排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒
【課題】硫黄被毒を低減し且つ高い触媒性能を与え得る排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体からなる排ガス浄化用触媒担体および前記の排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒。
【解決手段】θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体からなる排ガス浄化用触媒担体および前記の排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒に関し、さらに詳しくは特定のアルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体からなる耐久後においても硫黄(S)被毒を低減して高いNOX浄化性能を与え得る排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガス中には、HC、CO及びNOXが含まれており、これらの物質は排ガス浄化用触媒によって浄化されてから大気中に放出されている。ここで用いられる排ガス浄化用触媒の代表的なものとしては、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)などの多孔質酸化物担体に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)などの貴金属を胆持した三元触媒が広く用いられている。
【0003】
この三元触媒は、排ガス中のHC及びCOを酸化して浄化するとともに、NOXを還元して浄化するものであり、理論空燃比近傍で燃焼されたストイキ雰囲気の排ガスにおいて最も高い効果が発現される。
特に、近年は、燃費を向上させることが求められ、高温でFC回数を増やすなど、排ガス浄化用触媒にとっては、高温でA/F変動に基く急激な雰囲気変動に晒される機会が増えている。こうした急激な雰囲気変動は、触媒劣化を大幅に促進する。
【0004】
また、燃料、例えばガソリンや灯油に含有される硫黄成分の低減化が進められているが完全に硫黄成分を除去することは不可能であり、少量ではあるが燃料中への硫黄成分の含有は避けられず、この燃料中の硫黄成分により排ガス浄化用触媒の性能低下が生じる。
そこで、このような様々な条件下においても触媒性能を維持し得る排ガス浄化用触媒の開発が進められている。
【0005】
例えば、特許文献1には、θ−アルミナ粒子の表面に触媒金属超微粒子を焼成により担持させた触媒粒子から構成される排ガス浄化用触媒が記載されている。
また、特許文献2には、ZrO2及びTiO2の少なくとも一方からなる酸性酸化物とAl2O3とが一次粒子レベルで混在した複合酸化物にリンが添加されてなる触媒用担体、およびこの触媒用担体に貴金属を担持してなるNO酸化触媒が記載されている。そして、担体の焼成温度は900℃未満が適当であること、具体例としてはAl、Zr、TiおよびP成分を含みZr/(Zr+Ti)が約60モル%である沈殿物を800℃で焼成して担体粉末を得た例が示されており、さらに段落0023にはジルコニア:チタニアがモル比で70:30より多くなる(つまり、ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)がモル比で70モル%より多いと)、担体の耐熱性が低下することで耐久性が低下するため好ましくないことが記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、Al2O3−ZrO2−TiO2系複合酸化物よりなり、ZrO2及びTiO2の少なくとも一部がZrO2−TiO2固溶体となっている触媒担体およびこの触媒担体に貴金属とNOX吸蔵材と担持してなる触媒が記載されている。そして、担体の焼成温度は900℃未満が適当であること、具体例としてはAl、ZrおよびTi成分を含みZr/(Zr+Ti)が70モル%である沈殿物を800℃で焼成して担体粉末を調製した例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−316049号公報
【特許文献2】特開2004−167354号公報
【特許文献3】特開2007−229715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの特許文献に記載された排ガス浄化用触媒は、耐久後の触媒性能が十分でなくさらに高い触媒性能を与え得る排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒求められている。
従って、本発明の目的は、硫黄被毒を低減し且つ高い触媒性能を与え得る排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体からなる排ガス浄化用触媒担体に関する。
また、本発明は前記の排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒に関する。
本発明において、ジルコニア−チタニア固溶体とは、後述の実施例の欄に詳述される測定法により得られたX線回折図において2θ=約25°に明確なピークを有しないジルコニア−チタニア固溶体を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硫黄被毒しにくく耐久後にも高い触媒性能を与え得る排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、公知のγ−アルミナとジルコニア−チタニア化合物系排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒の概念図である。
【図2】図2は、本発明の1実施態様の排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒の概念図である。
【図3】図3は、公知の排ガス浄化用触媒担体におけるジルコニア−チタニア化合物のX線回折図である。
【図4】図4は、本発明の1実施態様の排ガス浄化用触媒担体におけるものと同じ組成のジルコニア−チタニア固溶体のX線回折図である。
【図5】図5は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒のS被毒を含む耐久後のNOX浄化率と排ガス浄化用触媒担体中のZr/(Zr+Ti)を比較して示すグラフである。
【図6】図6は、アルミナの種類を変えたPd/アルミナの活性を比較して示すグラフである。
【図7】図7は、アルミナの種類を変えたPd/アルミナのS蓄積量を比較して示すグラフである。
【0012】
【図8】図8は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒の耐久処理・S(硫黄)被毒処理の処理パターンを示す図である。
