説明

排ガス中のモノフルオロメタンの処理方法および装置

【課題】比較的低温度での分解を利用して、ガス流に含まれるモノフルオロメタンを分解し、実質的にモノフルオロメタンを含まない排ガスとする技術を提供する。
【解決手段】モノフルオロメタンを含む排ガスを少なくとも酸素とともにリン酸塩触媒層に導入してモノフルオロメタンを分解する燃焼分解工程 、燃焼分解工程で生成したガス流を塩基性物質と接触させる酸除去工程、酸除去工程で酸成分が除去されたガス流を脱水剤と接触させる脱水工程、脱水工程で脱水されたガス流を活性炭層に通じて活性炭と接触させる吸着工程、およびモノフルオロメタンが吸着された活性炭層に不活性ガスを接触させ、生成したガス流を燃焼分解工程に導入する脱着工程を有する、排ガスの処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中に含まれるモノフルオロメタン(CHF)を分解除去して、排ガスを大気へ放出できるようにする方法およびその方法に使用する処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機フッ素化合物を気相中で加熱することを含む反応、例えば、フッ素化アルカンの熱分解反応、フッ化水素によるハロゲン化アルカンまたはアルケンのハロゲン−フッ素交換反応、フッ素化アルカンまたはアルケンの不均化反応などにおいては、フッ素化メタンやフッ素化エタンなどのフッ素化アルキルの生成を伴うことが多い。このように副生するフッ素化アルキルは低分子量であって沸点が低いためその捕捉には高圧または低温が必要であるが、これらの処理は装置的に前記反応を用いるプロセスのコストを上げる要因となっている。また、酸素で燃焼させて有機フッ素化合物のフッ素をフッ化水素に変換し塩基性化合物で固定する手段がとられることがあるが、高温で腐食性のフッ化水素を取り扱うので装置的制約が多い。
【0003】
パーフルオロ化合物を含む排ガスは、燃焼法では1300℃以上の高温処理がされ(特開2005−205330号公報)、触媒を用いる方法では約500〜700℃で処理される(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−205330号公報
【特許文献2】特開2004−82013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機フッ素化物を燃焼させ発生したフッ化水素を塩基性化合物で固定する方法では、有機フッ素化合物を完全に分解することは困難である上に、著しい高温が必要で有り装置の負担が大きい。そこで、比較的低温度での分解を利用して、ガス流に含まれるモノフルオロメタンを分解し、実質的にモノフルオロメタンを含まない排ガスとする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、モノフルオロメタンを含むガス流を無触媒または触媒存在下において酸化性ガスで燃焼させることで99.5%以上の分解率を達成できたものの、処理ガスはなお低含有量のモノフルオロメタンを含み大気へ放出するには除去が不十分であることから、より以上の分解率の向上を目指して検討したが、単に燃焼効率を改善するのみでは高濃度の酸素や高温が必要であって実用に供するには困難であった。そこで、比較的低温度で機能する触媒を選択すると、モノフルオロメタンを燃焼させて比較的低温の排ガスが得られることから、酸除去等の工程を比較的容易に導入できるので、分解処理されたガスを活性炭に通じて吸着させることができ、実質的にモノフルオロメタンを含まない排気ガスとすることができることを見出し、本発明に至った。さらに、本発明の方法においては、活性炭へのモノフルオロメタンの吸着は可逆的であり、複数の吸着装置を交互に吸脱着させることで長期の連続運転に耐えることが判明した。
【0007】
本発明は次の通りである。
【0008】
[発明1]
モノフルオロメタンを含む排ガス中のモノフルオロメタンを除去する排ガスの処理方法であって、
モノフルオロメタンを含む排ガスを少なくとも酸素とともにリン酸塩触媒層に導入してモノフルオロメタンを分解する燃焼分解工程 、
燃焼分解工程で生成したガス流を塩基性物質と接触させる酸除去工程、
酸除去工程で酸成分が除去されたガス流を脱水剤と接触させる脱水工程、
脱水工程で脱水されたガス流を活性炭層に通じて活性炭と接触させる吸着工程、
および
モノフルオロメタンが吸着された活性炭層に不活性ガスを接触させ、生成したガス流を燃焼分解工程に導入する脱着工程
を有する、排ガスの処理方法。
【0009】
[発明2]
吸着工程で使用してモノフルオロメタンを吸着させた活性炭層を脱着工程の活性炭層とし、脱着工程でモノフルオロメタンを脱着させた活性炭層を吸着工程の活性炭層として使用する、発明1の排ガスの処理方法。
【0010】
[発明3]
酸除去工程において、塩基性物質が塩基性溶液である発明1または2の排ガスの処理方法。
【0011】
[発明4]
燃焼分解工程を200〜800℃で行う発明1〜3の排ガスの処理方法。
【0012】
[発明5]
モノフルオロメタンを含む排ガス中のモノフルオロメタンを除去する排ガスの処理装置であって、
モノフルオロメタンを含む排ガスを少なくとも酸素とともにリン酸塩触媒層に導入してモノフルオロメタンを分解する燃焼分解装置、
燃焼分解装置で生成したガス流を塩基性物質と接触させる酸除去装置、
酸除去装置で酸成分が除去されたガス流を脱水剤と接触させる脱水装置、
脱水装置で脱水されたガス流を活性炭層に通じて活性炭と接触させる吸着装置、
および
モノフルオロメタンが吸着された活性炭層に不活性ガスを接触させ、生成したガス流を燃焼分解装置に導入する脱着装置
を有する、排ガスの処理装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の処理方法は、モノフルオロメタンを分解して得られる分解生成物を酸除去および脱水によって前処理し、少量残存したモノフルオロメタンを活性炭により高度かつ効率的に除去できることから、モノフルオロメタンを含むガスから実質的にそれを含まないガス廃棄ガスとすることができる。また、本発明の装置は、この処理方法の実施に適する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の方法による工程を示す概念図である。
【図2】実施例1、2、3で用いた装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明する。
【0016】
図1は本発明にかかる実施形態において用いられる処理装置を概略的に示すフロー図である。
【0017】
分解管1は、モノフルオロメタンを含む被処理ガスであるガス流と、酸化性ガス導入口から導入され酸化性ガスであるガス流と、脱着塔(活性炭塔4Aまたは4B)において活性炭層と接触した不活性ガスであるガス流が供給され、これらのガス流を合わせて加熱下リン酸塩触媒と接触させてモノフルオロメタンを燃焼させる分解に供され、この工程で分解されて得られたガス流を酸除去塔2に移動させるように配管を通じて接続されている。分解管1は、鉄、鋼など、またはステンレス鋼、モネル(商標)、インコネル(商標)、ハステロイ(商標)などでライニングもしくはクラッドされた耐食性材料で作られる。燃焼分解装置1で起こる反応は次の反応式で示される。
【0018】

