説明

排気浄化フィルタ

【課題】加工したセルに満遍なく排ガスを流入させることができ、また、ハニカム構造体に割れや欠けを発生しにくくできる排気浄化フィルタを提供すること。
【解決手段】DPFは、内燃機関の排気通路に配置され、この内燃機関から排出されるパティキュレートを捕集する。DPFは、多孔質壁により区画形成された複数のセル22を有する複数のセグメント21と、これら複数のセグメント21を接合することで形成された円柱状のハニカム構造体2と、を備える。ここで、ハニカム構造体2の外周部には、セル22が形成されていない厚さTの肉厚部25が全周に亘って設けられる。この肉厚部25の厚みTは、ハニカム構造体2のうちセル22が形成された部分の直径Lに対し1%以上5%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化フィルタに関し、特に内燃機関から排出されたパティキュレート(粒子状物質)を捕集するものに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気系にパティキュレートを捕集する排気浄化フィルタを設け、パティキュレートの排出量を低減する技術は広く用いられている。近年では、排気浄化フィルタとして所謂ウォールフロー型のフィルタが主として用いられている。ウォールフロー型の排気浄化フィルタは、排ガスの流路となる複数のセルが多孔質壁により区画形成されたハニカム構造体を備えており、この多孔質壁でパティキュレートを捕集する。また、捕集したパティキュレートは、排気浄化フィルタを昇温することで燃焼される。
【0003】
このような排気浄化フィルタの材料として、例えば、炭化珪素(SiC)を用いた場合、パティキュレートを燃焼させる際に発生する熱応力により、多孔質壁にクラックが発生し易い。そこで、熱応力を緩和するために、複数のセグメントの集合体としてハニカム構造体を形成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
図8は、排気浄化フィルタ9の構成を示す部分断面図である。
図9は、排気浄化フィルタ9の構成を示す上面図、すなわち、排気浄化フィルタ9を排ガスの上流側から視た図である。
排気浄化フィルタ9は、円柱状のハニカム構造体91を、円筒状のケーシング92の内部に収納することで形成される。ここで、ハニカム構造体91は、上述のように複数のセル93が形成されたセグメント94を複数準備し、これらセグメント94を接合することで形成される。また、ハニカム構造体91をケーシング92の内部で安定して固定するためには、ハニカム構造体91の外周面に帯状の保持材95を巻回し、さらに、このハニカム構造体91の両端側に円環状のメッシュリング96を取り付けた上で、ケーシング92の内部に挿入する。
【特許文献1】国際公開WO2003−31371号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図9に示すように、従来の排気浄化フィルタ9では、メッシュリング96によりハニカム構造体91をケーシング92の内部に固定すると、ハニカム構造体91の外周面側のセル93が、メッシュリング96により塞がれてしまい、これらセル93に排ガスが流入しにくくなるおそれがある。すなわち、外周面側に加工したセル93が有効に利用されず、加工にかかった費用が無駄になってしまう。
【0006】
図10は、排気浄化フィルタ9の端部側の構成を示す部分断面図である。
上述のように、ハニカム構造体91は、複数のセグメント94を接合することにより形成されるため、ハニカム構造体91の端面に凹凸が形成される場合がある。そこで、例えば、ハニカム構造体91の外周面側のセグメント94が大きく突出していた場合、図10の矢印97に示すように、メッシュリング96から突出したセグメント94の端面に荷重が集中し易くなってしまう。このため、振動により、ハニカム構造体91に割れや欠けが発生し易い。特に、セル93を区画する多孔質壁に割れが発生すると、この割れた部分から下流側へ排ガスが流れ易くなってしまうため、排気浄化フィルタの捕集能力が大きく低下するおそれがある。