【図9】図9は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒のS被毒処理後の活性評価パターンを示す図である。
【図10】図10は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒の触媒活性を評価するための実験模式図である。
【図11】図11は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒の初期品のNOX浄化率を比較して示すグラフである。
【図12】図12は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒のS被毒を含む耐久後のNOX浄化率を比較して示すグラフである。
【図13】図13は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒にさらにセリア化合物を複合化した排ガス浄化用触媒の酸素吸蔵放出能を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体からなり、特に前記ジルコニア−チタニア固溶体におけるジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で70モル%より大で、100モル%未満である排ガス浄化用触媒担体によって、S被毒しにくく耐久後にも高い触媒性能を有する排ガス浄化用触媒を与える得る排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いたS被毒しにくく耐久後にも高い触媒性能を有する排ガス浄化用触媒が得られる。
【0014】
以下、本発明について、図1〜7を参照して説明する。
図1に示すように、従来公知のγ−アルミナ(図中、γ−Al2O3で表示)とジルコニア(図中、Zrで表示)−チタニア(図中、Tiで表示)の化合物系排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒は、多くのチタニアを含んでいる。そして、ジルコニアとチタニアとは固溶体化してなく、むしろ図3のX線回折図における2θ=約25°のピークを有するジルコニア−チタニア化合物(ZrTiO4と標記されることもある。)を形成していると考えられ、仮に固溶体を含んでいるとしてもその割合は一部に限られると考えられる。また、触媒成分である貴金属は担体中の任意の成分、例えばγ−アルミナ、ジルコニア−チタニア化合物、チタニアに(図1では、γ−Al2O3およびTiに担持された状態で示してある。)担持され得る。
【0015】
これに対して、本発明の1実施態様の排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒は、図2に示すように、θ−アルミナ(図中、θ−Al2O3で表示)とジルコニア−チタニア固溶体(図中、ZTで表示)との複合体に触媒成分である貴金属が担持されている。そして、本発明において、ジルコニアとチタニアとは、チタニアの全量がジルコニアに固溶化していると考えられ、図4のX線回折図における2θ=約25°のピークを有していない。また、触媒成分である貴金属は担体中の任意の成分、例えばθ−アルミナ、ジルコニア−チタニア固溶体に担持され得る。
【0016】
本発明におけるジルコニア−チタニア固溶体を得る条件に関して、ジルコニアとチタニアとがジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合としてモル比で70モル%より大であり、且つ焼成温度(沈殿物を熟成後に焼成する温度)が700℃以上であれば、図4に示すように、チタニアの全量がジルコニアに固溶化して、図3に示すようなX線回折図における2θ=約25°のピークを有しないジルコニア−チタニア固溶体が得られることが理解される。
従って、言い換えれば、本発明におけるジルコニア−チタニア固溶体とは、チタニアの全量がジルコニアに固溶化して、そのX線回折図において2θ=約25°のピークを有しないジルコニアとチタニアとの固溶体であるといえる。
【0017】
そして、従来公知のγ−アルミナとジルコニア−チタニアの化合物を含む排ガス浄化用触媒は、図5に示すように、担体中のジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で70モル%より大であると後述の実施例の欄に詳述される排ガス浄化用触媒のS被毒処理および耐久処理後のNOX浄化率が約80〜約50%であり前記モル比が70%の場合と比べて大幅に低下している。これに対して、本発明の1実施態様のθ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体を用いた排ガス浄化用触媒は、図5に示すように、ジルコニア−チタニア固溶体におけるジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で70モル%より大で100モル%未満、特に75〜90モル%の範囲である場合、前記のS被毒処理および耐久処理後のNOX浄化率が約80%より大〜約90%と良好な硫黄被毒の低減と高い触媒性能を示す。
【0018】
本発明のθ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体を含む排ガス浄化用触媒が従来公知の排ガス浄化用触媒と比べてS被毒処理および耐久処理後にS被毒の低減と高い触媒性能を示す理論的な解明はされていないが、アルミナがγ型からθ型になることにより図6に示すように比表面積の低下が起り難く高浄化率が維持され、図7に示すようにS蓄積低減効果が得られ、S被毒しにくいが耐熱性低下の原因となり得るチタニアがジルコニアに固溶化することによりチタニアのシンタリングが抑制されることによると考えられる。
【0019】
本願発明の排ガス浄化用触媒担体は、θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体として得ることができる。
そして、前記θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体は、θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体とを別々に製造して両成分をミリングして混合粉末を得る方法によって、又は、例えば、アルミニウム塩とジルコニウム塩とチタニウム塩とを含み、ジルコニウム塩とチタニウム塩とが後続の焼成工程によってジルコニア−チタニア固溶体を与え得る組成比、好適にはジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で70モル%より大で、100モル%未満、特に75〜90モル%の範囲で含む水溶液から、pH調整剤によって沈殿物を生成させ、θ−アルミナの前駆体、例えばバイヤライト型水和アルミナ(以下、バイヤライトと略称する。)を与え得る熟成条件、例えば200℃以下の温度で乾燥(熟成)した後、θ−アルミナを与え得てα−アルミナを与え得ないる焼成条件、例えば900℃以上1200℃未満の温度、特に900〜1100℃で1〜10時間の範囲、例えば3〜10時間程度焼成することによって得ることができる。前記の焼成温度が900℃未満、例えば800℃での焼成では、バイヤライトを形成してもθ−アルミナは得られず、γ−アルミナが生成する。また、1200℃より高い温度で焼成するとα−アルミナが形成される。