CHF + 3/2・O → HF + CO + H

燃焼分解工程で使用する触媒はリン酸塩触媒である。リン酸としては、オルトリン酸、ポリリン酸、メタリン酸のいずれであってもよい。ポリリン酸としては、ピロリン酸などが挙げられる。リン酸塩は、これらのリン酸の金属塩である。取り扱いが容易であるのでオルトリン酸であるのが好ましい。
【0019】
リン酸塩としては、特に限定されないが、アルミニウム、ホウ素、アルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、ランタン、セリウム、イットリウム、希土類金属、バナジウム、ニオブ、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルからなる群より選ばれた、少なくとも1種の金属のリン酸塩が挙げられる。好ましくは、主成分の金属リン酸塩はリン酸アルミニウム、リン酸セリウム、リン酸ホウ素、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、リン酸クロムなどである。副成分としては、セリウム、ランタン、イットリウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル等が好ましいが、セリウム、鉄、イットリウムがより好ましい。これらのうちで、リン酸アルミニウム、リン酸セリウムおよびこれら二種からなる複合または混合リン酸塩がさらに好ましい。
【0020】
触媒の調製方法に特に制限はなく、市販のリン酸塩をそのまま使っても良いし、一般的な沈殿方法でもよい。沈殿方法の具体的な調製方法としては、例えば、金属の硝酸塩(複数の原料塩の場合はそれぞれの原料塩の溶液を調製する)とリン酸の混合水溶液に、希釈アンモニア水を滴下してpHを調節して沈殿させ、必要に応じて熟成放置する。その後、水洗し、洗浄水の電導度などで十分に水洗したことを確認する。場合によっては、スラリーの一部を採取し含有するアルカリ金属を測定して確認する。次いで濾過し乾燥する。乾燥する温度に特に制限はない。好ましくは80℃〜150℃である。さらに好ましくは100℃〜130℃である。得られた乾燥体は粉砕し粒度を揃えるか、さらに粉砕し成型する。その後、200℃〜1500℃の条件で空気や窒素雰囲気で焼成する。好ましくは400〜1300℃、さらに好ましくは500℃〜900℃で焼成を行う。
【0021】
焼成時間は温度に依存するが1時間〜50時間程度で、好ましくは2時間〜24時間程度である。焼成処理は、リン酸塩の安定化に必要な処理であるので、上記の温度範囲より低温で処理を行ったり、処理時間が短い場合は、反応初期において十分に触媒活性を示さないことがある。また、上記の温度範囲以上でまたは長時間焼成処理を行うことは、過剰な加熱エネルギーを要するだけでなく、触媒活性を損なうことがあるので好ましくない。
【0022】
主成分以外の金属成分の添加量に特に制限はないが、一般にはリン1グラム原子に対し1グラム原子以下であり、好ましくは0.5グラム原子以下である。より好ましくは0.3グラム原子以下である。
【0023】
リン酸塩触媒は、そのまま、流動床用触媒として粉末で使用することも可能であるが、ペレット状に打錠成形したり、塊状で調製されたリン酸塩を破砕した粒状で固定床用触媒としても使用可能である。粒径は特に限定されず、燃焼分解装置の形状、寸法に依存するが、長径を1〜20mm程度とすればよい。
【0024】
燃焼分解工程に用いるリン酸塩触媒は、使用の前に予めフッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化エーテルまたはフッ素化塩素化炭化水素などの含フッ素化合物と接触させてフッ素化処理をすることは、反応中の触媒の組成変化を防ぐので、触媒の長寿命化、異常反応防止の有効である。特にフッ化水素が好ましい。フッ素化処理は、少なくとも燃焼分解の温度よりも高い温度において、フッ化水素などのフッ素化合物と接触させることで行うのが好ましい。具体的には、200〜700℃程度であり、250〜600℃程度が好ましく、300〜550℃がより好ましい。200℃未満では処理に時間を要し、700℃を超えて処理を行うことは、過剰な加熱エネルギーを要するので好ましくない。また、処理時間は、処理量、処理温度とも関係するので限定できないが、1時間〜10日程度、好ましくは、3時間〜7日間程度である。燃焼分解工程で用いるリン酸塩触媒としては、含フッ素化合物の気相フッ素化反応、フッ素化エーテルの熱分解反応等のフッ化水素や含フッ素有機化合物の関与する反応で使用したリン酸塩触媒を使用することは、触媒のフッ素化処理をこれらの反応によって代替させることができ、好ましい触媒の利用の形態である。
【0025】
燃焼分解装置1に供給されるモノフルオロメタンを含むガス流の生成原因は限定されないが、有機フッ素化物の製造工程で発生するガスがある。モノフルオロメタンはフッ素化アルカンやフッ素化エーテルの熱分解や不均化反応などの特に気相加熱条件では生じやすい。例えば、1−メトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンを金属酸化物や金属フッ化物、リン酸塩触媒の存在下において熱分解すると次の反応によりモノフルオロメタンが副生する。
【0026】

