説明

排ワラ細断装置

【課題】ベアリングや回転軸への塵埃の巻き付きや詰まりを良好に防止できる排ワラ細断装置を提供する。
【解決手段】ベアリング51のホルダ50の外周囲に回転軸42と同軸芯状に位置する状態で細断ケース40の内面側に固定されるケース側カバー53と、外周部54cがケース側カバー53に対して回転軸42の半径方向に重合する状態で回転軸42に一体回転自在に連結されてケース側カバー53に対して相対回転する軸側カバー54とを設けてある。ケース側カバー53の下部に、ケース側カバー53と軸側カバー54とによってホルダ50の周囲に形成されるカバー内空間56から塵埃を排出する排塵開口55を設けてある。カバー内空間56に、排塵開口55に塵埃を掻き出す回転部材57を回転軸42と一体回転自在に配備してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細断ケースに駆動回転自在に支持される一対の回転軸の一方に複数枚のカッタを前記回転軸の軸芯方向に並べて一体回転自在に設け、前記一対の回転軸の他方に複数枚の供給体を前記回転軸の軸芯方向に並べて一体回転自在に設けて、前記複数枚のカッタによって脱穀排ワラを細断するよう構成した排ワラ細断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された排ワラ細断装置があった。特許文献1に記載されたものでは、切断軸を支持するベアリングのホルダの外周囲に切断軸と同軸芯状に位置する状態でカッタケースの横側壁に固定された円筒状体と、この円筒状体の内側に外周部が相対回転自在に入り込む状態で切断軸に一体回転自在に連結された輪体とが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−99027号公報(図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細断ケースの内部に発生したワラ屑などの塵埃が回転軸や回転軸を支持するベアリングに巻き付くとか詰まることを防止するのに、上記した従来の技術を適用すれば、ベアリングのホルダの外周囲に回転軸と同軸芯状に位置するケース側カバーを細断ケースに固定し、外周部がケース側カバーに対して回転軸の半径方向に重合する状態の軸側カバーを、回転軸に一体回転自在に連結し、ベアリングのホルダの周辺をケース側カバーと軸側カバーとによって囲う防塵構造を構成することが考えられる。この場合、ケース側カバーと軸側カバーの外周部との間に隙間が形成され、ケース側カバーと軸側カバーとによってホルダの周囲にカバー内空間が形成されることから、ケース側カバーと軸側カバーの外周部との隙間からカバー内空間に塵埃が入り込むことがあり、カバー内空間に入り込んだ塵埃が、カバー内空間に滞留することになれば、回転軸やベアリングの塵埃の巻き付きや詰まりが依然として発生しやすくなる。
【0005】
本発明の目的は、塵埃の巻き付きや詰まりを良好に防止できる排ワラ細断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、細断ケースに駆動回転自在に支持される一対の回転軸の一方に複数枚のカッタを前記回転軸の軸芯方向に並べて一体回転自在に設け、前記一対の回転軸の他方に複数枚の供給体を前記回転軸の軸芯方向に並べて一体回転自在に設けて、前記複数枚のカッタによって脱穀排ワラを細断するよう構成した排ワラ細断装置において、
前記回転軸を支持するベアリングのホルダの外周囲に前記回転軸と同軸芯状に位置する状態で前記細断ケースの内面側に固定されるケース側カバーと、外周部が前記ケース側カバーに対して前記回転軸の半径方向に重合する状態で前記回転軸に一体回転自在に連結されて前記ケース側カバーに対して相対回転する軸側カバーとを、前記一対の回転軸の一方又は両方に対応させて設け、
前記ケース側カバーの下部に、前記ケース側カバーと前記軸側カバーとによって前記ホルダの周囲に形成されるカバー内空間から塵埃を排出する排塵開口を設け、
前記カバー内空間に、前記排塵開口に塵埃を掻き出す回転部材を前記回転軸と一体回転自在に配備してある。
【0007】