【0020】
本発明の排ガス浄化用触媒は前記の排ガス浄化用触媒担体に触媒活性成分、例えば貴金属を担持させたものである。
前記の触媒活性成分としては、貴金属および遷移金属のうちの少なくとも1種の金属が挙げられる。貴金属として、Pt、Pd、Rh、Irからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素が挙げられる。触媒活性成分として遷移金属を用いる場合には、例えばNiなどが挙げられる。
【0021】
本願発明の排ガス浄化用触媒は、前記の触媒を前記の担体に担持させたものが必須の成分であり、任意的に他の機能成分を含み得る。
このような他の機能成分としては、酸素吸放出材、例えばセリア複合酸化物が挙げられる。
前記のセリア複合酸化物としては、Ce、ZrおよびOの3元素からなる固溶体の2次粒子、および前記3元素に加えて希土類元素、例えばY、Ndを加えた4元素以上の元素からなる固溶体の2次粒子が挙げられる。前記のY、Ndなどの希土類元素の量は、CeとZrとの合計1原子に対して0.2原子以下、例えば0.01〜0.2原子、特に0.025〜0.15原子の範囲であり得る。
【0022】
また、本発明の実施態様の排ガス浄化用触媒は、ハニカム等の触媒基材上に塗布等により他の成分と組み合わせて担持することによって得られる。前記の触媒基材として用い得るハニカムは、コージェライトなどのセラミックス材料やステンレス鋼などにより形成され得る。また、本発明の排ガス浄化用触媒は任意の形状に成形して用いることもできる。
【0023】
前記の他の成分としては、NOX吸蔵材が挙げられる。NOX吸蔵材はNOXの吸蔵および放出を行うもので、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素のうちの少なくとも1種以上の元素を含み得る。
前記の触媒活性成分を担持させた酸素吸放出材上に、さらに前記のNOX吸蔵材、例えば、Ba、K、Liを担持させ得る。又は、酸素吸放出材とは別の機能部材にNOX吸蔵材を担持させて酸素吸放出材と組み合わせて用い得る。
前記の触媒活性成分およびNOX吸蔵材を酸素吸放出材又は酸素吸放出材とは別の機能部材に担持することによって、本発明の排ガス浄化用触媒が得られる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例を比較例とともに示す。
以下の実施例は単に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
以下の各例において、複合体、排ガス浄化用触媒担体および排ガス浄化用触媒の特性および触媒性能評価は以下に示す処理法および以下に示す測定法によって行った。なお、処理法および測定法は以下に示す方法に限定されず当業者が同等と考える方法によって、同様に行い得ることは当然である。
【0025】
1.X線回折図
試料についてX線回折測定を行った。
測定装置:X線回折装置(RAD−B)理学電機(株)
2.試料の耐久処理・S被毒処理
以下に示すガス組成および図8に示す昇温・降温の処理パターンでペレット3gの耐久処理およびS被毒処理(初期品:図8中のA、耐久品:図8中のB)を行った。
S被毒処理ガス濃度[%]
(1)NO:0.1、CO:0.65、C3H6:0.1、CO2:10、O2:0. 725、H2O:3、SO2:−、N2:残部
(2)NO:0.1、CO:0.65、C3H6:0.1、CO2:10、O2:0. 725、H2O:3、SO2:0.05、N2:残部
【0026】
3.S蓄積量測定
S被毒処理を行った試料中のS蓄積量をC-S(炭素・硫黄分析装置)にて測定を行った。
C-S計:(株)堀場製作所製
4.S被毒後の触媒活性評価
S被毒処理を行った触媒について、下記条件下、図9に示す昇温・温度保持・降温の活性評価パターンで、ストイキ活性評価を図10に示すモデルガス装置にて行った。
試料:各3g
ガス流量:15L/分
触媒活性評価ガス濃度[%](ストイキ)
NO:0.15、CO:0.74、C3H6:0.1、CO2:10.2、O2:0.75、H2O:3、N2:残部
【0027】
参考例1
γ−アルミナ(担体)に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、初期NOX浄化率および耐久後S蓄積量を評価した。結果を、他の結果と併せて図6および図7に示す。
【0028】
参考例2
θ−アルミナ(担体)に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、初期NOX浄化率および耐久後S蓄積量を評価した。結果を、他の結果と併せて図6、図7、図11および図12に示す。
【0029】
図6から、γ−アルミナとθ−アルミナとは初期性能は同等であるが、耐久後はθ−アルミナの方が高浄化率を示すことが理解される。これは、θ−アルミナでは比表面積の低下が起こり難く、貴金属がシンタリングしにくいことによると考えられる。
図7から、γ−アルミナよりもθ−アルミナの方がSが蓄積し難いことが理解される。
【0030】
実施例1
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となる割合でチタニウム塩(四塩化チタン)およびジルコニウム塩(オキシ硝酸ジルコニウム)を含む原料水溶液を調製した。この溶液を攪拌しながらpH調整剤(アンモニア水)を添加して沈殿を生成させ、ろ過・洗浄後、120℃で乾燥後、900℃で5時間焼成し、粉末を得た。この粉末に、θ−アルミナを全体の50wt%となるようリミングし、混合粉末を得た。この混合粉末に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図11、図12に示す。
【0031】
別途に、θ−アルミナを含まない他は実施例1と同様にしてジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となる割合の沈殿物を生成させ、焼成温度を300℃、500℃、700℃、800℃と変えて、ペレットを得た。
このペレットについて、X線回折測定を行った。結果をまとめて図4に示す。
【0032】
実施例2