CHFCFCOCH → CHFCOF + CH

ジフルオロ酢酸フルオライド(CHFCOF)はアルコールとのエステル化でエステル、水との水和反応でジフルオロ酢酸とするなどの各種の反応試剤として利用されるが、モノフルオロメタン(CHF)はそれらの反応中では分解等せずそのまま排ガス中に含まれる。また、モノフルオロメタンは、半導体の薄膜のエッチングプロセスや堆積室のクリーニングプロセスでのエッチングガスまたはクリーニングガスとして使用されているが、使用後の排ガス中に未反応のモノフルオロメタンが排ガスに含まれることがある。
【0027】
酸化性ガスとしては酸素(O)、オゾンなどを使用できるが酸素が好ましい。酸素としては、空気を用いるのが簡便であり、経済的でもあり好ましい。また、ゼオライトや膜を用いた公知または市販の酸素富化装置で得られる酸素富化空気を使用してもよい。燃焼分解工程に導入するガス流は、実質的に酸化性ガスおよび不活性ガスの他にはモノフルオロメタン以外の有機物を含まないガスが好ましい。酸素は、大気中の空気(約20%の酸素を含む。)としてモノフルオロメタン容量の10〜100容量倍とし、20〜50容量倍であるのが好ましい。空気中の窒素に代えて他の当該反応条件で不活性な不活性ガスを存在させてもよい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴンまたは希ガス類が挙げられ、扱いやすさおよび入手しやすさ等の点から、窒素またはアルゴンが好ましい。
【0028】
燃焼分解装置での処理温度は、通常200〜800℃であり、400〜600℃程度が好ましく、450〜500℃がさらに好ましい。反応温度が200℃未満ではモノフルオロメタンの分解率が低くなる傾向があり好ましくない。反応温度が800℃を超えると燃焼分解装置に過酷な耐熱性が必要となり、過剰な加熱エネルギーを要するので経済的に好ましくない。
【0029】
反応時間(接触時間)は通常0.1〜300秒であり、0.5〜100秒が好ましく、1〜30秒がより好ましい。反応時間が短すぎる場合には、分解率が低くなる恐れがあり、一方、長すぎると装置の大型化を招きそれぞれ好ましくない。反応圧力は、特に限定されず、常圧、減圧、または加圧のいずれであってもよい。0.05〜0.5MPa(0.5〜5気圧)程度が好ましく、通常は、操業が容易な大気圧近傍の圧力が好ましい。
【0030】
燃焼分解工程で用いる触媒は、経時的にコーキングが発生することがあり、触媒の活性が低下することがある。活性の低下した触媒は、モノフルオロメタンの導入を停止し、通常の熱分解操作で使用するよりも高温および/または高度の酸化性条件で酸化性ガスを流通させることで再生することができる。再生処理温度は、200℃〜800℃、好ましくは400℃〜700℃の範囲で通常の燃焼分解操作温度より高温とすればよい。酸素処理は燃焼分解装置に装填したまま又は外部の装置に装填して行うのが簡便である。再生の場合、酸化性ガスの流通方法としては酸素以外に他のガスが共存してもよく、酸素、空気、酸素富化空気、窒素希釈酸素などが使用できる。また、塩素、フッ素等の酸化力のあるガスも使用できる。
【0031】
酸除去装置2は、燃焼分解装置1で分解して生成したガス流に含まれる酸性成分を塩基性物質と接触させて除去する工程に使用され、除去後のガス流を脱水塔へ移動させるように脱水塔と配管を通じて接続されている。図1では、酸除去装置は塩基性溶液でガス流を処理する湿式法による装置を示すが、固体の塩基性物質を使用する乾式法を採用することもできる。溶液で用いる場合は水溶液が好ましい。溶液で用いる場合、塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、第三アミンなどの有機塩基性化合物を挙げることができ、固体の析出を避けるためフッ化物の水溶性が高い水酸化カリウムが特に好ましい。固体で使用する場合、塩基性物質としては、前記の水酸化物のほか、ソーダライム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、フッ化ナトリウムなどを使用できる。これらは、粉、顆粒、成形体の形状で使用でき、顆粒等は1〜20mm程度のものを用いる。
【0032】
酸除去装置に導入されるガス流には、フッ化水素、炭酸ガス、水分、未反応のモノフルオロメタン、不活性ガスおよび過剰の酸化性ガスが含まれ、酸除去装置ではフッ化水素、炭酸ガス、蒸気圧を超える水分が除去され、脱水塔へ流出するガス流には、水分、未反応のモノフルオロメタン、不活性ガスおよび過剰の酸化性ガスが含まれる。
【0033】
塩基性溶液を用いる酸除去装置の形式は、図1に例示するものに限定されない。容器に装入された塩基性溶液に吹き込み管から被処理ガスを吹き込むこともできる。図1に好ましい例を示す。酸除去装置下部に塩基性溶液を溜める液溜めとその中部にラシヒリングなどの充填材を有する充填部および上部に散水口を有し、液溜め底部に設けた排出口から循環ポンプを介して前記散水口に接続し、塩基性溶液を循環させる。燃焼分解工程からの流入ガスは液溜めと塩基性溶液の中間部に導入し、ガスは充填部において流下する塩基性溶液と接触して上部に至り、最上部にある流出口から配管を通して脱水塔に導かれる。