本第1発明の構成によると、ベアリングのホルダの周辺をケース側カバーと軸側カバーとによって囲って、ベアリングやその付近に塵埃を流入しにくくできる。ケース側カバーと軸側カバーとによってホルダの周囲にカバー内空間が形成され、ケース側カバーと軸側カバーの外周部との間に形成される隙間からカバー内空間に塵埃が入り込むことがあっても、カバー内空間に入り込んだ塵埃を、自然落下によって、あるいは回転部材による掻き出しによって排塵開口に移動させて排塵開口からカバー外に排出することができる。
【0008】
従って、ベアリングやその付近への塵埃の流入をケース側カバーと軸側カバーによる囲いによって防止できるのみならず、塵埃がカバー内空間に入り込むことがあってもカバー内空間に滞留しにくくて回転軸やベアリングの塵埃の巻き付きや詰まりを良好に防止でき、塵埃による駆動不良などのトラブルを発生しにくくできる。
【0009】
本第2発明は、前記排塵開口の回転軸回転方向での中心が前記回転軸の軸芯を通る鉛直線に対して回転軸回転方向下手側に偏倚するように、前記排塵開口を配置してある。
【0010】
脱穀排ワラはカッタと供給体の間に導入して細断され、発生した細断ワラは一対の回転軸の間から落下して排出されるのであるが、排出されるべき細断ワラがカッタや供給体に引っ掛かった場合、細断ワラがカッタや供給体などからスムーズに落下しないでカッタや供給体による振り上げを受けることがある。本第2発明の構成によると、排塵開口が回転軸の軸芯を通る鉛直線に対し、振り上げを受けた細断ワラが移動する側に偏倚することになり、細断ワラが振り上げを受けても排塵開口に入りにくい。
【0011】
従って、カバー内空間に入り込んだ塵埃の排出を容易にできるのみならず、そのための排塵開口からのカバー内空間への細断ワラなどの入り込みも防止でき、カバー内空間の塵埃滞留をより良好に防止できる。
【0012】
本第3発明は、前記細断ケースが脱穀装置の後部に連結され、前記一対の回転軸が脱穀装置前後方向に並ぶ状態で備えられ、前記ケース側カバー及び前記軸側カバーが、前記一対の回転軸のうちの脱穀装置後方側の回転軸に対応させて設けられている。
【0013】
本第3発明の構成によると、排塵開口が回転軸の軸芯を通る鉛直線に対して脱穀機体後方側に偏倚することになり、回転部材による掻き出しを受けて排塵開口から排出される塵埃を、脱穀機体後方向きに排出されやすくできる。
【0014】
従って、細断ケースから排出される塵埃を脱穀機体に付着しにくいように脱穀機体から後方に極力離して排出させることができる。
【0015】
本第4発明は、前記回転軸の前記軸側カバーの外側近くに、ばね体を前記複数枚のカッタ又は前記複数枚の供給体に対して前記回転軸の軸芯方向に押圧作用する状態で外嵌し、前記ばね体を収容するばねケースを、前記軸側カバーに一体回転自在に連結してある
【0016】
ばね体は、従来から設けられているものである。このばね体をばねケースに収容するのに、本第4発明の構成によると、軸側カバーとばねケースを一挙に回転軸に組み付けることができる。
【0017】
従って、ばねの塵埃付着をばねケースによって防止できるものでありながら、軸側カバーとばねケースを一挙に組み付けて能率よく組み立て作業できる。
【0018】
本第5発明は、前記ばねケースに対して前記軸側カバーが位置する側とは反対側に配置した回転羽根板を、前記回転軸の外周側に前記回転軸と一体回転自在に設け、前記回転羽根板の前記ばねケース側の端部に前記ばねケースが入り込む切り欠き部を設け、前記回転羽根板の前記切り欠き部に臨む端面が前記ばねケースの外周面及び側面に当接する状態で前記回転羽根板を組み付けてある。
【0019】
本第5発明の構成によると、細断ワラや塵埃をケース側カバーや軸側カバーに入り込まないように回転羽根板によって飛散させるのに、回転羽根板の回転軸の外周側に位置する範囲を、回転羽根板の切り欠き部を設けてある側の端部がばねケースに被さる広いものにして、回転羽根板によるワラ屑などの飛散を的確に行なわせることができる。回転羽根板の切り欠き部に臨む端面がばねケースの外周面及び側面に当接して回転羽根板とばねケースの外周面及び側面との間に隙間があまり形成されず、回転羽根板とばねケースの間にワラ屑などが詰まりにくい。
【0020】
従って、回転羽根板とばねケースの間のワラ屑詰まりを発生しにくくしながら、回転軸の外周側に広範囲にわたって位置する回転羽根板によってワラ屑などを飛散を適確に行なわせ、ケース内空間への塵埃の入り込みを良好に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】コンバインの全体を示す側面図である。
