説明

排水の処理分別方法および装置

【課題】排水の高度な回収再利用を、安定かつ効率的に実現するための排水の処理分別方法および装置を提供する。
【解決手段】生産装置から排出される生産排水または/および生産装置から排出された複数種の生産排水を合流させた排水設備配管を流れる合流排水の少なくとも一部を、相対的に高水質と低水質の水に分離する処理を積極的に施し、該分離処理による高水質水と低水質水とを別々の行き先に分別することを特徴とする排水の処理分別方法、および排水の処理分別装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水の処理分別方法および装置に関し、とくに、各種生産装置から排出される排水を、適切に分離処理してから別々の行き先である処理系に分別するようにした排水の処理分別方法および装置に関する。なお、本願においては、排水とは、不純物濃度が低い希薄な排水から、不純物濃度の高い濃厚な廃液までを含む概念である。
【背景技術】
【0002】
各種産業の製品の加工・製造には、多くの薬液や(超)純水が使用されている。ここでは、例えば、半導体デバイスやフラットパネルディスプレイ(液晶など)の製造を中心に述べる。半導体デバイス製造を例にとると、ウエハ表面の酸化膜やレジスト、不要な生成物などを各種薬液を使用して除去し、ウエハに付着している薬液や不純物の残渣を超純水による洗浄できれいにする工程を有する。この洗浄工程が半導体デバイスの製造(生産)工程において、超純水を多く使用する工程であり、発生する排水の大きな源である。
【0003】
従来方法では、上記のような排水は、排水処理設備で中和、分解、希釈などの無害化処理後に放流されている。また、濃厚排水(廃液)や難分解性排水(廃液)などは業者引取処分されている。また、比較的不純物濃度の低い排水は、所定の処理を行った後、回収水として再利用されており、その再利用先は(超)純水の原水やクーリングタワーなどの空調用水や工場内雑用水などである。不純物濃度の高い排水の回収処理水は、空調用水や雑用水として再利用されている。
【0004】
バッチ式洗浄装置を例にとると、薬液槽からウエハや基板などの被洗浄物に付着して洗浄槽に持ち込まれる薬液や不純物は、洗浄初期に大半が洗い出され、洗浄工程が進み超純水で洗われるに従い洗浄排水中に混入する不純物濃度は低くなる。ウエハなどの被洗浄物は洗浄槽で洗われ清浄な状態とされて次工程に送られることから、洗浄後半の洗浄排水は不純物の混入がほとんどなく、純水に近い状態で排出されることになる。枚葉式洗浄装置でも同様に、薬液処理工程から超純水洗浄工程に移った直後は、多くの薬液や不純物が混入した排水が排出され、洗浄工程の後半ほど排水中の薬液や不純物の濃度は低くなる。
【0005】
したがって、洗浄工程の後半部分の排水だけを集めて回収処理すれば、安価に水を回収再利用することができる。しかし、原水の揚水規制や放流水の総量規制などがある場合、洗浄工程の前半部分の薬液や不純物の混入の多い排水を回収処理し水の回収率を上げる必要がある。近年では、水資源の枯渇や環境負荷などの問題から、高い排水回収率が求められる傾向にある。また、ウエハや基板の大型化(被洗浄面積の大型化)に伴って(超)純水使用量が増加し、より高い排水回収率と(超)純水の原水としての再利用率を上げることが求められる傾向にある。
【0006】
上記排水の回収再利用を効率的に行うためには、回収対象となる排水を系統別に生産装置より適切に分別して、それぞれを集めて処理することが望ましい。排水を種別毎に分別するためには、クリーンルームに設置する生産装置における排水の振り分けが必要であり、洗浄回数のカウントやタイマーなどを利用して排水の行き先を自動弁により切り替えて振り分ける。なお、切り替えのタイミングは、洗浄方法、使用薬液などによって異なる。より安全に行き先を切り替えるために、導電率計などの計器を設置してその指示値により切り替えることも検討されている。
【0007】
このように生産装置から排出された排水(生産排水)は、混入している薬液や不純物の量やその性状によってその近傍に配置された適当な排水設備配管に分別され、水処理ヤードに運ばれて、それぞれ適当な処理(回収処理、排水処理、業者引き取りなど)が行われる。
【0008】
