説明

排水管および車両用空調装置

【課題】空調ケースのドレンポートの軸線上からずれた位置に車両パネルの貫通孔がありドレンポートと貫通孔とが近接している場合であっても、良好な排水性とシール性とを確保することが可能な排水管およびこの排水管を備える車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】排水管1は、弾性体により筒状に形成されてドレンパイプ62に嵌合する軟質ホース部10と、剛体により筒状に形成されて内部に屈曲した排水通路24を有するとともに下流端23が車両フロアパネル70の貫通孔71から突出する硬質部20とからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の空調ケースの内部から排出される水を車室外に排出するための排水管、および排水管を備える車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、下記特許文献1に開示された排水管であるドレンホースがある。ドレンホースは弾性および可撓性を有するゴム等の材料からなり、クーリングユニットのドレンポートをなすドレンパイプに嵌着され、クーリングユニットに溜まった水をドレンパイプとドレンホースとを通して車外に排出するようになっている。
【0003】
車両のパネルにはドレンパイプの延長線上に貫通孔が設けられており、直管状のドレンホースの一端部がドレンパイプに嵌着され、他端部がパネルの貫通孔を貫通して配置され、クーリングユニット内から車両パネルの貫通孔の外部まで水を導出するようになっている。
【特許文献1】特開平11−170853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の直管状のドレンホースでは、空調ケースのドレンポートの軸線上からずれた位置に車両パネルの貫通孔があり、ドレンポートと貫通孔とが近接している場合には、ドレンホースが屈曲変形して、良好な排水性が確保し難いという問題がある。
【0005】
予め排水通路が屈曲した曲管状のドレンホースを採用するという手段も考えられるが、短尺の曲管状ホースは成形が非常に困難である。これに対し、屈曲した排水通路を有する排水管を、例えば樹脂成形等により形成することは可能であるが、ドレンポートに樹脂製等の剛体からなる排水管を嵌着した場合には、シール性が確保し難いという問題が生ずる。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、空調ケースのドレンポートの軸線上からずれた位置に車両パネルの貫通孔がありドレンポートと貫通孔とが近接している場合であっても、良好な排水性とシール性とを確保することが可能な排水管およびこの排水管を備える車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明の排水管では、
車室内に配置される空調ケース(60)のドレンポート(62)に接続され、ドレンポート(62)から排出される空調ケース(60)内の水を、車室を形成する車両パネル(70)の貫通孔(71)から車室外に排出するための排水管であって、
弾性体により筒状に形成され、ドレンポート(62)に嵌合する弾性体筒状部材(10)と、
剛体により筒状に形成され、内部に弾性体筒状部材(10)の内部と連通する屈曲した排水通路(24)を有する剛体筒状部材(21)とを備えることを特徴としている。
【0008】
これによると、弾性体筒状部材(10)は、ドレンポート(62)に嵌合したときには弾性変形して、ドレンポート(62)に容易に密着するので、確実なシール性を確保することが可能である。また、剛体筒状部材(21)内に屈曲した排水通路(24)を備えているので、排水通路(24)が押しつぶされることもなく、確実な排水性を確保することが可能である。
【0009】
したがって、空調ケース(60)のドレンポート(62)の軸線上からずれた位置に車両パネル(70)の貫通孔(71)がありドレンポート(62)と貫通孔(71)とが近接している場合であっても、良好な排水性とシール性とを確保することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、ドレンポート(62)は、空調ケース(60)から突出するドレンパイプ(62)として形成され、弾性体筒状部材(10)は、ドレンパイプ(62)に外嵌することを特徴としている。
【0011】
