説明

排水集合継手

【課題】軽量で耐火性能、施工性に優れる排水集合継手を提供することを目的としている。
【解決手段】排水立管が接続される上下の立管接続部と、床スラブを貫通して配置されるスラブ貫通部とを有する本体部と、この本体部の前記スラブ貫通部より上方に連通して設けられた少なくとも1つの横枝管接続部とを備え、少なくとも本体部の横枝管接続部の連通部が排水立管の内径より大径の筒状をしているとともに、この大径筒状部より下方に接続される排水立管の内径とほぼ同じ内径になるように下側に向かって徐々に縮径するテーパ筒部を有し、複数の継手構成部材を組み立てて形成され、複数の継手構成部材のうち、少なくともスラブ貫通部を構成する継手構成部材が、耐火熱膨張性樹脂組成物からなる管状をした耐火膨張層を備える耐火熱膨張性樹脂パイプで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性能に優れた排水集合継手に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅などの多層建築物の場合、各階の衛生機器等から排出される排水は、各階の衛生機器等から横枝管を介してパイプシャフト内に設けられた排水立管に集められて、下水路に排水されるようになっている。
そして、図7に示すように、排水立管路100の床スラブ貫通部310においては、床スラブ200を挟んだ下の階、あるいは上の階で火災が発生した場合においても、火災発生階から上の階あるいは下の階への火炎や煙の流れ込みを防止するために、排水立管路100の一部を構成する排水集合継手300の床スラブ貫通部310と床スラブ200に設けられた貫通孔210との隙間にモルタル400を充填するようにしている。図7中、500は横枝管、320は横枝管接続部である。
【0003】
ところで、このような床スラブ貫通部に用いられる配管材としては、それ自体に耐火性が要求されるため、鋳鉄製のものや合成樹脂製内管の周囲がモルタル製外管で囲繞された耐火二層集合継手と称されるもの(特許文献1参照)が採用されている。
しかしながら、上記鋳鉄製や耐火二層構造の排水集合継手などは、重量がかなりあるため、配管施工時の施工性に問題がある。
【0004】
上記のような問題を解決するためには、ベース樹脂に、無機系膨張剤および/または有機系膨張剤が配合されている防火用膨張性樹脂組成物が提案されている(特許文献2参照)。
この防火用膨張性樹脂組成物は、シート状あるいはペースト状をしていて、施工時に排水立管を構成する樹脂配管材の、スラブ貫通孔に挿通配置される部分に巻回あるいは塗布するようになっていて、火災が発生し、防火用膨張性樹脂組成物が加熱されると、無機系膨張剤および/または有機系膨張剤が膨張し、そのときに貫通孔壁面との間で発生する圧力で、軟化している樹脂配管材を押しつぶして貫通孔全体を閉塞して延焼を防止するようになっている。
【0005】
しかしながら、上記防火用膨張性樹脂組成物の場合、軽量化は図れるのであるが、施工時に巻回作業あるいは塗布作業を行わなければならず、面倒である上、巻回作業や塗布作業の不良を招き、その効果を発揮できない恐れもある。
【0006】
【特許文献1】特開2005−282330号公報
【特許文献2】特許3133683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、軽量で耐火性能、施工性に優れる排水集合継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる排水集合継手は、排水立管が接続される上下の立管接続部と、床スラブを貫通して配置される床スラブ貫通部とを有する本体部と、この本体部の前記床スラブ貫通部より上方に連通して設けられた少なくとも1つの横枝管接続部とを備え、少なくとも本体部の横枝管接続部の連通部が前記排水立管の内径より大径の筒状をしているとともに、この大径筒状部より下方に接続される排水立管の内径とほぼ同じ内径になるように下側に向かって徐々に縮径するテーパ筒部を有する排水集合継手おいて、複数の継手構成部材を組み立てて形成され、前記複数の継手構成部材のうち、少なくとも前記床スラブ貫通部を構成する継手構成部材が、耐火熱膨張性樹脂組成物からなる管状をした耐火膨張層を少なくとも備えることを特徴としている。
【0009】
本発明の排水集合継手は、少なくとも前記床スラブ貫通部を構成する継手構成部材が耐火熱膨張性樹脂パイプであれば、他の継手構成部材の材質は、金属でも樹脂でも構わないが、より軽量化を求めるのであれば、全ての継手構成部材が樹脂成形品であることが好ましい。
【0010】
また、他の継手構成部材のうち、押出成形できない形状のものにおいては、熱膨張性黒鉛が配合されていると成形困難であるため、熱膨張性黒鉛が配合されていない樹脂組成物を用いることが好ましい。
さらに、上記耐火熱膨張性樹脂パイプを含め、継手構成部材を構成する樹脂組成物の主成分樹脂としては、特に限定されないが、自己消火性を備えるポリ塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0011】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体;塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。又、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化してもよい。
