説明

排水処理システム

【課題】装置の大型化防止やランニングコスト増大防止が可能で、高効率、かつ安定的に排水を処理することが可能な排水処理システムを提供する。
【解決手段】有機化合物を含有する排水中から有機化合物を揮発除去させた一次処理水として排出させ、有機化合物を含有する曝気ガスを排出させる曝気槽100と、前記一次処理水を接触させることで有機化合物を吸着させて二次処理水として排出し、前記吸着素子211、221に加熱ガスを供給することで有機化合物を前記吸着素子から脱着させて有機化合物を含有する脱着ガスとして排出する排水処理装置200と、前記二次処理水を活性汚泥に接触させることで有機化合物を分解除去させて三次処理水として排出する活性汚泥処理装置300と、前記前記曝気槽および排水処理装置から排出された曝気ガスと脱着ガスの混合排ガスを燃焼させて酸化分解して分解ガスを排出する燃焼装置400とを備えた排水処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を含有する排水から有機化合物を除去することで当該排水を正常化する排水処理システムに関し、特に、各種工場や研究施設等から排出される有機化合物を含有する産業排水から有機化合物を効率的に除去することで当該産業排水を清浄化する排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機化合物を含有する排水を清浄化する排水処理装置として、活性汚泥処理装置が利用されている。活性汚泥処理装置は、主としてバクテリア(細菌類)、原生動物、後生動物等の好気性微生物群を含む活性汚泥を用いて排水を清浄化させる装置であり、例えば、特許文献1等にその詳細が開示されている。
【0003】
活性汚泥処理装置は、上述した活性汚泥に排水を供給してこれを撹拌および曝気することで当該排水中に含まれる有機化合物を微生物を用いて分解して除去し、活性汚泥を分離することでクリーンな浄水に清浄化して排出する装置である。
【0004】
上述した活性汚泥処理装置においては、有機化合物の分解に微生物が利用されるため、当該微生物が有機化合物を分解するのに適した条件を連続的に安定して維持することが非常に難しくなる。このような活性汚泥処理装置を備えた排水処理システムとした場合には、安定的に排水の処理能力を維持することが困難になる問題があった。
【0005】
また、微生物にとって難分解性の有機化合物や微生物にとって毒性の高い有機化合物も高濃度に含む排水を処理する場合、活性汚泥処理装置のみでは排水の清浄化は非常に困難となる。例えば1,4−ジオキサンを含有する排水を処理する場合、一般的な微生物では1,4−ジオキサンを全く分解することができないため、活性汚泥処理以外の処理方法が必要となる。
【0006】
活性汚泥処理が困難な有機化合物の除去方法として、吸着材を用いた排水処理装置が広く知られている。例えば、吸着材としてカートリッジ式の活性炭を用いた交換式排水処理装置を用いて処理されることが一般的に行なわれており、その場合には、排水に含まれる有機化合物がカートリッジ式の活性炭によって除去され、クリーンな浄水として交換式排水処理装置から排出されることになる。
【0007】
しかしながら、交換式排水処理装置においては、有機化合物を一定時間吸着し続けることによって吸着材の吸着能力が飽和に達すれば、それ以降吸着が実質的には行なわれず、新品への交換作業、もしくは一旦装置から吸着材を取り外して再生処理を行なう作業が必要になる。したがって、交換式排水処理装置と活性汚泥処理装置を接続させた排水処理システムとした場合には、連続的に当該水を処理することができず、排水処理システム自体をその都度停止させる必要があった。
【0008】
また、水の清浄化は、空気の清浄化とは異なり、微生物の繁殖が不可避であり、吸着材の寿命は短くなってしまう。したがって、交換式排水処理装置と活性汚泥処理装置とを接続させた排水処理システムとした場合には、上述した吸着材の交換作業や再生処理作業を頻繁に行なう必要が生じ、その労力やランニングコストが増大するといった問題もあった。
【0009】
また、高濃度に有機化合物を含有する排水を大量に活性汚泥処理装置で処理する場合には、必要となる活性汚泥の量もこれに伴って増大することになり、装置の大型化や設置コストの増加が不可避となる。加えて、活性汚泥処理装置においては、処理すべき排水に含まれる有機化合物の量に応じて活性汚泥の量を常時調節して最適化することが必要になるが、そのためには余剰の活性汚泥を常時回収して装置から排出することが必要であり、この余剰汚泥の廃棄に手間やコストがかかる問題があった。したがって、上記のように活性汚泥の量を増加させた場合には、廃棄すべき余剰汚泥の量も増加してしまい、そのランニングコストも大幅に増加してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−10791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたものであり、活性汚泥処理装置の大型化防止やランニングコストの増大防止が可能で、システムを停止させることなく、生分解性の低い有機化合物を含む排水においても、連続的に排水の清浄化が可能で、高効率、かつ安定的に排水を処理することが可能な排水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.有機化合物を含有する排水から有機化合物を除去することで当該排水を清浄化する排水処理システムであって、
有機化合物を含有する排水を曝気処理することで、排水中から有機化合物を揮発除去させた一次処理水として排出させるとともに、有機化合物を含有する曝気ガスを排出させる曝気槽と、
有機化合物を含有する前記一次処理水を接触させることで有機化合物を吸着し、加熱ガスを接触させることで吸着した有機化合物を脱着する吸着素子を含み、前記吸着素子に前記一次処理水を供給することで有機化合物を前記吸着素子に吸着させて二次処理水として排出し、前記吸着素子に加熱ガスを供給することで有機化合物を前記吸着素子から脱着させて有機化合物を含有する脱着ガスとして排出し、前記吸着素子の脱着処理が完了した部分を吸着処理を行なう部分に移行させるとともに前記吸着素子の吸着処理が完了した部分を脱着処理を行なう部分に移行させることで連続的に二次処理水を処理可能な排水処理装置と、
有機化合物を分解する微生物が含まれた活性汚泥を有し、前記二次処理水を当該活性汚泥に接触させることで微生物によって有機化合物を分解させて除去して三次処理水として排出する活性汚泥処理装置と、
前記曝気槽および前記排水処理装置に接続され、前記曝気槽および排水処理装置から排出された有機化合物を含有する曝気ガスと脱着ガスの混合排ガスを燃焼させて酸化分解して分解ガスを排出する燃焼装置とを備えた排水処理システム。