排水の分別を行うには、排水設備配管が複数ライン必要である。排水回収を高度に行うためには、排水の分別を高度に行う必要がある。しかしその場合には、排水設備配管のライン本数が増え、その占有スペースが余分に必要になり、かつ、配管施工にかかわるコストが増大する。
【0009】
このような排水設備配管のライン本数を減らした(増やさない)場合、ある一つの排水設備配管に振り分けられる排水の種類は増加する(一つの排水設備配管に多数の生産装置からの排水が合流する)。一度合流した排水を振り分け機構により再度完全に分離することは不可能である。また、単一系排水に比べて混合系排水の処理の方が面倒であり、合流する排水が増えて不純物の種類が増えるほど処理が面倒になる。
【0010】
一方で、排水の回収率を上げようとする場合、薬液や不純物の量が多い排水も同じ回収処理系の排水設備配管に振り分け、処理する必要がある。この場合、排水回収装置の原排水濃度と負荷が増大するため、回収処理コストが増大するとともに、回収処理水の水質低下の問題が起きやすくなる。
【0011】
このような問題に対し、特許文献1に記載の実施形態では、排水を排水中の不純物濃度等に応じて、第一排水から第四排水に区分けし、不純物を含んでいるが、処理を行うことによって、原水として利用可能な純水用処理水を安価に分離できることができる排水を第二排水とし、この第二排水から用途別排水分離装置によって、純水用処理水と、原動用処理水に分離することで効率よく排水を再利用できる装置および方法を開示している。
【0012】
しかし、上記特許文献1に記載の方法では、第二排水は効率よく排水の再利用を行う目的で新たに分別された排水であるから、該第二排水を流すために新たな排水設備配管を設置する必要がある。特許文献1には用途別排水分離装置の設置場所に関する記載はないが、一般に水処理設備は大規模設備(プラント)になり、生産装置とは別のエリアに設置される。
【0013】
また、排水は一般に定常的には排出されない。上記特許文献1に〔0006〕段落には、TOCや導電率によって排水の不純物濃度と区分が決定される旨の記載があるが、分別手法としては従来どおり単に排水の振り分けを行っているのみである。このような方法において排水の回収率を上げるためには、分別の基準となるTOCや導電率の値(区分の設定値)を高めに設定する必要があり、そうすれば、回収処理コストの増大や、回収処理水の水質低下の問題が生じ易くなる。特許文献1に〔0010〕段落には、非定常排水を原水回収装置で処理する場合、不純物濃度が設定範囲内でない非定常排水は、例えば、原動用水分離装置に供給するとある。つまり、排水の不純物濃度に応じて区分され分別された第一排水から第四排水を各装置に導入し処理するのであって、積極的に第一排水から第四排水の設定範囲の水を作り出すことは行っていない。第二排水の用途別排水分離装置については、不純物濃度がある設定範囲内の排水を純水用処理水と原動用処理水に分離し、第一排水、第三排水としてそれぞれ分別しているが、用途別排水分離装置で処理される第二排水の分別は不純物濃度のある設定区分に基づいて前もって行われており設定範囲外の高濃度排水は、第三排水または第四排水のラインに送られる。この場合、生産装置の条件が同じであれば、第二排水の水量は区分の設定値をいくつにするかで決定されてしまう。区分の設定範囲を広げる(上限設定値を上げる)ことで、用途別排水分離装置への受け入れ水量を上げることはできるものの、そうすれば回収処理水の水質低下や装置トラブルなどの問題が生じるおそれがある。
【0014】
また、シリコンサイクルやクリスタルサイクルなどと呼ばれる景気の変動に伴う生産量の調整で製造装置稼働率が変化しやすく、それに伴い排水量や排水性状も変化しやすい。更に、近年では、デジタル家電向けデバイスなど消費者の要求が多様化し、少量で寿命が短い製品を製造(多品種少量生産)する場合は、短期間で製造装置の運転条件や稼働率が変化して、排水量や排水性状も変化しやすい。上記特許文献1を含む従来の手法では、排水量や排水性状の変化に対して、排水の高回収率化、回収処理水の水質安定化・高度化の点で、十分に対応できるものではなかった。
