説明

排水管

【課題】 シール材の保持力を確保し、受け口からシール材が外れないようにすると共に、排水管の最大外径寸法を極力小さくする。
【解決手段】 受け口13と挿入される配管との間をシールする部材であり、シール本体部22と周縁部24で構成され、周縁部24が受け口13の先端面13fを覆うシール材20と、受け口13の外周面13rを覆う円筒部32と、その円筒部32の先端に形成された内フランジ部34とを備え、内フランジ部34でシール材20の周縁部24を押えてシール材20を受け口13の先端に保持するシール材保持カバー30とを有し、シール材保持カバー30の円筒部32に対して受け口13を挿入、シール材20の周縁部24がそのシール材保持カバー30の内フランジ部34と受け口13の先端面13fとの間に挟まれて弾性変形した状態でシール材保持カバー30が固定手段13m,36によって受け口13の外周面13rに固定するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に集合住宅の排水系統において使用されており、管本体の端部に配管接続用の受け口が形成されている排水管に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した排水管に関する技術が特許文献1に記載されている。
この排水管50は、耐火二層管で、図5に示すように、樹脂製の内管51を備えており、その内管51の上部に排水管継手の下部配管(図示されていない)が挿入される受け口51wが形成されている。受け口51wの先端(上端)近傍には内周溝51mが形成されており、その内周溝51mにリング状のシール材55が係合保持されている。受け口51wは、内周溝51mの凹み分だけ外周面が拡径されているため、その外径寸法は内周溝51mの位置で最大となる。さらに、内管51の直管部及び受け口51wの周囲は耐火繊維を含むモルタルにより形成された外管52によって覆われている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−187985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した排水管50では、リング状のシール材55を受け口51wの内周溝51mに係合保持する構成のため、接着剤等を使用してもシール材55の保持力を十分に確保することは難しい。このため、前記排水管継手の下部配管が受け口51wに挿入される際に、その下部配管がシール材55に引っ掛かると、シール材55が受け口51wの内周溝51mから外れて、シール不良が発生することがある。
また、受け口51wは、内周溝51mの凹み分だけ外周面が拡径する構成のため、排水管50の最大外径寸法が比較的大きくなる。排水管50の最大外径寸法は、その排水管50を貫通孔等に通す場合を考えると、可能な限り小さいことが望ましい。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の技術的課題は、シール材の保持力を十分に確保できるようにして、受け口からシール材が外れないようにするとともに、その排水管の最大外径寸法を極力小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、管本体の端部に形成されている配管接続用の受け口と、その受け口に挿入される配管とその受け口との間をシールする部材であり、シール本体部と周縁部とから構成されて、その周縁部が前記受け口の先端面を覆うシール材と、前記受け口の外周面を覆う円筒部と、その円筒部の先端に形成された内フランジ部とを備え、前記内フランジ部で前記シール材の周縁部を押えてそのシール材を前記受け口の先端に保持するシール材保持カバーとを有する排水管であって、前記シール材保持カバーの円筒部に対して前記受け口が挿入されて、前記シール材の周縁部がそのシール材保持カバーの内フランジ部と前記受け口の先端面との間に挟まれて弾性変形した状態で、そのシール材保持カバーが固定手段によって前記受け口の外周面に固定されるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、固定手段は、シール材保持カバーの円筒部に対して受け口が挿入されて、シール材の周縁部がシール材保持カバーの内フランジ部と受け口の先端面との間に挟まれて弾性変形した状態で、そのシール材保持カバーを受け口の外周面に固定できるように構成されている。即ち、シール材保持カバーが受け口に固定された状態で、シール材の周縁部はシール材保持カバーの内フランジ部と受け口の先端面との間に挟まれ、弾性変形した状態でその位置に保持される。したがって、固定手段が動作する際におけるシール材の周縁部の弾性変形状態、即ち、シール材保持カバーの内フランジ部と受け口の先端面との間の隙間寸法を調整することで、シール材の保持力を十分に確保できるようになる。この結果、配管が受け口に挿入される際に、その配管がシール材に引っ掛かったとしても、受け口からシール材が外れ難くなる。
