説明

排気ガス分析装置及び排気ガス分析方法

【課題】広い濃度範囲で高い測定精度を得ることができる排気ガス分析装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る排気ガス分析装置は、排気ガスの一部が流れる第1の配管12と、第1の配管12に希釈ガスを導入して前記排気ガスを希釈する希釈ガス導入手段15bと、第1の配管12を流れる希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度を測定する濃度測定手段3と、第1の配管12を流れる希釈前の排気ガスの流量を測定する第1の流量測定手段12bと、濃度測定手段3及び第1の流量測定手段12bそれぞれの測定結果に基づいて、希釈後の排気ガスに含まれる特定成分の濃度が一定範囲内に収まるように希釈ガス導入手段15bを介して希釈ガスの導入量を制御し、かつ濃度測定手段3による測定結果、第1の流量測定手段12bによる測定結果、及び希釈ガス導入量に基づいて、希釈前の排気ガスにおける特定物質の濃度を算出する演算制御部4とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス分析装置及び排気ガス分析方法に関する。特に本発明は、広い濃度範囲で高い測定精度を得ることができる排気ガス分析装置及び排気ガス分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の排気ガス分析装置の構成を説明する為の概略図である。この排気ガス分析装置は、半導体製造装置100から排出される排気ガスに含まれるCF及びC等の濃度を測定する装置である。排気ガスは、半導体製造装置100から配管110を介して除害装置102に送られる。除害装置102では、特定物質の分解が行われる。除害装置102で処理された排気ガスは、排気管111を介して外気に放出される。排気管111を流れる排気ガスの流量は流量測定手段111aによって測定される。また、排気管111を流れる排気ガスの一部は配管112を介してセル113に導入され、その後配管114を介して排気管111に戻される。セル113では、排気ガス中に残留している特定物質の濃度がFTIR103によって測定される。そして、演算部104が、FTIR103及び流量測定手段111aそれぞれの測定結果に基づいて、除害装置102から外部に放出される特定物質の量を算出する。図3に類似する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−277395号公報(図1、第11段落〜第30段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
FTIR等の分析装置において、精度よく濃度を測定できる濃度範囲には上限と下限がある。これに対して半導体製造装置から排出される排気ガスに含まれる特定物質の濃度は、非常に広い範囲で変動する。分析装置がFTIRの場合、長さが異なるセルに変更することにより、精度よく濃度を測定できる濃度範囲を変更することができるが、半導体の製造ラインにおいて適宜セルを選択して変更することは実質的に困難である。このように、上記した従来の排気ガス分析装置では、広い濃度範囲で高い測定精度を得ることは困難だった。
【0005】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、広い濃度範囲で高い測定精度を得ることができる排気ガス分析装置及び排気ガス分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る排気ガス分析装置は、半導体製造装置から排出される排気ガスを外気へ排気する排気管に接続し、前記排気ガスの一部が流れる第1の配管と、
前記第1の配管に希釈ガスを導入して前記排気ガスを希釈する希釈ガス導入手段と、
前記第1の配管を流れる希釈後の前記排気ガスに含まれる特定物質の濃度を測定する濃度測定手段と、
前記第1の配管を流れる希釈前の前記排気ガスの流量を測定する第1の流量測定手段と、
前記濃度測定手段及び前記第1の流量測定手段それぞれの測定結果に基づいて、前記希釈後の排気ガスに含まれる特定成分の濃度が一定範囲内に収まるように前記希釈ガス導入手段を介して希釈ガスの導入量を制御し、かつ前記濃度測定手段による測定結果、前記第1の流量測定手段による測定結果、及び前記希釈ガス導入量に基づいて、前記希釈前の排気ガスにおける前記特定物質の濃度を算出する演算制御部と、
を具備する。
前記濃度測定手段は、例えばFTIRである。
【0007】
この排気バス分析装置によれば、前記演算制御部が希釈ガスの流量を調節するため、前記濃度測定手段が測定する状態すなわち前記希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度が、前記一定範囲を外れる場合が少なくなる。このため、広い濃度範囲で高い測定精度を得ることができる。
