説明

排液容器用の締結装置

排液容器の外部容器(1)を固定するための締結装置は、スナップ・ロック(12)を含む。このスナップ・ロック(12)は、スロット/スロット・ピン結合(42,13)を有する。突出するノーズ(12’)を有する板バネ(12)は、結合の下端に配置されており、スロット(42)又はスロット・ピン(13)の下縁の裏側で係合する。本発明の締結装置により、排液袋を簡単で確実に取り替えることが可能となる。対応する排液容器は、製造が低価格で、確実な操作を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の排液容器を固定するための締結装置、及び、請求項9,10又は16の前文に記載の排液容器に関する。
【背景技術】
【0002】
排液容器は、医療処置の範囲において、吸引による採取中に得られた体液を収集するための容器である。体液は、真空ポンプを用いて、患者側の排液管路を経て容器に導かれる。このため、容器は、患者側の排液管路用の接続部、及び、吸引又は真空ポンプ用の、又は中央の真空部用の接続部を有する。
【0003】
硬い外部容器、外部容器を閉じ上述の接続部を有する蓋、及び、蓋に取り付け可能であるか又は取り付けられている排液又は収集袋とを有する排液容器が公知である。この場合、外部容器は再利用可能で、排液袋は一度使用して適切に処分するか、又はまず洗浄してから処分される。この種の排液容器は、例えば、EP 0861668から公知である。さらなる排液容器は、US 3,680,560、WO 94/14045、及びUS 5,470,324に記載されている。
【0004】
これらの排液容器は、通常、横木からつるされており、この横木は患者のベッド自身に取り付けられているか、移動可能な取り付け具に配置されているか、又はそれに隣接する壁に沿って延びている。例えば、排液容器を固定するために使用することのできる装置は、横木を締める締結クランプである。横木は通常標準サイズであるため、同じサイズの締結クランプを異なる病院で使用することができる。この場合、排液容器は締結クランプからつるされる。従って、締結クランプは、排液中、容器がしっかりと保持されることを保証する。
【0005】
満杯の排液袋を空の排液袋に取り替える際には、まず容器を固定して、次に閉じた蓋を開け、袋を蓋とともに持ち上げなければならないため、両手を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、排液袋を簡単で確実に取り替えることができる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する排液容器の外部容器を固定するための締結装置により達成される。
【0008】
排液容器の外部容器を固定するための、本発明による締結装置は、スナップ(snap)部材を含むスナップ・ロック(snap lock)を有する。好ましくは、スナップ部材は、突出するノーズ(nose)を有する板バネである。
【0009】
スナップ・ロックにより、排液袋とともに蓋をはずすときでさえ、外部容器をその固定位置に保持することができる。従って、その周りの装置全体、特に外部容器を、手で固定させる必要なく、排液袋を素早く確実に片手で取り除くことができる。
【0010】
スナップ・ロックにより、排液容器を簡単に固定したままにすることができる。固定は、中でも、締結装置がスロット/スロット・ピン結合を有する場合に容易であり、排液容器を固定するには、スロット・ピンを、スナップ・ロックが係合するまで、スロットに差し込まれなければならないだけである。
【0011】
好ましくは、スロット又はスロット・ピンは締結クランプに配置されている。この締結クランプは横木に固定することができる。クランプにより、横木への素早く確実な接続が可能となる。
【0012】
有利なのは、公知の締結クランプを使用し続けることができ、排液容器の外部容器に新しくスナップ・ロックを設けるだけでよいことである。スナップ・ロックが板バネの場合、従来の製品ラインから本発明の排液容器への転換は、比較的簡単で費用効率が高い。
【0013】
しかしながら、明らかに、締結クランプに、スナップ部材を設けたり、スロット・ピンをつけてもよい。
【0014】
本発明のさらなる目的は、比較的費用効率よく製造できる排液容器を提供することである。
【0015】
この目的は、請求項10の特徴を有する排液容器によって達成される。
【0016】
本発明による排液容器は、その上に載っていることだけによって硬い外部容器に固定される蓋を有する。蓋を固定するために、これまで使用された横のクランプが必要でないことを発見した。排液中に外部容器内に発生した減圧は、蓋と排液袋をその位置にしっかりと保持するのに十分である。このことは、より少ない部品の製造と組み立てを求めるため、排液容器をより費用効率よく製造することができる。
【0017】
