説明

排ガス処理用触媒、その製造方法および排ガス処理方法

【課題】 担持する貴金属の使用量を特に増加することなく、酸化力を向上することができる一酸化窒素、一酸化炭素および揮発性有機化合物を含有する排ガスの処理用触媒、その製造方法および排ガス処理方法を提供する。
【解決手段】 多孔質無機化合物のスラリーを基材11表面に塗布した後、乾燥してコート層の下層13bを形成し、次いで、1種以上の貴金属より成る活性成分15を担持した多孔質無機化合物のスラリーを上記下層13b上に塗布した後、乾燥して、触媒表面となるコート層の上層13aを形成することで、活性成分15が上層に均一に存在するものの、下層には存在しないという構成のコート層13を備えた排ガス処理用触媒10を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化窒素、一酸化炭素および揮発性有機化合物を含有する排ガスの処理用触媒、その製造方法および排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業機器、例えば、自動車、航空機、各種工場等から排出される排ガス中には、NOx(窒素酸化物)、CO(一酸化炭素)、未燃焼の炭化水素等が含まれている。このような含有物を処理するために、排ガス処理用触媒が用いられている。例えば、特開平10−309462号公報には、活性成分としてPt(白金)をアルミナ担体に担持したNMHC(メタンを除く未燃炭化水素)酸化触媒が記載されている。
【0003】
この酸化触媒の製造方法として、上記公報には、ハニカム構造の基材にアルミナをウォッシュコートして担持させた後、このアルミナを担持した基材をジニトロジアンミン白金の水溶液に浸漬させてアルミナにPtを担持させる方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、この方法では、酸化力を向上させるためには、Pt等の活性成分の担持量を増加させる必要があり、それには、高価なPt等の貴金属を多量に使用することとなることから、製造コストが高くなるという問題がある。
【特許文献1】特開平10−309462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、担持する貴金属の使用量を特に増加することなく、酸化力を向上することができる排ガス処理用触媒、その製造方法および排ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、その一態様として、一酸化窒素、一酸化炭素および揮発性有機化合物を含有する排ガスの処理用触媒であって、この触媒は、多孔質無機化合物より成る担体のコート層を有し、このコート層は、複数の層からなり、1種以上の貴金属より成る活性成分が、上記複数の層のうちの上層にリッチに存在し、上記複数の層のうちの下層にプアーに存在することを特徴とする。上記コート層の上層は4〜30μmの厚さが好ましく、上記コート層の下層は20〜100μmの厚さが好ましい。
【0007】
本発明は、また別の態様として、一酸化窒素、一酸化炭素および揮発性有機化合物を含有する排ガスの処理用触媒を製造する方法であって、多孔質無機化合物のスラリーを基材表面に塗布した後、乾燥して下層のコート層を形成する工程と、1種以上の貴金属を担持した多孔質無機化合物のスラリーを上記下層のコート層上に塗布した後、乾燥して、上記触媒の表面となる上層のコート層を形成する工程とを含むことを特徴とする。上記多孔質無機化合物としては、ピークが複数ある粒径分布を有する集合体を用いることが好ましい。また、上層コート層を塗布乾燥後、焼成処理を施すことが好ましい。
【0008】
上記下層のコート層の形成工程において、上記多孔質無機化合物のスラリーとして1種以上の貴金属を担持した多孔質無機化合物のスラリーを用いることが好ましい。この場合、上記下層のコート層の形成工程において、上記多孔質無機化合物のスラリーとして1種以上の貴金属を担持した多孔質無機化合物のスラリーを用い、上記下層のコート層の形成工程における上記貴金属の担持量が、上記上層のコート層の形成工程における上記貴金属の担持量よりも少ない量であることが好ましい。具体的には、上記下層のコート層の形成工程における上記貴金属の担持量を0.3〜1.5g/Lとし、上記上層のコート層の形成工程における上記貴金属の担持量を0.3〜1.5g/Lとすることが好ましい。
【0009】