【図2】コンバインの全体を示す平面図である。
【図3】脱穀装置を示す縦断側面図である。
【図4】扱胴の前端部を示す側面図である。
【図5】扱胴を示す正面図である。
【図6】ライナが取り付けられた扱胴の部位を示す縦断面図である。
【図7】ライナの接続構造を示す断面図である。
【図8】ライナの接続構造を示す断面図である。
【図9】ライナの接続構造の比較例を示す断面図である。
【図10】排ワラ搬送装置及び排ワラ細断装置を示す平面図である。
【図11】排ワラ搬送装置及び排ワラ細断装置を示す側面図である。
【図12】排ワラ搬送装置の搬送終端部を示す側面図である。
【図13】排ワラ搬送装置の搬送終端部を示す後面図である。
【図14】カバー構造を示す斜視図である。
【図15】排ワラ細断装置のカッタが位置する部位を示す平面図である。
【図16】カッタを設けた回転軸の支持構造及び防塵構造を示す縦断面図である。
【図17】(a)は、ケース側カバーを示す側面図、(b)は、ケース側カバーを示す縦断面図である。
【図18】(a)は、軸側カバーを示す側面図、(b)は、軸側カバーを示す縦断面図である。
【図19】回転軸の防塵手段を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る排ワラ細断装置をコンバインに装備した場合について説明する。
図1は、コンバインの全体を示す側面である。図2は、コンバインの全体を示す平面図である。これらの図に示すように、コンバインは、クローラ走行装置1によって自走するように構成され、かつ乗用型の運転部2が装備された走行機体と、走行機体の機体フレーム3の前部に連結された刈取り部4と、機体フレーム3の後部側に機体横方向に並べて設けられた脱穀装置5と穀粒タンク6と、脱穀装置5の後部に連結された排ワラ細断装置7とを備えて構成され、稲、麦などの収穫作業を行なう。
【0023】
すなわち、刈取り部4は、機体フレーム3から上下揺動自在に延出する刈取り部フレーム4aを備え、この刈取り部フレーム4aが昇降シリンダ8によって揺動操作されることにより、刈取り部4の前端部に設けられた分草具4bが地面付近に下降した下降作業位置と分草具4bが地面から高く上昇した上昇非作業位置とに昇降する。刈取り部4を下降作業位置に下降させて走行機体を走行させると、刈取り部4は、分草具4bによって刈取対象の植立穀稈を引起し経路に導入し、引起し経路に導入した植立穀稈を引起し装置4cによって引起すとともにバリカン型の刈取装置4dによって刈り取り、刈取り穀稈を供給装置4eによって脱穀装置5に供給する。脱穀装置5は、供給された刈取り穀稈を脱穀処理して脱穀粒を穀粒タンク6に送り込む。排ワラ細断装置7は、脱穀装置5からの脱穀排ワラを稈身方向に細断処理する。
【0024】
脱穀装置5について説明する。
図3は、脱穀装置5を示す縦断側面図である。この図に示すように、脱穀装置5は、脱穀機体10の上部内に形成された扱室11を有した脱穀部5Aと、扱室11の下方に設けられた揺動選別装置12を有した選別部5Bとを備えている。
【0025】
脱穀部5Aは、刈取り部4の供給装置4eからの刈取り穀稈の株元側を脱穀フィードチェーン5aによって挟持して脱穀機体10の後方に向けて搬送し、その刈取り穀稈の穂先側を扱室11に供給して回動する扱胴13と受網14によって脱穀処理し、脱穀粒を受網14から落下させ、脱穀排ワラを脱穀フィードチェーン5aによって扱室11の後端部に位置する送塵口15から搬出して排ワラ搬送装置20に供給する。
【0026】
選別部5Bは、受網14から落下した脱穀粒などの処理物を、揺動選別装置12によって受け止め、この揺動選別装置12による揺動選別と、唐箕16によって脱穀機体後方向きに供給される選別風による風選別とによって穀粒と塵埃とに選別し、一番処理物を一番スクリューコンベヤ17に落下させ、二番処理物を二番スクリューコンベヤ18に落下させ、塵埃を排塵ファン19によって排ワラ細断装置7の細断ケース40を介して脱穀機体10の後方に排出し、また塵埃を選別風と共に排塵ファン19の下方を通して脱穀機体10の後部に設けられた排塵口10aから脱穀機体10の後方に排出する。
【0027】
扱胴13について説明する。