【特許文献1】特開2004−25133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで本発明の課題は、上記のような実情に鑑み、排水の高度な回収再利用を、安定かつ効率的に実現するための排水の処理分別方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係る排水の処理分別方法は、生産装置から排出される生産排水または/および生産装置から排出された複数種の生産排水を合流させた排水設備配管を流れる合流排水の少なくとも一部を、相対的に高水質と低水質の水に分離する処理を施し、該分離処理による高水質水と低水質水とを別々の行き先に分別することを特徴とする方法からなる。
【0017】
すなわち、生産排水または/および合流排水の少なくとも一部を、単にそのまま分別するのではなく、相対的に高水質と低水質の水に意図的に分離処理した後、分離された高水質水と低水質水とを別々の行き先に分別するのである。分別前に、分別用の高水質水と低水質水とに積極的に分離する点で、従来方法と基本的に異なる。相対的に高水質と低水質の水に分離された後、それぞれ別の行き先に分別されるので、分別後の各処理系における水質のバラツキが小さく抑えられ、各処理系を流れる水の水質がある範囲にまとめられて、効率の良い処理、処理水質の低下や変動防止、高い水回収率の実現等を、排水設備配管を実質的に増加させることなく達成可能となる。
【0018】
この排水の処理分別方法において、上記別々の行き先としては、回収水を得るための回収処理系、放流可能な処理水を得るための排水処理系、業者引取系の少なくとも2つの処理系を設定することが好ましい。
【0019】
また、上記生産排水または/および合流排水の少なくとも一部をタンクに貯留してから上記処理に供することもできる。
【0020】
上記分離処理は、例えば、電気再生式イオン交換装置(EDI装置)、逆浸透膜処理装置、ナノフィルトレーション膜処理装置、限外濾過膜処理装置、精密濾過膜処理装置の少なくとも一つを用いて行うことができる。
【0021】
また、本発明に係る排水の処理分別方法では、基本的に大きな設置スペースを伴う装置や配管を大幅に追加する必要はないので、容易に、上記分離処理を、上記生産装置の近傍または該生産装置が設置された建屋と同一の建屋内で行うようにすることができる。
【0022】
本発明に係る排水の処理分別装置は、生産装置から排出される生産排水または/および生産装置から排出された複数種の生産排水を合流させた排水設備配管を流れる合流排水の少なくとも一部を、相対的に高水質と低水質の水に分離する分離処理手段と、該分離処理手段により分離された高水質水と低水質水とを別々の行き先に分別するラインとを有することを特徴とするものからなる。
【0023】
この排水の処理分別装置においては、上記行き先が、回収水を得るための回収処理系、放流可能な処理水を得るための排水処理系、業者引取系の少なくとも2つの処理系からなる構成とすることができる。
【0024】
また、上記分離処理手段の上流側に、上記生産排水または/および合流排水の少なくとも一部を貯留するタンクが設けられている構成とすることもできる。
【0025】
上記分離処理手段としては、電気再生式イオン交換装置(EDI装置)、逆浸透膜処理装置、ナノフィルトレーション膜処理装置、限外濾過膜処理装置、精密濾過膜処理装置の少なくとも一つからなることが好ましい。
【0026】
また、上記分離処理手段が、上記生産装置の近傍または該生産装置が設置された建屋と同一の建屋内に設置されている構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る排水の処理分別方法および装置によれば、排水の高い回収率を、効率よく安定して実現することができる。また、本発明は、限られたスペースに対し、大がかりな排水設備配管や装置の増加を伴うことなく、安価に実施可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は、本実施形態に限定されるものではない。
図1〜図6は、本発明に係る排水の処理分別方法および装置の各実施態様を示しており、図7は、比較のための従来例を示している。まず、図7に示した従来例では、各生産装置11((A)〜(D))内において、薬液や不純物濃度が低濃度の排水((低)と表示)、高濃度の排水((高)と表示)、さらに高濃度の排水((濃)と表示)に分別され、各排水が、それぞれ、回収処理系へと排水を送る回収処理系排水設備配管12、無害化して放流に供する等の排水処理を行う排水処理系へと排水を送る排水処理系排水設備配管13、業者引取系へと排水を送る業者引取系排水設備配管14へと送られ、合流されている。