【0034】
固体による酸除去装置では、固体の塩基性物質を充填した槽に燃焼分解工程で得られたガスを流通させる。
【0035】
酸除去装置は、水溶液または固体の何れを用いる場合においても、処理温度は0〜100℃で行えばよいが、水溶液を用いる場合、処理において中和熱が発生し水分が脱水塔へ移動するのを防止するため冷却することが好ましい。固体の場合は特に冷却する必要はない。
【0036】
脱水塔の入口は、酸除去装置の出口に配管を介して接続する。脱水塔に充填する脱水剤には、ゼオライト、五酸化リン、無水塩化カルシウム、シリカゲルなどが使用できる。ゼオライトとしては、天然ゼオライト、合成ゼオライトを問わないが、合成ゼオライトの3A型、4A型、5A型、10X型、13Y型、ZMS型などが好ましく、4A型がより好ましい。
【0037】
ゼオライトを使用して水吸着量が飽和した場合、300〜400℃程度で脱水させて再生できる。このとき窒素、空気などを流通させることも好ましい。
【0038】
活性炭塔は、活性炭塔Aおよび活性炭塔Bからなり、交互に吸着塔、脱着塔として使用する。
【0039】
これらは同一の管状形状とし、同一の種類、同一の量の活性炭を充填する。まず、活性炭塔Aを吸着塔、活性炭塔Bを脱着塔として使用する場合について説明する。活性炭塔Aは、脱水塔から出たガスを塔の一端から受け入れ活性炭と接触させモノフルオロメタンを吸着除去した後、他端に設けた出口から処理されたガスを廃棄ガスとして大気中に放出する。一方、活性炭塔Bは不活性ガスの導入口を備え、他端の出口は配管を介して燃焼分解装置の入口に接続されている。活性炭塔Bは、一端から不活性ガスを導入し、既に吸着塔として使用した活性炭と接触させてモノフルオロメタンを脱着させてモノフルオロメタンを含む不活性ガスとし、これを燃焼分解装置の入口側に導入する。不活性ガスは導入の前に加熱器で加熱するか、または脱着塔を外部から加熱する。脱着塔内の少なくとも一部は50〜500℃とし、80〜300℃とすることが好ましい。吸着塔と脱着塔との切り替えに際しては、高温の吸着塔を切り替え直後に使用することにより吸着が不十分になることを避けるために中間的に別に用意した活性炭塔を使用することもできる。例えば、3本の活性炭塔を順次、吸着塔、脱着塔、待機塔(ガスを通じない状態の活性炭塔)とすると、脱着塔として使用した直後に吸着塔として使用することによる温度履歴に起因する吸着不足を防止することができる。活性炭塔は、鉄、鋼、ステンレス鋼等の材質が使用できる。活性炭塔の容量は燃焼分解装置の0.5〜100倍が好ましく、1〜10倍がより好ましい。容量が大きい程、破過時間が長く切り替え頻度が少なくなるので操作の面では簡便であるが、設備コストの面から好ましくない。
【0040】
活性炭塔に充填する活性炭としては、特に限定されず、市販品の規格の範囲で十分であるが、比表面積の大きい活性炭が好ましく、例えば、500〜2000m/gとすることができる。市販品としては、椰子殻炭(日本エンバイロケミカルズ製粒状白鷺GX、SX、CX、XRC、東洋カルゴン製PCB)等が挙げられるが、これらに限定されない。形状としては、通常粒状で用いられ、球状、繊維状、粉体状、ハニカム状等反応器に適合すれば通常の知識範囲の中で適宜使用することができ、圧力損失が少ない粒状が好ましい。寸法は活性炭塔の寸法、形状に依存するが、通常長径が1〜20mm程度のものを使用する。
【0041】
吸着塔の温度は低温の方が有利であるが、室温でも使用可能である。−80℃〜+50℃が好ましく、0℃〜+35℃がより好ましい。脱着塔の温度は室温(25℃程度)から500℃であり、50〜300℃が好ましい。脱着に要する時間は、1〜100時間程度で吸着塔の破過時間に基づいて決定することができる。例えば、脱着塔温度を250℃に設定した場合は、実質的に6時間以内に、大部分の吸着有機物が放出されるが、脱着塔の切り替え間隔は吸着塔の破過時間を目安にすることが効率的である。
【0042】
本発明の方法によると、2個の活性炭塔を流れるガス流の順序を切り替えることによって所定の時間使用され、モノフルオロメタン吸着能が低下した活性炭の再生工程と被処理ガスの吸着工程が同時に行われるので、装置を停止することなく活性炭を再生することができる。したがって、処理制度と処理効率との双方が十分に高められ、長期に亘って安定した処理運転が可能となる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を用いて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施態様には限られない。有機物の分析は、ガスクロマトグラフ(FID検出器)を用いて行い、組成は面積%(以下、「%」と表示する。)で表した。
【0044】