図4は、扱胴13の前端部を示す側面図である。図5は、扱胴13を示す正面図である。これらの図に示すように、扱胴13の整そ歯30を備える前端部には、扱胴13を構成するドラム本体31の表面側に扱胴周方向に並べて当て付けた4枚のライナ32を備えてある。図6は、ライナ32が取り付けられた扱胴13の部位を示す縦断面図である。この図に示すように、ライナ32は、扱胴本体31の外側面に沿うよう曲げ成形された曲げ板金によって構成してある。
【0028】
図7,8は、隣り合う一対のライナ32,32の接続構造を示す断面図である。扱胴13は、図7に示す回転方向Fに回転駆動される。隣り合う一対のライナ32,32は、扱胴回転方向下手側のライナ32aの扱胴回転方向上手側端部が扱胴回転方向上手側のライナ32bの表面側に重なる状態で並んでいる。扱胴回転方向下手側のライナ32aの扱胴回転方向上手側のライナ32bとドラム本体31とに亘って位置する部位32Sの扱胴半径方向に沿う断面での形状を、扱胴回転方向上手側のライナ32bに重なる部分Wから緩い下り角度でドラム本体31に下がってドラム本体31の外側面に当接するよう緩い下り角の段差部を形成するように形成し、隣り合う一対のライナ32,32が連なる段差部における穀粒の衝突による摩滅を発生しにくくしている。つまり、図9は、隣り合う一対のライナ32,32が連なる部位の比較構造を示す断面図である。この図に示すように、扱胴回転方向下手側のライナ32aの扱胴回転方向上手側のライナ32bとドラム本体31とに亘って位置する部位32sの扱胴半径方向に沿う断面での形状が、扱胴回転方向上手側のライナ32bに重なる部分Wから急な下り角度でドラム本体31に下がってドラム本体31の外側面に当接するよう急な下り角の段差部を形成する形状となる場合、隣り合う一対のライナ32,32が連なる段差部は、穀粒の衝撃的な衝突を受けて早期に摩滅する。
【0029】
排ワラ搬送装置20について説明する。
図10,11に示すように、排ワラ搬送装置20は、脱穀フィードチェーン5aの搬送終端部の横側方から脱穀機体10の後部に至る無端回動搬送チェーン21と無端回動搬送チェーン21の下方に無端回動搬送チェーン21に沿って位置する挟持搬送レール22とを備えて構成され、脱穀フィードチェーン5aによって扱室11から搬出された脱穀排ワラの株元側を、無端回動搬送チェーン21と挟持搬送レール22とによって受継いで脱穀装置後方向きに挟持搬送し、脱穀機体10の後部に位置する排出口10bから脱穀機体10の後側に搬出して排ワラ細断装置7の細断ケース40の上に落下させる。
【0030】
図12は、排ワラ搬送装置20の搬送終端部を示す側面図である。挟持搬送レール22の搬送終端側は、脱穀機体10のフレーム5bにブラケット5cを介して固定されたステー23に脱穀機体上下向きの支持杆24を介して支持されている。支持杆24は、ステー23のボス部23aに上下摺動自在に支持されている。支持杆24の上端部に挟持搬送レー22が連結するよう設けた連結部24aとステー23との間に配置して支持杆24に装着されたスプリング25により、支持杆24をステー23に対して上昇付勢することにより、挟持搬送レール22を無端回動搬送チェーン21に向けて上昇付勢してある。
【0031】
図12,13,14に示すように、挟持搬送レール22の搬送終端部の下方に、排ワラ細断装置7を支持する脱穀機体10の横向きのフレーム5bと排ワラ細断装置7の機体横向きのフレーム41との間を覆って細断ケース内の前側の回転軸43より前側に長ワラなどが落ち込むことを防止する左右一対のメインカバー26a,26b及び一つの補助カバー27を設けてある。
【0032】
左右一対のメインカバー26a,26bのうちの左側のメインカバー26aは、挟持搬送レール22の搬送終端部の下方から細断ケース40の左端付近に亘って配置されている。左側のメインカバー26aは、後方側の端部で排ワラ細断装置7のフレーム41に連結され、フレーム41から前方に片持ち状態で延出している。左右一対のメインカバー26a,26bのうちの右側のメインカバー26bは、挟持搬送レール22の搬送終端部の下方から細断ケース40の右端付近に亘って配置されている。右側のメインカバー26bは、後端側でステー28に連結され、ステー28から前方に片持ち状態で延出している。ステー28は、排ワラ細断装置7のフレーム41に取り付けられている。左側のメインカバー26aの横端部に切り欠き部26cを設け、無端回動搬送チェーン21によって搬送される脱穀排ワラのボリュームが大で、挟持搬送レール22が無端回動搬送チェーン21に対して大きく離れて下降した場合、支持杆24の連結部24aが左側のメインカバー26aに当たらずに左側のメインカバー26aより下方まで下がることを切り欠き部26cによって可能にしてある。
