説明

排ガス浄化用触媒

【課題】貴金属元素を使用することなく、排ガス浄化性能の向上を図ることができる排ガス浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】排ガス浄化用触媒に、銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとを含有させる。このような排ガス浄化用触媒では、安価で入手可能な銅が活性成分として含まれているため、コスト性に優れる。また、銅が担持された複合酸化物間において、ランタンが添加されているアルミナが障壁となることにより、銅および複合酸化物の粒成長を抑制することができるので、排ガス浄化用触媒の比表面積の低下を抑制することができる。その結果、この排ガス浄化用触媒は、耐久性に優れ、長期にわたって優れた活性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒、詳しくは、内燃機関などから排出される排気ガスを浄化するための排ガス用浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関から排出される排気ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)などが含まれており、これらを浄化するための排ガス浄化用触媒が知られている。
【0003】
これらを浄化するための触媒として、活性成分である貴金属元素(Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)など)が、セリア系複合酸化物、ジルコニア系複合酸化物、ペロブスカイト複合酸化物またはアルミナなどの耐熱性酸化物に、担持または固溶している排ガス浄化用触媒が種々知られている。
【0004】
しかし、貴金属元素は、一般的に高価であるため、排ガス浄化用触媒において、貴金属元素の使用量を削減することが求められている。
【0005】
そこで、貴金属元素に代えて、例えば、遷移金属であるCuが活性成分として、触媒担体(アルミナ)に担持された触媒が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−329369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、近年の環境負荷低減の観点から、排ガス浄化用触媒の浄化性能の向上がますます望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、貴金属元素を使用することなく、排ガス浄化性能の向上を図ることができる排ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の排ガス浄化用触媒は、銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとを含有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の排ガス浄化用触媒では、銅が担持された複合酸化物の平均粒子径、および/または、ランタンが添加されているアルミナの平均粒子径が0.5〜15μmであることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排ガス浄化用触媒では、安価で入手可能な銅が活性成分として含まれているため、コスト性に優れる。
【0012】
また、銅が担持された複合酸化物間において、ランタンが添加されているアルミナが障壁となることにより、銅および複合酸化物の粒成長を抑制することができるので、排ガス浄化用触媒の比表面積の低下を抑制することができる。その結果、本発明の排ガス浄化用触媒は、耐久性に優れ、長期にわたって優れた活性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】Cu担持θアルミナ粉末(粉砕前)のSEM画像を示す。
【図2】実施例1の排ガス浄化用触媒のSEM画像を示す。
【図3】実施例2の排ガス浄化用触媒のSEM画像を示す。
【図4】実施例1、実施例2および比較例1における排ガス浄化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の排ガス浄化用触媒は、銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとを含有している。
【0015】
銅が担持された複合酸化物において、複合酸化物としては、例えば、ペロブスカイト型複合酸化物、スピネル型複合酸化物、ジルコニア系複合酸化物、セリア系複合酸化物、アルミナなどが挙げられる。
【0016】
ペロブスカイト型複合酸化物は、下記一般式(1)で示される。
【0017】
ABO (1)
(式中、Aは、希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは、貴金属を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)
