説明

排水ソケット、及びそれを備えた水洗大便器及び水洗大便器スタンド

【課題】 壁掛け式の水洗大便器本体の排水口を、壁面に設けられた排水管に容易に接続することができ、接続不良を防止することができる排水ソケットを提供する。
【解決手段】 本発明は、壁掛け式の水洗大便器本体(2)の排水口が形成された接続部を、壁面に設けられた排水管に接続する排水ソケット(4)であって、外周に設けられたフランジ部(24)を備えた排水ソケット本体(16)と、フランジ部を、壁面との間に挟持することによって、排水ソケットを、壁面と平行な平面内で移動可能に支持するソケット本体支持部材(18)と、を有し、排水ソケット本体は、排水管に接続される筒状の排水管接続部(22)と、この排水管接続部に連通し、水洗大便器本体の接続部に取付けられたパッキン(14)を受け入れるように構成された筒状の排水口接続部(20)と、を備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水ソケットに係わり、特に、壁掛け式の水洗大便器本体の排水口を、壁面に設けられた排水管に接続する排水ソケット、及びそれを備えた水洗大便器及び水洗大便器スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第3045030号公報(特許文献1)には、便器と排水管の接続構造が記載されている。この接続構造では、排水本管から分岐した排水枝管の先端にソケットを取り付け、このソケットに便器背面の筒状の排水口が接続される。ソケットには段部が設けられており、この段部が壁面に当接するようにソケットが取り付けられる。便器を設置する際には、便器の排水口が、壁面から突出したソケットの大径部に受け入れられるように、便器をボルトによって壁面に固定する。ソケットは段部によって壁面に当接しているため、押圧力を受けても壁面の中に引っ込むことはない。従って、便器の排水口がソケットの大径部と整合して、排水口がソケットの中に受け入れられていない場合には、便器の排水口とソケットが干渉して便器を壁面に取り付けることが不可能になる。これにより、便器の排水口と排水枝管が適切に接続されていないことによる排水漏れ等が防止される。
【0003】
【特許文献1】特許第3045030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許第3045030号公報に記載の接続構造では、便器の排水口と排水管の間の接続不良を防止することはできるものの、便器の排水口とソケットの大径部が整合するように、便器を壁面に固定するためのボルトの位置等を調整しなければならないという問題がある。また、便器は一般に陶器製であるため、通常、排水口の位置や、ボルト孔の位置には無視することができない製造誤差があり、また、ソケットの位置決め、便器を固定するためのボルトの位置決めにも誤差がある。このため、便器を壁面に取り付け施工する場合には、重量物である便器の取り付け、取り外しの試行錯誤を数回繰り返すことが必要になる場合もある。また、便器の排水口とソケットの大径部はパッキンを介して接続されるが、パッキンを取り付けた排水口が大径部の中に偏心して挿入された場合には、パッキンによるシールが不完全になり、排水口が大径部の中に受け入れられていても接続不良を生じる場合があるという問題がある。
【0005】
従って、本発明は、壁掛け式の水洗大便器本体の排水口を、壁面に設けられた排水管に容易に接続することができ、接続不良を防止することができる排水ソケット及びそれを備えた水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、壁掛け式の水洗大便器本体の排水口が形成された接続部を、壁面に設けられた排水管に接続する排水ソケットであって、外周に設けられたフランジ部を備えた排水ソケット本体と、フランジ部を、壁面との間に挟持することによって、排水ソケットを、壁面と平行な平面内で移動可能に支持するソケット本体支持部材と、を有し、排水ソケット本体は、排水管に接続される筒状の排水管接続部と、この排水管接続部に連通し、水洗大便器本体の接続部に取付けられたパッキンを受け入れるように構成された筒状の排水口接続部と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、排水ソケット本体の排水管接続部は排水管に接続され、排水口接続部は水洗大便器本体の接続部に取付けられたパッキンを受け入れる。排水ソケット本体のフランジ部は、ソケット本体支持部材と壁面との間に挟持され、壁面と平行な平面内で移動可能に支持される。水洗大便器本体が壁面に取り付けられるとき、排水ソケット本体は、水洗大便器本体の接続部に合わせて移動される。
【0008】
