説明

排泄物処理装置

【課題】切り返し機前後の堆積物の高さを均等にして処理作業を効率良く行える排泄物処理装置を提供する。
【解決手段】発酵槽A・Bの上方を移動する移動台Eに発酵槽内の排泄物等の混合物を上下方向で攪拌すると共に前記移動台Eの移動方向で後方へ搬送するための攪拌翼2を有する切り返し機Dと、切り返し機Dの攪拌翼2よりも移動台Eの移動方向で後側に配置され切り返し機Dで攪拌搬送された前記混合物を再度攪拌して移動台Eの移動方向で後方側へ搬送する回転翼4とを設け、攪拌翼2と回転翼4による2回の攪拌搬送動作を行ない、切り返し機により上下方向に攪拌され堆積する混合物を回転翼4により再度攪拌搬送して、混合物の高さを均一化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糞尿・汚泥等の発酵堆肥化処理をする排泄物処理装置に関し、特に、排泄物等を攪拌する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の排泄物処理装置は、単に微生物の作用により排泄物中の易分解性物質を分解除去すると同時に、難分解性物質である繊維を腐植物質まで変形し安定化させるために、送風装置で下部より通気させる発酵槽の上口両側壁に走行用レールを敷設し、該走行用レールに沿って走行する走行台車に移動台を載設し、該移動台には切り返し機を搭載して、該切り返し機に下端が発酵槽の底面に近接するように旋回する撹拌翼を装備させ、前記切り返し機で発酵槽内の排泄物等を切り返しながら発酵槽に設けられたリミットスイッチにより移動台を移動させて、2つの槽を順に終端側から始端側へ撹拌運動するようにしたものであった。
【0003】
また、特許文献1には、1つの発酵槽内の培地を排泄物と共に円周方向に攪拌するだけでなく上下方向にも攪拌する攪拌アームを備えた排泄物処理装置も開示されている。
【特許文献1】特開2004−97947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の排泄物処理装置において、排泄物等の処理物は撹拌翼で掻き上げられて高く堆積されるため、排泄物などの処理物が撹拌翼側に滑り落ち、再度撹拌を繰り返して処理作業を遅延する等の欠点があった。
【0005】
本発明は、上記欠点を解消し、すなわち処理作業の遅延を改善し、切り返し機前後の堆積物の高さを均等にして処理作業を効率良く行える排泄物処理装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る排泄物処理装置は、発酵槽の上方を移動する移動台に発酵槽内の排泄物等の混合物を上下方向で攪拌すると共に前記移動台の移動方向で後方へ搬送するための第1の攪拌手段と、前記第1の攪拌手段よりも移動台の移動方向で後側に配置され前記第1の攪拌手段で攪拌搬送された前記混合物を再度攪拌して移動台の移動方向で後方へ搬送する第2の攪拌手段とが設けられたことを特徴としている。
【0007】
上記構成においては、発酵処理しようとする排泄物等の混合物を発酵槽へ投入堆積させた後、この堆積物を第1の攪拌手段で上下方向で攪拌粉砕しながら、移動台の移動方向で後方に搬送する。堆積物は第1の攪拌手段で攪拌搬送された後、さらに、その後側に設けられた第2の攪拌手段で再度混合物を攪拌搬送する。そのため、第1の攪拌手段と第2の攪拌手段により2回の攪拌搬送動作を行うことができる。また、第1の攪拌手段により上下方向に攪拌され堆積する混合物を第2の攪拌手段により再度攪拌搬送するので、混合物の高さを均一化することができ、排泄物処理作業を効率良く行える。
【0008】
第1の攪拌手段は、前記移動台に発酵槽の上方から底部側にかけて後方に傾斜して設けられた傾斜体と、該傾斜体の上下部に配置された上下のロールに掛け巻きされて旋回しながら前記排泄物等の混合物を掻き揚げる複数枚の攪拌翼とを備えた切り返し機から構成することができる。
【0009】
上記構成においては、発酵槽の上方から底部側にかけて後方に傾斜して設けられた傾斜体に沿って攪拌翼が旋回するため、攪拌翼で発酵槽の底部から掻き揚げられた混合物は、移動台の移動方向で後方に移送されることになり、その移送終端部(後方側)で発酵槽内に落下することになる。この落下した混合物を第2の攪拌手段で再度攪拌して後方へ搬送することになる。