一般式(1)において、Aで示される希土類元素としては、例えば、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)などが挙げられる。
【0018】
また、Aで示されるアルカリ土類金属としては、例えば、Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0019】
一般式(1)において、Bで示される貴金属を除く遷移元素およびAlとしては、例えば、周期律表(IUPAC Periodic Table of the Elements(version date 19 February 2010)に従う。以下同じ。)において、原子番号21(Sc)〜原子番号30(Zn)、原子番号39(Y)〜原子番号48(Cd)、および、原子番号57(La)〜原子番号80(Hg)の各元素(ただし、貴金属(原子番号44〜47および76〜78)を除く)、Alが挙げられ、好ましくは、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)およびAl(アルミニウム)が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0020】
このようなペロブスカイト型複合酸化物は、特に制限されることなく、例えば、特開2004−243305号の段落番号〔0039〕〜〔0059〕の記載に準拠して、複合酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などの製造方法によって、製造することができる。
【0021】
スピネル型複合酸化物は、下記一般式(2)で示される。
【0022】
MO・nAl (2)
(式中、Mは、Mg、Fe、Co、Cu、Mn、Sn、ZnおよびNiから選択される少なくとも1種の元素を示し、nは、0.08〜5を示す。)
一般式(2)において、Mは、Mg(マグネシウム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)およびNi(ニッケル)から選択される少なくとも1種の元素を示している。これらの元素は、単独でもよく、また、2種類以上併用もできる。
【0023】
また、一般式(2)において、nは、0.08〜5を示す。
【0024】
このようなスピネル型複合酸化物は、特に制限されることなく、例えば、特開2011−45840号の段落番号〔0014〕〜〔0021〕の記載に準拠して、複合酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などによって、製造することができる。
【0025】
ジルコニア系複合酸化物は、下記一般式(3)で示される。
【0026】
Zr1−(a+b)Ce2−c (3)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、aは、Ceの原子割合を示し、bは、Lの原子割合を示し、1−(a+b)は、Zrの原子割合を示し、cは、酸素欠陥量を示す。)
一般式(3)において、Lで示されるアルカリ土類金属としては、一般式(1)で示したアルカリ土類金属が挙げられる。また、Lで示される希土類元素としては、一般式(1)で示した希土類金属が挙げられる(ただし、Ceを除く。)。これらアルカリ土類金属および希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0027】
また、aで示されるCeの原子割合は、0.1〜0.65の範囲であり、好ましくは、0.1〜0.5の範囲である。
【0028】
また、bで示されるLの原子割合は0〜0.55の範囲である(すなわち、Lは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.55以下の原子割合である)。0.55を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
【0029】
また、1−(a+b)で示されるZrの原子割合は、0.35〜0.9の範囲であり、好ましくは、0.5〜0.9の範囲である。
【0030】
さらに、cは酸素欠陥量を示し、これは、Zr、CeおよびLの酸化物が通常形成する蛍石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
【0031】
このようなジルコニア系複合酸化物は、特に制限されることなく、例えば、特開2004−243305号の段落番号〔0090〕〜〔0102〕の記載に準拠して、複合酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などの製造方法によって、製造することができる。
【0032】
セリア系複合酸化物は、下記一般式(4)で表される。
【0033】
Ce1−(d+e)Zr2−f (4)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、dは、Zrの原子割合を示し、eは、Lの原子割合を示し、1−(d+e)は、Ceの原子割合を示し、fは、酸素欠陥量を示す。)
