説明

排水用ドレインの保持装置

【課題】コンクリートの床を形成するための型枠のうち床型枠に仮固定した排水用ドレインがコンクリートを打設するときにスペーサを中心に回転して所定の向きに埋設されないことのないようにする。
【解決手段】建築物の屋上やバルコニー等の床をコンクリートにより形成するための型枠のうち床型枠Fに仮固定された排水用ドレイン10を所定位置に保持する保持装置30は、排水用ドレイン10の受皿部11の下面に床型枠Fに向けて取り付けられたねじ部材31と、このねじ部材31の下端と螺合して取り付けられて床型枠Fと当接する保持部材32とを備え、この保持部材32の下端面には床型枠Fに設けられた貫通穴Faと係合可能な棒状突起部33を設けるとともに、保持部材32はコンクリートが固化したときに剥離可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水用ドレインをコンクリートを形成するための型枠に仮固定した所定位置から移動しないように保持する排水用ドレインの保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水用ドレインは、建築物の屋上やバルコニー等のコンクリートよりなる床に埋設され、同床に降った雨水等を排水するものである。排水用ドレインの一例として、床に降った雨水を受皿部により受けて、受皿部の下方に連成した排水管部により下方に排水する縦引き排水用ドレインがある。このような縦引き排水用ドレインをコンクリートに埋設して固定するときには、コンクリートが固化するまでコンクリートを打設するために設置された型枠のうち底部に配置した床型枠に一時的に固定している。縦引き排水用ドレインを床型枠に一時的に固定するときには、床型枠上の所定位置に筒状のスペーサとともに排水用ドレインを載置し、ボルトとナット等の締結具により床型枠に締結して排水用ドレインを床型枠上に押さえつけて仮固定している。
【0003】
このように仮固定した縦引き排水用ドレインでは、仮固定した縦引き排水用ドレインの受皿部の端部を作業員が踏み付ける等して、縦引き排水用ドレインが傾くことのないようにする排水用ドレインの保持装置が特許文献1に開示されている。この排水用ドレインの保持装置は、受皿部の下面に取り付けたねじ部材の下端部に上下方向に進退可能なねじ筒を螺合させ、ねじ筒の下端に取り付けたフランジを床型枠に当接させることで縦引き排水用ドレインの受皿部を支持して作業員が受皿部の端部を踏み付けても縦引き排水用ドレインが上下方向に傾くことのないようにしている。
【0004】
また、排水用ドレインには、コンクリートよりなる床とそれから上方に延びる側壁との間の角部に埋設され、床に埋設される水平部とこの水平部の後端から略垂直に立設して側壁に埋設される垂直部とからなる受皿部に雨水を流入させて垂直部に設けた排水口から後方に排水する横引き排水用ドレインがある。このような横引き排水用ドレインをコンクリートに埋設して固定するときには、コンクリートが固化するまでコンクリートを打設するために設置された型枠のうち略垂直に立設する側壁型枠に一時的に固定している。横引き排水用ドレインを側壁型枠に一時的に固定するときには、側壁型枠の側面の所定位置に筒状のスペーサとともに横引き排水用ドレインを押しつけ、これをボルトとナット等の締結具により側壁型枠に締結して横引き排水用ドレインを側壁型枠に押さえつけて仮固定している。
【0005】
このように仮固定した横引き排水用ドレインでは、作業員が仮固定した横引き排水用ドレインの受皿部の水平部の前端部または側端部を踏み付ける等して、横引き排水用ドレインの受皿部の水平部が前後方向及び横方向に傾くことのないようにする排水用ドレインの保持装置が特許文献2に開示されている。この排水用ドレインの保持装置は、受皿部の水平部の下面に取り付けたねじ部材の下端部に上下方向に進退可能なねじ筒を螺合させ、ねじ筒の下端に取り付けたフランジを床型枠に当接させることで横引き排水用ドレインの受皿部を支持して作業員が受皿部の水平部の端部を踏み付けても横引き排水用ドレインの受皿部の水平部が前後方向及び横方向に傾くことのないようにしている。
【特許文献1】特許第3920617号公報
【特許文献2】特許第3762238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1の排水用ドレンの保持装置は、縦引き排水用ドレインが上下方向に傾くことがないが、コンクリートを打設するときにコンクリート内の気泡を抜くためのバイブレータによる振動で、排水用ドレインがスペーサを中心に回転することがあった。排水用ドレインの受皿部が矩形状をしてその長手方向を床に形成された長い排水溝に平行に埋設させるときには、排水用ドレインが回転して平行に埋設できない問題があった。