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となり、θ−アルミナを担体全体の50wt%となる割合で、チタニウム塩(四塩化チタン)、ジルコニウム塩(オキシ硝酸ジルコニウム)およびアルミニウム塩(硝酸アルミニウム)を含む原料水溶液を調製した。この溶液を攪拌しながらpH調整剤(アンモニア水)を添加して沈殿を生成させ、ろ過・洗浄後、得られた沈殿を80℃以下の温度で熟成してアルミナの前駆体であるバイヤライトを生成させた後、900℃で5時間焼成し、粉末を得た。この粉末に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図5、図11、図12に示す。
【0033】
実施例3
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で80モル%となり、θ−アルミナを全体の50wt%となる割合に変えた他は実施例2と同様にして、粉末を得た。この粉末に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図5に示す。
【0034】
比較例1
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となり、γ−アルミナを全体の50wt%となる割合で、チタニウム塩(四塩化チタン)、ジルコニウム塩(オキシ硝酸ジルコニウム)およびアルミニウム塩(硝酸アルミニウム)を含む原料水溶液を調製した。この溶液を攪拌しながらpH調整剤(アンモニア水)を添加して沈殿を生成させ、ろ過・洗浄後、得られた沈殿を120℃で乾燥後、800℃で5時間焼成し、粉末を得た。この粉末に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図5、図11、図12に示す。
【0035】
別途に、γ−アルミナを含まない他は比較例1と同様にしてジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となる割合の沈殿物を生成させ、焼成温度を300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃と変えて焼成し、ペレットを作製した。
このペレットについて、X線回折測定を行った。結果をまとめて図3に示す。
【0036】
比較例2
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となり、θ−アルミナが全体の50wt%となる割合で、θ−アルミナ、ジルコニアおよびチタニアの各粉末をミリングし、混合粉末を得た。
この混合粉末に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、初期NOX浄化率および耐久後S蓄積量を評価した。結果を、他の結果と併せて図11および図12に示す。
【0037】
実施例4
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で0モル%、10モル%、50モル%、60モル%、70モル%又は100モル%に変えた他は実施例1と同様にして粉末を得た。この粉末を用いた他は実施例2と同様にして、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図5に示す。
【0038】
比較例3
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で0モル%、10モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%又は100モル%に変えた他は比較例1と同様にして粉末を得た。この粉末を用いた他は比較例1と同様にして、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図5に示す。
【0039】
図5〜図12から、従来公知のγ−アルミナとジルコニア−チタニア化合物とを含み図3のX線回折図において2θ=約25°に明白なピークを有する担体から得られた比較例1の排ガス浄化用触媒は、図5に示すように、S被毒処理および耐久処理後のNOX浄化率が低く、ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)のモル比が70%である触媒と比べても大幅に低下している。これに対して、実施例2および実施例3のθ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体とからなり図3のX線回折図において2θ=約25°にピークを有しない複合体から得られた排ガス浄化用触媒は、図5および図12に示すように、S被毒処理および耐久処理後のNOX浄化率が約80%より大〜約90%と画期的にNOX浄化活性が向上し、良好な硫黄被毒の低減と高い触媒性能を示した。
【0040】
実施例5〜6
実施例1又は実施例2で得られた触媒に、セリア系酸化物(CeO2とZrO2との60:40との割合(質量比)の混合物)と等量で混合して、ペレットを得た。
得られた触媒について、以下の測定法により酸素吸蔵放出能を測定した。
酸素吸蔵放出能測定方法
作製したペレット3gを用いて、マスフローコントローラーにより制御し、総流量20L/分とし、N2バランスで500℃まで昇温した後、O21%/N2バランスを1分間導入する。
O21%/N2バランスを1分間導入した後、N2を30秒間導入し、CO/N2バランスを1分間導入した時のCO2濃度からCO2生成量(割合)を求め、酸素吸蔵放出能を測定する。
得られた結果を、他の結果とまとめて図13に示す。
【0041】
比較例4〜5
比較例1又は比較例2で得られた触媒に、セリア系酸化物(CeO2とZrO2との60:40との割合(質量比)の混合物)と等量で混合して、ペレットを得た。
得られた触媒について、前記と同様にして酸素吸蔵放出能を測定した。
得られた結果を、他の結果とまとめて図13に示す。
【0042】
図13から、実施例5および実施例6で得られた排ガス浄化用触媒は、チタニア固溶化によるセリア系酸化物のチタニア移動抑制効果によると考えられる効果で酸素吸蔵放出能が向上している。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、S成分を含む排ガスを放出する自動車などからの排ガスであってもS被毒耐久性を有し、且つ高いNOX浄化性能を示す排ガス浄化用触媒担体を得ることが可能である。