【0012】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類などが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
上記塩化ビニルをグラフト共重合する重合体としては、塩化ビニルをグラフト共重合するものであれば、特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定されるものではないが、小さくなると成形体の物性低下が起こり、大きくなると溶融粘度が高くなって成形が困難になるので、400〜1600が好ましく、600〜1400が、特に好ましい。尚、上記平均重合度とは、ポリ塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
【0015】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の重合方法は、特に限定されず、従来公知の任意の重合方法が採用されてよく、例えば、塊状重合方法、溶液重合方法、乳化重合方法、懸濁重合方法等が挙げられる。
【0016】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化方法としては、特に限定されず、従来公知の塩素化方法が採用されてよく、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
【0017】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂はいずれも、樹脂組成物としての耐火性能を阻害しない範囲で、架橋、変性して用いてもよい。この場合、予め架橋、変性した樹脂を用いてもよく、添加剤等を配合する際に、同時に架橋、変性してもよいし、あるいは樹脂に前記成分を配合した後に架橋、変性してもよい。上記樹脂の架橋方法についても、特に限定はなく、ポリ塩化ビニル系樹脂の通常の架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物を使用する架橋、電子線照射による架橋、水架橋性材料を使用した方法等が挙げられる。
【0018】
本発明の耐火熱膨張性樹脂パイプは、火炎等によって加熱されると耐火膨張層が膨張して、管内を閉塞あるいは閉塞に近い状態にすることができるものであれば、特に限定されず、耐火膨張層のみの単層のものでも、耐火膨張層の内外面に耐火膨張層の耐火性能を阻害しない範囲で膨張黒鉛を含まない樹脂組成物からなる樹脂層を設けた複層構造とするようにしても構わない。
上記単層構造品の場合、耐火膨張層を形成する耐火熱膨張性樹脂組成物としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜10重量部の割合で含むものが好ましく、1〜8重量部の割合で含むものがより好ましく、2〜7重量部の割合で含むものがさらに好ましい。すなわち、熱膨張性黒鉛が1重量部未満であると、燃焼時に、十分な熱膨張性が得られず、所望の耐火性が得られない恐れがあり、10重量部を超えると、加熱により熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落し、耐火性が低下してしまう恐れがある。
一方、複層構造品の場合、耐火膨張層を形成する耐火熱膨張性樹脂組成物としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜15重量部の割合で含むものが好ましく、1〜12重量部の割合で含むものがより好ましく、2〜10重量部の割合で含むものがさらに好ましい。すなわち、熱膨張性黒鉛を熱膨張性黒鉛が1重量部未満であると、燃焼時に、十分な熱膨張性が得られず、所望の耐火性が得られないし、15重量部を超えると、加熱により熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落し、耐火性が低下してしまう恐れがある。
また、上記のように耐火膨張層がポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜15重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物で形成された複層構造品の場合、耐火膨張層の内外面を熱膨張性耐火材料非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物で被覆した3層構造とすることが好ましい。
【0019】
上記のような3層構造の複層構造品の場合、耐火管状の内面および外面を被覆する被覆層の厚みが、それぞれ0.2〜2.0mmであることが好ましい。
すなわち、耐火膨張層の内面および外面を被覆する被覆層の厚みが0.2mm未満であると管としての機械的強度に劣る恐れがあり、2.0mmを超えると耐火性が低下する恐れがある。
【0020】
本発明で用いられる熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで、黒鉛の層間に無機酸を挿入する酸処理をした後、pH調整して得られる炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物であって、pH1.5〜4.0に調整された熱膨張性黒鉛、および、1.3倍膨張温度が180℃〜240℃の熱膨張性黒鉛を用いることが好ましい。
すなわち、熱膨張性黒鉛のpHが1.5未満であると、酸性が強すぎて、成形装置の腐食などを引き起こしやすく、pHが4.0を超えると、ポリ塩化ビニル系樹脂の炭化促進効果が薄れ、十分な耐火性能が得られなくなる恐れがある。
【0021】