一般式(4)において、Lで示されるアルカリ土類金属としては、一般式(1)で示したアルカリ土類金属が挙げられる。また、Lで示される希土類元素としては、一般式(1)で示した希土類金属が挙げられる(ただし、Ceを除く。)。これらアルカリ土類金属および希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0034】
また、dで示されるZrの原子割合は、ジルコニア系複合酸化物のZrの原子割合よりも少なく、0.2〜0.7の範囲であり、好ましくは、0.2〜0.5の範囲である。
【0035】
また、eで示されるLの原子割合は0〜0.2の範囲である(すなわち、Lは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.2以下の原子割合である)。0.2を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
【0036】
また、1−(d+e)で示されるCeの原子割合は、ジルコニア系複合酸化物のCeの原子割合よりも多く、0.3〜0.8の範囲であり、好ましくは、0.4〜0.6の範囲である。
【0037】
さらに、fは酸素欠陥量を示し、これは、Ce、ZrおよびLの酸化物が通常形成する蛍石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
【0038】
このようなセリア系複合酸化物は、上記したジルコニア系複合酸化物の製造方法と同様の製造方法によって、製造することができる。
【0039】
アルミナとしては、例えば、αアルミナ、θアルミナ、γアルミナなどが挙げられる。
【0040】
αアルミナは、結晶相としてα相を有し、例えば、AKP−53(商品名、高純度アルミナ、住友化学社製)などが挙げられる。このようなαアルミナは、例えば、アルコキシド法、ゾルゲル法、共沈法などの方法によって得ることができる。
【0041】
θアルミナは、結晶相としてθ相を有し、αアルミナに遷移するまでの中間(遷移)アルミナの一種であって、例えば、SPHERALITE 531P(商品名、γアルミナ、プロキャタリゼ社製)などが挙げられる。このようなθアルミナは、例えば、市販の活性アルミナ(γアルミナ)を、大気中にて、900〜1100℃で、1〜10時間熱処理することによって得ることができる。
【0042】
γアルミナは、結晶相としてγ相を有し、特に限定されず、例えば、排ガス浄化用触媒などに用いられている公知のものが挙げられる。
【0043】
また、アルミナとして、Laおよび/またはBaが含まれる上記アルミナを用いることもできる。Laおよび/またはBaを含むアルミナは、特開2004−243305号の段落番号〔0073〕の記載に準拠して、製造することができる。
【0044】
これら複合酸化物は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0045】
複合酸化物として、好ましくは、アルミナ、より好ましくは、θアルミナが挙げられる。
【0046】
そして、本発明において、複合酸化物は、銅(Cu)を担持している。
【0047】
複合酸化物に、銅を担持させるには、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【0048】
具体的には、例えば、銅を含む塩の溶液を調製し、この含塩溶液を複合酸化物に含浸させた後、必要により乾燥させ、焼成する。
【0049】
銅を含む塩としては、銅の、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、りん酸塩などの無機塩、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。
【0050】
また、銅を含む塩の溶液は、例えば、上記の塩を、所定の化学量論比となるような割合で水に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
【0051】
また、銅を含む塩の溶液として、実用的には、例えば、硝酸銅(II)水溶液(硝酸銅(II)・3水和物塩の水溶液など)などが挙げられる。
【0052】
そして、このような銅を含む塩の溶液の、銅濃度(銅含有量)を調整することにより、複合酸化物における銅の担持濃度を、調整することができる。具体的には、銅を含む塩の溶液において、銅濃度は、例えば、0.01〜20質量%、好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0053】
また、複合酸化物に銅を含む塩の溶液を含浸させた後の焼成温度は、例えば、350〜1000℃、好ましくは、400〜800℃であり、焼成時間が、例えば、0.5〜5時間、好ましくは、0.5〜3時間である。
【0054】
なお、詳述しないが、複合酸化物として、アルミナが用いられる場合において、そのアルミナに、銅を担持させる方法としては、さらに、例えば、アルミナの製造工程において、アルミナを、アルミニウム塩水溶液からアンモニアなどを用いて沈殿させるときに、銅を含む塩の溶液を加えて、θアルミナ、αアルミナあるいはγアルミナとともに銅を共沈させて、その後、焼成することにより、銅を担持させることもできる。