また、シール材の周縁部はシール材保持カバーによって受け口の先端に保持される構成のため、従来のように、受け口の内周面にシール材の周縁部を収納するための溝を形成する必要がない。このため、前記溝が不要になる分だけ受け口の最大外径寸法を小さくできる。
【0008】
請求項2の発明によると、固定手段は、シール材保持カバーの円筒部に形成されて、受け口の挿入を妨げない位置から弾性力で半径方向内側に突出可能に構成された係止爪と、前記係止爪と係合可能なように、前記受け口の外周面に形成された被係合部とから構成されている。
このため、シール材保持カバーの円筒部に対して受け口を所定位置まで挿入することにより、自動的に固定手段の係止爪が被係合部に係合するようになり、受け口に対するシール材保持カバーの固定作業効率が向上する。
請求項3の発明によると、シール材の裏側には、シール本体部と周縁部との境界部分に受け口の先端内壁面と面接触可能な突条が形成されている。
このため、突条によって受け口の先端内壁面とシール材間のシール性が向上する。また、受け口に挿入された配管によってシール本体部が軸方向に押圧される際に、そのシール本体部が突条より先端側で受け口の奥方向に回動するようになる。このとき、突条は受け口の先端内壁面に面接触しているため、シール材の周縁部が受け口の内側に引き込まれような力を受け難くなる。
【0009】
請求項4の発明によると、シール材の周縁部には、受け口の先端面と半径方向において係合する凸部が形成されている。
このため、シール材の周縁部が受け口の内側に引き込まれような力を受けたとしても、凸部の働きでシール材の周縁部は受け口の先端面の位置に保持される。
請求項5の発明によると、シール材保持カバーの内フランジ部には、その内フランジ部の内周縁にシール材の周縁部を半径方向内側から押える傾斜押え面が形成されている。
このため、シール材の周縁部が受け口の内側に引き込まれような力を受けたとしても、そのシール材の周縁部がシール材保持カバーの内フランジ部の傾斜押え面に押えられ、シール材の周縁部は受け口の先端面の位置に保持される。
【0010】
請求項6の発明によると、管本体の直管部と受け口との間に形成された拡開部と、前記直管部の周囲を覆う耐火性の外管と、前記拡開部を囲んだ状態で、前記外管の先端面によって軸方向から拘束されており、前記管本体部の熱伸縮に起因した前記外管の先端面と前記拡開部との相対変位により弾性変形可能に構成された第一弾性体と、シール材保持カバーの円筒部、前記受け口の外周面及び前記外管の先端外周面までを覆う筒部と、その筒部の先端に設けられて、前記シール材保持カバーの内フランジ部を覆う内鍔部とを備え、耐火性材料により形成された耐火カバーと、前記耐火カバーの内鍔部とシール材保持カバーの内フランジ部との間に挟持された第二弾性体とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明によると、管本体の熱伸縮に起因した外管の先端面と拡開部との相対変位分は、第一弾性体が弾性変形することで吸収される。また、管本体の熱伸縮に起因した耐火カバーの内鍔部と受け口の先端面との相対変位分は、第二弾性体が弾性変形することで吸収される。このように、外管及び耐火カバーに対する管本体の熱伸縮を第一、第二弾性体で吸収できるため、経時的に管本体の傷付きを防止できる。さらに、外管及び耐火カバーと管本体との間に弾性体等が介在しているため、排水管にガタが生じない。
請求項7の発明によると、第一弾性体は、内管の拡開部と耐火カバーの筒部との間に楔状に挿入されている。
このため、第一弾性体によって受け口と耐火カバーとの間に隙間状の空間を保持した状態で、その受け口と耐火カバーとの間のガタを効率的に防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、シール材の保持力を十分に確保できるようになるため、受け口からシール材が外れないようになるとともに、その排水管の最大外径寸法を小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1〜図4に基づいて本発明の実施形態1に係る排水管の説明を行う。本実施形態に係る排水管はマンション等の集合住宅における排水経路の立て管に使用される排水管であり、図1にその排水管の受け口部分の破断縦断面図が示されている。また、図2は図1のII矢視拡大図等である。図3は排水管の変更例を表す破断縦断面図、図4は排水管の受け口部分の変更例を表す縦断面図である。
