説明

排気装置

【課題】運転員の操作負担を軽減しつつ、排気されるガスに含まれる監視対象成分の濃度を確実に規制値の範囲内に調整可能な排気装置を提供すること。
【解決手段】原子力施設100内に設置された原子炉容器102の内部に貯留するガスを排気させる排気装置1であって、ガスを吸引するための圧縮空気が供給され原子力施設100における排気流路107に排気側が接続されたエゼクタ2と、原子炉容器102の内部と連通しているとともにエゼクタ2の吸引側に接続され、エゼクタ2によって吸引されるガスが流れる吸引配管3と、吸引配管3に設けられ、ガスの流量を調整するコントロールバルブ4と、エゼクタ2より下流側の流路の内部におけるガスに含まれる監視対象成分の濃度を検出する仮設モニタ112あるいは排気筒側モニタ111によって検出された濃度情報iA、iBに基づいてコントロールバルブ4を制御する制御盤5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉容器内のガスを大気中に排気させる排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設において、原子炉の点検のために原子炉容器を分解する場合がある。また、原子炉容器を分解する前に、原子炉容器内のガスを原子炉容器の外へ排気する。この際、排気するガスには、放射線を発する希ガス成分が含まれている場合がある。
原子炉容器から大気中へガスを排気する場合における希ガス成分の濃度の上限は、規制あるいは取決めにより定められている。このため、従来の原子力施設においては、施設内の放射線を監視する装置を設け、放射線量を監視しながら運用を行っている(例えば特許文献1参照)。
また、現状では、原子炉容器内のガスを大気中へ排気する場合に、排気筒内において、希ガス成分などの監視対象成分の濃度を検出するモニタを原子炉の運転員が監視し、モニタに表示される濃度情報の変動に基づいて運転員が手動操作によってガスの流量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−153956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排気筒から排気されるガスに含まれる監視対象成分の濃度は、規制値を超えないように確実に管理される必要がある。従来、監視対象成分を含むガスの排出操作は、規制値の範囲内の変動であったとしても常に厳重に監視され、監視結果に伴って手動操作で調整する必要があり運転員に過大な負担がかかる問題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、運転員の操作負担を軽減しつつ、排気されるガスに含まれる監視対象成分の濃度を確実に規制値の範囲内に調整可能な排気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の排気装置は、原子力施設内に設置された原子炉容器の内部に貯留するガスを排気させる排気装置であって、圧縮空気の供給源に給気側が接続されるとともに前記原子力施設における排気流路に排気側が接続されたエゼクタと、前記原子炉容器の内部と連通しているとともに前記エゼクタの吸引側に接続され、前記エゼクタによって吸引される前記ガスが流れる吸引配管と、前記吸引配管に設けられ、前記ガスの流量を調整する調整手段と、前記エゼクタより下流側の流路の内部における前記ガスに含まれる監視対象成分の濃度を検出する濃度検出手段によって検出された濃度情報に基づいて前記調整手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする排気装置である。
【0007】
この発明によれば、監視対象成分の濃度を検出する濃度検出手段によって検出された監視対象成分の濃度情報に基づいて制御手段が調整手段を制御するので、大気中へ排気される監視対象成分の濃度を手作業で調整する場合と比較して運転員の操作負担を軽減できる。
さらに、制御手段によって自動的に監視対象成分の排出量を調整することができるので、排気されるガスに含まれる監視対象成分の濃度を確実に規制値の範囲内に調整することができる。
【0008】
また、前記濃度検出手段として、前記圧縮空気が流れる方向において前記エゼクタより下流であって且つ前記原子力施設の他の排気系統との合流部より上流において前記監視対象成分の濃度を検出する仮設モニタが設けられており、前記制御手段は、前記仮設モニタによって検出された濃度情報に基づいて前記調整手段を制御することが好ましい。
この場合、仮設モニタによって、前記原子力施設の他の排気系統からの排気によって希釈される前の監視対象成分濃度を測定することができる。これにより、監視対象成分濃度の変動を鋭敏に検知することができる。