また、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、安定して排ガス浄化が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒に関し、さらに詳しくは特定のアルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体からなる耐久後においても硫黄(S)被毒を低減して高いNOX浄化性能を与え得る排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガス中には、HC、CO及びNOXが含まれており、これらの物質は排ガス浄化用触媒によって浄化されてから大気中に放出されている。ここで用いられる排ガス浄化用触媒の代表的なものとしては、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)などの多孔質酸化物担体に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)などの貴金属を胆持した三元触媒が広く用いられている。
【0003】
この三元触媒は、排ガス中のHC及びCOを酸化して浄化するとともに、NOXを還元して浄化するものであり、理論空燃比近傍で燃焼されたストイキ雰囲気の排ガスにおいて最も高い効果が発現される。
特に、近年は、燃費を向上させることが求められ、高温でFC回数を増やすなど、排ガス浄化用触媒にとっては、高温でA/F変動に基く急激な雰囲気変動に晒される機会が増えている。こうした急激な雰囲気変動は、触媒劣化を大幅に促進する。
【0004】
また、燃料、例えばガソリンや灯油に含有される硫黄成分の低減化が進められているが完全に硫黄成分を除去することは不可能であり、少量ではあるが燃料中への硫黄成分の含有は避けられず、この燃料中の硫黄成分により排ガス浄化用触媒の性能低下が生じる。
そこで、このような様々な条件下においても触媒性能を維持し得る排ガス浄化用触媒の開発が進められている。
【0005】
例えば、特許文献1には、θ−アルミナ粒子の表面に触媒金属超微粒子を焼成により担持させた触媒粒子から構成される排ガス浄化用触媒が記載されている。
また、特許文献2には、ZrO2及びTiO2の少なくとも一方からなる酸性酸化物とAl2O3とが一次粒子レベルで混在した複合酸化物にリンが添加されてなる触媒用担体、およびこの触媒用担体に貴金属を担持してなるNO酸化触媒が記載されている。そして、担体の焼成温度は900℃未満が適当であること、具体例としてはAl、Zr、TiおよびP成分を含みZr/(Zr+Ti)が約60モル%である沈殿物を800℃で焼成して担体粉末を得た例が示されており、さらに段落0023にはジルコニア:チタニアがモル比で70:30より多くなる(つまり、ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)がモル比で70モル%より多いと)、担体の耐熱性が低下することで耐久性が低下するため好ましくないことが記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、Al2O3−ZrO2−TiO2系複合酸化物よりなり、ZrO2及びTiO2の少なくとも一部がZrO2−TiO2固溶体となっている触媒担体およびこの触媒担体に貴金属とNOX吸蔵材と担持してなる触媒が記載されている。そして、担体の焼成温度は900℃未満が適当であること、具体例としてはAl、ZrおよびTi成分を含みZr/(Zr+Ti)が70モル%である沈殿物を800℃で焼成して担体粉末を調製した例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−316049号公報
【特許文献2】特開2004−167354号公報
【特許文献3】特開2007−229715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの特許文献に記載された排ガス浄化用触媒は、耐久後の触媒性能が十分でなくさらに高い触媒性能を与え得る排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒求められている。
従って、本発明の目的は、硫黄被毒を低減し且つ高い触媒性能を与え得る排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体からなる排ガス浄化用触媒担体に関する。
また、本発明は前記の排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒に関する。
本発明において、ジルコニア−チタニア固溶体とは、後述の実施例の欄に詳述される測定法により得られたX線回折図において2θ=約25°に明確なピークを有しないジルコニア−チタニア固溶体を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硫黄被毒しにくく耐久後にも高い触媒性能を与え得る排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いた排ガス浄化用触媒を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、公知のγ−アルミナとジルコニア−チタニア化合物系排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒の概念図である。
【図2】図2は、本発明の1実施態様の排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒の概念図である。
【図3】図3は、公知の排ガス浄化用触媒担体におけるジルコニア−チタニア化合物のX線回折図である。
【図4】図4は、本発明の1実施態様の排ガス浄化用触媒担体におけるものと同じ組成のジルコニア−チタニア固溶体のX線回折図である。
【図5】図5は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒のS被毒を含む耐久後のNOX浄化率と排ガス浄化用触媒担体中のZr/(Zr+Ti)を比較して示すグラフである。
【図6】図6は、アルミナの種類を変えたPd/アルミナの活性を比較して示すグラフである。
【図7】図7は、アルミナの種類を変えたPd/アルミナのS蓄積量を比較して示すグラフである。
【0012】
【図8】図8は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒の耐久処理・S(硫黄)被毒処理の処理パターンを示す図である。
【図9】図9は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒のS被毒処理後の活性評価パターンを示す図である。
【図10】図10は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒の触媒活性を評価するための実験模式図である。
【図11】図11は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒の初期品のNOX浄化率を比較して示すグラフである。
【図12】図12は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒のS被毒を含む耐久後のNOX浄化率を比較して示すグラフである。