本発明は、さらに別の態様として、上記の排ガス処理触媒を用いて、排ガス中の一酸化窒素、一酸化炭素および揮発性有機化合物を処理する排ガス処理方法である。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、多孔質無機化合物より成る担体のコート層を複数の層から形成することとし、1種以上の貴金属より成る活性成分が、この複数の層のうちの上層にリッチに存在するようにし、下層にはプアーに存在するようにすることで、排ガス処理の反応に大きく寄与する上層に集中して活性成分を担持することができるので、触媒全体の貴金属の使用量を増加することなく、酸化力を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を用いて、本発明に係る排ガス処理用触媒、その製造方法および排ガス処理方法の一実施の形態について説明する。先ず、本実施の形態の排ガス処理用触媒10は、図1に示すように、基材11上に、多孔質無機化合物より成る担体のコート層13が形成されている。このコート層13は複数の層からなり、この複数のコート層のうちの上層13aには、1種以上の貴金属より成る活性成分15が有効量で存在するが、下層13bには存在しない。
【0012】
担体を構成する多孔質無機化合物としては、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、SiO2−Al23、TiO2−SiO2、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、SO4/ZrO2、SO4/TiO2、SO4/TiO2−ZrO2から成る群より選ばれる少なくとも一種が好適である。多孔質無機化合物より成る担体は、50m2/g以上のBET式比表面積を有するものが好ましい。この範囲の比表面積とすることで、活性成分を高分散に担持させることができる。
【0013】
また、多孔質無機化合物より成る担体は、ピークが2以上あるような粒径分布を有するものを使用することが好ましい。このような粒径分布を有する担体は、大きな粒子間に小さい粒子が入り込み、担体粒子がコート層で密に充填されることから、粒子同士の密着性が向上し、コート層の剥離を防止できる。
【0014】
この多孔質無機化合物より成る担体は、基材11上に少なくとも2層の複数層としてコートされている。複数の層をコートする方法としては、上記化合物のスラリーを調製し、このスラリーを例えばウォッシュコートにより塗布し、乾燥した後、再びスラリーを塗布して、この塗布と乾燥を繰り返す方法がある。
【0015】
基材11としては、コージュライト等のセラミックス製のハニカム体(モノリス体)や、ステンレス鋼製のハニカム体(モノリス体)を例示することができる。多孔質無機化合物の主成分は、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、SiO2−Al23、TiO2−SiO2、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、SO4/ZrO2、SO4/TiO2、SO4/TiO2−ZrO2から成る群より選ばれる少なくとも一種が好適である。
【0016】
活性成分15を構成する貴金属としては、Ir、Rh、Ru、Pt、Pd、Ag、Au及びそれらの酸化物から成る群より選ばれる少なくとも一種が好適である。活性成分15は、50nm以下の粒子径であることが好ましい。このような粒子径で活性成分を多孔質無機化合物に担持する方法としては、貴金属のコロイド溶液を調製し、このコロイド溶液を例えばスプレードライや蒸発乾固、吸着担持等により多孔質無機化合物に担持する方法がある。より好ましい粒子径は2〜15nmである。
【0017】
貴金属のコロイド溶液を調製する方法を説明する。先ず、貴金属の塩、好ましくは硝酸塩、塩化物、酢酸塩、錯塩を溶解した水溶液を、水と還元剤と高分子材料の混合物に添加する方法がある。この混合物は、高分子材料を水に溶解し、次いで還元剤を投入してもよいし、高分子材料を含まない水溶液に、還元剤と高分子材料の混合溶液を投入してもよい。いずれの手順でも使用する水は、沸騰させて溶存酸素を除去した後、用いることが好適である。また、水に高分子材料と還元剤を混合した後、沸騰させて溶存酸素を除去してもよい。
【0018】
還元剤として用いることができる化合物としては、有機酸が好ましく、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸、ギ酸、りんご酸等のカルボン酸、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類を挙げることができる。高分子材料として用いることができる化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリメチルビニルエーテル等の水溶性高分子を挙げることができる。
【0019】