2.前記排水処理装置は、前記吸着素子にガスを吹き付けることで前記吸着素子に付着した余剰の排水を吹き飛ばしてこれを除去排水として排出する上記1に記載の排水処理システム。
3.前記排水処理装置から排出された除去排水が、排水として前記排水処理装置に再度供給されるように構成された上記2に記載の排水処理システム。
4.前記吸着素子が、活性炭、活性炭素繊維およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1の吸着材を含んでいる、上記1から3のいずれかに記載の排水処理システム。
5.前記燃焼装置から排出される分解ガスを熱交換し、前記排水処理装置の加熱ガスを予熱するように構成された上記1から4いずれかに記載の排水処理システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、活性汚泥処理装置の大型化防止やランニングコストの増大防止が可能で、システムを停止させることなく連続的に排水の清浄化が可能で、特に難生分解性の有機化合物も高濃度に含有する排水を、高効率、かつ安定的に処理することが可能な排水処理システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における排水処理システムのシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における排水処理システムにおいて利用可能な他の排水処理装置の例を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1における排水処理システムにおいて利用可能なさらに他の排水処理装置の例を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態2における排水処理システムのシステム構成図である。
【図5】本発明の実施の形態3における排水処理システムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一または対応する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さないことにする。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における排水処理システムのシステム構成図である。以下においては、この図1を参照して、本実施の形態における排水処理システム1Aの構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態における排水処理システム1Aは、曝気槽100と、排水処理装置200と、活性汚泥処理装置300と、燃焼装置400を主として備えている。
【0018】
曝気槽100は、気泡を発生させる曝気装置111および排水を所定温度まで加温させる加温装置112を含んでいる。曝気槽100は、配管ラインL1から有機化合物を含有する排水を供給することで、排水中の有機化合物が揮発され、配管ラインL2から有機化合物が揮発された排水を排出する。配管ラインL3、L4は、ガスを曝気装置111へ導入することにより、排水中から有機化合物を揮発除去し、有機化合物を含有する曝気ガスとして排出させるための配管ラインである。
【0019】
曝気槽100においては、加温装置112を用いて排水を所定温度まで加温させて、曝気させる方が好ましい。加温により、より排水中の有機化合物の揮発量が増大し、排水中から有機化合物を除去できるからである。曝気槽100における排水の加温方法は特に限定はしない。配管ラインを設けて曝気槽100へ蒸気を直接投入しても良いし、蒸気を用いて間接的に排水を加温するような曝気槽の構造にしても良いし、電熱ヒーターを用いて排水を加温させても良い。
【0020】
排水処理装置200は、吸着素子としての吸着材211、221がそれぞれ収容された第1処理槽210および第2処理槽220を有している。吸着材211、221は、有機化合物を含んだ一次処理水を接触させることで、一次処理水に含有される有機化合物を吸着する。したがって、排水処理装置200においては、吸着材211、221に有機化合物を含んだ排水を供給することで、有機化合物が吸着材211、221によって吸着され、これにより排水が清浄化されて二次処理水として排出されることになる。また、吸着材211、221は、加熱ガスを接触させることで吸着した有機化合物を脱着する。したがって、排水処理装置200においては、吸着材211、221に加熱ガスを供給することで有機化合物が吸着材211、221から脱着され、これにより加熱ガスが有機化合物を含有する脱着ガスとして排出されることになる。
【0021】
第1処理槽210および第2処理槽220には、配管ラインL2、L5、L6、L7がそれぞれ接続されている。配管ラインL2は、曝気槽100から排出された有機化合物を含んだ一次処理水を、第1処理槽210および第2処理槽220に供給するための配管ラインであり、バルブV201、V202によって第1処理槽210および第2処理槽220に対する接続/非接続状態が切り替えられる。配管ラインL6は、加熱ガスを第1処理槽210および第2処理槽220に供給するための配管ラインであり、バルブV203、V204によって第1処理槽210および第2処理槽220に対する接続/非接続状態が切り替えられる。配管ラインL5は、二次処理水を第1処理槽210および第2処理槽220から排出するための配管であり、バルブV205、V206によって第1処理槽210および第2処理槽220に対する接続/非接続状態が切り替えられる。配管ラインL7は、脱着ガスを第1処理槽210および第2処理槽220から排出するための配管ラインであり、バルブV207、V208によって第1処理槽210および第2処理槽220に対する接続/非接続状態が切り替えられる。
【0022】
第1処理槽210と第2処理槽220とは、上述したバルブV201〜V208の開閉を操作することによって交互に吸着槽および脱着槽として機能し、具体的には、第1処理槽210が吸着槽として機能している場合には、第2処理槽220が脱着槽として機能し、第1処理槽210が脱着槽として機能している場合には、第2処理槽220が吸着槽として機能する。すなわち、本実施の形態における排水処理装置200においては、吸着槽と脱着槽とが経時的に交互に切り替わるように構成されている。なお、配管ラインL2は、第1処理槽210および第2処理槽220のうち、吸着槽として機能している槽に接続されて当該吸着槽に一次処理水を供給し、配管ラインL6は、第1処理槽210および第2処理槽220のうち、脱着槽として機能している槽に接続されて当該脱着槽に加熱ガスを供給する。また、配管ラインL5は、第1処理槽210および第2処理槽220のうち、吸着槽として機能している槽に接続されて当該吸着槽から二次処理水を排出し、配管ラインL7は、第1処理槽210および第2処理槽220のうち、脱着槽として機能している槽に接続されて脱着ガスを排出する。