【図13】図13は、実施例および比較例で得られた排ガス浄化用触媒にさらにセリア化合物を複合化した排ガス浄化用触媒の酸素吸蔵放出能を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体からなり、特に前記ジルコニア−チタニア固溶体におけるジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で70モル%より大で、100モル%未満である排ガス浄化用触媒担体によって、S被毒しにくく耐久後にも高い触媒性能を有する排ガス浄化用触媒を与える得る排ガス浄化用触媒担体およびそれを用いたS被毒しにくく耐久後にも高い触媒性能を有する排ガス浄化用触媒が得られる。
【0014】
以下、本発明について、図1〜7を参照して説明する。
図1に示すように、従来公知のγ−アルミナ(図中、γ−Al2O3で表示)とジルコニア(図中、Zrで表示)−チタニア(図中、Tiで表示)の化合物系排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒は、多くのチタニアを含んでいる。そして、ジルコニアとチタニアとは固溶体化してなく、むしろ図3のX線回折図における2θ=約25°のピークを有するジルコニア−チタニア化合物(ZrTiO4と標記されることもある。)を形成していると考えられ、仮に固溶体を含んでいるとしてもその割合は一部に限られると考えられる。また、触媒成分である貴金属は担体中の任意の成分、例えばγ−アルミナ、ジルコニア−チタニア化合物、チタニアに(図1では、γ−Al2O3およびTiに担持された状態で示してある。)担持され得る。
【0015】
これに対して、本発明の1実施態様の排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒は、図2に示すように、θ−アルミナ(図中、θ−Al2O3で表示)とジルコニア−チタニア固溶体(図中、ZTで表示)との複合体に触媒成分である貴金属が担持されている。そして、本発明において、ジルコニアとチタニアとは、チタニアの全量がジルコニアに固溶化していると考えられ、図4のX線回折図における2θ=約25°のピークを有していない。また、触媒成分である貴金属は担体中の任意の成分、例えばθ−アルミナ、ジルコニア−チタニア固溶体に担持され得る。
【0016】
本発明におけるジルコニア−チタニア固溶体を得る条件に関して、ジルコニアとチタニアとがジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合としてモル比で70モル%より大であり、且つ焼成温度(沈殿物を熟成後に焼成する温度)が700℃以上であれば、図4に示すように、チタニアの全量がジルコニアに固溶化して、図3に示すようなX線回折図における2θ=約25°のピークを有しないジルコニア−チタニア固溶体が得られることが理解される。
従って、言い換えれば、本発明におけるジルコニア−チタニア固溶体とは、チタニアの全量がジルコニアに固溶化して、そのX線回折図において2θ=約25°のピークを有しないジルコニアとチタニアとの固溶体であるといえる。
【0017】
そして、従来公知のγ−アルミナとジルコニア−チタニアの化合物を含む排ガス浄化用触媒は、図5に示すように、担体中のジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で70モル%より大であると後述の実施例の欄に詳述される排ガス浄化用触媒のS被毒処理および耐久処理後のNOX浄化率が約80〜約50%であり前記モル比が70%の場合と比べて大幅に低下している。これに対して、本発明の1実施態様のθ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体を用いた排ガス浄化用触媒は、図5に示すように、ジルコニア−チタニア固溶体におけるジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で70モル%より大で100モル%未満、特に75〜90モル%の範囲である場合、前記のS被毒処理および耐久処理後のNOX浄化率が約80%より大〜約90%と良好な硫黄被毒の低減と高い触媒性能を示す。
【0018】
本発明のθ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体を含む排ガス浄化用触媒が従来公知の排ガス浄化用触媒と比べてS被毒処理および耐久処理後にS被毒の低減と高い触媒性能を示す理論的な解明はされていないが、アルミナがγ型からθ型になることにより図6に示すように比表面積の低下が起り難く高浄化率が維持され、図7に示すようにS蓄積低減効果が得られ、S被毒しにくいが耐熱性低下の原因となり得るチタニアがジルコニアに固溶化することによりチタニアのシンタリングが抑制されることによると考えられる。
【0019】
本願発明の排ガス浄化用触媒担体は、θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体として得ることができる。
そして、前記θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体は、θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体とを別々に製造して両成分をミリングして混合粉末を得る方法によって、又は、例えば、アルミニウム塩とジルコニウム塩とチタニウム塩とを含み、ジルコニウム塩とチタニウム塩とが後続の焼成工程によってジルコニア−チタニア固溶体を与え得る組成比、好適にはジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で70モル%より大で、100モル%未満、特に75〜90モル%の範囲で含む水溶液から、pH調整剤によって沈殿物を生成させ、θ−アルミナの前駆体、例えばバイヤライト型水和アルミナ(以下、バイヤライトと略称する。)を与え得る熟成条件、例えば200℃以下の温度で乾燥(熟成)した後、θ−アルミナを与え得てα−アルミナを与え得ないる焼成条件、例えば900℃以上1200℃未満の温度、特に900〜1100℃で1〜10時間の範囲、例えば3〜10時間程度焼成することによって得ることができる。前記の焼成温度が900℃未満、例えば800℃での焼成では、バイヤライトを形成してもθ−アルミナは得られず、γ−アルミナが生成する。また、1200℃より高い温度で焼成するとα−アルミナが形成される。
【0020】
本発明の排ガス浄化用触媒は前記の排ガス浄化用触媒担体に触媒活性成分、例えば貴金属を担持させたものである。
前記の触媒活性成分としては、貴金属および遷移金属のうちの少なくとも1種の金属が挙げられる。貴金属として、Pt、Pd、Rh、Irからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素が挙げられる。触媒活性成分として遷移金属を用いる場合には、例えばNiなどが挙げられる。