上記熱膨張性黒鉛のpH調整方法は、特に限定されないが、通常、上記のように、原料黒鉛の層間に無機酸を挿入する酸処理をした状態では、pH1以下になっているため、例えば、酸処理後の黒鉛を水で洗浄して、黒鉛の表面に残存する酸を除去した後、乾燥させる方法が挙げられる。すなわち、熱膨張性黒鉛のpHを上昇させるには、水洗と乾燥とを繰り返せばよい。
一方、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度が180℃未満であると、成形中に熱膨張性黒鉛が膨張してしまうことがあり、管の外観不良を引き起こす上、燃焼時の耐火性が低下してしまう恐れがあり、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度が240℃を超えると、成形中に熱膨張性黒鉛の膨張が開始してしまう恐れはないものの、燃焼時において、ポリ塩化ビニル系樹脂の熱分解(発泡)が進行し、ポリ塩化ビニル系樹脂の柔軟性が低下してしまった後に、熱膨張性黒鉛が膨張するため、ポリ塩化ビニル系樹脂が、熱膨張性黒鉛の膨張に耐え切れなくなり、バラバラに崩壊してしまう恐れがある。
なお、1.3倍膨張温度とは、加熱炉内を一定温度にして、熱膨張性黒鉛の試料を30分加熱した後の熱膨張性黒鉛の膨張倍率が、1.3以上になる温度を意味する。また、膨張倍率は、加熱後の試料の体積を加熱前の試料の体積で除することで求められる。
【0022】
上記熱膨張性黒鉛の粒径は、特に限定されないが、好ましくは100〜400μmであり、さらに好ましくは120〜350μmである。すなわち、粒径が細かくなりすぎると、耐火性樹脂組成物の膨張率が低下してしまう恐れがある。一方、粒径が大きくなりすぎると、加熱により組織が熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落し、耐火性が低下してしまうし、耐火性樹脂組成物を配管材としたときの引張強度や扁平強度などの物性が低下してしまい、管材として必要な機械的強度が得られなくなってしまう恐れがある。
【0023】
また、耐火膨張層を形成する耐火熱膨張性樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて安定剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。
上記安定剤としては、特に限定されないが、鉛系安定剤、有機スズ安定剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらが単独であるいは複合して用いられる。
【0024】
鉛系安定剤としては、例えば、鉛白、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、シリカゲル共沈ケイ酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛が挙げられる。
また、有機スズ系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプトなどのメルカプチド類;ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマーなどのマレート類;ジブチル錫メルカプトジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマーなどのカルボキシレート類が挙げられる。
【0025】
高級脂肪酸金属塩(金属石ケン)としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、リシノール酸カドミウム、ナフテン酸カドミウム、2−エチルヘキソイン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛が挙げられる。
【0026】
上記安定剤の配合割合は、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.3〜5.0重量部とすることが好ましい。
すなわち、安定剤の配合割合が0.3重量部未満であると、成形時におけるポリ塩化ビニル系樹脂の熱安定性が確保されにくく、成形中に炭化物が出やすくなってしまう恐れがあり、5.0重量部を超えると、燃焼時におけるポリ塩化ビニル系樹脂の炭化促進を阻害して十分な耐火性能が得られなくなる恐れがある。
【0027】
無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が候補に挙げられ、これらのうち、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉄等の塩基性無機充填剤を用いることが好ましい。
これらは、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
また、無機充填剤の配合割合は、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.3〜50重量部の割合とすることが好ましく、2〜5重量部の割合とすることが好ましい。すなわち、無機充填剤が0.3重量部未満であると、燃焼時に、骨材的な働きがなされず、その形状を保持できずに残渣が脱落して、耐火性が低下してしまう恐れがあり、50重量部を超えると、組成物全体に対するポリ塩化ビニル系樹脂の割合が低くなるため、引張強度が低下してしまう恐れがある。
【0029】