【0009】
また、前記濃度検出手段として、前記排気流路内の前記ガスを大気に放出するための排気筒に設けられ前記排気筒の内部における前記監視対象成分の濃度を検出する排気筒側モニタが設けられており、前記調整手段は、前記排気筒側モニタによって検出された前記監視対象成分の濃度情報に基づいて前記調整手段を制御することが好ましい。
この場合、監視対象成分を大気へ放出する排気筒内で監視対象成分の濃度を検出するので、実際に大気中へ排気される監視対象成分の濃度に近い濃度に基づいて調整手段を制御することができる。
【0010】
また、前記調整手段は、前記排気筒側モニタにおける濃度情報が所定の閾値を上回った場合に、前記調整手段を調整して前記ガスの流通を停止させることが好ましい。
この場合、排気筒から排出される監視対象成分の濃度が閾値を上回った場合に調整手段からはガスが排出されないので、調整手段から排気筒へ至る流路内の監視対象成分濃度は急速に低下する。これにより、大気中に排気される監視対象成分の濃度を適正な範囲内に抑えることができる。
【0011】
また、前記調整手段は、前記濃度検出手段による前記監視対象成分の濃度情報が検出限界未満となった場合に前記調整手段を調整して前記ガスの流通を再開させることが好ましい。
この場合、濃度検出手段によって検出された監視対象成分の濃度が検出限界未満となるまでガスの流通を停止させることにより、調整手段を通じたガスの排出によって監視対象成分の濃度が上がったことが確認できる。これにより、さらに安全に監視対象成分を大気中へ排気させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の排気装置によれば、運転員の操作負担を軽減しつつ、排気されるガスに含まれる監視対象成分の濃度を確実に規制値の範囲内に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の排気装置の構成を示す概念図である。
【図2】同排気装置の使用時の操作の流れを示すフローチャートである。
【図3】同排気装置の使用時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態の排気装置1について説明する。
図1は、本実施形態の排気装置1の構成を示す概念図である。
排気装置1は、たとえば原子力発電所などの原子力施設100において、希ガス等の監視対象成分を含む排気ガスを大気中に排気するための装置である。以下、本実施形態の排気装置1と原子炉101とが設けられた原子力施設100を例に、原子炉容器102の内部に貯留するガスを排気させる排気装置1の構成を説明する。
【0015】
図1に示すように、原子力施設100には、原子炉容器102内のガスを排出するために原子炉容器102内に連通されたガス排出用管路系103が設けられている。
ガス排出用管路系103は、原子炉容器102内から排出されるガスに含まれる液体成分を分離するドレンセパレータ104を有し、ドレンセパレータ104の気体層部分には排気装置1へガスを排出する排出口105が設けられている。
【0016】
また、原子力施設100には、原子力施設100の建物内の空気等の気体や、原子力施設100内の他の設備から吸引した気体などを排気するために本設ファン106と、本設ファン106と連通する排気流路107と、排気流路107と連通し気体を大気中へ排気する排気筒108が設けられている。
本実施形態では、排気流路107の一部に、排気装置1からのガスを受入れる受入口109が設けられている。これにより、排気装置1から排出されたガスは受入口109から流入して合流部110において本設ファン106からの気体と混合され、排気流路107を通じて排気筒108へと流れて排気筒108から大気中へ排気されるようになっている。
また、排気筒108には、排気筒108の内部における排気ガス中の希ガス成分の濃度を検出する排気筒側モニタ111(濃度検出手段)が設けられている。
【0017】
排出口105及び受入口109は、排気装置1を着脱することができるようになっている。排出口105および受入口109から排気装置1が取り外されているときには、排出口105および受入口109は弁および蓋(いずれも不図示)によって閉じられている。
【0018】
詳細は後述するが、排気装置1の使用時には、排出口105と排気装置1とは接続ホースAによって接続され、受入口109と排気装置1とは接続ホースBによって接続される。接続ホースBの一部あるいは受入口109から排気流路107の合流部110までの流路の一部には、排気ガス中の希ガス成分の濃度を検出する仮設モニタ112(濃度検出手段)が設けられている。