このように構成された本発明によれば、排水ソケット本体が水洗大便器本体の接続部に合わせて移動されるので、壁掛け式の水洗大便器本体の排水口を、壁面に設けられた排水管に容易に接続することができ、排水ソケット本体の中心とパッキンの中心の偏り等に起因する接続不良が回避される。
【0009】
本発明において、好ましくは、さらに、フランジ部とソケット本体支持部材との間、又はフランジ部と壁面との間にフランジ弾性部材が配置され、フランジ部が挟持されたとき、フランジ弾性部材が弾性圧縮される。
【0010】
このように構成された本発明によれば、フランジ部が挟持されたときフランジ弾性部材が弾性圧縮されるので、フランジ部とソケット本体支持部材の間に適度な摩擦力が働き、この摩擦力によって排水ソケット本体を任意の位置に移動可能に保持することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、さらに、弾性部材とソケット本体支持部材との間、又は弾性部材と壁面との間に、摩擦を軽減するためのスリップ部材が配置されている。
このように構成された本発明によれば、弾性部材とソケット本体支持部材との間又は弾性部材と壁面との間の摩擦が軽減されるので、排水ソケット本体を容易に移動させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、さらに、ソケット本体支持部材が、フランジ部の少なくとも一部を取り囲む係止部を備え、この係止部とフランジ部の外周との間に配置された外周弾性部材を有し、この外周弾性部材は、排水ソケット本体を壁面と平行な面内で移動させると弾性変形される。
【0013】
このように構成された本発明によれば、排水ソケット本体は、その周囲に配置された外周弾性部材によって中心に向かって押されるので、排水ソケット本体は、自動的に中心に位置決めされる。
【0014】
本発明において、好ましくは、排水口接続部は、その先端の開口が広くなるように、先端にテーパー部が形成されている。
このように構成された本発明によれば、排水口接続部の先端の開口は、テーパー部によって拡大されているので、中心がずれた状態でパッキンを排水口接続部に押し付けた場合でも排水ソケット本体は自動的に移動され、排水口接続部はパッキンを適正な位置で受け入れることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、フランジ部は、その基端部において厚く、先端部において薄くなるようにテーパー状に形成されている。
このように構成された本発明によれば、フランジ部がテーパー状に形成されているので、排水ソケット本体は中心に向かう力を受け、排水ソケット本体を中心に自動的に位置決めすることができる。
【0016】
また、本発明の水洗大便器は、汚物を受けるボール部と、このボール部の底部に連通したトラップ管路と、このトラップ管路の下流端の排水口が設けられた接続部と、を備えた水洗大便器本体と、接続部に取り付けられたパッキンと、このパッキンを排水口接続部に受け入れる排水ソケットと、を有することを特徴としている。
【0017】
さらに、本発明の水洗大便器スタンドは、床面に固定され、壁掛け式の水洗大便器本体を支持するための便器支持部を備えたスタンド本体と、このスタンド本体に取り付けられた排水ソケットと、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、排水ソケット及び便器支持部の位置決め精度を高くすることができ、また、それらの間の相対的な位置決め精度も高くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排水ソケット、及びそれを備えた水洗大便器及び水洗大便器スタンドによれば、壁掛け式の水洗大便器本体の排水口を、壁面に設けられた排水管に容易に接続することができ、接続不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。
まず、図1乃至図6を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器を説明する。図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を鉛直壁に取り付けた状態を示す側面断面図である。図2は、本実施形態の水洗大便器に使用されている排水ソケットの部分を拡大して示す側面断面図である。図3は排水ソケットの排水ソケット本体の正面図であり、図4はそのIV−IV線に沿った側面断面図である。また、図5は排水ソケット本体を壁面に取り付けるためのソケット本体支持部材の正面図であり、図6はそのVI−VI線に沿った側面断面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、水洗大便器本体2と、この水洗大便器本体2の接続部2cを排水管に接続するための排水ソケット4と、を有する。