【0055】
そして、複合酸化物および銅の総量(触媒総量)に対する、銅の担持濃度は、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、3質量%以下、通常、1.5質量%以上である。
【0056】
銅の担持濃度が、上記上限を超過すると、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NO)の浄化性能が低下する場合がある。
【0057】
なお、銅の担持濃度は、複合酸化物および銅の使用量から算出することができる。
【0058】
また、銅を担持した複合酸化物の平均粒子径は、例えば、0.5〜15μm、好ましくは、1〜10μmである。なお、平均粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)から得られた画像を解析することにより、求めることができる(以下同様。)。
【0059】
ランタンが添加されているアルミナは、例えば、下記一般式(5)で表わされる。
【0060】
(All−gLa (5)
(式中、gは、Laの原子割合を示す。)
一般式(5)において、gで示されるLaの原子割合は、例えば、0.001〜0.2、好ましくは、0.01〜0.07である。
【0061】
このような、ランタンが添加されているアルミナは、例えば、上記したアルミナ(αアルミナ、θアルミナ、γアルミナ)およびランタンの塩やアルコキシドなどを用いて、上記したジルコニア系複合酸化物、セリア系複合酸化物の製造方法と同様の製造方法において、適宜の焼成温度に制御することによって得ることができる。
【0062】
また、例えば、上記したアルミナに、ランタンの塩の溶液を含浸させ、その後、乾燥および焼成することによっても得ることができる。
【0063】
具体的には、例えば、ランタンを含む塩の溶液を調製し、この含塩溶液を上記したアルミナに含浸させた後、必要により乾燥させ、焼成する。
【0064】
ランタンを含む塩としては、ランタンの、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、りん酸塩などの無機塩、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。
【0065】
また、ランタンを含む塩の溶液は、例えば、上記の塩を、所定の化学量論比となるような割合で水に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
【0066】
そして、このようなランタンを含む塩の溶液の、ランタン濃度(ランタン含有量)を調整することにより、アルミナにおけるランタンの添加割合を、調整することができる。具体的には、ランタンを含む塩の溶液において、ランタン濃度は、例えば、0.01〜20質量%、好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0067】
また、アルミナにランタンを含む塩の溶液を含浸させた後の焼成温度は、例えば、350〜1000℃、好ましくは、400〜800℃であり、焼成時間が、例えば、0.5〜5時間、好ましくは、0.5〜3時間である。
【0068】
そして、アルミナおよびランタンの総量(触媒総量)に対する、ランタンの添加割合(担持濃度)は、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、通常、1.0質量%以上である。
【0069】
ランタンが添加されているアルミナの平均粒子径は、例えば、0.5〜15μm、好ましくは、1〜10μmである。
【0070】
そして、排ガス浄化用触媒を製造する方法としては、特に制限されず、上記した銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとを、混合する。
【0071】
また、好ましくは、銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとを混合するとともに、それらを粉砕する。
【0072】
銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとの混合割合は、銅が担持された複合酸化物100質量部に対して、ランタンが添加されているアルミナが、例えば、5〜100質量部、好ましくは、10〜100質量部である。
【0073】
また、混合(および粉砕)は、銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとを十分に混合(および粉砕)できれば、特に制限されず、公知の方法を採用することができ、具体的には、例えば、乳鉢、ボールミル(遊星ボールミルなど)などの公知の混合(および粉砕)装置を用いることができる。
【0074】