これによると、空調ケース(60)のドレンパイプ(62)の外側に弾性体筒状部材(10)が嵌合する。したがって、ドレンパイプ(62)から排出される水をスムーズに弾性体筒状部材(10)内に流入させることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、弾性体筒状部材(10)をなす弾性体は、ゴムもしくは熱可塑性エラストマからなり、剛体筒状部材(21)をなす剛体は、樹脂からなることを特徴としている。
【0013】
これによると、弾性体筒状部材(10)および剛体筒状部材(21)を成形することが容易である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明では、弾性体筒状部材(10)と剛体筒状部材(21)とが一体成形されていることを特徴としている。
【0015】
これによると、部品点数を少なくし、組付け性を向上することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明では、弾性体筒状部材(10)と剛体筒状部材(21)との境界面(40)の面積が、弾性体筒状部材(10)の軸直交断面の断面積より大きいことを特徴としている。
【0017】
これによると、境界面(40)の面積を大きして、弾性体筒状部材(10)と剛体筒状部材(21)との境界面(40)の強度を確保し易い。
【0018】
また、請求項6に記載の発明の車両用空調装置では、
車室内に配置され、内部の水を排出するためのドレンポート(62)が設けられた空調ケース(60)と、
ドレンポート(62)に接続され、ドレンポート(62)から排出される空調ケース(60)内の水を、車室を形成する車両パネル(70)の貫通孔(71)から車室外に排出するための排水管(1)とを備え、
排水管(1)は、
弾性体により筒状に形成され、ドレンポート(62)に嵌合する弾性体筒状部材(10)と、
剛体により筒状に形成され、内部に弾性体筒状部材(10)の内部と連通する屈曲した排水通路(24)を有する剛体筒状部材(21)とを備えることを特徴としている。
【0019】
これによると、排水管(1)の弾性体筒状部材(10)は、空調ケース(60)のドレンポート(62)に弾性変形して嵌合し、ドレンポート(62)に容易に密着しているので、確実なシール性を確保することが可能である。また、排水管(1)の剛体筒状部材(21)内に屈曲した排水通路(24)を備えているので、排水通路(24)が押しつぶされることもなく、確実な排水性を確保することが可能である。
【0020】
したがって、空調ケース(60)のドレンポート(62)の軸線上からずれた位置に車両パネル(70)の貫通孔(71)がありドレンポート(62)と貫通孔(71)とが近接している場合であっても、良好な排水性とシール性とを確保することができる。
【0021】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明を適用した一実施形態における排水管1の外観を示す正面図であり、図2は、排水管1の縦断面図である。図3は、車両搭載時の排水管1と、空調ケース60のドレンパイプ62および車両フロアパネル70の貫通孔71との係合関係を示す断面図であり、図4は、排水管1の空調ケース60への装着状態を示す図である。
【0024】
図1に示すように、排水管1は、弾性体であるゴム材(本例では、耐候性や耐水性に優れるEPDM材)からなる円筒状の軟質ホース部10と、剛体である樹脂材(本例では、比較的強度が高く耐候性や耐水性に優れるポリプロピレン材)からなる硬質部20とが一体成形され、相互に接合されて構成されている。
【0025】
硬質部20は、内部に屈曲した排水通路24(図2参照)を形成するパイプ部21を備えている。
【0026】
パイプ部21は、内部に形成する排水通路24に対応して、鈍角に屈曲した屈曲部21Bと、屈曲部21Bから連続する上流側の直線状部21Aと、屈曲部21Bから連続する下流側の直線状部21Cとからなる。
【0027】
直線状部21Aの図示右方端がパイプ部21の上流側端面22であり、この上流側端面22に、軟質ホース部10が直線状部21Aと軸線を一致するように接合されている。
【0028】
上流側端面22には、軟質ホース部10の方向に突出する環状突起25が形成されている。この環状突起25は、外周が軟質ホース部10の外周面とほぼ一致するように形成され、径方向の肉厚は軟質ホース部10の肉厚の約半分となっている。これにより、軟質ホース部10とパイプ部21とが接合した境界面40は径方向において段形状となっており、境界面40の面積は、軟質ホース部10の軸直交断面の断面積より大きくなっている。
