説明

排ガス処理装置

【課題】正逆回転が可能なラチェット機構を攪拌装置に備えた排ガス処理装置を提供すること。
【解決手段】担体を充填した担体層2に排気ガスを導いて処理するとともに、担体層2を攪拌羽根3により攪拌する攪拌装置を設けた排ガス処理装置において、ラチェット歯車4と、このラチェット歯車4に噛合するラチェット爪5を備えた爪付きアーム6とを同軸かつ個別に回転可能に設け、ラチェット歯車4と爪付きアーム6の一方を攪拌羽根3の駆動軸7に接続するとともに、ラチェット歯車4と爪付きアーム6のもう一方をシリンダ8のロッド81に揺動可能に接続したラチェット機構を設け、このラチェット機構を駆動軸7に回転方向を違えて1対設置するとともに、各ラチェット機構のラチェット爪5をラチェット歯車4から離脱させる離脱手段9を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事業所等から排出されるガスを処理する排ガス処理装置に関し、特に、担体層に充填した担体を、簡潔な装置により攪拌することができる排ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
事業所等から排出される有機性ガス等を処理する方法のひとつとして、担体吸着法がある。担体吸着法では、例えば数センチメートル角のポリウレタン製の担体を多数充填した担体層に処理対象ガスを通過させ、ガス中の有機成分などを吸着・除去させる。
【0003】
担体層には、吸着・除去性能を向上させるために、散水したり微生物を付加することがあり、特にその場合には担体層に充填した担体が目詰まりあるいは圧密し、処理性能が悪化する。
【0004】
これを防ぐために、定期的に担体層を攪拌し担体をほぐす必要があり、本件出願人は、先に、ラチェット機構を利用して攪拌羽根を回転させるようにした排ガス処理装置を提案している(特願2008−056150参照)。
【0005】
しかしながら、この排ガス処理装置では、駆動軸及び攪拌羽根は一方向にしか回転することができず、攪拌ムラが生じたり、攪拌羽根が担体を噛みこんだ場合に逆回転で取り外すといったことができないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の排ガス処理装置が有する問題点に鑑み、正逆回転が可能なラチェット機構を攪拌装置に備えた排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の排ガス処理装置は、担体を充填した担体層に排気ガスを導いて処理するとともに、該担体層を攪拌羽根により攪拌する攪拌装置を設けた排ガス処理装置において、ラチェット歯車と、該ラチェット歯車に噛合するラチェット爪を備えた爪付きアームとを同軸かつ個別に回転可能に設け、ラチェット歯車と爪付きアームの一方を攪拌羽根の駆動軸に接続するとともに、ラチェット歯車と爪付きアームのもう一方をシリンダのロッドに揺動可能に接続したラチェット機構を設け、該ラチェット機構を駆動軸に回転方向を違えて1対設置するとともに、各ラチェット機構のラチェット爪をラチェット歯車から離脱させる離脱手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、攪拌羽根の駆動軸に爪付きアームを接続するとともに、ラチェット歯車にクランクシャフトを介してシリンダのロッドを接続することができる。
【0009】
また、攪拌羽根の駆動軸を複数設けるとともに、各駆動軸のクランクシャフトをリンクロッドで連結することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の排ガス処理装置によれば、担体を充填した担体層に排気ガスを導いて処理するとともに、該担体層を攪拌羽根により攪拌する攪拌装置を設けた排ガス処理装置において、ラチェット歯車と、該ラチェット歯車に噛合するラチェット爪を備えた爪付きアームとを同軸かつ個別に回転可能に設け、ラチェット歯車と爪付きアームの一方を攪拌羽根の駆動軸に接続するとともに、ラチェット歯車と爪付きアームのもう一方をシリンダのロッドに揺動可能に接続したラチェット機構を設け、該ラチェット機構を駆動軸に回転方向を違えて1対設置するとともに、各ラチェット機構のラチェット爪をラチェット歯車から離脱させる離脱手段を設けることから、一方のラチェット機構のラチェット爪をラチェット歯車から離脱させた状態でシリンダのロッドを伸縮させることにより、攪拌羽根の駆動軸を大きなトルクで間欠的に低速回転させるとともに、離脱させるラチェット爪をもう一方のラチェット機構に切り替えることにより、攪拌羽根の駆動軸を逆回転させることができる。