好ましくは、蓋を排液袋とともにより容易に持ち上げることができるようにするため、蓋に取っ手を設ける。プラスチック材料からできた蓋の場合、取っ手を蓋の残り部分と一緒に押出することができるため、製造コストを低く抑えることができる。好ましくは、2つの取っ手を設け、2つの直径方向に向かい合っている側面に、蓋に横方向に、一体的に形成されるか、又は取り付けられる。
【0018】
好ましくは、袋は蓋に固定的に接続されており、特に溶接又は接着されている。従って、袋用の別のヘッド部分はなくてもよい。これによりまた、製造コストが下がる。
【0019】
本発明のさらなる目的は、確実な操作を可能とする排液容器を提供することである。
【0020】
この目的は、請求項16の特徴を有する排液袋によって達成される。
【0021】
本発明による排液袋は、蓋に、患者側の排液管路用の接続部材を有し、この接続部材が角度を形成する。この角度は、好ましくは、約45°である。接続継ぎ手自身が曲がっていてもよいし、曲がった接続パイプをその中に入れることもできる。
【0022】
この角度により、患者側の排液チューブがねじれて吸引効果を制限するという危険性を排除する。排液容器が患者に対して特定の高さに配置されているかどうかは、もはやそれほど重大ではない。今や完全に、適当な範囲内で、排液容器をこの最適な位置より高く又は低く配置することができる。
【0023】
さらなる有利な実施形態は、従属請求項から生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付の図に示された、好ましい典型的な実施形態に基づき、本発明の主題を説明する。
図1〜3は、本発明による排液容器の2つの側面図と、上方向から見た図を示す。排液容器は、硬く好ましくは透明の外部容器1と、閉じ蓋2を有する。排液袋(図には見られない)は、蓋2に固定することができ、又は好ましくは蓋2に固定的に接続されており、例えばその周端に溶接又は接着されている。排液袋は、容器1内に配置され、容器の縁に置かれている蓋2により、その位置に保持される。蓋2、袋及び外部容器1は、好ましくは、プラスチック材料でできており、例えば、蓋と外部容器についてはPC(ポリカーボネート)又はPSU(ポリスルフォン)、袋についてはPE(ポリエチレン)で作ることができる。
【0025】
蓋2又はその円形基部20には、複数の開口部が設けられている。1つの開口部は、患者側の排液管路を接続できる、患者側接続継ぎ手21で囲まれている。この接続継ぎ手21は、排液袋への開口部を形成する。真空源への接続用の真空接続部は、参照番号24で図中に示されている。図示された典型的な実施形態において、この接続部は容器1の横に配置されているウェブ11に位置しており、開口部が容器の内部に入る。しかしながら、また、この真空接続部24を蓋に配置することもできる。
【0026】
角度を形成する接続管5は、接続継ぎ手21の開口部に差し込まれている。好ましくは、この角度は約45°である。患者側の排液管路は、この接続管5に接続される。接続継ぎ手及び接続管はまた、一体形に、一緒に製造することもできる。
【0027】
さらなる開口部又は接続継ぎ手を設けてもよい。ここに図示された例では、連続接続部22が蓋2に配置されている。連続接続部は、2以上の排液容器を連続して接続するのに役立つ。この場合、個々の容器は、これらの連続接続部22に差し込まれる接続管路によりともにつながる。排液容器を1つだけ使用する場合は、連続接続部は図のように蓋23により閉じられ、必要な真空を容器内部に発生させることができる。好ましくは、連続接続部22の蓋23は、蓋2の残りの部分と一体的に形成されているか、又は残りの部分に接続されている。
【0028】
取っ手25は、蓋2と一体的に形成されているか、又は蓋に取り付けられている。好ましくは、蓋及び取っ手は一体形に一緒に形成されている。これらの取っ手25は上方へ突出することができる。しかしながら、ここに示した好ましい実施形態においては、ちょうど2つの取っ手(25)が設けられており、蓋2の直径方向に向かい合っている側面の、その周端に配置されている。この場合、2つの取っ手は、蓋の残りの部分と共通の平面を形成する。
【0029】
蓋2は、外部容器1に特別な方法で固定されているわけではない。特に、蓋を固定するためのクランプは設けられていない。蓋2は外部容器1の上縁に載っているだけであり、ただ使用中容器内に広がっている減圧により、その位置に保持される。
【0030】
図3に最も明らかに見られるように、2つのキャップ26,27が蓋と一体的に形成されている。これらのキャップ26,27は、使用の際、蓋の残りの部分から折り取ってもよいし、接続継ぎ手21及び真空接続部24用の閉じ部として使用してもよい。しかしながらまた、キャップなし、又はキャップ1つだけを取り付けることもできる。さらに、1つのキャップは、様々な開口部を閉じるために使用できるように構成することができる。例えば、1つの位置で、接続継ぎ手21を閉じることができ、回転位置で、真空接続部24又は連続接続部22を閉じることができるように形成することができる。