【0023】
吸着材211、221は、活性炭、活性炭素繊維またはゼオライトの少なくともいずれかを含む吸着材にて構成されている。好適な吸着材211、221としては、粒状、粒体状、ハニカム状等の活性炭やゼオライトが利用されるが、より好適には、活性炭素繊維が利用される。活性炭素繊維は、表面にミクロ孔を有する繊維状構造を有しているため、水との接触効率が高く、特に水中の有機化合物の吸着速度が速くなり、他の吸着素子に比べて極めて高い吸着効率を実現できる部材である。
【0024】
吸着材211、221として利用可能な活性炭素繊維の物性は、特に限定されるものではないが、BET比表面積が700〜2000m2/g、細孔容積が0.4〜0.9cm3/g、平均細孔径が17〜18Åのものが好ましい。これは、BET比表面積が700m2/g未満、細孔容積が0.4m3/g未満、平均細孔径が17Å未満のものでは、有機化合物の吸着量が低くなるためであり、またBET比表面積が2000m2/gを超え、細孔容積が0.9m3/gを超え、平均細孔径が18Åを超えるのものでは、細孔径が大きくなることで分子量の小さな物質等の吸着能力が低下したり、強度が弱くなったり、素材のコストが高くなって経済的に不利になったりするためである。
【0025】
活性汚泥処理装置300は、曝気槽310と沈殿槽320とを主として有している。曝気槽310は、曝気装置311と図示しない撹拌装置とを含んでおり、曝気槽310の内部には、バクテリア(細菌類)、原生動物、後生動物等の好気性微生物群を含む活性汚泥が充填されている。曝気槽310は、上述した活性汚泥に上記排水処理装置200から排出された二次処理水を供給することで活性汚泥と二次処理水とを接触させ、これを撹拌および曝気することで二次処理水に含有される有機化合物を分解して除去するための処理槽である。一方、沈殿槽320は、曝気槽310にて処理された活性汚泥を含む水を固液分離することで活性汚泥と三次処理水とに分離するための処理槽である。
【0026】
活性汚泥処理装置300には、配管ラインL5、L9、L10、L11、L12、L13が接続されている。配管ラインL5は、曝気槽310に二次処理水を供給するための配管ラインであり、配管ラインL9は、曝気装置311に酸素を供給するための配管ラインである。配管ラインL10は、曝気槽310から活性汚泥を含む水を排出し、これを沈殿槽320に供給するための配管ラインである。配管ラインL11は、沈殿槽320から排出された活性汚泥のうち、その余剰分を余剰汚泥として排出するための配管ラインであり、配管ラインL12は、沈殿槽320から排出された活性汚泥のうち、その必要分を返送汚泥として曝気槽310に返送するための配管ラインである。また、配管ラインL13は、沈殿槽320から三次処理水を排出するための配管ラインである。
【0027】
活性汚泥処理装置300においては、配管ラインL5を介して曝気槽310に供給された二次処理水が曝気槽310内において活性汚泥と混ざり合い、この混ざり合った排水と活性汚泥とが、配管ラインL9を介して曝気装置311に供給されて当該曝気装置311から排出される酸素によって曝気されつつ撹拌されることで有機化合物の分解が行なわれ、分解後の活性汚泥を含む水が配管ラインL10を介して沈殿槽320に送られ、沈殿槽320において固液分離されてその上澄み液が配管ラインL13を介して三次処理水として排出される。この活性汚泥処理装置300から排出される三次処理水は、活性汚泥処理装置300に供給される二次処理水に比べその有機化合物の含有量は大幅に減少しており、河川・下水放流可能なレベルまで清浄化されている。
【0028】
燃焼装置400は、曝気槽100から排出される曝気ガスおよび排水処理装置200から排出される脱着ガスの混合排ガスを燃焼させて酸化分解させるための装置であり、配管ラインL8、L14、L15、L16に接続されている。燃焼装置400は、熱交換器410と加熱炉420とを有しており、熱交換器410は、加熱炉420に導入される曝気ガスおよび脱着ガスの混合排ガスを予熱するためのものであり、加熱炉420は、電熱ヒーター421を用いて導入された混合排ガスを燃焼させるためのものである。配管ラインL8は、曝気槽100の配管ラインL4から排出された曝気ガスと、排水処理装置200の配管ラインL7から排出された脱着ガスを混合させ、混合排ガスとして熱交換器410に供給するための配管ラインであり、配管ラインL14は、熱交換器410で予熱された脱着ガスを加熱炉420に導入するための配管ラインである。また、配管ラインL15、L16は、加熱炉420にて混合排ガスが燃焼することによって生成される分解ガスを熱交換器410を経由させて外部に排出するための配管ラインである。
【0029】
燃焼装置400としては、特にその種類が限定されるものではないが、例えば混合排ガスを650〜800℃の高温で直接的に酸化分解させる直接燃焼装置や、白金触媒等を利用して混合排ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する触媒燃焼装置、蓄熱体を利用して熱回収を行ないつつ経済的に直接酸化分解を行なう蓄熱式直接燃焼装置、白金触媒等と蓄熱体とを組み合わせて効率的に混合排ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する蓄熱式触媒燃焼装置等を使用することが可能である。当該燃焼装置400を用いて混合排ガスを酸化分解させることにより、有機化合物は完全に除去される。
【0030】
次に、上記図1を参照して、本実施の形態における排水処理システム1Aにおいて行なわれる排水の清浄化処理の詳細について説明する。なお、以下の説明は、排水処理装置200の第1処理槽210が吸着槽として機能し、第2処理槽220が脱着槽として機能している状態に基づいたものであるが、これら吸着槽と脱着槽とが入れ替わった場合にも、同様の処理が行なわれる。
【0031】
図1に示すように、有機化合物を含んだ排水は、配管ラインL1を経由して曝気槽100に導入される。導入された排水は加温曝気処理されて、有機化合物が排水中より揮発することで排水中から除去され、有機化合物が除去された後の水は、配管ラインL2に導入されて一次処理水として曝気槽100から排出される。
【0032】