特に、熱膨張性黒鉛として、pHを1.5〜4.0に調整されたものを用いる場合には、上記塩基性無機充填剤をポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.3〜5.0重量部の割合で配合することが好ましい。すなわち、塩基性無機充填剤の配合割合がポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.3重量部未満であると、成形時におけるポリ塩化ビニル系樹脂の熱安定性が確保されず、成形中に炭化物が出やすくなってしまい、塩基性化合物が5.0重量部を超えると、燃焼時におけるポリ塩化ビニル系樹脂の炭化促進を阻害することとなり、耐火性能の著しい向上が見られなくなる恐れがある。
【0030】
上記難燃剤としては、燃焼時の難燃性を高めるためのものであれば特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ハイドロタルサイト、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等のモリブデン化合物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等の臭素系化合物、トリフェニルフォスフェート、アンモニウムポリフォスフェート等のリン系化合物、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛などが挙げられるが、ポリ塩化ビニルの燃焼抑制効果としては、三酸化アンチモンが特に好ましい。アンチモン化合物は、ハロゲン系化合物の存在下では、高温条件のもとで、ハロゲン化アンチモン化合物を作り、燃焼サイクルを抑制させる効果が非常に強く、相乗効果が著しいからである。
【0031】
難燃剤を併用することにより、燃焼時において、熱膨張性黒鉛の膨張による断熱効果と難燃剤による燃焼遅延効果が相乗効果を発揮して、より効率的に耐火性能を向上させることができる。難燃剤の添加部数は、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下、添加されていることが好ましい。難燃剤が1重量部未満であると、十分な相乗効果が得られにくいし、難燃剤が20重量部を超えて添加されると、成形性や物性が著しく低下してしまう恐れがあるからである。
【0032】
上記熱安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。
内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などが挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴムなどが挙げられる。
【0036】
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
【0037】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤などが挙げられる。
【0038】
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
【0039】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0040】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系などの無機顔料などが挙げられる。
【0041】
また、上記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物には可塑剤が添加されていてもよいが、成形品の耐熱性や耐火性を低下させることがあるため、多量に使用することはあまり好ましくない。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
【0042】
上記熱可塑性エラストマーとしては特に限定されず、例えば、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体や塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0043】
本発明の排水集合継手において、本体部には、上方から流下する排水を受け止め、内壁面に沿った旋回流とする傾斜板と、この傾斜板により旋回流とされた排水が横枝管接続部側に流入するのを防止するための堰き止め板とを内壁面に備えている構成、本体部の少なくとも横枝管接続部の連通部が立管接続部に接続される上下に排水立管の内径より大きな内径を有する大径部となっていて、この大径部より下側に、接続される排水立管の内径とほぼ同じ内径になるように下側に向かって徐々に縮径するテーパ筒部を備える構成、さらに、テーパ筒部の内壁面に内部を流下する排水を旋回流とする旋回羽根が設けられている構成としても構わない。
【0044】
上記傾斜板及び堰き止め板は、いずれもその上端部が横枝管接続部の上端部より高い位置に設けられていることが好ましい。すなわち、傾斜板及び堰き止め板の上端部が横枝管接続部の上端部より高い位置にあれば、上方から流下してきた排水は傾斜板に衝突して旋回流となり、横枝管から来る排水が本体部内に流入することを妨げなくなる。
【0045】
傾斜板下端部又は堰き止め板下端部のいずれか高い方の位置における傾斜板と堰き止め板との距離は、0mm〜100mmとされ、約20mmから80mm程度が好ましい。100mより広ければ、傾斜板により旋回流とされた汚水等は堰き止め板により堰き止めることができず、排水の流れが乱れてしまう他、横枝管への逆流が起こってしまう恐れがある。