なお、コロイド溶液中の貴金属の濃度は0.01〜1.0重量%の範囲が好適である。還元剤の濃度は、35〜80重量%の範囲が好適である。35〜80重量%の範囲にすることで、安定的に貴金属コロイド溶液を調製することができる。高分子材料の濃度は、0.05〜3.0重量%の範囲が好適である。0.05重量%より低い場合は、貴金属コロイドが不安定になり凝集沈殿を起こしやすい。一方、3.0重量%より高い場合は、貴金属コロイドがより多くの高分子材料に被覆されるため、貴金属コロイドと高分子材料を合わせた粒子の粒径が大きくなり、コロイドが多孔質無機化合物に吸着しにくくなる。また、焼成処理して高分子材料を除去する際により多くの時間を要するため、3.0重量%より高いのは好ましくない。
【0020】
そして、この混合物に貴金属塩水溶液を添加した水溶液を還元処理する。一般的に、還元反応は、この水溶液を約80℃〜約95℃に加熱することによって進行する。還元反応では、イオンとして溶解している貴金属の還元反応によって、貴金属コロイド粒子が生成し、反応が終了することによって貴金属コロイド溶液が調製される。また、高分子材料が金属コロイドを被覆することで、金属コロイドは凝集沈殿せず、安定に存在できる。
【0021】
次に、複数のコート層のうちの上層13aに活性成分を存在させる方法を説明する。コート層の形成は、上述したように、多孔質無機化合物のスラリーを塗布する方法により行うが、この上層13aの形成には、貴金属を担持した多孔質無機化合物のスラリーを使用する。貴金属を多孔質無機化合物に担持する方法としては、上記の貴金属コロイド溶液を例えばスプレードライや蒸発乾固、吸着担持等により多孔質無機化合物に担持する方法がある。
【0022】
活性成分が存在する上層13aとしては、コート層の表面から4〜30μmの厚さとすることが好ましい。このような層厚にすることで、複数のコート層のうち排ガス処理の反応に大きく寄与する層に活性成分を担持することができるので、少ない活性成分で高い触媒活性を発揮することができる。4〜30μmの厚さの上層を得るには、スラリーのコート量を8.5〜12.0g/m2とすることが好適である。上層の厚さは4〜20μmがより好ましく、この層厚にするにはスラリーのコート量を8.5〜11.5g/m2とすることが好適である。
【0023】
上層を形成するための貴金属を担持した多孔質無機化合物のスラリーにおいて、貴金属と多孔質無機化合物の配合割合は、1:100〜9:100の範囲が好ましい。配合割合をこの範囲にすることで、長期的な使用において大幅な性能低下を生じることなく酸化反応を効果的にすることができる。より好ましい配合割合は、1.5:100〜3:100の範囲である。
【0024】
また、活性成分を担持する方法として、ウォッシュコート等により基材上に形成した担体に、貴金属塩水溶液を含浸させて貴金属を吸着担持させる従来の方法では、貴金属が触媒長さ方向においてばらついて担持するという問題があったが、上記のように、貴金属を担持した多孔質無機化合物のスラリーを塗布する方法では、貴金属の分散性を向上することができる。
【0025】
活性成分が存在しない下層13bとしては、コート層の底面(すなわち基材との接触面)から上記上層までが20〜100μmである層が好ましい。コート層をこのような範囲の層厚で下層に形成することで、排ガス中に含まれる被毒物質を十分に希釈化して吸着することができる量の担体を触媒中に加えることができる。20〜100μmの厚さの下層を得るには、スラリーのコート量を34〜46g/m2とすることが好適である。なお、下層13bは図1のように1層で構成する他、複数の層で構成してもよい。
【0026】
活性成分の担持量は、ハニカム体に対して0.3〜1.5g/Lの範囲が好ましい。この範囲の担持量にすることで、少量の貴金属で優れた酸化力を発揮することができる。より好ましい担持量は0.5〜0.7g/Lの範囲である。
【0027】
そして、下層13b及び上層13a用の各スラリーの塗布した基材11を乾燥し、必要により焼成を行うことで、活性成分15がコート層の上層13aにのみ存在する排ガス処理用触媒10を得ることができる。焼成温度としては、400〜550℃が好ましい。なお、本実施の形態の製造方法により得られる触媒には、コート層の下層に活性成分は存在しないが、必要により下層にも活性成分を微量に存在させることもできる。その場合の活性成分の担持量は、ハニカム体に対して0.1〜0.7g/Lの範囲が好ましい。
【0028】
次に、図2を参照して、上記により得た排ガス処理用触媒を用いた排ガスの処理方法について説明する。図2(a)に示すように、排ガス処理用触媒10は、排ガス中の一酸化窒素、炭素(PM)、炭素化合物(CO、CmHnOx)を酸化処理する。反応式を以下に例示する。なお、炭化水素としてはC24の反応式を記載した。
【0029】
・2NO+O2→2NO2
・C+2NO2→CO2+2NO
・2CO+O2→2CO2
・C24+3O2→2CO2+2H2
【0030】