これにより、従来の担体層の攪拌ムラを解消するとともに、攪拌羽根が担体を噛みこんだ場合に逆回転で容易に取り外すことができる。
【0011】
また、攪拌羽根の駆動軸に爪付きアームを接続するとともに、ラチェット歯車にクランクシャフトを介してシリンダのロッドを接続することにより、シリンダでラチェット歯車を揺動させるとともに、この揺動により爪付きアームを間欠的に回転させ、攪拌羽根の駆動軸を大きなトルクで間欠的に低速回転させることができる。
【0012】
また、攪拌羽根の駆動軸を複数設けるとともに、各駆動軸のクランクシャフトをリンクロッドで連結することにより、1本のシリンダで複数の駆動軸を回転させることができ、攪拌装置の機構と制御を簡略にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の排ガス処理装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1〜図5に、本発明の排ガス処理装置の一実施例を示す。
塗装工場等から排出された排気ガスは、排気ファンによって捕集され、排ガス処理装置の処理槽1へと導かれる。
処理槽1の内部には、微生物を付着させた担体を充填した担体層2が設けられ、この担体層2に排気ガスを導いて処理するとともに、処理槽1には、担体層2を攪拌羽根3により攪拌する攪拌装置が設けられている。
【0015】
この攪拌装置は、ラチェット歯車4と、このラチェット歯車4に噛合するラチェット爪5を備えた爪付きアーム6とを同軸かつ個別に回転可能に設け、ラチェット歯車4と爪付きアーム6の一方を攪拌羽根3の駆動軸7に接続するとともに、ラチェット歯車4と爪付きアーム6のもう一方をシリンダ8のロッド81に揺動可能に接続している。
本実施例では、攪拌羽根3の駆動軸7に爪付きアーム6を接続するとともに、ラチェット歯車4にクランクシャフト12を介してシリンダ8のロッド81を接続している。
そして、この攪拌装置は、上記ラチェット機構を駆動軸7に回転方向を違えて表裏1対設置するとともに、各ラチェット機構のラチェット爪5をラチェット歯車4から離脱させる離脱手段としてのソレノイド9を設けている。
【0016】
表側のラチェット機構は、図1に示すように、駆動軸7は爪付きアーム6と一体に設けられており、駆動軸7の上部は軸受10aに、下部は軸受10bにそれぞれ回転可能に支持されている。
爪付きアーム6のラチェット爪5は、ピン11により揺動可能に枢支されており、ラチェット歯車4に噛合する方向に付勢されている。
また、ラチェット歯車4とクランクシャフト12は一体に設けられており、軸受10aを介して、爪付きアーム6と同軸でかつ個別に回転可能に支持されている。
【0017】
また、シリンダ8のロッド81とクランクシャフト12は、ピン13を介して連結されている。
シリンダ8のロッド81が伸縮し、このロッド81が伸びるときにはラチェット歯車4が時計回りに回転し、ラチェット爪5が噛合するため、爪付きアーム6も時計回りに回転する。
また、シリンダ8のロッド81が縮むときには、ラチェット歯車4が反時計回りに回転するが、ラチェット爪5にラチェット歯車4の歯がかからないため、爪付きアーム6は回転しない。
このラチェットの運動を繰り返すことにより、爪付きアーム6に接続された駆動軸7が間欠的に回転し続け、もって攪拌羽根3が担体層2内を攪拌することができる。
【0018】
これに対し、裏側のラチェット機構は、図2に示すように、爪付きアーム6が表側と共用されており、ラチェット爪5は、爪付きアーム6の裏側に設けられ、ラチェット歯車4に噛合する方向に付勢されている。