曝気槽100から排出された一次処理水は、配管ラインL2を経由して排水処理装置200に導入される。導入された一次処理水は、第1処理槽210に送られて吸着材211と接触し、当該一次処理水に含有される有機化合物が吸着材211によって吸着される。有機化合物が吸着材211によって吸着された後の水は、配管ラインL5に導入されて二次処理水として排水処理装置200から排出される。
【0033】
一方、排水処理装置200には、上記一次処理水の導入と並行して、配管ラインL6を経由して加熱ガスが導入される。導入された加熱ガスは、第2処理槽220に送られて吸着材221と接触し、吸着材221に吸着された有機化合物を脱着させる。吸着材221から脱着された有機化合物を含む加熱ガスは、配管ラインL7に導入されて脱着ガスとして排水処理装置200から排出される。
【0034】
排水処理装置200から排出された二次処理水は、配管ラインL5を経由して活性汚泥処理装置300に導入される。導入された二次処理水は、活性汚泥と接触させられることで当該排水に含有される有機化合物が分解されて除去され、有機化合物が除去された後の水は、配管ラインL13に導入されて三次処理水として活性汚泥処理装置300から排出される。排出された三次処理水は、その後、河川放流もしくは通常の下水としての処理がなされる。
【0035】
曝気槽100から排出された曝気ガスおよび、排水処理装置200から排出された脱着ガスは、配管ラインL8にて混合排ガスとして燃焼装置400に送られ、加熱炉420にて燃焼することで酸化分解する。加熱炉420にて生成された分解ガスは、配管ラインL16に導入されて燃焼装置400から排出される。この分解ガスは、主として二酸化炭素と水蒸気とを含む人体に対して無害なガスである。
【0036】
以上の如くの排水処理システム1Aとすることにより、活性汚泥処理装置300の前処理装置として曝気槽100および排水処理装置200が機能することになり、活性汚泥処理装置300のみで排水処理システムを構築した場合に比べ、活性汚泥処理装置300にて処理する排水中の有機化合物負荷量が低減されるだけでなく、特に活性汚泥による生物分解が困難である、もしくは微生物にとって毒性の高い有機化合物が曝気槽100および排水処理装置200にて除去されるため、排水処理システム1A全体としての清浄化処理の処理能力を高性能化させることができる。したがって、活性汚泥処理装置300の大型化防止やランニングコストが増大防止が可能であり、高効率、かつ安定的に排水を処理することが可能な排水処理システムとすることができる。
【0037】
また、上述の如くの排水処理システム1Aとすることにより、排水処理装置200から排出される一次処理水を活性汚泥処理装置300において連続的に処理することが可能になるため、システムを停止させることなく連続的に排水の清浄化を行なうことが可能になる。したがって、活性汚泥処理装置300の前処理装置としてカートリッジ式の吸着材を備えた交換式排水処理装置を使用した場合に比べ、カートリッジ式の吸着材の新品への交換作業や取り外しての再生処理作業が不要となり、その労力やランニングコストの増大が生じないことになる。
【0038】
また、上述の如くの排水処理システム1Aとすることにより、排水処理装置200の第1処理槽210および第2処理槽220において吸着処理および脱着処理が交互に連続的に繰り返されることになる。このように吸着処理および脱着処理が交互に連続的に繰り返されるように構成することにより、低コストで安定的に高い能力で排水に含まれる有機化合物を除去することができる。したがって、上記構成を採用することにより、高効率、かつ安定的に排水を清浄化処理できる排水処理システムとすることができる。なお、特に上述の如くの排水処理装置200とすることにより、微生物の繁殖が抑制でき、そのため藻の発生等を防止することも可能になる。
【0039】
さらに、本実施の形態の如くの排水処理システム1Aは、活性汚泥処理装置のみを具備する既存の排水処理システムに対して、曝気槽100、排水処理装置200等を増設するのみで容易に実現できるものであるため、既存の設備の有効活用が可能で経済性にも優れたものとなる。
【0040】
また、上述の本実施の形態における排水処理システム1Aにおいては、第1処理槽210および第2処理槽220が吸着槽および脱着槽に交互に入れ替わる構成の排水処理装置200を採用した場合を例示して説明を行なったが、これとは異なる構成の排水処理装置を採用してもよい。以下に、その例を図2および図3を参照して説明する。
【0041】
図2および図3は、本実施の形態における排水処理システムにおいて利用可能な他の排水処理装置の例を示す模式図である。なお、これら図2および図3においては、排水処理装置に具備される吸着材および当該吸着材近傍に配置される構成要素のみを図示し、その他の構成要素の図示は省略している。
【0042】
図2は、円柱状の外形を有する吸着材250を利用した場合を示している。図2に示すように、円柱状の外形を有する吸着材250を利用する場合には、軸方向に流体が流動可能となるように構成された吸着材250の軸中心に回転軸261を設け、この回転軸261をアクチュエータ等によって回転駆動する。そして、吸着材250の軸方向の両端面に近接して図2においては示さない配管ラインL2、L5、L6、L7(図1参照)を接続し、吸着材250の一部を吸着処理を行なうための部分(図2において符号251で示す部分)として利用し、吸着材250の他の一部を脱着処理を行なうための部分(図2において符号252で示す部分)として利用する。すなわち、吸着材250の符号251で示す部分には、軸方向の一方から一次処理水が導入され、軸方向の他方から二次処理水が導出されることになり、吸着材250の符号252で示す部分には、軸方向の一方から加熱ガスが導入され、軸方向の他方から脱着ガスが導出されることになる。
【0043】
ここで、図2に示す排水処理装置においては、吸着材250が回転軸261を回転中心として図中矢印A方向に所定の速度で回転する。これにより、吸着材250の吸着処理が完了した部分は脱着処理を行なうゾーンへと移動するとともに、吸着材250の脱着処理が完了した部分は吸着処理を行なうゾーンへと移動することになる。したがって、当該排水処理装置においては、同時に吸着処理と脱着処理とが行なわれることになり、連続的に清浄化処理を行なうことが可能となる。
【0044】