[触媒調製例1] (触媒のコンディショニングと性能試験)
アルドリッチ製リン酸アルミニウム(Aluminum phosphate)を5mmφ×5mmLのペレットに打錠成形し、窒素気流中700℃で5時間焼成して、リン酸アルミニウム触媒を調製した。これを2本の同じ構造の気化器付ステンレス鋼製反応管(37.1mmφ×500mmL)に150ccずつ充填した。それぞれ、反応管A、反応管Bとした。
反応管A、反応管Bを次の通りそれぞれ同一の反応に供した。窒素を15cc/分の速度で流しながら反応管を外部に設けた電気炉で加熱した。触媒の温度が50℃に達した時に、フッ化水素(HF)を0.6g/分の速度で気化器を通して導入した。HFを流通させたまま、330℃までゆっくりと昇温し、330℃で8時間保持した後、ヒーター設定温度を210℃に下げ、反応管の温度が210℃になった時点で、HFの流通を止め、窒素流量を200cc/分に増やして2時間保持した後、1−メトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFE−254pc)を0.2g/分の速度で、気化器を通して導入した。30分後窒素を止めて、HFE−254pcのみを30時間流通させ、定常状態に達した時の生成ガスを反応管A、Bそれぞれについてガスクロマトグラフで分析した結果を表1に示す。反応管A、BともHFE−254pcの熱分解が定量的に進みHFE−254pcの分解反応の触媒として活性化され、また、同時に燃焼分解工程で使用するためのフッ素化処理された触媒としても活性化された。
【0045】
【表1】