水洗大便器本体2は、鉛直壁Wに設置される壁掛け式であり、汚物を受けるボール部2aと、このボール部2aの底部に連通したトラップ管路2bと、このトラップ管路2bの下流端の接続部2cと、を有する。接続部2cには、排水を排水管に排出する排水口2dが形成されている。なお、本実施形態においては、水洗大便器本体2は陶器製である。また、鉛直壁Wの背面側には、水洗大便器本体2の重量を支えるための金属製の複数のフレーム8(図1には1本のみ図示)と、これらフレーム8の間に水平方向に架け渡された長方形のプレート10が配置されている。このプレート10には、さらに、長方形の金属製の幕板12が取り付けられ、排水ソケット4は、この幕板12に取り付けられている。水洗大便器本体2は、ボルト(図示せず)によってフレーム8と連結されることによって、鉛直壁Wに取り付けられる。
【0021】
図2に示すように、排水ソケット4は、排水ソケット本体16と、これを幕板12に取り付けるソケット本体支持部材18と、を有する。排水ソケット4は、水洗大便器本体2の排水口2dと、排水本管Dに接続された排水管である蛇腹管6を接続するように構成されている。排水本管Dは、概ね水平方向に延びており、下水道に接続されている。蛇腹管6は、排水本管Dに形成された分岐部に連結された可撓性のある管であり、排水本管Dに対して左右どちらかの方向に角度がついて延びている。
【0022】
図2乃至図4に示すように、排水ソケット本体16は、水洗大便器本体2の接続部2cに連結される排水口接続部20と、蛇腹管6に連結される排水管接続部22と、排水口接続部20と排水管接続部22の間に形成されたフランジ部24と、を有する。なお、本実施形態において、排水ソケット本体16は、塩化ビニール製である。
【0023】
排水口接続部20は、概ね円筒状の形状を有し、パッキン14を取り付けた水洗大便器本体2の接続部2cを隙間なく受け入れることができる直径に構成されている。排水口接続部20の先端には、その入口の開口が広くなるようにテーパーが付けられたテーパー部20aが形成されている。なお、本実施形態において、排水口接続部20の先端の内径は、テーパー部20aによって8mm拡大されている。
【0024】
排水管接続部22は、排水口接続部20よりも直径が小さい概ね円筒状の形状を有し、排水口接続部20と同心的に連通するように構成されている。排水管接続部22の外径は、蛇腹管6の端部に隙間なく挿入される大きさに形成されている。
【0025】
フランジ部24は、4隅を円弧状にした長方形板状に形成されており、排水口接続部20と排水管接続部22の間から半径方向外方に延びるように構成されている。このフランジ部24は、図2に示すように、ソケット本体支持部材18と幕板12の間に挟持される。
【0026】
図5及び図6に示すように、ソケット本体支持部材18は、概ね八角形の金属板によって形成されている。また、ソケット本体支持部材18は、中央に円形穴18aが空けられた板面部18bと、板面部18bの4つの辺を直角に折り曲げて形成された係止部18cと、を有する。さらに、左右の係止部18cには、係止部18cの先端から突出し、板面部18bと平行になるように折り曲げられた4つの舌部18dが形成されている。この舌部18dに空けられた孔にボルト(図示せず)を挿通して螺合させることによって、ソケット本体支持部材18が幕板12に固定される。
【0027】
図2に示すように、ソケット本体支持部材18は、排水ソケット本体16の排水口接続部20をその円形穴18aに通した後、各舌部18dの孔にボルト(図示せず)を挿通して幕板12に固定されている。これにより、排水ソケット本体16のフランジ部24は、ソケット本体支持部材18の板面部18bと幕板12との間に挟持される。また、ソケット本体支持部材18の円形穴18aの直径は、排水口接続部20の基部の直径よりも10mm大きく構成されている。このため、ソケット本体支持部材18と幕板12との間に挟持された排水ソケット本体16は、鉛直壁Wと平行な面内で任意の方向に移動することができる。
【0028】
また、フランジ部24のソケット本体支持部材18側には、容易に弾性変形することができるシート状のフランジ弾性部材26が貼り付けられている。さらに、このフランジ弾性部材26の上には、平滑な表面を有する薄いシート状のスリップ部材28が貼り付けられている。なお、本実施形態においては、フランジ弾性部材26は発泡ウレタン製であり、スリップ部材28は合成ゴム製である。或いは、スリップ部材28として、塩化ビニールを使用することもできる。また、フランジ弾性部材26及びスリップ部材28は、フランジ部24のソケット本体支持部材18側全体に貼り付けても良いし、部分的に貼り付けても良い。さらに、フランジ弾性部材26及びスリップ部材28を、フランジ部24に貼り付けなくても良い。
