説明

排泥処理用加圧式分級装置及びそれを用いた排泥処理方法

【課題】加圧式分級装置及びそれを用いた排泥処理方法として、排泥を前処理した凝集物の固化処理を効率よくかつ安定して行うことを可能にし、また、凝集物を水分分離しつつ連続的に硬固化体に処理できるようにする。
【解決手段】セメントを含む排泥に凝集剤液を混練した略カンテン状の凝集物、又は該凝集物から水分の一部を分離除去したものを取り入れて加圧することにより水分を分離して硬固化体に処理する分級装置において、前後に連通する横長状ケーシング51と、前記ケーシングの前面開口を開閉可能に閉止する蓋体52と、前記ケーシング51の内部に摺動可能に挿入された押圧体53と、前記押圧体53の後部側に一端を連結し、前記押圧体を所定の加圧速度で前進移動させたり、最前進位置から待機位置に後退する駆動手段54と、前記蓋体52を閉止状態に保持したり開放状態に切り替える開閉手段56とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象が地盤改良等で発生した排泥のうち、特に再利用し難いセメントを含む排泥を工事現場にて連続的に固化処理する上で好適な排泥処理用混練装置及びそれを用いた排泥処理方法に関する。なお、本明細書において、「セメント」はセメント系改良材を意味し、セメント類似物質を含む広義なものである。「凝集剤液」は凝集剤を水などに溶解したものを意味し、通常は凝集剤と助剤と水とで構成されている。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工法では、セメント系の改良材を地盤に貫入したり引き抜かれる撹拌軸に沿って供給し地中に噴射して原位置土と混合し地盤強度を改良することがある。この工法では、地中に噴射された改良材のうち、一部が撹拌軸に沿って地表側に軸周りの土などと共に上昇排出される。この排泥は、セメントを含むために、一般的には再利用されることなく産業廃棄物として搬出処理されている。
【0003】
以上のような排泥は、含水比が高いため容量が増し、その分運搬費がかかり改良施工費に対する産廃処理費が割高なものとなっている。対策としては、排泥から水分を簡単に脱水したり分離できれば、水の再利用が可能となるだけではなく、脱水後の残滓も減容化されるため運送総量の減少により運搬経費も安価となる。ところが、従来の脱水装置ないしは分級装置としては、フィルタプレスがあるが、この装置を用いた方法だと、フィルタにセメントが固着するため、目詰りが発生し、脱水能力の低下とメンテナンスに煩わされ、装置そのものが大きく広い設置場所を必要とする。
【0004】
これに対し、下記特許文献1の泥水分離方法は、泥水に凝集剤及び分離剤を添加して攪拌し、前記泥水中の泥を固まりにした後、固まりとなった泥を通さず、水を通す水抜き部に前記泥水を通して泥と水とを分離するものである。泥水分離装置としては、泥水を収容可能な箱体に、泥が固まりとなった状態の泥水を内部に導入するための導入部と、水を通し、前記泥の固まりを通さない水抜き部と、内部に圧縮空気を供給する供給手段と、箱体の内外にわたる空気の流通を可能にする空気流通部とを設けたものである。また、前記水抜き部は箱体の側面に設けられており、この側面が下向きに近づくように箱体を傾斜させる傾斜装置を用いて水抜きを行うようになっている。
【特許文献1】特開2004−337757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献1の方法及び装置では、泥水が本発明の排泥に相当しているが、排泥に凝集剤及び分離剤とを混練した凝集物を箱体に入れ、該箱体を傾斜させて圧縮空気や重力により凝集物から水を抜くようにしているため、箱体を大きくすると傾斜装置の馬力も大きく必要となり、処理対象の排泥が多くなると作業効率が悪く、処理能力に欠けたり経費も増大する。しかも、この文献1のものは、排泥を凝集剤などとともにミキサー車で略カンテン状の凝集物に処理したとしても、凝集物の性状が安定しないため水抜き部を構成している網状体の網目等の設定が難しくなる。
【0006】