【0029】
これに対し、図1に示した本発明の第1実施態様に係る排水の処理分別方法および装置では、生産装置1(X)からの低濃度の排水(低)、高濃度の排水(高)、さらに高濃度の排水(濃)のうち、低濃度の排水(低)が、前述したような分離処理手段としての処理分別装置2に送られる。このとき、一旦タンク3に貯留した後、処理分別装置2に送るようにしてもよい。処理分別装置2では、高水質水としての処理水と、相対的に低水質水としての処理排水とに分離される。この処理水は、回収水を得るために回収処理系排水設備配管12に送られる。あるいは、生産装置1(X)の近傍にローカル純水装置4が設置されている場合には、この処理水またはその一部を、ローカル純水装置4の原水として供給し、ローカル純水装置4で純水を製造して生産装置1(X)に供給することもできる。上記処理排水は、その水質に応じて、排水処理系排水設備配管13または/および業者引取系排水設備配管14へと送ることができる。
【0030】
このように、処理分別装置2により生産装置1(X)からの排水の一部を相対的に高水質水と低水質水とに分離し、分離された高水質水と低水質水をそれぞれ適切な行き先に分別することにより、実質的に排水設備配管の大幅な増加を伴うことなく、各排水設備配管12、13、14における水質変動の範囲を小さく抑えることが可能になり、各処理系における処理効率の向上をはかることができるとともに、回収処理系排水設備配管12や純水装置4を介しての回収水の水質の向上をはかることができ、また、水の回収率の向上をはかることが可能になる。つまり、図7に示した従来例では、回収処理系排水設備配管12、排水処理系排水設備配管13、業者引取系排水設備配管14中を流れる各排水の性状、濃度、量の変動が大きくなることがあったが、本実施態様では、回収処理系排水設備配管12、排水処理系排水設備配管13、業者引取系排水設備配管14中を流れる各排水の性状、濃度が安定し、さらには、量の安定化をはかることもできる。
【0031】
図2に示した本発明の第2実施態様に係る排水の処理分別方法および装置では、生産装置1(X)からの低濃度の排水(低)、高濃度の排水(高)、さらに高濃度の排水(濃)のうち、高濃度の排水(高)が処理分別装置2に送られる。このとき、一旦タンク3に貯留した後、処理分別装置2に送るようにしてもよい。処理分別装置2では、高水質水としての処理水と、相対的に低水質水としての処理排水とに分離される。この処理水は、回収処理系排水設備配管12または/および排水処理系排水設備配管13に、処理排水は、排水処理系排水設備配管13または/および業者引取系排水設備配管14に、それぞれ分別して送られる。
【0032】
このような処理分別においても、各排水設備配管12、13、14における水質変動の範囲を小さく抑えることが可能になり、各処理系における処理効率の向上をはかることができる。また、処理水を回収処理系排水設備配管12に分別した場合、回収処理系排水設備配管12を介しての回収水の量を増大でき、水の回収率の向上をはかることが可能になる。
【0033】
図3に示した本発明の第3実施態様に係る排水の処理分別方法および装置では、生産装置1(X)からの低濃度の排水(低)、高濃度の排水(高)、さらに高濃度の排水(濃)のうち、さらに高濃度の排水(濃)が処理分別装置2に送られる。このとき、一旦タンク3に貯留した後、処理分別装置2に送るようにしてもよい。処理分別装置2では、高水質水としての処理水と、相対的に低水質水としての処理排水とに分離される。この処理水は、排水処理系排水設備配管13または/および回収処理系排水設備配管12に、処理排水は、業者引取系排水設備配管14に、それぞれ分別して送られる。
【0034】
このような処理分別においても、各排水設備配管12、13、14における水質変動の範囲を小さく抑えることが可能になり、各処理系における処理効率の向上をはかることができる。また、処理水を回収処理系排水設備配管12に分別した場合、回収処理系排水設備配管12を介しての回収水の量の増大をはかることができ、水の回収率の向上をはかることが可能になる。