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、加工したセルに満遍なく排ガスを流入させることができ、また、ハニカム構造体に割れや欠けを発生しにくくできる排気浄化フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気通路に配置され、前記内燃機関から排出されるパティキュレートを捕集する排気浄化フィルタ(1,1A,1B)であって、多孔質壁(23)により区画形成された複数のセル(22)を有する複数のセグメント(21)と、これら複数のセグメントを接合することで形成された柱状のハニカム構造体(2,2A,2B)と、を備え、前記ハニカム構造体の外周部のうち少なくとも一部には、セルが形成されていない肉厚部(25,25A)が設けられ、当該肉厚部の厚み(T)は、前記ハニカム構造体のうちセルが形成された部分の直径(L)に対し1%以上5%以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排気浄化フィルタ(1B)において、前記ハニカム構造体(2B)のうち外周部を構成する複数のセグメント(215)同士を接合する接合部(261B)の厚みは、前記ハニカム構造体のうち外周部以外を構成する複数のセグメント(216)同士を接合する接合部(262B)の厚みよりも大きいことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の排気浄化フィルタ(1A)において、前記肉厚部(25A)は、前記ハニカム構造体の外周部を構成する複数のセグメント(212,213)のうち、セルが延びる方向に対し垂直な断面の断面積が小さいセグメント(212)の外周部にのみ設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れかに記載の排気浄化フィルタにおいて、前記ハニカム構造体の上流側および下流側、あるいは、上流側および下流側の何れかには、前記肉厚部に係止し、このハニカム構造体を支持する環状の網状部材(5,6)をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため請求項5に記載の発明は、内燃機関の排気通路に配置され、前記内燃機関から排出されるパティキュレートを捕集する排気浄化フィルタ(1,1A,1B)であって、多孔質壁(23)により区画形成された複数のセル(22)を有する複数のセグメント(21)と、これら複数のセグメントを接合することで形成された柱状のハニカム構造体(2,2A,2B)と、当該ハニカム構造体の外周部に係止し、このハニカム構造体を支持する環状の網状部材(5,6)と、を備え、前記ハニカム構造体の外周部のうち少なくとも一部には、セルが形成されていない肉厚部(25,25A)が設けられ、前記網状部材は、前記肉厚部に係止し、前記ハニカム構造体のセルを塞がないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、柱状のハニカム構造体の外周部のうち少なくとも一部に、セルが形成されていない肉厚部を設けた。また、この肉厚部の厚みを、ハニカム構造体のうちセルが形成された部分の直径に対し1%以上5%以下となるようにした。
ここで、複数のセグメントの集合体として形成されたハニカム構造体では、ハニカム構造体の外周部を構成するセグメントは、ハニカム構造体の中央部を構成するセグメントと比較して、振動が伝わり易いため、割れや欠けが発生し易い。このようなハニカム構造体の外周部に肉厚部を設けることにより、外周部側のセグメントの強度を向上し、ハニカム構造体に割れや欠けを発生しにくくすることができる。
【0014】
ここで、上述のようなメッシュリングによりハニカム構造体をケーシングの内部に固定する場合を想定する。この場合、本発明では、ハニカム構造体のうちセルが形成された部分の直径に対して1%以上5%以下の厚みの肉厚部をハニカム構造体の外周部の少なくとも一部に設けることにより、ハニカム構造体のセルを塞がないように、この肉厚部にのみメッシュリングを係止させることができる。これにより、加工した複数のセルに満遍なく排ガスを流入させることができるとともに、ケーシングの振動がメッシュリングを介してセグメントに直に伝達するのを防止し、ハニカム構造体に割れや欠けを発生しにくくすることができる。また、例えば、肉厚部に割れや欠けが発生した場合であっても、この肉厚部にはセルが形成されていないので、排気浄化フィルタのパティキュレート捕集能力が大きく低下することもない。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、ハニカム構造体のうち外周部を構成する複数のセグメント同士を接合する接合部の厚みを、ハニカム構造体のうち外周部以外を構成する複数のセグメント同士を接合する接合部の厚みよりも大きくした。これにより、外周部側のセグメントの強度をさらに向上することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、ハニカム構造体の外周部を構成する複数のセグメントのうち、セルが延びる方向に対し垂直な断面の断面積が小さいセグメントの外周部にのみ、肉厚部を設けた。ここで、複数のセグメントの集合体として構成したハニカム構造体において、断面積が小さなセグメントは、他のセグメントと比較して特に強度が小さい。