排水管10は、例えば硬質塩化ビニル製の管本体11を備えている。管本体11は、図1に示すように、直管部12と、その直管部12の一端(図1では上端)に形成された受け口13とから構成されており、その受け口13に排水管継手(図示省略)の下部配管が接続される。図1に示すように、管本体11の直管部12と受け口13との間にはその受け口13側で拡開するテーパ状の拡開部13wが形成されている。なお、拡開部13wは、排水抵抗緩和のため緩やかなテーパであることが望ましい(例えば、軸心に対して15°程度)。
【0014】
受け口13の先端(上端)には、その受け口13と前記排水管継手の下部配管との間をシールするシール材20が装着されている。
シール材20は、リング状に形成された弾性体(例えば、ゴム)であり、シール本体部22と周縁部24とから構成されている。
シール本体部22は、受け口13と排水管継手の下部配管との間を実際にシールする部分であり、縦断面形状が略楔形をして、受け口13の奥側に傾斜した状態で形成されている。このため、排水管継手の下部配管が受け口13に挿入される際に、その下部配管の先端がシール本体部22の先端部分に当接する。そして、シール本体部22の先端部分が排水管継手の下部配管に押されて下方に移動しながら拡開し、その下部配管がシール本体部22に通される。これによって、下部配管62と受け口13との間がシール本体部22によってシールされる。
【0015】
シール本体部22の基端部の表面側には、図2に示すように、リング状の襞23が受け口13の先端面13fに対してほぼ平行になるように形成されている。リング状の襞23は、内側に粘着剤を保持可能に形成されており、排水管継手の下部配管が受け口13に挿入される際にその下部配管の先端に押圧されて変形する。これによって、その襞23の内側の粘着剤がシール本体部22の表面に押出され、その粘着剤がシール本体部22と排水管継手の下部配管との間に充填される。
シール材20の裏面側には、シール本体部22と周縁部24との境界部分に受け口13の先端内壁面13eと面接触可能な断面三角形状の突条22rが形成されている。これによって、受け口13の先端内壁面13eとシール材20間のシール性が向上する。また、排水管継手の下部配管によってシール本体部22が軸方向に押圧される際に、そのシール本体部22は突条22rより先端側で下方に回動するようになる。このとき、突条22rは受け口13の先端内壁面13eに面接触しているため、後記するシール材20の周縁部24が受け口13の内側に引き込まれような力を受け難くなる。
【0016】
シール材20の周縁部24は、シール材20を受け口13の先端に保持するための部位であり、その受け口13の先端面13fを覆うことができるように、受け口13の配管肉厚寸法とほぼ等しい幅寸法でリング状に形成されている。ここで、受け口13の先端面13fは、軸心に対して直角な平面部と、その平面部の周囲に形成された傾斜面部13kとから構成されている。このため、シール材20の周縁部24の裏側には、図2に示すように、受け口13の先端面13fの平面部と面接触可能な裏平面24dと、その先端面13fの傾斜面部13kと面接触可能な凸傾斜面24xが形成されている。したがって、仮に、シール材20の周縁部24に対して受け口13に引き込まれる方向の力(半径方向内側の力)が加わっても、その周縁部24の凸傾斜面24xが受け口13の先端面13fの傾斜面部13kと係合することで、周縁部24の半径方向内側の移動が規制される。
即ち、周縁部24の凸傾斜面24xの形成部分が本発明における周縁部の凸部に相当する。
【0017】
シール材20の周縁部24の先端面(上端面)24fは、シール本体部22の襞23の位置よりも軸方向に一定寸法だけ突出した位置に設けられており、その先端面24fとシール本体部22の表面(先端面)との間に段差23dがリング状に形成されている。ここで、段差23dの位置は、シール本体部22の突条22rの外周面22s(受け口13の先端内壁面13eに面接触する面)の延長線上に設定されている。
周縁部24の先端面24fと段差23dとの角部は面取りされて傾斜面24kが形成されており、この傾斜面24kに後記するシール材保持カバー30の内フランジ部34の先端(傾斜押え面34k)が掛けられるようになっている。また、周縁部24の外周面24zと周縁部24の先端面24fとの角部は面取りされて断面円弧形の曲面24tが形成されている。
【0018】
受け口13には、シール材20が装着された状態でシール材保持カバー30が被せられる。
シール材保持カバー30は、シール材20の周縁部24を押えてそのシール材20を受け口13の先端に保持しておくための、例えば、鋼板製のカバーであり、図2に示すように、円筒部32と、曲がり部33と、内フランジ部34とによって、縦断面形状が略逆L字形に形成されている。