【0046】
[実施例1] (CHFの分解と未分解ガスの吸着)
実験に用いた装置を図2に示す。吹き込み管、温度計、−20℃の冷媒を流通させたジムロート型冷却管13を備えた3000ccの三口フラスコ12に2035gの24%水酸化カリウム(KOH)水溶液を仕込み、マグネテックスターラーで攪拌しながら氷浴で冷却した。触媒調製例1で使用した触媒を充填したままの反応管11(反応管A)の出口を吹き込み管に接続し、ジムロート型冷却管13の出口を空トラップ14、次いでモレキュラーシーブス4A(TM)(和光純薬製品、200cc)を充填した脱水塔15を経由して実施例1で使用した触媒を充填したままの燃焼分解装置16(反応管B)へ直列に接続した。燃焼分解装置16の出口は、48%KOH水溶液を仕込んだPFA製ガス洗浄瓶17と空トラップ18、脱水塔19(脱水塔15と同じ仕様)に配管した。脱水塔15と燃焼分解装置16の間に空気導入口とバルブを設置した。三口フラスコ12とPFA製ガス洗浄瓶17のKOH水溶液は24時間毎に取り替えた。
【0047】

ジャケット付ステンレス鋼管(37.1mmφ×500mmL)に活性炭(日本エンバイロケミカルズ製粒状活性炭G2X、200cc)を充填した活性炭塔20A、20Bを図2に示すように、活性炭塔20Bは燃焼分解装置16入口の直前に、活性炭塔20Aは脱水塔19の直後に接続した。活性炭塔20Aのジャケットには5℃の冷媒を流通した。
【0048】

窒素を80cc/分の速度で反応管11の入口に、熱交換器で250℃に加熱した窒素を80cc/分の速度で活性炭塔20Aの入口に、空気を900cc/分の速度で燃焼分解装置16の入口に導入し、反応管11は210℃、燃焼分解装置16は480℃に設定して昇温し、昇温完了後、反応管11に接続した気化器へHFE−254pcを0.2g/分の速度で供給すると同時に、窒素の流通を止めた。6時間経過して定常状態に達した後、反応管11出口、脱水塔15出口、脱水塔19出口、活性炭塔20出口のガスを2ccサンプリングし、ガスクロマトグラフで分析した。結果を表1に示す。脱水塔19出口および吸着塔20A出口のサンプルは、有機物の全てのピーク面積が定量下限界であり、吸着塔2出口の分析では、全くピークを検出できなかった。
【0049】