【0010】
第2の攪拌手段は、前記移動台の移動方向に直交する軸周りに回転可能で、発酵槽内の混合物の表層側で回転する回転翼から構成することができる。堆積混合物の表層側で回転翼が回転するため、必要以上に堆積した混合物を攪拌して後方に搬送することができ、これにより堆積物を均等な高さにすることができる。
【0011】
また、第2の攪拌手段である回転翼は、攪拌翼の移送終端部の下方位置に配置すれば、攪拌翼の移送終端部から落下した混合物を回転翼で捕らえて攪拌し、これを効率良く後方に搬送することができる。
【0012】
さらに、第2の攪拌手段を発酵槽内の排泄物等の混合物の高さに応じて駆動するようにすれば、混合物を均等な高さにすることができる。この場合、混合物の高さは目視で確認する、あるいは高さ感知センサを使用するなど、種々の方法で高さを確認することができる。高さの確認をセンサーで自動的に行う場合の構成としては、発酵槽内の排泄物等の混合物の高さを感知するセンサーと、該センサーからの信号を受けて前記排泄物等の混合物の高さに応じて前記第2の攪拌手段を駆動制御する制御部とが設けられた構成を例示することができる。この場合、回転翼の駆動は、その回転速度を変化させるようにすることもできる。なお、第2の攪拌手段は、常時駆動させる方式であってもよい。
【0013】
また、移動台は、発酵槽の上方を移動するものであるならば、前後方向及び左右方向のいずれか一方あるいは両方のいずれであってもよい。例えば、前後方向及び左右方向に移動させる態様としては、発酵槽の上口両側壁縁に敷設された走行用レールと、該走行用レールに載設された走行台車と、該走行台車に載設され走行台車の走行方向と直交する方向に移動する移動台とを備えた構成が挙げられる。この場合の移動台は、車輪付きのもの、あるいはレールと係合する係合部を備えるもののいずれであってもよい。さらに、移動台は、円周方向に移動するものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、本発明によると、第1の攪拌手段により攪拌搬送された混合物を、第2の攪拌手段により、再度、後方へ撹拌搬送させることができるので、1回の操作で混合物を最大限に移送堆積及び撹拌粉砕を行うことができ、排泄物等の処理量を増大させて良好な状態で排泄物等の発酵堆肥化処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態である排泄物処理装置の要部を示す平面図、図2は同じく移動台の側面図、図3は同じく移動台上の切り返し機の格納状態を示す側面図、図4は排泄物処理装置の縦断正面図、図5は同じく全体を示す平面図である。
【0016】
図に示すように、排泄物処理装置は、両側壁を有する直方体形の発酵槽A・Bと、その上口両側縁に敷設された走行用レール1と、該走行用レール1に載設された走行台車Cと、走行台車Cに載設された移動台Eと、移動台Eに装備され発酵槽内の排泄物等の混合物を上下方向で攪拌すると共に前記移動台Eの移動方向で後方へ搬送する第1の攪拌手段としての切り返し機Dと、切り返し機Dよりも移動台Eの移動方向で後側に配置され切り返し機Dで攪拌搬送された混合物を再度攪拌して後方へ搬送する第2の攪拌手段としての回転翼4とを備えている。
【0017】
発酵槽A・Bは、図4及び図5に示すように、両側壁の上縁に一対の走行レール1が敷設されている。また、発酵槽A・Bの底部には、空気を送り込む配管15が配設され、発酵槽A・Bの下部より通気させる送風装置が設けられている。
【0018】
走行台車Cは、矩形枠状に形成され、その左右両側の枠体の下部に走行用モーター8で駆動される走行車輪16を備え、発酵槽A・Bの終端側Hと始端側Gとの間で前後方向に走行できるようになっている。
【0019】
移動台Eは、矩形枠状に形成され、その前後の枠体の下部に移動用モーター9で駆動される移動車輪10が設けられ、該移動車輪10が走行台車Cの左右方向に横架された枠の上を走行可能とされている。
【0020】