【0033】
補助カバー27は、脱穀機体10のフレーム5bに設けたステー29に支持されている。補助カバー27には、支持杆24のスプリング25が装着されている部位が挿通する切り欠き部27aを設けてある。補助カバー27の切り欠き部27aは、横幅が左側のメインカバー26aの切り欠き部26cの横幅よりも小であるように形成し、補助カバー27は、支持杆24の連結部24aが最も下降した場合でも連結部24aが当接しないように左側のメインカバー26aの配置高さより低い配置高さに配置してある。つまり、補助カバー27は、メインカバー26a,26bの上に落ちた排ワラが縦向きになって左側のメインカバー26aの切り欠き部26cに入り込むことがあっても、この排ワラを細断ケース40の内部に落下しないように受け止め、受け止めた排ワラを左側のメインカバー26aの後端側に設けた切り欠き部26dを通って細断ケース40の内部の一対の回転軸42,43の間に落下するように案内する。
【0034】
排ワラ細断装置7について説明する。
図10,11に示すように、排ワラ細断装置7は、脱穀装置5の機体後部に連結された細断ケース40と、細断ケース40の内部に回転自在に設けた一対の回転軸42,43と、細断ケース40の横外側に設けた駆動機構44とを備えて構成してある。
【0035】
一対の回転軸42,43は、細断ケース40の上部に設けた排ワラ投入口45の下方に脱穀装置前後方向に所定間隔を隔てて並べて細断ケース40の左右の側壁46に回転自在に支持されている。一対の回転軸42,43の脱穀装置後方側の回転軸42には、複数枚の円盤型のカッタ47を回転軸42の軸芯方向に所定間隔を隔てて並べて一体回自在に設け、一対の回転軸42,43の脱穀装置前方側の回転軸43には、複数枚の円盤型の供給体48を回転軸43の軸芯方向に所定間隔を隔てて並べて一体回転自在に設けてある。
【0036】
駆動機構44は、脱穀装置5から伝達される駆動力を変速して一対の回転軸42,43に伝達し、一対の回転軸42,43が図11に示す回転方向A,Bに回転するように、かつカッタ47を設けてある回転軸42が供給体48を設けてある回転軸43より高速で回転するように一対の回転軸42,43を駆動する。
【0037】
従って、排ワラ細断装置7は、排ワラ投入口45が揺動蓋49によって開閉されることにより、排ワラ搬送装置20からの脱穀排ワラを細断せずに長ワラのままで放出する長ワラ放出形態と、排ワラ搬送装置20からの脱穀排ワラを細断処理して放出する細断放出形態とに切り換わる。
【0038】
すなわち、揺動蓋49が閉じ操作されて排ワラ投入口45が閉じられると、排ワラ搬送装置20によって細断ケース40の上に落下された脱穀排ワラが閉じ姿勢の揺動蓋49による落下案内を受けて細断ケース40から脱穀装置5の後方に落下する。
【0039】
揺動蓋49が開き操作されて排ワラ投入口45が開かれると、排ワラ搬送装置20によって細断ケース40の上に落下された脱穀排ワラが排ワラ投入口45から細断ケース40の内部に落下し、細断ケース40の内部に落下した脱穀排ワラを、回転方向Bに回転する供給体48と回転方向Aに回転するカッタ47とによって供給体48とカッタ47の間に掻き込んで複数枚のカッタ47によって稈身方向に細断し、細断ワラを一対の回転軸42,43の間から落下させ、細断ケース40の下部に設けてある放出口から脱穀装置5の後方に落下させる。
【0040】
図15は、排ワラ細断装置7のカッタ47が位置する部位を示す平面図である。図16は、カッタ47を設けた回転軸42の支持構造を示す縦断面図である。この図に示すように、カッタ47を設けた回転軸42のネジ軸に形成された端部にメネジ筒を装着して外周面形状が円柱面形状の連結軸部42aを形成し、この連結軸部42aを、細断ケース40の横壁46にホルダ50を介して取り付けられたベアリング51にカラー52を介して回転自在に支持させてある。
【0041】
防塵構成について説明する。