また、図2(b)に示すように、排ガス処理用触媒10の排ガス後流側に窒素酸化物処理触媒20を設置するとともに、窒素酸化物処理触媒20のガス入口でアンモニアまたは尿素を添加することで、排ガス処理用触媒10で処理したガス中に依然として含まれる窒素酸化物を処理することができる。
【0031】
さらに、図2(c)に示すように、排ガス処理用触媒10と窒素酸化物処理触媒20との間に黒煙除去フィルタ30を設置することで、排ガス処理用触媒10で処理したガス中に依然として含まれる炭素(PM)をこの黒煙除去フィルタ30で捕集することができる。また、捕集された炭素を、同様にガス中に含まれる二酸化窒素によって酸化して二酸化炭素として除去することができるので、黒煙除去フィルタ30の再生を行うことができる。
【0032】
このように、本発明に係る排ガス処理用触媒は、排ガス中の一酸化窒素、炭素、炭素化合物(CO、CmHnOx)を酸化処理することができるので、希薄燃焼ガスエンジンやガスタービン、ディーゼルエンジンから排出される排ガスの処理に適している。
【実施例】
【0033】
以下の手順によって、排ガス処理用触媒を調製した。
(実施例1)
(Ptコロイド溶液の調製)
イオン交換水1.5Lにエタノール1.5L及びポリビニルアルコール(平均重合度900〜1100)32gを加え、混合液3Lを調製した。この混合液を1時間沸騰させることにより溶存酸素を除去した。この混合液に、ジニトロジアンミン白金0.1Lを加え、貴金属含有水溶液(Ptが75mmol)を調製した。これを約90℃に保持して5時間の還元処理を行った。溶液が黒色に変色するのを確認後、氷冷し、Ptコロイド溶液とした。このときのpHは1であった。
【0034】
(Pt担持アルミナスラリーの調製)
上記により得たPtコロイド溶液8800gを、113m2/gのBET式比表面積を有する活性な多孔質無機化合物である粉末のγ−アルミナ(Al23)1500gにスプレードライ法により担持させ、500℃で5時間焼成し、さらに湿式ボールミル粉砕を100rpmで8時間行うことで、Pt担持アルミナスラリーを得た。
【0035】
(アルミナスラリーの調製)
113m2/gのBET式比表面積を有する活性な多孔質無機化合物である粉末のγ−アルミナ(Al23)1500gを、100rpmで8時間湿式ボールミル粉砕することでアルミナスラリーを得た。
【0036】
(スラリーの基材への担持)
セラミックスハニカム基材(縦50mm×横50mm×高さ50mm)を上記により得たアルミナスラリーに浸漬させ、γ−Al23を40g/m2のコート量となるようコートした(コート層厚さ65μm)。このγ−Al23をコートした基材を、乾燥後、さらに上記により得たPt担持アルミナスラリーに浸漬させ、Pt/γ−Al23を10g/m2のコート量となるようコートした。このPt/γ−Al23をコートした基材を110℃で乾燥した後、500℃で5時間焼成し、2層のアルミナコート層のうち最上層のコート層のみにPtを担持した触媒を得た(実施例1)。なお、最上層のコート層厚みは、スラリーのコートムラのため4〜20μmの範囲にあった。
【0037】
(実施例2)
上記のアルミナに代えて、50m2/gのBET式比表面積を有する活性な多孔質無機化合物である粉末のチタニア(TiO2)を用いたことを除き、実施例1と同様の手順にて、2層のチタニアコート層のうち最上層のコート層のみにPtを担持した触媒を得た(実施例2)。
【0038】
(実施例3)
上記の粉末のアルミナに代えて、113m2/gのBET式比表面積を有し、粒径分布が2つのピークを有する活性な多孔質無機化合物であるγ−アルミナ(Al23)を用いたことを除き、実施例1と同様の手順にて、2層のアルミナコート層のうち最上層のコート層のみにPtを担持した触媒を得た(実施例3)。
【0039】
(比較例1)
(Ptコロイド溶液の調製)
Ptコロイド溶液の調製は、実施例1と同様の手順で行った。
【0040】
(スラリーの基材への担持)
水溶液全重量に対して前記Ptコロイド0.07wt.%を含む水溶液4000ccを調製し、113m2/gのBET式比表面積を有するγ−Al23を50g/m2コートしたハニカム基材(縦50mm×横50mm×高さ50mm)を30分浸漬させ、所定量のPtを担持した。この際、水溶液全重量に対するポリビニルアルコールの重量比率は、0.16wt.%であった。このときのpHは2.6であった。担持後の触媒は、110℃で乾燥した後、500℃で5時間焼成し、単層のアルミナコート層にPtを担持した触媒を得た(比較例1)。目視観察状況は、均一に黒く着色していた。
【0041】
(比較例2)
上記のアルミナに代えて、50m2/gのBET式比表面積を有する活性な多孔質無機化合物である粉末のチタニア(TiO2)を用いたことを除き、比較例1と同様の手順にて、単層のチタニアコート層にPtを担持した触媒を得た(比較例2)。