また、図3は、円筒状の外形を有する吸着材270を利用した場合を示している。図3に示すように、円筒状の外形を有する吸着材270を利用する場合には、径方向に流体が流動可能となるように、たとえば金属製の枠体285によって囲われた単位吸着ユニット275を周方向に複数並べて円筒状とし、これを図示しないアクチュエータ等によって軸中心に回転駆動する。そして、吸着材270に近接して図3においては示さない配管ラインL2、L5、L6、L7(図1参照)を接続し、吸着材270の単位吸着ユニットの一部を吸着処理を行なうための部分(図3において符号271で示す部分)として利用し、単位吸着ユニットの他の一部を脱着処理を行なうための部分(図3において符号272で示す部分)として利用する。すなわち、吸着材270の符号271で示す単位吸着ユニットには、径方向外側から一次処理水が導入され、径方向内側に向けて二次処理水が導出されて軸方向の一方に向けて排出されることになり、吸着材270の符号272で示す単位吸着ユニットには、導入管281を介して径方向内側から加熱ガスが導入され、径方向外側に向けて脱着ガスが導出されて導出管282を介して排出されることになる。
【0045】
ここで、図3に示す排水処理装置においては、吸着材270が軸中心に図中矢印A方向に所定の速度で段階的に回転する。これにより、吸着材270の吸着処理が完了した単位吸着ユニットは脱着処理を行なうゾーンへと移動するとともに、吸着材270の脱着処理が完了した単位吸着ユニットは吸着処理を行なうゾーンへと移動することになる。したがって、当該排水処理装置においては、同時に吸着処理と脱着処理とが行なわれることになり、連続的に清浄化処理を行なうことが可能となる。
【0046】
なお、図2および図3に示す如くの形状の吸着材250、270を利用する場合には、当該吸着材250、270を、粒状物を充填したものや繊維状物を充填したもので構成することとしてもよいが、ハニカム状の構造を有するもので構成するとなおよい。これは、吸着材250、270をハニカム状の構造を有するもので構成することにより、圧力損失を極めて低く抑えることが可能となって処理能力が増大するとともに、ゴミ等の固形物による目詰まりの発生も比較的低く抑えることができるためである。
【0047】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における排水処理システムの構成を示す模式図である。なお、図4においては、上述の本発明の実施の形態1における排水処理システム1Aと同様の部分の図示は省略している。以下においては、この図4を参照して本実施の形態における排水処理システム1Bの構成について説明する。
【0048】
図4に示すように、本実施の形態における排水処理システム1Bは、上述した本発明の実施の形態1における排水処理システム1Aと、排水処理装置200の構成において相違している。本実施の形態における排水処理システム1Bにおいては、排水処理装置200に加熱ガスを導入するための配管ラインL6に、排水処理装置100にガスを導入するための配管ラインL17が接続されており、これら配管ラインL6、L17の排水処理装置200に対する接続/非接続状態を切り替えるためのバルブV209、V210が、配管ラインL6、L17にそれぞれ設けられている。また、本実施の形態における排水処理システム1Bにおいては、排水処理装置200から脱着ガスを排出するための配管ラインL7に、排水処理装置200から除去排水を排出するための配管ラインL18が接続されており、これら配管ラインL7、L18の排水処理装置200に対する接続/非接続状態を切り替えるためのバルブV211、V212が、配管ラインL7、L18にそれぞれ設けられている。なお、配管ラインL18の他端は、排水処理装置200に一次処理水を導入するための配管ラインL2に接続されている。
【0049】
本実施の形態における排水処理システム1Bの排水処理装置200においては、吸着処理と脱着処理との間に脱水処理(パージ処理)が実施される。具体的には、上述の本発明の実施の形態1における排水処理システム1Aの場合と同様に、排水処理装置200においては、バルブV201〜208の開閉が操作されることによって第1処理槽210と第2処理槽220とが交互に吸着槽および脱着槽に切り替わるが、脱着槽に切り替わった際には、まず当該脱着槽と配管ラインL17および配管ラインL18とが接続され、配管ラインL17を介して脱着槽にガスが導入されて吸着材に吹き付けられることによって吸着材の表面に付着した余剰の排水を吹き飛ばす脱水処理が行なわれ、吹き飛ばされた除去排水は、配管ラインL18および配管ラインL2を経由して排水処理装置200へと再度供給される。そして、当該脱水処理を所定時間行なった後に脱着槽と配管ラインL17および配管ラインL18の接続が解除され、配管ラインL6および配管ラインL7が脱着槽に接続されて脱着処理が行なわれる。なお、脱水処理の際に脱着槽に導入されるガスとしては、高温でより低湿なガスが利用されることが好ましく、たとえば所定の温度に昇温された乾燥空気を利用することが好適である。
【0050】
以上において説明した本実施の形態における排水処理システム1Bの如くの構成を採用することにより、上述した本発明の実施の形態1における排水処理システム1Aの如くの構成を採用した場合に得られる効果に加え、吸着材211、221からの有機化合物の脱着効率が大幅に増加するため、より高効率、かつ安定的に排水を清浄化処理できる排水処理システムとできる効果が得られる。なお、上述した本実施の形態においては、排水処理装置200から排出される除去排水が当該排水処理装置200に再度供給されるように構成した場合を例示して説明を行なったが、当該除去排水は、交換式の吸着素子を備えた排水処理装置等を別途用いて清浄化処理されるように構成してもよい。
【0051】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における排水処理システムの構成を示す模式図である。なお、図5においては、上述の本発明の実施の形態1における排水処理システム1Aおよび実施の形態2における排水処理システム1Bと同様の部分の図示は省略している。以下においては、この図5を参照して本実施の形態における排水処理システム1Cの構成について説明する。
【0052】
図5に示すように、本実施の形態における排水処理システム1Cは、上述した本発明の実施の形態1における排水処理システム1Aおよび実施の形態2における排水処理システム1B、燃焼装置400の構成において相違している。本実施の形態における排水処理システム1Cにおいては、燃焼装置400に熱交換411がさらに1個接続されており、燃焼装置400において熱交換器410から排出された分解ガスとガスを熱交換することで、排水処理装置200の脱着工程に必要な加熱ガスを予熱するためのものである。配管ラインL19は、ガスを熱交換器411に供給するための配管ラインであり、配管ラインL6は、熱交換器411で予熱された加熱ガスを排水処理装置200に導入するための配管ラインとなる。また、配管ラインL19、L11は、熱交換器410から排出される分解ガスを熱交換器411を経由させて外部に排出するための配管ラインである。
【0053】