【0029】
一方、直線状部21Cの図示下方端がパイプ部21の下流側端面23である。図2に示すように、パイプ部21の内部に形成された排水通路24も、屈曲部24B、屈曲部24Bに向かって下降するように傾斜した直線状部24A、屈曲部24Bの下方に略上下方向に延びる直線状部24Cからなっている。そして、排水通路24は、軟質ホース部10の内部と連通している。
【0030】
図1に示すように、パイプ部21の直線状部21Cの図示下方部には、パイプ部21の外周面から外方に張り出す鍔状のフランジ部26が設けられている。フランジ部26より図示上方側には、パイプ部21から突出してパイプ部21に沿って延び、下端がフランジ部26に接続する複数の(本例では4つの)補強リブ27が設けられている。
【0031】
また、パイプ部21の直線状部21Aと屈曲部21Bとの接続点付近には、図示上方に延びるブラケット部28が立設している。このブラケット部28には、排水管1を空調ケースに係止する際に螺子を挿通するための螺子穴30が形成されている。
【0032】
パイプ部21の屈曲部21Bと直線状部21Cとの接続点付近には、図示左方に突出した把持突起31が設けられている。把持突起31は、軟質ホース部10を後述する空調ケース60のドレンパイプ62に嵌合させる際にロボットや作業者が把持するための部位であって、パイプ部21の軟質ホース部10接合側とは反対側で軟質ホース部10の軸線の延長線上に形成されている。
【0033】
この把持突起31は、補強リブ27の一部を厚くして補強リブ27の先端よりさらに突出するように形成されており、補強リブ27と一体化することで強固な突起となっている。
【0034】
この排水管1は、図3に示すように、軟質ホース部10が、車室内に配置される空調ケース60のドレンポートをなすドレンパイプ62の外周面に嵌着して接続され、硬質部20のパイプ部21の下流端面23が、車室内外を隔離する車両パネルの一部であるフロアパネル70の貫通孔71から下方(車室外)に突出するように装着される。
【0035】
排水管1は、空調ケース60とは別体の排水管(ドレン管)であり、空調ケース60内のエバポレータ61(図4参照)の表面で生成した凝縮水等のケース内の水を車室外に導くものである。
【0036】
フロアパネル70の貫通孔71は、空調ケース60のドレンパイプ62の軸線63の延長線上よりも、ドレンパイプ62の下方側よりにずれた位置に開口しており、ドレンパイプ62と貫通孔71とは、比較的近接している。
【0037】
このような位置関係にあるドレンパイプ62と貫通孔71とを繋ぐように排水管1は配設されており、ドレンパイプ62から排出される空調ケース60内の水を、屈曲した排水通路24を介して車室外に排出するようになっている。
【0038】
排水管1の硬質部20のフランジ部26とフロアパネル70の貫通孔71の開口周縁部との間には、発泡樹脂(例えばウレタン樹脂発泡体)からなるパッキン50が圧縮されて介設され、排水管1のフランジ部26とフロアパネル70との間をシールし、車室内外を隔絶するようになっている。
【0039】
本実施形態において、軟質ホース部10が弾性体筒状部材に相当し、硬質部20のパイプ部21が剛体筒状部材に相当する。
【0040】
次に、上記構成の排水管1を車両に搭載する際の手順について簡単に説明する。
【0041】
まず、排水管1の硬質部20の把持突起31を保持して、図3に示す空調ケース60のドレンパイプ62が排水管1の軟質ホース部10内に進入するように、図4図示紙面表側から裏側に向かって、排水管1を空調ケース60方向に押し付ける。これにより、図3に示すように、ドレンパイプ62が境界面40より若干上流側まで軟質ホース部10内に進入し、ドレンパイプ62が軟質ホース部10を僅かに押し広げ、ドレンパイプ62の外周面に軟質ホース部10の内周面が密着してドレンパイプ62と軟質ホース部10との間にシール構造が形成される。
【0042】
そして、次に、図4に示すように、ブラケット部28の螺子穴30を挿通させた締結部材である螺子51を空調ケース60にねじ込んで、排水管1を空調ケース60に固定する。
【0043】
図4に示すように、ブラケット部28の上方先端部には、空調ケース60の壁面64の形状に合わせて係止面29が形成されている。壁面64は、空調ケース60内に配設された冷却用熱交換器であるエバポレータ61の図示紙面表側端部を収納するための膨出部の側壁面であり、ブラケット部28を空調ケース60に螺子留めした際には、係止面29が壁面64に密着する。
【0044】