本発明は以上のような課題を解決するものである。その目的は、排泥を前処理した凝集物の固化処理を効率よくかつ安定して行うことを可能にし、また、凝集物を水分分離しつつ連続的に硬固化体に処理できるようにし、工事現場で発生する排泥の減容化や減量化を図る上で好適な加圧式分級装置及びそれを用いた排泥処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、図面の例で特定すると、セメントを含む排泥に凝集剤液を混練した略カンテン状の凝集物、又は該凝集物から水分の一部を分離除去したものを取り入れて加圧することにより水分を分離して硬固化体に処理する分級装置において、前後に連通する横長状ケーシング51と、前記ケーシングの前面開口を開閉可能に閉止する蓋体52と、前記ケーシング51の内部に摺動可能に挿入された押圧体53と、前記押圧体53の後部側に一端を連結し、前記押圧体を所定の加圧速度で前進移動させたり、最前進位置から待機位置に後退する駆動手段54と、前記蓋体52を閉止状態に保持したり開放状態に切り替える開閉手段56とを備えていることを特徴としている。
【0008】
以上の加圧式分級装置では次のように具体化することがより好ましい。
・前記凝集物又は該凝集物から水分の一部を分離除去したものをケーシング内に落下方式で投入可能な比較的大きな取入口50を前記ケーシング51の上面に形成していること(請求項2)、
・前記ケーシング51の両側面及び底面並びに前記蓋体52に開口部を形成し、前記各開口部にスリット形状の水抜き用部材59を装着していること(請求項3)、
・前記押圧体53の前面に開口部を形成し、前記開口部にスリット形状の水抜き用部材59を装着していること(請求項4)、
・前記水抜き用部材59が、前記開口部に脱着可能に装着される枠体62と、該枠体内に並設されて棒同士の間に所定幅のスリットを区画している多数の棒材63とからなること(請求項5)である。
【0009】
これに対し、請求項6の発明は、混練手段25によりセメントを含む排泥に所定割合で凝集剤液を添加混練して略カンテン状の凝集物に処理する混練工程と、分級手段により前記混練工程で処理された凝集物から水分を分離する分級工程とを経る排泥処理方法において、前記分級手段として、請求項1から5の何れかに記載の加圧式分級装置27を使用し、かつ前記分級装置27を前記混練手段25の下側に配設して、前記混練手段で処理された前記凝集物を直接又はシュート等を介して落下作用にて前記分級装置27側へ移送することを特徴としている。
【0010】
以上の排泥処理方法では、前記混練手段25と前記加圧式分級装置26との間に配設されて、前記凝集物に振動を加えつつ水分を分離する振動式分級装置27を有していること(請求項7)が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
・請求項1の発明装置では、ケーシング内に投入された凝集物を、駆動手段を介して押圧体を前進移動することにより押圧体と蓋体との間に加圧圧縮しつつ固化体内の水分を押出すため脱水ないしは分級効率がよく、また押圧体の前進量により圧縮程度を任意に設定して対象凝集物に合致した加圧力で水分分離でき、しかも凝集物が最終的に略ペレット状の硬固化体に処理され、蓋体を開放状態にして押圧体の前進にてケーシング前面開口から排出可能なため作業性を向上できる。
・請求項2の発明装置では、前工程で作られた凝集物をケーシング内に上面の取入口から落下方式で投入可能なため移送用の手段や動力を省略でき、それにより全体の設備を簡略化できる。
・請求項3の発明装置では、凝集物の加圧圧縮過程において、凝集物に内包されている水分が4面(ケーシングを区画している両側面及び底面並びに前面の蓋体)のうち、最も近い水抜き用部材のスリットを通じて絞り出されるため、脱水ないしは分級効率を向上して凝集物の含水率をより低減可能にする。
・請求項4の発明装置では、請求項3に比べて、凝集物に内包されている水分が5面(ケーシングを区画している両側面及び底面並びに前面の蓋体と後面の押圧体)のうち、最も近い水抜き用部材のスリットを通じて絞り出すため、脱水ないしは分級効率を更に向上し、凝集物の含水率もより一層低減可能にする。
・請求項5の発明装置では、水抜き用部材が枠体及び棒材からなるため簡易であり、しかもユニット化されてケーシング、蓋体、押圧体側に着脱可能に装着されることから、例えば、スリット幅の異なるものを予め作っておくことで処理対象の凝集物の性状などに応じて最適な水抜き用部材を簡単に適用できる。
【0012】