【0031】
好ましくは、外部容器1の形状は、環状円筒形である。上述のウェブ11は、外部容器1のケーシングに溶接されているか、又はケーシングと一体的に形成されている。図5に見られるように、ウェブは外側に突き出し、スロット・ピン13と上部領域で合流する。スロット・ピン13は、容器1の長手方向の軸に平行に延びる長手方向を有する。
【0032】
スロット・ピン13の対となる部分は、締結部材又は締結クランプ4内で延びるスロット42により形成される。この締結部材4は、患者のベッドの横木、排液装置の横木、壁の横木、又は他の適切な、延びている横木に固定することができる。図は、横木の短い部分だけを示す。
【0033】
本発明による締結装置は、図4及び5に最も明らかに見ることができる。付属の締結部材4は、基体40を有する。基体40の片側には、前述のスロット42が垂直方向に延びている。反対側はクランプを形成する。この場合、クランプの上側部分は、基体40の固定要素であり、下方に曲がった固定つめ44により形成される。クランプの下側部分は、上方に曲がった、下側の、バネ荷重で垂直方向に移動可能な可動つめ43である。バネは基体40の内部で延びているため、ここでは見ることができない。可動つめ43は、作動ボタン、この場合押しボタン41に連結されており、ボタンは基体40の上側を超えて突出し、下方に押すことができる。結果的に、ボタンがつめ43をバネ力に逆らって下方へ動かす。つめ43及び下方に曲がった上側の固定つめ44はともに、水平方向に延び、中で横木3を受けるスロットを形成する。明らかに、上側のつめを動くことができるように構成し、下側のつめを固定することもできる。
【0034】
本発明による締結装置は、この場合、スロット・ピン13の表側から突出するノーズ12’を有する板バネ12により形成されるスナップ・ロック12を含む。板バネ12は、スロット・ピン13の下方に向かう延長部分であり、この板バネはスロット・ピン13の大きい方の幅より狭くなるように構成されている。板バネ12は金属、又はプラスチック材料、又は他の適当な材料で作ることができる。スナップ・ロックはまた、本明細書に記載された方法とは異なって構成することもできる。重要な点は、スナップ締めの結果、スナップ・ロックがしっかりとロックされること、すなわち、外部容器を締結クランプに、はずすことは可能であるがしっかりと固定することである。
【0035】
図5に見られるように、締結クランプ4は横木3に固定され、容器1は、スロット・ピン13の上端に取り付けられた板14で基体40に当たるまで、そのスロット・ピン13を用いて上から締結クランプ4内のスロット42に差し込まれる。この位置において、スナップ・ロックはスナップ閉じされ、板バネ12の突出するノーズ12’が、締結部材4のスロット42の裏側で係合する。容器1を再びはずせるようにするには、バネ12を容器1の方向に手で押さなければならず、そうすることによって、スロット・ピン13をスロット42から上方に引き戻すことができる。従って、スナップ・ロックは、容器を止め、上方への好ましくない引張動きを防ぐ。
【0036】
図6に見られるような、蓋2について、以後より詳細に説明する。蓋は、その下側、つまり容器の内側に向けられる側に、星形に配置された、好ましくはほとんど蓋の縁まで延びるリブ29を有する。各リブには、それぞれ、少なくとも1つの途切れ部分29’が設けられ、そのため、蓋の内表面の個々の領域20’がともにつなげられている。これにより、蓋2の洗浄の際、いかなる液体も閉じ込められたままになる可能性がない。
【0037】
洗浄を容易にするため、蓋2は、ぶち抜くことが可能で、それを用いて排液袋を素早く空にできる、少なくとも1つの領域28、好ましくは複数の領域28を有する。ここでは、このような領域28が2つある。安全な処分のため、袋と蓋2を、このために適切な洗浄機で洗浄できるようにするために、(本明細書には示さない)位置決め補助具を設け、これによって、蓋2を洗浄機内に常に同じ位置で、特にしっかりと保持することを可能にする。好ましくは、使用する位置決め補助具は、少なくとも1つの、蓋2の周端に配置された穴である。
【0038】
本発明による締結装置によると、排液袋の簡単で確実な取り替えが可能となる。付属の排液容器は、費用効率よく製造することができ、確実な操作を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明による排液容器の、第1の側から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1の容器の、第2の側から見た斜視図である。
【図3】図3は、図1の容器の、上方向から見た斜視図である。
【図4】図4は、本発明による締結装置の、図1に比べ拡大した斜視図である。