【0029】
ソケット本体支持部材18を幕板12にボルト(図示せず)で固定すると、フランジ弾性部材26は、ソケット本体支持部材18によって所定量弾性変形され、排水ソケット本体16は所定の押圧力で挟持される。また、フランジ弾性部材26とソケット本体支持部材18の間には、平滑なスリップ部材28が配置されているので、ソケット本体支持部材18に対する排水ソケット本体16の摺動抵抗は小さく、排水ソケット本体16は鉛直壁Wと平行な面内で容易に移動される。
【0030】
次に、本発明の第1実施形態による水洗大便器1の施工手順を説明する。
まず、排水本管Dに形成された分岐部に蛇腹管6の一端を被せ、分岐部と蛇腹管6の重なった部分を固定バンド6aで締め付けることによって、蛇腹管6を排水本管Dに水密的に連結する。次に、プレート10を、鉛直方向に延びる2本のフレーム8の間に水平方向に架け渡し、ボルト(図示せず)で固定する。さらに、幕板12をプレート10にボルト(図示せず)で固定する。次に、フレーム8を覆うように、任意の壁材で鉛直壁Wを形成する。なお、本実施形態においては、鉛直壁Wは、幕板12が露出するように、幕板12の表面と面一になるように形成されている。或いは、鉛直壁Wは幕板の表面と面一でなくても良い。
【0031】
次に、蛇腹管6の先端を、プレート10及び幕板12に形成された穴を通して引き出し、蛇腹管6の先端に排水ソケット本体16の排水管接続部22を嵌め込む。さらに、蛇腹管6と排水管接続部22が重なった部分を固定バンドで締め付けることによって、蛇腹管6と排水管接続部22を水密的に連結する。次に、蛇腹管6に接続された排水管接続部22を幕板12に形成された穴に入れ、排水ソケット本体16のフランジ部24の背面と幕板12を当接させる。この状態で、ソケット本体支持部材18を、フランジ部24を幕板12との間に挟むように4本のボルト(図示せず)で幕板12に固定する。ソケット本体支持部材18が幕板12に固定されると、フランジ部24に貼り付けられたフランジ弾性部材26は、弾性的に所定量圧縮される。このため、フランジ部24は、幕板12とソケット本体支持部材18の間に、適度な押圧力で挟持される。
【0032】
ソケット本体支持部材18に形成された円形穴18aの直径は、この円形穴18aに挿入されている排水口接続部20の外径よりも約10mm大きく形成されている。従って、排水ソケット本体16は、鉛直壁Wと平行な平面内で、各方向に±5mmずつ移動することができる。また、フランジ弾性部材26とソケット本体支持部材18の間には、スリップ部材28が配置されているため、それらの間に働く摩擦力は低減され、排水ソケット本体16を容易に移動させることができる。また、フランジ部24には適度な摩擦力が働くので、排水ソケット本体16を任意の位置に移動させると、排水ソケット本体16は摩擦力によってその位置に保持される。ソケット本体支持部材18によって排水ソケット本体16を挟持した後、排水ソケット本体16を中心に、即ち、円形穴18aの中心と排水ソケット本体16の中心が整合するように、移動させておく。
【0033】
次に、設置すべき水洗大便器本体2の接続部2cにパッキン14を被せる。さらに、パッキン14を取り付けた水洗大便器本体2を、パッキン14が排水ソケット本体16の排水口接続部20に挿入されるように配置する。また、同時に、フレーム8に取り付けられ、鉛直壁Wから突出している2本の取り付け用ボルト(図示せず)が、水洗大便器本体2に形成された取り付け用ボルト穴(図示せず)に挿入されるように、水洗大便器本体2を配置する。このとき、水洗大便器本体2の接続部2cと、取り付け用ボルト穴(図示せず)の位置関係に製造誤差等があったとしても、この誤差は排水ソケット本体16の移動によって吸収される。即ち、排水ソケット本体16は、パッキン14を排水口接続部20の中に受け入れるために、鉛直壁Wと平行な平面内で適切な位置に移動される。また、排水ソケット本体16が移動可能であるため、従来の接続構造の場合のように、水洗大便器本体2の設置位置が、排水ソケットの位置に拘束されることはない。このため、水洗大便器本体2と周囲の壁等との間の距離が所望の長さになるように、水洗大便器本体2の取り付け位置を適宜微調整することも可能になる。従って、本実施形態の水洗大便器では、水洗大便器本体の製造誤差ばかりでなく、水洗大便器の取り付け用ボルトの位置決め誤差等も吸収される。排水ソケット本体16が移動されると、排水ソケット本体16の排水管接続部22に連結された蛇腹管6が撓み、排水ソケット本体16の移動が許容される。
【0034】
