒸気を、蒸気供給流路25を介して、駆動媒体としてエジェクタ3に供給するようにしている。
【0015】
なお、ボイラ管21の蒸気の乾き度を0.85程度以下にすると、ボイラ管21にスケールが付着することを防止でき、メンテナンス作業を簡易にすることができる。
また、汽水分離器24で分離された水は、還流水管26を介して給水ポンプ22の入口に還流させるようにしている。
この場合、汽水分離器24の水位が略一定値を保持するように、給水タンク23から給水ポンプ22に供給される水量を弁27によって調節できるようにしている。
また、本実施例においては、蒸気発生器2への給水を、この焼却炉に独立して配設した給水タンク23から行うようにしているが、例えば、別のボイラ設備等が併設されている場合には、給水タンクを共用するように構成することもできる。
【0016】
エジェクタ3は、駆動媒体(蒸気)で吸引媒体(排ガス)を吸引、排出することができるものであれば、その構造は特に限定されるものではないが、ここでは、焼却炉の排ガスの排出流路4(2重管型エジェクタの外管)に絞り部31を形成し、この絞り部31に臨ませて蒸気発生器2の蒸気供給流路25(2重管型エジェクタの内管)の開口部25aを位置させるようにして構成するようにしている。
これにより、少量の駆動媒体(蒸気)で大量の吸引媒体(排ガス)を吸引し、吸引した排ガスを煙突5を介して大気中に排出するようにすることにより、効率よく、かつ、確実に、焼却炉の炉内を負圧に維持することができるようにしている。
【0017】
なお、吸引媒体(排ガス)に対する駆動媒体(蒸気)の割合が少ない方が効率が良いため、蒸気発生器2で発生させた蒸気が余ることがある。
この場合には、余剰の蒸気により発電機(図示省略)で発電を行い、この電力を給水ポンプ22等の付帯設備の動力に用いるようにすることもでき、これにより、焼却炉を稼働するために消費されるエネルギを一層低減することができる。
また、余剰の蒸気は、別のボイラの蒸気と混ぜて、種々の用途に使用するようにすることもできる。
【0018】
ところで、煙突5を介して大気中に排出される排ガスが高温のため、周囲の環境に適合しない場合には、エジェクタ3に冷却用空気の吸引流路6を付設することができる。
この冷却用空気の吸引流路6は、例えば、エジェクタ3の絞り部31の排ガスの流通方向の上流側の排ガスの排出流路4に、大気と連通するように形成することができる。
この場合、冷却用空気の吸引流路6に、ダンパ61を配設することにより、排ガスに対する冷却用空気の混合割合を調節することができる。
これにより、排出される排ガスの温度を下げ、排ガスを周囲の環境に適合した安全性を高めた状態で排出することができる。
【0019】
また、エジェクタ3には、コンプレッサー等の加圧空気供給源7からの加圧空気を駆動媒体に用いることができるように、加圧空気供給源7に接続した駆動媒体の補助供給流路71を、例えば、蒸気供給流路25に配設した三方弁72に接続するようにする。
これにより、焼却炉の起動時においてエジェクタ3の駆動媒体に蒸気発生器2で発生させた蒸気を用いることができない(蒸気が発生していない)場合でも、加圧空気供給源7からの加圧空気を駆動媒体に用いてエジェクタ3を作動させ、焼却炉の炉内を負圧に維持することができる。
【0020】
そして、この焼却炉によれば、焼却炉の炉体1に配設した蒸気発生器2で発生させた蒸気を駆動媒体に用いるエジェクタ3を排ガスの排出流路4に配設して、焼却炉の排ガスを吸引するようにすることにより、焼損や消費動力の増加の原因となる誘引送風機を使用せずに、焼却炉の炉内を負圧に維持することによって、随時、焼却炉の扉(図示省略)を開いて焼却物を炉内に投入することができる。
この場合、エジェクタ3は、少量の駆動媒体(蒸気)で大量の吸引媒体(排ガス)を吸引、排出することができるため、効率よく、かつ、確実に、焼却炉の炉内を負圧に維持することができる。
また、この焼却炉は、高温の排ガスを取り扱う部分には可動部がないため、必要に応じて、耐火材による火傷防止(熱遮蔽)を簡単に実施することができ、また、エジェクタ3は、駆動媒体に焼却炉の炉体1に配設した蒸気発生器2で発生させた蒸気を用いるようにしているので、焼却炉を稼働するために消費されるエネルギを著しく低減することができる。
【0021】
以上、本発明の焼却炉について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の焼却炉は、焼損や消費動力の増加の原因となる誘引送風機を使用せずに、焼却炉の炉内を負圧に維持することができることから、焼却炉の用途に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 炉体
11 バーナ
2 蒸気発生器
21 ボイラ管
22 給水ポンプ
23 給水タンク
24 汽水分離器
25 蒸気供給流路
25a 開口部
26 還流水管
27 弁
3 エジェクタ
4 排ガスの排出流路
5 煙突
6 冷却用空気の吸引流路
61 ダンパ
7 加圧空気供給源
71 駆動媒体の補助供給流路
72 三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉の炉体に蒸気発生器を配設するとともに、該蒸気発生器で発生させた蒸気を駆動媒体に用いて焼却炉の排ガスを吸引するエジェクタを焼却炉の排ガスの排出流路に配設したことを特徴とする焼却炉。
【請求項2】
前記エジェクタに冷却用空気の吸引流路を付設したことを特徴とする請求項1記載の焼却炉。
【請求項3】
前記エジェクタに加圧空気供給源からの加圧空気を駆動媒体に用いる駆動媒体の補助供給流路を付設したことを特徴とする請求項1又は2記載の焼却炉。

【図1】
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