【0021】
本願発明の排ガス浄化用触媒は、前記の触媒を前記の担体に担持させたものが必須の成分であり、任意的に他の機能成分を含み得る。
このような他の機能成分としては、酸素吸放出材、例えばセリア複合酸化物が挙げられる。
前記のセリア複合酸化物としては、Ce、ZrおよびOの3元素からなる固溶体の2次粒子、および前記3元素に加えて希土類元素、例えばY、Ndを加えた4元素以上の元素からなる固溶体の2次粒子が挙げられる。前記のY、Ndなどの希土類元素の量は、CeとZrとの合計1原子に対して0.2原子以下、例えば0.01〜0.2原子、特に0.025〜0.15原子の範囲であり得る。
【0022】
また、本発明の実施態様の排ガス浄化用触媒は、ハニカム等の触媒基材上に塗布等により他の成分と組み合わせて担持することによって得られる。前記の触媒基材として用い得るハニカムは、コージェライトなどのセラミックス材料やステンレス鋼などにより形成され得る。また、本発明の排ガス浄化用触媒は任意の形状に成形して用いることもできる。
【0023】
前記の他の成分としては、NOX吸蔵材が挙げられる。NOX吸蔵材はNOXの吸蔵および放出を行うもので、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素のうちの少なくとも1種以上の元素を含み得る。
前記の触媒活性成分を担持させた酸素吸放出材上に、さらに前記のNOX吸蔵材、例えば、Ba、K、Liを担持させ得る。又は、酸素吸放出材とは別の機能部材にNOX吸蔵材を担持させて酸素吸放出材と組み合わせて用い得る。
前記の触媒活性成分およびNOX吸蔵材を酸素吸放出材又は酸素吸放出材とは別の機能部材に担持することによって、本発明の排ガス浄化用触媒が得られる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例を比較例とともに示す。
以下の実施例は単に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
以下の各例において、複合体、排ガス浄化用触媒担体および排ガス浄化用触媒の特性および触媒性能評価は以下に示す処理法および以下に示す測定法によって行った。なお、処理法および測定法は以下に示す方法に限定されず当業者が同等と考える方法によって、同様に行い得ることは当然である。
【0025】
1.X線回折図
試料についてX線回折測定を行った。
測定装置:X線回折装置(RAD−B)理学電機(株)
2.試料の耐久処理・S被毒処理
以下に示すガス組成および図8に示す昇温・降温の処理パターンでペレット3gの耐久処理およびS被毒処理(初期品:図8中のA、耐久品:図8中のB)を行った。
S被毒処理ガス濃度[%]
(1)NO:0.1、CO:0.65、C3H6:0.1、CO2:10、O2:0. 725、H2O:3、SO2:−、N2:残部
(2)NO:0.1、CO:0.65、C3H6:0.1、CO2:10、O2:0. 725、H2O:3、SO2:0.05、N2:残部
【0026】
3.S蓄積量測定
S被毒処理を行った試料中のS蓄積量をC-S(炭素・硫黄分析装置)にて測定を行った。
C-S計:(株)堀場製作所製
4.S被毒後の触媒活性評価
S被毒処理を行った触媒について、下記条件下、図9に示す昇温・温度保持・降温の活性評価パターンで、ストイキ活性評価を図10に示すモデルガス装置にて行った。
試料:各3g
ガス流量:15L/分
触媒活性評価ガス濃度[%](ストイキ)
NO:0.15、CO:0.74、C3H6:0.1、CO2:10.2、O2:0.75、H2O:3、N2:残部
【0027】
参考例1
γ−アルミナ(担体)に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、初期NOX浄化率および耐久後S蓄積量を評価した。結果を、他の結果と併せて図6および図7に示す。
【0028】
参考例2
θ−アルミナ(担体)に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、初期NOX浄化率および耐久後S蓄積量を評価した。結果を、他の結果と併せて図6、図7、図11および図12に示す。
【0029】
図6から、γ−アルミナとθ−アルミナとは初期性能は同等であるが、耐久後はθ−アルミナの方が高浄化率を示すことが理解される。これは、θ−アルミナでは比表面積の低下が起こり難く、貴金属がシンタリングしにくいことによると考えられる。
図7から、γ−アルミナよりもθ−アルミナの方がSが蓄積し難いことが理解される。
【0030】
実施例1
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となる割合でチタニウム塩(四塩化チタン)およびジルコニウム塩(オキシ硝酸ジルコニウム)を含む原料水溶液を調製した。この溶液を攪拌しながらpH調整剤(アンモニア水)を添加して沈殿を生成させ、ろ過・洗浄後、120℃で乾燥後、900℃で5時間焼成し、粉末を得た。この粉末に、θ−アルミナを全体の50wt%となるようリミングし、混合粉末を得た。この混合粉末に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図11、図12に示す。
【0031】
別途に、θ−アルミナを含まない他は実施例1と同様にしてジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となる割合の沈殿物を生成させ、焼成温度を300℃、500℃、700℃、800℃と変えて、ペレットを得た。
このペレットについて、X線回折測定を行った。結果をまとめて図4に示す。
【0032】
実施例2
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となり、θ−アルミナを担体全体の50wt%となる割合で、チタニウム塩(四塩化チタン)、ジルコニウム塩(オキシ硝酸ジルコニウム)およびアルミニウム塩(硝酸アルミニウム)を含む原料水溶液を調製した。この溶液を攪拌しながらpH調整剤(アンモニア水)を添加して沈殿を生成させ、ろ過・洗浄後、得られた沈殿を80℃以下の温度で熟成してアルミナの前駆体であるバイヤライトを生成させた後、900℃で5時間焼成し、粉末を得た。この粉末に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図5、図11、図12に示す。
【0033】
実施例3
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で80モル%となり、θ−アルミナを全体の50wt%となる割合に変えた他は実施例2と同様にして、粉末を得た。この粉末に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図5に示す。
【0034】
比較例1