また、この方法では、乾式法、湿式法のいずれも採用することができる。例えば、乾式法では、銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとを、乾燥粉末のまま混合(および粉砕)する。
【0075】
また、湿式法では、銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとを、溶媒(例えば、純水、イソプロピルアルコール、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、アセトン、エタノールなど)中において、混合(および粉砕)する。
【0076】
混合(および粉砕)条件としては、特に制限されないが、例えば、ボールミル(容量45mL)を使用する場合には、回転数が、例えば、50〜300rpm、好ましくは、100〜200rpmであって、混合時間が、例えば、5〜60分間、好ましくは、5〜45分間である。
【0077】
これにより、銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとを粉砕し、銅が担持された複合酸化物の平均粒子径、および/または、ランタンが添加されているアルミナの平均粒子径を0.5〜15μmとするとともに、銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとを混合し、排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0078】
銅が担持された複合酸化物の平均粒子径、および/または、ランタンが添加されているアルミナの平均粒子径が0.5〜15μmであれば、より一層、銅および複合酸化物の粒成長を抑制することができ、排ガス浄化用触媒の比表面積の低下を抑制することができるので、より優れた活性を確保することができる。
【0079】
このようにして得られる排ガス浄化用触媒の平均粒子径は、例えば、0.5〜15μm、好ましくは、1〜10μmである。
【0080】
また、このようにして得られる排ガス浄化用触媒は、そのまま用いることもできるが、例えば、触媒担体上に担持させるなど、公知の方法により、触媒化合物として調製されることもできる。
【0081】
触媒担体としては、特に限定されず、例えば、コージェライトなどからなるハニカム状のモノリス担体など、公知の触媒担体が挙げられる。
【0082】
触媒担体上に担持させるには、例えば、まず、得られた排ガス浄化用触媒に、水を加えてスラリーとした後、触媒担体上にコーティングし、乾燥させ、その後、約300〜800℃、好ましくは、約300〜600℃で熱処理する。
【0083】
なお、このような場合には、排ガス浄化用触媒は、必要により、アルミナや複合酸化物(例えば、ペロブスカイト型複合酸化物、蛍石型複合酸化物など)などの公知の耐熱性酸化物と併用することができる。
【0084】
そして、このようにして得られる排ガス浄化用触媒では、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NO)を効率よく浄化することができる。
【0085】
とりわけ、このような排ガス浄化用触媒では、安価で入手可能な銅が活性成分として含まれているため、コスト性に優れる。
【0086】
また、銅が担持された複合酸化物間において、ランタンが添加されているアルミナが障壁となることにより、銅および複合酸化物の粒成長を抑制することができるので、排ガス浄化用触媒の比表面積の低下を抑制することができる。その結果、本発明の排ガス浄化用触媒は、耐久性に優れ、長期にわたって優れた活性を確保することができる。
【0087】
そのため、このような排ガス浄化用触媒は、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関や、ボイラなどから排出される排ガスを浄化するため、とりわけ、内燃機関の三元触媒として、好適に用いることができる。
【実施例】
【0088】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0089】
実施例1
<銅が担持された複合酸化物の製造>
θアルミナ4.85質量部に、銅含有量0.49質量%の硝酸銅(II)水溶液(詳しくは、硝酸銅(II)・3水和物塩(銅26.04質量%)0.58質量部を水30質量部に溶解して調製した水溶液)30.6質量部を含浸させ、電気炉にて、大気中において650℃で1時間熱処理(焼成)することにより、Cu担持θアルミナ粉末5.04質量部を得た。
【0090】
この粉末の、アルミナおよび銅の総量に対する、銅の担持濃度は、2.98質量%であった。
【0091】
また、Cu担持θアルミナ粉末(粉砕前)を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影し、得られたSEM画像を解析したところ、粗大粒子(粒子径10〜50μm)が多く見られた。得られたSEM画像を図1に示す。
【0092】
また、得られたCu担持θアルミナ粉末(粉砕前)の平均粒子径をSEMの画像解析から求めたところ、20μmであった。
<排ガス浄化用触媒の製造>