【0007】
また、コンクリートの表面に仕上げ材を付さない打ちっぱなしとするときに上記の排水用ドレインの保持装置を用いたときには、型枠を取り外したときにコンクリートの表面にフランジ部が露出して見栄えが悪くなることがあった。さらに、フランジ部に鉄製のものを用いたときには、雨水等によりフランジ部とともにねじ筒及びねじ部材が錆びてコンクリートにクラックが発生することがあった。
【0008】
また、上記の特許文献2の排水用ドレインの保持装置でも、上述したのと同様にコンクリートの表面に仕上げ材を付さない打ちっぱなしとするときには、上述したのと同様に、型枠を取り外したときにコンクリートの表面にフランジ部が露出して見栄えが悪くなるとともに、フランジ部に鉄製のものを用いたときには、雨水等によりフランジ部とともにねじ筒及びねじ部材が錆びてコンクリートにクラックが発生することがあった、本発明は、これらの各問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するため、建築物の屋上やバルコニー等のコンクリートよりなる床に埋設されて床に降った雨水等を受皿部に流入させる排水用ドレインを同コンクリートを形成するための型枠のうち底部に配置された床型枠に締結具により仮固定した所定位置から移動しないように保持する保持装置であって、この保持装置は、排水用ドレインの受皿部の下面に床型枠に向けて取り付けられたねじ部材と、このねじ部材の下端と螺合して取り付けられて床型枠と当接する保持部材とを備え、この保持部材の下端面には床型枠に設けられた穴部と係合可能な突起部を設けるとともに、保持部材はコンクリートが固化したときに剥離可能であることを特徴とする排水用ドレインの保持装置を提供するものである。
【0010】
上記のように構成した排水用ドレインの保持装置によれば、排水用ドレインが床型枠に仮固定されているときに、保持部材が床型枠に当接することで排水用ドレインの受皿部が所定の高さ位置に保持されるばかりでなく、突起部が床型枠に設けた穴部に係合することで排水用ドレインが水平方向に回転移動しないよう所定の位置に保持されるので、排水用ドレインを床型枠上で上下方向のみでなく水平方向の回転方向にも正確に保持した上でコンクリートに埋設固定することができる。また、保持部材はコンクリートが固化したときに剥離可能であるので、コンクリートが固化して型枠を取り外した後には、保持部材をねじ部材から取り外しながらコンクリート内から取り出すことができてコンクリートの表面に保持部材及び突起部が露出することがない。なお、保持部材を取り出した後にできるコンクリートの表面の凹部にはモルタル等により容易に穴埋めすることにより見栄えが悪くなることがない。
【0011】
また、本発明は上記課題を解決するために、建築物の屋上やバルコニー等のコンクリートよりなる床とそれから上方に延びる側壁との間の角部に埋設されて床に埋設される水平部とこの水平部の後端から略垂直に立設して側壁に埋設される垂直部とからなる受皿部に床に降った雨水等を流入させ垂直部に設けた排水口から後方に排水する排水用ドレインを同コンクリートを形成するための型枠のうち略垂直に立設する側壁型枠に締結具により仮固定した所定位置から移動しないように保持する保持装置であって、この保持装置は、排水用ドレインの受皿部の水平部の下面に型枠のうち底部に設置した床型枠に向けて取り付けられたねじ部材と、このねじ部材の下端と螺合して取り付けられて床型枠と当接する保持部材とを備え、この保持部材の下端面には床型枠に設けられた穴部と係合可能な突起部を設けるとともに、保持部材はコンクリートが固化したときに剥離可能であることを特徴とする排水用ドレインの保持装置を提供するものである。
【0012】