【0019】
排気装置1は、ガスを吸引するための圧縮空気が圧縮機113から供給されるとともに接続ホースBを介して排気側が排気流路107に接続されるエゼクタ2と、原子力施設100における排出口105に接続ホースAを介して一端が着脱可能で他端がエゼクタ2の吸引側に接続された吸引配管3と、吸引配管3に設けられたコントロールバルブ4(調整手段)と、排気筒側モニタ111および仮設モニタ112によって検出された希ガス成分の濃度に基づいてコントロールバルブ4の開閉を制御する制御盤5(制御手段)とを備える。
【0020】
本実施形態では、エゼクタ2に圧縮空気を供給する圧縮機113としては、原子力施設100内に固定配置された圧縮空気供給部に設けられた圧縮機を使用することができる。なお、施設内に圧縮空気供給部が固定配置されていない場合には電動式あるいはエンジン式の圧縮空気供給装置をエゼクタ2の圧縮空気流入側に接続することもできる。
【0021】
エゼクタ2と圧縮機113とには、圧縮空気が内部に流れる高圧ホースCが着脱可能に接続されており、排気装置1の使用時にはエゼクタ2と圧縮機113は高圧ホースCにより接続され、排気装置1を使用しないときには排気装置1を圧縮機113から取り外すことができる。
【0022】
吸引配管3は、排出口105から排出されたガスをエゼクタ2内に流入させるための配管である。吸引配管3内を流れるガスには、原子炉容器102内で発生した希ガス成分が含まれる場合がある。
【0023】
コントロールバルブ4は、制御盤5からの制御信号に基づいて開度が調整される弁である。本実施形態では、コントロールバルブ4はニードル弁となっており、ガスの流量の精密な制御ができるようになっている。
【0024】
制御盤5は、仮設モニタ112と排気筒側モニタ111とコントロールバルブ4とに接続されている。制御盤5には、エゼクタ2より下流側であって且つ排気流路107との合流部110よりも上流における排気ガス中の希ガス成分の濃度の上限として設定された規定値(以下、「仮設モニタ規定値C1」と称する。)と、排気筒108内の排気ガスに含まれる希ガス成分の濃度の上限として設定された規定値(以下、「排気筒モニタ規定値C2」と称する。)と、本設ファン106から排気流路107に流入する気体の流量を示す流量値F1とが予め記憶されている。
【0025】
制御盤5は、仮設モニタ112が検出した希ガス成分の濃度を示す濃度情報iAを取得し、排気筒側モニタ111が検出した希ガス成分の濃度を示す濃度情報iBを取得する。さらに、制御盤5は、濃度情報iAおよび濃度情報iBに基づいてコントロールバルブ4の開度を制御する。
すなわち、制御盤5は、濃度情報iAと仮設モニタ規定値C1とを比較し、濃度情報iAが仮設モニタ規定値C1以上である場合にはコントロールバルブ4の開度を少なくするように制御する。これにより、制御盤5は、仮設モニタ112によって検出される希ガス成分の濃度が仮設モニタ規定値C1以上である場合にコントロールバルブ4の開度を少なくするように制御する。
また、制御盤5は、排気筒側モニタ111によって検出される希ガス成分の濃度情報iBと排気筒モニタ規定値C2とを比較し、濃度情報iBが排気筒モニタ規定値C2以上である場合にはコントロールバルブ4の開度をゼロ(全閉)とする。
【0026】
本実施形態では、排気筒モニタ規定値C2は、排気筒108から大気中へ排気可能な希ガス成分の濃度の閾値として定められた値に対応して設定されている。また、仮設モニタ規定値C1は、本設ファン106からの気体によって希釈される前の排気ガス中の希ガス成分の濃度として、排気筒モニタ規定値C2および流量値F1に基づいて算出される。
また、制御盤5は、排気装置1の動作時においてコントロールバルブ4の開度をゼロとした後、仮設モニタ112および排気筒側モニタ111において排気ガス中の希ガス成分の濃度が検出限界未満となったときに、コントロールバルブ4を所定の開速度に従って開くようになっている。
【0027】
以上に説明した構成の排気装置1の使用時の操作について説明する。
図2は、排気装置1の使用時の操作の流れを示すフローチャートである。
排気装置1の使用時には、作業員の手作業等により、本設ファン106からの気体の流量値F1が制御盤5に入力される(図3に示すステップS101)。
なお、本設ファン106からの気体の流量を測定する流量計を本設ファン106にさらに備え、本設ファン106に備えられた流量計によって流量値F1を計測して制御盤5に入力するようになっていてもよい。
また、本設ファン106における気体の流量が原子力施設100の運用期間中に大幅に変動しない場合には、流量値F1は入力に拠らず固定された値としてもよい。
【0028】