このような断面積の小さなセグメントの外周部のみに肉厚部を設けることで、外周部側のセグメントの強度を無駄なく向上することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、ハニカム構造体の上流側および下流側、あるいは、上流側および下流側の何れかに、肉厚部に係止し、このハニカム構造体を支持する環状の網状部材を設けた。これにより、セルを塞ぐことなくハニカム構造体を支持することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、柱状のハニカム構造体の外周部のうち少なくとも一部に、セルが形成されていない肉厚部を設けた。これにより、外周部側のセグメントの強度を向上し、ハニカム構造体に割れや欠けを発生しにくくすることができる。
【0019】
また、このハニカム構造体のセルを塞がないように、肉厚部に係止させることで、ハニカム構造体を支持する環状の網状部材を設けた。これにより、加工した複数のセルに満遍なく排ガスを流入させることができるとともに、ケーシングの振動がメッシュリングを介してセグメントに直に伝達するのを防止し、ハニカム構造体に割れや欠けを発生しにくくすることができる。また、例えば、肉厚部に割れや欠けが発生した場合であっても、この肉厚部にはセルが形成されていないので、排気浄化フィルタの捕集能力が大きく低下することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る排気浄化フィルタ1の構成を示す分解斜視図である。
図2は、排気浄化フィルタ1の構成を示す部分断面図である。
排気浄化フィルタ1は、内燃機関の排気通路に配置され、この内燃機関から排出される排気に含まれるパティキュレートを捕集することで、排気を浄化するフィルタである。この排気浄化フィルタ1は、特にディーゼル内燃機関から排出される排気の浄化に好ましく利用されるものであり、以下では、「DPF」(Diesel Particulate Filter)という。
【0021】
DPF1は、円柱状のハニカム構造体2と、このハニカム構造体2が収納される円筒状のケーシング3と、ハニカム構造体2をケーシング3の内部に固定する保持材4並びに網状部材としての上流側メッシュリング5および下流側メッシュリング6と、を含んで構成される。
【0022】
図3は、ハニカム構造体2の構成を示す上面図、すなわち、ハニカム構造体2を排ガスの上流側から視た図である。
ハニカム構造体2は、複数の略正方形状のセル22を備えたハニカム状である。このハニカム構造体2は、これら複数のセル22を有する複数の柱状のセグメント21を含んで構成される。
【0023】
図4は、セグメント21の構成を示す断面図である。図4において、左方は排ガスの上流側を示し、右方は排ガスの下流側を示す。
セグメント21は、排ガスが流れる方向に沿って延びる複数の多孔質壁23と、これら多孔質壁23により区画形成され、排ガスの流路となる複数のセル22とを備える。なお、以下では、これらセル22が延びる方向を、ハニカム構造体2の軸線方向とする。
【0024】
図4に示すように、セル22は、上流側セル221と下流側セル222とに分けられ、これら上流側セル221と下流側セル222とは交互に配置される。
上流側セル221の下流側には、上流側セル221の内部からセグメント21の下流側へ排ガスが流出するのを防止する下流側目封じ242が設けられている。また、下流側セル222の上流側には、セグメント21の上流側から下流側セル222の内部へ排ガスが流入するのを防止する上流側目封じ241が設けられている。また、多孔質壁23には、複数の気孔が形成されており、排ガスが通過可能となっている。
【0025】
すなわち、セグメント21へ流入する排ガスは、先ず、上流側セル221内に流入し、多孔質壁23を通過して、下流側セル222内へ流入し、セグメント21外へ流出する。ここで、排ガスが多孔質壁23を通過する際、多孔質壁23の上流側の面、及び、多孔質壁23内に形成された孔には、排ガス中に含まれるパティキュレートが堆積する。
【0026】
図3に示すように、ハニカム構造体2は、以上のような複数のセグメント21を接合部26で互いに接合し、一体にすることで形成される。また、ハニカム構造体2の外周部には、セル22が形成されていない厚さTの肉厚部25が全周に亘って設けられている。このような肉厚部25は、例えば、複数のセグメント21を一体に成形し、円柱状のセグメント集合体を形成した後、このセグメント集合体の外周面に、肉厚部25の材料を所定の厚さで塗布することにより形成される。
【0027】