シール材保持カバー30の円筒部32は、シール材20の周縁部24の外周面24zから受け口13の先端外周面13rまでを覆う筒体であり、その円筒部32の内径寸法が受け口13の外径寸法にほぼ等しく設定されている。円筒部32には、シール材保持カバー30を受け口13に固定するための係止爪36が円周方向に複数個形成されている。係止爪36は、円筒部32の壁部に切り込みを入れることにより、その円筒部32の内側に突出した状態で、内フランジ部34の方向を指向するように形成されており、その係止爪36自身の弾性力でその位置に保持されている。一方、受け口13の先端外周面13rには、シール材保持カバー30の円筒部32の係止爪36が係合可能な断面角形の溝13mが円周方向に形成されている。
【0019】
シール材保持カバー30の円筒部32に管本体11の受け口13が挿入されると、各々の係止爪36は受け口13の先端に押圧されることで、弾性力に抗して拡開するようになる。このとき、受け口13の先端面13fの周縁部分には傾斜面部13kが形成されているため、受け口13をシール材保持カバー30の円筒部32に挿入する際に、その受け口13の先端面13fがシール材保持カバー30の係止爪36の位置を通過し易くなる。このように、各々の係止爪36が受け口13の先端に押圧されることで、弾性力に抗して拡開するため、シール材保持カバー30の円筒部32に対する受け口13の挿入が各々の係止爪36によって妨げられることがない。そして、受け口13がシール材保持カバー30の円筒部32に対して所定位置まで挿入されて、その受け口13の先端外周面13rの溝13mが係止爪36の位置まで到達すると、それらの係止爪36が弾性力で元の位置まで戻り、その溝13mと係合する。これによって、受け口13に対するシール材保持カバー30の抜け止めが図られる。即ち、溝13mが本発明の被係合部に相当する。
【0020】
シール材保持カバー30の内フランジ部34は、断面円弧形の曲がり部33を介して円筒部32の先端に設けられている。内フランジ部34は、円筒部32と直角に形成された平板部位34fと、その平板部位34fの先端(内周縁)に形成された傾斜押え面34kとから構成されている。そして、内フランジ部34の平板部位34fがシール材20の周縁部24の先端面24fに面接触した状態で、その内フランジ部34の傾斜押え面34kがシール材20の周縁部24の傾斜面24kに掛けられるように構成されている。
ここで、シール材保持カバー30の係止爪36と受け口13の溝13mとは、シール材保持カバー30の内フランジ部34と受け口13の先端面13f間の隙間寸法がシール材20の周縁部24の厚み寸法(変形前の厚み寸法)より小さくなるまで、その受け口13がシール材保持カバー30の円筒部32に挿入されたときに係合するように構成されている。
【0021】
このため、シール材保持カバー30が受け口13に取付けられた状態で、シール材20の周縁部24はシール材保持カバー30の内フランジ部34と受け口13の先端面13fとの間に挟まれ、弾性変形した状態でその位置に保持される。したがって、シール材保持カバー30の係止爪36と受け口13の溝13mとが係合する際のシール材保持カバー30の内フランジ部34と受け口13の先端面13f間の隙間寸法を調整することで、シール材20の保持力を十分に確保できるようになる。
なお、シール材20の周縁部24を接着剤によって受け口13の先端面13fに接着することも可能である。
また、シール材20の裏側には、シール本体部22と周縁部24との境界部分に受け口13の先端内壁面13eと面接触可能な突条22rが形成されている。このため、受け口13に挿入された排水管継手の下部配管によってシール本体部22が軸方向に押圧される際に、そのシール本体部22が突条22rより先端側で受け口13の奥方向に回動するようになる。このとき、突条22rは受け口13の先端内壁面13eに面接触しているため、シール材20の周縁部24が受け口13の内側に引き込まれような力を受け難くなる。さらに、突条22rによって受け口13の先端内壁面13eとシール材20間のシール性が向上する。
【0022】
また、シール材20の周縁部24には、受け口13の先端面13fの傾斜面部13kと半径方向において係合する凸傾斜面24xが形成されている。このため、シール材20の周縁部24が受け口13の内側に引き込まれような力を受けたとしても、凸傾斜面24xの働きでシール材20の周縁部24は受け口13の先端面13fの位置に保持される。
また、シール材保持カバー30の内フランジ部34には、その内フランジ部34の内周縁にシール材20の周縁部24を半径方向内側から押える傾斜押え面34kが形成されている。このため、シール材20の周縁部24が受け口13の内側に引き込まれような力を受けたとしても、そのシール材20の周縁部24がシール材保持カバー30の内フランジ部34の傾斜押え面34kに押えられ、シール材20の周縁部24は受け口13の先端面13fの位置に保持される。