第1の攪拌手段を構成する切り返し機Dは、図2に示すように、前記移動台Eに発酵槽A・Bの上方から底部側にかけて後方に傾斜して設けられた傾斜体Fと、該傾斜体Fの上下部に配置された上下のロール6,7に掛け巻きされた左右一対のチェーン12と、該チェーン12間に差し渡しされ、かつチェーンの長さ方向で間隔をおいて複数配置された複数枚の攪拌翼2とを備え、前記攪拌翼2が上下のロール6,7間を旋回しながら前記排泄物等の混合物を移送始端部イ側から移送終端部ロ側に掻き揚げるようにしている。
【0021】
上ロール6は、移動台Eに載架された搬送用モーター5にチェーンなどの伝動機構を介して連結され、攪拌翼2を旋回させるようになっている。また、上ロール6の回転軸は傾斜体Fの回動軸としても機能し、移動台Eに載架された昇降用モーター17と、該モーター17から傾斜体Fに接続された昇降用ワイヤーにより、傾斜体Fを上ロール6の回動軸周りに上下方向に回動して傾斜体Fを昇降できるようになっている。
【0022】
第2の攪拌手段を構成する回転翼4は、図2に示すように、枠状の移動台Eに左右方向で差し渡された回転軸の周囲に軸方向に沿って間隔をおいて複数枚配設され、移動台Eに載設された回転翼モーター11により、前方で掻き揚げた混合物をその回転力を利用して後方に攪拌搬送できるようになっている。
【0023】
回転翼4は、攪拌翼2の移送終端部の下方位置に配置されている。換言すれば、回転翼4は、傾斜体Fの上ロール6の下方位置に配置され、旋回して移送終端部ロに達した攪拌翼2の下方位置で搬送されてきた混合物の落下位置に配置されることになる。
【0024】
この回転翼4は、移動台Eの進行方向で前面側に設けた高さ感知センサー3と、該高さ感知センサー3からの信号を受けて回転翼モーター11を駆動制御する制御部13とにより、発酵槽A・B内の排泄物等の混合物高さに応じて駆動される。
【0025】
高さ感知センサー3は、受発光素子などからなる距離センサーにより混合物高さを感知できるようになっている。制御部13は、高さ感知センサー3からの信号を受けて演算し、その値が所定値に達したときに回転翼モーター11に駆動信号を出力する。
【0026】
回転翼モーター11は、混合物の高さに応じて、その回転速度を変化させることができるようになっている。
【0027】
なお、図中、走行台車Cには尿散布ポンプ14が搭載され、配管から尿を発酵槽内にサンプできるようになっている。
【0028】
上記構成において、発酵処理しようとする排泄物等を発酵槽A・Bへ投入堆積し、終端側Hと始端側Gとの間を走行用モーター8により走行台車Cを往復させると、切り返し機Dが堆肥原料の排泄物等と乾燥物を徐々に切り返し、満遍なく酸素を供給し混合撹拌する。これにより発酵堆肥となり、取り出し側へ搬出される。
【0029】
そして、走行台車Cが走行レール1上を走行し、発酵槽Aを切り返し機Dで撹拌しながら始端側Gまで走行すると、リミットスイッチで停止する。走行台車Cを停止した後、図4に示すように、切り返し機Dを昇降用モーター17により上昇させ、次いで、走行用モーター8により走行台車Cを後進させながら、移動台Eを移動用モーター9により図5のハからニ(A槽からB槽)へ移動させ、発酵槽Bの終端側Hへ走行台車Cを後進させた後、停止させる。
【0030】
その後、切り返し機Dを昇降用モーター17により下降した後、走行用モーター8により発酵槽Bを撹拌搬送移動し始端側Gまで走行させた後に停止させ、再び、切り返し機Dを上昇させる。その後、走行台車Cを終端側Hへ後進させながら、移動台Eを図5のホからヘ(B槽からA槽)へ移動させ、出発地点で全停止する。
【0031】
このように、移動台Eは、始端側Gから終端側Hへ後進中に、切り返し機Dを発酵槽A・B間に移動させる。移動台Eは、切り返し機Dの下端が発酵槽A・Bの底面に近接するように装備する撹拌翼2で、混合物を移送始端部イより傾斜体Fを介して移送終端部ロへ掻き揚げる(図2参照)。
【0032】
