説明

排気採取装置

【課題】触媒コンバータ内の排気を試料として効率良く採取できる排気採取装置を提供する。
【解決手段】排気採取装置3は、内燃機関の排気通路100に配置された触媒コンバータ101内の排気を採取するため、触媒コンバータ101の出口101b側から挿入された状態で排気を採取する排気採取管5と、排気採取管5が挿入され、その排気採取管5を触媒コンバータの出口101b側の所定位置まで案内できる案内管6、7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に配置された触媒コンバータ内の排気を採取する排気採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気通路に配置された触媒コンバータの浄化能力等の性能を試験するため、触媒コンバータの上流及び下流のそれぞれから排気を採取する排気採取装置が知られている。例えば、触媒コンバータの上流及び下流のそれぞれに時分割サンプリング装置を設け、微小な時間間隔で排気をサンプリングして自動的に排気の成分を分析する装置が知られている(特許文献1)。また、触媒コンバータの上流及び下流のそれぞれに試料採取管を設け、これらの採取管を三方電磁弁で切り替えることにより採取位置を変更して触媒コンバータの浄化率を測定する装置(特許文献2)や、触媒コンバータの上流及び下流から導管によって排気を試料として採取し、その試料を触媒示差熱センサに導いて触媒コンバータの炭化水素転化効率を測定する装置(特許文献3)などが知られている。
【0003】
【特許文献1】特許第3177134号公報
【特許文献2】特開2005−172631号公報
【特許文献3】特開平6−235709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、触媒コンバータの性能を詳細に分析するためには触媒コンバータ内の排気を採取することが望ましい。一般に、触媒コンバータは排気と触媒物質との接触面積を稼ぐため入口側から出口側へ延びる壁部にて仕切られた複数の貫通空間が形成され、その壁部に触媒物質が担持される。そこで、その貫通空間に排気採取管を挿入することにより、触媒コンバータ内の排気を試料として採取できる。この方法として、触媒コンバータの横から壁部を突き破るようにして排気採取管を挿入することがある。この場合は触媒コンバータの壁部を排気採取管の挿入により一部破損させるものであるので、再使用できない問題がある。また、排気採取管を壁部に沿って挿入する方法もあるが、この場合でも排気採取管を触媒コンバータの貫通空間に挿入し、かつその位置合わせを行うためには触媒コンバータを排気通路から取り外さなければならないので、試料採取の準備に手間がかかる。
【0005】
そこで、本発明は触媒コンバータ内の排気を試料として効率良く採取できる排気採取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排気採取装置は、内燃機関の排気通路に配置され、かつ入口側から出口側へ延びる壁部にて仕切られた複数の貫通空間が設けられた触媒コンバータ内の排気を採取する排気採取装置であって、前記触媒コンバータの前記出口側から前記貫通空間に挿入された状態で排気を採取する排気採取管と、前記排気採取管が挿入され、挿入された前記排気採取管を前記触媒コンバータの前記出口側の所定位置まで案内できる案内管とを備えることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0007】
この排気採取装置によれば、排気採取管が案内管に挿入されることにより、その排気採取管は触媒コンバータの出口側の所定位置まで案内される。所定位置まで案内された排気採取管を更に押し込むことにより排気採取管を触媒コンバータの出口側から貫通空間へ挿入することができる。従って、排気採取管を触媒コンバータの貫通空間内に挿入してその位置合わせを行うために、触媒コンバータを排気通路から取り外す必要はないので、触媒コンバータ内の排気を試料として効率良く採取できる。また、排気採取管をスライドさせることで、触媒コンバータの長手方向に関する任意の位置から排気を採取することが可能となる。
【0008】