なお、この距離は0mmであっても良いが、0mmの場合は、その箇所における傾斜板又は堰き止め板の継手内部への突出長さが少なくなるように、例えばその箇所において突出長さが10mm以下程度となるようにされると良い。これ以上継手内部側に突出していると、排水中の汚物や異物が詰まってしまう恐れがでてくる。
【0046】
通常、上記傾斜板を設ける際の管軸に対しての傾斜角度( 以下、「設置角度」ともいう) は、20°〜65°とされる。傾斜板の角度が65°より立っていると、傾斜板に衝突した排水が跳ね返り、流れを乱してしまう恐れが大きくなって、管内の圧力変動が大きくなり過ぎることがある。また、20°未満であると充分な旋回流が得られないことに加え、継手上方から見て、傾斜板の投影面積と円筒部の断面積との比が所定の範囲(後述)に入らなくなる恐れも出てくる。
また、傾斜板は、設置角度が20°〜65°である場合、上下に接続される排水立管の内径断面積(S)と、傾斜板の排水立管内径断面に対する投影面積(sk)との比が1:0.05〜0.30であることが好ましい。すなわち、傾斜板の設置角度が20°より小さ過ぎると、前記内径断面積(S)に対する投影面積(sk)の割合(sk/S、以下、「投影面積比」ともいう) を確保するために前記傾斜板の形状を長くする必要が生じ、そのため継手の上下方向の長さが長くなりコストアップに繋がる他、継手の重量が過大になることがある。このため、前記投影面積比は0.05〜0.30であることが好ましい。
【0047】
一方、堰き止め板の設置角度は垂直方向から−30°〜20°とされる。設置角度が20°より傾くと、傾斜板によって旋回された旋回流が十分に堰き止められずに、横枝管への逆流が発生してしまう恐れも出てくる。また−30°よりも傾くと受け止めた水の跳ね返りが大きくなり、流れを乱してしまう恐れがあり、管内の圧力変動が大きくなってしまう恐れがある。
【0048】
堰き止め板下端部の高さは、傾斜板下端部の高さと同じ又は低くされる。即ち、高さの差が0mm〜150mm程度低くされていると、傾斜板で旋回流とされた排水は、堰き止め板と傾斜板との間でその流れが乱されずスムースな流れとなり、しかも旋回流を堰き止め板で受け止めることで流下排水の流速を減速させつつ偏流させることができるため、優れた排水性能が発現される。又、大径の円筒部に傾斜板が設置されるので、十分に大きな羽根を設置することが可能となり、更に排水性能が向上する。
この場合の堰き止め板の設置角度は−30°〜20°とされる。即ち、傾斜板の設置角度は20°〜65°であるので、堰き止め板の設置角度が上記範囲であれば、傾斜板と堰き止め板とが、あたかもV字形状ないしy字形状となるように配置される。
【0049】
上記旋回羽根は、前記傾斜板あるいは堰き止め板により受け止められずに流下した排水を受け止め旋回させて、排水性能をより向上させるために設けられ、上記傾斜板および堰き止め板の設置位置、設置角度に応じてその角度が適宜決定されるが、通常は、管軸に対し20°〜65°程度が好ましい。
【発明の効果】
【0050】
本発明にかかる排水集合継手は、排水立管が接続される上下の立管接続部と、床スラブを貫通して配置される床スラブ貫通部とを有する本体部と、この本体部の前記床スラブ貫通部より上方に連通して設けられた少なくとも1つの横枝管接続部とを備え、少なくとも本体部の横枝管接続部の連通部が前記排水立管の内径より大径の筒状をしているとともに、この大径筒状部より下方に接続される排水立管の内径とほぼ同じ内径になるように下側に向かって徐々に縮径するテーパ筒部を有する排水集合継手おいて、複数の継手構成部材を組み立てて形成され、前記複数の継手構成部材のうち、少なくとも前記床スラブ貫通部を構成する継手構成部材が、耐火熱膨張性樹脂組成物からなる管状をした耐火膨張層を少なくとも備えるので、軽量化を図れるとともに、火災時に床スラブ貫通部において管路を閉塞し、火災発生階から他の階への火炎、煙等の流通を遮断することができるという優れた耐火性能を示す。しかも、予め耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層が設けられているので、巻回不良あるいは塗布不良といった問題がなく、確実な耐火施工を行うことができる。
また、少なくとも前記床スラブ貫通部を構成する継手構成部材を、耐火熱膨張性樹脂パイプとし、他の継手構成部材と組み立てるようにしたので、射出成形が困難な耐火熱膨張性樹脂組成物も用いることができる。
【0051】
そして、耐火膨張層のみの単層構造品において、耐火熱膨張性樹脂組成物として、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜10重量部の割合で含むものを用いれば、ベース樹脂として、自己消火性を有するポリ塩化ビニル系樹脂が用いられているため、燃焼速度の遅延が効果的に行われ、燃焼時の火炎の伝播速度を抑えることができる。その上、ポリ塩化ビニル系樹脂は、燃焼初期に発泡する性質があるため、熱膨張性黒鉛が膨張しやすいという利点がある。
また、熱膨張性黒鉛は、それ自体が燃えにくく、かつ、熱により膨張して断熱効果が発現するので、燃焼速度の遅延がさらに効果的に行われる。
【0052】
一方、耐火膨張層の内外面に被覆層を設けられた3層構造品において、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜15重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層と、この耐火膨張層の内外面を覆うように設けられる熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる被覆層とからなる構造とすれば、成形性に優れており、例えば、射出成形や押出成形などによって、高い寸法精度で連続的に生産できる。