排水ソケット本体16は、パッキン14を取り付けた接続部2cの位置に合わせて適切な位置に移動されるので、パッキン14を受け入れたとき、排水口接続部20の中心とパッキン14の中心はほぼ一致し、パッキン14の挿入位置の偏りによる接続不良が防止される。パッキン14が排水ソケット本体16の排水口接続部20に受け入れられることにより、水洗大便器本体2の排水口2dは、排水ソケット4に水密的に接続される。また、排水口接続部20の先端にはテーパー部20aが形成され開口が広くなっているため、排水口接続部20の中心とパッキン14の中心がずれた状態で水洗大便器本体2を排水ソケット本体16に押し付けたとしても、排水ソケット本体16は自動的に適切な位置に移動され、パッキン14は排水口接続部20の中心に受け入れられる。
【0035】
パッキン14を取り付けた接続部2cが排水口接続部20に受け入れられ、鉛直壁Wから突出している2本の取り付け用ボルト(図示せず)が水洗大便器本体2の取り付け用ボルト穴(図示せず)に挿入されるように、水洗大便器本体2を位置決めした後、各取り付け用ボルト(図示せず)に袋ナット(図示せず)を螺合させ、水洗大便器本体2を鉛直壁Wに固定する。これにより、本発明の第1実施形態による水洗大便器1の設置作業が完了する。
【0036】
本発明の第1実施形態の水洗大便器によれば、排水ソケット本体が水洗大便器本体の接続部に合わせて移動されるので、壁掛け式の水洗大便器本体の排水口を、壁面に設けられた排水管に容易に接続することができ、排水ソケット本体の中心とパッキンの中心の偏り等に起因する接続不良が回避される。
【0037】
また、本発明の第1実施形態の水洗大便器によれば、フランジ部とソケット本体支持部材の間にフランジ弾性部材が配置されているので、フランジ部とソケット本体支持部材の間に適度な摩擦力が働き、この摩擦力によって排水ソケット本体を任意の位置に移動可能に保持することができる。
【0038】
さらに、本発明の第1実施形態の水洗大便器によれば、弾性部材とソケット本体支持部材との間にスリップ部材が配置されているので、それらの間の摩擦が軽減され、排水ソケット本体を容易に移動させることができる。
【0039】
図7は、本発明の第1実施形態の水洗大便器に使用される排水ソケットの変形例である。この変形例においては、図7に示すように、フランジ弾性部材30が、排水ソケット本体16のフランジ部24の背面側、即ち排水管接続部22側に配置されている。即ち、フランジ弾性部材30は、フランジ部24の背面と幕板12の間に配置される。ソケット本体支持部材18を取り付け、フランジ部24を挟持することによって、フランジ弾性部材30は所定量圧縮される。また、スリップ部材は、フランジ弾性部材30と幕板12の間に配置しても良いし、フランジ部24とソケット本体支持部材18の間に配置しても良い。或いは、スリップ部材を省略することもできる。本変形例の他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0040】
次に、図8を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器を説明する。本実施形態の水洗大便器は、使用されている排水ソケットに備えられている弾性部材の配置が、第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図8は、本実施形態の水洗大便器に使用されている排水ソケットの部分を拡大して示す側面断面図である。
図8に示すように、本発明の第2実施形態による水洗大便器に使用されている排水ソケット100は、排水ソケット本体16と、この排水ソケット本体16を幕板12との間で挟持するソケット本体支持部材18と、を有する。また、本実施形態においては、排水ソケット本体16のフランジ部24の正面とソケット本体支持部材18の間にフランジ弾性部材は配置されていない。従って、本実施形態においては、ソケット本体支持部材18を幕板12に固定したとき、それらの間でフランジ部24がガタなく移動可能であるように、ソケット本体支持部材18及びフランジ部24が形成されている。
【0042】
また、フランジ部24の外周側面と、ソケット本体支持部材18の4つの係止部18c(図8には2つのみ図示)との間には、細長い円形断面の外周弾性部材102が夫々配置されている。各外周弾性部材102は、フランジ部24の外周側面と係止部18cの間に、僅かに弾性変形した状態で配置されている。従って、フランジ部24は、各外周弾性部材102によって四方から中心に向かって押圧されるので、排水ソケット本体16は自動的にソケット本体支持部材18の中心に位置決めされる。このように、排水ソケット100を幕板12に取り付けた状態では、排水ソケット本体16は自動的に中心に位置決めされる。
【0043】