【0008】
前記第1の流量測定手段は、前記第1の配管を流れる前記希釈前の排気ガスの流量を制御してもよい。この場合、前記演算制御部は、前記希釈ガス導入手段を解して希釈ガスの導入量を制御するとともに、前記第1の流量測定手段を介して前記第1の配管を流れる前記希釈前の排気ガスの流量を制御することにより、前記希釈後の排気ガスに含まれる特定成分の濃度が一定範囲内に収まるようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る排気ガス分析装置は、半導体製造装置から排出される排気ガスを外気へ排気する排気管に接続し、前記排気ガスの一部が流れる第1の配管と、
前記第1の配管に希釈ガスを導入する希釈ガス導入手段と、
前記第1の配管を流れる希釈後の前記排気ガスに含まれる特定物質の濃度を測定する濃度測定手段と、
前記第1の配管を流れる希釈前の前記排気ガスの流量を制御する流量制御手段と、
前記希釈ガス導入手段による希釈ガス導入量及び前記濃度測定手段の測定結果に基づいて、前記希釈後の排気ガスに含まれる特定成分の濃度が一定範囲内に収まるように前記流量制御手段を介して前記第1の配管を流れる前記希釈前の排気ガスの流量を制御し、かつ前記濃度測定手段による測定結果、前記第1の配管を流れる前記希釈前の排気ガスの流量、及び前記希釈ガス導入量に基づいて、前記排気ガスに含まれる前記特定物質の濃度を算出する演算制御部とを具備する。
【0010】
前記排気管を流れる前記排気ガスの流量を測定する第2の流量測定手段を更に具備し、前記演算制御部は、前記希釈前の排気ガスにおける前記特定物質の濃度、及び前記第2の流量測定手段の測定結果に基づいて、前記半導体製造装置から排出される前記特定物質の量を算出してもよい。
前記特定物質は、例えばCF又はCである。
【0011】
本発明に係る排気ガス分析方法は、半導体製造装置から排出される排気ガスの一部を、流量を測定しつつ第1の配管に流し、
前記第1の配管に希釈ガスを導入することにより前記排気ガスを希釈した後、該希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度を測定し、
前記第1の配管における前記希釈前の排気ガスの流量、及び前記希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度それぞれに基づいて、前記希釈前の排気ガスに含まれる特定成分の濃度が一定範囲内に収まるように前記希釈ガスの導入量を制御し、
前記希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度、前記希釈ガスの導入量、及び前記第1の配管における前記希釈前の排気ガスの流量に基づいて、前記排気ガスに含まれる前記特定物質の濃度を算出するものである。
【0012】
本発明に係る他の排気ガス分析方法は、半導体製造装置から排出される排気ガスの一部を、流量を制御しつつ第1の配管に流し、
前記第1の配管に希釈ガスを、量を測定しつつ導入することにより前記排気ガスを希釈した後、該希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度を測定し、
前記希釈ガスの導入量、及び前記濃度測定手段による前記特定物質の濃度それぞれに基づいて、前記希釈前の排気ガスに含まれる特定成分の濃度が一定範囲内に収まるように前記第1の配管を流れる前記希釈前の排気ガスの流量を制御し、
前記希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度、前記希釈ガスの導入量、及び前記第1の配管における前記希釈前の排気ガスの流量に基づいて、前記排気ガスに含まれる前記特定物質の濃度を算出するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る排気ガス分析装置の構成を説明する為の概略図である。この排気ガス分析装置は、半導体製造装置1から排出される排気ガスに含まれる特定物質(例えばCF又はC)の濃度を測定する装置である。排気ガスは、半導体製造装置1から配管10を介して除害装置2に送られる。除害装置2では特定物質の分解等が行われるため、排気ガス中に含まれる特定物質の濃度が低下する。除害装置2から排出された排気ガスは、排気管11を介して外気に放出される。
【0014】
排気管11を流れる排気ガスの流量は流量測定手段11aによって測定される。また排気管11には、流量測定手段11aより下流の部分に配管12が取り付けられている。配管12は排気ガスの一部をセル13に導入する。セル13では、排気ガス中に残留している特定物質の濃度がFTIR3によって測定される。セル13には、配管14が接続されている。配管14にはポンプ14aが取り付けられており、セル13に導入された排気ガスは、配管14を介して排気管11に戻される。
【0015】