続いて、作業員の手作業等により、制御盤5に排気筒モニタ規定値C2が入力される(図2に示すステップS102)。
また、排気筒108から排出される排気ガス中の希ガス成分の濃度の閾値が原子力施設100の運用期間中に変動しない場合には排気筒モニタ規定値C2は入力に拠らず固定された値としてもよい。この場合、排気筒モニタ規定値C1は自動的に制御盤5に入力されるようになっていてもよい。
【0029】
続いて、制御盤5は、上記ステップS101およびステップS102において得られた流量値F1および排気筒モニタ規定値C2に基づいて、仮設モニタ規定値C1を算出して設定する(図2に示すステップS103)。なお、上述の流量値F1および排気筒モニタ規定値C2が何れも固定された値である場合には、仮設モニタ規定値C1は予め算出された値を呼び出すことにより設定されてもよい。
これで排気装置1を使用するための設定は終了する。
【0030】
次に、排気装置1の使用時の動作について説明する。
排気装置1の動作開始前には、排気装置1は圧縮機113、排出口105および受入口109から取り外された状態で保管されており、排気装置1に設けられた弁およびコントロールバルブ4は全閉となっている。
排気装置1を使用する場合には、まず、高圧ホースCを介して圧縮機113とエゼクタ2とが接続される。さらに、エゼクタ2の排出側と原子力施設100の受入口109とが接続ホースBによって接続される。
その後、原子力施設100の排出口105に接続ホースAが接続されることにより、原子炉容器102内と吸引配管3内とが連通される。
【0031】
続いて、圧縮機113からエゼクタ2へ圧縮空気が供給される。さらに、エゼクタ2の上流側に設けられた各弁と排気流路107の受入口109に設けられた弁(不図示)とを手作業などにより開き、エゼクタ2を通じて圧縮空気を排気流路107へ流す。
さらに、コントロールバルブ4の上流側に設けられた各弁を手作業などにより開く。これにより、コントロールバルブ4を開くだけで吸引配管3内のガスをエゼクタ2へ供給することができる待機状態となる。なお、このとき吸引配管3内は負圧となっているが、コントロールバルブ4が全閉状態であるので吸引配管3内からエゼクタ2へのガスの流れは生じていない。
【0032】
排気装置1が待機状態となったら、制御盤5は、仮設モニタ112および排気筒側モニタ111における排気ガス中の希ガス成分の濃度情報iA、iBを参照し、希ガス成分の濃度が検出限界未満であることが確認できたらコントロールバルブ4を所定の開速度にしたがって開く。すると、エゼクタ2によって吸引配管内に生じた負圧により、コントロールバルブ4を介してガスがエゼクタ2へ吸引される。
【0033】
排気装置1の動作時には、コントロールバルブ4を介してエゼクタ2へ供給されたガスは、エゼクタ2の排気側から排気されて排気流路107の合流部110において本設ファン106からの気体と混合される。さらに、合流部110において混合されたガスは排気筒108から大気中へ排気される。
このとき、たとえばコントロールバルブ4を介してエゼクタ2に供給されるガスと圧縮機113からエゼクタ2に供給される圧縮空気の割合によっては、排気筒108から排気される排気ガス中の希ガス成分の濃度が排気筒モニタ規定値C2を超える可能性が考えられる。
具体的には、圧縮機113からの圧縮空気の供給量が一定で、原子炉容器102内の排気ガス中の希ガス成分の濃度が高まった場合には、コントロールバルブ4を介してエゼクタ2へ供給するガス中の希ガス成分の濃度が上昇し、これにより圧縮空気とガスとの混合気中の希ガス成分の濃度は上昇する。
また、本設ファン106からの気体の流量が減少したときには、排気流路107内における希ガス成分の濃度が上昇する。
【0034】
以下では、排気ガス中の希ガス成分の濃度の上昇時における制御盤5の動作を中心に図3を参照して説明する。図3は、排気装置1の使用時の動作を説明するためのフローチャートである。
排気装置1の動作時には、制御盤5は、圧縮空気とガスとの混合気中の希ガス成分の濃度情報iAを仮設モニタ112から取得する。(図3に示すステップS201)。
これでステップS201は終了し、ステップS202へ進む。
【0035】
ステップS202は、仮設モニタ112から取得した希ガス成分の濃度情報iAと仮設モニタ規定値C1とを比較して処理を分岐する工程である。
ステップS202では、仮設モニタ112によって検出された希ガス成分の濃度が仮設モニタ規定値C1以下である場合にはステップS203へ進み、仮設モニタ112によって検出された希ガス成分の濃度が仮設モニタ規定値C1を越える場合にはステップS206へ進む。
【0036】
ステップS203は、排気筒側モニタ111から希ガス成分の濃度情報iBを取得する工程である。