次に、水洗大便器本体2を鉛直壁Wに取り付ける際に、パッキン14を取り付けた接続部2cが排水口接続部20に挿入されると、各外周弾性部材102は容易に変形され、排水ソケット本体16は、鉛直壁Wに平行な平面内で適切な位置に移動される。これにより、水洗大便器本体2の製造誤差等は吸収され、排水ソケット100と接続部2cの間の接続不良が防止される。
本発明の第2実施形態の水洗大便器によれば、排水ソケット本体が自動的にソケット本体支持部材の中央に位置決めされる。
【0044】
また、本実施形態の変形例として、外周弾性部材をフランジ部の外周側面全体に配置しても良い。或いは、他の変形例として、外周弾性部材102の他に、第1実施形態と同様のフランジ弾性部材及びスリップ部材を、フランジ部24とソケット本体支持部材18の間、又はフランジ部24と幕板12の間に配置しても良い。
【0045】
次に、図9を参照して、本発明の第3実施形態による水洗大便器を説明する。本実施形態の水洗大便器は、使用されている排水ソケットの排水ソケット本体の形状が、第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図9は、本発明の第3実施形態による水洗大便器に使用されている排水ソケット本体の断面図である。
図9に示すように、本実施形態に使用されている排水ソケット本体200は、水洗大便器本体の接続部に連結される概ね円筒状の排水口接続部20と、蛇腹管に連結される概ね円筒状の排水管接続部22と、排水口接続部20と排水管接続部22の間に形成されたフランジ部202と、を有する。また、フランジ部202の排水口接続部20側の面である排水口側面202aは、外方に向かって低くなるようにテーパーが付けられている。即ち、フランジ部202は、その基端部において厚く、先端部において薄くなるようにテーパー状に形成されている。
【0047】
また、フランジ部202の排水口側面202aには、第1実施形態と同様に、シート状のフランジ弾性部材が貼り付けられ、さらに、フランジ弾性部材の表面には薄いスリップ部材が貼り付けられている(図2参照)。
【0048】
排水ソケット本体200の取り付け時において、フランジ部202を、ソケット本体支持部材と幕板の間に挟持すると、排水口側面202aに貼り付けられたフランジ弾性部材が圧縮される。排水口側面202aにはテーパーが付けられているため、フランジ弾性部材が圧縮されるとき、排水ソケット本体200には、それを中心に向けて移動させる力が作用する。排水ソケット本体200は、この力によって自動的に中心に移動され、位置決めされる。
【0049】
次に、水洗大便器本体を鉛直壁Wに取り付ける際に、パッキンを取り付けた接続部が排水口接続部に挿入されると、排水ソケット本体200は鉛直壁Wに平行な平面内で適切な位置に移動され、この移動に伴ってフランジ弾性部材はさらに圧縮変形される。これにより、水洗大便器本体の製造誤差等は吸収され、排水ソケット本体200と接続部の間の接続不良が防止される。
本発明の第3実施形態の水洗大便器によれば、排水ソケット本体が自動的にソケット本体支持部材の中央に位置決めされる。
【0050】
また、本実施形態の変形例として、フランジ弾性部材を、フランジ部202の排水管接続部22の側に配置しても良い。
【0051】
次に、図10を参照して、本発明の第4実施形態による水洗大便器スタンドを説明する。本実施形態の水洗大便器スタンドは、本発明の第1実施形態の水洗大便器に使用されている排水ソケットを備えた、壁掛け式の水洗大便器本体を支持するためのスタンドである。従って、ここでは、本実施形態のスタンドの部分のみを説明し、排水ソケットの部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
図10は、本発明の第4実施形態の水洗大便器スタンドを示す側面断面図である。図10に示すように、本実施形態の水洗大便器スタンド300は、排水ソケット4と、この排水ソケット4を取り付けたスタンド本体302と、を有する。スタンド本体302は、床面に固定される2つのL字型部材304(1つのみ図示)と、これらを連結するプレート部材306及び横部材310と、排水ソケット本体16が当接する幕板312と、を有する。
【0053】
L字型部材304は、L字型の金属製チャンネル材であり、その短い方の辺である短辺304aが床面に固定され、長い方の辺である長辺304bは、床面から鉛直上方に立ち上がっている。2つのL字型部材304は、互いに平行に配置され、壁掛け式の水洗大便器本体を支持している。各L字型部材304の長辺304bの上方には、壁掛け式の水洗大便器本体を支持するボルトを螺合させるための、便器支持部であるナット308が固定されている。このナット308に水洗大便器本体固定用のボルトを螺合させることにより、水洗大便器本体をスタンド本体302に固定する。