Cu担持θアルミナ粉末2.25質量部と、市販のLa添加θアルミナ粉末(La含有量4質量%、平均粒子径18μm)0.25質量部(質量比9:1)とを、乳鉢で物理混合するとともに粉砕し、排ガス浄化用触媒を得た。
【0093】
排ガス浄化用触媒を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影し、得られたSEM画像を解析したところ、Cu担持θアルミナ粉末およびLa添加θアルミナ粉末のいずれも、あまり粉砕されておらず、粗大粒子(粒子径10〜30μm)が多く見られ、粒子の大きさにばらつきがあった。得られたSEM画像を図2に示す。
【0094】
また、得られた排ガス浄化用触媒の平均粒子径をSEMの画像解析から求めたところ、15μmであった。
【0095】
実施例2
Cu担持θアルミナ粉末5.04質量部と、La添加θアルミナ粉末(La含有量4質量%、平均粒子径18μm)0.25質量部(質量比9:1)5.04質量部(質量比1:1)とを、遊星ボールミル(45mL)により、ジルコニア製ボールφ1mmと3mmを使用し、回転数200rpmで30分間混合するとともに粉砕した以外は、実施例1と同様の方法により、排ガス浄化用触媒を得た。
【0096】
排ガス浄化用触媒を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影し、得られたSEM画像を解析したところ、Cu担持θアルミナ粉末およびLa添加θアルミナ粉末のいずれも、微細に均一(1〜10μm)に粉砕されていることが確認された。得られたSEM画像を図3に示す。
【0097】
また、得られた排ガス浄化用触媒の平均粒子径をSEMの画像解析から求めたところ、2.5μmであった。
【0098】
このことから、Cu担持θアルミナ粉末(粉砕後)の平均粒子径、および、La添加θアルミナ粉末(粉砕後)の粒度分布から求められる平均粒子径が、いずれも、2.5μmであることが確認された。
【0099】
比較例1
La添加θアルミナ粉末を混合しなかった(すなわち、Cu担持θアルミナ粉末のみを用いた)以外は、実施例1と同様の方法により、排ガス浄化用触媒を得た。
【0100】
比較例2
La添加θアルミナ粉末0.25質量部に代えて、θアルミナ粉末0.25質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、排ガス浄化用触媒を得た。
【0101】
比較例3
ランタンイソプロポキシド6.32質量部、アルミニウムイソプロポキシド44.94質量部を500ml容量の丸底フラスコに入れ、トルエン200ml加えて攪拌溶解することによって、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0102】
次いで、減圧下、混合アルコキシド溶液から溶媒を留去乾固することによって、LaAl1118前駆体ゲルを得た。
【0103】
次いで、この前駆体ゲルをシャーレに移し、60℃で24時間通風乾燥した後、1000℃で1時間熱処理した。さらに、1300℃で1時間熱処理し、LaAl1118からなるヘキサアルミネート型酸化物の黒褐色粉末を得た。La添加θアルミナ粉末0.25質量部に代えて、LaAl1118粉末0.25質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、排ガス浄化用触媒を得た。
【0104】
比較例4
ストロンチウムイソプロポキシド4.12質量部、アルミニウムイソプロポキシド49.02質量部を500ml容量の丸底フラスコに入れ、トルエン200ml加えて攪拌溶解することによって、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0105】
次いで、減圧下、混合アルコキシド溶液から溶媒を留去乾固することによって、SrAl1219前駆体ゲルを得た。
【0106】
次いで、この前駆体ゲルをシャーレに移し、60℃で24時間通風乾燥した後、1000℃で1時間熱処理した。さらに、1300℃で1時間熱処理し、SrAl1219からなるヘキサアルミネート型酸化物の黒褐色粉末8.91質量部を得た。
【0107】
そして、La添加θアルミナ粉末0.25質量部に代えて、上記により得られたSrAl1219粉末0.25質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、排ガス浄化用触媒を得た。
【0108】
比較例5
セリウムメトキシプロピレート[Ce(OCH(CH)CHOCH]をCe換算で0.1molと、ジルコニウムメトキシプロピレート[Zr(OCH(CH)CHOCH]をZr換算で0.090molと、イットリウムメトキシプロピレート[Y(OCH(CH)CHOCH]をY換算で0.01molと、トルエン200mLとを配合して、撹拌溶解することにより、混合アルコキシド溶液を調製した。さらに、この混合アルコキシド溶液に、脱イオン水80mLを滴下して、加水分解した。
【0109】