この場合、裏側のラチェット機構では、ラチェット歯車4とラチェット爪5の噛み合う回転方向が表側のラチェット機構と逆に設けられている。
シリンダ8のロッド81が伸縮し、このロッド81が伸びるときにはラチェット歯車4が反時計回りに回転し、ラチェット爪5が噛合するため、爪付きアーム6も反時計回りに回転し、爪付きアーム6に接続された駆動軸7が反時計回りに回転する。
【0019】
なお、本実施例では、シリンダ8は表裏1対のラチェット機構ごとに設けているが、1本のシリンダ8と1本のクランクシャフト12により2つのラチェット歯車4を回転させるようにすることもできる。
【0020】
一方、ソレノイド9は、各ラチェット機構のラチェット爪5をラチェット歯車4から離脱させる離脱手段として設けられている。
図3に示すように、ソレノイド9は、そのプランジャ91が伸長することでラチェット爪5の後部を押圧し、ラチェット爪5の先端部をラチェット歯車4の歯にかからない状態に浮かせることにより、ラチェット爪5をラチェット歯車4から離脱させる。
すなわち、一方のラチェット機構を作動させるときは、他方のラチェット機構が空転するように、このソレノイド9によってラチェット爪5をラチェット歯車4から離脱させるようにする。
【0021】
なお、このようなラチェット爪5の離脱手段としては、ソレノイド9以外に油圧アクチュエータなども利用することができる。
また、プランジャ91が押し出されることによってラチェット爪5が離脱する機構を示したが、逆にプランジャ91が押し出されることでラチェット爪5とラチェット歯車4が噛み合う機構を利用することもできる。
【0022】
ちなみに、駆動軸7を時計回りに回転させる場合には、図1に示す表側のラチェット機構において、プランジャ91を引き込んだ状態とし、ラチェット歯車4と爪付きアーム6の歯合によって駆動軸7が時計回りに回転させる。
その一方で、図2に示す裏側のラチェット機構おいて、プランジャ91を押し出した状態とし、ラチェット歯車4とラチェット爪5は噛み合わない空転状態とし、上記駆動軸7の回転に影響を与えず、また影響を受けることがないようにする。
【0023】
逆に、駆動軸7を反時計回りに回転させる場合には、図2に示す裏側のラチェット機構では、プランジャ91を引き込んだ状態とし、ラチェット歯車と爪付きアーム6の歯合によって駆動軸7が反時計回りに回転させることができる。
その一方で、表側のラチェット機構おいては、図3に示すように、プランジャ91を押し出した状態とし、ラチェット歯車4とラチェット爪5は噛み合わない空転状態とし、上記駆動軸7の回転に影響を与えず、またシリンダ8への影響もないようにする。
【0024】
他方、本実施例の排ガス処理装置では、図4〜図5に示すように、攪拌羽根3の駆動軸7を複数設けるとともに、各駆動軸7のクランクシャフト12をリンクロッド14で連結し、1本のシリンダ8で複数の駆動軸7を回転させるようにしている。
このように、複数の駆動軸7のクランクシャフト12をリンクロッド14で連結することにより、1本のシリンダ8で複数の駆動軸7を回転させることができ、攪拌装置の機構と制御を簡略にすることができる。
【0025】
かくして、本実施例の排ガス処理装置は、担体を充填した担体層2に排気ガスを導いて処理するとともに、該担体層2を攪拌羽根3により攪拌する攪拌装置を設けた排ガス処理装置において、ラチェット歯車4と、該ラチェット歯車4に噛合するラチェット爪5を備えた爪付きアーム6とを同軸かつ個別に回転可能に設け、ラチェット歯車4と爪付きアーム6の一方を攪拌羽根3の駆動軸7に接続するとともに、ラチェット歯車4と爪付きアーム6のもう一方をシリンダ8のロッド81に揺動可能に接続したラチェット機構を設け、該ラチェット機構を駆動軸7に回転方向を違えて1対設置するとともに、各ラチェット機構のラチェット爪5をラチェット歯車4から離脱させる離脱手段を設けることから、一方のラチェット機構のラチェット爪5をラチェット歯車4から離脱させた状態でシリンダ8のロッド81を伸縮させることにより、攪拌羽根3の駆動軸7を大きなトルクで間欠的に低速回転させるとともに、離脱させるラチェット爪5をもう一方のラチェット機構に切り替えることにより、攪拌羽根3の駆動軸7を逆回転させることができる。