制御盤5は、排気筒側モニタ111から濃度情報iBを取得したらステップS203を終了し、ステップS204へ進む。
【0037】
ステップS204は、排気筒側モニタ111によって検出された希ガス成分の濃度情報iBと排気筒モニタ規定値C2とを比較して処理を分岐する工程である。
ステップS204では、排気筒側モニタ111によって検出された希ガス成分の濃度が排気筒モニタ規定値C2以下である場合にはステップS205へ進み、排気筒側モニタ111によって検出された希ガス成分の濃度が排気筒モニタ規定値C2を超える場合にはステップS207へ進む。
【0038】
ステップS205は、原子炉容器102からエゼクタ2へのガスの流入量を増やすことによってエゼクタ2への希ガス成分の流入を増加させる工程である。
ステップS205では、制御盤5は、コントロールバルブ4を一定量だけさらに開く。これにより、吸引配管3を流れるガス全体の流量は増加し、エゼクタ2に供給されるガスに含まれる希ガス成分の流量も増加する。
これでステップS205は終了し、ステップS201へ進む。
【0039】
ステップS206は、原子炉容器2からエゼクタ2へのガスの流入量を減少させることによってエゼクタ2への希ガス成分の流入を減少させる工程である。
ステップS206では、制御盤5は、吸引配管3内を流れるガスの流量が一定量だけ減少するようにコントロールバルブ4の開度を制御する。これにより、吸引配管3内を流れるガスの流量は低下し、エゼクタ2に供給されるガス全体に含まれる希ガス成分の流入も減少する。
これでステップS206は終了し、ステップS201へ進む。
【0040】
ステップS207は、エゼクタ2へ流入する排気ガスの流入を停止させることにより排気ガスに含まれる希ガス成分の流入を停止させる工程である。
ステップS207では、制御盤5はコントロールバルブ4の開度をゼロ(全閉)とする。これにより、吸引配管3はコントロールバルブ4によって閉じられ、エゼクタ2へのガスの供給は遮断される。従って、排気ガスに含まれる希ガス成分もエゼクタ2へは供給されない。
これでステップS207は終了し、ステップS208へ進む。
【0041】
ステップS208は、排気装置1から排出される排気ガス中の希ガス成分の濃度に基づいて処理を分岐する工程である。
ステップS208では、仮設モニタ112および排気筒側モニタ111における希ガス成分の濃度を検出し、希ガス成分の濃度が検出限界未満となるまでステップS208を繰り返す。これにより、希ガス成分の濃度が検出限界未満となるまでコントロールバルブ4は全閉状態で維持される。
排気ガス中の希ガス成分の濃度が検出限界未満となったら、ステップS208は終了し、ステップS201へ進む。これにより、再びコントロールバルブ4を開く制御が行われ(上述のステップS205)、希ガス成分を含む排気ガスがエゼクタ2へ供給される。
【0042】
このように、本実施形態では、制御盤5は、仮設モニタ112における希ガス成分の濃度が仮設モニタ規定値C1を上回った場合にはコントロールバルブ4の開度を減少させ、排気筒側モニタ111における希ガス成分の濃度が排気筒モニタ規定値C2を上回った場合にはコントロールバルブ4を全閉するようにコントロールバルブ4を自動制御する。
なお、詳細は図示しないが、本実施形態では、制御盤5における自動制御を適宜のタイミングで運転員による手動制御に切り替えることができる。これにより、自動制御によらずコントロールバルブ4の開度を調整することもできる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の排出装置によれば、排気ガス中の希ガス成分の濃度を検出する仮設モニタ112および排気筒側モニタ111によって検出された希ガス成分の濃度情報iA、iBに基づいて制御盤5がコントロールバルブ4の開度を制御するので、大気中へ排気される希ガス成分の濃度を手作業で調整する場合と比較して運転員の操作負担を軽減できる。
さらに、制御盤5によってコントロールバルブ4の開度を調整することができるので、排気されるガスに含まれる希ガスの濃度を確実に規制値の範囲内に調整できる。
【0044】
また、仮設モニタ112によって、原子力施設100の他の排気系統からの排気によって希釈される前の希ガス成分の濃度を測定することができる。これにより、希ガス成分の濃度の変動を鋭敏に検知することができる。
【0045】
また、排気筒側モニタ111が排気筒108内に設けられ、希ガス成分を大気へ放出する排気筒108内で希ガス成分の濃度を検出するので、実際に大気中へ排気される希ガス成分の濃度に近い濃度に基づいてコントロールバルブ4の開度を制御することができる。
【0046】