【0023】
上記した構成により、排水管継手の下部配管が受け口13に挿入される際に、その下部配管がシール材20に引っ掛かったとしても、受け口13からシール材20が外れ難くなる。
また、シール材20の周縁部24はシール材保持カバー30によって受け口13の先端に保持される構成のため、従来のように、受け口13の内周面にシール材20の周縁部24を収納するための溝を形成する必要がない。このため、前記溝が不要になる分だけ受け口13の最大外径寸法を小さくできる。
【0024】
なお、本実施形態では、耐火遮音カバー等に覆われていない通常の排水管10を例に説明を行ったが、図3に示すように、その排水管10を耐火遮音筒40あるいは耐火遮音シート40(以下、耐火遮音筒40という)で覆うことも可能である。ここで、耐火遮音筒40は、内側の吸音層42と外側の遮音層44とから構成されている。
吸音層42は、管本体11内を流れる排水の音やその管本体11の振動等を吸収するための層であり、不燃性の無機質繊維、例えば、グラスウールフェルト等から構成されている。遮音層44は、排水の音等を反射させて外部に漏らさないようにするための層であり、耐火性、かつ気密性を有し、比重の大きな材料、例えば、アスファルトにポリマーやゴム等を添加した改質アスファルト及び不織布等から構成されている。
管本体11は、図3に示すように、直管部12が耐火遮音筒40に通されており、受け口13及び拡開部13wの部分は所定形状に裁断された耐火遮音シート40によって覆われている。そして、耐火遮音シート40の合わせ目部分、及び耐火遮音シート40と耐火遮音筒40との接続部分が、遮音層44とほぼ等しい材質のジョイントテープ46によって貼り合わされている。
これによって、排水管10の耐火性能及び遮音性能を向上させることができるようになる。
【0025】
また、図4に示すように、排水管10を繊維強化モルタル(不燃材及び繊維等を混ぜたモルタル)製の外管62及び耐火カバー64で覆うことも可能である。ここで、外管62は、管本体11の直管部12の周囲を被覆可能なように直管状に構成されている。また、耐火カバー64は、シール材保持カバー30から受け口13の外周面、さらに拡開部13w及び外管62の先端部までを覆うカバーであり、円筒部64eと内鍔部64fとによって、縦断面形状が略逆L字形に形成されている。そして、耐火カバー64の円筒部64eが複数本のタッピン64t及びモルタル系の接着剤である耐火目地材69によって外管62の先端部に固定されている。
管本体11の拡開部13wの周囲には、耐火カバー64の円筒部64eの内側で、かつ外管62の先端面62fによって軸方向から拘束される位置に、リング状の楔形弾性体66がセットされている。
【0026】
楔形弾性体66は、管本体11の熱伸縮に起因した外管62の先端面62fに対する管本体11の拡開部13wの軸方向に変位分を吸収するための部材であり、例えば、ゴムにより形成されている。楔形弾性体66は、その先端部分が管本体11の拡開部13wと耐火カバー64の円筒部64eとの間に挿入されるため、その楔形弾性体66によって管本体11の受け口13と耐火カバー64との間にガタのない状態で隙間Sを形成できるようになる。その隙間Sにより、耐火カバー30の熱が受け口13に伝わり難くなるとともに、振動も排水管10からコンクリートスラブ等に伝わり難くなる。
また、シール材保持カバー30の内フランジ部34と耐火カバー64の内鍔部64fとの間にはリング状の角形弾性体68が挟持されている。これによって、管本体11の熱伸縮に起因した耐火カバー64の内鍔部64fとシール材保持カバー30の内フランジ部34との相対変位分を角形弾性体68の部分で吸収できるようになる。
即ち、楔形弾性体66が本発明の第一弾性体に相当し、角形弾性体68が本発明の第二弾性体に相当する。
【0027】
なお、本実施形態では、シール材20を受け口13の先端に装着した状態でその受け口13にシール材保持カバー30を被せる例を示したが、シール材20を予めシール材保持カバー30の内面に接着しておくことも可能である。
また、本実施形態では、シール材保持カバー30の係止爪36を受け口13の外周面の溝13mに係合させることにより、シール材保持カバー30を受け口13に固定する例を示したが、例えば、タッピン等によりシール材保持カバー30を受け口13に固定することも可能である。
また、シール材保持カバー30の円筒部32に切り込みを入れることで係止爪36を形成する例を示したが、図2(B)(C)に示すように、円筒部32に球状あるいは爪状の凸部を成形し、この凸部を係止爪として使用することも可能である。さらに、溝13mを断面角形に形成する例(四角溝)を示したが、球状の凸部に対応して断面円弧形の丸溝あるいは爪状の凸部に対応して断面三角形の三角溝とすることも可能である。