上記のように構成した排水用ドレインの保持装置によれば、排水用ドレインが側壁型枠に仮固定されているときには、保持部材が床型枠に当接することで排水用ドレインの受皿部の水平部が所定の高さ位置に保持されて前後方向または横方向に傾くことがなく保持されるので、排水用ドレインを側壁型枠に対して正確に保持したうえでコンクリートに埋設固定することができる。また、保持部材はコンクリートが固化したときに剥離可能であるので、コンクリートが固化して型枠を取り外した後には、保持部材をねじ部材から取り外しながらコンクリート内から取り出すことができてコンクリートの表面に保持部材及び突起部が露出することがない。なお、保持部材を取り出した後にできるコンクリートの表面の凹部にはモルタル等により容易に穴埋めすることにより見栄えが悪くなることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図1〜図8により、本発明による排水用ドレインの保持装置についての最良の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1〜図4は、本発明による排水用ドレインの保持装置の第1実施形態を示しており、この保持装置により所定位置に保持される排水用ドレイン10は、建築物の屋上やバルコニー等でコンクリートよりなる床に埋設固定されるものであり、床に降った雨水等を受皿部11にて受けて下方に排水する縦引き排水用ドレインである。以下の説明では、排水用ドレイン10をコンクリートを形成するための型枠のうち底部で略水平に設置した床型枠Fに仮固定装置20により仮固定し、仮固定した排水用ドレイン10が所定位置から動かないように保持装置30により保持した状態により説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、排水用ドレイン10は、コンクリートよりなる床から雨水等の水が流入する略矩形状の受皿部11と、この受皿部11から下側に連成する筒部12とを備えている。受皿部11には、長手方向の一方側に偏った位置に雨水等を排水する排水口11aが設けられている。筒部12は、排水口11aが設けられた位置の受皿部11の下側に連成しており、受皿部11に流入した雨水等は、排水口11aから筒部12を通って排出されるものである。
【0015】
図1に示すように、仮固定装置20は、排水用ドレイン10を所定の位置でコンクリートに埋設するときに同コンクリートが固化するまで排水用ドレイン10を床型枠Fに一時的に固定(仮固定)するものである。図1に示すように、仮固定装置20は、排水用ドレイン10を床型枠Fの略水平方向の所定位置に位置決めするための円形の位置決め座板21と、コンクリートを打設後に排水用ドレイン10の下方に貫通穴を形成するとともに排水用ドレイン10を所定の高さ位置に位置決めする筒状のスペーサ22とを備えている。図1に示すように、位置決め座板21は、床型枠Fの水平方向の所定位置に釘により固定されている。スペーサ22の下端は、位置決め座板21の外周に嵌合されており、スペーサ22の上端は、排水用ドレイン10の受皿部11の下面で筒部12の外側に設けられた環状突部11bの内周面に嵌合している。スペーサ22内には、排水用ドレイン10の筒部12が挿入されている。図1に示すように、位置決め座板21の中心部には、スペーサ22内及び筒部12内を通って垂直に延びる長いボルト23が取り付けられており、このボルト23の先端には、排水用ドレイン10の受皿部11の上縁部近傍と当接する抑え板24が設けられている。この抑え板24は、ボルト23の先端のナット25を締め付けることにより排水用ドレイン10をスペーサ22に押圧して床型枠Fに仮固定する。なお、この仮固定をするときには、略矩形の排水用ドレイン10の長手方向を床に形成された排水溝(図示しない)と平行となるように、排水用ドレイン10を所定の向きにして仮固定する。なお、本実施形態では、排水用ドレイン10の上側は、コンクリート打設時に汚れないようにするための保護カバー13に覆われている。
【0016】
保持装置30は、コンクリートを打設をするときに仮固定装置20により仮固定された排水用ドレイン10を所定位置に保持するためのものである。なお、本発明による排水用ドレイン10を所定位置に保持するとは、排水用ドレイン10の高さが一端側から他端側に傾いたり、排水用ドレイン10がスペーサ22を中心に回転することのないように所定位置に保持することである。図1及び図3に示すように、保持装置30は、排水用ドレイン10の受皿部11の下面に設けられた雌ねじに螺着されるねじ部材31と、このねじ部材31の下端と螺合することで高さ調整可能に取り付けられて床型枠Fと当接する保持部材32とを備えている。図1及び図3に示すように、ねじ部材31は、保持部材32と螺合したときに保持部材32の下端が床型枠Fに当接する長さとなっている。図1及び図3に示すように、保持部材32は、略円錐台形状をしており、コンクリートが固化したときに剥離可能な樹脂部材よりなる。保持部材32の上端には、ねじ部材31の下端が螺合する雌ねじ32aが形成されている。