本実施の形態における排水処理システム1Cの燃焼装置400においては、熱交換器411において、排水処理装置200の加熱ガスの予熱を燃焼装置400から排出される分解ガスを用いて実施される。
【0054】
以上において説明した本実施の形態における排水処理システム1Cの如くの構成を採用することにより、上述した本発明の実施の形態1における排水処理システム1Aおよび排水処理システム1Bの如くの構成を採用した場合に得られる効果に加え、排水処理装置200に必要な加熱ガスの昇温に必要な熱量が削減できるため、より省エネルギーに排水を清浄化処理できる排水処理システムとできる効果が得られる。なお、上述した本実施の形態においては、必要に応じ、蒸気ヒーターや電熱ヒーターなどの加熱手段を排水処理装置200に追加してもよい。
【0055】
以上において説明した本発明の実施の形態1から3における排水処理システム1A,1B,1Cの特徴的な構成は、相互に組み合わせることが可能である。たとえば、図2および図3に示した如くの構成の吸着材250、270を含む排水処理装置を本発明の実施の形態2および3における排水処理システム1Bおよび1Cの排水処理装置200に適用してもよい。なお、その場合には、吸着素子250、270の脱着処理を行なうためのゾーンに脱水処理を行なうためのゾーンが設けられ、当該脱水処理を行なうためのゾーンに位置する部分の吸着素子250、270に近接して上述した配管ラインL17、L18が接続され、吸着処理と脱着処理の間に脱水処理が行なわれるように排水処理装置200が構成されることになる。
【0056】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1から3においては、排水処理システムに具備される活性汚泥処理装置として、連続的に処理が行なわれる連続式活性汚泥処理装置を例示して説明を行なったが、回分式に処理が行なわれる回分式活性汚泥処理装置を利用することも当然に可能である。また、上述した本発明の実施の形態1から3においては、排水処理システムに具備される活性汚泥処理装置として、沈殿槽を用いて固液分離を行なうものを例示して説明を行なったが、この他にも曝気槽に設けた膜にて膜分離を行なうものなど種々の構成のものを利用できる。このように、本発明が適用可能な排水処理システムに具備される活性汚泥処理装置としては、どのような形式のものであってもよい。
【0057】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1から3においては、ポンプやファン等の流体搬送手段やストレージタンク等の流体貯留手段などの構成要素を特に示すことなく説明を行なったが、これら構成要素は必要に応じて適宜の位置に配置すればよい。
【0058】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【実施例】
【0059】
以下、実施の形態3の実施例によりさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、評価は下記の方法によりおこなった。
(BET比表面積)
BET比表面積は、液体窒素の沸点(−195.8℃)雰囲気下、相対圧力0.0〜0.15の範囲で上昇させたときの試料への窒素吸着量を数点測定し、BETプロットにより試料単位質量あたりの表面積(m/g)を求めた。
(細孔容積)
細孔容積は、相対圧0.95における窒素ガスの気体吸着法により測定した。
(平均細孔径)
平均細孔径は、以下の式で求めた。
dp=40000Vp/S(ただし、dp:平均細孔径(Å))
Vp:細孔容積(cc/g)
S:BET比表面積(m/g)
(有機化合物除去効果)
主に1,4−ジオキサン1000mg/L、アセトアルデヒド14000mg/L、エチレングリコール16000mg/Lを含む排水を原水とした。また、排水量は2.1m/hrとし、原水中の有機化合物量は1,4−ジオキサン2.1kg/hr、アセトアルデヒド29.4kg/hr、エチレングリコール33.6kg/hrとなる。温度50℃の水を導入し、排水処理装置、活性汚泥処理装置、燃焼装置の入口および出口の水およびガス中の1,4−ジオキサン、エチレングリコール、アセトアルデヒド濃度を測定し、有機化合物量を算出して除去効果を確認した。
(有機化合物濃度評価)
入口・出口の水およびガス中の濃度は、ガスクロマトグラフ法により分析し測定した。
【0060】
[実施例1]
有効曝気容量4.2mの曝気槽100に曝気温度60℃、曝気強度2.5min−1、風量11Nm/min、滞留時間2hrの条件で処理水量2.1m/hrの1,4−ジオキサン1000mg/L(2.1kg/hr)、アセトアルデヒド14000mg/L(29.4kg/hr)、エチレングリコール16000mg/L(33.6kg/hr)を含む原水を導入し、一次処理水を得た。その際の一次処理水中の有機化合物量は、1,4−ジオキサン1.1kg/hr以下、アセトアルデヒド0.01kg/hr以下、エチレングリコール33.6kg/hr以下であった。また、曝気槽100から排出される曝気ガスの有機化合物濃度は、1,4−ジオキサン420ppm、アセトアルデヒド24000ppm、エチレングリコール1ppm以下であった。使用蒸気量は60kg/hr以下であった。
【0061】
次に、排水処理装置200の吸着材として平均細孔径17.1Å、BET比表面積1500m/g、全細孔容積0.47m/gの活性炭素繊維を使用した重量50kgの吸着素子を2個作成し、前述の曝気処理後の一次処理水を処理水量2.1m/hrになるように導入し、二次処理水を得た。
【0062】
次に、排水処理装置200の脱水工程時におけるガスとして空気を使用し、脱水の風量を60Nm/minとした。脱着工程における加熱ガスとして120℃の空気を使用し、脱着の風速を60Nm/minとした。吸着工程における吸着時間は60min、脱水工程における脱水時間は5min、脱着工程における脱着時間は55minとして切替サイクルとした。その際の二次処理水中の有機化合物量は1,4−ジオキサン1g/hr以下、アセトアルデヒド0.5g/hr以下、エチレングリコール32.6kg/hrであった。また、脱着ガス中の有機化合物濃度は、1,4−ジオキサン200ppm以下、アセトアルデヒド10ppm以下、エチレングリコール100ppm以下であった。
【0063】