・請求項6の発明方法では、以上の分級装置の利点に加え、排泥処理操作として混練手段で処理した凝集物を次工程である分級手段に落下作用で移送するため、処理経費を抑えかつ装置構成を簡略化できる。
・請求項7の発明方法は、処理対象の凝集物を、振動式分級装置により凝集物から水分の一部を分離した後、加圧式分級装置により最終的な水分分離を行う。この利点は、例えば、連続処理を行うような場合に加圧式分級装置(バッチ処理)の処理を短くして、各装置の待ち時間等を極力減らして効率的な処理操作を実現可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。この説明では、全体の概要、凝集剤液、排泥処理設備及び方法、混練装置、振動式分級装置、加圧式分級装置、水抜き用部材の順に詳述する。
【0014】
(概要)図1は本発明と地盤改良工法との関係を示し、符号1はセメントミルク製造プラント、符号2は改良対象地盤の地表部GLに設置された混合撹拌装置、符号15は排泥処理プラント(設備)である。ここで、攪拌混合装置2は、キャタピラ走行式のベースマシン3と、ベースマシン3の先端側に立設された起倒式の鉛直ガイド4と、ガイド4に沿って昇降可能な駆動ヘッド5と、駆動ヘッド5の下部に回転可能に垂設された中空の攪拌軸6と、攪拌軸6の下側外周に配置された複数の攪拌翼7とを備えている。セメントミルク製造プラント1は、サイロ8から供給されるセメント及び水道ないしは排泥処理プラント15で生成される水の供給を受けてセメントミルクを製造する。製造されたセメントミルクは、ポンプ9によりヘッド5の直下に設けたスイベルジョイント5aを介して攪拌軸6内の供給管に圧送され、攪拌軸6の下端側又は攪拌翼7に設けられた噴出口を通じて地中に噴出される。噴射後は、攪拌翼7で原位置土と混合され改良杭10として造成される。
【0015】
以上の造成作業に先立ち、改良位置の地表部付近には、攪拌軸6の貫入予定部に連絡溝11によって連通する、いわゆる釜揚と称される排泥一時貯留ピット12を造成し、またこの貯留ピット12の近傍に排泥処理プラント15を設置しておく。これにより、実施工では、改良杭10の造成に伴い、攪拌軸6に沿って地表部に上昇排出される排泥(セメント−水−土の混合物で、前記噴射口からの噴射量に比例した量)が連絡溝11を通じて貯留ピット12内に貯留される。そして、貯留ピット12内に一時貯留された排泥は、排泥処理プラント15に取り入れられ、該排泥処理プラントで各種処理を行うことにより、水分分離された後、ベルトコンベア16を介してダンプトラックなどの運搬車両17に移し替えられ、産業廃棄物として運搬車両17により運送排出される。すなわち、排泥処理プラント15は、攪拌混合装置1による工事量に比例して排出される排泥を現場処理により固形化し得る処理能力に設定され、前記造成作業と並行して稼働することで施工域の残土処理としても機能する。
【0016】
また、図2は排泥処理プラントの構成を模式的に示している。排泥処理プラント15は、設備本体20と、設備本体20に凝集剤液を供給するための凝集剤液製造プラント21と、前記貯留ピット12内に投入された複数の小型水中ポンプ22(図では1つのみ示している)と、ポンプ22に接続された中継槽23と、中継槽23内にあって、ここに集積された排泥を設備本体20に供給する第2の水中ポンプ24などを備えている。
【0017】
設備本体20には、ポンプ24及び凝集剤液製造プラント21から供給される排泥と凝集剤液を適宜の混合比で混練する混練装置25と、混練装置25の排出端下部に配置された振動式分級装置26と、振動式分級装置26の排出端下部に配置された加圧式分級装置27と、これら各装置及び凝集剤液製造プラント21、ポンプ22や23を連繋させつつ駆動制御するための制御盤(制御装置)28とを具備している。なお、制御盤28と前記各装置とは、破線で例示されるような電気信号線により接続されている。
【0018】
ここで、貯留ピット12内に投入されている小型水中ポンプ22は、大型ポンプを用いる場合に比べて、移動時などの取扱い性に優れているとともに、ポンプ吸込み口の網径がφ2インチであり、第2のポンプ24の網径φ3インチに比べて小さく、これによって排泥を吸引した時点で、排泥中に混在するゴミ、ガラ、砂利、土塊等の粗粒成分は濾過される。しかしながら、このようにすると配管抵抗が上がる。そこで、この形態では、図2の一部に拡大して示すように、配管22a中にエアノズル22bを挿入し、該エアノズル22b中に図示しない気体供給手段からの加圧空気を注入して空気輸送することで、ポンプ22の駆動能力が小さくても、流動抵抗を小さくして中継槽23まで連続輸送可能になるよう工夫されている。