保持部材32の下端面には、床型枠Fの所定位置に設けられた貫通穴(穴部)Faと係合可能な棒状突起部(突起部)33が設けられている。なお、この棒状突起部33は、長手方向の一部に同長手方向と直交する断面形状を正六角形となるように形成されており、この部分をレンチ等の工具により回転させることが可能となっている。この保持部材32は、コンクリートを打設するときに型枠とセパレータとの間に取り付けられるPコンや木コンを用いることで容易に入手することができる。本実施形態においては、保持装置30は、排水用ドレイン10の受皿部11の長手方向で筒部12のある側と反対側の端部で、長手方向と直交する方向の両端の2箇所に取り付けられているが、本発明はこれに限られるものでなく、受皿部11の長手方向で筒部12のある側の反対側の端部の適宜な部位に1箇所以上取り付けたものでよい。
【0017】
このように仮固定装置20により床型枠Fに仮固定した排水用ドレイン10を保持装置30により所定位置から動かないように保持した状態で型枠内にコンクリートを打設したときには、保持部材32が床型枠Fに当接することで、排水用ドレイン10は所定の高さ位置に保持されるばかりでなく、棒状突起部33が床型枠Fに設けた貫通穴Faに係合することで水平方向に回転移動しないよう所定の位置に保持されるので、排水用ドレイン10を床型枠F上で上下方向のみでなく水平方向の回転方向にも正確に保持された上でコンクリートに埋設固定することができる。これにより、排水用ドレイン10の長手方向を床に形成された排水溝(図示しない)と平行となるよう埋設するときには、排水用ドレイン10は排水溝と平行となる向きに正確に保持されて埋設されるようになる。特に、コンクリートを打設するときに気泡を抜くためのバイブレータにより振動を付与するときには、排水用ドレイン10が振動でスペーサ22上を水平方向に回転することを防止することができる。
【0018】
排水用ドレイン10をコンクリートに埋設固定した後で、床型枠Fを含む型枠を解枠するときには、ボルト23からナット25及び抑え板24を取り外した状態にして型枠を取り外す。型枠を取り外した後のコンクリートの表面には、保持装置30の保持部材32の下端が露出するが、保持部材32はコンクリートが固化したときに剥離可能であるので、棒状突起部33をレンチ等の工具により回転させることでねじ部材31に螺合している保持部材32をコンクリート内から取り出すことができる。このとき、保持部材32はコンクリートが固化したときに剥離可能な樹脂部材であるので、保持部材32を容易に取り外すことができる。保持部材32を取り外した後のコンクリートの表面には、保持部材32を取り外した後に生じる凹部Caが形成されているが、この凹部Caをモルタルにより埋めることでコンクリートの表面を面一とすることができる。特に、この凹部Caにモルタルを埋める作業は、コンクリートの解枠後にPコン穴の穴埋め作業とともに行うことが可能であり、特別な作業を要することがない。
【0019】
保持部材32は排水用ドレイン10側に細くなるように略円錐台形状をしているので、棒状突起部33をレンチ等で回転させて保持部材32を固化したコンクリートから剥離させたあとには、コンクリート内から容易に取り出すことができるようになる。また、コンクリート内に残るねじ部材31は、コンクリート打設後にコンクリート内で排水用ドレイン10を固定するアンカーとして機能する。
【0020】
(第2実施形態)
図5〜図8は、本発明による排水用ドレインの保持装置の第2実施形態を示しており、この保持装置により所定位置に保持される排水用ドレイン10Aは、建築物の屋上やバルコニー等でコンクリートよりなる床とそれから上方に延びる側壁との間の角部に埋設固定されるものであり、床に降った雨水等を受皿部11Aにて受けて後方に排水する横引き排水用ドレインである。以下の説明では、排水用ドレイン10Aをコンクリートを形成するための型枠のうち略垂直に立設した側壁型枠Gに仮固定装置20Aにより仮固定し、仮固定した排水用ドレイン10Aが所定位置から動かないように保持装置30Aにより保持した状態により説明する。
【0021】
図5〜図7に示すように、排水用ドレイン10Aは、床に埋設される水平部11Acとこの水平部11Acの後端から垂直に立設して側壁に埋設される垂直部11Adとからなる受皿部11Aと、この受皿部11Aの垂直部11Adから後方に連成する筒部12Aとを備えている。受皿部11Aの垂直部11Adには、雨水等を排水する排水口11Aaが設けられている。筒部12Aは、排水口11Aaが設けられた位置の後側に連成しており、受皿部11Aの水平部11Acに流入した雨水等は、排水口11Aaから筒部12Aを通って排出されるものである。