この場合、従来装置においては、撹拌翼2で掻き上げられた処理物は、撹拌翼2側へ滑り落ちて再度移送始端部イより掻き上げられて攪拌を繰り返していたが、本実施形態では、移動台Eの前面に混合物の高さ感知センサー3を取り付け、発酵槽A・Bの処理物の高さを感知し、自動で後側の回転翼4を起動及び回転速度を変化させて移送始端部イより移送終端部ロに掻き上げられ放出された混合物を、再度後方へ撹拌搬送する。そのため、処理作業が効率良く行われ、作業の遅延を防止することができる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多くの修正・変更を加えることはできるのは勿論である。例えば、上記実施形態では、回転翼の駆動を堆積物高さ感知センサーによる自動制御で行っているが、これに限らず、目視による確認により、回転翼モーターを駆動するようにしてもよい。また、感知センサーは上記実施形態では移動台Eの前面に配設したが、その以外の位置に配置してもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る排泄物処理装置の要部平面図
【図2】移動台を一部断面で示す側面図
【図3】切り返し機の格納状態を示す側面図
【図4】排泄物処理装置の一部を切欠した縦断正面図
【図5】同じく全体平面図
【符号の説明】
【0035】
A・B : 発酵槽
C : 走行台車
D : 切り返し機
E : 移動台
F : 傾斜体
G : 始端側
H : 終端側
1 : 走行用レール
2 : 撹拌翼
3 : センサー
4 : 回転翼
5 : 搬送用モーター
6 : 上ロール
7 : 下ロール
8 : 走行用モーター
9 : 移動用モーター
10 : 移動車輪
11 : 回転翼モーター
12 : チェーン
13 : 制御部
14 : 尿散布ポンプ
15 : 送風装置
16 : 走行車輪
17 : 昇降用モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵槽の上方を移動する移動台に発酵槽内の排泄物等の混合物を上下方向で攪拌すると共に前記移動台の移動方向で後方へ搬送するための第1の攪拌手段と、前記第1の攪拌手段よりも移動台の移動方向で後側に配置され前記第1の攪拌手段で攪拌搬送された前記混合物を再度攪拌して移動台の移動方向で後方へ搬送する第2の攪拌手段とが設けられたことを特徴とする排泄物処理装置。
【請求項2】
前記第1の攪拌手段は、前記移動台に発酵槽の上方から底部側にかけて後方に傾斜して設けられた傾斜体と、該傾斜体の上下部に配置された上下のロールに掛け巻きされて旋回しながら前記排泄物等の混合物を掻き揚げる複数枚の攪拌翼とを備えた切り返し機から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の排泄物処理装置。
【請求項3】
前記第2の攪拌手段が、前記移動台の移動方向に直交する軸周りに回転可能で、発酵槽内の混合物の表層側で回転する回転翼から構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の排泄物処理装置。
【請求項4】
前記第2の攪拌手段が、前記攪拌翼の移送終端部の下方位置に配置されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の排泄物処理装置。
【請求項5】
前記第2の攪拌手段が、発酵槽内の排泄物等の混合物の高さに応じて駆動されることを特徴とする請求項2,3又は4に記載の排泄物処理装置。
【請求項6】
発酵槽内の排泄物等の混合物の高さを感知するセンサーと、該センサーからの信号を受けて前記排泄物等の混合物の高さに応じて前記第2の攪拌手段を駆動制御する制御部とが設けられたことを特徴とする請求項2,3又は4に記載の排泄物処理装置。
【請求項7】
発酵槽の上口両側壁縁に敷設された走行用レールと、該走行用レールに載設された走行台車と、該走行台車に載設され走行台車の走行方向と直交する方向に移動する移動台とを備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の排泄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−167492(P2006−167492A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358948(P2004−358948)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(504456204)株式会社ナカミチ技研 (2)
【Fターム(参考)】