【0019】
図2の排泥処理プラントにおいて、カンテン状凝集物を形成させる為に用いられる凝集剤及び凝集方法は、一般の有機高分子凝集剤並びに無機凝集剤を使用した処理方法を用いても良いが、図8に示されている鋼棒材の間隔dが、3〜6mmに設定していることにより、形成されたカンテン状凝集物が鋼棒材の隙間から漏れることを防ぐ為に通常の脱水装置で必要とされる凝集物より、強く、大きな凝集物を形成する必要がある。
【0020】
(凝集剤液)凝集剤製造プラント21は、処理方法により異なるが以下に示す凝集剤液を作液することができるが、必ずしも本凝集剤液に限定されるものではない。
(1)一液型凝集剤の作液方法及び処理方法
水道水100重量部に対し、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムの少なくとも一種類以上の無機塩を1重量部〜5重量部の範囲で溶解した溶液にアクリルアミド/ジメチルアミノエチルメタリレート塩化メチル4級塩共重合物とアクリルアミドアクリル酸ソーダ共重合物の混合物(テルフロックTG;株式会社テルナイト社製品)を0.5重量部から2.0重量部の範囲で添加したポリマー溶液を作液する。そして、本ポリマー水溶液に含まれるテルフロックTGを粉末換算でセメント混じり排泥中に含まれる乾燥固形分当り0.20〜0.40w/w%の添加率になるように添加、攪拌混合し、カンテン状凝集物を形成せしめる。
(2)二液型凝集剤の作液方法及び処理方法
二液型凝集剤を用いて処理する場合の凝集剤製造プラント21に於ける作液は、ポリマー水溶液のみの作液になる。一方で使用する無機凝集剤は、液体品であるため、そのまま、混練装置25で添加するか、或いは、一旦、別のタンクで希釈して、混練装置25で添加する。ポリマー溶液は、水道水100重量部に対し、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムの少なくとも一種類以上の無機塩を0重量部〜1.0重量部の範囲で溶解した溶液にポリアクリルアミド加水分解物、アクリルアミドアクリル酸ソーダ共重合物、(テルフロックAH、HS-916;株式会社テルナイト社製品)ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリレートの粉末品或いは逆相エマルジョン品を0.5から1.5重量部の範囲で添加し、本ポリマー水溶液に含まれる高分子凝集剤を粉末換算でセメント混じり排泥中に含まれる乾燥固形分当り0.10〜0.40w/w%の添加率になるように添加、攪拌混合し、高粘性のカンテン状物を形成せしめた後、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド溶液を0.10から9.0重量部を添加、攪拌混合し、カンテン状凝集物を形成せしめる。
また、具体例として、上述した何れの処理方法においても100m/1日の排泥を処理する場合には、凝集剤液が20m程度必要となるなど、処理対象の排泥総量に比例して凝集剤液の使用量も多くなる。一般的には凝集剤液を工場で製造して現場に持ち込んでいる。しかし、以上のように使用量が多い場合には、工事現場で製造する方が品質及びコスト的に有利となる。
【0021】
図3は凝集剤液製造プラント21で凝集剤液を製造する手順例を示している。この製造では、最初に、水と無機塩を混合し、所要量の無機塩水溶液を作る。その攪拌時間は10sec以上である。次に、無機塩水溶液に凝集剤を順次添加して溶解させる。なお、この製造では、例えば、凝集剤を急激に溶解させると、ゲル化して、いわゆるダマを作り、均一な凝集剤液にならないので、例えば、凝集剤を少しづつ無機塩水溶液に添加して、所要濃度にまで上げることが好ましい。所定濃度に達した後は、全体を攪拌しつつ養生を行う。養生時間は2時間程度であり、養生後は粘調な液となる。養生後は、排泥処理作業に連動して配管系を通じて設備本体20側へポンプ圧送する。
【0022】