【0035】
図4、図5、図6に示した本発明の第4、第5、第6実施態様に係る排水の処理分別方法および装置では、上記図1、図2、図3に示した第1、第2、第3実施態様に比べ、例えば複数の生産装置からの排水を合流させた各排水設備配管12、13、14から取水して処理分別装置2に送り、処理分別装置2により分離された処理水と処理排水を、その水質に応じて、ローカル純水装置4あるいは各排水設備配管12、13、14のいずれかに送る(取水点の後段側)ようにしたものである。このように合流排水に対しても、本発明における処理分別装置2による積極的分離、分離後の各行き先への分別を適用できる。
【0036】
このような本発明に係る排水の処理分別方法および装置では、次のような作用効果を奏する。すなわち、排水の回収を行う場合、排水設備配管としては、図7に示したように、一般に回収処理系(回収処理装置につながる)と排水処理系(排水処理装置(無害化処理)装置につながる)の少なくとも2系統を含む複数のラインが設置される。この他、工場内での排水処理(無害化処理)が困難な排水(濃厚排水(廃液)や難分解性排水(廃液))を排出する(一時タンクに貯留して業者引取処分する)ための排水設備配管が設置される。また、回収の目的(純水/雑用水等)に応じて複数の回収処理系を設けることもできる。同じ種類の排水であれば、排水中の不純物濃度に応じて分別される(例えば、不純物濃度が低い順から、回収処理系、排水処理系、業者引取処分系)。
【0037】
製造工程で使用される薬液は多種多様であり、薬液種類や系統(酸系、アルカリ系、フッ素系、有機系等)毎で各々濃度分別された排水設備配管が設置される。配管設置スペースや施工コスト等から同系統の排水は通常一緒に同じ排水設備配管系に接続される。
【0038】
混合系排水の処理は、前述したように、単一系排水の処理よりも通常困難となる。不純物濃度が低い排水の場合は、混合系排水であっても十分処理できるが、濃度が高くなるにつれて処理が難しくなる。従来の方法で排水の回収率を上げようとした場合、高濃度の排水も回収処理系に受け入れなくてはならず、排水回収装置の原排水濃度と負荷が増大し回収処理コストが増大するとともに、回収処理水の水質低下等の問題が起きやすくなる。
【0039】
本発明によれば、生産装置から排出される排水(生産排水)または/および排水設備配管を流れる排水(合流排水)の少なくとも一部を処理分別装置にて積極的に分離処理し、処理水と処理排水とを別々の異なる排水設備配管系に分別することで上記の問題を改善することができる。
【0040】
生産装置は薬液、純水、ガスなどを用いて所定のプロセスレシピにより製品の加工、洗浄を行う。したがって、個々の生産装置から排出される排水の性状や排出されるタイミングは予測でき、その予測を元に個々の生産装置から直接、回収処理系、排水処理系、業者引取処分系等の各系統に排水の分別が行われている。しかし、排水設備配管は複数の生産装置に接続されているため、排水設備配管中の排水の性状を完全に予測することは難しく、現実的に不可能である。また、仮に同一レシピでプロセスを行う複数の生産装置から直接分別された排水のみを受け入れる排水設備配管であっても、個々の生産装置で分別された排水の濃度には時間的な変動幅があるため、やはり配管中の排水の性状を完全に予測することは難しい。また、排水設備配管中を長距離移動する間に排水の濃度が変化することもある。このため、従来では予期せぬ排水性状の変化に対応するためTOCや導電率の値によって排水の分別を行っている。
【0041】
本発明では、生産装置から(直接)排出される排水の少なくとも一部を処理し第1実施形態〜第3実施形態(図1〜図3)に示したように処理水と処理排水とを別々の異なる排水設備配管系に、場合によってはローカル純水装置へと分別するが、その場合の効果は、以下のように表すことができる。
【0042】
(1)生産装置から排出される生産排水の性状や排出されるタイミングは予測しやすいため、適切な処理がしやすい。
(2)生産装置から排出される低濃度の排水に適用する場合、回収処理水の水質が良好に安定するので、排水回収装置の負荷が減少し回収処理コストが低減できる。なお、処理排水は排水処理系や業者引取系などより高濃度の排水設備配管系に分別する。