また、外面側の被覆層が、パイプの熱膨張によって、床スラブの貫通孔とパイプとの間に充填されたモルタルへの密着性を増し、火災発生階側からパイプとモルタルの隙間を介して非火災発生階への火炎や煙の流入をより確実に阻止することができる。
さらに、被覆層が熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるので、パイプの内外面を滑らかな状態にすることができ、製品としての外観および排水性能に優れたものとすることができる。
【0053】
全ての継手構成部材を樹脂製とすれば、最も軽量化を図ることができる。すなわち、配管施工性により優れたものとすることができる。
そして、横枝管、立管に従来から使われている樹脂ライニング鋼管、耐火二層管、鋳鉄管でなくてもより安価で施工性、排水性能に優れる非耐火性の塩化ビニル樹脂管を使うことが可能となり、単管式排水システムをオール樹脂管で構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる排水集合継手の第1の実施の形態をあらわしている。
【0055】
図1に示すように、この排水集合継手1aは、本体部2と、2つの横枝管接続部3とを備えており、本体部2の上端部と2つの横枝管接続部3とからなる上部部材11と、本体部2の中間部を構成する中間部材12と、本体部2の下端部を構成する下部部材13との3つの継手構成部材が組み立てられ接着一体化されることによって得られる。
【0056】
詳しく説明すると、上部部材11は、熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物によって成形されていて、図2に示す排水立管4の下端が嵌合接続される受口形状の上部立管接続部(なお、図1ではパッキン等が省略されている)11aと、本体部上側筒部11bと、この本体部上側筒部11bの側面に2つの横枝管接続部3が本体部上側筒部11bと連通した状態で一体に設けられている。
横枝管接続部3の連通部である本体部上側筒部11bは、上記排水立管4の内径より大きな内径の筒状をしていて、内面に傾斜板21と、堰き止め板22とが設けられているとともに、下端に内周面が受口形状に形成された中間部材12の嵌合部11cを備えている。
【0057】
傾斜板21は、本体部2の管軸に対し、20°〜65°の角度に傾斜して設けられているとともに、排水立管の内径断面積(S)に対する投影面積(sk)の割合(sk/S、以下、「投影面積比」ともいう) が0.05〜0.30となっている。
堰き止め板22は、本体部2の管軸に対し、−30°〜20°の傾斜角度となるように設置されるとともに、堰き止め板22下端部の本体部2下端からの高さが、傾斜板21下端部の本体部2下端からの高さと同じ又は150mm以下の範囲で低く、かつ、堰き止め板22下端部から傾斜板21への管軸に対して直交方向の距離が20〜80mmとなるように設けられている。
【0058】
下部部材13は、熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物によって成形されていて、後述する中間部材12の嵌合部13aを上端に備え、この嵌合部13aの下側に、接続される排水立管の内径とほぼ同じ内径になるように下側に向かって徐々に縮径するテーパ筒部13bが設けられ、テーパ筒部13bの下側に受口形状の下部立管接続部13cが設けられている。
テーパ筒部13bの内面には、複数の旋回羽根13d(図では1つしかあらわれていない)が設けられている。
【0059】
中間部材12は、床スラブ貫通部となり、図3に示すように、耐火熱膨張樹脂組成物からなる耐火膨張層12aの内面および外面が被覆層12b、12cで被覆された3層構造で、管軸方向の長さが350mm〜600mmの押出成形された耐火熱膨張性樹脂パイプである。
【0060】
耐火膨張層12aを構成する耐火熱膨張樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、pHが1.5〜4.0に調整された熱膨張性黒鉛が1〜15重量部、安定剤が0.3〜5.0重量部の割合で配合されている。
被覆層12b、12cは、それぞれ、熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる。
そして、上部部材11、中間部材12および下部部材13は、中間部材12の上端部が上部部材11の嵌合部11cに塩化ビニル樹脂用接着剤を介して嵌合され、中間部材12の下端部が下部部材13の嵌合部13aに塩化ビニル樹脂用接着剤を介して嵌合されることによって接着一体化されている。
【0061】
この排水集合継手1aは、図2に示すように、横枝管接続部3の下端が床スラブ5の上端面に設置されるとともに、本体部2の中間部材12で形成された部分が床スラブ5の貫通孔51を貫通するように配置され、貫通孔51と中間部材12との隙間にモルタル52を充填した状態で設置され、従来の排水集合継手と同様に単管式排水管路の一部を構成する。なお、図2中、6は横枝管であり、非耐火性樹脂管としての塩化ビニル樹脂管である。立管4も非耐火性樹脂管としての塩化ビニル樹脂管である。
そして、この排水集合継手1aは、上部部材11、中間部材12および下部部材13からなり、すべて樹脂組成物によって形成されているので、軽量で施工性に優れている。また、製造コストも低減できる。
【0062】