本発明の排気採取装置の一態様においては、前記触媒コンバータの前記出口側に着脱可能に配置されて前記排気通路の一部を構成する支持管を更に備え、前記案内管は、前記排気通路内から前記支持管の周壁を貫いて前記排気通路の外部へ引き出されるようにして前記支持管に取り付けられ、前記排気採取管は、一端が前記触媒コンバータの前記貫通空間内に位置し、かつ他端が前記排気通路の外部へ引き出されるようにして前記案内管に挿入されてもよい(請求項2)。この態様によれば、支持管に案内管が取り付けられることによりこれらが一体化しているので、支持管を排気通路に装着することで案内管の位置決めが完了する。排気を採取する必要がない場合は支持管を案内管ごと排気通路から取り外すせばよい。このように、この態様によれば排気採取装置の排気通路への取り付け及びその取り外しが容易になり利便性が向上する。
【0009】
また、本発明の排気採取装置の一態様においては、前記案内管として、前記排気採取管を前記触媒コンバータの前記出口側の中央部に案内する第1の案内管と、前記排気採取管を前記触媒コンバータの前記出口側の前記中央部よりも径方向外側に案内する第2の案内管とが設けられ、前記第1及び第2の案内管のそれぞれに前記排気採取管が挿入されてもよい(請求項3)。この場合、触媒コンバータの中央部の排気とその中央部よりも径方向外側の排気とを同時に採取することが可能となる。
【0010】
また、本発明の排気採取装置の一態様においては、前記案内管に案内された前記排気採取管に熱を加える加熱手段を更に備えてもよい(請求項4)。排気採取管にて採取される排気はその温度が変化することにより粘性が変化する。これにより、排気採取管に導かれる排気の温度変化によって流量が変動する。この態様によれば、排気採取管に熱が加えられることにより排気採取管に導かれる排気の温度低下を抑えることができるため、排気採取管にて採取される排気の温度変化を原因とした流量変動を防止することができる。また、排気採取管の温度変化が抑えられて温度が安定化するので、排気採取管の熱劣化を防止することができる。
【0011】
この態様では、加熱手段として種々の態様を採用できる。例えば、加熱手段として、案内管にリボンヒータ等の発熱体を装着することにより排気採取管に熱を加えるようにしてもよい。また、加熱手段として、前記排気採取管が採取した排気の温度低下を抑制できる温度に設定された高温媒体を前記案内管の内部へ供給する高温媒体供給手段が設けられてもよい(請求項5)。この場合は、高温媒体を導く通路として案内管を利用しているので、案内管にて案内される排気採取管へ満遍なく熱を加えることが容易になる。高温媒体の設定温度は排気採取管が採取した排気の温度低下を抑制できる温度であればよい。温度低下を完全になくすことは必須ではないが、高温媒体の設定温度が排気通路内の排気の温度と同等であれば好ましい。高温媒体は空気等の気体でもよいし液体でもよい。高温媒体の熱源としてヒータ等の発熱体を設けてもよいが、その熱源として排気通路を流れる排気を利用してもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の排気採取装置によれば、排気採取管が案内管に挿入されることにより、その排気採取管は触媒コンバータの出口側の所定位置まで案内される。所定位置まで案内された排気採取管を更に押し込むことにより排気採取管を触媒コンバータの出口側から貫通空間へ挿入することができる。従って、排気採取管を触媒コンバータの貫通空間内に挿入し、その位置合わせを行うために触媒コンバータを排気通路から取り外す必要はないので、触媒コンバータ内の排気を試料として効率良く採取できる。また、触媒コンバータを破損させずに触媒コンバータ内の排気の試料採取が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る排気採取装置が組み込まれた排気分析機の要部を示し、図2は図1のII−II線に沿った断面を示している。排気分析機1は内燃機関の排気通路100に配置された触媒コンバータ101内の排気を分析するため、触媒コンバータ101内の排気を試料として採取する排気採取装置3と、その排気採取装置3が採取した排気の成分や特定成分の濃度等を測定する分析装置4とを備えている。分析装置4は排気の分析結果を得るための所定の演算を行うコンピュータ等の演算部、演算部の演算結果を分析結果として出力する出力部及び分析結果を記憶する記憶部(いずれも不図示)を備えた周知の装置である。
【0014】
内燃機関の排気は図中左側から右側に向かって排気通路100にて導かれる。触媒コンバータ101は触媒本体102とこの触媒本体102が収められて排気通路100の一部を構成するケーシング103とを備える。触媒本体102は図2に示すように壁部102aにて仕切られた複数の貫通空間104が設けられている。壁部102aはセラミック等の多孔質材料で構成され、触媒コンバータ101の入口101a側から出口101b側へ延びている。触媒本体102は、アルミナをベースとし、これに白金、パラジウム及びロジウムを加えた触媒物質が壁部102aにコーティングされた三元触媒として構成されている。