(3)生産装置から排出される低濃度の排水に適用する場合、回収処理系の排水濃度変動幅を小さくでき、排水回収装置の運転及び回収処理水質が安定する。なお、処理排水は排水処理系や業者引取系などより高濃度の排水設備配管系に分別する。
(4)生産装置から排出される低濃度の排水に適用する場合、従来、高濃度排水(高)として分別していた排水を、より低濃度排水側に分別することもでき、回収処理水量を増やすことができる。なお、処理排水は排水処理系や業者引取系などより高濃度の排水設備配管系に分別する。
(5)生産装置から排出される高濃度排水(高)に適用する場合、処理水質が回収処理系の受け入れ仕様を満足する条件であれば、処理水を回収処理系に受け入れることで、排水の高回収率化ができる。なお、処理排水は排水処理系や業者引取系などより高濃度の排水設備配管系に分別する。
(6)生産装置から排出されるさらに高濃度排水(濃)に適用する場合、処理水質が排水処理系の受け入れ仕様を満足する条件であれば、処理水を排水処理系に受け入れることで、業者引取系の排水(廃液)の減容化ができる。更に、回収処理系の受け入れ仕様を満足する条件であれば処理水を回収処理系に受け入れることで、排水の高回収率化ができる。なお、この場合の処理排水は同じ業者引取系に分別する。
【0043】
また本発明では、排水設備配管を流れる排水(合流排水)の少なくとも一部を分離処理し、処理水と処理排水とを別々の異なる排水設備配管系に分別することができる(第4実施形態〜第6実施形態(図4〜図6))。既に述べたように排水設備配管は複数の生産装置に接続されており、排水設備配管中の排水の性状を完全に予測することは難しく、排水濃度には変動がある。排水設備配管を流れる排水(合流排水)の少なくとも一部を積極的に分離処理し、処理水と処理排水とを別々の異なる排水設備配管系に分別する場合の効果は、生産装置から(直接)排出された排水の少なくとも一部を処理し、処理水と処理排水とを別々の異なる排水設備配管系に分別する場合の効果(2)から(6)と同様である。また、状況によっては従来のTOCや導電率の値による排水分別を省略することもできる。
【0044】
更に本発明では、生産装置から排出される排水(生産排水)または/および排水設備配管を流れる排水(合流排水)の少なくとも一部をタンクに貯留してから処理し、処理水と処理排水とを別々の異なる排水設備配管系に分別することができる。効果は上記と同様であるが、タンクに一旦貯留することで処理分別装置の安定運転に寄与できる。また、タンクを設けることで、複数の生産装置から排出される排水(生産排水)や複数の排水設備配管を流れる排水(合流排水)を受け入れて処理することもできる。
【0045】
本発明における分離処理手段としての処理分別装置としては、電気再生式イオン交換装置(EDI装置)、逆浸透膜処理装置、ナノフィルトレーション膜処理装置、限外濾過膜処理装置、精密濾過膜処理装置の少なくとも一つで処理することが好ましい。これらの装置は、薬品の使用が不要もしくは、あっても少量であり、該分離処理により発生する処理排水分の影響は小さい。但し、該処理装置は、上記に限定されるわけではなく、排水の性状、濃度、量などに応じて適宜選定できる。例えば、酸、アルカリ系などイオン性排水の処理には、イオン交換樹脂装置、電気再生式イオン交換装置、キャパシター脱塩装置などの脱塩装置や逆浸透膜処理装置、アルコールや有機溶媒などを含む有機性排水の処理には、紫外線照射装置、オゾン酸化装置などの分解装置、該分離装置と脱塩装置の組み合わせや逆浸透膜処理装置、レジストや高分子物質を含む排水の処理には、逆浸透膜処理装置、ナノフィルトレーション膜処理装置、限外濾過膜処理装置などの膜処理装置、CMPやダイサーなどの濁質や微粒子成分を含む排水の処理には、限外濾過膜処理装置や精密濾過膜処理装置などの膜処理装置などが、例えば組み合わせ形態で利用でき、活性炭など他の処理を組み合わせてもよい。
【0046】
更に本発明では、上記処理を生産装置の近傍または該生産装置の設置された同一建屋内で行うことにより、排水分別のための排水設備配管のライン本数や距離をさらに少なくすることができる。
【0047】