ここで、ハニカム構造体2を構成するセグメント21、接合部26、および肉厚部25には、それぞれセラミックスを主成分とする材料を用いることが好ましい。より具体的には、セグメント21、接合部26、および肉厚部25には、アルミナ、ムライト、リチウムアルミニウムシリケート、炭化珪素、窒化珪素、アルミナチタネート、およびコージェライト等を含む群から選ばれた1種または2種以上を用いることが好ましい。また、ハニカム構造体2の強度を特に向上させるためには、セグメント21、接合部26、および肉厚部25には、それぞれ同じ材料を用いることが好ましいが、これに限らず、それぞれ異なる材料を用いてもよい。
【0028】
図1および図2に戻って、ケーシング3は、ハニカム構造体2の軸線方向が、排ガスの流通方向と一致するように、ハニカム構造体2を保持する。このケーシング3には、例えば、ステンレスやNi−Cr合金等から形成されたものが用いられる。
【0029】
保持材4は、帯状であり、ハニカム構造体2の外周面に沿って巻回される。また、この保持材4は、ハニカム構造体2の外周面とケーシング3の内周面との間で圧縮された状態で、ハニカム構造体2とともにケーシング3の内部に収納される。この保持材4には、例えば、アルミナ繊維やムライト繊維等の耐熱性を有する繊維から形成されたものが用いられる。
【0030】
上流側メッシュリング5および下流側メッシュリング6は、それぞれ、円環状であり、ハニカム構造体2の上流側および下流側に係止し、このハニカム構造体2を両端から支持する。
【0031】
より具体的には、これらメッシュリング5,6のそれぞれのハニカム構造体2側には、それぞれ、ハニカム構造体2の外径と略等しい内径を有し、ハニカム構造体2の上流側の端部および下流側の端部が係止する凹部51,61が形成されている。
図2に示すように、上流側メッシュリング5の凹部51にハニカム構造体2の上流側を係止させると、この上流側メッシュリング5は、ハニカム構造体2の上流側において、外周面と上流側の端面との2つの面に接し、このハニカム構造体2を上流側から支持する。
また、下流側メッシュリング6の凹部61にハニカム構造体2の下流側を係止させると、この下流側メッシュリング6は、ハニカム構造体2の下流側において、外周面と下流側の端面との2つの面に接し、このハニカム構造体2を下流側から支持する。
【0032】
これらメッシュリング5,6は、それぞれ、金属メッシュ材を円環状に成形したものが用いられており、僅かに伸縮することが可能となっている。これらメッシュリング5,6は、ハニカム構造体2の外周面とケーシング3の内周面との間で圧縮された状態で、ハニカム構造体2とともにケーシング3の内部に収納される。これらメッシュリング5,6には、例えば、SUS310鋼等が用いられる。
【0033】
以上のような保持材4およびメッシュリング5,6を用いることにより、ハニカム構造体2をケーシング3の内部に安定して固定することができる。
【0034】
次に、図3および図5を参照して、ハニカム構造体2の肉厚部25の好ましい形態について説明する。
図5は、ハニカム構造体2およびメッシュリング5の構成を示す部分断面図である。
【0035】
上述のように、ハニカム構造体2の上流側および下流側には、それぞれ、メッシュリング5,6が係止する。このようにメッシュリング5,6をハニカム構造体2に係止させた場合、ハニカム構造体2の複数のセル22がメッシュリング5,6により塞がれないように、メッシュリング5,6および肉厚部25の寸法を設計する必要がある。
【0036】
例えば、メッシュリング5,6のうち、ハニカム構造体2の上流側の端面に接する部分の長さをWとすると、肉厚部25の厚さTは、このメッシュリング5の長さWに略等しいか、あるいは、長さWよりもやや小さくなるように設計することが好ましい。これにより、ハニカム構造体2のセル22を塞がないように、メッシュリング5,6を肉厚部25に係止させることができる。
【0037】
このように、肉厚部25の厚さTを、メッシュリング5,6の長さWと比較して設計することもできるが、ハニカム構造体2の直径と比較して設計することもできる。この場合、図3に示すように、ハニカム構造体2のうちセル22が形成された部分の直径をLとすると、肉厚部25の厚さTは、直径Lに対し1%以上5%以下であることが好ましい。このような厚さTの肉厚部25を形成することにより、ハニカム構造体2のセル22を塞がないように、メッシュリング5,6を係止させる面を確保することができる。
【0038】
本実施形態のDPF1によれば、以下の効果を奏する。
円柱状のハニカム構造体2の外周部に、セル22が形成されていない肉厚部25を全周に亘って設けた。また、この肉厚部25の厚みTを、ハニカム構造体2のうちセル22が形成された部分の直径Lに対し1%以上5%以下となるようにした。これにより、ハニカム構造体2の外周部に肉厚部25を設けることにより、外周部側のセグメント21の強度を向上し、ハニカム構造体2に割れや欠けを発生しにくくすることができる。