(排泥処理設備及び方法)図4と図5は設備本体20の具体的構造を示している。この設備本体20では、矩形立体枠状のフレーム30上にあって、最上段に前述の混練装置25を配置するとともに、その先端下部に位置して混練装置の25の長手方向と直交して振動式分級装置26を配置し、更に分級装置26の排出端下部に位置して該分級装置26と略平行して加圧式分級装置27を配置している。また、フレーム30には、点検等で使用される階段30aが一側部に設けられているとともに、混練装置25の下側スペースに制御盤28などを配置している。なお、以上の設備本体20は、例えば、全体を10トントラック等に他の機材などとともに積載して搬送可能な容積・重量であり、工事現場に搬送した後、簡単な配線や配管を施すことで直ちに稼働できるよう設計されている。
【0023】
そして、この排泥処理操作では、上記した一液型凝集剤を用いる場合、処理対象の排泥を、ほぼ定量ずつ、且つ凝集液を同時に加えつつ混練装置25に導入して練り混ぜることで、ほぼカンテン状の凝集物に処理できる。一方、二液型凝集剤を用いて処理する場合は、処理対象の排泥を、ほぼ定量ずつ、かつポリマー水溶液を同時に加えつつ混練装置25に導入して練り混ぜ、混練装置25の出口部分で、無機凝集剤の水溶液を添加し、混合することにより、ほぼカンテン状の凝集物に処理できる。その後、カンテン状凝集物を後述する混合装置の排出部から下側の振動式分級装置26に落下する。分級装置26では、受け止めた凝集物に振動を加えて当該凝集物から水分の一部を分離しつつ、凝集物を加振方向である装置一端側から他端側へ移送して、ガイドシュート49内に落下し、該ガイドシュート49を介して加圧式分級装置27に投入可能にする。分級装置27では、分級装置26で水分の一部を分離除去した凝集物を内部に受け入れるとともに、ピストン方式でその凝集物を圧縮して強制的に脱水することで略ペレット状の硬固化体に処理し、前開口を閉じている蓋を開操作することでその硬固化体を外部に押し出す。押し出された硬固化体は、上述したベルトコンベア16を介して運搬車両17側に移し替えられる。また、分級装置26と27で脱水された水は、各分級装置26と27の下方へ流下し、水槽48などに貯留された後、外部に放流されるか、或いは前記セメントミルク製造プラント1や凝集剤液製造プラント21の水として循環使用される。以上のようにして、形態例の排泥処理方法では、処理対象の排泥がペレット状の硬固化体に処理されることで、容積及び重量共に大幅に圧縮され、減容化及び減量化を達成できる。
【0024】
なお、混練装置25で練り混ぜられた直後の凝集物は、排泥が凝集剤液により緩く固化しているだけで、内部に水分が多く含まれているため、分級条件によっては泥水化したりバラバラになってしまうので、予備試験で分級の操作条件を決める必要がある。この点は後述する。
【0025】
(混練装置)この装置細部は次の通りである。すなわち、混練装置25は、一側に排泥受入用ホッパ40を突出している装置本体41と、ホッパ40と装置本体41との間に設けられて排泥を定量づつ装置本体40内に向けて吐出する不図示の定量供給手段と、装置本体41の先端側に設けられて振動式分級装置26の一端側直上に位置している排出部42と有し、両端が軸受部を介し回転自在に支持され、かつモータ等の駆動手段で回転される回転軸を装置本体41及び排出部42内を貫通した状態に配置している。この回転軸には、装置本体41内において受入用スクリュと複数の攪拌翼とが順に軸装され、排出部42内において排出用スクリュが軸装されている。排出部42は、U字形の鋼棒材を多数用いて、各鋼棒材を3〜7mm程度の間隔を保って配列支持したスリット構成であり、処理された凝集物を該スリットから振動式分級装置26に向けて落下供給する。
【0026】