また、生産装置近傍にローカル純水装置を配置し、本発明による処理水をそのまままたは何らかの処理を加えた後、該純水装置に供給することで、ローカルでの純水回収再利用ができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る排水の処理分別方法および装置は、各種生産装置から排出される排水のより適切な分別、水の回収率の向上等が望まれるあらゆる分野に適用可能であり、とくに、半導体産業における洗浄排水の処理分別に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施態様に係る排水の処理分別方法および装置を示す概略機器系統図である。
【図2】本発明の第2実施態様に係る排水の処理分別方法および装置を示す概略機器系統図である。
【図3】本発明の第3実施態様に係る排水の処理分別方法および装置を示す概略機器系統図である。
【図4】本発明の第4実施態様に係る排水の処理分別方法および装置を示す概略機器系統図である。
【図5】本発明の第5実施態様に係る排水の処理分別方法および装置を示す概略機器系統図である。
【図6】本発明の第6実施態様に係る排水の処理分別方法および装置を示す概略機器系統図である。
【図7】従来の排水の分別方法および装置の例を示す概略機器系統図である。
【符号の説明】
【0050】
1 生産装置
2 分離処理手段としての処理分別装置
3 タンク
4 ローカル純水装置
12 回収処理系排水設備配管
13 排水処理系排水設備配管
14 業者引取系排水設備配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産装置から排出される生産排水または/および生産装置から排出された複数種の生産排水を合流させた排水設備配管を流れる合流排水の少なくとも一部を、相対的に高水質と低水質の水に分離する処理を施し、該分離処理による高水質水と低水質水とを別々の行き先に分別することを特徴とする、排水の処理分別方法。
【請求項2】
前記行き先として、回収水を得るための回収処理系、放流可能な処理水を得るための排水処理系、業者引取系の少なくとも2つの処理系を設定する、請求項1に記載の排水の処理分別方法。
【請求項3】
前記生産排水または/および合流排水の少なくとも一部をタンクに貯留してから処理する、請求項1または2に記載の排水の処理分別方法。
【請求項4】
前記分離処理を、電気再生式イオン交換装置(EDI装置)、逆浸透膜処理装置、ナノフィルトレーション膜処理装置、限外濾過膜処理装置、精密濾過膜処理装置の少なくとも一つを用いて行う、請求項1〜3のいずれかに記載の排水の処理分別方法。
【請求項5】
前記分離処理を、前記生産装置の近傍または該生産装置が設置された建屋と同一の建屋内で行う、請求項1〜4のいずれかに記載の排水の処理分別方法。
【請求項6】
生産装置から排出される生産排水または/および生産装置から排出された複数種の生産排水を合流させた排水設備配管を流れる合流排水の少なくとも一部を、相対的に高水質と低水質の水に分離する分離処理手段と、該分離処理手段により分離された高水質水と低水質水とを別々の行き先に分別するラインとを有することを特徴とする、排水の処理分別装置。
【請求項7】
前記行き先が、回収水を得るための回収処理系、放流可能な処理水を得るための排水処理系、業者引取系の少なくとも2つの処理系からなる、請求項6に記載の排水の処理分別装置。
【請求項8】
前記分離処理手段の上流側に、前記生産排水または/および合流排水の少なくとも一部を貯留するタンクが設けられている、請求項6または7に記載の排水の処理分別装置。
【請求項9】
前記分離処理手段が、電気再生式イオン交換装置、逆浸透膜処理装置、ナノフィルトレーション膜処理装置、限外濾過膜処理装置、精密濾過膜処理装置の少なくとも一つからなる、請求項6〜8のいずれかに記載の排水の処理分別装置。
【請求項10】
前記分離処理手段が、前記生産装置の近傍または該生産装置が設置された建屋と同一の建屋内に設置されている、請求項6〜9のいずれかに記載の排水の処理分別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−61779(P2006−61779A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244926(P2004−244926)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】