また、図4では図示を省略しているが、空調ケース60からはブラケット部28の背面側に上下方向に延びる立設壁が設けられており、図2に示すブラケット部28より図2図示右方側の一対のリブ(片方は図示なし)32間に嵌合している。
【0045】
すなわち、排水管1を空調ケース60に螺子留めしたときには、ブラケット部28が螺子51により空調ケース60に固定されるばかりでなく、係止面29と壁部64との密着、および立設壁のリブ28間への嵌合により、排水管1は空調ケース60に対して移動しないように固定される。したがって、軟質ホース部10とドレンパイプ62との嵌合部位には、シール面圧以外の応力が付勢され難く、安定したシール構造が維持される。
【0046】
このように、空調ケース60に排水管1を組付けたら、排水管1パイプ部21外周のフランジ部26下方にパッキン50(図3参照)を配設し、この組付体を図3に示すフロアパネル70上に、貫通孔71からパイプ部21の下流端面23が突出するように載置して、空調ケース60を車両ボディに固定する。組付体をフロアパネル70上に載置する際には、フランジ部26に大きな衝撃応力が付勢される場合もあるが、補強リブ27により補強された排水管1がダメージを受けることはない。
【0047】
上述の構成の排水管1、および排水管1と空調ケース60とを備える車両用空調装置によれば、排水管1は、弾性体により筒状に形成されてドレンパイプ62に嵌合する軟質ホース部10と、剛体により筒状に形成されて内部に屈曲した排水通路24を有する硬質部20とからなっている。
【0048】
したがって、軟質ホース部10は、ドレンパイプ62に嵌合したときに弾性変形して、ドレンパイプ62の外周面に容易かつ確実に密着し、確実なシール性を確保することができる。また、硬質部20内に屈曲した排水通路24を備えているので、排水通路24が押しつぶされることもなく、確実な排水性を確保することができる。
【0049】
このようにして、空調ケース60のドレンパイプ62の軸線63上にフロアパネル70の貫通孔71がなく、貫通孔71がドレンパイプ62側にずれて近接していても、良好な排水性とシール性とを確保することができる。
【0050】
図11に示すように、空調ケース60のドレンパイプ62と車両パネル70の貫通孔71とが充分な距離だけ離れている場合には、例えばゴム製のストレートホース(直管)901をドレンパイプ62に嵌合させ、貫通孔71とストレートホース901との間にグロメット902を介在させる場合がある。この場合には、ストレートホース901は押しつぶされ難く排水性の確保は容易である。仮にゴム製の成形ホース(曲管)を採用したとしても容易に成形することができる。
【0051】
これに対し、図12に示すように、空調ケース60のドレンパイプ62と車両パネル70の貫通孔71とが近接している場合には、ストレートホース903は排水通路が押しつぶされて排水性を確保することが困難である。また、図13に示すように、例えばゴム製の成形ホース904を採用しようとしても、成形時にドレンパイプ装着側に所定長さの直線状部904Aを必要とするため、空調ケース60のドレンパイプ62と車両パネル70の貫通孔71とが近接している場合に対応する成形ホースを得ることは極めて困難である。
【0052】
また、空調ケース60のドレンパイプ62と車両パネル70の貫通孔71とが近接している場合の対策として、図14に示すように、排水通路の全てを例えば樹脂製の硬質パイプ905で形成する場合がある。しかし、この場合には、硬質パイプ905とドレンパイプ62との間にシール材906を介在させる必要があり、部品コストの増加、組付け工数の増加、シール性品質という点でデメリットがあった。
【0053】
これらに対し、本実施形態の構成によれば、空調ケース60のドレンパイプ62と車両パネル70の貫通孔71とが近接している場合であっても、比較的容易に、良好な排水性とシール性とを確保することができる。
【0054】
また、ドレンパイプ62より排水流れ下流側に配置される排水管1の軟質ホース部10は、ドレンパイプ62の外側面に嵌合している。したがって、ドレンパイプ62からの排水をスムーズに排水管1内に流入させることができる。
【0055】
また、排水管1は、弾性体であるゴム材(本例ではEPDM材)からなる軟質ホース部10と、剛体である樹脂材(本例ではポリプロピレン材)からなる硬質部20とが一体成形されている。これによると、部品点数を少なくし、組付け性を向上することができる。
【0056】