【0022】
図5に示すように、仮固定装置20A、排水用ドレイン10Aを所定の位置でコンクリートに埋設するときに同コンクリートが固化するまで排水用ドレイン10Aを側壁型枠Gに一時的に固定(仮固定)するものである。仮固定装置20は、排水用ドレイン10を側壁型枠Gの所定位置に位置決めするための円形の位置決め座板21Aと、排水用ドレイン10Aの後方に貫通穴を設けるるとともに側壁型枠Gに所定距離をおいて位置決めするための筒状のスペーサ22Aとを備えている。位置決め座板21Aは、側壁型枠Gの水平方向及び高さ方向の所定位置に釘により固定されている。スペーサ22Aの一方側の端部は、位置決め座板21Aの外周に嵌合されており、スペーサ22の他方側の端部は、排水用ドレイン10の筒部12Aの外周面に嵌合している。スペーサ22A内には、排水用ドレイン10Aの筒部12Aが挿入されている。位置決め座板21Aの中心部には、スペーサ22A及び筒部12Aを通って排水用ドレイン10A側に延びる長いボルト23Aが取り付けられており、このボルト23Aの先端には、排水用ドレイン10Aの受皿部11Aの垂直部11Adの前端部近傍と当接する抑え板24Aが設けられている。この抑え板24Aは、ボルト23Aの先端のナット25Aを締め付けることにより排水用ドレイン10Aをスペーサ22Aに押圧して側壁型枠Gに仮固定する。なお、仮固定に際しては、排水用ドレイン10Aは、その水平部11Acが前後方向及び横方向に水平となるように仮固定されている。
【0023】
保持装置30Aは、コンクリートを打設するときに仮固定装置20Aにより仮固定された排水用ドレイン10Aを所定位置に保持するためのものである。なお、本発明による排水用ドレイン10Aを所定位置に保持するとは、排水用ドレイン10Aの水平部11Acを前後方向及び横方向に水平となるように保持することである。保持装置30Aは、排水用ドレイン10Aの受皿部11Aの下面に設けられた雌ねじに螺着されるねじ部材31Aと、このねじ部材31Aの下端と螺合することで高さ調整可能に取り付けられて床型枠Fと当接する保持部材32Aとを備えている。ねじ部材31Aは、保持部材32Aと螺合したときに保持部材32Aの下端が当接する長さとなっている。保持部材32Aは、略円錐台形状をしており、コンクリートが固化したときに剥離可能な樹脂部材よりなる。保持部材32Aの上端には、ねじ部材31Aの下端が螺合する雌ねじ32Aaが形成されている。保持部材32Aの下端面には、床型枠Fの所定位置に設けられた貫通穴(穴部)Faと係合可能な棒状突起部(突起部)33Aが設けられている。この保持部材32Aは、コンクリートを打設するときに型枠とセパレータとの間に取り付けられるPコンや木コンを用いることで容易に入手することができる。図7に示すように、本実施形態においては、保持装置30Aは、排水用ドレイン10Aの受皿部11Aの水平部11Acの前部で横方向の両端の2箇所に取り付けられているが、本発明はこれに限られるものでなく、水平部の11Acの前端部の中心部に1箇所以上取り付けたものでよい。
【0024】
このように仮固定装置20Aにより側壁型枠Gに仮固定した排水用ドレイン10Aを保持装置30Aにより所定位置から動かないように保持した状態で型枠内にコンクリートを打設したときには、保持部材32Aが床型枠Fに当接することで、排水用ドレイン10Aはその水平部11Acを前後方向及び横方向に水平となるように所定の高さ位置に正確に保持された上でコンクリートに埋設固定することができる。
【0025】
排水用ドレイン10Aをコンクリートに埋設固定した後で、床型枠F及び側壁型枠Gを含む型枠を解枠するときには、ボルト23Aからナット25A及び抑え板24Aを取り外した状態にして型枠を取り外す。型枠を取り外した後のコンクリートの表面には、保持装置30Aの保持部材32Aの下端が露出するが、保持部材32Aはコンクリートが固化したときに剥離可能であるので、棒状突起部33Aをレンチ等の工具により回転させることでねじ部材31Aに螺合している保持部材32Aをコンクリート内から取り出すことができる。図8に示すように、保持部材32を取り外した後のコンクリートの表面には、保持部材32Aを取り外した後に生じる凹部Caが形成されているが、この凹部Caをモルタルにより埋めることでコンクリートの表面を面一とすることができる。特に、この凹部Caにモルタルを埋める作業は、コンクリートの解枠後にPコン穴の穴埋め作業とともに行うことが可能であり、特別な作業を要することがない。