(振動式分級装置)この装置細部は次の通りである。すなわち、この分級装置26は、混練装置25で処理された凝集物を受け入れるケース43及び、ケース43の両側部ほぼ中央に角度調整可能に配設されたバイブレータ46などを備えている。ケース43は、図5から推察されるように、段差状の上面に多数のスリットを形成している水抜き用部材45を有し、かつその下側に不図示の排水経路を形成している。水抜き用部材45は、枠体及び枠体内に並設された複数の棒材からなり、棒材同士の間に所定幅のスリットを区画している。そして、以上のケース43は、例えば、両側面において、左右側に突設された合計4カ所の支軸43aを有し、該各支軸43aをバネ(圧縮バネユニット等)44を介して上記フレーム30内に略水平に吊り込んだ状態で保持されており、混練装置25側より上面の一端側に投入される凝集物を、バイブレータ46の振動で該凝集物から水分の一部を分離しつつ、排出方向である上面の他端側へ移動可能となっている。換言すると、この構造では、バイブレータ46の角度調整によって振動モーメントに移動方向の分力を発生させ、該分力により移動面が水平であっも、前記凝集物を適正な移動速度で上面一端側より他端側へ順次移動させながら水分を分離し、水分の一部が分離された凝集物を加圧式分級装置27の上面開口を通じてその内部に供給するものである。また、水抜き用部材45のスリットから落下した水は、図5に模式的に示すように、ケース43の底面を伝ってその最低側からフレーム30内に配管された縦樋47などを伝ってフレーム30下側に配置された水槽48に一時貯留される。
【0027】
(加圧式分級装置)この装置細部は次の通りである。すなわち、この分級装置27は、図4に示されるように、振動式分級装置26の下側に2機平行配置されている。各分級装置27は、先端側がフレーム30の対応側部から少し突出配置されているが、トラック運搬時にはフレーム30内に摺動されるようになっている。2機使用しているのは、混練装置25及び振動式分級装置26が連続処理を行っているのに対し、分級装置27がバッチ処理となるからであり、両装置27の一方が加圧動作中に他方が凝集物の受入動作を行うことで、前工程とのタクトがとれるようにするためである。そして、この構造において、2機を使用するため、振動式分級装置26の先端と各分級装置27の上側取入口50との間には、図5に模式的に示されるように、下端を逆Y字形に分岐したガイドシュート49が配置され、これを図示しないエアシリンダ等により、図5の紙面と直交する方向に移動させることで、各分級装置27に対する供給切替が可能となっている。
【0028】
図6は前記加圧式分級装置27の平面図及び正面図、図7は同分級装置27を簡略化した概略斜視図である。図において、各分級装置27は、上部に取入口50を開口し、前後に連通する横長状ケーシング51と、ケーシング51の前面開口を開閉可能に閉止する蓋体52と、ケーシング51内に摺動可能に挿入された押圧体53と、押圧体53の後部側に一端を連結し、押圧体53を所定の加圧速度で前進移動させたり、最前進位置から待機位置に後退する動作を行う駆動用シリンダ54と、ケーシング51の先端上部に立設されたコラム55に対し揺動可能に支持され、かつ先端を蓋体52に連結して蓋体52を閉止と開放状態に切り替える開閉用シリンダ56とを備えている。なお、蓋体52は、ケーシング51に対し上側ヒンジ部を介して連結されている。各分級装置27は、ケーシング51の両側部から後部にかけて延在されて、前記駆動用シリンダ54の後端を支持する略コ字形枠体57と、蓋体52の両脇に配置されて蓋体52を閉止状態でロックする対のシリンダ58(図7では省略)とを備えている。
【0029】
ケーシング51の両側面及び底面には、開口部が形成され、各開口部に対しスリットを形成している水抜き用部材59が脱着可能にはめ込まれている。同様に、蓋体52にも開口部が形成され、該開口部に対し水抜き用部材59がはめ込まれている。更に、図7(a)に示されるように、押圧体53の前面にも開口部が形成され、該開口部に対し水抜き用部材59が脱着可能にはめ込まれている。なお、押圧体53は、後部内側に設けられた隔壁60を有し、該隔壁60の後部に前記した駆動用シリンダ54の先端が連結しているとともに、隔壁60の前面下側が開口している。各水抜き部材59は、後述するが、凝集物の圧縮過程で固化体内の水分をスリットを通じて外部に逃すものである。
【0030】
上述した押圧体駆動用シリンダ54、蓋体開閉用シリンダ56及びロック用シリンダ58は、ガイドシュート49を切り替える不図示のシュート切替用シリンダなどとともに、上記した制御盤28からの駆動指令によって制御される。この制御では、例えば、一方の分級装置27が加圧駆動中だと、ガイドシュート49が他方の分級装置27側に切り替えられる。他方の分級装置27において、押圧体駆動用シリンダ54が後退位置、開閉用シリンダ56及びロック用シリンダ58が蓋体52を閉鎖した状態で、凝集物が取入口50を通じてケーシング51内に供給されるようにする。