【0039】
また、ハニカム構造体2のうちセル22が形成された部分の直径Lに対して1%以上5%以下の厚みTの肉厚部25をハニカム構造体2の外周部に設けることにより、ハニカム構造体2のセル22を塞がないように、この肉厚部25にのみメッシュリング5,6を係止させることができる。これにより、加工した複数のセル22に満遍なく排ガスを流入させることができるとともに、ケーシング3の振動がメッシュリング5,6を介してセグメント21に直に伝達するのを防止し、ハニカム構造体2に割れや欠けを発生しにくくすることができる。また、例えば、肉厚部25に割れや欠けが発生した場合であっても、この肉厚部25にはセル22が形成されていないので、DPF1のパティキュレート捕集能力が大きく低下することもない。
【0040】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を、図面を参照して説明する。
以下の第2実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略化又は簡略化する。
【0041】
図6は、本実施形態に係るDPF1Aのハニカム構造体2Aの構成を示す正面図である。図6に示すように、本実施形態では、ハニカム構造体2Aの肉厚部25Aの構成が、第1実施形態と異なる。
【0042】
ハニカム構造体2Aは、複数のセグメントを接合部26により互いに接合し、一体にすることで形成される。ここで、複数のセグメントの集合体として、円柱状のハニカム構造体2Aを形成するためには、ハニカム構造体2Aの中央部を構成する複数のセグメント211と、ハニカム構造体2Aの外周部を構成する複数のセグメント212,213とで、形状が異なるものを用いる必要がある。特に、ハニカム構造体2Aの外周部を構成するセグメント212,213は、ハニカム構造体2Aの軸線方向に対し垂直な断面の断面積が小さいセグメント212と、大きいセグメント213とに分けられる。
【0043】
図6に示すように、本実施形態の肉厚部25Aは、ハニカム構造体2Aの外周部を構成するセグメント212,213のうち、断面積が小さいセグメント212の外周部にのみ設けられる。
【0044】
本実施形態のDPF1Aによれば、第1実施形態のDPF1と同様の効果に加えて、以下の効果を奏する。
ハニカム構造体2Aの外周部を構成する複数のセグメント212,213のうち、ハニカム構造体2の軸線方向に対し垂直な断面の断面積が小さいセグメント212の外周部にのみ、肉厚部25Aを設けた。ここで、複数のセグメント211,212,213の集合体として構成したハニカム構造体2Aにおいて、断面積が小さなセグメント212は、他のセグメント211,213と比較して特に強度が小さい。このような断面積の小さなセグメント212の外周部のみに肉厚部25Aを設けることで、外周部側のセグメントの強度を無駄なく向上することができる。
【0045】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を、図面を参照して説明する。
以下の第3実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略化又は簡略化する。
【0046】
図7は、本実施形態に係るDPF1Bのハニカム構造体2Bの構成を示す正面図である。図7に示すように、本実施形態では、ハニカム構造体2Bの構成が第1実施形態と異なる。
【0047】
本実施形態のハニカム構造体2Bでは、ハニカム構造体2Bのうち外周部を構成する複数のセグメント215同士を接合する接合部261Bの厚みは、ハニカム構造体2Bのうち中央部を構成する複数のセグメント216同士を接合する接合部262Bの厚みよりも大きい。
【0048】
本実施形態のDPF1Bによれば、第1実施形態のDPF1が奏する効果に加えて、以下の効果がある。
ハニカム構造体2Bのうち外周部を構成する複数のセグメント215同士を接合する接合部261Bの厚みを、ハニカム構造体2Bのうち外周部以外を構成する複数のセグメント216同士を接合する接合部262Bの厚みよりも大きくした。これにより、外周部側のセグメント215の強度をさらに向上することができる。
【0049】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。
上述した実施形態では、円柱状のハニカム構造体を例に説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、セルが延びる方向に対し垂直な断面が楕円状や三角形状などのハニカム構造体であってもよい。