図16に示すように、細断ケース40の横壁46の内面側に固定されたお椀状のケース側カバー53と、回転軸42の連結軸部42aに外嵌している軸側カバー54と、ケース側カバー53の下部に設けた排塵開口55と、ケース側カバー53と軸側カバー54によってホルダ50の周囲に形成されるカバー内空間56に配備した回転部材57と、軸側カバー54の外側に回転軸42の周囲に分散配置して設けた一対の回転羽根板58,58とを備えて、ベアリング51及び回転軸42の連結軸部42aに対するワラ屑などの付着や巻き付きを防止するように防塵手段60を構成してある。
【0042】
ケース側カバー53は、ホルダ50の外周囲のホルダ50の外周面から所定距離を離れた箇所に回転軸42と同軸芯状に位置している。
【0043】
図17(a)は、ケース側カバー53を示す側面図である。図17(b)は、ケース側カバー53を示す縦断面図である。これらの図及び図16に示すように、ケース側カバー53には、ケース側カバー53の一端側に一体形成された円盤状の取付けプレート53a備えている。取付けプレート53aに、回転軸42の連結軸部42aが挿通する軸孔53bを設けるとともにホルダ50を連結してある。図16に示すように、ケース側カバー53は、取付けプレート53aが細断ケース40の横壁46の内面側に連結ネジ61によるホルダ50との共締めによって細断ケース40に固定されている。
【0044】
図18(a)は、軸側カバー54を示す側面図である。図18(b)は、軸側カバー54を示す縦断面図である。これらの図及び図16に示すように、軸側カバー54は、回転軸42の連結軸部42aが挿通する軸孔54aを中心部に設けた円盤状の横カバー部54bと、この横カバー部54bの外周端部からケース側カバー53に向かって延出する円筒状の外周部54cとを備えて構成してある。横カバー部54bの外面側に、一対の回転羽根板58,58及びばねケース62を連結し、一対の回転羽根板58,58の内周側にわたって六角筒で成る取付け筒軸63を連結してある。図16に示すように、軸側カバー54は、取付け筒軸63が回転軸42の六角軸部42bに外嵌されることにより、外周部54cがケース側カバー53に対して回転軸42の半径方向に重合する状態で、かつ回転軸42に対して同軸芯状に位置する状態で回転軸42に支持される。軸側カバー54は、取付け筒軸63が内周面の六角形状によって回転軸42の六角軸部42bに対して一体回転自在に係合することにより、回転軸42に対して一体回転自在に連結される。
【0045】
一対の回転羽根板58,58及びばねケース62は、取付け筒軸63が回転軸42の六角軸部42bに一体回転自在に係合することにより、回転軸42と一体回転する。
【0046】
図18に示すように、カバー内空間56に配備した回転部材57は、軸側カバー54の横カバー部54bに固定されており、回転軸42と一体回転する。回転部材57は、軸側カバー54の縦断面視での形状が矩形で、かつ軸側カバー54の外周部54cの端54dから外側に突出するよう外周部54の回転軸芯方向での長さよりも長い形状に形成してある。回転部材57は、回転軸42の軸芯方向視で取付け筒部63と外周部54cの間の外周部54c寄りの箇所に位置している。回転部材57は、回転部材57と外周部54cとの間に隙間Sが形成される状態で配置されている。回転部材57は、軸側カバー54の回転軸芯に沿う方向視で帯板状となる形状に形成され、軸側カバー54の半径方向に沿って位置している。
【0047】
従って、防塵手段60は、ホルダ50及び連結軸部42aをケース側カバー53と軸側カバー54とによって囲い、かつ、細断ケース40の内部に発生したワラ屑などの塵埃を回転軸42によって回転操作される回転羽根板58によってケース側カバー53及び軸側カバー54の外周側に飛散させ、さらに、軸側カバー54の外周部54cとケース側カバー53の隙間からカバー内空間56に塵埃が入り込んだ場合、入り込んだ塵埃を自然落下によって、あるいは回転軸42によって回転操作される回転部材57による掻き出しによって排塵開口55に移動させて排塵開口55からカバー外に排出し、細断ケース40の内部に発生した塵埃のベアリング51及び回転軸42の連結軸部42aに対する付着や巻き付きを防止する。回転する軸側カバー54の外周部54cが固定のケース側カバー53の内側に入り込んでいることにより、回転するカバー54によるワラ屑のカバー内空間56への巻き込みが発生しにくい。
【0048】