また、排気筒108から排出される排気ガス中の希ガス成分の濃度が排気筒モニタ規定値C2を上回った場合に制御盤5はコントロールバルブ4を全閉としてガスの流れを遮断するので、コントロールバルブ4から排気筒108へ至る流路内の希ガス成分の濃度は急速に低下する。これにより、大気中に排気される排気ガス中の希ガス成分の濃度を適正な範囲内に抑えることができる。
【0047】
また、本実施形態では、仮設モニタ112および排気筒側モニタ111によって検出された希ガス成分の濃度が検出限界未満となるまでコントロールバルブ4を全閉としてガスの流通を停止させるようになっている。コントロールバルブ4を全閉にすることで希ガス成分の濃度が検出限界未満となれば、コントロールバルブ4を介して排出されたガスによって希ガス成分の濃度が上がったことが確認でき、他の部位からの希ガスの漏れと区別することができる。これにより、さらに安全に排気ガス中の希ガス成分を大気中へ排気させることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述の実施形態では、監視対象成分の例として希ガス成分の濃度を監視して希ガス成分の濃度に基づいてコントロールバルブ4の開度を調整する例を示したが、監視対象成分は希ガス成分には限られない。
【符号の説明】
【0049】
1 排気装置
2 エゼクタ
3 吸引配管
4 コントロールバルブ
5 制御盤
A 接続ホース
B 接続ホース
C 高圧ホース
C1 仮設モニタ規定値
C2 排気筒モニタ規定値
F1 流量値
iA 濃度情報
iB 濃度情報
100 原子力施設
101 原子炉
102 原子炉容器
103 排出用管路系
104 ドレンセパレータ
105 排出口
106 本設ファン
107 排気流路
108 排気筒
109 受入口
110 合流部
111 排気筒側モニタ
112 仮設モニタ
113 圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力施設内に設置された原子炉容器の内部に貯留するガスを排気させる排気装置であって、
圧縮空気の供給源に給気側が接続されるとともに前記原子力施設における排気流路に排気側が接続されたエゼクタと、
前記原子炉容器の内部と連通しているとともに前記エゼクタの吸引側に接続され、前記エゼクタによって吸引される前記ガスが流れる吸引配管と、
前記吸引配管に設けられ、前記ガスの流量を調整する調整手段と、
前記エゼクタより下流側の流路の内部における前記ガスに含まれる監視対象成分の濃度を検出する濃度検出手段によって検出された濃度情報に基づいて前記調整手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする排気装置。
【請求項2】
前記濃度検出手段として、前記圧縮空気が流れる方向において前記エゼクタより下流であって且つ前記原子力施設の他の排気系統との合流部より上流において前記監視対象成分の濃度を検出する仮設モニタが設けられており、
前記制御手段は、前記仮設モニタによって検出された濃度情報に基づいて前記調整手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
前記濃度検出手段として、前記排気流路内の前記ガスを大気に放出するための排気筒に設けられ前記排気筒の内部における前記監視対象成分の濃度を検出する排気筒側モニタが設けられており、
前記調整手段は、前記排気筒側モニタによって検出された前記監視対象成分の濃度情報に基づいて前記調整手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の排気装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記排気筒側モニタにおける濃度情報が所定の閾値を上回った場合に、前記調整手段を調整して前記ガスの流通を停止させることを特徴とする請求項3に記載の排気装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記濃度検出手段による前記監視対象成分の濃度情報が検出限界未満となった場合に前記調整手段を調整して前記ガスの流通を再開させることを特徴とする請求項4に記載の排気装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−7567(P2013−7567A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138275(P2011−138275)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】