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となり、γ−アルミナを全体の50wt%となる割合で、チタニウム塩(四塩化チタン)、ジルコニウム塩(オキシ硝酸ジルコニウム)およびアルミニウム塩(硝酸アルミニウム)を含む原料水溶液を調製した。この溶液を攪拌しながらpH調整剤(アンモニア水)を添加して沈殿を生成させ、ろ過・洗浄後、得られた沈殿を120℃で乾燥後、800℃で5時間焼成し、粉末を得た。この粉末に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図5、図11、図12に示す。
【0035】
別途に、γ−アルミナを含まない他は比較例1と同様にしてジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となる割合の沈殿物を生成させ、焼成温度を300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃と変えて焼成し、ペレットを作製した。
このペレットについて、X線回折測定を行った。結果をまとめて図3に示す。
【0036】
比較例2
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で90モル%となり、θ−アルミナが全体の50wt%となる割合で、θ−アルミナ、ジルコニアおよびチタニアの各粉末をミリングし、混合粉末を得た。
この混合粉末に、貴金属としてPd0.5wt%の割合で硝酸Pdを用いて蒸発乾固法により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、初期NOX浄化率および耐久後S蓄積量を評価した。結果を、他の結果と併せて図11および図12に示す。
【0037】
実施例4
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で0モル%、10モル%、50モル%、60モル%、70モル%又は100モル%に変えた他は実施例1と同様にして粉末を得た。この粉末を用いた他は実施例2と同様にして、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図5に示す。
【0038】
比較例3
ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で0モル%、10モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%又は100モル%に変えた他は比較例1と同様にして粉末を得た。この粉末を用いた他は比較例1と同様にして、ペレットを作製した。
得られた排ガス浄化用触媒について、評価を行った。
結果を、他の結果と併せて図5に示す。
【0039】
図5〜図12から、従来公知のγ−アルミナとジルコニア−チタニア化合物とを含み図3のX線回折図において2θ=約25°に明白なピークを有する担体から得られた比較例1の排ガス浄化用触媒は、図5に示すように、S被毒処理および耐久処理後のNOX浄化率が低く、ジルコニア/(ジルコニア+チタニア)のモル比が70%である触媒と比べても大幅に低下している。これに対して、実施例2および実施例3のθ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体とからなり図3のX線回折図において2θ=約25°にピークを有しない複合体から得られた排ガス浄化用触媒は、図5および図12に示すように、S被毒処理および耐久処理後のNOX浄化率が約80%より大〜約90%と画期的にNOX浄化活性が向上し、良好な硫黄被毒の低減と高い触媒性能を示した。
【0040】
実施例5〜6
実施例1又は実施例2で得られた触媒に、セリア系酸化物(CeO2とZrO2との60:40との割合(質量比)の混合物)と等量で混合して、ペレットを得た。
得られた触媒について、以下の測定法により酸素吸蔵放出能を測定した。
酸素吸蔵放出能測定方法
作製したペレット3gを用いて、マスフローコントローラーにより制御し、総流量20L/分とし、N2バランスで500℃まで昇温した後、O21%/N2バランスを1分間導入する。
O21%/N2バランスを1分間導入した後、N2を30秒間導入し、CO/N2バランスを1分間導入した時のCO2濃度からCO2生成量(割合)を求め、酸素吸蔵放出能を測定する。
得られた結果を、他の結果とまとめて図13に示す。
【0041】
比較例4〜5
比較例1又は比較例2で得られた触媒に、セリア系酸化物(CeO2とZrO2との60:40との割合(質量比)の混合物)と等量で混合して、ペレットを得た。
得られた触媒について、前記と同様にして酸素吸蔵放出能を測定した。
得られた結果を、他の結果とまとめて図13に示す。
【0042】
図13から、実施例5および実施例6で得られた排ガス浄化用触媒は、チタニア固溶化によるセリア系酸化物のチタニア移動抑制効果によると考えられる効果で酸素吸蔵放出能が向上している。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、S成分を含む排ガスを放出する自動車などからの排ガスであってもS被毒耐久性を有し、且つ高いNOX浄化性能を示す排ガス浄化用触媒担体を得ることが可能である。
また、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、安定して排ガス浄化が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体からなる排ガス浄化用触媒担体。
【請求項2】
前記ジルコニア−チタニア固溶体におけるジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で70モル%より大で、100モル%未満である請求項1に記載の触媒担体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒。
【請求項1】
θ−アルミナとジルコニア−チタニア固溶体との複合体からなる排ガス浄化用触媒担体。
【請求項2】
前記ジルコニア−チタニア固溶体におけるジルコニア/(ジルコニア+チタニア)の割合がモル比で70モル%より大で、100モル%未満である請求項1に記載の触媒担体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒担体を用いてなる排ガス浄化用触媒。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−136257(P2011−136257A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295928(P2009−295928)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]