図17(a)に示すように、ケース側カバー53に設けてある排塵開口55は、排塵開口55の回転軸回転方向Aでの中心Cが回転軸42の軸芯Pを通る鉛直線Hに対して回転軸回転方向下手側に偏倚するよう配置してあり、カッタ47に引っ掛かって持ち上げを受けた細断ワラやワラ屑を排塵開口55に入りにくくし、かつ回転部材57による掻き出しを受けて排塵開口55から排出される塵埃を後方向きに出やすくする。排塵開口55は、回転軸42の軸芯Pを通る鉛直線Hに対して回転軸回転方向上手側に少し離れて位置するケース側カバー53の部位と、この部位から回転軸回転方向下手側に90度又はほぼ90度離れて位置するケース側カバー53の部位とに亘って開口している。
【0049】
ばねケース62は、軸側カバー54の外側近くに配置して回転軸42に外嵌された一対の皿形のばね体64,64を収容している。
【0050】
一対のばね体64,64は、取付け筒軸63と連結軸部42aを構成するねじ部材との間に配置されており、ねじ部材を反力点として取付け筒軸63を介して座金材65に押圧作用することにより、各カッタ47及びカッタ間に位置するスペーサ66を回転軸42の駆動機構44が連結している側の端部に装着された座金材67に向けて押圧操作して各カッタ47の位置決めを行なう。
【0051】
図16,18に示すように、回転羽根板58のばねケース62が位置する側の端部にばねケース62が入り込む切り欠き部58aを設けてある。回転羽根板58は、切り欠き部58aに臨む端面58bのうちの回転軸42に平行な部位58cがばねケース62の外周面62aに当接し、切り欠き部58aに臨む端面58bのうちの回転軸42に交差する部位58dがばねケース62の側面62bに当接して回転羽根板58とばねケース62の間に隙間があまり形成されない状態で組み付けられている。
【0052】
図19は、回転軸42の駆動機構44が連結している側の端部に設けた防塵手段70を示す断面図である。この図に示すように、この防塵手段70は、ベアリング71のホルダ72に一体成形した状態で細断ケース40の横壁46に固定されたお椀状のケース側カバー73と、回転軸42に回転羽根板58を介して一体回転自在に支持された軸側カバー74とを備えて構成してある。軸側カバー74の外周部74aは、ケース側カバー73の外側にケース側カバー73に対して回転軸42の半径方向に重合する状態で位置している。
【0053】
〔別実施例〕
(1)上記した実施例では、お椀状に形成したケース側カバー53を設けた例を示したが、お椀状の他、円筒や円錐状など各種形状の環状に形成したケース側カバーを採用して実施してもよい。
【0054】
(2)カッタ47を設けた回転軸42の駆動機構44が連結する側とは反対側の端部に設けた防塵手段60と同じ構成の防塵手段を、カッタ47を設けた回転軸42の駆動機構44が連結する側の端部に設けてもよい。また、カッタ47を設けた回転軸42の駆動機構44が連結する側とは反対側の端部に設けた防塵手段60と同じ構成の防塵手段を、供給体48を設けた回転軸43の一方の端部あるいは両端部に設けてもよい。
【0055】
(3)上記した実施例では、軸側カバー54の外周部54cがケース側カバー53の内側にケース側カバー53に対して回転軸42の半径方向に重合する状態で位置する例を示したが、軸側カバー54の外周部54cがケース側カバー53の外側にケース側カバー53に対して回転軸42の半径方向に重合する状態で位置する構成を採用してもよい。
【0056】
(4)上記した実施例では、ケース側カバー53の排塵開口55を、排塵開口55の回転軸回転方向Aでの中心Cが回転軸42の軸芯Pを通る鉛直線Hに対して回転軸回転方向Aに偏倚するよう配置した例を示したが、排塵開口55の回転軸回転方向での中心Cが回転軸42の軸芯Pを通る鉛直線上に位置する構成、あるいは排塵開口55の回転軸回転方向Aでの中心Cが回転軸42の軸芯Pを通る鉛直線Hに対して回転軸回転方向Aとは反対方向に偏倚するよう配置した構成を採用してもよい。
【0057】
(5)上記した実施例では、カバー内空間56に配備する回転部材57を軸側カバー54の横カバー部54bに設けることによって回転軸42と一体回転する構成を採用した例を示したが、回転部材57を回転軸42あるいは軸側カバー54の外周部54cに設けてもよい。
【0058】
(6)上記した実施例では、回転部材57を、軸側カバー54の回転軸芯に沿う方向視での形状が帯板状となるように形成した例を示したが、湾曲形状となるよう形成して実施してもよい。
【0059】