【0031】
同時並行して、一方の分級装置27においては、シリンダ54が駆動されて押圧体53を前進し、ケーシング51内の凝集物を押圧体53と蓋体52との間で加圧圧縮する。凝集物はその圧縮により、内部の水分が最も近い側面、底面、前後面にあって、対応した水抜き用部材59のスリットを通じてケーシング外から下方の水槽48に流下する。そして、この構造では、押圧体53が決められた前進位置に到達したときにシリンダ54が駆動停止され、シリンダ58による蓋体52のロックが解除され、同時に開閉用シリンダ56の駆動により、図6の平面図及び図7(c)に示すごとく、蓋体51が開放され、圧縮処理れたペレット状の硬固化体Pをケーシング51外へ排出する。排出された硬固化体Pは、下側のベルトコンベア16(図5を参照)に受渡される。
【0032】
なお、蓋体52は、排出後、直ちに閉鎖され、ロック状態に保持されると同時に押圧体53がシリンダ54により後退位置に戻り、このタイミングでガイドシュート49が当該分級装置27側に切り替り、ケーシング51内に凝集物の供給を始めると同時に、他方側分級装置27が前記と同様の要領で加圧動作を繰返す。この構造では、以上のような交互動作により、連続的な排泥処理が行えるようになっている。
【0033】
ところで、以上の加圧操作中に、急激な加圧力をかけた場合、固化体内部から表面への水の逃げ道が確保されず、表面だけ固まり、内部が泥水化し易い。このため、分級を確実かつ効率よく行うためには、各種試験から、押圧体53を前進移動するプレス速度等を検討しておくことである。この試験では、そのプレス速度として300cm/min以下に抑えることが望ましいことが分かった。これは、通常、プレス速度が遅ければ遅いほど硬くなる度合が高まり、硬固化体Pの体積が元の排泥に比して半分以下に削減され、輸送廃棄に際して減容化及び減量化を達成できる。なお、以上のプレス速度は、300cm/minよりさらに遅ければ遅いほどより硬質な硬固化体Pに処理できるものの、一回の処理時間が長くなって処理操作性に欠けるため、適度な速度に設定することが望ましい。但し、以上の展開例としては、硬固化体Pを所定の強度に製造処理することで、園芸用等で使用されるブロックとして提供し、資源の有効活用に寄与することも考えられる。
【0034】
(水抜き用部材)図8は上記した水抜き用部材59の一部を拡大した構成図である。すなわち、水抜き用部材59は、ケーシング51の底面や側面などに設けられる開口部に対応した大きさの枠体62と、枠体62内に所定間隔で並設されている多数の棒材63とから構成されている。なお、枠体62が大きくなる場合には、枠体62内にあって、各棒材63と交差する方向に配置されて各棒材を下から支持する支持棒が追加される。
【0035】
枠体62は、ケーシング51の底面や側面などに設けられる開口部に対し、嵌合された状態でクランプ61を介して装着されて、枠体内壁と略面一状態となる。各棒材63は、半丸鋼棒が用いられ、枠体62に対し平坦面を内側として所定間隔dで配列され、該平坦面が図8(a)の矢印に示す凝集物の移動方向に対して平行となっている。また、蓋体52又は押圧体53に対しては、図8(b)に示すように、前記と同様にそれぞれの開口部に嵌合された状態で、クランプ61を介して装着されて、各棒材63が平坦面を内側として所定間隔dで配列されるとともに、該平坦面が矢印に示す凝集物の移動方向に対して垂直となっている。これらは、固化体に対する相対的な摺動摩擦力及び加圧力が面で受止められるようにして、固化体に対して局部応力が加わり難く、加圧中の破砕などを防止できるようにする上でも好ましい。
【0036】
また、以上の水抜き用部材59は、間隔dつまり棒材同士の間のスリットの目詰まりを防ぐため、棒材63として半丸鋼棒を使用したが、この形状以外でもよい。また、棒材63同士の間隔dは2〜8mm程度が好ましい。試験では、凝集物の性状によっても多少異なるが、3〜7mmが最も好ましい結果となった。いずれにしろ、この構造では、部材59がクランプ61を介して枠体62ごと脱着できるため、間隔dの異なるものを予め用意して、必要に応じて最適なものを選択することで、排泥及び凝集物の性状などに対応した最適の分級効果を得ることができる。
【0037】