【0054】
プレート部材306は、L字型部材304の裏側に取り付けられた板状の部材であり、2つのL字型部材304を連結している。
横部材310は、L字型部材304の裏側、下方に取り付けられた正方形断面のチャンネル材であり、L字型部材304の間に水平方向に架け渡されて、2つのL字型部材304を連結している。
幕板312は、プレート部材306の表側に取り付けられた金属板であり、その表側の面に排水ソケット本体16のフランジ部が当接する。
本実施形態の水洗大便器スタンドに水洗大便器本体を取り付ける手順は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0055】
本発明の第4実施形態の水洗大便器スタンドによれば、水洗大便器本体を固定するためのボルトの位置、排水ソケット4を取り付ける位置、及びそれらの間の相対的な位置は、スタンド本体302の工作精度により規定されるため、水洗大便器の設置現場でこれらの位置決めを行う場合よりも位置精度を高めることができる。
【0056】
次に、図11を参照して、排水ソケット本体の変形例を説明する。図11は、本変形例の排水ソケット本体400の断面図である。図11に示すように、本変形例の排水ソケット本体400は、水洗大便器本体の接続部に連結される排水口接続部420と、蛇腹管に連結される排水管接続部422と、排水口接続部420の中間部に形成されたフランジ部424と、を有する。
【0057】
排水口接続部420は、概ね円筒状の形状を有し、パッキンを取り付けた水洗大便器本体の接続部を隙間なく受け入れることができる直径に構成されている。排水口接続部420の先端には、その入口の開口が広くなるようにテーパーが付けられたテーパー部420aが形成されている。
【0058】
排水管接続部422は、排水口接続部420よりも直径が小さい概ね円筒状の形状を有し、排水口接続部420と同心的に連通するように構成されている。排水管接続部422の外径は、蛇腹管の端部に隙間なく挿入される大きさに形成されている。
【0059】
フランジ部424は、4隅を円弧状にした長方形板状に形成されており、排水口接続部420の中間部から半径方向外方に延びるように構成されている。このフランジ部424は、ソケット本体支持部材と幕板の間に挟持される。
本変形例の排水ソケット本体は、上記の何れの実施形態にも適用することができる。また、フランジ部は、排水管接続部の側に設けることもできる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した本発明の実施形態においては、排水ソケット本体は、ソケット本体支持部材と幕板の間に挟持されていたが、排水ソケット本体がソケット本体支持部材と任意の壁面との間に挟持されるように構成することができる。なお、本明細書における「壁面」には、上述した実施形態におけるフレームに取付けられた幕板、鉛直壁、スタンド本体等、ソケット本体支持部材との間に排水ソケット本体を挟持することができる任意の部材が含まれるものとする。また、上述した本発明の実施形態においては、排水ソケット本体は、排水管である蛇腹管に接続されていたが、排水ソケット本体は、その移動を許容する任意の管に接続することができる。なお、本明細書における「排水管」には、排水ソケット本体に接続され、排水を下水道に導くことができる任意の管が含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器を壁面に取り付けた状態を示す側面断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器に使用されている排水ソケットの部分を拡大して示す側面断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器に使用されている排水ソケットの排水ソケット本体の正面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った側面断面図である。
【図5】排水ソケット本体を壁面に取り付けるためのソケット本体支持部材の正面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った側面断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態の水洗大便器に使用される排水ソケットの変形例を示す側面断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態による水洗大便器に使用されている排水ソケットの部分を拡大して示す側面断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態による水洗大便器に使用されている排水ソケットの排水ソケット本体の側面断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態の水洗大便器スタンドを示す側面断面図である。