そして、床スラブ貫通部となる中間部材12が、耐火膨張層12aを厚み方向の中間に備えているので、床スラブ5を挟んでいずれかの階で火災が発生した場合でも、熱膨張性黒鉛の熱膨張によって、スラブ貫通孔51内において、中間部材12が閉塞状態となり遮炎することができる上、中間部材12とその外周のモルタルとのシール効果を発現でき、床スラブ5の上の階或いは下の階へ火炎や煙が回るのを効果的に阻止することができる。
【0063】
また、耐火膨張層12aだけでなく、被覆層12b、12cも自己消火性を有するポリ塩化ビニル系樹脂を含んでいるので、燃焼速度の遅延が効果的に行われ、燃焼時の火炎の伝播速度を抑えることができる。さらに、ポリ塩化ビニル系樹脂は、燃焼初期に発泡する性質があるため、熱膨張性黒鉛が膨張しやすいという利点がある。
さらに、熱膨張性黒鉛として、pH1.5〜4.0に調整されているものを用いているので、ポリ塩化ビニル系樹脂の塩化水素脱離反応が促進され、ポリ塩化ビニル系樹脂の炭化がより一層効果的に促進され、耐火性が向上する。
【0064】
なお、耐火膨張層12aの管軸方向の長さは、スラブ貫通孔51内で熱膨張して閉塞できれば、スラブ貫通孔51の全長より短くても構わないが、スラブ貫通孔51の全長にわたって配置されることが好ましい。したがって、上記のように、中間部材12を350mm〜600mm程度の長さとすれば、通常使用されている200mmの厚みのコンクリートスラブはもとより、350mm厚のコンクリートスラブにも対応できる。
【0065】
さらに、傾斜板21、堰き止め板22および旋回羽根13dを備えているので、流下する排水を安定して排水立管路内面に沿う旋回流として、排水の暴れによる各衛生機器のトラップの破封を防止することができ、優れた排水性能を確保できる。
【0066】
図4は、本発明にかかる排水集合継手の第2の実施の形態をあらわしている。
図4に示すように、この排水集合継手1bは、上部部材16の下端部に接続される排水立管の内径とほぼ同じ内径になるように下側に向かって徐々に縮径するテーパ筒部16aが形成され、中間部材12が排水立管の内径とほぼ同じ内径になっている。また、下部部材18が、旋回羽根を内面に備えていないソケット形状をしている以外は、上記排水集合継手1aと同様になっている。
【0067】
図5は、本発明にかかる排水集合継手の第3の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この排水集合継手1cは、上部部材16の下端部に接続される排水立管の内径とほぼ同じ内径になるように下側に向かって徐々に縮径するテーパ筒部16a、が形成され、上記中間部材12の内径が接続される排水立管とほぼ同じ内径となっているとともに、図において破線で示すように、受口構造になった下部部材19がその上端面と、中間部材12の下端面とを突き合わせた状態で超音波融着されて、中間部材17の下端に一体化されている以外は、上記排水集合継手1bと同様になっている。
【0068】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、中間部材12は耐火熱膨張性樹脂組成物層の内面および外面を覆うように被覆層を備えていたが、
被覆層は内面および外面のいずれか一方に設けられていてもよいし、無くても構わない。
上記の実施の形態では、立管接続部が受口形状であったが、フランジ式の接続構造でも構わない。
上記の実施の形態では、横枝管接続部が2つであったが、横枝管接続部は1つでも3つ以上でも構わない。
また、耐火熱膨張性樹脂パイプは、内面に螺旋溝が形成されていても構わない。
【0069】
以下に、本発明の具体的な実施例を説明する。
【0070】
(実施例1〜実施例31、比較例1)
以下の表1〜表5に示す組成の単層構造の外径114mm、厚さ6.6mm、呼び径100Aのパイプを、一般的に用いられる押出成形機による押出成形によって得た。
なお、表1〜表5に示す実施例おいて、各層を構成する樹脂組成物の配合材料としては、以下のものを使用した。
塩化ビニル樹脂 ・・・徳山積水工業社製、商品名TS1000R
ステアリン酸鉛 ・・・水澤化学社製、商品名StabinexNC18
オクチル錫メルカプト ・・・三共有機社製、ONE-100F
Ca/Zn系複合安定剤 ・・・堺化学社製、商品名NWP-6000
滑剤 ・・・三井化学社製、商品名ハイワックス4202E
炭酸カルシウム(無機充填剤) ・・・白石カルシウム社製、商品名ホワイトンSB
水酸化マグネシウム(無機充填剤) ・・・協和化学工業社製、商品名KISUMA5A
ハイドロタルサイト ・・・協和化学工業社製、商品名DHT-4A
エポキシ化大豆油 ・・・ADEKA社製、商品名アデカサイザー O130P
熱膨張性黒鉛 ・・・東ソー社製、品番GREP-EG
【0071】
(実施例32〜実施例80)
以下の表6〜13に示す組成の耐火膨張層の内外面の少なくともいずれかに被覆層を備える複層構造の外径114mm、厚さ6.6mm、呼び径100Aのパイプを、一般的に用いられる押出成形機による共押出成形によって得た。
なお、表6〜13に示す実施例おいて、各層を構成する樹脂組成物の配合材料としては、以下のものを使用した。
塩化ビニル樹脂 ・・・大洋塩ビ社製、商品名TH1000
鉛系安定剤 ・・・堺化学社製、商品名SL-1000
滑剤 ・・・三井化学社製、商品名ハイワックス4202E
炭酸カルシウム(無機充填剤) ・・・白石カルシウム社製、商品名ホワイトンSB
水酸化マグネシウム(無機充填剤) ・・・協和化学工業社製、商品名KISUMA5A
ハイドロタルサイト ・・・協和化学工業社製、商品名DHT-4A
エポキシ化大豆油 ・・・ADEKA社製、商品名アデカサイザー O130P
熱膨張性黒鉛 ・・・東ソー社製、商品名GREP-EG