なお、以上の形態例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項1や6で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用した排泥処理方法の全体の流れを示す概略説明図である。
【図2】上記排泥処理方法の要部を模式化した概略構成図である。
【図3】上記排泥処理方法に使用する凝集剤液を作る製造手順を示す流れ図である。
【図4】上記排泥処理方法に適用される排泥処理設備を示す平面図及び正面図である。
【図5】上記設備のうち、混練装置と振動式分級装置及び加圧式分級装置の縦方向の配置関係を示す模式側面図である。
【図6】上記加圧式分級装置の平面図及び正面図である。
【図7】(a)〜(c)は上記分級装置の簡略分解斜視図、模式斜視図並びにペレット状硬固化体を排出した状態の模式斜視図である。
【図8】(a),(b)は水抜き用部材の詳細構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0039】
15…排泥処理プラント(排泥処理設備)
20…設備本体
25…混練装置(手段)
26…振動式分級装置(手段)
27…加圧式分級装置(手段)
50…凝集物用取入口
51…ケーシング
52…蓋体
53…押圧体
54…駆動用シリンダ(駆動手段)
56…開閉用シリンダ(開閉手段)
59…水抜き用部材
61…クランプ
62…枠体
63…棒材
d…間隔(スリットの幅寸法)
P…硬固化体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを含む排泥に凝集剤液を混練した略カンテン状の凝集物、又は該凝集物から水分の一部を分離除去したものを取り入れて加圧することにより水分を分離して硬固化体に処理する分級装置において、
前後に連通する横長状ケーシングと、
前記ケーシングの前面開口を開閉可能に閉止する蓋体と、
前記ケーシングの内部に摺動可能に挿入された押圧体と、
前記押圧体の後部側に一端を連結し、前記押圧体を所定の加圧速度で前進移動させたり、最前進位置から待機位置に後退する駆動手段と、
前記蓋体を閉止状態に保持したり開放状態に切り替える開閉手段
とを備えていることを特徴とする排泥処理用加圧式分級装置。
【請求項2】
前記凝集物又は該凝集物から水分の一部を分離除去したものをケーシング内に落下方式で投入可能な比較的大きな取入口を前記ケーシングの上面に形成している請求項1に記載の排泥処理用加圧式分級装置。
【請求項3】
前記ケーシングの両側面及び底面並びに前記蓋体に開口部を形成し、前記各開口部にスリット形状の水抜き用部材を装着している請求項1に記載の排泥処理用加圧式分級装置。
【請求項4】
前記押圧体の前面に開口部を形成し、前記開口部にスリット形状の水抜き用部材を装着している請求項1又は3に記載の排泥処理用加圧式分級装置。
【請求項5】
前記水抜き用部材が、前記開口部に脱着可能に装着される枠体と、該枠体内に並設されて棒同士の間に所定幅のスリットを区画している多数の棒材とからなる請求項3又は4に記載の排泥処理用加圧式分級装置。
【請求項6】
混練手段によりセメントを含む排泥に所定割合で凝集剤液を添加混練して略カンテン状の凝集物に処理する混練工程と、分級手段により前記混練工程で処理された凝集物から水分を分離する分級工程とを経る排泥処理方法において、
前記分級手段として、請求項1から5の何れかに記載の加圧式分級装置を使用し、かつ前記分級装置を前記混練手段の下側に配設して、前記混練手段で処理された前記凝集物を直接又はシュート等を介して落下作用にて前記分級装置側へ移送することを特徴とする排泥処理方法。
【請求項7】
前記混練手段と前記加圧式分級装置との間に配設されて、前記凝集物に振動を加えつつ水分を分離する振動式分級装置を有している請求項6に記載の排泥処理方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−7550(P2007−7550A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191469(P2005−191469)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【出願人】(390026446)株式会社テルナイト (17)
【Fターム(参考)】