【図11】排水ソケット本体の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
D 排水本管
W 鉛直壁
1 本発明の第1実施形態による水洗大便器
2 水洗大便器本体
2a ボール部
2b トラップ管路
2c 接続部
2d 排水口
4 排水ソケット
6 蛇腹管
6a 固定バンド
8 フレーム
10 プレート
12 幕板
14 パッキン
16 排水ソケット本体
18 ソケット本体支持部材
18a 円形穴
18b 板面部
18c 係止部
18d 舌部
20 排水口接続部
20a テーパー部
22 排水管接続部
24 フランジ部
26 フランジ弾性部材
28 スリップ部材
30 フランジ弾性部材
100 本発明の第2実施形態における排水ソケット
102 外周弾性部材
200 本発明の第3実施形態における排水ソケット本体
202 フランジ部
202a 排水口側面
300 本発明の第4実施形態の水洗大便器スタンド
302 スタンド本体
304 L字型部材
304a 短辺
304b 長辺
306 プレート部材
308 ナット
310 横部材
312 幕板
400 排水ソケット本体
420 排水口接続部
420a テーパー部
422 排水管接続部
424 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁掛け式の水洗大便器本体の排水口が形成された接続部を、壁面に設けられた排水管に接続する排水ソケットであって、
外周に設けられたフランジ部を備えた排水ソケット本体と、
上記フランジ部を、上記壁面との間に挟持することによって、上記排水ソケットを、上記壁面と平行な平面内で移動可能に支持するソケット本体支持部材と、を有し、
上記排水ソケット本体は、上記排水管に接続される筒状の排水管接続部と、この排水管接続部に連通し、上記水洗大便器本体の接続部に取付けられたパッキンを受け入れるように構成された筒状の排水口接続部と、を備えていることを特徴とする排水ソケット。
【請求項2】
さらに、上記フランジ部と上記ソケット本体支持部材との間、又は上記フランジ部と上記壁面との間にフランジ弾性部材が配置され、上記フランジ部が挟持されたとき、上記フランジ弾性部材が弾性圧縮される請求項1記載の排水ソケット。
【請求項3】
さらに、上記弾性部材と上記ソケット本体支持部材との間、又は上記弾性部材と上記壁面との間に、摩擦を軽減するためのスリップ部材が配置されている請求項2記載の排水ソケット。
【請求項4】
さらに、上記ソケット本体支持部材が、上記フランジ部の少なくとも一部を取り囲む係止部を備え、この係止部と上記フランジ部の外周との間に配置された外周弾性部材を有し、この外周弾性部材は、上記排水ソケット本体を上記壁面と平行な面内で移動させると弾性変形される請求項1乃至3の何れか1項に記載の排水ソケット。
【請求項5】
上記排水口接続部は、その先端の開口が広くなるように、先端にテーパー部が形成されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の排水ソケット。
【請求項6】
上記フランジ部は、その基端部において厚く、先端部において薄くなるようにテーパー状に形成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の排水ソケット。
【請求項7】
汚物を受けるボール部と、このボール部の底部に連通したトラップ管路と、このトラップ管路の下流端の排水口が設けられた接続部と、を備えた水洗大便器本体と、
上記接続部に取り付けられたパッキンと、
このパッキンを上記排水口接続部に受け入れる請求項1乃至6の何れか1項に記載の排水ソケットと、
を有することを特徴とする水洗大便器。
【請求項8】
床面に固定され、壁掛け式の水洗大便器本体を支持するための便器支持部を備えたスタンド本体と、
このスタンド本体に取り付けられた請求項1乃至6の何れか1項に記載の排水ソケットと、
を有することを特徴とする水洗大便器スタンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−291569(P2006−291569A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113634(P2005−113634)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】