配管12にはバルブ12a及び流量測定手段12b(例えばマスフローコントローラ)が取り付けられている。流量測定手段12bは配管12内を流れる排気ガスの流量を制御する機能も有している。また、配管12には、流量測定手段12bより下流側の部分に配管15が接続されている。配管15は、希釈ガス(例えばN)を配管12に流して排気ガスを希釈する。このため、FTIR3は、希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度を測定することになる。配管15には、バルブ15a及び流量測定手段15b(例えばマスフローコントローラ)が取り付けられている。流量測定手段15bは配管15内を流れる希釈ガスの流量を制御する機能も有している。
【0016】
流量測定手段11a及びFTIR3の測定値は演算制御部4に出力され、流量測定手段12b、15bは演算制御部4によって制御される。演算制御部4は、流量測定手段12bが制御している希釈前の排気ガスの流量と、流量測定手段12bが制御している希釈ガスの流量の比に基づいて、排気ガスの希釈率を算出する。そして演算制御部4は、算出した希釈率とFTIR3の測定値に基づいて、排気ガス中に残留している特定物質の濃度を算出する。そして演算制御部4は、算出した特定物質の濃度と流量測定手段11aの測定値に基づいて、除害装置2から排出される特定物質の量を算出する。
【0017】
次に図2を用いて、演算制御部4が希釈ガスの流量及び配管12内の排気ガスの流量を調節する論理を説明する。図2は、排気ガスに含まれる特定物質の濃度とFTIR3の検出値の関係を示すグラフである。FTIR3の検出値は、赤外線の吸収波長ピークの面積で示される。本図に示すように、FTIR3の検出値と特定物質の濃度は、特定物質の濃度がC以上C以下にあるときに、特定の関数で精度よく近似(例えば直線近似)することができるが、この範囲を外れたときには、この関数による近似の精度は低下する。C、Cの値は、セル13の長さによって調節することができる。
【0018】
そこで演算制御部4は、セル13に流入する希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度が、所定の範囲の中心値Cになるように、流量測定手段12b、15bをフィードバック制御する。すなわちFTIR3の測定値がC超の場合、希釈ガスの流量を増やし、また場合によっては配管12内を流れる希釈前の排気ガスの流量を減らす。またFTIR3の測定値がC未満の場合、希釈ガスの流量を減らし、また場合によっては配管12内を流れる希釈前の排気ガスの流量を増やす。このため、セル13に流入する排気ガスに含まれる特定物質の濃度が所定の範囲を外れる場合が少なくなる。
【0019】
尚、特定物質の種類によってC、C、Cの値は変動する。演算制御部4は、予めC、C、Cの値を特定物質の種類別に保持しており、濃度を測定すべき特定物質が入力されると、対応するC、C、Cの値を読み出して用いる。濃度を測定すべき特定物質が複数種類ある場合、演算制御部4は、それぞれの物質ごとにC、C、Cの値を読み出しておき、測定している特定物質(すなわち定量化すべき波長ピーク)を変更しつつC、C、Cの値を変更する。
【0020】
以上、本発明の実施形態によれば、演算制御部4が希釈ガスの流量及び配管12内の排気ガスの流量を調節するため、セル13に流入する排気ガスに含まれる特定物質の濃度が所定の範囲を外れる場合が少なくなる。このため、C、Cがある程度低い値となるようにセル13の長さを設定しておくことにより、特定物質の濃度が低い場合から濃い場合まで、FTIR3の測定値の測定精度を高くすることができる。
【0021】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば演算制御部4は、流量測定手段15bのみをフィードバック制御することにより、セル13に流入する排気ガスに含まれる特定物質の濃度が、所定の範囲の中心値Cになるようにしてもよいし、流量測定手段12bのみをフィードバック制御することにより、セル13に流入する排気ガスに含まれる特定物質の濃度が、所定の範囲の中心値Cになるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る排気ガス分析装置の構成を説明する為の概略図。
【図2】排気ガスに含まれる特定物質の濃度とFTIR3の検出値の関係を示すグラフ。
【図3】従来の排気ガス分析装置の構成を説明する為の概略図。
【符号の説明】
【0023】
1,100…半導体製造装置、2,102…除害装置、3,103…FTIR、4…演算制御部、10,14,15,100,112,114…配管、11,111…排気管、11a,12b,15b,111a…流量測定手段、12a,15a…バルブ、13,113…セル、14a…ポンプ,104…演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置から排出される排気ガスを外気へ排気する排気管に接続し、前記排気ガスの一部が流れる第1の配管と、