【0026】
保持部材32Aは排水用ドレイン10A側に細くなるように略円錐台形状をしているので、棒状突起部33Aをレンチ等で回転させて保持部材32Aを固化したコンクリートから剥離させたあとには、コンクリート内から容易に取り出すことができるようになる。また、コンクリート内に残るねじ部材31Aは、コンクリート打設後にコンクリート内で排水用ドレイン10Aを固定するアンカーとして機能する。
【0027】
上記の実施形態においては、棒状突起部33,33Aを床型枠Fの貫通穴Faに係合させているが、棒状突起部(突起部)33,33Aの外周に雄ねじを形成して、この雄ねじに座金付きナットを螺合させて保持部材32、32Aを床型枠Fに着脱可能に固定してもよく、このようにしたときには、強い振動を与えても保持部材32,32Aが外れたりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による保持装置により縦引き排水用ドレインが保持された状態を示す一部破断側断面図である。
【図2】保持装置により縦引き排水用ドレインが保持された状態の平面図である。
【図3】保持装置により縦引き排水用ドレインが保持された状態の正面図である。
【図4】コンクリートを打設して解枠した後の縦引き排水用ドレインが埋設固定された状態を示す一部破断側断面図である。
【図5】本発明による保持装置により横引き排水用ドレインが保持された状態を示す一部破断側断面図である。
【図6】保持装置により横引き排水用ドレインが保持された状態の平面図である。
【図7】保持装置により横引き排水用ドレインが保持された状態の正面図である。
【図8】コンクリートを打設して解枠した後の横引き排水用ドレインが埋設固定された状態を示す一部破断側断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10,10A…排水用ドレイン、11,11A…受皿部、11a,11Aa…排水口、11Ac…水平部、11Ad…垂直部、30,30A…保持装置、31,31A…ねじ部材、32,32A…保持部材、33,33A…突起部(棒状突起部)、F…床型枠、G…側壁型枠。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋上やバルコニー等のコンクリートよりなる床に埋設されて前記床に降った雨水等を受皿部に流入させる排水用ドレインを同コンクリートを形成するための型枠のうち底部に配置された床型枠に締結具により仮固定した所定位置から移動しないように保持する保持装置であって、
この保持装置は、前記排水用ドレインの受皿部の下面に前記床型枠に向けて取り付けられたねじ部材と、このねじ部材の下端と螺合して取り付けられて前記床型枠と当接する保持部材とを備え、この保持部材の下端面には前記床型枠に設けられた穴部と係合可能な突起部を設けるとともに、前記保持部材は前記コンクリートが固化したときに剥離可能であることを特徴とする排水用ドレインの保持装置。
【請求項2】
建築物の屋上やバルコニー等のコンクリートよりなる床とそれから上方に延びる側壁との間の角部に埋設されて前記床に埋設される水平部とこの水平部の後端から略垂直に立設して前記側壁に埋設される垂直部とからなる受皿部に前記床に降った雨水等を流入させ前記垂直部に設けた排水口から後方に排水する排水用ドレインを同コンクリートを形成するための型枠のうち略垂直に立設する側壁型枠に締結具により仮固定した所定位置から移動しないように保持する保持装置であって、
この保持装置は、前記排水用ドレインの受皿部の水平部の下面に前記型枠のうち底部に設置した床型枠に向けて取り付けられたねじ部材と、このねじ部材の下端と螺合して取り付けられて前記床型枠と当接する保持部材とを備え、この保持部材の下端面には前記床型枠に設けられた穴部と係合可能な突起部を設けるとともに、前記保持部材は前記コンクリートが固化したときに剥離可能であることを特徴とする排水用ドレインの保持装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記排水用ドレイン側に細くなるように略円錐台形状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排水用ドレインの保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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