次に、容量が3mの原水調整槽、容量が7mの希釈槽容量、容量がいずれも125mの2つの担体流動曝気槽、容量が125mの2つの活性汚泥槽および容量が25mの沈殿槽からなる活性汚泥処理装置300を用いて、排水処理装置200から排出された二次処理水を導入し、三次処理水を得た。上記の担体流動曝気槽にはポリビニルアルコール架橋ゲル担体(直径約4mm)を12.5m投入した。また、上記の三次処理水中の有機化合物濃度は高く、微生物に対して負荷が高いため、希釈槽から供給される工業用水により希釈され、担体流動曝気槽及び活性汚泥槽には21m/hrで導入した。その際の三次処理水中の有機化合物量は、1,4−ジオキサン1g/hr以下、アセトアルデヒド濃度は0.1g/hr以下、エチレングリコール濃度は0.2kg/L以下であり、良好な処理が可能であった。また、発生した余剰汚泥量は0.6t/日と少量であった。
【0064】
本実施例の水処理システムを用いて500時間実施後の処理水中の有機化合物量、ユーティリティ消費量および汚泥量を表1示す。500時間後においても、安定的に処理が可能な結果であった。曝気槽100により、アセトアルデヒド、1,4−ジオキサンを揮発除去させることで、排水処理装置200および活性汚泥処理装置300への負荷量を下げつつ、排水処理装置200により、活性汚泥処理装置300では処理困難な1,4−ジオキサンを高効率に吸着除去させ、エチレングリコールを活性汚泥処理装置300にて生物分解させることで、効率よく排水処理が可能となる。また、排水処理装置200に関しては、吸着と脱着を連続して行い処理するため、性能低下がなく安定して高い効率で処理ができる。
【0065】
次に、上記曝気槽100から排出される曝気ガスのダクトと排水処理装置200から排出される脱着ガスのダクトを接続させて、混合排ガスの濃度を測定したところ、1,4−ジオキサン300ppm、アセトアルデヒド3400ppm、エチレングリコール100ppmとなった。
【0066】
次に、燃焼装置400の触媒として白金触媒を燃焼装置400に設置して、上記曝気槽100から排出される曝気ガスと排水処理装置200から排出される脱着ガスの混合排ガスを風量71Nm/minで供給し、熱交換器及び予熱ヒーターにより300℃に昇温した後、触媒に接触させ、混合排ガス中の有機化合物を触媒にて酸化分解させ、分解ガスを得た。分解ガス中の1,4−ジオキサン、アセトアルデヒド、エチレングリコール濃度はそれぞれ1ppm以下であり、良好に処理できた。
【0067】
また、燃焼装置400の出口温度を経時的に測定したところ、出口平均温度は450℃であり、熱交換率60%で試算すると、燃焼装置400からの分解ガスとの熱交換のみで、混合排ガスを300℃まで昇温がほぼ可能であるので、予熱ヒーターに電熱ヒーターを使用した際の消費電力は0.1kWh以下にすることが可能となった。
【0068】
また、図1に示す熱交換器410から排出された熱交換後の分解ガスの温度を測定したところ、平均温度300℃であり、図1に示す熱交換器411の熱交換率50%で試算すると、熱交換のみで排水処理装置200に必要な加熱ガスの昇温が可能であるので、蒸気ヒーター使用して加熱した場合の使用蒸気量は0.1kg/hr以下にすることが可能であった。
【0069】
本実施例の水処理システムを用いて500時間実施後の処理ガス中の各有機化合濃度、ユーティリティ消費量および汚泥量を表1示す。500時間後においても、安定的にかつ少ないユーティリティ消費量で処理が可能な結果となった。上記排水処理装置200から排出された脱着ガスに加え、上記曝気槽100から排出される低風量で有機化合物濃度の高く、かつ濃度変動の小さい曝気ガスを混合させて処理を行っているため、安定した燃焼熱量が生成され、熱回収による消費エネルギーの削減が可能である。
【0070】
[比較例1]
容量が9mの原水調整槽、容量が21mの希釈槽容量、容量がいずれも300mの2つの担体流動曝気槽、容量が300mの2つの活性汚泥槽および容量が75mの沈殿槽からなる活性汚泥処理装置300を用いて、実施例1に用いた原水を導入し、処理水を得た。上記の担体流動曝気槽にはポリビニルアルコール架橋ゲル担体(直径約4mm)を30m投入した。また、原水の有機化合物濃度は高く、微生物に対して負荷が高いため、希釈槽から供給される工業用水により希釈され、担体流動曝気槽及び活性汚泥槽には55m/hrで導入した。その際の処理水中の有機化合物量は、表1に示す通り、1,4−ジオキサン2.1kg/hr以下、アセトアルデヒド濃度は0.5kg/hr以下、エチレングリコール濃度は0.2kg/hr以下であり、アセトアルデヒド、エチレングリコールに対しては良好な処理が可能であったが、1,4−ジオキサンに対しては全く処理ができなかった。また、発生した余剰汚泥量は、表1に示す通り、2t/日であり、実施例1の約4倍の汚泥量であった。
【0071】
[比較例2]
排水処理装置200の吸着材として平均細孔径17.1Å、BET比表面積1500m/g、全細孔容積0.47m/gの活性炭素繊維を使用した重量100kgの吸着素子を2個作成し、実施例1で使用した原水を処理水量2.1m/hrになるように導入し、一次処理水を得た。
【0072】
次に、排水処理装置200の脱水工程時におけるガスとして空気を使用し、脱水の風量を120Nm/minとした。脱着工程における加熱ガスとして120℃の空気を使用し、脱着の風速を120Nm/minとした。吸着工程における吸着時間は60min、脱水工程における脱水時間は5min、脱着工程における脱着時間は55minとして切替サイクルとした。その際の一次処理水中の有機化合物量は1,4−ジオキサン1g/hr、アセトアルデヒド28.4kg/hr以下、エチレングリコール31.6kg/L以下であった。また、脱着ガス中の有機化合物濃度は、1,4−ジオキサン120ppm、アセトアルデヒド280ppm、エチレングリコール20ppmであった。
【0073】
次に、容量が9mの原水調整槽、容量が21mの希釈槽容量、容量がいずれも300mの2つの担体流動曝気槽、容量が300mの2つの活性汚泥槽および容量が75mの沈殿槽からなる活性汚泥処理装置300を用いて、排水処理装置200から排出された一次処理水を導入し、二次処理水を得た。上記の担体流動曝気槽にはポリビニルアルコール架橋ゲル担体(直径約4mm)を30m投入した。また、上記の一次処理水中の有機化合物濃度は高く、微生物に対して負荷が高いため、希釈槽から供給される工業用水により希釈され、担体流動曝気槽及び活性汚泥槽には55m/hrで導入した。その際の二次処理水中の有機化合物量は、表1に示す通り、1,4−ジオキサン1g/hr以下、アセトアルデヒド濃度は0.5kg/hr以下、エチレングリコール濃度は0.2kg/hr以下であり、良好な処理が可能であった。ただし、発生した余剰汚泥量は2t/日であり、実施例1の約4倍の汚泥量であった。
【0074】
次に、燃焼装置400の触媒として白金触媒を燃焼装置400に設置して、上記排水処理装置200から排出される脱着ガスを風量120Nm/minで供給し、熱交換器及び予熱ヒーターにより300℃に昇温した後、触媒に接触させ、脱着ガス中の有機化合物を触媒にて酸化分解させ、分解ガスを得た。分解ガス中の有機化合物濃度は、表1に示す通り、1,4−ジオキサン、アセトアルデヒド、エチレングリコールそれぞれ1ppm以下であり、良好に処理できた。