前記第1の配管に希釈ガスを導入して前記排気ガスを希釈する希釈ガス導入手段と、
前記第1の配管を流れる希釈後の前記排気ガスに含まれる特定物質の濃度を測定する濃度測定手段と、
前記第1の配管を流れる希釈前の前記排気ガスの流量を測定する第1の流量測定手段と、
前記濃度測定手段及び前記第1の流量測定手段それぞれの測定結果に基づいて、前記希釈後の排気ガスに含まれる特定成分の濃度が一定範囲内に収まるように前記希釈ガス導入手段を介して希釈ガスの導入量を制御し、かつ前記濃度測定手段による測定結果、前記第1の流量測定手段による測定結果、及び前記希釈ガス導入量に基づいて、前記希釈前の排気ガスにおける前記特定物質の濃度を算出する演算制御部と、
を具備する排気ガス分析装置。
【請求項2】
前記濃度測定手段はFTIRである請求項1に記載の排気ガス分析装置。
【請求項3】
前記第1の流量測定手段は、前記第1の配管を流れる前記希釈前の排気ガスの流量を制御し、
前記演算制御部は、前記希釈ガス導入手段を解して希釈ガスの導入量を制御するとともに、前記第1の流量測定手段を介して前記第1の配管を流れる前記希釈前の排気ガスの流量を制御することにより、前記希釈後の排気ガスに含まれる特定成分の濃度が一定範囲内に収まるようにする請求項1又は2に記載の排気ガス分析装置。
【請求項4】
半導体製造装置から排出される排気ガスを外気へ排気する排気管に接続し、前記排気ガスの一部が流れる第1の配管と、
前記第1の配管に希釈ガスを導入する希釈ガス導入手段と、
前記第1の配管を流れる希釈後の前記排気ガスに含まれる特定物質の濃度を測定する濃度測定手段と、
前記第1の配管を流れる希釈前の前記排気ガスの流量を制御する流量制御手段と、
前記希釈ガス導入手段による希釈ガス導入量及び前記濃度測定手段の測定結果に基づいて、前記希釈後の排気ガスに含まれる特定成分の濃度が一定範囲内に収まるように前記流量制御手段を介して前記第1の配管を流れる前記希釈前の排気ガスの流量を制御し、かつ前記濃度測定手段による測定結果、前記第1の配管を流れる前記希釈前の排気ガスの流量、及び前記希釈ガス導入量に基づいて、前記排気ガスに含まれる前記特定物質の濃度を算出する演算制御部と、
を具備する排気ガス分析装置。
【請求項5】
前記排気管を流れる前記排気ガスの流量を測定する第2の流量測定手段を更に具備し、
前記演算制御部は、前記希釈前の排気ガスにおける前記特定物質の濃度、及び前記第2の流量測定手段の測定結果に基づいて、前記半導体製造装置から排出される前記特定物質の量を算出する請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガス分析装置。
【請求項6】
前記特定物質はCF又はCである請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気ガス分析装置。
【請求項7】
半導体製造装置から排出される排気ガスの一部を、流量を測定しつつ第1の配管に流し、
前記第1の配管に希釈ガスを導入することにより前記排気ガスを希釈した後、該希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度を測定し、
前記第1の配管における前記希釈前の排気ガスの流量、及び前記希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度それぞれに基づいて、前記希釈前の排気ガスに含まれる特定成分の濃度が一定範囲内に収まるように前記希釈ガスの導入量を制御し、
前記希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度、前記希釈ガスの導入量、及び前記第1の配管における前記希釈前の排気ガスの流量に基づいて、前記排気ガスに含まれる前記特定物質の濃度を算出する、排気ガス分析方法。
【請求項8】
半導体製造装置から排出される排気ガスの一部を、流量を制御しつつ第1の配管に流し、
前記第1の配管に希釈ガスを、量を測定しつつ導入することにより前記排気ガスを希釈した後、該希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度を測定し、
前記希釈ガスの導入量、及び前記濃度測定手段による前記特定物質の濃度それぞれに基づいて、前記希釈前の排気ガスに含まれる特定成分の濃度が一定範囲内に収まるように前記第1の配管を流れる前記希釈前の排気ガスの流量を制御し、
前記希釈後の排気ガスに含まれる特定物質の濃度、前記希釈ガスの導入量、及び前記第1の配管における前記希釈前の排気ガスの流量に基づいて、前記排気ガスに含まれる前記特定物質の濃度を算出する、排気ガス分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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