【0072】
上記実施例1〜80および比較例1において作製したパイプについて、それぞれ以下に示す耐火性評価および物性評価を行い、その結果を表1〜表8に併せて示した。また、複層構造のものにおいては、各層の厚みおよび厚み比も示した。
【0073】
(耐火性評価)
図6に示す耐火試験炉Xにより、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法,ISO834-1に従う)を実施した。
床材Yは、100mm厚さのPC(プレキャストコンクリート)パネルを用いた。試験用パイプPは、床材Yに設けられた区画貫通部Rに貫通させ、加熱室Z内に300mm露出させ、床材Yの外部に800mm露出させた。
なお、加熱室Zの側壁にはバーナーV,Vが設置されている。また、試験用配管材Pの先端部近傍に温度測定用の熱電対Qが設置されている。
加熱開始後、区画貫通部Rと試験用配管材Pとの隙間から煙が出るまでの時間(発煙時間)を測定した。消防法の令8区画の判定基準に従って、発煙時間を調べた。
【0074】
(物性評価)
上記(実施例1)〜(実施例80)および(比較例1)で得られたパイプから任意にダンベル試験片を切り出し、得られた試験片について、JISK7113に準拠して引張試験(評価温度23℃)を行った。なお、管としての実用的な性能を満たしているかを判定するため、23℃で引張強度が45(MPa)以上のものを◎(優秀)、30(MPa)以上のものを○(合格)、30(MPa)未満のものを×(不合格)とした。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
【表6】

【0081】
【表7】

【0082】
【表8】

【0083】
【表9】

【0084】
【表10】

【0085】
【表11】

【0086】
【表12】

【0087】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明にかかる排水集合継手の第1の実施の形態をあらわす断面図である。
【図2】図1の排水集合継手の施工状態を説明する図である。
【図3】図1の排水集合継手の中間部材を拡大してあらわす断面図である。
【図4】本発明にかかる排水集合継手の第2の実施の形態をあらわす断面図である。
【図5】本発明にかかる排水集合継手の第3の実施の形態をあらわす断面図である。
【図6】実施例で得たパイプの耐火試験の方法を説明する図である。
【図7】従来の排水立管路の施工構造を説明する図である。
【符号の説明】
【0089】
1a、1b、1c 排水集合継手
11、16 上部部材(他の部材)
12 中間部材(床スラブ貫通部および耐火性樹脂組成物層)
12a 耐火膨張層
12b、12c 被覆層
13 下部部材(他の部材)
17 中間部材(床スラブ貫通部および耐火性樹脂組成物層)
18 下部部材(他の部材)
19 下部部材(他の部材)
11a 立管接続部
11b 本体部上側筒部(連通部)
13a、16a テーパ筒部
13c 立管接続部
2 本体部
21 傾斜板
22 堰き止め板
3 横枝管接続部
4 排水立管
5 床スラブ
51 スラブ貫通孔
6 横枝管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水立管が接続される上下の立管接続部と、床スラブを貫通して配置されるスラブ貫通部とを有する本体部と、この本体部の前記スラブ貫通部より上方に連通して設けられた少なくとも1つの横枝管接続部とを備え、少なくとも本体部の横枝管接続部の連通部が前記排水立管の内径より大径の筒状をしているとともに、この大径筒状部より下方に接続される排水立管の内径とほぼ同じ内径になるように下側に向かって徐々に縮径するテーパ筒部を有する排水集合継手おいて、
複数の継手構成部材を組み立てて形成され、前記複数の継手構成部材のうち、少なくとも前記スラブ貫通部を構成する継手構成部材が、耐火熱膨張性樹脂組成物からなる管状をした耐火膨張層を少なくとも備える耐火熱膨張性樹脂パイプで形成されていることを特徴とする排水集合継手。
【請求項2】
耐火熱膨張性樹脂パイプが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜10重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層の単層構造である請求項1に記載の排水集合継手。
【請求項3】
耐火熱膨張性樹脂パイプが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜15重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層と、この耐火膨張層の内外面を覆うように設けられる熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる被覆層とからなる3層構造である請求項1に記載の排水集合継手。
【請求項4】
全ての継手構成部材が樹脂製である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の排水集合継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−57705(P2009−57705A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223577(P2007−223577)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】