【0075】
燃焼装置400の出口温度を経時的に測定したところ、出口平均温度は330℃であり、熱交換率60%で試算すると、燃焼装置400からの分解ガスとの熱交換のみでは脱着ガスを220℃までしか昇温することができないため、300℃までの予熱のために電熱ヒーターを使用した際の消費電力は、表1に示す通り、200kWhであった。
【0076】
熱交換器410から排出された熱交換後の分解ガスの温度を測定したところ、平均温度300℃であり、熱交換器411の熱交換率50%で試算すると、熱交換のみで排水処理装置200に必要な加熱ガスの昇温が可能であるので、加熱に蒸気ヒーターを使用した場合の使用蒸気量は、表1に示す通り、0.1kg/hr以下にすることが可能であった。
【0077】
[比較例3]
有効曝気容量21mの曝気槽100に曝気温度80℃、曝気強度2.5min−1、風量55Nm/min、滞留時間10hrの条件で、実施例1で使用した原水を導入し、一次処理水を得た。その際の一次処理水中の有機化合物量は、1,4−ジオキサン1g/hr以下、アセトアルデヒド0.01kg/hr以下、エチレングリコール33.6kg/hr以下であった。また、曝気槽100から排出される曝気ガスの有機化合物濃度は、1,4−ジオキサン120ppm、アセトアルデヒド4500ppm、エチレングリコール1ppm以下となった。ただし、加温のために必要な投入蒸気量は、表1に示す通り、1000kg/hr以上となり、非常に蒸気量を使用することとなった。
【0078】
次に、実施例1と同様の活性汚泥処理装置300を使用して、上記曝気槽100から排出された一次処理水を導入して、二次処理水を得た。また、上記の一次処理水中の有機化合物濃度は高く、微生物に対して負荷が高いため、希釈槽から供給される工業用水により希釈され、担体流動曝気槽及び活性汚泥槽には21m/hrで導入した。その際の二次処理水中の有機化合物量は、表1に示す通り、1,4−ジオキサン1g/hr以下、アセトアルデヒド濃度は0.5g/hr以下、エチレングリコール濃度は0.2kg/hr以下であり、良好な処理が可能であった。また、発生した余剰汚泥量は、表1に示す通り、0.6t/日と少量であった。
【0079】
次に、燃焼装置の触媒として白金触媒を燃焼装置400に設置して、上記曝気槽100から排出される曝気ガスを風量55Nm/minで供給し、熱交換器及び予熱ヒーターにより300℃に昇温した後、触媒に接触させ、脱着ガス中の有機化合物が触媒にて酸化分解させ、分解ガスを得た。その際の分解ガス中の有機化合物濃度は、表1に示す通り、1,4−ジオキサン、アセトアルデヒド、エチレングリコールそれぞれ1ppm以下であり、良好に処理できた。
【0080】
燃焼装置400の出口温度を経時的に測定したところ、出口平均温度は450℃であり、熱交換率60%で試算すると、燃焼装置400からの分解ガスとの熱交換のみで、曝気ガスを300℃まで昇温がほぼ可能であるので、電熱ヒーターを使用した際の消費電力は、表1に示す通り、0.1kWh以下にすることが可能となった。
【0081】
【表1】

【符号の説明】
【0082】
1A,1B,1C 排水処理システム、100 曝気槽、111 曝気装置、112 加温装置、200 排水処理装置、210 第1処理槽、211 吸着材、220 第2処理槽、221 吸着材、250 吸着材、261 回転軸、270 吸着材、275 単位吸着ユニット、281 導入管、282 導出管、285 枠体、300 活性汚泥処理装置、310 曝気槽、311 曝気装置、320 沈殿槽、400 燃焼装置、410 熱交換器、411 熱交換器、420 燃焼炉、L1〜L19 配管ライン、V201〜V212 バルブ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物を含有する排水から有機化合物を除去することで当該排水を清浄化する排水処理システムであって、
有機化合物を含有する排水を曝気処理することで、排水中から有機化合物を揮発除去させた一次処理水として排出させ、有機化合物を含有する曝気ガスを排出させる曝気槽と、
有機化合物を含有する前記一次処理水を接触させることで有機化合物を吸着し、加熱ガスを接触させることで吸着した有機化合物を脱着する吸着素子を含み、前記吸着素子に前記一次処理水を供給することで有機化合物を前記吸着素子に吸着させて二次処理水として排出し、前記吸着素子に加熱ガスを供給することで有機化合物を前記吸着素子から脱着させて有機化合物を含有する脱着ガスとして排出し、前記吸着素子の脱着処理が完了した部分を吸着処理を行なう部分に移行させるとともに前記吸着素子の吸着処理が完了した部分を脱着処理を行なう部分に移行させることで連続的に二次処理水を処理可能なものである排水処理装置と、
有機化合物を分解する微生物が含まれた活性汚泥を有し、前記二次処理水を当該活性汚泥に接触させることで微生物によって有機化合物を分解させて除去して三次処理水として排出する活性汚泥処理装置と、
前記曝気槽および前記排水処理装置に接続され、前記曝気槽および排水処理装置から排出された有機化合物を含有する曝気ガスと脱着ガスの混合排ガスを燃焼させて酸化分解して分解ガスを排出する燃焼装置とを備えた排水処理システム。
【請求項2】
前記排水処理装置は、前記吸着素子にガスを吹き付けることで前記吸着素子に付着した余剰の排水を吹き飛ばしてこれを除去排水として排出する、請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記排水処理装置から排出された除去排水が、排水として前記排水処理装置に再度供給されるように構成された、請求項2に記載の排水処理システム。
【請求項4】
前記吸着素子が、活性炭、活性炭素繊維およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1の部材を含んでいる、請求項1から3のいずれかに記載の排水処理システム。
【請求項5】
前記燃焼装置から排出される分解ガスを熱交換し、前記排水処理装置の加熱ガスを予熱するように構成された請求項1から4いずれかに記載の排水処理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40534(P2012−40534A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186083(P2010−186083)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】