[実施例2]
実施例1の分析後、反応を継続しながら、活性炭塔20Aと活性炭塔20Bを図2の点線で示すようにバルブ操作によって配管を組み直し、活性炭塔20Bを吸着塔に、活性炭塔20Aを脱着塔とした。)。切り替え直後に、活性炭塔20Aの出口をサンプリングしガスクロマトグラフで分析したところ、モノフルオロメタン等の有機物が検出されたが、2時間後には全くピークを検出できなかった。さらに、6時間後、活性炭塔20Aと活性炭塔20Bを再び切り替えて、ガスクロマトグラフで分析した結果を表1に示す。
【0050】

[実施例3]
実施例2での分析終了後、同様に、6時間毎に吸着塔と脱着塔を2回切り替え、活性炭塔20Aが脱着塔、活性炭塔20Bが吸着塔の時に、活性炭塔20Aに供給していた窒素を純アルゴン(80cc/分)に切り替え、無害化率をより精密にGC/MSで測定した。燃焼分解装置16入口と活性炭塔20A出口のガスをGC/MS(日本電子製ガスクロマトグラフィー質量分析計(AUTOMASSII);カラム バリアン製PoraPLOT Q 長さ50m、内径0.32mmφ、膜厚10μm)で測定し、質量電荷比40(Ar)と質量電荷比34(CH3F)の面積比から無害化率を算出した。結果を表2に示す。
【0051】
無害化率 (%) =(1−出口の電荷質量比/入口の電荷質量比)×100
【0052】
【表2】

【符号の説明】
【0053】
1:燃焼分解装置 2:酸除去装置 3:脱水塔 4A、4B:活性炭塔
11:反応管 12三口フラスコ 13:ジムロート型冷却管 14:空トラップ 15:脱水塔 16:燃焼分解装置 17:塩基性水溶液槽 18:空トラップ 19:脱水塔 20A、20B:活性炭塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノフルオロメタンを含む排ガス中のモノフルオロメタンを除去する排ガスの処理方法であって、
モノフルオロメタンを含む排ガスを少なくとも酸素とともにリン酸塩触媒層に導入してモノフルオロメタンを分解する燃焼分解工程 、
燃焼分解工程で生成したガス流を塩基性物質と接触させる酸除去工程、
酸除去工程で酸成分が除去されたガス流を脱水剤と接触させる脱水工程、
脱水工程で脱水されたガス流を活性炭層に通じて活性炭と接触させる吸着工程、
および
モノフルオロメタンが吸着された活性炭層に不活性ガスを接触させ、生成したガス流を燃焼分解工程に導入する脱着工程
を有する、排ガスの処理方法。
【請求項2】
吸着工程で使用してモノフルオロメタンを吸着させた活性炭層を脱着工程の活性炭層とし、脱着工程でモノフルオロメタンを脱着させた活性炭層を吸着工程の活性炭層として使用する、請求項1に記載の排ガスの処理方法。
【請求項3】
酸除去工程において、塩基性物質が塩基性溶液である請求項1または2に記載の排ガスの処理方法。
【請求項4】
燃焼分解工程を200〜800℃で行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
【請求項5】
モノフルオロメタンを含む排ガス中のモノフルオロメタンを除去する排ガスの処理装置であって、
モノフルオロメタンを含む排ガスを少なくとも酸素とともにリン酸塩触媒層に導入してモノフルオロメタンを分解する燃焼分解装置、
燃焼分解装置で生成したガス流を塩基性物質と接触させる酸除去装置、
酸除去装置で酸成分が除去されたガス流を脱水剤と接触させる脱水装置、
脱水装置で脱水されたガス流を活性炭層に通じて活性炭と接触させる吸着装置、
および
モノフルオロメタンが吸着された活性炭層に不活性ガスを接触させ、生成したガス流を燃焼分解装置に導入する脱着装置
を有する、排ガスの処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−224492(P2011−224492A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97955(P2010−97955)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】