これにより、従来の担体層2の攪拌ムラを解消するとともに、攪拌羽根3が担体を噛みこんだ場合に逆回転で容易に取り外すことができる。
【0026】
また、攪拌羽根3の駆動軸7に爪付きアーム6を接続するとともに、ラチェット歯車4にクランクシャフト12を介してシリンダ8のロッド81を接続することにより、シリンダ8でラチェット歯車4を揺動させるとともに、この揺動により爪付きアーム6を間欠的に回転させ、攪拌羽根3の駆動軸7を大きなトルクで間欠的に低速回転させることができる。
【0027】
また、攪拌羽根3の駆動軸7を複数設けるとともに、各駆動軸7のクランクシャフト12をリンクロッド14で連結することにより、1本のシリンダ8で複数の駆動軸7を回転させることができ、攪拌装置の機構と制御を簡略にすることができる。
【0028】
以上、本発明の排ガス処理装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【0029】
例えば、ラチェット歯車4を攪拌羽根3の駆動軸7に接続するとともに、爪付きアーム6にシリンダ8のロッド81を接続して揺動させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の排ガス処理装置は、攪拌装置に電動機や減速機を不要にし、簡略な機構で攪拌羽根の駆動軸を正逆回転させることから、従来の攪拌ムラを解消するとともに、攪拌羽根が担体を噛みこんだ場合に逆回転で取り外すことができ、製造コストを低減した排ガス処理装置として広く好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の排ガス処理装置の一実施例を示す表側ラチェット機構の正面図である。
【図2】同裏側ラチェット機構の正面図である。
【図3】表側ラチェット機構のラチェット爪を離脱させた状態を示す正面図である。
【図4】同排ガス処理装置を示す断面図である。
【図5】クランクシャフトをリンクロッドで連結した状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 処理槽
2 担体層
3 攪拌羽根
4 ラチェット歯車
5 ラチェット爪
6 爪付きアーム
7 駆動軸
8 シリンダ
81 ロッド
9 ソレノイド(離脱手段)
91 プランジャ
10 軸受
11 ピン
12 クランクシャフト
13 ピン
14 リンクロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体を充填した担体層に排気ガスを導いて処理するとともに、該担体層を攪拌羽根により攪拌する攪拌装置を設けた排ガス処理装置において、ラチェット歯車と、該ラチェット歯車に噛合するラチェット爪を備えた爪付きアームとを同軸かつ個別に回転可能に設け、ラチェット歯車と爪付きアームの一方を攪拌羽根の駆動軸に接続するとともに、ラチェット歯車と爪付きアームのもう一方をシリンダのロッドに揺動可能に接続したラチェット機構を設け、該ラチェット機構を駆動軸に回転方向を違えて1対設置するとともに、各ラチェット機構のラチェット爪をラチェット歯車から離脱させる離脱手段を設けたことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
攪拌羽根の駆動軸に爪付きアームを接続するとともに、ラチェット歯車にクランクシャフトを介してシリンダのロッドを接続したことを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
攪拌羽根の駆動軸を複数設けるとともに、各駆動軸のクランクシャフトをリンクロッドで連結したことを特徴とする請求項2記載の排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−262097(P2009−262097A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117066(P2008−117066)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】