【0050】
上述した実施形態では、ハニカム構造体2の上流側および下流側の両方にメッシュリング5,6を設けたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ハニカム構造体の上流側および下流側の何れかのみにメッシュリングを設けてもよい。
【0051】
上述した第1実施形態では、ハニカム構造体2の外周部の全周に亘って肉厚部25を形成したが、これに限るものではない。例えば、第2実施形態のハニカム構造体2Aの肉厚部25Aのように、ハニカム構造体の外周部の一部にのみ設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係るDPFの構成を示す分解斜視図である。
【図2】上記実施形態に係るDPFの構成を示す部分断面図である。
【図3】上記実施形態に係るハニカム構造体の構成を示す上面図である。
【図4】上記実施形態に係るセグメントの構成を示す断面図である。
【図5】上記実施形態に係るハニカム構造体およびメッシュリングの構成を示す部分断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るハニカム構造体の構成を示す上面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るハニカム構造体の構成を示す上面図である。
【図8】排気浄化フィルタの構成を示す部分断面図である。
【図9】排気浄化フィルタの構成を示す上面図である。
【図10】排気浄化フィルタの端部側の構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1,1A,1B…DPF(排気浄化フィルタ)
2,2A,2B…ハニカム構造体
21,211,212,213,215,216…セグメント
22…セル
23…多孔質壁
25,25A…肉厚部
26,261B,262B…接合部
5…上流側メッシュリング
6…下流側メッシュリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置され、前記内燃機関から排出されるパティキュレートを捕集する排気浄化フィルタであって、
多孔質壁により区画形成された複数のセルを有する複数のセグメントと、
これら複数のセグメントを接合することで形成された柱状のハニカム構造体と、を備え、
前記ハニカム構造体の外周部のうち少なくとも一部には、セルが形成されていない肉厚部が設けられ、
当該肉厚部の厚みは、前記ハニカム構造体のうちセルが形成された部分の直径に対し1%以上5%以下であることを特徴とする排気浄化フィルタ。
【請求項2】
前記ハニカム構造体のうち外周部を構成する複数のセグメント同士を接合する接合部の厚みは、前記ハニカム構造体のうち外周部以外を構成する複数のセグメント同士を接合する接合部の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化フィルタ。
【請求項3】
前記肉厚部は、前記ハニカム構造体の外周部を構成する複数のセグメントのうち、セルが延びる方向に対し垂直な断面の断面積が小さいセグメントの外周部にのみ設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の排気浄化フィルタ。
【請求項4】
前記ハニカム構造体の上流側および下流側、あるいは、上流側および下流側の何れかには、前記肉厚部に係止し、このハニカム構造体を支持する環状の網状部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の排気浄化フィルタ。
【請求項5】
内燃機関の排気通路に配置され、前記内燃機関から排出されるパティキュレートを捕集する排気浄化フィルタであって、
多孔質壁により区画形成された複数のセルを有する複数のセグメントと、
これら複数のセグメントを接合することで形成された柱状のハニカム構造体と、
当該ハニカム構造体の外周部に係止し、このハニカム構造体を支持する環状の網状部材と、を備え、
前記ハニカム構造体の外周部のうち少なくとも一部には、セルが形成されていない肉厚部が設けられ、
前記網状部材は、前記ハニカム構造体のセルを塞がないように、前記肉厚部に係止することを特徴とする排気浄化フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−90838(P2010−90838A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262803(P2008−262803)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】