また、硬質部20のパイプ部21上流端面22には環状突起25が形成され、軟質ホース部10と硬質部20パイプ部21との境界面40の面積は、軟質ホース部10の軸直交断面の断面積より大きくなっている。すなわち、境界面を軟質ホース部10の軸に直交する単純な平面とした場合よりも大きくしている。したがって、境界面40での接合強度を確保し易く、軟質ホース部10と硬質部20とが剥離し難い。
【0057】
また、硬質部20の把持突起31は、パイプ部21の軟質ホース部10接合側とは反対側で軟質ホース部10の軸線の延長線上に形成されている。したがって、軟質ホース部10を空調ケース60のドレンパイプ62に嵌合させる際には、この把持突起31を把持して押し込むことにより、容易に嵌合作業を行うことができる。
【0058】
(他の実施形態)
上記一実施形態では、排水管1は、ドレンパイプ62の嵌合する弾性体筒状部材としてのゴム製の軟質パイプ部10と、屈曲排水通路24を有する剛体筒状部材としての樹脂製の硬質部20パイプ部21とを備えるものであったが、弾性体筒状部材および軟質筒状部材を備えるものであれば、これに限定されるものではない。
【0059】
例えば、図5に示すように、弾性体筒状部材を独立泡を有する発泡樹脂円筒体110とし、剛体筒状部材を上記一実施形態と同様に樹脂製の硬質部20のパイプ部21として、樹脂発泡円筒体110を金型内に配置して硬質部20の射出成形を行う複合成形技術により樹脂発泡円筒体110と硬質部20とを一体化した排水管101であってもよい。
【0060】
また、例えば、図6に示すように、弾性体筒状部材を上記一実施形態と同様にゴム製の軟質ホース部10とし、剛体筒状部材を金属パイプ221として、金属パイプ221と金属ブラケット228とを接合した硬質部220に軟質ホース部10を焼付け成形して一体化した排水管201であってもよい。
【0061】
また、弾性体筒状部材および剛体筒状部材の材質も限定されるものではないが、弾性体筒状部材をゴムもしくは熱可塑性エラストマにより形成し、剛体筒状部材を樹脂により形成すれば、両部材を成形することが極めて容易であり好ましい。
【0062】
また、上記一実施形態では、空調ケース60に設けられたドレンポートを突出したドレンパイプ62としていたが、これに限定されるものではない。例えば、突出していないドレンポートとし、排水管の弾性体筒状部材をドレンポートの内側に嵌合するものであってもよい。
【0063】
また、上記一実施形態では、硬質部20のパイプ部21上流端面22には環状突起25を形成し、軟質ホース部10と硬質部20パイプ部21との境界面40の面積が軟質ホース部10の軸直交断面の断面積より大きくなるようにしていたが、大きな境界面面積を得るための形状はこれに限定されるものではない。
【0064】
例えば、図7に示すように、環状突起325をパイプ部21の内面側に沿うように軟質ホース部310の肉厚より薄く設けて、境界面340を径方向に段形状として、境界面340の面積が軟質ホース部310の軸直交断面の断面積より大きくなるようにするものであってもよい。
【0065】
また、上記一実施形態や図7に示したように境界面の形状が径方向において変化するものに限定されるものでもない。
【0066】
例えば、図8に示すように、パイプ部21上流端面22に矩形状の突起部425を周方向において離間して複数形成し、周方向に凹凸形状(鍵形形状)が連続する境界面440の面積が軟質ホース部410の軸直交断面の断面積より大きくなるようにするものであってもよい。
【0067】
また、図9に示すように、パイプ部21上流端面522を周方向において波形に形成し、周方向に波形形状が連続する境界面540の面積が軟質ホース部510の軸直交断面の断面積より大きくなるようにするものであってもよい。
【0068】
また、図10に示すように、パイプ部21上流端面622を周方向において山谷が連続する形状に形成し、周方向に山形形状が連続する境界面640の面積が軟質ホース部610の軸直交断面の断面積より大きくなるようにするものであってもよい。
【0069】
図8〜10に示した例のように、境界面の形状が周方向において変化するものであれば、例えば空調ケース60への排水管の着脱作業時にひねり動作(ドレンパイプの軸を中心とした捩り動作)等が行われ、境界面に周方向の応力が付勢されることがあったとしても、境界面で剥離が発生することを防止できる。
【0070】
また、上記一実施形態では、弾性体筒状部材である軟質ホース部10と剛体筒状部材を有する硬質部20とを一体成形していたが、別体の弾性体筒状部材と剛体筒状部材とを組付け、排水管とするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明を適用した一実施形態における排水管1の外観を示す正面図である。