次いで、加水分解された溶液から、トルエンおよび脱イオン水を留去し、乾固させて、前駆体を得た。さらに、この前駆体を、60℃で24時間通風乾燥させた後、電気炉にて、450℃で3時間熱処理(焼成)することにより、Ce0.50Zr0.450.05Oxideで示される耐熱性酸化物(1次焼成体)の粉末を得た。
【0110】
次いで、上記で得られた耐熱性酸化物(1次焼成体)の粉末を、電気炉にて、1000℃で5時間熱処理(焼成)することにより、Ce0.50Zr0.450.05Oxideで示される複合酸化物(2次焼成体)の粉末を得た。さらに、この粉末を電気炉にて1200℃で5時間熱処理した。
【0111】
そして、La添加θアルミナ粉末0.25質量部に代えて、上記により得られたCe0.50Zr0.450.05Oxide粉末0.25質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、排ガス浄化用触媒を得た。
【0112】
評価
試験例1
1)高温耐久処理(R/L 1000℃)
各実施例および各比較例で得られた排ガス浄化用触媒の粉末を、次の条件で高温耐久処理した。
【0113】
この高温耐久処理では、雰囲気温度を1000℃に設定し、リッチ雰囲気(還元雰囲気)10分、イナート雰囲気(不活性雰囲気)5分、リーン雰囲気(酸化雰囲気)10分、イナート雰囲気(不活性雰囲気)5分の合計30分を1サイクルとし、このサイクルを10サイクル、合計5時間繰り返して、実施例1および比較例1〜5で得られた粉末を、リッチ雰囲気(還元雰囲気)とリーン雰囲気(酸化雰囲気)とに交互に暴露した後、リッチ雰囲気(還元雰囲気)のまま室温まで冷却した。
【0114】
なお、各雰囲気は、高温水蒸気を含む下記の組成のガスを、300×10−3/hrの流量で供給することによって調製した。
リッチ雰囲気ガス組成:1.5%CO、0.5%H、10%HO、8%CO、BalanceN
リーン雰囲気ガス組成:1%O、10%HO、8%CO、BalanceN
イナート雰囲気ガス組成:10%HO、8%CO、BalanceN
2)比表面積
耐久試験前後における実施例1および比較例1〜5で得られた排ガス浄化用触媒の粉末の比表面積を、BET法に従って、測定した。そして、その比表面積の残存率を、下記式に従って求めた。その結果を表1に示す。
比表面積残存率(%)=耐久試験後の比表面積/耐久試験前の比表面積
【0115】
【表1】

【0116】
表1に示すように、La添加θアルミナ粉末を含有する実施例1の排ガス浄化用触媒は、La添加θアルミナ粉末を含有しない比較例1〜5の排ガス浄化用触媒に比べ、比表面積残存率が高かった。
【0117】
これは、Cu担持θアルミナ粉末間において、La添加θアルミナ粉末が障壁となり、Cu、および、Cuを担持するθアルミナの粒成長を抑制したためであると推察される。
3)浄化率評価
耐久試験後の実施例1、実施例2および比較例1の排ガス浄化用触媒の粉末を、0.5〜1.0mmのサイズのペレットに成型して試験片を調製した。
【0118】
表2に示す組成のモデルガスを用いて、このモデルガスの燃焼(空燃比A/F=14.5)によって排出される排気ガス(温度:500℃、流速:2.5L/min)を各試験片に供給し、各試験片の、CO、HC、NOの浄化率を測定した。
【0119】
その結果を、図4に示す。
【0120】
【表2】

【0121】
図4に示すように、Cu担持θアルミナ粉末と、La添加θアルミナ粉末とを含有する各実施例の排ガス浄化用触媒では、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NO)を効率よく浄化することができる。
【0122】
とりわけ、平均粒子径が2.5μmのLa添加θアルミナ粉末(粉砕後)を含有する実施例2の排ガス浄化用触媒は、La添加θアルミナ粉末を含有しない比較例1の排ガス浄化用触媒に比べ、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NO)の浄化性能に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅が担持された複合酸化物と、ランタンが添加されているアルミナとを含有することを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
銅が担持された複合酸化物の平均粒子径、および/または、ランタンが添加されているアルミナの平均粒子径が0.5〜15μmであることを特徴とする、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−13834(P2013−13834A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146457(P2011−146457)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度 文部科学省科学技術振興費 元素戦略プロジェクト『脱貴金属を目指すナノ粒子自己形成触媒の新規発掘』研究による成果
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】