また、本実施形態では、立て管に本発明の排水管10を適用する例を示したが、横枝管や管継手等に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1に係る排水管の受け口部分の破断縦断面図である。
【図2】図1のII矢視拡大図(A図)及び係止爪の変更例を表す縦断面図(B図、C図)である。
【図3】排水管の変更例を表す一部破断縦断面図である。
【図4】排水管の変更例を表す受け口部分の縦断面図である。
【図5】従来の耐火二層管の外形図及び縦断面図である
【符号の説明】
【0029】
10 排水管
11 管本体
12 直管部
13 受け口
13m 溝(被係合部、固定手段)
20 シール材
22 シール本体部
22r 突条
24 周縁部
24x 凸傾斜面(凸部)
30 シール材保持カバー
32 円筒部
34 内フランジ部
36 係止爪(固定手段)
40 耐火防音筒
42 吸音層
44 遮音層
62 外管
64 耐火カバー
66 楔形弾性体(第一弾性体)
68 角形弾性体(第二弾性体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
管本体の端部に形成されている配管接続用の受け口と、その受け口に挿入される配管とその受け口との間をシールする部材であり、シール本体部と周縁部とから構成されて、その周縁部が前記受け口の先端面を覆うシール材と、前記受け口の外周面を覆う円筒部と、その円筒部の先端に形成された内フランジ部とを備え、前記内フランジ部で前記シール材の周縁部を押えてそのシール材を前記受け口の先端に保持するシール材保持カバーとを有する排水管であって、
前記シール材保持カバーの円筒部に対して前記受け口が挿入されて、前記シール材の周縁部がそのシール材保持カバーの内フランジ部と前記受け口の先端面との間に挟まれて弾性変形した状態で、そのシール材保持カバーが固定手段によって前記受け口の外周面に固定されるように構成されていることを特徴とする排水管。
【請求項2】
請求項1に記載された排水管であって、
固定手段は、
シール材保持カバーの円筒部に形成されて、受け口の挿入を妨げない位置から弾性力で半径方向内側に突出可能に構成された係止爪と、
前記係止爪と係合可能なように、前記受け口の外周面に形成された被係合部と、
を有していることを特徴とする排水管。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された排水管であって、
シール材の裏側には、シール本体部と周縁部との境界部分に受け口の先端内壁面と面接触可能な突条が形成されていることを特徴とする排水管。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された排水管であって、
シール材の周縁部には、受け口の先端面と半径方向において係合する凸部が形成されていることを特徴とする排水管。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された排水管であって、
シール材保持カバーの内フランジ部には、その内フランジ部の内周縁にシール材の周縁部を半径方向内側から押える傾斜押え面が形成されていることを特徴とする排水管。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された排水管であって、
管本体の直管部と受け口との間に形成された拡開部と、
前記直管部の周囲を覆う耐火性の外管と、
前記拡開部を囲んだ状態で、前記外管の先端面によって軸方向から拘束されており、前記管本体の熱伸縮に起因した前記外管の先端面と前記拡開部との相対変位により弾性変形可能に構成された第一弾性体と、
シール材保持カバーの円筒部、前記受け口の外周面及び前記外管の先端外周面までを覆う筒部と、その筒部の先端に設けられて、前記シール材保持カバーの内フランジ部を覆う内鍔部とを備え、耐火性材料により形成された耐火カバーと、
前記耐火カバーの内鍔部とシール材保持カバーの内フランジ部との間に挟持された第二弾性体と、
を有することを特徴とする排水管。
【請求項7】
請求項6に記載の排水管であって、
第一弾性体は、内管の拡開部と耐火カバーの筒部との間に楔状に挿入されていることを特徴とする排水管。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−2886(P2006−2886A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181090(P2004−181090)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(390013527)
【Fターム(参考)】