【図2】排水管1の縦断面図である。
【図3】車両搭載時の排水管1と、空調ケース60のドレンパイプ62および車両フロアパネル70の貫通孔71との係合関係を示す断面図である。
【図4】排水管1の空調ケース60への装着状態を示す図である。
【図5】他の実施形態における排水管101の外観を示す正面図である。
【図6】他の実施形態における排水管201の外観を示す正面図である。
【図7】他の実施形態における軟質ホース部と硬質部との境界面340の形状を説明するための要部断面図である。
【図8】他の実施形態における軟質ホース部と硬質部との境界面440の形状を説明するための要部外観図である。
【図9】他の実施形態における軟質ホース部と硬質部との境界面540の形状を説明するための要部外観図である。
【図10】他の実施形態における軟質ホース部と硬質部との境界面640の形状を説明するための要部外観図である。
【図11】比較例における排水管と、空調ケースのドレンパイプおよび車両フロアパネルの貫通孔との係合関係を示す断面図である。
【図12】比較例における排水管と、空調ケースのドレンパイプおよび車両フロアパネルの貫通孔との係合関係を示す断面図である。
【図13】比較例における排水管と、空調ケースのドレンパイプおよび車両フロアパネルの貫通孔との係合関係を示す断面図である。
【図14】比較例における排水管と、空調ケースのドレンパイプおよび車両フロアパネルの貫通孔との係合関係を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 排水管
10 軟質ホース部(弾性体筒状部材)
20 硬質部
21 パイプ部(剛体筒状部材)
24 排水通路
40 境界面
60 空調ケース
62 ドレンパイプ(ドレンポート)
70 フロアパネル(車両パネル)
71 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に配置される空調ケース(60)のドレンポート(62)に接続され、前記ドレンポート(62)から排出される前記空調ケース(60)内の水を、車室を形成する車両パネル(70)の貫通孔(71)から車室外に排出するための排水管であって、
弾性体により筒状に形成され、前記ドレンポート(62)に嵌合する弾性体筒状部材(10)と、
剛体により筒状に形成され、内部に前記弾性体筒状部材(10)の内部と連通する屈曲した排水通路(24)を有する剛体筒状部材(21)とを備えることを特徴とする排水管。
【請求項2】
前記ドレンポート(62)は、前記空調ケース(60)から突出するドレンパイプ(62)として形成され、
前記弾性体筒状部材(10)は、前記ドレンパイプ(62)に外嵌することを特徴とする請求項1に記載の排水管。
【請求項3】
前記弾性体は、ゴムもしくは熱可塑性エラストマからなり、
前記剛体は、樹脂からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排水管。
【請求項4】
前記弾性体筒状部材(10)と前記剛体筒状部材(21)とが一体成形されていることを特徴とする請求項3に記載の排水管。
【請求項5】
前記弾性体筒状部材(10)と前記剛体筒状部材(21)との境界面(40)の面積が、前記弾性体筒状部材(10)の軸直交断面の断面積より大きいことを特徴とする請求項4に記載の排水管。
【請求項6】
車室内に配置され、内部の水を排出するためのドレンポート(62)が設けられた空調ケース(60)と、
前記ドレンポート(62)に接続され、前記ドレンポート(62)から排出される前記空調ケース(60)内の水を、車室を形成する車両パネル(70)の貫通孔(71)から車室外に排出するための排水管(1)とを備え、
前記排水管(1)は、
弾性体により筒状に形成され、前記ドレンポート(62)に嵌合する弾性体筒状部材(10)と、
剛体により筒状に形成され、内部に前記弾性体筒状部材(10)の内部と連通する屈曲した排水通路(24)を有する剛体筒状部材(21)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−308134(P2008−308134A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160593(P2007−160593)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】