【図5】図5は、はずした状態での、図4の締結装置を示す。
【図6】図6は、本発明による蓋の下側の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 外部容器
11 ウェブ
12 板バネ
12’ 突出するノーズ
13 スロット・ピン
14 板

2 閉じ蓋
20 基部
20’ 領域
21 患者側接続継ぎ手
22 連続接続部
23 連続接続部の蓋
24 真空接続部
25 取っ手
26 第1のキャップ
27 第2のキャップ
28 ぶち抜き可能な領域
29 リブ
29’ 途切れ部分

3 横木

4 締結クランプ
40 基体
41 押しボタン
42 スロット
43 可動つめ
44 固定つめ
5 接続管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排液容器の外部容器(1)を固定するための締結装置であって、スナップ・ロック(12)を含む締結装置。
【請求項2】
前記スナップ・ロック(12)が、スロット/スロット・ピン結合(42,13)を有し、及び、突出するノーズ(12’)を有する板バネ(12)が、前記結合の下端に配置され、前記スロット(42)又は前記スロット・ピン(13)の下縁の裏側で係合する、請求項1に記載の締結装置。
【請求項3】
前記スロット・ピン(13)が前記外部容器(1)に配置され、前記スロット(42)が締結部材(4)に配置されている、又はその逆である、請求項1又は2に記載の締結装置。
【請求項4】
前記締結部材が締結クランプ(4)である、請求項3に記載の締結装置。
【請求項5】
前記締結クランプ(4)が、片側に前記スロット(42)又は前記スロット・ピン(13)を有する基体(40)を有し、反対側にバネ荷重された可動つめ(43)を有する、請求項4に記載の締結装置。
【請求項6】
前記可動つめ(43)は押しボタン(41)によって動くことができる、請求項5に記載の締結装置。
【請求項7】
前記可動つめ(43)は、前記スロット(42)又は前記スロット・ピン(13)の長手方向に平行な方向に動くことができる、請求項6に記載の締結装置。
【請求項8】
前記板バネ(12)が前記外部容器(1)に配置されている、請求項2〜7のいずれか1項に記載の締結装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の締結装置を含む排液容器。
【請求項10】
硬い外部容器(1)及び蓋(2)を有し、前記蓋(2)に排液袋が固定されており、吸引源に接続するための真空接続部(24)と患者側排液チューブに接続するための接続継ぎ手(21)を有する、請求項9に記載の排液容器であって、
前記蓋(2)が、前記硬い外部容器(1)に、その上に載っていることだけにより固定されていることを特徴とする排液容器。
【請求項11】
前記蓋(2)が、少なくとも1つの取っ手(25)を有する、請求項10に記載の排液容器。
【請求項12】
前記少なくとも1つの取っ手(25)が、前記蓋(2)の周端に配置されており、前記蓋(2)とともに共通の平面を形成する、請求項11に記載の排液容器。
【請求項13】
前記蓋(2)が、その内表面に、星形に配置されたリブ(29)を有し、各リブ(29)は少なくとも1つの途切れ部分(29’)を有し、その結果、前記内表面の領域(20’)のほぼ全部がともにつながれている、請求項10〜12のいずれか1項に記載の排液容器。
【請求項14】
前記蓋(2)が、少なくとも1つの、ぶち抜くことのできる領域(28)を有する、請求項10〜13のいずれか1項に記載の排液容器。
【請求項15】
前記蓋(2)を洗浄機内で位置づけるために、少なくとも1つの穴の形をした位置決め補助具が設けられている、請求項14に記載の排液容器。
【請求項16】
硬い外部容器(1)及び蓋(2)を有し、前記蓋(2)に排液袋が固定されており、吸引源に接続するための真空接続部(24)と患者側の排液チューブに接続するための接続継ぎ手(21)を有する、請求項10〜15のいずれか1項に記載の排液容器であって、
接続部材(5)が設けられ、角度を形成することを特徴とする排液容器。
【請求項17】
前記角度が約45°である、請求項16に記載の排液容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−524453(P2009−524453A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551615(P2008−551615)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000015
【国際公開番号】WO2007/085100
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(503465052)メデラ ホールディング アーゲー (40)
【Fターム(参考)】