【0015】
図3は図1に示した排気採取装置3の要部を拡大した斜視図である。図1及び図3に示すように、排気採取装置3は触媒コンバータ101の出口101b側から貫通空間104に挿入された状態で排気を採取する排気採取管5と、この排気採取管5が挿入されて触媒コンバータ101の出口101b側の中央部に案内する第1の案内管6と、その中央部よりも径方向外側に排気採取管5を案内する第2の案内管7と、これらの案内管6、7が取り付けられて排気通路100の一部を構成する支持管8とを備えている。
【0016】
排気採取管5は触媒コンバータ101の貫通空間104内に挿入できる十分に細い管であり、曲げ変形が可能な柔軟性を有している。排気採取管5の材料としては排気の熱に耐え得るガラスやステンレス鋼が選択される。各案内管6、7は排気採取管5を挿入できる内径を有したステンレス鋼製の管であり、排気採取管5を所定位置に案内できるように所定形状に曲げられている。各案内管6、7は排気通路100内から支持管8の周壁を貫いて外部へ引き出されるようにして溶接等の接合手段にて支持管8に取り付けられている。これにより、排気通路100に支持管8が設けられた状態で、排気採取管5を各案内管6、7に挿入することにより、排気採取管5は触媒コンバータ101の出口側101bの中央部と、その中央部よりも径方向外側とにそれぞれ案内される。そして、排気採取管5を更に押し込むことにより、触媒コンバータ101の貫通空間104に排気採取管5を挿入することができる。
【0017】
支持管8の両端にはフランジ9が設けられており、上流側のフランジ9はケーシング104のフランジ105に、下流側のフランジ9は排気通路100のフランジ106にボルト等の締結手段(不図示)を介してそれぞれ取り付けられる。図3に示すように、支持管8のフランジ9には等間隔に6つのボルト孔9aが形成されており、ケーシング104のフランジ105にはフランジ9のボルト孔9aと対応する不図示のボルト孔が形成されている。フランジ9のボルト孔9aとフランジ105のボルト孔との組み合わせを変更することで、第2の案内管7による排気採取管5の案内位置を60°ずつ変更することが可能である。
【0018】
排気採取管5はその一端が触媒コンバータ101の貫通空間104内に位置し、その他端が排気通路100の外部へ引き出されるようにして第1の案内管6及び第2の案内管7にそれぞれ挿入される。排気採取管5の一端は案内管6、7から露出した露出部5aの長さを調整することによりスライドする。そのため、その一端を貫通空間104の長手方向の任意の位置、例えば図1のa、b、cの各位置に設定することができる。排気採取管5の他端はカプラ10を介して分析装置4に接続される。
【0019】
図1に示すように、排気採取装置3には、排気採取管5にて採取した排気が排気採取管5から分析装置4へ導かれる過程で温度が低下することを抑制するため、加熱手段としての高温空気供給装置11が設けられている。高温空気供給装置11は、高温媒体としての高温空気を各案内管6、7に供給するため、連結部12aを介して各案内管6、7に連通する供給管12と、供給管12を通過する空気を加熱するヒータ13と、空気を供給管12に取り込んでヒータ13にて加熱された空気を各案内管6、7に圧送するポンプ14とを備えている。なお、図3に示すように、各案内管6、7の先端部側面には高温空気を排気通路100内に排出するための排出口6a、7aが設けられている。
【0020】
高温空気の設定温度は排気採取管5を通る排気の温度低下を抑制できる限度でヒータ13を操作することにより適宜設定される。この設定温度は排気の温度と同等にすることが好ましいが、少なくとも排気通路100の外部の雰囲気温度よりも高くすれば、排気採取管5を通る排気の温度低下をある程度抑制することができる。高温空気供給装置11にて高温空気が各案内管6、7に供給されると、排気採取管5と各案内管6、7との間に形成される隙間は高温空気で満たされる。これにより、排気採取管5を通る排気の温度低下を抑制できる。その温度低下が抑制されることで、排気採取管5を通る排気の粘性の変動が抑えられる結果、採取される排気の流量変動が抑制される。これにより、排気採取管5にて正確な量の排気を採取できるため分析装置4による分析結果の信頼性が向上する。
【0021】