【0042】
次に、上記の実施例1〜3及び比較例1〜2の各触媒について反応率評価試験を以下の条件で行った。反応率評価試験は、各々の実施例、比較例の触媒より評価用触媒を切り出して実施した。結果は、表1に示すとおりである。実施例1〜3の触媒は、比較例1、2の触媒と比べて、活性成分の担持量が同量であるにかかわらず、より優れた触媒活性を得ることができた。実施例3の触媒活性の更なる向上の理由は、粒子のパッキング性が向上し、層厚が若干減少したことから、接ガス面積が向上したものと推測される。なお、揮発性有機化合物としての炭化水素はCH4、C26を除く全ての有機化合物が含まれるが、ここではC24を代表物質として評価した。
【0043】
反応率評価試験の条件は、CO:65ppm、C24:13ppm、NOx:65ppm、O2:15%、CO2:5%、H2O:7%、N2:バランス、GHSV:352,000h-1、272,000h-1又は136,000h-1、ガス量:17Nm3/h又は200NL/h、触媒層温度:200℃、300℃、400℃の各温度で行った。
【0044】
なお、ガスの反応率は下記式にて表される。
・COの反応率(%)=(1−出口CO濃度/入口CO濃度)×100
・C24の反応率(%)=(1−出口C24濃度/入口C24濃度)×100
・NOの反応率(%)=(1−出口NO濃度/入口NO濃度)×100
【0045】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る排ガス処理用触媒の一実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る排ガス処理方法の一実施の形態を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0047】
10 排ガス処理用触媒
11 基材
13 コート層
15 活性成分
20 窒素酸化物除去触媒
30 黒煙除去フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素、一酸化炭素および揮発性有機化合物を含有する排ガスの処理用触媒であって、この触媒は、多孔質無機化合物より成る担体のコート層を有し、このコート層は、複数の層からなり、1種以上の貴金属より成る活性成分が、上記複数の層のうちの上層にリッチに存在し、上記複数の層のうちの下層にプアーに存在する排ガス処理用触媒。
【請求項2】
上記コート層の上層が4〜30μmの厚さであり、上記コート層の下層が20〜100μmの厚さである請求項1に記載の排ガス処理用触媒。
【請求項3】
一酸化窒素、一酸化炭素および揮発性有機化合物を含有する排ガスの処理用触媒を製造する方法であって、
多孔質無機化合物のスラリーを基材表面に塗布した後、乾燥して下層のコート層を形成する工程と、
1種以上の貴金属を担持した多孔質無機化合物のスラリーを上記下層のコート層上に塗布した後、乾燥して、上記触媒の表面となる上層のコート層を形成する工程と
を含む排ガス処理用触媒の製造方法。
【請求項4】
上記多孔質無機化合物として、ピークが複数ある粒径分布を有する集合体を用いる請求項3に記載の排ガス処理用触媒の製造方法。
【請求項5】
上記上層のコート層の形成工程において、上記乾燥を行った後、焼成処理を行う請求項3又は4に記載の排ガス処理用触媒の製造方法。
【請求項6】
上記下層のコート層の形成工程において、上記多孔質無機化合物のスラリーとして1種以上の貴金属を担持した多孔質無機化合物のスラリーを用い、上記下層のコート層の形成工程における上記貴金属の担持量が、上記上層のコート層の形成工程における上記貴金属の担持量よりも少ない量である請求項3〜5のいずれか一項に記載の排ガス処理用触媒の製造方法。
【請求項7】
上記下層のコート層の形成工程において、上記多孔質無機化合物のスラリーとして1種以上の貴金属を担持した多孔質無機化合物のスラリーを用い、上記下層のコート層の形成工程における上記貴金属の担持量が0.3〜1.5g/Lであり、上記上層のコート層の形成工程における上記貴金属の担持量が0.3〜1.5g/Lである請求項3〜6のいずれか一項に記載の排ガス処理用触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の排ガス処理触媒を用いて、排ガス中の一酸化窒素、炭素及び炭素化合物を処理する排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−188542(P2008−188542A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26581(P2007−26581)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】