(7)上記した実施例では、回転部材57を軸側カバー54の半径方向に沿う姿勢で設けた例を示したが、軸側カバー54の半径方向に対して傾斜する姿勢で設けてもよい。
【0060】
(8)上記した実施例では、帯板状の回転部材57を採用した例を示したが、丸棒や角棒などの棒材、線材やアングル材など形状が各種異なる部材でなる回転部材57を採用してもよい。
【0061】
(9)上記した実施例では、回転部材57を一つだけ設けた例を示したが、二つ以上設けて実施してもよい。
【0062】
(10)上記した実施例では、一対の回転軸42,43の一方にカッタ47を設け、他方に供給体48を設けた例を示したが、供給体48としてカッタ機能を備えた供給体を採用して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、自脱型のコンバインの脱穀装置の他、定置型の脱穀装置に連結される排ワラ細断装置にも利用できる。
【符号の説明】
【0064】
5 脱穀装置
40 細断ケース
42,43 回転軸
47 カッタ
48 供給体
50 ホルダ
51 ベアリング
53 ケース側カバー
54 軸側カバー
54c 軸側カバーの外周部
55 排塵開口
56 カバー内空間
57 回転部材
58 回転羽根板
58a 切り欠き部
58b 端面
62 ばねケース
62a ばねケースの外周面
62b ばねケースの側面
64 ばね体
A 回転軸回転方向
C 排塵開口の中心
P 回転軸の軸芯
H 鉛直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細断ケースに駆動回転自在に支持される一対の回転軸の一方に複数枚のカッタを前記回転軸の軸芯方向に並べて一体回転自在に設け、前記一対の回転軸の他方に複数枚の供給体を前記回転軸の軸芯方向に並べて一体回転自在に設けて、前記複数枚のカッタによって脱穀排ワラを細断するよう構成した排ワラ細断装置であって、
前記回転軸を支持するベアリングのホルダの外周囲に前記回転軸と同軸芯状に位置する状態で前記細断ケースの内面側に固定されるケース側カバーと、外周部が前記ケース側カバーに対して前記回転軸の半径方向に重合する状態で前記回転軸に一体回転自在に連結されて前記ケース側カバーに対して相対回転する軸側カバーとを、前記一対の回転軸の一方又は両方に対応させて設け、
前記ケース側カバーの下部に、前記ケース側カバーと前記軸側カバーとによって前記ホルダの周囲に形成されるカバー内空間から塵埃を排出する排塵開口を設け、
前記カバー内空間に、前記排塵開口に塵埃を掻き出す回転部材を前記回転軸と一体回転自在に配備してある排ワラ細断装置。
【請求項2】
前記排塵開口の回転軸回転方向での中心が前記回転軸の軸芯を通る鉛直線に対して回転軸回転方向下手側に偏倚するように、前記排塵開口を配置してある請求項1記載の排ワラ細断装置。
【請求項3】
前記細断ケースが脱穀装置の後部に連結され、前記一対の回転軸が脱穀装置前後方向に並ぶ状態で備えられ、前記ケース側カバー及び前記軸側カバーが、前記一対の回転軸のうちの脱穀装置後方側の回転軸に対応させて設けられている請求項2記載の排ワラ細断装置。
【請求項4】
前記回転軸の前記軸側カバーの外側近くに、ばね体を前記複数枚のカッタ又は前記複数枚の供給体に対して前記回転軸の軸芯方向に押圧作用する状態で外嵌し、
前記ばね体を収容するばねケースを、前記軸側カバーに一体回転自在に連結してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の排ワラ細断装置。
【請求項5】
前記ばねケースに対して前記軸側カバーが位置する側とは反対側に配置した回転羽根板を、前記回転軸の外周側に前記回転軸と一体回転自在に設け、
前記回転羽根板の前記ばねケース側の端部に前記ばねケースが入り込む切り欠き部を設け、
前記回転羽根板の前記切り欠き部に臨む端面が前記ばねケースの外周面及び側面に当接する状態で前記回転羽根板を組み付けてある請求項4記載の排ワラ細断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−191909(P2012−191909A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59642(P2011−59642)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】