本発明は以上の形態に限定されず、種々の形態にて実現できる。図示の形態では互いに構成が相違する二本の案内管を設けているが案内管の本数に制限はなく、また案内管が案内する位置にも制限はない。また、図示の形態は、二本の案内管のそれぞれに排気採取管が挿入されて、互いに相違する位置から排気を同時に採取できるように構成されているが、排気採取管がいずれか一方の案内管のみに挿入された状態で排気採取装置を使用することになんら問題はない。
【0022】
上述した形態では、排気採取管5の露出部5aの長さを調整することで排気の採取位置を調整しているが、採取した排気の温度低下を抑制する観点から露出部5aが少ないほど好ましい。そこで、図4に示すように、各案内管6、7にそれらの一部を伸縮できる長さ調整部15を設けてもよい。これにより、排気の採取位置の変更に応じて長さ調整部15を操作して各案内管6、7の長さを伸縮することにより、露出部5aを可能な限り少なくできる。長さ調整部15は、図4に示すように互いに径の相違する複数の管を相互にスライド可能に組み合わせた周知の伸縮機構で実現できる。
【0023】
また、高温空気供給装置11は、その熱源としてヒータ13を使用しているが、この形態に代えて、供給管14と排気通路100との間で熱交換可能なように、供給管14を排気通路100に隣接させることにより、排気通路100を流れる排気を熱源として利用することもできる。この場合はヒータ13を省略又はヒータ13の発熱量を低減できる利点がある。また、高温空気供給装置11の代りに、各案内管6、7の周りにリボンヒータ等の発熱体を装着することにより加熱手段を実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気採取装置が組み込まれた排気分析機の要部を示した図。
【図2】図1のII−II線に沿った断面を示す断面図。
【図3】図1に示した排気採取装置の要部を拡大した斜視図。
【図4】図1に示した形態の変形例を示した図。
【符号の説明】
【0025】
3 排気採取装置
5 排気採取管
6 第1の案内管
7 第2の案内管
8 支持管
11 高温空気供給装置(加熱手段、高温媒体供給手段)
100 排気通路
101 触媒コンバータ
101a 入口
101b 出口
102 触媒本体
102a 壁部
104 貫通空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置され、かつ入口側から出口側へ延びる壁部にて仕切られた複数の貫通空間が設けられた触媒コンバータ内の排気を採取する排気採取装置であって、
前記触媒コンバータの前記出口側から前記貫通空間に挿入された状態で排気を採取する排気採取管と、前記排気採取管が挿入され、挿入された前記排気採取管を前記触媒コンバータの前記出口側の所定位置まで案内できる案内管とを備えることを特徴とする排気採取装置。
【請求項2】
前記触媒コンバータの前記出口側に着脱可能に配置されて前記排気通路の一部を構成する支持管を更に備え、
前記案内管は、前記排気通路内から前記支持管の周壁を貫いて前記排気通路の外部へ引き出されるようにして前記支持管に取り付けられ、
前記排気採取管は、一端が前記触媒コンバータの前記貫通空間内に位置し、かつ他端が前記排気通路の外部へ引き出されるようにして前記案内管に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の排気採取装置。
【請求項3】
前記案内管として、前記排気採取管を前記触媒コンバータの前記出口側の中央部に案内する第1の案内管と、前記排気採取管を前記触媒コンバータの前記出口側の前記中央部よりも径方向外側に案内する第2の案内管とが設けられ、
前記第1及び第2の案内管のそれぞれに前記排気採取管が挿入されていることを特徴とする請求項2に記載の排気採取装置。
【請求項4】
前記案内管に案内された前記排気採取管に熱を加える加熱手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気採取装置。
【請求項5】
前記加熱手段として、前記排気採取管が採取した排気の温度低下を抑制できる温度に設定された高温媒体を前記案内管の内部へ供給する高温媒体供給手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の排気採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−121485(P2008−121485A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304777(P2006−304777)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】